説明

測定装置

【課題】高い測定精度を有し、容易に仕上げできる測定装置を創作すること。
【解決手段】この発明は、工作機械、測定機械或いはロボットの運動軸線の立体的移動を検出する測定装置に関する。測定装置は、複数の長さ測定システム(2、3、4)が配置されている保持体(1)から成り、異なった立体的方向において測定球(5)に対する間隔を測定する。保持体(5)が球状形状を有し、複数の長さ測定システム(2、3、4)が保持体(5)の球状形状の中心点(M)の方向に測定するように整合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械、ロボット或いは測定機械のような機械の運動軸線の立体的移動を検出する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定装置は直線軸線の位置誤差と直線軸線或いは円形軸線の成分誤差を測定するのに用いられる。5軸線機械が使用するために自由形状面を加工するために増大される。この場合には、回転軸線から直線軸線までの配向と位置は加工の精度にとって特に重要である。測定装置はここで使用され得て、立体的精度を検査して評価でき、場合によっては精度を向上させる補償データをそれから誘導する。
【0003】
ドイツ実用新案第29916325号明細書(特許文献1)から、この種の測定装置が知られていて、この測定装置には三つの長さ測定カリパスが測定球に装備するために測定球の中心に対する方向に配向して配置されている。長さ測定カリパスは特にある鋭角に互いに配置されていて、大きな操縦性を達成させ、それにより柔軟な使用を保証する。長さ測定カリパスはプレート状部分に配置されていて、その平面はそれぞれに当該長さ測定カリパスの測定方向に垂直に延びている。
【0004】
欧州特許第1491287号明細書(特許文献2)による測定装置には、長さ測定カリパスが切頭円錐状保持体に配置されていて、それにより測定装置の出来るだけ高い剛性が達成される。
【0005】
欧州特許第1549459号明細書(特許文献3)には、保持体が長さ測定カリパスと共に旋回できるならば、好ましいことが開示されている。このために、保持体がロッド状構成と連結されていて、この構成に継手が配置されていて、その継手を中心に保持体が旋回可能に支承されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ実用新案第29916325号明細書
【特許文献2】欧州特許第1491287号明細書
【特許文献3】欧州特許第1549459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、高い測定精度を有し、容易に仕上げできる前記種類の測定装置を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、特許請求項1の特徴事項を備える測定装置によって解決される。
【0009】
それ故に、測定装置は、異なった立体方向における共通の測定体に対する間隔を測定するために、複数の長さ測定システムが配置されている保持体を包含する。保持体が球地帯を形成する球状形状を有し、複数の長さ測定システムが保持体の球状形状の中心の方向に測定するために整合されていて、球地帯の領域には保持体に配置されている。
【0010】
さらに、前記種類の測定装置が創作され得て、さらに、柔軟に使用できる。
【0011】
この課題は、特許請求項2の特徴事項によって解決される。
【0012】
それ故に、測定装置は、異なった立体方向における共通の測定体に対する間隔を測定するために、複数の長さ測定システムが配置されている保持体を包含する。保持体が球冠を形成する球状形状を有し、球冠により保持体が逆軸受内で球状形状の中心に旋回でき、複数の長さ測定システムが保持体の球状形状の中心の方向に測定するように整合されている。
【0013】
この発明の他の好ましい構成は従属請求項に採用すべきである。
【0014】
保持体を特別に簡単に仕上げるために、長さ測定システムを収納する球地帯と保持体を旋回させる球冠が連続的に互いに移行するならば、つまり共通の球セグメントを形成するならば、好ましい。
【0015】
測定部材の立体的移動を精密に測定して次に評価するために、保持体には特に三つの長さ測定システムが配置されている。
【0016】
長さ測定システムは好ましくは、それぞれに保持体に静止的に配置された基体を備える長さ測定カリパスであり、測定体に対する間隔を接触走査して測定するために、走査ピンが長さ移動自在に支承されている。この場合に、走査ピンが好ましい形式でばねを介して保持体の球状形状の中心の方向に予め応力を加えられている。
【0017】
球ゾーンは、長さ測定システムの少なくとも一つの位置が保持体の球ゾーンにおける移動によって調整できる利点であり、球状形状の中心に対する長さ測定システムの配向が維持される。このために、保持体は、所定方向のみの移動が可能とされるか、或いは複数の方向に移動できるように、形成されている。
【0018】
この発明の更なる好ましい特徴事項と利点は、図に基づいて三つの実施例の次の明細書に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一測定装置の斜視図を示す。
【図2】第一測定装置の保持体を示す。
【図3】第二測定装置の斜視図を示す。
【図4】第二測定装置の斜視図を部分断面で示す。
【図5】第三測定装置の斜視図を示す。
【図6】第三測定装置の斜視図を断面で示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次の実施例では、測定装置が機械の機械テーブルに配置されて、測定部材が測定球の形状でこの機械の工具収納部に配置されている。
【0021】
図1と2に基づいて、この発明の第一実施例が詳細に説明される。測定装置が検査すべき機械の運動軸線の立体的移動を検出するのに用いられる。複数の長さ或いは間隔測定が工具中心点(TCP)の立体的移動によって検出される。このために、測定装置は複数の長さ測定システム2、3、4が配置されている保持体1を包含する。保持体1における長さ測定システム2、3、4の立体的配列は、異なった立体方向において測定部材5に対する間隔を測定するために敷設されている。長さ測定システムは、一つの共通の交差点に対して配向されて配置されている長さ測定システム2、3、4である、即ち、長さ測定システム2、3、4の測定方向が共通点Mで交差する。
【0022】
測定の際には長さ測定システム2、3、4が工具収納部に固定された測定部材、特に測定球の形状の表面を走査するので、測定球5とTCPの立体的移動が複数の長さ測定によって検出される。工具中心点(TCP)は特に測定球5の中心から具体化され、この中心点TCPが好ましい形式でさらに長さ測定システム2、3、4の測定方向の共通交差点Mである。
【0023】
二つの互いに移動可能な機械部材の比較的移動が測定されるので、測定球5が機械部材の一部材に固定され、測定装置が両機械部材の他の部材に固定されている。検査すべき機械が工作機械であるならば、測定球5が固定軸18を介して工具収納部に固定でき、測定装置が機械テーブルに固定でき、特に締付けできる。図2には、保持体1が機械テーブル6に取付けられて図示されている。
【0024】
機械の軸線運動の幾何学精度を検出と検査するために、例えば回転運動と旋回運動が機械の運動軸線により実施される。三つの長さ測定カリパス2、3、4によって保持体1に対するTCPの測定された移動から、検査すべき機械の幾何学的、運動学的、静止的、熱的と動的特性を遡及的推論され得る。長さ測定カリパス2、3、4の得られた測定値から補償データも誘導され得て、機械の精度を高める。このために、測定された位置測定値が機械の座標システムに変換され得る。
【0025】
特に、例えば互いに垂直に整合されている三つの長さ測定カリパス2、3、4が整合されている。
【0026】
長さ測定カリパス2、3、4はそれぞれに一つの基体21、31、41から成り、この基体では測定球5に対する間隔を接触走査して測定するために走査ピン22、32、42が長さ移動自在に支承されている。走査ピン22、32、42が測定球5の表面を走査し、それで測定球5の表面に対する間隔を検出する。それにより保持体1に対する測定球5の表面の相対移動が検出され、それは中心点Mに対するTCPの相対移動に一致する。
【0027】
測定の際に走査ピン22、32、42の先端を常に測定球5の表面と接触して保持するために、走査ピン22、32、42が例えばばね手段或いは空圧によって測定球5の方向に予め応力を加えられて基体21、31、41に支承されている。測定球5に接触させる走査ピン22、32、42の先端が球状に或いは平らな平面として形成されている。選択的に測定球5との接触は、走査ピン22、32、42が例えば磁気軸受或いは空気軸受によって測定球5に遊び無しに当接されるか、或いは支承されることによって保証される。
【0028】
長さ測定カリパス2、3、4は高さ正確に測定する位置測定システムであるので、光電的に走査できる測定区分を備える特別長さ測定カリパスが適している。この場合に測定区分は増加する或いは絶対的の少なくとも一方の測定区分に具体化され得る。
【0029】
長さ測定カリパス2、3、4の基体21、31、41はそれぞれに測定装置の保持体1に固定されている。このために、各基体21、31、41用の保持体1には、点Mに対する方向に向く収納部11、12、13が設けられている。基体21、31、41は片面から保持体1のこれら収納部11、12、13に通して差し込まれ、保持体1の他の側面に対向される。選択的に基体21、31、41が収納部11、12、13にもねじ込まれ得る。図示された実施例では、基体21、31、41がそれぞれに一致する収納部11、12、13に半径方向に締付けられている。
【0030】
保持体1は球状形状を有し、複数の長さ測定カリパス2、3、4が保持体1の球状形状の中心点Mの方向に測定するために整合されて配置されている。保持体1の球状形状は球ゾーン14を形成し、この領域には、長さ測定カリパス2、3、4が保持体1に配置されている。保持体1の球状形状はある領域で球層を形成し、この球層の球状に湾曲された表面が球ゾーン14を形成する。
【0031】
球状形状は保持体1にあらゆる立体方向における特に高い剛性を増加するので、一度保持体に固定された長さ測定カリパス2、3、4がその位置をあらゆる立体方向に特に長時間安定に維持する。保持体1の僅かな自重により最高剛性があらゆる立体方向に達成され得る。さらに、球状保持体1が回転対称的部分として回転加工によって特に容易に且つ精密に仕上げできる。中心点Mは球表面、つまり球地帯14或いは遅れて図5と6に基づいて詳細に記載された球冠315の少なくとも一方の走査によって検出される。
【0032】
図1と2に明らかであるように、収納部11、12、13が長さ測定カリパス2、3、4を円筒状に収納する保持体1内にある。この円筒状収納部11、12、13が球ゾーン14の内部に存在するので、それぞれに保持体1の収納部11、12、13の領域には球とシリンダ幾何学の剪定によって縁が形成し、それぞれの長さ測定カリパス2、3、4の基体21、31、41用の一平面に位置する円形載置を図示する。それにより長さ測定カリパス2、3、4は特に安定に保持体1に固定できるか、或いは位置でき、円形載置によって長さ測定カリパス2、3、4の定義された載置と配向が球状形状の中心点Mの方向に、ここで同時にTCPが設けられている。
【0033】
図3と4は、他の実施例を示す。この場合に保持体201が使用され、第一実施例の同じ球状形状を有し、つまり球地帯214を有する。第一実施例との差異において、保持体201の球状形状が好ましく利用されて、長さ測定カリパス2、3、4の少なくとも一つの位置が保持体201の球ゾーン214における移動によって調整でき、球状形状の中心点Mとそれにより長さ測定カリパス2、3、4の測定方向の共通交差点とに対する長さ測定カリパス2、3、4の配向は維持される。この場合には、保持体201内の少なくとも一つの収納部211、212、213が長孔であり、この長孔には長さ測定カリパス2、3、4の基体21、31、41が一方向に調整可能に案内されている。調整が行われた後に、基体21、31、41が保持体201に固定され、例えば固定ねじ込まれる。
【0034】
保持体201内の収納部は、調整が複数の方向に可能とされるように、形成され得る。
【0035】
この発明の他の実施例は、図5と6に図示されている。この他の実施例により保持体301の球状形状が球冠315を形成する。球冠315は球部分の表面と見做される。保持体301がこの球冠315を介してベース317の逆軸受316に旋回自在に支承されて、旋回中心点が複数の長さ測定カリパス2、3、4の測定方向の交差点Mであり、ここでTCPと、つまり測定球5の中心点と一致する。この措置によって、旋回軸線を衝突無しに大きな旋回領域に検査する可能性が創作される。このために、逆軸受316内の保持体1が必要な旋回位置にもたらされて、測定球5と固定軸18をこれら異なった旋回位置に衝突無しに長さ測定カリパス2、3、4に案内できる。この場合に、保持体1のこれらの異なった旋回位置には、中心点Mの位置が保持されたままであり、つまり移動されない。
【0036】
この実施例では、球ゾーン314と球冠315が連続的に互いに移行し、つまり共通の球セグメントを形成する。
【0037】
ベース317の逆軸受316が、断面表示で図6が図示されているように、特に球殻として形成されている。保持体301の所望旋回位置の調整後にこの保持体が例えばねじによってベース317に固定式に係留される。
【0038】
逆軸受316が球殻として形成されるならば、それは球冠315と同じ半径を有する。逆軸受は選択的に円環載置或いは複数点載置として、特に三点載置として形成され得る。
【0039】
示されていない形式では、ベース317に対する保持体301の旋回角度を測定する測定手段が設けられ得る。
【0040】
長さ測定システムは上記に詳細に説明された実施例では長さ測定カリパス2、3、4である。しかし、測定球5の表面に対する間隔の測定のために、或いはTCP対する間隔の測定のために、他の長さ測定システムも使用され得る、容積式間隔センサー或いはインターフェロメータのような例えば接触なし作動するシステムが使用され得る。
【0041】
異なった方向の走査ではTCPまで同じ間隔が存在するので、測定部材としての測定球5が特に好ましい。しかし、この発明は測定部材としての測定球5に限定されていない。
【0042】
複数の長さ測定システムの位置測定値が数値制御部に供給されるならば、好ましく、数値制御部は運動指示を検査すべき機械の運動軸線に与える。位置測定値は検査すべき機械のモデルのパラメータを形成するのに用いられる。この場合に、長さ測定システムの位置測定値が検査すべき機械の座標システムに換算されるならば、好ましい。
【0043】
示されていない形式では、測定装置が工具収納部に配置され、測定部材が機械テーブルに配置され得る。この場合にさらに、測定装置の中心点Mに対する測定部材の相対移動が検出され、この場合には中心点Mが特にTCPと一致する。
【0044】
使用者は、検査すべき機械の構成に依存して測定装置と測定部材の適した配列を選択する。
【符号の説明】
【0045】
1、201、301.....保持体
2、3、4.....長さ測定システム
5.....測定部材
14、214、314.....球ゾーン
315.....球冠
21、31、41.....基体
22、32、42.....走査ピン
M.....中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の長さ測定システム(2、3、4)が配置されている保持体(1、201、301)を包含する運動軸線の立体的移動を検出し、異なった立体方向における測定部材(5)に対する間隔を測定する測定装置において、保持体(1、201、301)が一つの球ゾーン(14、214、314)を形成する球状形状を有し、そして複数の長さ測定システム(2、3、4)が保持体(1、201、301)の球状形状の中心点(M)の方向に測定するように整合されていて、保持体(1、201、301)における球ゾーン(14、214、314)の領域に配置されていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
複数の長さ測定システム(2、3、4)が配置されている保持体(301)を包含する運動軸線の立体的移動を検出し、異なった立体方向における測定部材(5)に対する間隔を測定する測定装置において、保持体(301)が球冠(315)を形成する球状形状を有し、球冠により保持体が逆軸受(316)内で球状形状の中心点(M)を中心に旋回でき、そして複数の長さ測定システム(2、3、4)が保持体(301)の球状形状の中心点(M)の方向に測定するように整合されていることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
球ゾーン(14、214、314)と球冠(315)が共通球セグメントを形成することを特徴とする請求項1或いは2に記載の測定装置。
【請求項4】
保持体(1、201、301)には少なくとも三つの長さ測定システム(2、3、4)が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
長さ測定システムは、保持体(1、201、301)に静止的に配置されたそれぞれの一つの基体(21、31、41)を備える長さ測定カリパス(2、3、4)であり、測定部材(5)に対する間隔を接触走査して測定するために、走査ピン(22、32、42)が長さ移動自在に支承されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
走査ピン(22、32、42)がばねを介して保持体(1、201、301)の球状形状の中心点(M)の方向に予め応力を加えられていることを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
長さ測定システム(2、3、4)の少なくとも一つの位置が保持体(1、201、301)の球ゾーン(14、214、314)における移動によって調整でき、球状形状の中心点(M)に対する長さ測定システム(2、3、4)の配向が維持されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
長さ測定システムが測定部材(5)に対する間隔を接触なしに測定するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−247888(P2011−247888A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108941(P2011−108941)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(390014281)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】