説明

測定装置

【課題】測定時におけるスイッチング素子の破損の可能性を低くする。
【解決手段】ウエハに形成された複数のスイッチング素子のリーク電流を測定する測定装置であって、ウエハに形成された複数のスイッチング素子のそれぞれの端子と電気的に接続するプローブと、ウエハに形成された複数のスイッチング素子のそれぞれにプローブを介して互いに異なる位相で変化する変化電圧を印加する電圧印加部と、オフ状態における複数のスイッチング素子のそれぞれに流れるリーク電流を測定する電流測定部とを備える測定装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のリーク電流を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子のオフ時のリーク電流を測定する測定装置が知られている。特許文献1に記載された測定装置は、インバータモジュールに内蔵されたスイッチング素子のオフ時のリーク電流を測定する。
【0003】
特許文献1 特開2008−304241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定装置は、スイッチング素子がウエハから切り出されていない状態でリーク電流を測定してもよい。これにより、測定装置は、スイッチング素子の良否をモジュールへの組み込み前に判定することができる。
【0005】
ここで、スイッチング素子のリーク電流を測定する場合、オフ状態のスイッチング素子に対して直流電圧を印加する。しかし、スイッチング素子に直流電圧を印加した場合、電圧の印加タイミングまたは終了タイミングにおいて、大きなサージ電圧が発生する。サージ電圧が発生すると、スイッチング素子を損傷させたり、スイッチング素子を破壊してしまったりする。
【0006】
特に、ウエハ状態のスイッチング素子が損傷したり破壊したりすると、隣接して配置されるスイッチング素子の品質にも影響を与えてしまう。また、スイッチング素子が破壊すると、測定装置のプローブ等に溶融物が付着してその後のメンテナンスの負担が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、ウエハに形成された複数のスイッチング素子のリーク電流を測定する測定装置であって、前記ウエハに形成された複数のスイッチング素子のそれぞれの端子と電気的に接続するプローブと、前記ウエハに形成された複数のスイッチング素子のそれぞれに前記プローブを介して互いに異なる位相で変化する変化電圧を印加する電圧印加部と、オフ状態における前記複数のスイッチング素子のそれぞれに流れるリーク電流を測定する電流測定部とを備える測定装置を提供する。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る測定装置10の構成およびウエハ200を示す。
【図2】本実施形態に係る測定部30の構成を測定対象となる複数のスイッチング素子210とともに示す。
【図3】本実施形態に係る測定部30によって複数のスイッチング素子210に印加される変化電圧の一例を示す。
【図4】本実施形態に係る測定部30によって複数のスイッチング素子210に印加される変化電圧の他の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る測定装置10の構成およびウエハ200を示す。測定装置10は、ウエハ200に形成された複数のスイッチング素子210のそれぞれのオフ時におけるリーク電流を測定する。
【0012】
本実施形態において、ウエハ200に形成された複数のスイッチング素子210のそれぞれは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBTという場合もある)およびSiC(シリコンカーバイト)バイポーラトランジスタ等の縦型パワーデバイスである。SiCバイポーラトランジスタの製造方法は、一例として、特開2008−177274号公報等に記載されている。複数のスイッチング素子210のそれぞれは、IGBTおよびSiCバイポーラトランジスタ等の縦型パワーデバイスに代えて、他の半導体材料により製造されたパワーMOSFET等の他の高耐圧スイッチングデバイスであってもよい。
【0013】
測定装置10は、複数のプローブ20と、測定部30とを備える。複数のプローブ20のそれぞれは、ウエハ200に形成された複数のスイッチング素子210のうち、選択された複数のスイッチング素子210のそれぞれの端子と電気的に接続する。
【0014】
本実施形態においては、複数のプローブ20のそれぞれは、対応するスイッチング素子210のコレクタまたはエミッタに接続する。例えば、スイッチング素子210の表面側に設けられた複数のプローブ20のそれぞれは、対応するスイッチング素子210のエミッタに接続する。また、スイッチング素子210の裏面側に設けられた複数のプローブ20のそれぞれは、対応するスイッチング素子210のコレクタに接続する。
【0015】
測定部30は、オフ状態とされた複数のスイッチング素子210のそれぞれに対して、対応するプローブ20を介して電圧を印加しながらリーク電流を測定する。本実施形態においては、測定部30は、オフ状態とされた複数のスイッチング素子210のそれぞれに対して、コレクタ−エミッタ間に順方向の電圧を印加しながら、コレクタ−エミッタ間に流れるリーク電流を測定する。
【0016】
このような測定装置10は、ウエハ200に形成された複数のスイッチング素子210のそれぞれのリーク電流を測定することができる。これにより、測定装置10は、ウエハ200に形成された複数のスイッチング素子210が仕様により定められた基準リーク電流よりも大きなリーク電流が流れるか否かを判定することができる。
【0017】
図2は、本実施形態に係る測定部30の構成を測定対象となる複数のスイッチング素子210とともに示す。図3は、本実施形態に係る測定部30によって複数のスイッチング素子210に印加される変化電圧の一例を示す。
【0018】
測定部30は、電圧印加部34と、電流測定部36とを有する。本実施形態においては、測定部30は、ウエハ200に形成された複数のスイッチング素子210のうち、測定対象として選択された3つのスイッチング素子210のオフ状態におけるリーク電流を測定する。
【0019】
なお、本実施形態においては、IGBTであるスイッチング素子210は、ゲートに電圧を印加しない状態でオフとなる。しかし、測定部30は、スイッチング素子210をオフ状態とするための制御電圧を複数のスイッチング素子210のそれぞれの制御端子に与えてもよい。
【0020】
電圧印加部34は、選択された複数のスイッチング素子210のそれぞれにプローブ20を介して互いに異なる位相で変化する変化電圧を印加する。電圧印加部34は、一例として、複数のスイッチング素子210のそれぞれに互いに異なる位相の同一周期のサイン波形の変化電圧を印加する。
【0021】
この場合において、電圧印加部34は、一例として、最大電圧時においても最小電圧時においてもスイッチング素子210に順方向の電圧となる変化電圧を印加する。電圧印加部34は、一例として、振幅の1/2以上の直流電圧により順方向にバイアスがされたサイン波形の変化電圧を複数のスイッチング素子210のそれぞれに印加する。
【0022】
本実施形態においては、電圧印加部34は、図3に示されるような3相の変化電圧を、測定対象として選択された3つのスイッチング素子210のそれぞれにおけるエミッタ−コレクタ間に印加する。即ち、電圧印加部34は、測定対象として選択された3つのスイッチング素子210のそれぞれにおけるエミッタ−コレクタ間に、振幅の1/2の直流電圧により順方向にバイアスがされ、互いに120度位相がずれたサイン波形の変化電圧を印加する。
【0023】
電圧印加部34は、一例として、バイアス発生部40と、3つの電圧発生部42(42−1、42−2、42−3)とを含む。バイアス発生部40は、直流のバイアス電圧を発生する。バイアス発生部40は、300Vから1250V程度の直流電圧を発生する。バイアス発生部40のマイナス端子は、電流測定部36を介して、3つのスイッチング素子210のそれぞれのエミッタに接続される。
【0024】
3つの電圧発生部42のそれぞれは、測定対象として選択された3つのスイッチング素子210のそれぞれに対応して設けられる。3つの電圧発生部42のそれぞれは、バイアス発生部40のプラス側端子と、対応するスイッチング素子210のコレクタとの間に設けられる。
【0025】
そして、3つの電圧発生部42のそれぞれは、互いに120度ずつ位相がずれた同一周波数のサイン波形の変化電圧を発生する。このような電圧印加部34は、選択された3つのスイッチング素子210のそれぞれにおけるエミッタ−コレクタ間に、振幅の1/2の直流電圧により順方向にバイアスがされ、互いに120度位相がずれたサイン波形の変化電圧を印加することができる。
【0026】
電流測定部36は、電圧印加部34により変化電圧が印加されたオフ状態における複数のスイッチング素子210のそれぞれに流れるリーク電流を測定する。この場合において、電流測定部36は、複数のスイッチング素子210のそれぞれに流れるリーク電流のピーク値を測定する。
【0027】
電流測定部36は、一例として、測定対象として選択された3つのスイッチング素子210のそれぞれに対応する3つの電流計44(44−1、44−2、44−3)を含む。3つの電流計44のそれぞれは、対応するスイッチング素子210のエミッタとバイアス発生部40のマイナス側端子との間に流れる電流を測定する。これに代えて、3つの電流計44のそれぞれは、対応する電圧発生部42と対応するスイッチング素子210のコレクタとの間に流れる電流を測定してもよい。
【0028】
そして、3つの電流計44のそれぞれは、電流を測定する機能とともに、検出した電流のピーク値をホールドする機能を有する。これに代えて、3つの電流計44のそれぞれは、対応する電流計44から発生される変化電圧におけるピークタイミングに同期して、電流を測定する機能を有していてもよい。これにより、3つの電流計44のそれぞれは、3つのスイッチング素子210のそれぞれに流れるリーク電流のピーク値を測定することができる。
【0029】
このような測定装置10は、複数のスイッチング素子210のそれぞれに例えばサイン波形等の変化電圧を印加するので、印加開始時および印加終了時に発生するサージ電圧を低減することができる。また、このような測定装置10は、変化電圧を印加するので複数のスイッチング素子210のそれぞれのオフ耐圧が仕様よりも低い場合であっても、ピーク時以外は電圧が低くなるので、過大なリーク電流を流させないことができる。以上により、測定装置10によれば、測定時におけるスイッチング素子210の破損の可能性を低くして、素子破壊によるプローブの破損および破壊物の付着等を無くすことができる。
【0030】
また、このような測定装置10は、複数のスイッチング素子210のそれぞれに、互いに位相を変えた変化電圧を印加するので、複数のスイッチング素子210に同時に過大な電圧を印加させないことができる。これにより、測定装置10によれば、測定時に必要な最大電力量を低く抑えることができる。
【0031】
図4は、本実施形態に係る測定部30によって複数のスイッチング素子210に印加される変化電圧の他の一例を示す。電圧印加部34は、滑らかに立ち上がり、滑らかに立ち下がる波形であれば、サイン波形に代えて他の波形の変化電圧をスイッチング素子210に印加してもよい。
【0032】
例えば、電圧印加部34は、一例として、図4に示されるように、複数のスイッチング素子210のそれぞれに、立ち上がりおよび立下り波形が滑らかであってピークが平坦となった波形の変化電圧を印加してもよい。このような波形の変化電圧を印加した場合にも、測定装置10は、印加開始時および印加終了時に発生するサージ電圧を低減することができる。
【0033】
また、このような波形の変化電圧を印加した場合において、電流測定部36は、変化電圧がピークとなったタイミング、即ち、変化電圧が平坦となった期間において、リーク電流を測定する。これにより、電流測定部36は、ピークとなっている期間が長くなるので、ピーク電圧が印加されたタイミングにおける電流を精度良く測定することができる。これにより、測定装置10は、複数のスイッチング素子210のそれぞれのリーク電流を精度良く測定することができる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0035】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0036】
10 測定装置
20 プローブ
30 測定部
34 電圧印加部
36 電流測定部
40 バイアス発生部
42 電圧発生部
44 電流計
200 ウエハ
210 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに形成された複数のスイッチング素子のリーク電流を測定する測定装置であって、
前記ウエハに形成された複数のスイッチング素子のそれぞれの端子と電気的に接続するプローブと、
前記ウエハに形成された複数のスイッチング素子のそれぞれに前記プローブを介して互いに異なる位相で変化する変化電圧を印加する電圧印加部と、
オフ状態における前記複数のスイッチング素子のそれぞれに流れるリーク電流を測定する電流測定部と
を備える測定装置。
【請求項2】
前記プローブは、前記ウエハに形成された複数のスイッチング素子のうち選択された複数のスイッチング素子のそれぞれの端子と電気的に接続する
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記電圧印加部は、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに互いに異なる位相の同一周期のサイン波形の前記変化電圧を印加する
請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記電流測定部は、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに流れるリーク電流のピーク値を測定する
請求項1から3の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記ウエハに形成された前記複数のスイッチング素子のそれぞれは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタまたはSiCバイポーラトランジスタである
請求項1から4の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記電圧印加部は、選択された3つの絶縁ゲート型バイポーラトランジスタまたはSiCバイポーラトランジスタのそれぞれにおけるエミッタ−コレクタ間に、互いに120度位相がずれたサイン波形の前記変化電圧を印加する
請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記電圧印加部は、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに、ピークが平坦となった波形の前記変化電圧を印加し、
前記電流測定部は、前記変化電圧がピークとなったタイミングにおいて、前記リーク電流を測定する
請求項1または2に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−141199(P2012−141199A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293447(P2010−293447)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】