測定部支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置
【課題】 組立て誤差、作動誤差の影響を最小限とする測定部の支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 基台110の両端に立設された垂直移動手段310に対して、水平移動手段320との連結支持として、片側を固定支持し、他方側を水平移動手段320の長手方向あるいは、長手方向と長手方向と直角方向とにフリーとした支持としたことで、離れて平行に立設する垂直移動手段310に組立て上の誤差があっても、その影響を受けずに水平移動手段320を作動させることができ、組立て上の誤差等が測定結果に悪影響を与えることを抑制できる。
【解決手段】 基台110の両端に立設された垂直移動手段310に対して、水平移動手段320との連結支持として、片側を固定支持し、他方側を水平移動手段320の長手方向あるいは、長手方向と長手方向と直角方向とにフリーとした支持としたことで、離れて平行に立設する垂直移動手段310に組立て上の誤差があっても、その影響を受けずに水平移動手段320を作動させることができ、組立て上の誤差等が測定結果に悪影響を与えることを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定部の支持機構に関するものであり、さらに、その測定部支持機構を備えた薄板の表面形状を測定するための測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶基板等の大型薄板において、その厚さおよび表面形状(例えば、平坦度)等を測定するような場合、従来、例えば、特許文献1に開示されているように、測定するガラス基板を水平に置いて、自重の影響を無くす工夫がされている。この従来技術においては、ガラス基板の下方から、該ガラス基板の単位面積あたりの重量に等しい空気圧力を付与して、ガラス基板を水平に保持しようというものであるが、装置が大掛かりとなり、制御が面倒であり且つ高価となる等、デメリットも多かった。そこで、この被測定物であるガラス基板を今度は垂直に保持して自重の影響を少なくしようとする考え方が提案されている。
【0003】
図10、図11は、本出願人が先に提案している表面形状測定装置について例を示す図であり、図10に示すように、被測定物であるガラス基板100を垂直に配置して、表面形状を測定する装置が考えられている。このような測定装置は、基台110の上にガラス基板100を垂直に保持する垂直保持機構120および表面形状を測定する測定部190および測定部支持する測定部支持機構130を備えている。
【0004】
この測定部支持機構130は、基台110の両端部に立設したエアスライド140、140と、その外側に配設されたねじ送り機構150、150とからなる垂直移動手段160を備えている。さらに、左右両側の垂直移動手段160、160のエアスライド140、140のスライド部170、170には水平移動手段180の両端部がそれぞれ取り付けられている。そして、水平移動手段180に測定部190が装着されている。
測定部190は、水平移動手段180によって水平移動自在に、そして、垂直移動手段160によって上下移動自在になっており、被測定物であるガラス基板100の両面の表面形状を連続して非接触で測定するものである。
【0005】
水平移動手段180は、図11に示されるように、被測定物であるガラス基板100の幅よりも長く、所定の間隔をおいて平行に配置された一対の水平スライドレール部181、181を有し、ガラス基板100の幅方向に延在している。水平スライドレール部181、181には水平方向に移動可能なスライド部材182、182が装着されており、スライド部材182、182の対向面にはそれぞれ測定部(例えば、変位センサ)190、190が取り付けられ、測定部190、190は、ガラス基板100を挟んで対向位置に配設されている。
【0006】
このような2つのスライド機構が平行に装着された水平移動手段180においては、水平スライドレール部181、181の平行度を保つために、同一寸法の連結部材183、183を両端側へ装着して、図11に示すように矩形形状構造に構成されている。
【0007】
そして、水平移動手段180の両端部を、それぞれ垂直移動手段160のスライド部170、170に取り付けるには、水平移動手段180の矩形形状構造の端部を、スライド部170に取り付けられた取付部材184に連結載置する。この連結載置は、例えば、ねじ等により一体に固定される。
【特許文献1】特開平9−126745号公報(段落0005、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図10に示すような装置においては、垂直移動手段160、160は、基台110に対して垂直でかつ平行に固定する必要があるが、組付け上、正確に垂直でかつ平行に固定することは困難であり、誤差が残る。特に、左右の垂直移動手段160、160が互いに逆方向に倒れて組付けられた場合には、垂直移動手段160、160間に配設されている水平移動手段180の矩形形状構造に歪み、または捩れを生じ、測定部90へその影響が与えて、正確な測定ができない問題があり、測定結果の信頼性を低下するおそれがあった。
さらに、組付け上の誤差ばかりでなく、左右両側に配設されたねじ送り機構150、150には、上下動に関して同期誤差が生じるため、前述の組付け誤差と同様に、垂直移動手段160、160間に配設されている水平移動手段180の矩形形状構造に歪み、または捩れを生じ、測定部90へその影響を与えて、正確な測定ができない問題があり、測定結果の信頼性を低下するおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、垂直移動手段の組付け誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響、および左右の垂直移動手段の上下動同期誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響を最小限とするようにして、安定した作動を達成し、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる測定部の支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、基台上に載置された被測定物の両側に垂直方向に立設された垂直移動手段と、該垂直移動手段を構成する垂直スライド部材間に架設された水平移動手段と、該水平移動手段に装着され前記被測定物の表面形状を測定する測定部とを備え、前記水平移動手段の一端部が一方の前記垂直スライド部材に固定支持されると共に、前記水平移動手段の他端部が他方の前記垂直スライド部材に前記水平移動手段の長手方向にフリーになるように支持されることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、水平移動手段の片側が、水平移動手段の長手方向にフリーになるように垂直スライド部材に支持されるため、左右の垂直移動手段の組付け誤差によって垂直移動手段が水平移動手段の長手方向(左右方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、フリー側でその誤差分のずれを吸収して、水平移動手段には無理な力が作用せず、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
さらに、水平移動手段の片側は垂直スライド部材へ固定されているため、その固定された側を基準として固定側の移動に倣ってフリー側の水平移動手段が移動して誤差を吸収する。このため、誤差の吸収をスムーズに行うことができる。両側をフリーとして垂直移動手段に支持すると、水平移動手段の移動の基準点がなくなるため、水平移動手段の位置が不安定となってしまう。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の測定部支持機構であって、前記水平移動手段の他端部は、前記長手方向のフリーに加えて長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、水平移動手段の端部が、前記長手方向のフリーに加えて長手方向に直角方向にもフリーであるため、左右の垂直移動手段の組付け誤差によって水平移動手段の長手方向(左右方向)の傾きに加えて水平移動手段の長手方向に直角方向(前後方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、フリー側でその誤差分のずれが吸収されて、水平移動手段には無理な力が作用せず、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の測定部支持機構であって、前記水平移動手段は、前記被測定物を間に位置して所定間隔で平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動し前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、被測定物を両側から測定するために水平移動手段を平行配置した水平スライドレールを用いて矩形形状構造として、その内部に被測定物を配置する場合において、全体で矩形形状にすることによって生じやすくなる歪みや、捩れを、水平移動手段の片側を、水平移動手段の長手方向にフリーになるように垂直スライド部材に支持することによって、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記測定部支持機構を構成する水平移動手段の他端は、長手方向のフリーに加えて該長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする被測定物である薄板を基台上に垂直に保持する垂直保持機構と、該垂直保持機構によって垂直に保持された薄板の表面全面に亘って走査して前記薄板の表面形状を測定する測定部とを備え、該測定部が請求項1記載の測定部支持機構を用いて支持されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の測定部支持機構を用いて支持された測定部によって薄板の表面形状が測定されるため、薄板の表面形状測定装置の組立て時に生じた垂直移動手段の組付け誤差が残っていて垂直移動手段が水平移動手段の長手方向(左右方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置であって、前記測定部支持機構を構成する水平移動手段の他端は、長手方向のフリーに加えて該長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の測定部支持機構を用いて支持された測定部によって薄板の表面形状が測定されるため、薄板の表面形状測定装置の組立て時に生じた垂直移動手段の組付け誤差が残っていて垂直移動手段が水平移動手段の長手方向(左右方向)に加えて水平移動手段の長手方向に直角方向(前後方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置であって、前記水平移動手段は、所定間隔を隔てて平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動して前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の測定部支持機構を用いて支持された測定部によって薄板の表面形状が測定されるため、被測定物を両側から測定するために水平移動手段を平行配置した水平スライドレールを用いて矩形形状構造として、その内部に被測定物を配置する場合において、全体で矩形形状にすることによって生じやすくなる歪みや、捩れを、水平移動手段の片側を、水平移動手段の長手方向にフリーになるように垂直スライド部材に支持することによって、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の測定部支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置によれば、垂直移動手段の組付け誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響、および左右の垂直移動手段の上下動同期誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響を最小限とすることができ、安定した作動を達成し、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる測定部の支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
参照する図面において、図1は、本発明に係る測定部支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置の全体を示す正面図であり、図2は、図1のA矢視図である。また、図3は、図2の拡大図であり、図4は、水平移動手段および水平移動手段と垂直移動手段との連結部分の拡大図である。また、図5(a)、図6は、図4のB部拡大断面図であり、図5(b)は、球面軸受の概略説明図である。図7、図8は、図4のC部拡大断面図である。図9は、図4の部分の斜視図である。なお、従来の装置(図10、図11)において説明した要素と同一要素について、同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
図1に示すように、液晶基板等のガラス基板100(薄板)の表面形状測定装置1は、ガラス基板100を基台110の上に垂直に保持する垂直保持機構200と、ガラス基板の表面形状を測定する測定部330と、測定部330を支持する測定部支持機構300とから構成されている。
【0026】
垂直保持機構200は、下部保持部210と上部保持部220とから構成されている。下部保持部210は、基台110の略中央部に間隔を置いて2箇所設けられた下部保持部材211、211から構成され、上部保持部220は、基台110の略中央部に立設された柱状保持本体230に設けられている。柱状保持本体230の内部には、上部保持部用のねじ送り機構240が内蔵され、そのねじ送り機構240と連結した上部保持用スライド部250の下部に上部保持部220が装着されている。
【0027】
上部保持部220は、上部保持部用のねじ送り機構240によって上下動の移動のみ自由であり、下部保持部210は、下部保持部材211、211の間隔が横方向に調整可能になっている(図示せず)。そして、上部保持部220は、常に中央に位置するように下部保持部材211、211の間隔が調整される。すなわち、下部保持部材211、211は、近づく方向、あるいは遠ざかる方向へ移動可能に構成されている。
【0028】
測定部支持機構300は、基台110上の両端側に立設された垂直移動手段310、310と、これら垂直移動手段310、310の間に架設された水平移動手段320と、この水平移動手段320に装着された測定部330から構成されている。垂直移動手段310は、エアスライド340と垂直駆動用ねじ送り機構350とからなり、垂直駆動用ねじ送り機構350は、基台110上に設けた基台ねじ送り機構351を介してモータ等の駆動手段352へ連結されている。この駆動手段352の駆動によって、左右両側の垂直移動手段310、310の上下動は同期して移動するように構成されている。
【0029】
水平移動手段320は、その両端部を垂直スライド部材360、360に連結して橋状に形成されており、また、水平移動手段320は、図2に示すように、水平方向に所定の間隔をおいて平行に2本の水平スライドレール370、370を有し、それぞれの水平スライドレール370、370には図示しないリニアモータにより移動自在な水平スライド部材380、380が装着され、その各水平スライド部材には測定部330を構成する変位センサ330a、330bが取り付けられている。
測定する際は、変位センサ330a、330bは、ガラス基板100の表裏の両面側に位置し、非接触で両面の形状測定が可能なようになっている。
【0030】
このような測定部支持機構300によれば、測定する際に、駆動手段352が駆動することで、左右の垂直移動手段310、310が同期して作動して、垂直スライド部材360が矢印Z方向(図1参照)に上下動する。さらに、左右の垂直スライド部材360、360に保持された水平移動手段320が作動して変位センサ330a、330bは矢印X方向(図1参照)に左右に移動する。そして、ガラス基板100の表裏両面の全面に亘って変位センサ330a、330bを走査でき、その表面形状を測定することができる。
【0031】
そして、この構造において、垂直駆動用ねじ送り機構350は、エアスライド340の内側(ガラス基板100側)に配置されている。また、エアスライド340の垂直スライド部材360に水平スライドレール370の端部を連結するために受け板部390a、390bが設けられている。この受け板部390a、390bは、一端部が垂直スライド部材360の側面に取り付けられ、他端部が水平スライドレール370の端部下面に取り付けられ、さらに中央部が垂直駆動用ねじ送り機構350(ボールねじによるねじ送り機構)の送りナット400によって支持されている。
送りナット400と受け板部390a、390bとは送りナットフローティング機構を介して連結され、受け板部390a、390bに加わる測定部側の重量が直接ねじ送り機構側へモーメント荷重として作用しないように連結構成されている。
【0032】
更に、図2に示す水平移動手段320は、図3の拡大図、または図9の斜視図に示すように、2本の水平スライドレール370、370を所定間隔に支持するスペーサ(連結部材)500、500が、その両端部に設けられ、水平スライドレール370、370とスペーサ500、500で矩形形状構造を構成している。
そして、図4に示すように、水平スライドレール370の両端部はそれぞれ、受け板部390a、390bで支持されている。水平スライドレール370の右側端部は、受け板部390aに対して固定結合構造となっており、図4のB部分の詳細を図5、図6に示す。また、左側端部は、受け板部390bに対してフリー結合構造となっており、図4のC部分の詳細を図7、図8に示す。
図5(a)、図7は、水平スライドレール370の長手方向の断面図を示し、図6、図8は、水平スライドレール370の長手方向に直角方向の断面図を示す。
【0033】
まず、固定結合構造について、図5(a)、図5(b)、図6を参照して説明する。
図6に示すように、水平スライドレール370、370の端部およびスペーサ500の下面には、板部材510が配置されて水平スライドレール370側へねじ等(図示しない)で固定されている。板部材510の下方には、受け板部390aが設けられ、板部材510の下面と受け板部390aが板の上面との間には、球面軸受520が2箇所介在配置され、ねじ530によって受け板部390aが板部材510に対して隙間を有して装着されている。即ち図5(b)に示すように、球面軸受520の2箇所で板部材510を支持している。
球面軸受520の概略構造を、図5(b)に示す。この球面軸受520を設けることによって、水平スライドレール370と受け板部390aとの間に、多少の歪みがあっても吸収できるため、組付け性を向上することができる。
【0034】
一方、フリー結合構造について、図7、図8を参照して説明する。
図8に示すように、水平スライドレール370、370およびスペーサ500の下面には、板部材540が配置されて水平スライドレール370側へねじ等(図示しない)で固定されている。板部材540の下方には、受け板部390bが設けられ、板部材540の下面と受け板部390bの上面との間には、球面軸受550が1箇所介在配置されている。この球面軸受550をスリーブ560を介してねじ570によって取り付けることによって、受け板部390bが板部材540との間に隙間を有して装着される。前述した図5(b)と同様に球面軸受550の1箇所で板部材540を支えており、反対側の球面軸受520、520の2箇所と、計3箇所で水平移動手段320を支持していることになる。球面軸受550の位置は、反対側に位置する固定結合構造の球面軸受520、520の2箇所の中間に位置されている。
スリーブ560の外周部には、フローティング機構600が装着され、図3内に示した矢印X−Yで示すように水平な縦横方向(長手方向とそれに直角方向)にフローティング(摺動)可能に構成されている。
【0035】
フローティング機構600は、第1ベアリングガイド610と第2ベアリングガイド620とを上下に有して構成され、第1ベアリングガイド610と第2ベアリングガイド620との間には、スリーブ560に固定された第1支持部材650が配設され、第2ベアリングガイド620の下方には、受け板部390bに固定された第2支持部材660が配設されている。第1ベアリングガイド610は、受け板部390bに対して、水平スライドレール370を図7に矢印Fで示す方向へ動き得るように支持し、第1ベアリングガイド610の下方に配置された第2ベアリングガイド620は、第1ベアリングガイド610の動きと直交する図8に矢印G方向に動き得るように水平スライドレール370を支持している。
【0036】
すなわち、第1ベアリングガイド610は、インナレース611とアウターレース612とから構成され(図8参照)、インナレース611は、スリーブ560に固定され、スリーブ560を介して水平スライドレール370側に固定される。また、アウターレース612は、受け板部390b側に固定され、図7に矢印Fで示す方向への動きを可能にしている。
同様に、第2ベアリングガイド620(図7参照)も、インナレース621とアウターレース622とから構成され、インナレース621は、第2支持部材660に固定され、第2支持部材660を介して受け板部390b側に固定されている。アウターレース622は、第1支持部材650に固定され、第1支持部材650を介してスリーブ560に固定され、スリーブ560を介して水平スライドレール370側に固定されている。これによって、図8に矢印Gで示す方向への動きを可能にしている。
【0037】
すなわち、受け板部390a、390bと水平スライドレール370とのフリー側の結合構造は、受け板部390bが、第1ベアリングガイド610および第2ベアリングガイド620を介して、スリーブ560に連結し、スリーブ560が、球面軸受550を介して水平スライドレール370に結合している構造となっている。
【0038】
以上のように、本発明の実施の形態によると、第1ベアリングガイド610および第2ベアリングガイド620からなるフローティング機構600によって、水平スライドレール370は受け板部390bに対して水平方向に摺動可能となるため、垂直移動手段310の組付け誤差、または、左右の垂直移動手段の同期作動誤差、例えば、左右の移動量、移動開始時期等の誤差によって水平移動手段320に作用する歪みや、捩れを吸収できる。その結果、測定部330へ悪影響を与えないようにすることができ、作動精度、測定精度を向上することができる。
また、球面軸受550の構成によって受け板部390bに対する水平スライドレール370の多少の歪みも吸収することができ組付け性を向上することができる。
【0039】
さらに、水平移動手段320の片側は垂直スライド部材360側へ固定される固定接合構造であるため、その固定接合構造側の移動に倣ってフリー結合構造側の水平移動手段320が移動して誤差を吸収する。このため、誤差の吸収をスムーズに行うことができる。
仮に、水平移動手段320の両側をフリー結合構造とすると、水平移動手段320の移動の基準点がなくなり、水平移動手段320の位置が不安定となってしまい、誤差吸収ばかりでなく通常の測定自体においても不安定となるおそれがあり、測定精度自体に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施の形態ではそのようなことはなく安定した誤差の吸収をすることができる。
【0040】
なお、フローティング機構600として、図3の左方部分に矢印X−Yで示すように水平な縦横方向(長手方向とそれに直角方向)にフローティング(摺動)可能に構成されているが、X方向(長手方向)のみのフローティング(摺動)でも十分に実用性を有するものである。
前述した実施例においては、X方向、Y方向を夫夫別個に構成しているが、例えば、従来から市販されているようなX−Yテーブルのような装置を組み込んで本願のように構成することも可能であり、それにより、X、Y両方向をモータ駆動させることができ、フローティング動作を積極的に制御することが可能である。
【0041】
また、受け板部390a、390bと水平スライドレール370との結合に、球面軸受520、550を用いて組付け性を向上させているが、部品精度によっては、不要とすることができる。
【0042】
また、垂直移動手段310および水平移動手段320として、エアスライドの例を示したが、それに限定されることない。また、垂直移動の駆動手段として垂直駆動用ねじ送り機構350(ボールねじによるねじ送り機構)を説明したが、それに限定されるものではない。また、水平移動手段320としてリニアモータとして説明したがそれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
基台両端に立設された垂直移動手段に対して、水平移動手段との連結支持として、片側を固定支持し、他方側を水平移動手段の長手方向あるいは、長手方向と長手方向と直角方向とにフリーとした支持としたことで、離れて平行に立設する垂直移動手段に組立て上の誤差があっても、その影響を受けずに水平移動手段を作動させることができるようにしたから、組立て上の誤差等が測定結果に悪影響を与えることなく、精度よく薄板の表面形状を測定できる結果、各種薄板の表面形状測定に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る測定部支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置の全体を示す正面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】水平移動手段および水平移動手段と垂直移動手段との連結部分の拡大図である。
【図5】(a)は、図4のB部拡大断面図であり、(b)は、球面軸受の概略説明図である。
【図6】図4のB部拡大断面図である。
【図7】図4のC部拡大断面図である。
【図8】図4のC部拡大断面図である。
【図9】図4の部分の斜視図である。
【図10】従来の薄板の表面形状測定装置の全体を示す正面図である。
【図11】従来の薄板の表面形状測定装置の水平移動手段の部分の平面視である。
【符号の説明】
【0045】
1 表面形状測定装置
100 ガラス基板(薄板)
110 基台
200 垂直保持機構
300 測定部支持機構
310 垂直移動手段
320 水平移動手段
330 測定部
350 垂直駆動用ねじ送り機構
360 垂直スライド部材
370 水平スライドレール
380 水平スライド部材
500 スペーサ(連結部材)
600 フローティング機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定部の支持機構に関するものであり、さらに、その測定部支持機構を備えた薄板の表面形状を測定するための測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶基板等の大型薄板において、その厚さおよび表面形状(例えば、平坦度)等を測定するような場合、従来、例えば、特許文献1に開示されているように、測定するガラス基板を水平に置いて、自重の影響を無くす工夫がされている。この従来技術においては、ガラス基板の下方から、該ガラス基板の単位面積あたりの重量に等しい空気圧力を付与して、ガラス基板を水平に保持しようというものであるが、装置が大掛かりとなり、制御が面倒であり且つ高価となる等、デメリットも多かった。そこで、この被測定物であるガラス基板を今度は垂直に保持して自重の影響を少なくしようとする考え方が提案されている。
【0003】
図10、図11は、本出願人が先に提案している表面形状測定装置について例を示す図であり、図10に示すように、被測定物であるガラス基板100を垂直に配置して、表面形状を測定する装置が考えられている。このような測定装置は、基台110の上にガラス基板100を垂直に保持する垂直保持機構120および表面形状を測定する測定部190および測定部支持する測定部支持機構130を備えている。
【0004】
この測定部支持機構130は、基台110の両端部に立設したエアスライド140、140と、その外側に配設されたねじ送り機構150、150とからなる垂直移動手段160を備えている。さらに、左右両側の垂直移動手段160、160のエアスライド140、140のスライド部170、170には水平移動手段180の両端部がそれぞれ取り付けられている。そして、水平移動手段180に測定部190が装着されている。
測定部190は、水平移動手段180によって水平移動自在に、そして、垂直移動手段160によって上下移動自在になっており、被測定物であるガラス基板100の両面の表面形状を連続して非接触で測定するものである。
【0005】
水平移動手段180は、図11に示されるように、被測定物であるガラス基板100の幅よりも長く、所定の間隔をおいて平行に配置された一対の水平スライドレール部181、181を有し、ガラス基板100の幅方向に延在している。水平スライドレール部181、181には水平方向に移動可能なスライド部材182、182が装着されており、スライド部材182、182の対向面にはそれぞれ測定部(例えば、変位センサ)190、190が取り付けられ、測定部190、190は、ガラス基板100を挟んで対向位置に配設されている。
【0006】
このような2つのスライド機構が平行に装着された水平移動手段180においては、水平スライドレール部181、181の平行度を保つために、同一寸法の連結部材183、183を両端側へ装着して、図11に示すように矩形形状構造に構成されている。
【0007】
そして、水平移動手段180の両端部を、それぞれ垂直移動手段160のスライド部170、170に取り付けるには、水平移動手段180の矩形形状構造の端部を、スライド部170に取り付けられた取付部材184に連結載置する。この連結載置は、例えば、ねじ等により一体に固定される。
【特許文献1】特開平9−126745号公報(段落0005、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図10に示すような装置においては、垂直移動手段160、160は、基台110に対して垂直でかつ平行に固定する必要があるが、組付け上、正確に垂直でかつ平行に固定することは困難であり、誤差が残る。特に、左右の垂直移動手段160、160が互いに逆方向に倒れて組付けられた場合には、垂直移動手段160、160間に配設されている水平移動手段180の矩形形状構造に歪み、または捩れを生じ、測定部90へその影響が与えて、正確な測定ができない問題があり、測定結果の信頼性を低下するおそれがあった。
さらに、組付け上の誤差ばかりでなく、左右両側に配設されたねじ送り機構150、150には、上下動に関して同期誤差が生じるため、前述の組付け誤差と同様に、垂直移動手段160、160間に配設されている水平移動手段180の矩形形状構造に歪み、または捩れを生じ、測定部90へその影響を与えて、正確な測定ができない問題があり、測定結果の信頼性を低下するおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、垂直移動手段の組付け誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響、および左右の垂直移動手段の上下動同期誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響を最小限とするようにして、安定した作動を達成し、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる測定部の支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、基台上に載置された被測定物の両側に垂直方向に立設された垂直移動手段と、該垂直移動手段を構成する垂直スライド部材間に架設された水平移動手段と、該水平移動手段に装着され前記被測定物の表面形状を測定する測定部とを備え、前記水平移動手段の一端部が一方の前記垂直スライド部材に固定支持されると共に、前記水平移動手段の他端部が他方の前記垂直スライド部材に前記水平移動手段の長手方向にフリーになるように支持されることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、水平移動手段の片側が、水平移動手段の長手方向にフリーになるように垂直スライド部材に支持されるため、左右の垂直移動手段の組付け誤差によって垂直移動手段が水平移動手段の長手方向(左右方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、フリー側でその誤差分のずれを吸収して、水平移動手段には無理な力が作用せず、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
さらに、水平移動手段の片側は垂直スライド部材へ固定されているため、その固定された側を基準として固定側の移動に倣ってフリー側の水平移動手段が移動して誤差を吸収する。このため、誤差の吸収をスムーズに行うことができる。両側をフリーとして垂直移動手段に支持すると、水平移動手段の移動の基準点がなくなるため、水平移動手段の位置が不安定となってしまう。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の測定部支持機構であって、前記水平移動手段の他端部は、前記長手方向のフリーに加えて長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、水平移動手段の端部が、前記長手方向のフリーに加えて長手方向に直角方向にもフリーであるため、左右の垂直移動手段の組付け誤差によって水平移動手段の長手方向(左右方向)の傾きに加えて水平移動手段の長手方向に直角方向(前後方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、フリー側でその誤差分のずれが吸収されて、水平移動手段には無理な力が作用せず、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の測定部支持機構であって、前記水平移動手段は、前記被測定物を間に位置して所定間隔で平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動し前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、被測定物を両側から測定するために水平移動手段を平行配置した水平スライドレールを用いて矩形形状構造として、その内部に被測定物を配置する場合において、全体で矩形形状にすることによって生じやすくなる歪みや、捩れを、水平移動手段の片側を、水平移動手段の長手方向にフリーになるように垂直スライド部材に支持することによって、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記測定部支持機構を構成する水平移動手段の他端は、長手方向のフリーに加えて該長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする被測定物である薄板を基台上に垂直に保持する垂直保持機構と、該垂直保持機構によって垂直に保持された薄板の表面全面に亘って走査して前記薄板の表面形状を測定する測定部とを備え、該測定部が請求項1記載の測定部支持機構を用いて支持されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の測定部支持機構を用いて支持された測定部によって薄板の表面形状が測定されるため、薄板の表面形状測定装置の組立て時に生じた垂直移動手段の組付け誤差が残っていて垂直移動手段が水平移動手段の長手方向(左右方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置であって、前記測定部支持機構を構成する水平移動手段の他端は、長手方向のフリーに加えて該長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の測定部支持機構を用いて支持された測定部によって薄板の表面形状が測定されるため、薄板の表面形状測定装置の組立て時に生じた垂直移動手段の組付け誤差が残っていて垂直移動手段が水平移動手段の長手方向(左右方向)に加えて水平移動手段の長手方向に直角方向(前後方向)に傾いていても、または左右の垂直移動手段の上下動同期誤差が生じても、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置であって、前記水平移動手段は、所定間隔を隔てて平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動して前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の測定部支持機構を用いて支持された測定部によって薄板の表面形状が測定されるため、被測定物を両側から測定するために水平移動手段を平行配置した水平スライドレールを用いて矩形形状構造として、その内部に被測定物を配置する場合において、全体で矩形形状にすることによって生じやすくなる歪みや、捩れを、水平移動手段の片側を、水平移動手段の長手方向にフリーになるように垂直スライド部材に支持することによって、歪みや、捩れの発生が防止されて、安定した作動を達成することができ、その結果、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の測定部支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置によれば、垂直移動手段の組付け誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響、および左右の垂直移動手段の上下動同期誤差によって生ずる測定結果へ及ぼす悪影響を最小限とすることができ、安定した作動を達成し、測定精度を向上し、測定結果の信頼性を向上することができる測定部の支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
参照する図面において、図1は、本発明に係る測定部支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置の全体を示す正面図であり、図2は、図1のA矢視図である。また、図3は、図2の拡大図であり、図4は、水平移動手段および水平移動手段と垂直移動手段との連結部分の拡大図である。また、図5(a)、図6は、図4のB部拡大断面図であり、図5(b)は、球面軸受の概略説明図である。図7、図8は、図4のC部拡大断面図である。図9は、図4の部分の斜視図である。なお、従来の装置(図10、図11)において説明した要素と同一要素について、同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
図1に示すように、液晶基板等のガラス基板100(薄板)の表面形状測定装置1は、ガラス基板100を基台110の上に垂直に保持する垂直保持機構200と、ガラス基板の表面形状を測定する測定部330と、測定部330を支持する測定部支持機構300とから構成されている。
【0026】
垂直保持機構200は、下部保持部210と上部保持部220とから構成されている。下部保持部210は、基台110の略中央部に間隔を置いて2箇所設けられた下部保持部材211、211から構成され、上部保持部220は、基台110の略中央部に立設された柱状保持本体230に設けられている。柱状保持本体230の内部には、上部保持部用のねじ送り機構240が内蔵され、そのねじ送り機構240と連結した上部保持用スライド部250の下部に上部保持部220が装着されている。
【0027】
上部保持部220は、上部保持部用のねじ送り機構240によって上下動の移動のみ自由であり、下部保持部210は、下部保持部材211、211の間隔が横方向に調整可能になっている(図示せず)。そして、上部保持部220は、常に中央に位置するように下部保持部材211、211の間隔が調整される。すなわち、下部保持部材211、211は、近づく方向、あるいは遠ざかる方向へ移動可能に構成されている。
【0028】
測定部支持機構300は、基台110上の両端側に立設された垂直移動手段310、310と、これら垂直移動手段310、310の間に架設された水平移動手段320と、この水平移動手段320に装着された測定部330から構成されている。垂直移動手段310は、エアスライド340と垂直駆動用ねじ送り機構350とからなり、垂直駆動用ねじ送り機構350は、基台110上に設けた基台ねじ送り機構351を介してモータ等の駆動手段352へ連結されている。この駆動手段352の駆動によって、左右両側の垂直移動手段310、310の上下動は同期して移動するように構成されている。
【0029】
水平移動手段320は、その両端部を垂直スライド部材360、360に連結して橋状に形成されており、また、水平移動手段320は、図2に示すように、水平方向に所定の間隔をおいて平行に2本の水平スライドレール370、370を有し、それぞれの水平スライドレール370、370には図示しないリニアモータにより移動自在な水平スライド部材380、380が装着され、その各水平スライド部材には測定部330を構成する変位センサ330a、330bが取り付けられている。
測定する際は、変位センサ330a、330bは、ガラス基板100の表裏の両面側に位置し、非接触で両面の形状測定が可能なようになっている。
【0030】
このような測定部支持機構300によれば、測定する際に、駆動手段352が駆動することで、左右の垂直移動手段310、310が同期して作動して、垂直スライド部材360が矢印Z方向(図1参照)に上下動する。さらに、左右の垂直スライド部材360、360に保持された水平移動手段320が作動して変位センサ330a、330bは矢印X方向(図1参照)に左右に移動する。そして、ガラス基板100の表裏両面の全面に亘って変位センサ330a、330bを走査でき、その表面形状を測定することができる。
【0031】
そして、この構造において、垂直駆動用ねじ送り機構350は、エアスライド340の内側(ガラス基板100側)に配置されている。また、エアスライド340の垂直スライド部材360に水平スライドレール370の端部を連結するために受け板部390a、390bが設けられている。この受け板部390a、390bは、一端部が垂直スライド部材360の側面に取り付けられ、他端部が水平スライドレール370の端部下面に取り付けられ、さらに中央部が垂直駆動用ねじ送り機構350(ボールねじによるねじ送り機構)の送りナット400によって支持されている。
送りナット400と受け板部390a、390bとは送りナットフローティング機構を介して連結され、受け板部390a、390bに加わる測定部側の重量が直接ねじ送り機構側へモーメント荷重として作用しないように連結構成されている。
【0032】
更に、図2に示す水平移動手段320は、図3の拡大図、または図9の斜視図に示すように、2本の水平スライドレール370、370を所定間隔に支持するスペーサ(連結部材)500、500が、その両端部に設けられ、水平スライドレール370、370とスペーサ500、500で矩形形状構造を構成している。
そして、図4に示すように、水平スライドレール370の両端部はそれぞれ、受け板部390a、390bで支持されている。水平スライドレール370の右側端部は、受け板部390aに対して固定結合構造となっており、図4のB部分の詳細を図5、図6に示す。また、左側端部は、受け板部390bに対してフリー結合構造となっており、図4のC部分の詳細を図7、図8に示す。
図5(a)、図7は、水平スライドレール370の長手方向の断面図を示し、図6、図8は、水平スライドレール370の長手方向に直角方向の断面図を示す。
【0033】
まず、固定結合構造について、図5(a)、図5(b)、図6を参照して説明する。
図6に示すように、水平スライドレール370、370の端部およびスペーサ500の下面には、板部材510が配置されて水平スライドレール370側へねじ等(図示しない)で固定されている。板部材510の下方には、受け板部390aが設けられ、板部材510の下面と受け板部390aが板の上面との間には、球面軸受520が2箇所介在配置され、ねじ530によって受け板部390aが板部材510に対して隙間を有して装着されている。即ち図5(b)に示すように、球面軸受520の2箇所で板部材510を支持している。
球面軸受520の概略構造を、図5(b)に示す。この球面軸受520を設けることによって、水平スライドレール370と受け板部390aとの間に、多少の歪みがあっても吸収できるため、組付け性を向上することができる。
【0034】
一方、フリー結合構造について、図7、図8を参照して説明する。
図8に示すように、水平スライドレール370、370およびスペーサ500の下面には、板部材540が配置されて水平スライドレール370側へねじ等(図示しない)で固定されている。板部材540の下方には、受け板部390bが設けられ、板部材540の下面と受け板部390bの上面との間には、球面軸受550が1箇所介在配置されている。この球面軸受550をスリーブ560を介してねじ570によって取り付けることによって、受け板部390bが板部材540との間に隙間を有して装着される。前述した図5(b)と同様に球面軸受550の1箇所で板部材540を支えており、反対側の球面軸受520、520の2箇所と、計3箇所で水平移動手段320を支持していることになる。球面軸受550の位置は、反対側に位置する固定結合構造の球面軸受520、520の2箇所の中間に位置されている。
スリーブ560の外周部には、フローティング機構600が装着され、図3内に示した矢印X−Yで示すように水平な縦横方向(長手方向とそれに直角方向)にフローティング(摺動)可能に構成されている。
【0035】
フローティング機構600は、第1ベアリングガイド610と第2ベアリングガイド620とを上下に有して構成され、第1ベアリングガイド610と第2ベアリングガイド620との間には、スリーブ560に固定された第1支持部材650が配設され、第2ベアリングガイド620の下方には、受け板部390bに固定された第2支持部材660が配設されている。第1ベアリングガイド610は、受け板部390bに対して、水平スライドレール370を図7に矢印Fで示す方向へ動き得るように支持し、第1ベアリングガイド610の下方に配置された第2ベアリングガイド620は、第1ベアリングガイド610の動きと直交する図8に矢印G方向に動き得るように水平スライドレール370を支持している。
【0036】
すなわち、第1ベアリングガイド610は、インナレース611とアウターレース612とから構成され(図8参照)、インナレース611は、スリーブ560に固定され、スリーブ560を介して水平スライドレール370側に固定される。また、アウターレース612は、受け板部390b側に固定され、図7に矢印Fで示す方向への動きを可能にしている。
同様に、第2ベアリングガイド620(図7参照)も、インナレース621とアウターレース622とから構成され、インナレース621は、第2支持部材660に固定され、第2支持部材660を介して受け板部390b側に固定されている。アウターレース622は、第1支持部材650に固定され、第1支持部材650を介してスリーブ560に固定され、スリーブ560を介して水平スライドレール370側に固定されている。これによって、図8に矢印Gで示す方向への動きを可能にしている。
【0037】
すなわち、受け板部390a、390bと水平スライドレール370とのフリー側の結合構造は、受け板部390bが、第1ベアリングガイド610および第2ベアリングガイド620を介して、スリーブ560に連結し、スリーブ560が、球面軸受550を介して水平スライドレール370に結合している構造となっている。
【0038】
以上のように、本発明の実施の形態によると、第1ベアリングガイド610および第2ベアリングガイド620からなるフローティング機構600によって、水平スライドレール370は受け板部390bに対して水平方向に摺動可能となるため、垂直移動手段310の組付け誤差、または、左右の垂直移動手段の同期作動誤差、例えば、左右の移動量、移動開始時期等の誤差によって水平移動手段320に作用する歪みや、捩れを吸収できる。その結果、測定部330へ悪影響を与えないようにすることができ、作動精度、測定精度を向上することができる。
また、球面軸受550の構成によって受け板部390bに対する水平スライドレール370の多少の歪みも吸収することができ組付け性を向上することができる。
【0039】
さらに、水平移動手段320の片側は垂直スライド部材360側へ固定される固定接合構造であるため、その固定接合構造側の移動に倣ってフリー結合構造側の水平移動手段320が移動して誤差を吸収する。このため、誤差の吸収をスムーズに行うことができる。
仮に、水平移動手段320の両側をフリー結合構造とすると、水平移動手段320の移動の基準点がなくなり、水平移動手段320の位置が不安定となってしまい、誤差吸収ばかりでなく通常の測定自体においても不安定となるおそれがあり、測定精度自体に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施の形態ではそのようなことはなく安定した誤差の吸収をすることができる。
【0040】
なお、フローティング機構600として、図3の左方部分に矢印X−Yで示すように水平な縦横方向(長手方向とそれに直角方向)にフローティング(摺動)可能に構成されているが、X方向(長手方向)のみのフローティング(摺動)でも十分に実用性を有するものである。
前述した実施例においては、X方向、Y方向を夫夫別個に構成しているが、例えば、従来から市販されているようなX−Yテーブルのような装置を組み込んで本願のように構成することも可能であり、それにより、X、Y両方向をモータ駆動させることができ、フローティング動作を積極的に制御することが可能である。
【0041】
また、受け板部390a、390bと水平スライドレール370との結合に、球面軸受520、550を用いて組付け性を向上させているが、部品精度によっては、不要とすることができる。
【0042】
また、垂直移動手段310および水平移動手段320として、エアスライドの例を示したが、それに限定されることない。また、垂直移動の駆動手段として垂直駆動用ねじ送り機構350(ボールねじによるねじ送り機構)を説明したが、それに限定されるものではない。また、水平移動手段320としてリニアモータとして説明したがそれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
基台両端に立設された垂直移動手段に対して、水平移動手段との連結支持として、片側を固定支持し、他方側を水平移動手段の長手方向あるいは、長手方向と長手方向と直角方向とにフリーとした支持としたことで、離れて平行に立設する垂直移動手段に組立て上の誤差があっても、その影響を受けずに水平移動手段を作動させることができるようにしたから、組立て上の誤差等が測定結果に悪影響を与えることなく、精度よく薄板の表面形状を測定できる結果、各種薄板の表面形状測定に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る測定部支持機構およびそれを備えた薄板の表面形状測定装置の全体を示す正面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】水平移動手段および水平移動手段と垂直移動手段との連結部分の拡大図である。
【図5】(a)は、図4のB部拡大断面図であり、(b)は、球面軸受の概略説明図である。
【図6】図4のB部拡大断面図である。
【図7】図4のC部拡大断面図である。
【図8】図4のC部拡大断面図である。
【図9】図4の部分の斜視図である。
【図10】従来の薄板の表面形状測定装置の全体を示す正面図である。
【図11】従来の薄板の表面形状測定装置の水平移動手段の部分の平面視である。
【符号の説明】
【0045】
1 表面形状測定装置
100 ガラス基板(薄板)
110 基台
200 垂直保持機構
300 測定部支持機構
310 垂直移動手段
320 水平移動手段
330 測定部
350 垂直駆動用ねじ送り機構
360 垂直スライド部材
370 水平スライドレール
380 水平スライド部材
500 スペーサ(連結部材)
600 フローティング機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に載置された被測定物の両側に垂直方向に立設された垂直移動手段と、該垂直移動手段を構成する垂直スライド部材間に架設された水平移動手段と、該水平移動手段に装着され前記被測定物の表面形状を測定する測定部とを備え、
前記水平移動手段の一端部が一方の前記垂直スライド部材に固定支持されると共に、前記水平移動手段の他端部が他方の前記垂直スライド部材に前記水平移動手段の長手方向にフリーになるように支持されることを特徴とする測定部支持機構。
【請求項2】
前記水平移動手段の他端部は、前記長手方向のフリーに加えて長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする請求項1に記載の測定部支持機構。
【請求項3】
前記水平移動手段は、前記被測定物を間に位置して所定間隔で平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動し前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定部支持機構。
【請求項4】
被測定物である薄板を基台上に垂直に保持する垂直保持機構と、該垂直保持機構によって垂直に保持された薄板の表面全面に亘って走査して前記薄板の表面形状を測定する測定部とを備え、該測定部が請求項1記載の測定部支持機構を用いて支持されていることを特徴とする薄板の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記測定部支持機構を構成する水平移動手段の他端は、長手方向のフリーに加えて該長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記水平移動手段は、所定間隔を隔てて平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動して前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置。
【請求項1】
基台上に載置された被測定物の両側に垂直方向に立設された垂直移動手段と、該垂直移動手段を構成する垂直スライド部材間に架設された水平移動手段と、該水平移動手段に装着され前記被測定物の表面形状を測定する測定部とを備え、
前記水平移動手段の一端部が一方の前記垂直スライド部材に固定支持されると共に、前記水平移動手段の他端部が他方の前記垂直スライド部材に前記水平移動手段の長手方向にフリーになるように支持されることを特徴とする測定部支持機構。
【請求項2】
前記水平移動手段の他端部は、前記長手方向のフリーに加えて長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする請求項1に記載の測定部支持機構。
【請求項3】
前記水平移動手段は、前記被測定物を間に位置して所定間隔で平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動し前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定部支持機構。
【請求項4】
被測定物である薄板を基台上に垂直に保持する垂直保持機構と、該垂直保持機構によって垂直に保持された薄板の表面全面に亘って走査して前記薄板の表面形状を測定する測定部とを備え、該測定部が請求項1記載の測定部支持機構を用いて支持されていることを特徴とする薄板の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記測定部支持機構を構成する水平移動手段の他端は、長手方向のフリーに加えて該長手方向に直角方向にもフリーであることを特徴とする請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記水平移動手段は、所定間隔を隔てて平行に配置された水平スライドレールと、該水平スライドレールに沿って移動して前記測定部が装着される水平スライド部材とを有し、前記水平スライドレールの両端部には前記水平スライドレールを所定間隔に支持する連結部材が設けられ、前記水平スライドレールと前記連結部材によって略矩形形状に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の薄板の表面形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−308296(P2006−308296A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127574(P2005−127574)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000170853)黒田精工株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000170853)黒田精工株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
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