説明

測量器械設置用台

【課題】
地中に推進管を埋設する推進工法において、掘進機の位置や推進管の埋設状況をリアルタイムできわめて迅速に計測することができる測量器械設置用台を提供する。
【解決手段】
測量器械Bが搭載された台本体2とその両側端部に垂直に立設された吊りアーム3,3と当該吊りアーム3,3の上端部にそれぞれ水平に突設された回転軸4,4とを備えて構成する。台本体2には重り5、重り調整機構6および気泡管7をそれぞれ取り付け、回転軸4,4にはベアリング8、ロータリーダンパー9および電磁ブレーキ10をそれぞれ取り付ける。台本体2は測量器械Bを脱着自在に固定できるように構成する。吊りアーム3は縦長の逆V字形をなす枠状に形成し、回転軸4は各吊りアーム3の上端部に鋼管Aの推進方向と直交する方向に水平に突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は測量器械設置用台に関し、地中に推進管を埋設する推進工法において、掘進機の位置や推進管の埋設状況を計測するための光学式測量器械を推進管内に設置する目的で用いられる。
【背景技術】
【0002】
トンネルの構築工法として、順次継ぎ足された推進管列の先端に設置された掘進機で前方の地盤を切削しながら、発進立坑に設置された元押しジャッキによって推進管列の後端を押圧することにより推進管を地中に押し込んで地中に所定の管路を構築する推進工法が知られている。
【0003】
本工法においては、特に掘進機を計画線通りに推進させ、かつ推進管を計画線通りに埋設するため、推進施工と並行して掘進機の位置や推進管の埋設状況をリアルタイムで計測することにより管理されている。
【0004】
この種の計測方法として、これまで発進立坑内に設けられた基準点上に測量器械を据え付け、計画線の方向を決め、上記した測量器械によって掘進機や推進管内に設置されたターゲットを視準することによって、掘進機や推進管のズレを計測する方法が一般に用いられていた。
【0005】
しかし、近年特に、長距離・急曲線推進施工の需要が多く、それに伴い推進管内の見通し可能な距離が短く,そのため立坑内の測量器械から掘進機や推進管内のターゲットを視準しにくくなって計測作業が非常に困難な場合が多い。
【0006】
そこで最近では、測距と測角を単一器械で行うことのできる機能が組み込まれた自動追尾式トータルステーション等の光学式測量器械を推進管内に所定間隔おきに設置し、このトータルステーションについて順次開トラバース測量を展開して掘進機の位置や推進管の埋設状況を管理するトータルステーション測量が採用されてきている。
【0007】
ところで、上記した測量器械には一般に自動的に水平を保持するための自動整準装置が組み込まれているが、測量器械の水平を自動的に保持できる範囲にはおのずと限界があった。
【0008】
そのため、上記した推進工法の場合においては、推進につれて変化する推進管列の傾斜角に対応して測量器械を常時水平に保持できるように、各トータルステーションの測量器械は、推進管内にフリーな状態に垂設された吊り下げ型(振り子型)の設置台に搭載されている。
【特許文献1】特許第3458075号
【特許文献2】特開2002−228446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の吊り下げ型(振り子型)設置台の場合、通常吊り回転軸(振り子回転軸)は単に回転自在に軸支されているため、測量器械の鉛直度の確保、揺動状態から静止状態に至るまでに相当時間がかかり、迅速な計測作業ができないという課題があった。
【0010】
また、測量器械の鉛直度の確保、計測時の固定、さらには測量器械の転倒防止等に関する装置は、特に設けられていないためこれらの点についても課題があった。
【0011】
本願発明は以上の課題を解決するためになされたもので、特に掘進機の位置や推進管の埋設状況を迅速に計測・管理することのできる測量器械設置用台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の測量器械設置用台は、推進工法における掘進機および推進管の位置を計測する測量器械を前記推進管内に設置するための測量器械設置用台であり、前記測量器械を搭載するための台本体と当該台本体を前記推進管内に垂設するための吊りアームと当該吊りアームの上端部をベアリングを介して前記推進管内に揺動自在に軸支するための回転軸とを備え、前記回転軸に前記台本体の揺動を制動させるためのブレーキを備えてなることを特徴とするものである。
【0013】
なお、この場合のブレーキの種類としては、例えば電磁石により回転軸を固定する電磁ブレーキや、油圧を用いた油圧ブレーキ等があるが、上記した台本体の揺動を効率的に制動できる機能を備えているものであれば、特に限定されるものではない。
【0014】
本願発明によれば、測量器械を吊り下げ型(振り子型)の台に搭載して推進管内に設置することにより、推進管の鉛直急曲推進に対して特に整準作業を必要とせずに推進機の位置や推進管の埋設状況を迅速に計測することができる。
【0015】
請求項2記載の測量器械設置用台は、請求項1記載の測量器械設置用台において、回転軸に台本体の揺動を減衰させるためのダンパーを備えてなることを特徴とするものである。なお、この場合のダンパーの種類としては、内蔵した流体の粘性抵抗を利用したオイルダンパー等があるが、上記した台本体の揺動を効率的に減衰させる機能を備えているものであれば、特に限定されるものではない。
【0016】
本願発明は、特にダンパーの働きにより測量器械が搭載された台本体の揺動を速やかに収束させるとともに、ブレーキの働きによって台本体の揺動を確実に制動させることにより、掘進機や推進管の計測作業に迅速に着手できるようにしたものである。
【0017】
請求項3記載の測量器械設置用台は、請求項1または2記載の測量器械設置用台において、台本体の下側部に重りを取り付けてなることを特徴とするものである。一般に測量器械は縦長をなす等の形態上の理由により重心が高く転倒しやすいため、台本体の下側部に重りを取り付けることにより測量器械の安定を図ることができる。また、重りにより全体の重心を下げることで設置台の水平保持効果を高めることができる。
【0018】
請求項4記載の測量器械設置用台は、請求項1〜3のいずれかに記載の測量器械設置用台において、回転軸は推進管内に敷設されたレールを走行する走行装置に軸支してなることを特徴とするものである。
【0019】
本願発明の場合、測量器械設置用台が走行装置に垂設され、推進管内を自由に走行可能なことで、測量器械が万一管内で故障した場合でも簡単に回収することができる。なお、測量器械設置用台は、通常は動かないように固定し、故障などで回収の必要な場合に限り、固定を解除して走行できる構成になっていればよい。
【0020】
請求項5記載の測量器械設置用台は、請求項1〜3のいずれかに記載の測量器械設置用台において、回転軸は推進管内に置かれた支持台に軸支してなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明は、床置き形式の測量器械設置用台であり、鋼管を地中に下向き鉛直曲線状に押し込む場合に用いられるものである。この場合の支持台は、自立可能な立体枠状に構成されたものを想定し、回転軸は支持台の上端部に架け渡された枠部材に軸支すればよい。
【0022】
また、支持枠体は、鋼管や形鋼などから安定した状態で自立可能に形成してあれば、特に形状は限定されるものではない。さらに、支持枠体は現地で簡単に組立てよび分解が可能なように形成してあれば、運搬などの取り扱いが容易となり望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本願発明は、特に回転軸に設けられたブレーキとダンパーの働きによって掘進に伴う測量器械の揺動を速やかに収束させ、かつ測量器械の揺動を確実に制動し固定することで、掘進機の位置や推進管の埋設状況を迅速かつ確実に計測し、推進管の推進施工をきわめて効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1(a),(b),(c)は、本願発明の一例を示し、図において、いわゆるパイプルーフとして地中に上向きに鉛直急曲線状に押し込まれた推進管(以下「鋼管」という)A内に測量器械設置用台1が鋼管Aの推進方向に所定間隔おきに垂設され、各測量器械設置用台1に測距と測角を単一器械で行うことのできる機能が組み込まれた光学式測量器械(以下「測量器械」という)Bがそれぞれ搭載されている。
【0025】
測量器械設置用台1は、測量器械Bが搭載された台本体2とその両側端部(推進管Aの推進方向と直交する方向の両端部)に垂直に立設された吊りアーム3,3と当該吊りアーム3,3の上端部にそれぞれ水平に突設された回転軸4,4とを備えて構成されている。
【0026】
台本体2には重り5、重り調整機構6および気泡管7がそれぞれ取り付けられ、回転軸4,4にはベアリング8、ロータリーダンパー9および電磁ブレーキ10がそれぞれ取り付けられている。
【0027】
台本体2は測量器械Bを脱着自在に固定できるように構成され、吊りアーム3は縦長の逆V字形をなす枠状に形成され、さらに回転軸4は各吊りアーム3の上端部に鋼管Aの推進方向と直交する方向に水平に突設されている。
【0028】
重り5は掘進振動に伴う台本体2の揺れを押えるとともに、測量器械Bを転倒したりしないように安定させるために設置されている。その場合、ロータリーダンパー9の効果を生かすためには、回転軸4,4から重心までの距離が可能な限り離れている(揺動周期を長くする)方がよく、そのため、重り5は台本体2の下側部に取り付けられ、また重り調整機構6によって重心の位置を制御できるようになっている。
【0029】
なお、一般に測量器械Bは縦長をなしている等の形態状の理由により、重心位置が相当高いことが予想されるため、重り5はかなりの重量になることが予想される。また、鋼管A内に測量器械設置用台1を垂設する際、各設置台1のウェイト調整を個別に行い、レベルを出しておく必要があることから、台本体2に重り調整機構6とレベル確認用の気泡管7が取り付けられている。
【0030】
ベアリング8は台本体2を滑らかに揺動させるためのもので、ベアリング8を介して各回転軸4は鋼管A内に回転自在に軸支されており、これにより台本体2は左右の吊りアーム3,3とともに鋼管Aの推進方向と直交する方向を回転軸として鋼管Aの推進方向に自由に揺動するようになっている。
【0031】
なお、ロータリーダンパー9および電磁ブレーキ10についてはラジアル荷重は考慮されないため、荷重はベアリング8で負担することになり、したがって、台本体2に搭載される測量器械Bの重量などを考慮すると、回転軸4の片持ちは避けるべきであり、また例えば図1(c)に図示するように、各回転軸4は複数(ダブル)のベアリング8を介して推進管A内に軸支されているのが望ましい。
【0032】
電磁ブレーキ10は掘進機や推進管の計測に際し、台本体2の揺動を制動し、揺動しないよう固定するために用いられるものであり、通常回転軸4,4はフリーな状態にあって自由に回転するが、制御ONによりロータに制御板が押し当てられることにより吊りアーム3,3の回転が阻止され、これにより台本体2が揺動しないように固定される構成になっている。
【0033】
なお、鋼管Aが測量器械Bの自動整準範囲を超えてローリングする場合でも、回転軸4を2軸ジンバル構造(回転軸が鋼管Aの推進方向と直交する方向、及び推進方向と平行する方向)とすることで、鋼管Aのローリングに対しても台本体を常に水平に保つ構造とすることが可能である。
【0034】
ロータリーダンパー9は設置台2の揺れが収束しない場合に利用されるものであり、ロータに内蔵されたオイルの粘性抵抗によって回転軸4,4に回転速度に応じた制動力を与え、これにより台本体2の揺れが減衰される構成になっている。
【0035】
なお、台本体2は基本的に回転軸4,4の真下に位置するため、ロータリーダンパー9には余り大きなトルクはかからない。また、ロータリーダンパー9に大きなトルクが作用する構造の場合、台本体2が回転軸4,4の真下に静止するまで相当の時間がかかる恐れがあるため、ロータリーダンパー9に大きなトルクが作用しない構造の方が望ましい。
【0036】
図2(a),(b),(c)は、鋼管A内に測量器械設置用台1が垂設された状態を示し、図2(a),(b)の場合、鋼管A内の両側に布設された送排泥管11,11間に支持部材12が連続して架け渡され、この支持部材12に回転軸4,4がベアリング8を介して回転自在に軸支されている。
【0037】
また、図2(a)の場合、支持部材12は送排泥管11,11に固定されているのに対し、図2(b)の場合は、支持部材12は鋼管Aの内壁部に固定されている。
【0038】
一方、図2(c)の場合、支持部材12は両側の送排泥11,11にそれぞれ突設され、この支持部材12,12に両側の回転軸4,4がそれぞれ、ベアリング8を介して回転自在に軸支されている。
【0039】
いずれの場合も、このような構成により測量器械設置用台1は鋼管A内に揺動自在に垂設されている。
【0040】
図3(a)〜(c)も、鋼管A内に測量器械設置用台1が垂設された状態を示したもので、この例においては、鋼管Aの天井部にレール13が推進管Aの推進方向に連続して布設され、このレール13に走行車14が走行自在に取り付けられ、測量器械設置用台1は走行車14に揺動自在に垂設されている。
【0041】
図4(a),(b)は、地中に下向き曲線状に押し込まれた鋼管A内に測量器械Bを搭載した測量器械設置用台1が設置されている例を示し、この場合、測量器械設置用台1は、鋼管A内にその推進方向に所定間隔おきに据え置かれた各支持枠体17の中にそれぞれ垂設されている。
【0042】
支持枠体17は、鋼管や形鋼などから安定した状態で自立可能な台形枠状に形成されている。また、支持枠体17は現地で簡単に組立てよび分解が可能なように形成され、また鋼管A内に簡単に据え付けおよび取り外しが可能にように脱着自在に設置されている。
【0043】
このような構成において、上記した測量器械設置用台1を推進工法における推進機と鋼管の計測に適用する場合について簡単に説明すると、図1において鋼管A内には複数の測量器械設置用台1を所定間隔おきに垂設し、推進機15内と発進側の立坑(図省略)内にはそれぞれ1個の測量器械設置用台1を垂設する。
【0044】
また、鋼管A内と発進側立坑内にそれぞれ垂設された各測量器械設置用台1には測距と測角を単一器械で行うことのできる測量器械Bをそれぞれ搭載し、推進機15内に垂設された測量器械設置用台1には視準ターゲット16を搭載する。
【0045】
そして、立坑内に設けられた基準ターゲット(図省略)を基準に、各地点において測量器械Bにより各区間の測距と測角を行い、これらの情報を地上のコーピュータで演算処理することによって推進機15の位置と鋼管Aの埋設状況を計測する。
【0046】
なお、測量器械設置用台1および測量器械Bの鋼管A内への設置は、測量器械設置用台1と測量器械Bを鋼管A内に予め設置しておき、これを鋼管列の最後尾に適当な間隔で継ぎ足すことにより行う。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本願発明は、地中に推進管を埋設して所定の管路を構築する推進工法において、掘進機の位置や推進管の埋設状況をリアルタイムで迅速に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は測量器械設置用台の設置例を示す推進管の一部断面図、(b)は測量器械設置用台の概要を示す斜視図、(c)は回転軸にベアリングが複数取り付けられた例を示す回転軸部の正面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は測量器械設置用台の設置例を示す推進管の断面図である。
【図3】測量器械設置用台の設置例を示し、(a)は推進管の断面図、(b)は(a)におけるロ部拡大図、(c)は斜視図である。である。
【図4】(a)は測量器械設置用台の設置例を示す推進管の一部断面図、(b)はその一部斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 測量器械設置用台
2 台本体
3 吊りアーム
4 回転軸
5 重り
6 重り調整機構
7 気泡管
8 ベアリング
9 ロータリーダンパー(ダンパー)
10 電磁ブレーキ
11 送排泥管
12 支持部材
13 レール
14 走行車
15 推進機
16 視準ターゲット
17 支持枠
A 鋼管(推進管)
B 光学式測量器械

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法における掘進機および推進管の位置を計測する測量器械を前記推進管内に設置するための測量器械設置用台であり、前記測量器械を搭載するための台本体と当該台本体を前記推進管内に垂設するための吊りアームと当該吊りアームの上端部をベアリングを介して前記推進管内に揺動自在に軸支するための回転軸とを備え、前記回転軸に前記台本体の揺動を制動させるためのブレーキを備えてなることを特徴とする測量器械設置用台。
【請求項2】
回転軸に台本体の揺動を減衰させるためのダンパーを備えてなることを特徴とする請求項1記載の測量器械設置用台。
【請求項3】
台本体に重りを備えてなることを特徴とする請求項1または2記載の測量器械設置用台。
【請求項4】
回転軸は推進管内に敷設されたレールを走行する走行装置に軸支されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の測量器械設置用台。
【請求項5】
回転軸は推進管内に置かれた支持台に軸支されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の測量器械設置用台。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−133213(P2006−133213A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146212(P2005−146212)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(599130874)コマツ地下建機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】