説明

湯水混合装置

【課題】感温バネの小さな付勢力により弁体を駆動できる湯水混合装置を提供する。
【解決手段】本発明は、湯水混合装置(1)であって、湯水混合装置本体と、湯用弁体(12)と、これに設けられた湯用圧力開放穴の開度を変化させる湯用パイロット弁(16)と、湯用圧力開放穴の開度が減少すると、湯用弁体を湯用弁座に向けて押圧する湯用圧力室と、水用弁体(14)と、これに設けられた水用圧力開放穴の開度を変化させる水用パイロット弁(18)と、水用圧力開放穴の開度が減少すると、水用弁体を水用弁座に向けて押圧する水用圧力室と、湯用圧力開放穴の開度が減少されると水用圧力開放穴の開度を増加させるパイロット弁駆動機構(26)と、パイロット弁駆動機構を付勢する付勢手段(24)と、湯水混合装置本体内で混合された湯の温度に応じてパイロット弁駆動機構を付勢する感温付勢手段(22)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湯水混合装置に関し、特に、供給された湯及び水を混合し、適温に調整された湯を吐出させる湯水混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平8−42744号公報には、湯水混合装置が記載されている。この湯水混合装置においては、本体内に摺動可能に配置された可動弁体の両側に、バイアスバネ及び感温バネが配置され、混合された湯水の温度により感温バネの付勢力が変化するように構成されている。湯水の温度に応じて感温バネの付勢力が変化することにより、この付勢力と、バイアスバネの付勢力が釣り合う位置が変化し、その位置に可動弁体が移動される。可動弁体が移動されることにより、本体内に流入する湯及び水の割合が変化し、混合される湯水の温度が変化する。これにより、混合された湯水の温度が、設定温度に維持される。
【0003】
【特許文献1】特開平8−42744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開平8−42744号公報記載の湯水混合装置においては、可動弁体がバイアスバネ及び感温バネの付勢力により駆動されるため、これらのバネを、大きな付勢力を発生できるように構成しなければならないという問題がある。即ち、可動弁体を移動させるには、可動弁体に取り付けられたOリングによる摺動抵抗や、可動弁体に作用する水圧に打ち勝つ力で可動弁体を駆動する必要があり、これには、大きな付勢力を発生させることができるバイアスバネ及び感温バネを使用する必要がある。
【0005】
また、大きな付勢力を発生させることができる感温バネを使用した場合には、感温バネが大型化して、その熱容量が大きくなるので、湯水混合装置に供給される湯及び水の圧力変化等、外乱に対する応答性が低下するという問題がある。
【0006】
さらに、特開平8−42744号公報記載の湯水混合装置においては、可動弁体の移動距離と、バイアスバネ及び感温バネの伸縮量は同一になる。従って、吐出流量を増大させるために可動弁体のストロークを長くすると、温度調節の精度が低下するという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、バイアスバネ及び感温バネが発生する付勢力が小さい場合であっても弁体を駆動することができ、吐出する湯水の温度を調節することができる湯水混合装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、弁体の十分なストロークを確保しながら、精度良く温度を調節することができる湯水混合装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、供給された湯及び水を混合し、適温に調整された湯を吐出させる湯水混合装置であって、湯用弁座及び水用弁座を備えた湯水混合装置本体と、湯用圧力開放穴及び湯導入孔が設けられ、湯用弁座の開度を変化させる湯用弁体と、湯用圧力開放穴の開度を変化させる湯用パイロット弁と、湯用圧力開放穴の開度が減少すると、湯導入孔を介して流入する湯により内部の圧力が上昇して、湯用弁体を湯用弁座に向けて押圧する湯用圧力室と、水用圧力開放穴及び水導入孔が設けられ、水用弁座の開度を変化させる水用弁体と、水用圧力開放穴の開度を変化させる水用パイロット弁と、水用圧力開放穴の開度が減少すると、水導入孔を介して流入する水により内部の圧力が上昇して、水用弁体を水用弁座に向けて押圧する水用圧力室と、湯用圧力開放穴の開度が減少されると、水用圧力開放穴の開度が増加され、湯用圧力開放穴の開度が増加されると、水用圧力開放穴の開度が減少されるように、湯用パイロット弁及び水用パイロット弁を駆動するパイロット弁駆動機構と、湯用圧力開放穴又は水用圧力開放穴の何れか一方の開度が減少するように、パイロット弁駆動機構を付勢する付勢手段と、湯用圧力開放穴又は水用圧力開放穴の他方の開度が減少するように、パイロット弁駆動機構を、湯水混合装置本体内で混合された湯の温度に応じて付勢する感温付勢手段と、を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、湯用弁体に設けられた湯用圧力開放穴の開度が湯用パイロット弁により減少されると、湯用圧力室内の圧力が上昇して湯用弁体が湯用弁座に向けて押圧される。一方、水用弁体に設けられた水用圧力開放穴の開度が水用パイロット弁により減少されると、水用圧力室内の圧力が上昇して水用弁体が水用弁座に向けて押圧される。また、湯用パイロット弁及び水用パイロット弁は、パイロット弁駆動機構により、湯用圧力開放穴の開度が減少されると水用圧力開放穴の開度が増加され、湯用圧力開放穴の開度が増加されると水用圧力開放穴の開度が減少されるように駆動される。さらに、パイロット弁駆動機構は、付勢手段、及び湯水混合装置本体内で混合された湯の温度に応じて付勢力を発生する感温付勢手段によって付勢され、湯用パイロット弁及び水用パイロット弁を駆動する。
【0010】
このように構成された本発明によれば、湯用弁体及び水用弁体が、湯用圧力室内の圧力及び水用圧力室内の圧力によって移動されるので、付勢手段及び感温付勢手段が発生する付勢力が小さい場合にも、湯用弁体及び水用弁体を駆動することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、さらに、湯用パイロット弁と水用パイロット弁とを連結するパイロット弁軸を有し、このパイロット弁軸が、その軸線方向の一方に移動されると湯用圧力開放穴の開度が減少し、軸線方向の他方に移動されると水用圧力開放穴の開度が減少する。
このように構成された本発明によれば、単純な機構で、湯用パイロット弁及び水用パイロット弁を、同一方向に同一距離移動させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、湯用弁体及び水用弁体は互いに向かい合わせて配置され、パイロット弁軸は、これら湯用弁体及び水用弁体の間に延び、移動されることにより、湯用圧力開放穴及び水用圧力開放穴の開度を変化させる。
【0013】
このように構成された本発明によれば、湯用圧力開放穴の開度が減少されたとき水用圧力開放穴の開度が増加され、湯用圧力開放穴の開度が増加されたとき水用圧力開放穴の開度が減少される機構を簡単に構成することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、パイロット弁駆動機構が、回動可能に支持された支軸部、及びパイロット弁軸に連結された連結部を備えたレバーを有し、このレバーは、付勢手段及び感温付勢手段の付勢力により支軸部を中心に回動される。
【0015】
このように構成された本発明によれば、パイロット弁軸、及びそれに連結された湯用パイロット弁及び水用パイロット弁を、付勢手段及び感温付勢手段の付勢力により、単純な機構で駆動することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、付勢手段及び感温付勢手段は、支軸部と連結部の間に付勢力を作用させる。
このように構成された本発明によれば、湯用パイロット弁及び水用パイロット弁の移動距離が、レバーにより増幅されるので、湯用弁体及び水用弁体の十分なストロークを確保しながら、精度良く温度を調節することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、湯導入孔及び水導入孔の内部には、クリーニングピンが配置されている。
【0018】
このように構成された本発明によれば、湯導入孔及び水導入孔にクリーニングピンが配置されているので、湯導入孔及び水導入孔の詰まりを防止することができると共に、湯導入孔及び水導入孔の流路面積が狭められるので、湯用圧力室及び水用圧力室内の急激な圧力上昇を防止することができ、これにより、ハンチング現象等の発生を防止することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、湯用弁体及び水用弁体は、ダイヤフラム式の弁体である。
このように構成された本発明によれば、湯用弁体及び水用弁体がダイヤフラム式の弁体で構成されているので、各弁体が移動される際の摺動抵抗を減少させることができ、温度調節性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の湯水混合装置によれば、バイアスバネ及び感温バネが発生する小さな付勢力によっても弁体を駆動することができ、吐出する湯水の温度を調節することができる。
また、本発明の湯水混合装置によれば、弁体の十分なストロークを確保しながら、精度良く温度を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による湯水混合装置の斜視図である。図2は、本実施形態による湯水混合装置の全断面図である。また、図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態による湯水混合装置1は、湯水混合装置本体2と、この湯水混合装置本体2に設けられた湯供給部4と、水供給部6と、混合された湯水を吐出させる湯水吐出部8と、を有する。さらに、湯水混合装置本体2の側面には、温度設定用の温度設定スピンドル10が設けられている。本実施形態の湯水混合装置1は、湯供給部4及び水供給部6に供給された湯及び水を湯水混合装置本体2内で混合し、温度設定スピンドル10によって設定された温度の湯水に調節して湯水吐出部8から吐出させるように構成されている。
【0023】
また、図2及び図3に示すように、湯水混合装置1には、湯用弁体12と、水用弁体14と、湯用パイロット弁16と、水用パイロット弁18と、これらのパイロット弁を連結するパイロット弁軸20が内蔵されている。さらに、湯水混合装置1には、感温付勢手段である感温バネ22と、付勢手段であるバイアスバネ24と、これらのバネの付勢力により回動されるパイロット弁駆動機構であるレバー26と、を有する。
【0024】
湯水混合装置本体2は、概ね直方体状に形成されており、互いに結合された中央本体部2a、湯側本体部2b、及び水側本体部2cから構成されている。中央本体部2aの両側側面には、湯供給部4及び水供給部6が夫々形成されており、底面には湯水吐出部8が形成されている。また、中央本体部2aの、湯側本体部2bとの結合面には、湯供給部4に連通した湯導入凹部28が形成されており、その中央には、湯用弁座30が設けられている。同様に、中央本体部2aの、水側本体部2cとの結合面には、水供給部6に連通した水導入凹部32が形成されており、その中央には、水用弁座34が設けられている。図2に示すように、湯用弁座30及び水用弁座34から流入した湯及び水は、中央本体部2aの中心部で合流して混合された後、下方に向かい、湯水吐出部8から吐出されるように構成されている。
【0025】
湯用弁体12は、円形のダイヤフラム式の弁体であり、中央本体部2aに形成された湯導入凹部28を覆うように配置され、中央本体部2aと湯側本体部2bの間に挟まれて固定されている。また、湯用弁体12は、湯側本体部2bに形成された圧力室形成凹部の中に、一部が受け入れられるように配置されており、この圧力室形成凹部と湯用弁体12によって湯用圧力室36を形成している。さらに、湯用弁体12の中心には、湯用圧力開放穴12aが形成されており、この湯用圧力開放穴12aの中にパイロット弁軸20の一方の端部が貫通されている。湯用圧力開放穴12aを貫通して湯用圧力室36まで延びるパイロット弁軸20の先端には、湯用パイロット弁16が取り付けられており、湯用圧力開放穴12aは、この湯用パイロット弁16によって開閉され、また、開度が変化されるように構成されている。
【0026】
さらに、湯用弁体12には、湯用弁体12を貫通する湯導入孔12b(図3)が形成されている。湯導入凹部28に流入した湯は、湯導入孔12bを通って湯用圧力室36内に流入する。従って、湯用圧力開放穴12aが閉鎖され、或いは湯用圧力開放穴12aの開度が減少されている場合には、湯導入孔12bを通って流入した湯により湯用圧力室36内の圧力が上昇する。さらに、クリーニングピン38が、湯用弁座30の外周部に取り付けられており、湯導入孔12bを貫通するように延びている。クリーニングピン38は、湯導入孔12bに異物が詰まるのを防止すると共に、湯導入孔12bの流路面積を狭めている。
【0027】
一方、水用弁体14は、円形のダイヤフラム式の弁体であり、中央本体部2aに形成された水導入凹部32を覆うように配置され、中央本体部2aと水側本体部2cの間に挟まれて固定されている。また、水用弁体14は、水側本体部2cに形成された圧力室形成凹部の中に、一部が受け入れられるように配置されており、この圧力室形成凹部と水用弁体14によって水用圧力室40を形成している。さらに、水用弁体14の中心には、水用圧力開放穴14aが形成されており、この水用圧力開放穴14aの中にパイロット弁軸20の、湯用弁体12とは反対側の端部が貫通されている。
【0028】
また、水用圧力開放穴14aを貫通して水用圧力室40まで延びるパイロット弁軸20の先端には、水用パイロット弁18が設けられており、水用圧力開放穴14aは、この水用パイロット弁18によって開閉され、また、開度が変化されるように構成されている。この構造により、パイロット弁軸20が、その軸線方向に沿って図2における右方向に移動されると、水用圧力開放穴14aの開度が減少すると共に、湯用圧力開放穴12aの開度が増大し、逆に、パイロット弁軸20が左方向に移動されると、水用圧力開放穴14aの開度が増大すると共に、湯用圧力開放穴12aの開度が減少される。
【0029】
さらに、水用弁体14には、水用弁体14を貫通する水導入孔14b(図3)が形成されている。水導入凹部32に流入した水は、水導入孔14bを通って水用圧力室40内に流入する。従って、水用圧力開放穴14aが閉鎖され、或いは水用圧力開放穴14aの開度が減少されている場合には、水導入孔14bを通って流入した水により水用圧力室40内の圧力が上昇するように構成されている。さらに、クリーニングピン42が、水用弁座34の外周部に取り付けられており、水導入孔14bを貫通するように延びている。クリーニングピン42は、水導入孔14bに異物が詰まるのを防止すると共に、水導入孔14bの流路面積を狭めている。
【0030】
感温バネ22は、湯水混合装置本体2内の湯用弁体12の下方に配置された形状記憶合金製のコイルバネであり、混合された湯の温度に応じて付勢力を発生するように構成されている。また、感温バネ22の基端は、湯側本体部2bに取り付けられている。さらに、感温バネ22の先端には、感温バネ受け部材44が取り付けられており、この感温バネ受け部材44の先端は、レバー26の側面に当接されている。このため、混合された湯水の温度が上昇して感温バネ22が伸びると、感温バネ受け部材44の先端が、レバー26を図2における左方向に押圧し、レバー26を反時計回りに回動させる。即ち、感温バネ22は、湯用圧力開放穴12aの開度が減少する方向にレバー26を付勢している。
【0031】
バイアスバネ24は、湯水混合装置本体2内の水用弁体14の下方に配置されたコイルバネであり、その基端は、送りネジ部材46に取り付けられている。送りネジ部材46は、段付きの円筒状の部材であり、水側本体部2cに摺動可能に取り付けられている。また、水側本体部2cの、送りネジ部材46を受け入れている部分には、レール状の突起(図示せず)が形成されており、一方、送りネジ部材46には、水側本体部2cのレール状の突起を受け入れる溝(図示せず)が形成されている。これにより、送りネジ部材46の水側本体部2cに対する回転が規制されている。また、送りネジ部材46の基端部内周には、送り雌ネジ46aが形成されており、この送り雌ネジ46aは、温度設定スピンドル10の基端部に形成された送り雄ネジ10aに螺合されている。このため、温度設定スピンドル10が回転されると、送りネジの作用により、送りネジ部材46が水側本体部2c内で摺動される。
【0032】
また、バイアスバネ24の先端には、バイアスバネ受け部材48が取り付けられており、このバイアスバネ受け部材48の先端は、レバー26の側面に当接されている。このため、温度設定スピンドル10を回転操作して、送りネジ部材46を、図2における右方向に移動させると、バイアスバネ受け部材48の先端がレバー26を図2おける右方向に押圧し、レバー26を時計回りに回動させる。即ち、バイアスバネ24は、水用圧力開放穴14aの開度が減少する方向にレバー26を付勢している。
【0033】
レバー26は、その下端の支軸部26aが支軸50によって回動可能に支持された棒状の部材であり、中央本体部2aの中心に沿って、ほぼ鉛直上方に延びている。また、レバー26の先端には、連結部である爪部26b(図3)が形成されている。爪部26bは、パイロット弁軸20の中間部に形成されたフランジ部20aを受け入れることにより、レバー26とパイロット弁軸20を連結している。このため、レバー26が支軸50を中心に回動されると、パイロット弁軸20は、概ね水平方向に摺動される。
【0034】
また、感温バネ受け部材44の先端及びバイアスバネ受け部材48の先端は、レバー26の支軸部26aと爪部26bの間の位置で向かい合うように位置決めされ、レバー26の両側側面に夫々当接されている。このため、レバー26は、感温バネ22による付勢力と、バイアスバネ24による付勢力が釣り合う位置に回動され、これに連結されたパイロット弁軸20を水平方向に移動させる。ここで、パイロット弁軸20はレバー26の先端に連結されているので、パイロット弁軸20の移動量は、感温バネ22及びバイアスバネ24が伸縮される長さよりも大きくなる。
【0035】
次に、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態による湯水混合装置1の作用を説明する。
まず、湯水混合装置1に供給された湯は、湯供給部4を介して湯導入凹部28に流入し、供給された水は、水供給部6を介して水導入凹部32に流入する。さらに、湯導入凹部28に流入した湯は、湯用弁体12の湯導入孔12bを通って湯用圧力室36に流入し、水導入凹部32流入した水は、水用弁体14の水導入孔14b通って水用圧力室40に流入する。
【0036】
ここで、感温バネ22による付勢力とバイアスバネ24による付勢力が、レバー26がほぼ鉛直方向に向けられる位置で釣り合っている場合には、パイロット弁軸20は、湯水混合装置本体2のほぼ中央に位置する。この状態においては、パイロット弁軸20の一端部に取り付けられた湯用パイロット弁16は、湯用弁体12の湯用圧力開放穴12aを閉鎖していないため、湯導入孔12bを通って湯用圧力室36に流入した湯は、湯用圧力開放穴12aを通って流出する。従って、この状態では、湯用圧力室36内の圧力が上昇することはない。一方、パイロット弁軸20がほぼ中央に位置する状態においては、水用弁体14の水用圧力開放穴14aも、パイロット弁軸20の他方の端部に取り付けられた水用パイロット弁18によって閉鎖されていないので、水用圧力室40内の圧力が上昇することもない。
【0037】
このため、湯用弁体12及び水用弁体14は、夫々、湯用弁座30及び水用弁座34から離座した状態に維持され、湯導入凹部28に流入した湯は湯用弁座30の中に流入し、水導入凹部32に流入した水は水用弁座34の中に流入する。なお、本実施形態においては、湯用弁体12と湯用弁座30の間の隙間、及び水用弁体14と水用弁座34の間の隙間の合計が約0.8mmになるように構成されている。好ましくは、各弁体と各弁座との間の隙間の合計が、約0.4〜4mmになるように構成する。湯用弁座30及び水用弁座34から夫々流入した湯及び水は、中央本体部2a内で混合され、混合された湯水は、湯水吐出部8から吐出される。なお、各弁体と各弁座との間の隙間の合計は、小さいほど温度調節性能は向上するものの十分な流量を確保することが困難になり、逆に、大きいほど流量は増加するものの、温度調節性能が低下する。
【0038】
ここで、混合された湯水の温度が、温度設定スピンドル10によって設定された温度よりも高い場合には、湯水混合装置本体2内に配置された感温バネ22の付勢力が増大する。感温バネ22の付勢力が増大すると、感温バネ22の先端に取り付けられた感温バネ受け部材44が、バイアスバネ24の付勢力に抗してレバー26を図2における左側に押圧して伸張し、レバー26を反時計回りに回動させる。即ち、感温バネ22の付勢力とバイアスバネ24の付勢力が釣り合う位置が、図2における左方向に移動され、パイロット弁軸20も左方向に水平に移動される。
【0039】
パイロット弁軸20が図2における左側に移動されると、パイロット弁軸20の右側の端部に取り付けられた湯用パイロット弁16が、湯用弁体12の湯用圧力開放穴12aに接近し、湯用圧力開放穴12aの開度が減少する。これにより、湯用圧力室36内の圧力が上昇され、この圧力により湯用弁体12は図2における左方向、即ち、湯用弁座30に接近する方向に移動される。ここで、湯用圧力室36内の圧力は、湯が湯導入孔12bを通って流入することにより上昇するが、湯導入孔12bの流路面積はクリーニングピン38によって狭められているため、湯導入孔12bを介した湯の流入は緩やかなものとなる。このため、湯用圧力室36内の圧力上昇も緩やかなものとなり、湯用弁体12が急激に移動され、適正位置を越えて行き過ぎることにより発生するハンチング現象等が防止される。
【0040】
湯用弁体12が図2における左方向に移動されることにより、湯用弁体12の湯用圧力開放穴12aは湯用パイロット弁16から遠ざかるため、湯用圧力開放穴12aの開度が増大して湯用圧力室36内の圧力は低下する。これにより、湯用弁体12を湯用弁座30に向けて押圧する力も低下して、湯用弁体12はその位置で停止される。また、湯用弁体12が移動された後、さらに湯用パイロット弁16が図2における左方向に移動されると、再び湯用圧力室36内の圧力が上昇して湯用弁体12を左方向に移動させる。このような作用を繰り返すことにより、湯用弁体12は、湯用圧力室36に流入する湯の圧力により、湯用パイロット弁16に追従するように移動される。
【0041】
一方、水用パイロット弁18は、パイロット弁軸20が図2における左側に移動されると、水用弁体14の水用圧力開放穴14aから遠ざかり、水用圧力開放穴14aの開度が増大する。これにより、水用圧力室40内の圧力が低下し、水用弁体14は、図2における左方向、即ち、水用弁座34から遠ざかる方向に移動される。水用弁体14が移動されることにより、水用弁体14の水用圧力開放穴14aは、水用パイロット弁18に近づくため、水用圧力室40内の圧力が上昇し、水用弁体14はその位置で停止される。水用弁体14が移動された後、水用パイロット弁18が更に図2における左方向に移動されると、再び、水用圧力室40内の圧力が低下し、水用弁体14は左方向に移動される。このような作用を繰り返すことにより、水用弁体14は水用パイロット弁18に追従するように移動される。
【0042】
このように、混合された湯水の温度が設定された温度よりも高い場合には、パイロット弁軸20が図2における左方向に移動され、その結果、湯用弁座30の開度は減少し、水用弁座34の開度は増大する。これにより、湯の流入量が減少し、水の流入量が増大するので、混合された湯水の温度は低下して、設定温度に接近する。この際、湯用弁体12及び水用弁体14は、流入する湯及び水の圧力に基づく力によって押圧され、移動される。従って、感温バネ22及びバイアスバネ24は、単にパイロット弁軸20(湯用パイロット弁16及び水用パイロット弁18)を移動させる力を発生すれば良く、湯用弁体12及び水用弁体14を移動させるための大きな付勢力を発生させる必要はない。
【0043】
逆に、混合された湯水の温度が設定された温度よりも低い場合には、感温バネ22が発生する付勢力が減少するので、バイアスバネ24が感温バネ22の付勢力に抗してレバー26を図2における時計回りに回動させた位置で両者の付勢力が釣り合うようになる。これにより、パイロット弁軸20は、図2おける右方向に水平に移動され、湯用パイロット弁16及び水用パイロット弁18も右方向に移動される。上記のように、湯用弁体12及び水用弁体14は、湯用パイロット弁16及び水用パイロット弁18の移動に追従するように移動されるので、水用弁座34の開度は減少し、湯用弁座30の開度は増大する。これにより、混合された湯水の温度は上昇し、吐出される湯水の温度が設定温度に接近する。
【0044】
なお、水用弁座34の開度を減少させる水用圧力室40内の圧力の上昇は、水が水導入孔14bを通って流入することにより発生するが、水導入孔14bの流路面積はクリーニングピン42によって狭められているため、水導入孔14bを介した水の流入は緩やかなものとなる。このため、水用圧力室40内の圧力上昇も緩やかなものとなり、水用弁体14の急激な移動によるハンチング現象等が防止される。
【0045】
また、使用者の操作により温度設定スピンドル10が回転され、送りネジ部材46が図2における右方向に移動された場合には、感温バネ22の付勢力とバイアスバネ24の付勢力が釣り合う位置が右方向に移動される。これにより、レバー26は図2における時計回りに回転され、パイロット弁軸20は右方向に移動される。このパイロット弁軸20の移動に追従して湯用弁体12及び水用弁体14が移動され、湯用弁座30の開度が増大し、水用弁座34の開度が減少する。これにより、吐出される湯水の温度が上昇する。
【0046】
一方、温度設定スピンドル10の回転により、送りネジ部材46が図2における左方向に移動された場合には、レバー26は図2における反時計回りに回転され、湯用弁座30の開度が減少し、水用弁座34の開度が増大して、吐出される湯水の温度が低下する。
【0047】
本発明の実施形態の湯水混合装置によれば、バイアスバネ及び感温バネが発生する付勢力は、湯用パイロット弁及び水用パイロット弁を駆動するだけであり、湯用弁体及び水用弁体は、湯用圧力室内の圧力及び水用圧力室内の圧力によって移動される。これにより、付勢力が小さいバイアスバネ及び感温バネにより湯用弁体及び水用弁体を駆動することができる。また、バイアスバネ及び感温バネの付勢力を小さく設定できるので、これらの付勢力により、逆に、送りネジ部材が摺動されてしまい、これにより、温度設定スピンドルが回転されてしまうという誤動作を確実に防止することができる。
また、本実施形態の湯水混合装置によれば、湯用弁体及び水用弁体が、各圧力室内の圧力によって駆動されるので、各弁体が流体力の影響を受けにくく、大流量時においても良好な温度調節性能を得ることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の湯水混合装置によれば、レバーの先端にパイロット弁軸が連結され、支軸部と連結部の間の位置を、バイアスバネ及び感温バネによって付勢しているので、バイアスバネ及び感温バネの伸縮量が増幅されて、各パイロット弁に伝達される。これにより、湯用弁体及び水用弁体のストロークを十分に確保しながら、バイアスバネ及び感温バネの伸縮量を短くすることができるので、吐出される湯水の温度を精度良く調整することができる。
加えて、本実施形態の湯水混合装置によれば、レバーが、湯用弁体及び水用弁体の下流側に配置されたバイアスバネ及び感温バネの付勢力により回動されるので、湯水が十分に混合された下流部に感温バネを配置することができると共に、単純な機構で各パイロット弁を駆動することができる。
【0049】
さらに、本実施形態の湯水混合装置によれば、湯導入孔及び水導入孔にクリーニングピンが配置されているので、湯導入孔及び水導入孔の流路面積を小さくすることができ、これにより、湯用圧力室及び水用圧力室内の急激な圧力上昇を防止して、ハンチング現象等の発生を防止することができる。また、クリーニングピンにより、湯導入孔及び水導入孔の流路面積を狭めているので、流路面積を小さくしても流路が詰まることがない。
【0050】
また、本実施形態の湯水混合装置によれば、湯用弁体及び水用弁体がダイヤフラム式の弁体で構成されているので、各弁体が移動される際の摺動抵抗を減少させることができ、温度調節性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態による湯水混合装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による湯水混合装置の全断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 本発明の実施形態による湯水混合装置
2 湯水混合装置本体
2a 中央本体部
2b 湯側本体部
2c 水側本体部
4 湯供給部
6 水供給部
8 湯水吐出部
10 温度設定スピンドル
10a 送り雄ネジ
12 湯用弁体
12a 湯用圧力開放穴
12b 湯導入孔
14 水用弁体
14a 水用圧力開放穴
14b 水導入孔
16 湯用パイロット弁
18 水用パイロット弁
20 パイロット弁軸
20a フランジ部
22 感温バネ(感温付勢手段)
24 バイアスバネ(付勢手段)
26 レバー(パイロット弁駆動機構)
26a 支軸部
26b 爪部(連結部)
28 湯導入凹部
30 湯用弁座
32 水導入凹部
34 水用弁座
36 湯用圧力室
38 クリーニングピン
40 水用圧力室
42 クリーニングピン
44 感温バネ受け部材
46 送りネジ部材
46a 送り雌ネジ
48 バイアスバネ受け部材
50 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された湯及び水を混合し、適温に調整された湯を吐出させる湯水混合装置であって、
湯用弁座及び水用弁座を備えた湯水混合装置本体と、
湯用圧力開放穴及び湯導入孔が設けられ、上記湯用弁座の開度を変化させる湯用弁体と、
上記湯用圧力開放穴の開度を変化させる湯用パイロット弁と、
上記湯用圧力開放穴の開度が減少すると、上記湯導入孔を介して流入する湯により内部の圧力が上昇して、上記湯用弁体を上記湯用弁座に向けて押圧する湯用圧力室と、
水用圧力開放穴及び水導入孔が設けられ、上記水用弁座の開度を変化させる水用弁体と、
上記水用圧力開放穴の開度を変化させる水用パイロット弁と、
上記水用圧力開放穴の開度が減少すると、上記水導入孔を介して流入する水により内部の圧力が上昇して、上記水用弁体を上記水用弁座に向けて押圧する水用圧力室と、
上記湯用圧力開放穴の開度が減少されると、上記水用圧力開放穴の開度が増加され、上記湯用圧力開放穴の開度が増加されると、上記水用圧力開放穴の開度が減少されるように、上記湯用パイロット弁及び上記水用パイロット弁を駆動するパイロット弁駆動機構と、
上記湯用圧力開放穴又は上記水用圧力開放穴の何れか一方の開度が減少するように、上記パイロット弁駆動機構を付勢する付勢手段と、
上記湯用圧力開放穴又は上記水用圧力開放穴の他方の開度が減少するように、上記パイロット弁駆動機構を、上記湯水混合装置本体内で混合された湯の温度に応じて付勢する感温付勢手段と、
を有することを特徴とする湯水混合装置。
【請求項2】
さらに、上記湯用パイロット弁と上記水用パイロット弁とを連結するパイロット弁軸を有し、このパイロット弁軸が、その軸線方向の一方に移動されると上記湯用圧力開放穴の開度が減少し、軸線方向の他方に移動されると上記水用圧力開放穴の開度が減少する請求項1記載の湯水混合装置。
【請求項3】
上記湯用弁体及び上記水用弁体は互いに向かい合わせて配置され、上記パイロット弁軸は、これら上記湯用弁体及び上記水用弁体の間に延び、移動されることにより、上記湯用圧力開放穴及び上記水用圧力開放穴の開度を変化させる請求項2記載の湯水混合装置。
【請求項4】
上記パイロット弁駆動機構が、回動可能に支持された支軸部、及び上記パイロット弁軸に連結された連結部を備えたレバーを有し、このレバーは、上記付勢手段及び上記感温付勢手段の付勢力により上記支軸部を中心に回動される請求項2又は3記載の湯水混合装置。
【請求項5】
上記付勢手段及び上記感温付勢手段は、上記支軸部と上記連結部の間に付勢力を作用させる請求項4記載の湯水混合装置。
【請求項6】
上記湯導入孔及び上記水導入孔の内部には、クリーニングピンが配置されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の湯水混合装置。
【請求項7】
上記湯用弁体及び上記水用弁体が、ダイヤフラム式の弁体である請求項1乃至6の何れか1項に記載の湯水混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−248961(P2008−248961A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88598(P2007−88598)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】