説明

湿式集塵機

【課題】金属加工機から発生する粉塵を捕集する際に、捕集能力の低下を防止する。
【解決手段】含塵エアに含まれる粗粒粉塵を分離させて除去するサイクロン部12と、粗粒粉塵が除去された含塵エアにミストを接触させて気液混合させる散水ダクト16と、気液混合された含塵エアを水面に向けて吹き付けて団粒化させる二次気液混合機構(吐出ダクト18,水槽19)と、団粒化された気液混合含塵エアから粉塵を含む水と清浄化したエアを分離し、粉塵を含む水を水槽19に戻す気液分離部20と、分離されたエアを排出するブロア22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、レーザ加工機やプラズマ加工機等の金属加工機から発生する高温ヒューム含有粉塵を含む粉塵を捕集する湿式集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属加工機から発生する金属加工粉塵を捕集するための集塵機として、乾式集塵機と湿式集塵機の2つの方式がある。
乾式集塵機は、樹脂あるいは布製のフィルタを用いて、金属加工機から発生する金属加工粉塵を捕集するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、レーザ加工機やプラズマ加工機等の金属加工機から発生するヒューム粉塵を集塵する場合、このヒューム粉塵にはスパッタ等の高温の粉塵が含まれている。そのため、これらがフィルタに付着した際、あるいは、捕集した粉塵をダストボックスに堆積させた際に、粉塵爆発、火災等の原因になる恐れがある。そこで、この高温のヒューム粉塵を捕集した際の火災の発生を防止する火災防止対策機能を備えた乾式集塵機もある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、湿式集塵機は、排気側に設置されたブロアの吸引力を利用して、粉塵を含む含塵エアを水槽の水面に吹き付けてミストを生じさせ、ミストと粉塵の衝突によって気液混合させて団粒を形成後、気液分離部に慣性衝突させることによって粉塵を捕集している(例えば、特許文献3参照)。
また、気液混合させて団粒化させた粉塵を効率よく捕集する方法として、消波材や水切り部材を複数設置したものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−038838号公報
【特許文献2】特開2004−202005号公報
【特許文献3】特開平11−244639号公報
【特許文献4】特開2007−000736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される従来の乾式集塵機では、フィルタの目の粗さによっては粒径1μm以下の粉塵も約99%捕集することが可能であるが、フィルタの目詰まりによる捕集能力の低下が著しい。そのため、フィルタの交換や集塵機の掃除等のメンテナンスを煩雑に行わなければならず、交換や清掃を怠ると、集塵効率の低下、処理風量の低下を招くという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示される火災防止対策機能を備えた乾式集塵機では、この火災防止対策機能が火災発生後に対する対策であるため、高温ヒューム粉塵による集塵機へのダメージは避けられないという課題があった。
【0008】
また、特許文献3,4に開示される従来の湿式集塵機では、水槽の水面に吹き付けた含塵エアにより発生するミストの粒径及び粉塵とミストの相対速度によって濡れ性が左右され、捕集できる粉塵粒度粋が限られており十分な集塵性能を得ることができないという課題があった。
また、捕集した粉塵を機外に排出するには水槽内の水を交換しなければならず、操業によっては、この水槽内清掃を頻繁に実施する必要があるという課題があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、金属加工機から発生する粉塵を捕集する際に、捕集能力の低下を防止することができる湿式集塵機を提供することを目的とする。
【0010】
また、金属加工機から発生する粉塵に高温ヒューム含有粉塵が含まれる場合にも、粉塵爆発、火災等の発生を防止することができ、また、捕集した粉塵を機外に排出する作業を容易に行うことができ、メンテナンスが容易である湿式集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る湿式集塵機は、含塵エアに含まれる粗粒粉塵を分離させて除去するサイクロン部と、サイクロン部により粗粒粉塵が除去された含塵エアにミストを接触させて気液混合させる散水ダクトと、散水ダクトにより気液混合された含塵エアを水槽の水面に向けて吹き付けて団粒化させる二次気液混合機構と、二次気液混合機構により団粒化された気液混合含塵エアから粉塵を含む水と清浄化したエアを分離し、粉塵を含む水を水槽に戻す気液分離部と、気液分離部により分離されたエアを排出するブロアとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、上記のように構成したので、取り込んだ含塵エアに対して、サイクロン部による粗粒粉塵処理と、散水ダクトによるミストとの接触及び二次気液混合機構による粉塵の水面への吹き付けによる二段階の気液混合処理とを行うことで、集塵効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る湿式集塵機の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る湿式集塵機の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係る湿式集塵機の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2における第1〜3の槽底部の水に含まれる粉塵の粒度分布である。
【図5】この発明の実施の形態3における気液分離部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る湿式集塵機1の構成を示す図である。
湿式集塵機1は、図1に示すように、取込ファン10、ダンパ11、サイクロン部12、ダストボックス13、サイクロン排気ダクト14、縦ダクト15、散水ダクト16、散水ノズル17、吐出ダクト18、水槽19、気液分離部20、散水ポンプ21及びブロア22から構成されている。
【0015】
取込ファン10は、レーザ加工機やプラズマ加工機等の金属加工機から発生する高温、かつ、粒径が2μmのヒューム粉塵を含む含塵エアを取り込むものであり、含塵エア取込口23の前面側に設けられている。この取込ファン10により機外から取り込まれた含塵エアはサイクロン部12に送られる。
【0016】
ダンパ11は、取込ファン10により取り込まれた含塵エアを複数のサイクロン部12に対して、バランス良く分岐させるものであり、含塵エア取込口23の背面側に設けられている。なお、ダンパ11は、サイクロン部12が複数本設置される場合(マルチサイクロンの場合)にのみ設置される。
【0017】
サイクロン部12は、取込ファン10から取り込まれた含塵エアを旋回させて、遠心力によって粒径が約30μm以上の粗い粉塵粒子を分離させて除去するものである。サイクロン部12の設置本数は、粉塵の発生量や、湿式集塵機1内の圧力損失を考慮して1または複数本設置される。このサイクロン部12により含塵エアから分離された粗粒粉塵はダストボックス13に送られ、また、粗粒粉塵が除去された含塵エアはサイクロン排気ダクト14に送られる。
【0018】
ダストボックス13は、サイクロン部12により含塵エアから分離された粗粒粉塵を捕集して堆積するものであり、サイクロン部12の下部に取り出し可能に設けられている。また、ダストボックス13には、予め所定量の水が貯められ、捕集した粗粒粉塵を水の粘性によって付着させて再飛散を抑制し、また、粗粒粉塵を冷却することによって粉塵爆発やサイクロン部12内での発火を防止するように構成されている。このダストボックス13に堆積された粗粒粉塵は湿式集塵機1から取り出されて機外に排出される。
【0019】
サイクロン排気ダクト14は、サイクロン部12により粗粒粉塵が除去された含塵エアが流入する流路であり、サイクロン部12の上部に設けられている。このサイクロン排気ダクト14に流入した含塵エアは縦ダクト15に送られる。
【0020】
縦ダクト15は、サイクロン排気ダクト14から流入した含塵エアを散水ダクト16側へ下降して導く流路であり、サイクロン排気ダクト14の背面側に設けられる。この縦ダクト15に流入した含塵エアは散水ダクト16に送られる。
【0021】
散水ダクト16は、縦ダクト15から流入した含塵エアに対してミスト状の水を接触させる流路であり、縦ダクト15の背面側に設けられている。
なお、縦ダクト15及び散水ダクト16は、風速や湿式集塵機1内スペースに基づいてダクト断面積及び形状が設定されるが、粉塵とミストとの混合効率を考慮すると断面積はできる限り大きくし、形状は湿式集塵機1内スペースを有効に活用することを考えて、長方形とすることが好ましい。
【0022】
散水ノズル17は、散水ポンプ21による吐出圧力により、散水ダクト16を流れる含塵エアに対してミスト状の水を散水するものであり、散水ダクト16内に複数本設置されている。この散水ノズル17は、ミスト径100〜1000μmの水を、流量10〜200L/minで噴霧する。この散水ノズル17により散水されたミスト状の水と接触した含塵エアは気液混合して気液混合含塵エアとなる。
なお、散水ノズル17の設置数は、ミスト径や必要流量によって任意に決定され、集塵する粉塵の粒径を考慮してミスト径の異なる散水ノズルを複数組み合わせて配置することも可能である。
【0023】
ここで、散水ダクト16及び散水ノズル17は、含塵エアにミスト状の水を散水して気液混合させる一次気液混合機構として機能する。この一次気液混合機構により気液混合された含塵エアは吐出ダクト18に送られる
【0024】
吐出ダクト18は、ブロア22の吸引力を利用して、一次気液混合機構により気液混合された含塵エアを水槽19の水面に吹き付けるものであり、散水ダクト16の背面側の、水槽19の水面から0〜200mmの位置に設けられている。吐出ダクト18により、気液混合含塵エアは水面に向けて5〜30m/sの風速で吹き付けられることによりミストを生じさせて、このミストと粉塵の衝突によって、より団粒化した気液混合含塵エアとなる。
【0025】
水槽19は、吐出ダクト18により気液混合含塵エアが吹き付けられることによって、ミストを生じて団粒化した気液混合含塵エアを生成するものであり、また、気液分離部20により分離された粉塵を捕集するものである。この水槽19の底部は傾斜面24に形成され、沈殿した粉塵を最下部に設けられたダストバンカ25に移動させて堆積させる。
【0026】
ここで、吐出ダクト18及び水槽19は、気液混合含塵エアを水槽19の水面に吹き付けることによって団粒化させる二次気液混合機構として機能する。この二次気液混合機構により団粒化した気液混合含塵エアは気液分離部20に送られる。
【0027】
気液分離部20は、二次気液混合機構により団粒化した気液混合含塵エアから、粉塵を含む水と清浄化したエアとを分離するものであり、分離した粉塵を含む水を効率よく水槽19内に戻すように5〜10°傾斜をつけて水槽19の上部に設けられている。
【0028】
この気液分離部20は、目の大きさや目開き寸法により気液分離性能が異なる3種類のメッシュデミスタを、内側にいくほど目が細かくなるように2〜10層積層して構成される。メッシュデミスタは、金属製あるいは樹脂製の線材の間隔が0.5〜5mmとなるように、メッシュ状に編みこまれたシートに複数のピラミッド状の凹凸を形成したものである。
【0029】
このメッシュデミスタからなる気液分離部20は、線材への衝突、隙間を通過する際の慣性力、ピラミッド状の凹凸による凝集効果によって、団粒化した気液混合含塵エアの気液分離を行うことができる。
この気液分離部20により分離された粉塵を含む水は水槽19に送られ、また、清浄化したエアはブロア22に送られる。
【0030】
散水ポンプ21は、水槽19から水を吸引し、吐出圧力により散水ノズル17にミストを供給するものである。この散水ポンプ21と水槽19は流入流路26により連通し、また、散水ポンプ21と散水ノズル17は流出流路27により連通している。なお、複数の散水ノズル17に均一に圧力を負荷して均一なミストを供給するために散水ポンプ21と散水ノズル17との間には分配器28が設けられている。なお、この散水ポンプ21は、渦巻きポンプ、ラインポンプ、チューブポンプ等の液体を送液でき、圧力や送液量の条件を満たすものにより構成される。
【0031】
ブロア22は、気液分離部20により分離された清浄化したエアを吸引して機外に排出するものであり、気液分離部20の背面側に設けられている。このブロア22の背面側には排出ファン29を有する送風ダクト30が設けられ、ブロア22により排出ファン29を介して清浄化したエアが機外に排出される。
【0032】
次に、上記のように構成された湿式集塵機1の動作について説明する。図2はこの発明の実施の形態1に係る湿式集塵機1の動作を示すフローチャートである。
湿式集塵機1の動作では、図2に示すように、まず、取込ファン10は含塵エアを取り込む(ステップST21)。すなわち、取込ファン10は、レーザ加工機やプラズマ加工機等の金属加工機から発生した高温ヒューム含有粉塵を含む含塵エアを取り込む。この取込ファン10により取り込まれた含塵エアは(マルチサイクロンの場合にはダンパ11を介して)サイクロン部12に送られる。
【0033】
次いで、サイクロン部12は粗粒粉塵を除去する(ステップST22)。すなわち、サイクロン部12は、取込ファン10により取り込まれた含塵エアを旋回させて、遠心力によって含塵エアから粗粒粉塵を分離させて除去する。このサイクロン部12により分離された粗粒粉塵は、水の貯められたダストボックス13により捕集される。また、サイクロン部12により粗粒粉塵が除去された含塵エアはサイクロン排気ダクト14及び縦ダクト15を介して散水ダクト16に送られる。
【0034】
次いで、一次気液混合機構は一次気液混合を行う(ステップST23)。すなわち、一次気液混合機構は、散水ダクト16内で、サイクロン部12からサイクロン排気ダクト14及び縦ダクト15を介して送られた含塵エアに対して、散水ノズル17によってミスト状の水を散水することにより気液混合させる。この一次気液混合機構により気液混合された含塵エアは吐出ダクト18に送られる。
【0035】
次いで、二次気液混合機構は二次気液混合を行う(ステップST24)。すなわち、二次気液混合機構は、吐出ダクト18により、散水ダクト16から送られた気液混合含塵エアを水槽19の水面に吹き付けることによって団粒化させる。この二次気液混合機構により団粒化された気液混合含塵エアは気液分離部20に送られる。
【0036】
次いで、気液分離部20は清浄化したエアを分離する(ステップST25)。すなわち、気液分離部20は、吐出ダクト18から送られた団粒化した気液混合含塵エアを、清浄化したエアと粉塵を含む水とに分離する。この気液分離部20により分離した清浄化したエアはブロア22に送られる。一方、気液分離部20により分離した粉塵を含む水は、水槽19に送られ傾斜面24によりダストバンカ25に粉塵を堆積させる。
次いで、ブロア22はエアを排出する(ステップST26)。すなわち、ブロア22は、気液分離部20により分離された清浄化したエアを吸引して機外に排出する。
【0037】
ここで、ステップST22において、サイクロン部12によって含塵エアに含まれる粗粒粉塵を除去することによって高い集塵効率を得ることができる。また、この粗粒粉塵を水が貯められたダストボックス13に堆積させることにより、粗粒粉塵の再飛散を防止し、粗粒粉塵を冷却することで粉塵爆発やサイクロン部12での発火を防止することができる。また、このダストボックス13を取り外すことで、堆積した粗粒粉塵を容易に機外に排出することができる。
【0038】
また、ステップST23における散水したミストと粉塵を接触させることによる一次気液混合処理と、ステップST24における気液混合含塵エアを水槽19の水面に吹き付けることによる二次気液混合処理との二段階の気液混合処理を行うことによって、従来の集塵機ではなし得なかった高い集塵効率を得ることができる。
【0039】
以上のように、この実施の形態1によれば、サイクロン部12による粗粒粉塵を除去する粗粒粉塵除去処理と、一次気液混合機構によるミストと粉塵を接触させる一次気液混合処理及び二次気液混合機構による気液混合含塵エアを水面に吹き付ける二次気液混合処理の二段階の気液混合処理とを行うように構成したので、高い集塵効率を得ることができる。また、水が貯められたダストボックス13に粗粒粉塵を堆積させることで、粉塵爆発や火災を防止することができる。さらに、このダストボックス13を取り出すことによって粉塵を容易に機外に排出することができ、メンテナンス性を改善することができる。
【0040】
実施の形態2.
実施の形態1では、二段階の気液混合処理の前段にサイクロン部12を設けて粗粒粉塵除去処理を行うように構成したが、実施の形態2は、水槽40で粗粒粉塵を除去するように構成したものである。
図3はこの発明の実施の形態2に係る湿式集塵機1の構成を示す図である。
図3に示す実施の形態2に係る湿式集塵機1は、図1に示す実施の形態1に係る湿式集塵機1の構成から、ダンパ11、サイクロン部12、ダストボックス13、サイクロン排気ダクト14及び縦ダクト15を削除して、水槽19を水槽40に変更したものであり、その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
また、実施の形態2に係る湿式集塵機1の動作は、図2に示す実施の形態1に係る湿式集塵機1の動作からステップST22の粗粒粉塵除去処理を削除したものであり、その他の処理については同様であり、その説明を省略する。
【0042】
水槽40は、図3に示すように、第1〜3の槽(第1〜3の水槽)41〜43、第1〜3の仕切り板44〜46及び粉塵除去部47から構成されている。
【0043】
第1の槽41は、水槽40の中間に位置し、吐出ダクト18により気液混合含塵エアが吹き付けられて団粒化させるものであり、また、この気液混合含塵エアに含まれる粗粒粉塵及び気液分離部20により分離された粉塵を捕集するものである。この第1の槽41は、第1の仕切り板44により第2の槽42と底部で連通した連通部48を有して分割され、第2の仕切り板45によって第3の槽43と分割されている。また、第1の槽41の中間位置には第3の仕切り板46が設けられ、第1の仕切り板44と共に、捕集した粉塵の沈殿を促進する役割を果たす。
【0044】
なお、この第1の槽41の底部は、第2の槽42の後述するダスト溜まり部50に粉塵が移動させやすいように20°〜40°の傾斜面49に形成されている。これは20°未満では粉塵が流動せず、40°以上ではスペースの面で困難であるためである。なお、スペース等により20°未満の傾斜とする場合には、この傾斜面49に水晶等の振動子を設置して強制的に粉塵を流動させることも可能である。
【0045】
第2の槽42は、第1の槽41から連通部48を介して移動された粉塵を堆積させるダスト溜まり部50を有するものである。この第1の槽41のダスト溜まり部50に堆積した粉塵は粉塵除去部47により機外に排出される。
【0046】
第3の槽43は、第1の槽41により粉塵が除去された水が第2の仕切り板45を乗り越えて流れ込むものであり、流入流路26により散水ポンプ21と連通している。この第3の槽43の水は散水ポンプ21により吸引されて散水ノズル17にミストが供給されることにより循環する。
【0047】
なお、第1,2の槽41,42間の連通部48の開口寸法及び第1〜3の仕切り板44〜46の設置間隔は、粉塵の沈殿を阻害しないように、流速が沈殿速度よりも遅くなるように設計される。
【0048】
粉塵除去部47は、第2の槽42のダスト溜まり部50に堆積した粉塵を機外に排出するものである。ここで、金属加工機により加工される被加工物が鉄あるいはステンレスである場合、発生する粉塵は磁性を有する酸化鉄(例えばFe)であることから、磁石を用いて粉塵を機外に排出することが可能である。
【0049】
そこで、粉塵除去部47として、ステンレスや樹脂製の非磁性体の鞘(片側が閉じたパイプ)52に、ネオジウム、フェライト等のマグネットバー51を挿入したものを用いる。この粉塵除去部47をダスト溜まり部50に浸漬して、鞘52の外周に粉塵を吸着させる。その後、粉塵除去部47を取り出し、マグネットバー51を鞘52から引き抜くことで鞘52の周囲に付着した粉塵を排出する。
【0050】
次に、上記のように構成された水槽40における粉塵除去処理について説明する。
第1の槽41は、吐出ダクト18により気液混合含塵エアが吹き付けられることによって粗粒粉塵を捕集し、また、気液分離部20により分離された粉塵を捕集する。また、第1の槽41内の流速は、第1,3の仕切り板44,46によって方向転換することによる遠心力を受けて減速して、粉塵の沈殿が促進される。
【0051】
次いで、沈殿した粉塵は、第1の槽41の底部の傾斜面49によって第2の槽42のダスト溜まり部50に移動され堆積される。このダスト溜まり部50に堆積した粉塵は粉塵除去部47により機外に排出される。
【0052】
一方、第1の槽41により粉塵が除去された水は、第2の仕切り板45を乗り越えて第3の槽43に流入する。この第3の槽43に流入した水は、散水ポンプ21により吸引されて散水ノズル17にミストとして供給される。
【0053】
図4は第1〜3の槽41〜43底部の水に含まれる粉塵の粒度分布を示す図である。図4において、横軸は粉塵の粒径[μm]を示し、縦軸はその発生頻度[%]を示している。
第1〜3の槽41〜43底部から採取した水中に含有される粉塵の粒度は、図4に示すように、第1の槽41が最も粗く、第2の槽42、第3の槽43の順に徐々に細かくなり、水槽40に捕集された粉塵の沈殿分離が機能していることがわかる。
【0054】
以上のように、この実施の形態2によれば、水槽40を第1〜3の槽41〜43に分割して、第1の槽41で粗粒粉塵及び気液分離部20により分離された粉塵を捕集することによっても、実施の形態1と同様に高い集塵効率を得ることができる。また、第1,3の仕切り板44,46により水槽40内の流速を沈殿速度よりも遅くさせてダスト溜まり部50に堆積させた粉塵を、マグネットバー51を用いた粉塵除去部47によって容易に機外へ排出することができ、メンテナンス性を改善することができる。
【0055】
なお、この実施の形態2では、第2の槽42に粉塵除去部47を設けてダスト溜まり部50に堆積した粉塵を機外に排出するように構成したが、第1,3の槽41,43、あるいは実施の形態1における水槽19にこの粉塵除去部47を設けて、粉塵を機外に排出するように構成してもよい。
【0056】
また、この実施の形態1,2の湿式集塵機1の水槽19,40に、濾過精度1〜120μmの樹脂製のフィルタを有するカートリッジを取り付けて、ポンプにより水槽19,40内の水をこのカートリッジに通水させるように構成してもよい。
例えば、実施の形態2の第3の槽43にこのカートリッジを取り付けた場合、第1の槽41により沈殿分離できなかった細かい粉塵もこのカートリッジで除去可能なため、より一層の水の浄化が可能となり、水槽40内の洗浄頻度を少なくすることができ、メンテナンス性をより改善することができる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、気液分離部20を、金属製又は樹脂製の目開きの異なるメッシュデミスタを積層することによって構成したが、実施の形態3は、スリットを有する衝突板を積層することによるメカニカルセパレータにより構成したものである。
図5はこの発明の実施の形態4における気液分離部20の構成を示す図であり、図5(a)は縦断面図であり、図5(b)は平面図である。
気液分離部20は、図5に示すように、フィンプレート部70及びフレーム71から構成される。
【0058】
フィンプレート部70は、団粒化した気液混合含塵エアを衝突させるステンレス薄板からなる衝突板であり、2〜10mm間隔で短冊状のフィン72をフレーム71にはめ込んで配置することによりスリットを有して構成される。なお、フィン72は短辺方向に山形に折り曲げられて形成されている。このように形成されたフィンプレート部70を2〜6層積層することによって気液分離部20を構成している。
【0059】
以上のように、この実施の形態3によれば、スリットを有するステンレス薄板からなるフィンプレート部70を積層して構成される気液分離部20を用いた湿式集塵機1によっても、実施の形態1,2と同様の効果を得ることができる。
また、フィンプレート部70のスリット間隔、積層数等を変更することによって、気液混合含塵エアの衝突回数を変えることができ、所望の集塵性能を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 湿式集塵機、10 取込ファン、11 ダンパ、12 サイクロン部、13 ダストボックス、14 サイクロン排気ダクト、15 縦ダクト、16 散水ダクト(一次気液混合機構)、17 散水ノズル(一次気液混合機構)、18 吐出ダクト(二次気液混合機構)、19 水槽(二次気液混合機構)、20 気液分離部、21 散水ポンプ、22 ブロア、23 含塵エア取込口、24 傾斜面、25 ダストバンカ、26 流入流路、27 流出流路、28 分配器、29 排出ファン、30 送風ダクト、40 水槽(二次気液混合機構)、41〜43 第1〜3の槽(第1〜3の水槽)、44〜46 第1〜3の仕切り板、47 粉塵除去部、48 連通部、49 傾斜面、50 ダスト溜まり部、51 マグネットバー、52 鞘、70 フィンプレート部、71 フレーム、72 フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塵エアに含まれる粗粒粉塵を分離させて除去するサイクロン部と、
前記サイクロン部により粗粒粉塵が除去された含塵エアにミストを接触させて気液混合させる散水ダクトと、
前記散水ダクトにより気液混合された含塵エアを水槽の水面に向けて吹き付けて団粒化させる二次気液混合機構と、
前記二次気液混合機構により団粒化された気液混合含塵エアから粉塵を含む水と清浄化したエアを分離し、前記粉塵を含む水を前記水槽に戻す気液分離部と、
前記気液分離部により分離されたエアを排出するブロアと
を備える湿式集塵機。
【請求項2】
前記サイクロン部により分離された粗粒粉塵を捕集する、水が貯められたダストボックスを備える
ことを特徴とする請求項1記載の湿式集塵機。
【請求項3】
含塵エアにミストを接触させて気液混合させる散水ダクトと、
前記散水ダクトにより気液混合された含塵エアを水面に吹き付けて団粒化させる二次気液混合機構と、
前記二次気液混合機構により吹き付けられた気液混合含塵エアから粗粒粉塵を捕集する第1の水槽と、
前記第1の水槽に捕集された粉塵が堆積される、前記第1の水槽と底部で連通する第2の水槽と、
前記第2の水槽により粉塵が除去された水が流入する第3の水槽と、
前記第3の水槽から水を吸引し、前記一次気液混合機構にミストを供給するポンプと、
前記二次気液混合機構により団粒化された気液混合含塵エアから粉塵を含む水と清浄化したエアを分離し、前記粉塵を含む水を前記第1の水槽に戻す気液分離部と、
前記気液分離部により分離されたエアを排出するブロアと
備える湿式集塵機。
【請求項4】
前記水槽のいずれかに、粉塵を機外に排出する粉塵除去部が設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の湿式集塵機。
【請求項5】
前記水槽のいずれかに、フィルタを有するカートリッジと、前記水槽の水を前記カートリッジに通水させるポンプとが設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項記載の湿式集塵機。
【請求項6】
前記気液分離部は、目開き寸法が異なる複数のメッシュデミスタを積層して構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項記載の湿式集塵機。
【請求項7】
前記気液分離部は、スリットを有する金属薄板からなる衝突板を積層して構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項記載の湿式集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−136277(P2011−136277A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297162(P2009−297162)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(598052713)長崎菱電テクニカ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】