説明

湿式電子写真装置

【課題】 従来と比して、中間転写体に起因するゴースト、下地かぶり等の発生をなくして、画像品質を向上することができる湿式電子写真装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 表面がゴム部材により被覆され、該ゴム部材の表面に保持されたトナー像を被印刷物に転写する中間転写体と、被印刷物にトナー像を転写した後のゴム部材の表面にクリーニング液を塗布する塗布手段と、ゴム部材に当接して、クリーニング液と共に中間転写体上の残留トナーを除去するトナー除去手段と、を備え、トナー除去手段は、ゴム部材よりも剛性の高い部材で形成されている湿式電子写真装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に保持されたトナー像を被印刷物に転写する中間転写体を備えた湿式電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体現像剤(トナーとキャリア液を有する)を用いた湿式電子写真装置が知られている。湿式電子写真装置では、感光体ドラム表面上をレーザにより露光することにより感光体ドラム上に静電潜像を形成し、感光体ドラム上に液体現像剤中のトナーを転移させることにより感光体ドラム上に静電潜像に応じたトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写体に転写し、その後、トナー像を中間転写体から記録紙等の被印刷物に転写する(印刷する)。
【0003】
上述のような湿式電子写真装置では、中間転写体から被印刷物へトナー像を転写する際、トナーを被印刷物へ100%転写することは技術的に困難であり、転写後、中間転写体上にはトナーが僅かに残る。その残留トナーは、その後に印刷される画像にゴーストとして現れたり、白紙部分に下地かぶりとして発生し、被印刷物に形成される画像の品質を低下させる原因となる。
【0004】
従来より、中間転写体上の残留トナーをクリーニングする手段として、クリーニングブレードやクリーニングロール等が用いられている。クリーニングブレードやクリーニングロールは、被印刷物にトナー像を転写した後の中間転写体の表面に当接するように配置されており、残留トナーを拭き取るないしは掻き落とす機能を有する。
【0005】
また、例えば、特許文献1には、画像担持体表面に作られた液体トナー画像を、その表面がシリコン系化合物により被覆された中間転写体に転写した後、最終被印刷体に転写するプロセスにおいて、該液体トナーの成分である有機溶剤を含浸させた部材により該中間転写体のクリーニングを行うことを特徴とする画像作成方法が記載されている。該画像作成法によれば、少量の残留トナーが、中間転写体クリーニング部材により拭き取られる。例えば、クリーニング部材は、液体トナーの一成分である有機溶剤を含浸させたシートである。該画像作成方法では、中間転写体の加熱とクリーニング部材に含まれる有機溶剤との相乗効果により残留トナーをクリーニングし、長時間連続運転でも安定した良好な画像を被印刷体に作成できる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−28342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のようなクリーニングブレードやクリーニングロール等を用いるクリーニング手段では、残留トナーを完全に除去できるわけではない。例えば、残留トナーを完全に除去することが困難な理由の一つとして、中間転写体の表層がゴム素材であることにある。例えば、そのゴム素材の表面粗さを約1μmにまで抑えて形成したとしても、トナーの平均粒度が2μm程度である場合、トナーの粒度分布により、1μmよりも小さいトナーが、中間転写体の表面粗さに起因する窪みの中に入ってしまう。
【0008】
すなわち、クリーニングブレードは、中間転写体表面の窪みが深い場合、その窪みの奥まで入り込めずトナーに直接接触できない可能性があるため、その窪みの奥に付着しているトナーを掻き出すことができない。また、クリーニングローラは、ブレードのように機械的にトナーを掻き落とす作用とトナーと逆極性のバイアスをクリーニングロールに印加して電気的にトナーを引き寄せる作用との2面性をもってクリーニングを行う。しかし、クリーニングローラとトナーとが接触できないような深い窪みであれば十分にトナーを除去することができない。
【0009】
また、特許文献1に記載の画像作成方法では、有機溶剤(クリーニング液)を用いると共に中間転写体を加熱するため、有機溶剤を用いない手法と比して残留トナーの除去効果は向上すると考えられるが、中間転写体に加熱の機構が必要であるため、その構成は複雑となってしまう。また、特許文献1では、長時間連続運転のためには有機溶剤を連続的に供給する必要があるものと考えられるが、有機溶剤をどのようにして供給するかの具体的構成が示されていない。
【0010】
そこで本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、第一に、従来と比して、簡単な構成により、中間転写体に起因するゴースト、下地かぶり等の発生をなくして、画像品質を向上することができる湿式電子写真装置を提供することを目的とする。第二に、該湿式電子写真装置において、中間転写体のクリーニング効率を高めるためのクリーニング液を供給する具体的構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明では、表面がゴム部材により被覆され、該ゴム部材の表面に保持されたトナー像を被印刷物に転写する中間転写体と、被印刷物にトナー像を転写した後のゴム部材の表面にクリーニング液を塗布する塗布手段と、ゴム部材に当接して、クリーニング液と共に中間転写体上の残留トナーを除去するトナー除去手段と、を備え、トナー除去手段は、ゴム部材よりも剛性の高い部材で形成されていることを特徴とする湿式電子写真装置を提供する。
【0012】
上述の湿式電子写真装置によれば、トナー像を記録紙等に転写した後の中間転写体の表面にクリーニング液を供給することにより、クリーニング液と残留トナーとが接触し、ブレード等のトナー除去手段の押圧による効果で、残留トナーを除去する効率を高めることができる。したがって、中間転写体におけるゴースト、下地かぶりの発生を抑え、従来と比して画像品質を向上することができる湿式電子写真装置を提供することができる。
【0013】
トナー除去手段は、ゴム硬度が約60°から80°のゴムで形成されていることを特徴とする。また、ゴム部材のJIS K6253硬度が約20から60であることを特徴とする。また、中間転写体のゴム部材の表面粗さは、1μmから5μmであることを特徴とする。
【0014】
また、トナー除去手段は板状のブレードであり、ブレードにより残留トナーを機械的に掻き落とすことを特徴とする。或いは、トナー除去手段はクリーニングローラであり、クリーニングローラにより残留トナーを機械的に掻き落し且つ電気的に引き離すことを特徴とする。さらに、塗布手段は、残留トナーを機械的に掻き落とし且つ電気的に引き離すクリーニングローラとしての機能も併せ持つことを特徴とする。また、クリーニング液が、トナーを搬送するためのキャリア液であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の湿式電子写真装置は、塗布手段にクリーニング液を供給するためのクリーニング液供給手段をさらに備え、クリーニング液供給手段は、トナーを搬送するためのキャリア液をクリーニング液として供給することを特徴とする。或いは、記塗布手段にクリーニング液を供給するためのクリーニング液供給手段をさらに備え、クリーニング液供給手段は、該湿式電子写真装置内から排出されるキャリア液を含む廃液をクリーニング液として供給することを特徴とする。さらに、クリーニング液供給手段は、中間転写体にトナー像を転写する機能を有する感光体ドラムにおいて、中間転写体にトナー像を転写した後に排出される廃液をクリーニング液として供給することを特徴とする。
【0016】
また、塗布手段はローラ形状であり、クリーニング液供給手段はクリーニング液搬送手段を有し、クリーニング液搬送手段は塗布手段の回転軸と平行な回転軸を有する螺旋形状体であり、クリーニング液搬送手段の回転により、塗布手段の回転軸方向に沿ってクリーニング液が搬送されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
したがって、本発明は、従来と比して、簡単な構成により、中間転写体に起因するゴースト、下地かぶり等の発生をなくして、画像品質を向上することができる湿式電子写真装置を提供し、また、該湿式電子写真装置において、中間転写体のクリーニング効率を高めるためのクリーニング液を供給する具体的構成を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る湿式電子写真装置の具体的な実施形態を図を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る湿式電子写真装置100を示す(第一実施形態)。湿式電子写真装置100は、ハウジング1、保持ローラ10、現像剤供給ローラ12、現像ローラ14、スクイズローラ16、攪拌ローラ24、現像剤供給管28、帯電器32、ブレード121、ブレード141を備える現像部と、感光体ドラム18、帯電器34、ブレード40、レーザ30を出力する図示しない光源ユニットを備えるトナー像形成部と、中間転写ローラ20、2次転写ローラ22、ブレード41、キャリア塗布ロール42とを備える転写部と、定着ローラ36,38を備える定着部と、を有する。
【0020】
各ローラ等の画像形成時の回転方向は、図1に示すように、保持ローラ10、現像ローラ14、中間転写ローラ20、定着ローラ36が時計回り、現像剤供給ローラ12、スクイズローラ16、感光体ドラム18、2次転写ローラ22、定着ローラ38、キャリア塗布ロール42が反時計回りである。なお、キャリア塗布ロール42は、時計回りであってもよい。
【0021】
また、保持ローラ10、現像剤供給ローラ12、現像ローラ14、スクイズローラ16は、それぞれの回転軸が互いに平行となるようハウジング1の側面に回転可能に軸支されている。同様に、感光体ドラム18、中間転写ローラ20、2次転写ローラ22、キャリア塗布ローラ42、定着ローラ36,38も現像部の各ローラと回転軸が互いに平行となるように湿式画像形成装置内の所定の位置にそれぞれ回転可能に軸支されている。
【0022】
現像剤供給管28は、保持ローラ10と現像剤供給ローラ12の回転軸方向中央付近の位置の上方に配置されている。現像剤供給管28は、図示しない液体現像剤源から現像剤を供給する。
【0023】
帯電器32,34はそれぞれ現像ローラ14、感光体ドラム18の上部付近(1時ないしは2時方向付近)に近接配置されている。
【0024】
記録紙26の印刷時の進行方向は図中右側から左側へ向かう方向である。記録紙26は、中間転写ローラ20と2次転写ローラ22の間でトナーが転写され、その後、定着ローラ36,38を経て、装置外部へ排出される。
【0025】
現像剤は、トナーとキャリア液からなる混合液であり、図示しない現像剤容器において所定の濃度に調整されている(例えば、トナーとキャリア液の重量比が3:7)。キャリア液は、例えば石油系の溶剤を用いることができる。現像剤容器から図示しないポンプによりくみ上げられた現像剤は現像剤供給管28から、保持ローラ10外周、現像剤供給ローラ12外周、及びハウジング1の側壁により形成されるくさび形状の空間である現像剤保持部41に供給されて保持される。
【0026】
保持ローラ10が時計回り、現像剤供給ローラ12が反時計周りにそれぞれ回転し、現像剤が保持ローラ10と現像剤供給ローラ12との間のギャップに入り込むことにより、現像剤供給ローラ12に現像剤が塗布される。
【0027】
現像剤供給ローラ12は、その表面に複数の微細な溝が形成されている。その溝は、例えば深さが数μmから数十μm程度であり且つ1インチ中に数百本程度形成されている。現像剤供給ローラ12の溝は、グラビアロール等の分野で広く用いられている表面コート等の技術を用いて形成可能である。その溝は、例えば軸方向と斜行して形成される。好ましくは、軸方向に対して45度斜行するように形成される。現像剤供給ローラ12に現像剤が十分に塗布されると、溝内部にまで現像剤が入り込む。
【0028】
現像剤が塗布された現像剤供給ローラ12は、その後さらに回転し、ブレード121によって表面の現像剤が掻き落とされ、残った現像剤はほぼ、溝に入り込んだもののみとなる。
【0029】
現像剤供給ローラ12は、その表面が現像ローラ14の表面に多少押圧されて回転軸方向において均一に接するように組み付けられている。したがって、溝に現像剤を有する現像剤供給ローラ12の表面が、現像ローラ14との接触位置に達すると、現像剤が現像ローラ14側へ移動し、溝の深さに応じた均一な厚みの現像剤の薄層が現像ローラ14上に形成される。
【0030】
現像ローラ14には約+500Vのバイアスが印加され、現像ローラ14の表層には、現像ローラ14の回転軸方向に沿って延びるように配置された帯電器32によって、約+5kVのコロナバイアスが印加される。また、感光体ドラム18の近傍に配置された帯電器34は、感光体ドラム18の回転軸方向に沿って延びており、反時計回りに回転する感光体ドラム18の表面付近を+700V程度に均一に帯電させる。
【0031】
感光体ドラム18は、帯電器34により帯電された後、画像形成情報に基づいて感光体ドラム18の回転軸方向(主走査方向)に走査されるレーザ30により露光される。レーザ30が照射された位置(点)は電位が+100V程度にまで低下し、その結果+700Vと+100Vのコントラストを有する静電潜像が感光体ドラム18上に形成される。
【0032】
静電潜像が形成された感光体ドラム18がさらに回転し、現像ローラ14上の現像剤の薄層と接触すると、キャリア液が感光体ドラム18に付着し、感光体ドラム18上の電位が低下した位置のみにトナーが引き寄せられて移動する。すなわち、現像ローラ14の表面付近は電位が+500Vであり、感光体ドラム18の露光された部分は電位が+100Vであるとき、トナー(プラス電荷を有する)は、現像ローラ14に約+500Vを印加することにより形成される現像電界によって静電潜像に移動する。一方、電位が+700Vの部位にはトナーは付着しないため、感光体ドラム18上には、静電潜像に対応した、キャリア液を含むトナー像が形成される。
【0033】
スクイズローラ16は、感光体ドラム18に近接配置されており、反時計周りに回転し、感光体ドラム18に付着したキャリア液の量を調整する機能を有する。したがって、スクイズローラ16を経た感光体ドラム18上には、所定量のキャリア液を含むトナー像が形成されている。
【0034】
時計回りに回転する中間転写ローラ20には−100V程度が印加されているため、プラス電荷を有するトナーが感光体ドラム18から中間転写ローラ20へと移動する。その結果、中間転写ローラ20上にトナー像が転写される。
【0035】
反時計周りに回転する2次転写ローラ22は、−1kV程度が印加されており、中間転写ローラ20と2次転写ローラ22に挟持される位置にある記録紙26上では、中間転写ローラ20上のトナーが2次転写ローラ22側へと引き寄せられ、記録紙26上にトナーが転移し、結果としてトナー像が記録紙26に転写される。その後、記録紙26は、定着ローラ36,38における所定の加熱・加圧等により、トナーが記録紙26に定着される。
【0036】
ハウジング1の底部付近には、攪拌ローラ24が備えられている。保持ローラ10から重力により落下する現像剤、現像剤供給ローラ12及び現像ローラ14に備えられているブレード121,ブレード141によって掻き落とされた現像剤、スクイズローラ16によって取り除かれたキャリア液等はそれぞれハウジング底部付近に溜まる。攪拌ローラ24は、螺旋形状を有し、溜まった現像剤は攪拌ローラ24の回転により、攪拌されながら所定の方向に移動させられ、現像剤容器へ回収される。こうして回収された現像剤は、キャリア液とトナーの濃度調整が行われ、再利用される。
【0037】
キャリア塗布ロール42は、中間転写ローラ20の周面において、2次転写ローラ22とブレード41との間に配置されている。キャリア塗布ロール42の表面は、例えば、スポンジ、フェルト等、キャリア液を保持すると共に中間転写ローラ20にキャリア液を塗布できる素材で形成されている。キャリア塗布ロール42は、ロール形状としているが、板状であってもよい。
【0038】
キャリア塗布ロール42により塗布されるクリーニングのための媒体は、後述するようにトナーを移動させやすくする機能が必要であるという点では現像剤に含まれるキャリア液が最適であると考えられる。したがって、本発明の実施形態においては、クリーニングのための媒体としてキャリア液を用いている。しかし、クリーニングのための媒体は、キャリア液に限定されるものではなく、他の成分であっても同一の機能・作用を果たすものに置換可能である。
【0039】
ブレード41は、中間転写ローラ20に圧接されており、キャリア塗布ロール42によりキャリア液が塗布された後の中間転写ローラ20の表面の残留トナーを掻き出す機能を有する。また、ブレード41は、例えば、ゴム等の素材で形成されており、中間転写ローラ20表面のゴムよりも硬質な素材で形成されている。ブレード41は例えばゴム硬度約60°〜80°のものが使用される。
【0040】
図2は、キャリア塗布ロール42にキャリア液を供給するためのキャリア液搬送ユニット120を説明するための図であり、湿式電子写真装置100の一部を示す斜視図である。
【0041】
ハウジング2は、感光体ドラム18等を支持している。ハウジング2からハウジング1の下方に延びるように配設された搬送パイプ110は、感光体ドラム18から排出される廃現像剤を搬送する機能を有する。当該廃現像剤は、感光体ドラム18からブレード40により掻き取られたトナーおよびキャリア液である。廃現像剤は、中間転写ローラ20にトナー像を転写した後の現像剤であり、比較的キャリア液が多い現像剤であるため、中間転写ローラ20のクリーニングの媒体として利用しやすい。なお、以下キャリア液という場合には、ここでいう廃現像剤を含むものとする。
【0042】
搬送パイプ110は、ハウジング1の下方に備えられたキャリア液搬送ユニット120へ接続されている。また、キャリア液搬送ユニット120には、廃現像剤を排出するための排出パイプ130が備えられている。
【0043】
図3は、キャリア液搬送ユニット120の概略構成図である。キャリア液搬送ユニットは、キャリア液搬送手段122を有する。
【0044】
キャリア液搬送手段122は、回転軸がキャリア塗布ロール42の回転軸と平行であり、回転軸方向の長さがキャリア塗布ロール42の長さと同程度の螺旋形状を有している。廃現像剤は、キャリア液搬送手段122の回転と共に図中左側から右側へと搬送される。その間、廃現像剤は、キャリア塗布ロール42に接触しているため、キャリア塗布ローラ42は、廃現像剤を吸収する。また、キャリア液搬送手段122は、ブレード41(図1)により掻き取られたトナー及びキャリア液を回収する機能も有する。それら回収されたものは、廃現像剤の移動と共に排出パイプ130から排出される。
【0045】
本発明の実施形態では、キャリア液搬送ユニット120が、感光体ドラム18からの廃現像剤を用いるため、現像剤のリサイクルができる。すなわち、新たにキャリア液を供給する機構を設ける必要がなくなる。しかし、キャリア塗布ロール42にキャリア液を供給するための機構は、キャリア液搬送ユニット120に限定されるものではなく、例えば、キャリア液のみを保持する容器を別途用意しておいてそこからキャリア液のみを供給するような構成であってもよい。そのような構成とすれば、トナーを含まない純粋なキャリア液をキャリア塗布ロール42に供給することができる。
【0046】
図4は、ブレード41により、中間転写ローラ20上の残留トナーを掻き取る原理を説明するための図である。
【0047】
中間転写ローラ20は、その表面が、JIS K6253硬度が約20〜60の導電ソリッドゴムにより形成されている。該導電ソリッドゴムとしては、例えば、ウレタン、NBR(ニトリルゴム)、シリコン、エピクロドリン等が用いられる。また、導電ソリッドゴムの抵抗値は、10〜1010Ωのものが使用可能である。また、表面粗さは1μm〜5μmのものを使用することができる。例えば、表面粗さ5μm程度であれば、従来(1μm程度)と比して中間転写ローラ20の製造コストを抑えることができる。
【0048】
図4(a)および図4(b)は中間転写ローラ20が所定量回転する際のブレード41との接触部付近を示す図である。中間転写ローラ20上には、表面粗さによる微細な溝20aが存在する。図4(a)に示すように、溝20aには、残留トナー200が付着している。記録紙26には、中間転写ローラ20最表面に位置するトナーは転写され易いが、溝20aに入り込んだトナーは転写され難いため、溝20a内部に残留トナー200として付着したままとなる。
【0049】
ブレード41は、中間転写ローラ20の表層よりも硬い部材であるので、中間転写ローラ20に所定量食い込む。中間転写ローラ20に対するブレード41の先端は、軌跡20cを通る。ブレード41の先端は、溝20aが浅ければその溝の底部まで入り込めるが、深い溝であればその底部までは届かない。
【0050】
キャリア塗布ローラ42により塗布されたキャリア液300は、中間転写ローラ20の表面に所定の厚みで保持されると共に溝20aに入り込む。キャリア液300は、溝20a内部の残留トナー200に接触する。残留トナー200は、予め、中間転写ローラ20と2次転写ローラ22との間において、2次転写ローラ22側に引き寄せられるように力が加えられていたため、中間転写ローラ20から離れやすい状態になっている。キャリア液300が残留トナー200に接すると、残留トナー200は溝20aからさらに離れやすくなり、一部は、キャリア液300中に浮遊することとなる。
【0051】
図4(b)は、溝20a内部の残留トナー200を掻き取る様子を示す図である。中間転写ローラ20の回転により、ブレード41が溝20aを通過する際には、ブレード41の圧力により溝20aが押し潰される。溝20aが押し潰されると、溝20aの容積が小さくなり、キャリア液300及びキャリア液300中の残留トナー200が絞られるように押し出される(以降、この現象・効果を「絞り効果」と称すものとする)。したがって、中間転写ローラ20上の、ブレード41が通過した部分では、キャリア液300および残留トナー200が除去される。
【0052】
なお、従来は、ブレード41の先端の軌跡20cよりも深い溝がある場合は、ブレード41がその溝の底部までは届かないため、残留トナー200を機械的に直接掻き取ることは困難であった。しかし、本発明の実施形態では、溝20aにキャリア液300が入り込むことにより、残留トナー200を溝の内部から分離させやすくし、さらに絞り効果により、ブレード41が届かない場所の残留トナー200をも除去することができるという効果を奏する。
【0053】
図5は、本発明の第二実施形態を説明するための図であり、ブレード41の代わりにクリーニングロール50を用いてクリーニングを行う場合を示すものである。
【0054】
中間転写ローラ20の周囲には、ブレード41と同様の位置にクリーニングロール50が配置される。クリーニングロール50は、その回転軸が中間転写ローラ20の回転軸が平行であり、ロール周面が中間転写ローラ20に圧接するように配置されている。クリーニングロール50は、SUS等のローラにPFAをコーティングすることにより形成されている。また、クリーニングローラの抵抗値10〜1011Ωは程度のものが使用可能である。また、クリーニングロール50は、トナーと逆極となるバイアス(クリーニングバイアス)を印加して使用する。このクリーニングバイアスにより、残留トナーを電気的に引き付けることができる。なお、中間転写ローラ20にもトナーと逆極のバイアスが印加されているため、クリーニングバイアスは中間転写ローラ20のバイアスよりも大きくなければならない。
【0055】
クリーニングローラ50により残留トナーを除去する原理は、図4において説明したブレード41による機械的な「絞り効果」と、クリーニングバイアスによる電気的な残留トナーの引き寄せである。クリーニングローラ50による「絞り効果」は、ブレード41によるものと同様であるため、その説明は省略する。
【0056】
本発明の第二実施形態においては、クリーニングローラ50のクリーニングバイアスにより電気的に残留トナーを引き寄せる。残留トナーは、クリーニングバイアスにより中間転写ローラ20上からクリーニングローラ50のほうへ移動しようとする。その際、残留トナーはキャリア液中を移動する(キャリア液が介在しなければ、たとえクリーニングローラ50にクリーニングバイアスが印加されていたとしても、残留トナーはクリーニングローラ50に接触しなければほとんど移動することはできない)。クリーニングローラ50側に移動した残留トナーは、その後、ブレード41’で掻き取られる。
【0057】
また、クリーニングローラ50は、図中時計回りに回転しても反時計周りに回転してもよい。クリーニングローラ50を図中反時計回りに回転させると、逆方向に回転する中間転写ローラ20に対して順方向となるため、中間転写ローラ20に負荷を与えることなくクリーニングが可能となる。一方、クリーニングローラ50を図中時計周りに回転させると、同方向に回転する中間転写ローラ20との間の絞り効果は多少向上するが、中間転写ローラ20に回転負荷を与えてしまう。しかし、クリーニングローラ50の回転方向はどちらの方向であっても残留トナーを除去するという一定の効果は達成可能である。
【0058】
図6は、本発明の第三実施形態を説明するための図である。本実施形態は図1に示す実施形態のキャリア塗布ロール42をキャリア塗布ロール42’に置き換えたものである。キャリア塗布ロール42’はキャリア塗布ロール42と図5に示すクリーニングローラ50の機能を併せ持つ。すなわち、キャリア塗布ロール42’キャリアを塗布しながら、クリーニングバイアスを印加することができる。したがって、キャリア塗布ロール42’の位置において、残留トナーを中間転写ローラ20の最表面付近に引き寄せることができる。その結果、キャリア塗布ロール42’の位置において、残留トナーが引き寄せられるので、ブレード41におけるトナー除去効果が向上する。
【0059】
また、図5に示した第二実施形態のキャリア塗布ロール42を、図6に示すキャリア塗布ロール42’と置き換える構成であってもよい。その場合も、第二実施形態におけるクリーニングローラ50でのトナー除去効果が向上する。
【0060】
従来技術からみた本発明の有効な効果を以下にまとめる。
【0061】
まず、従来技術の問題点である画質の低下を引き起こすゴースト、下地かぶりの発生メカニズムは、以下のようである。トナー像が記録紙に転写される際、トナー像中のトナーはトナーとは逆極性が印加された2次転写体に引き寄せられる。ほとんどのトナーは記録紙上に転移するが、100%完全に転移させることは不可能であるため、一部のトナーは中間転写体上に残存する。残留したトナーは、2次転写体のバイアスの影響を受けているため、中間転写体上からは離れやすくなっている。この残留トナー付近には、わずかのキャリア液が残存してはいるものの、中間転写体表面の凹部に入り込んだものはクリーニングによっても除去されにくい。
【0062】
クリーニング位置を経てもさらに残っている残留トナーは、感光体ドラムと中間転写体との転写位置(以下1次転写位置)を通過する。このとき、感光体ドラムから十分なトナーとキャリア液が残留トナーの上に転写される。この転写により新たなトナーが供給されないところ(静電潜像によりトナーが引き寄せられない位置)には、クリーニング位置を経た残留トナーに十分なキャリア液が供給される。この残留トナーは中間転写体から離れやすくなっているため、十分に供給されたキャリア液中を容易に移動できるようになる。また、新たにトナーが供給されたところ(静電潜像によりトナーが引き寄せられる位置)は、新たなトナー層と残留トナーとが混ざり、残留トナーが新規トナーと共にもう一度凹部の奥深くまで入り込む。その結果、次の2次転写時(トナー像の記録紙への転写時)に、移動しやすくなった残留トナーが白紙部分に印字ゴースト、下地かぶりとなって現れ、中間転写体凹部には残留トナーとしてトナーが残る。
【0063】
上述のような残留トナーに対し、例えば、中間転写体表層をコートや薄厚チューブなどで覆い、中間転写体表面を滑らかにし、さらに中間転写体を加温することによりトナーを軟化させて中間転写体上でフィルム化して、トナー像の2次転写効率を向上させ、残留トナーの発生を低減する方法等が行われていた。また、そのような方法では、100%の2次転写効率を得られないため、軟化したフィルム状のトナーをフェルトやシートで根こそぎ取る機構も考案されている。しかし、そのような機構は複雑かつ大掛かりであり、コストアップの要因となる。
【0064】
また、中間転写体の表面粗さ精度向上や表面をコートすることにより、中間転写体表面の凹凸をなくし、トナーの凹部への入り込みを防ぐ対策がなされていた。しかし、この対策だけでは、依然わずかであるが可視化できるゴースト、下地かぶりが発生していた。また、中間転写体に薄厚チューブをかぶせて、表面を平滑面にし、クリーニングする方法もあるが、この場合、ゴースト、下地かぶりなどはかなり軽減されるが、記録紙への転写効率の低下や電気的リークが発生し、クリーニング以外で印字の品質に悪影響を及ぼす可能性があった。
【0065】
そこで、本発明は、上記ゴーストと下地かぶりを改善するために、2次転写位置と中間転写体上の残留トナーをクリーニングする位置との間に、キャリア液或いは感光体ドラムクリーニングで発生した廃液を塗布する。このことにより、上記説明した原理に基づき、十分なキャリア液を供給することにより、2次転写後の残留トナーが移動しやすくなる。その結果、クリーニングブレードやクリーニングロールの絞り効果を利用してクリーニングを行うと、ゴーストや下地かぶりを可視化できない程度に抑制でき、印字品質の満足する湿式電子写真装置を提供することができる。また、本発明の原理によれば、加熱により残留トナーを軟化させる構成を必要としないため、簡単な構成で、高効率の残留トナークリーニングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第一実施形態の湿式電子写真装置を示す図である。
【図2】キャリア液搬送ユニットの外観図である。
【図3】キャリア液搬送ユニットの概略構成図である。
【図4】クリーニングの機構を説明するための図である。
【図5】本発明の第二実施形態の湿式電子写真装置を示す図である。
【図6】本発明の第三実施形態の湿式電子写真装置を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
18 感光体ドラム
20 中間転写ローラ
22 2次転写ローラ
26 記録紙
40 ブレード
41 ブレード
42 キャリア塗布ローラ
50 クリーニングロール
100 湿式電子写真装置
110 搬送パイプ
120 キャリア液搬送ユニット
122 キャリア液搬送手段
130 排出パイプ
200 残留トナー
300 キャリア液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がゴム部材により被覆され、該ゴム部材の表面に保持されたトナー像を被印刷物に転写する中間転写体と、
被印刷物にトナー像を転写した後の前記ゴム部材の表面にクリーニング液を塗布する塗布手段と、
前記ゴム部材に当接して、前記クリーニング液と共に前記中間転写体上の残留トナーを除去するトナー除去手段と、を備え、
前記トナー除去手段は、前記ゴム部材よりも剛性の高い部材で形成されていることを特徴とする湿式電子写真装置。
【請求項2】
前記トナー除去手段は、ゴム硬度が約60°から80°のゴムで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の湿式電子写真装置。
【請求項3】
前記ゴム部材のJIS K6253硬度が約20から60であることを特徴とする請求項1または2に記載の湿式電子写真装置。
【請求項4】
前記中間転写体の前記ゴム部材の表面粗さは、1μmから5μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の湿式電子写真装置。
【請求項5】
前記トナー除去手段は板状のブレードであり、前記ブレードにより残留トナーを機械的に掻き落とすことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の湿式電子写真装置。
【請求項6】
前記トナー除去手段はクリーニングローラであり、前記クリーニングローラにより残留トナーを機械的に掻き落し且つ電気的に引き離すことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の湿式電子写真装置。
【請求項7】
前記塗布手段は、残留トナーを機械的に掻き落とし且つ電気的に引き離すクリーニングローラとしての機能も併せ持つことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の湿式電子写真装置。
【請求項8】
前記クリーニング液が、トナーを搬送するためのキャリア液であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の湿式電子写真装置。
【請求項9】
前記塗布手段にクリーニング液を供給するためのクリーニング液供給手段をさらに備え、前記クリーニング液供給手段は、トナーを搬送するためのキャリア液をクリーニング液として供給することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の湿式電子写真装置。
【請求項10】
前記塗布手段にクリーニング液を供給するためのクリーニング液供給手段をさらに備え、前記クリーニング液供給手段は、該湿式電子写真装置内から排出されるキャリア液を含む廃液をクリーニング液として供給することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の湿式電子写真装置。
【請求項11】
前記クリーニング液供給手段は、前記中間転写体にトナー像を転写する機能を有する感光体ドラムにおいて、前記中間転写体にトナー像を転写した後に排出される廃液をクリーニング液として供給することを特徴とする請求項10に記載の湿式電子写真装置。
【請求項12】
前記塗布手段はローラ形状であり、
前記クリーニング液供給手段はクリーニング液搬送手段を有し、
前記クリーニング液搬送手段は前記塗布手段の回転軸と平行な回転軸を有する螺旋形状体であり、前記クリーニング液搬送手段の回転により、前記塗布手段の回転軸方向に沿ってクリーニング液が搬送されることを特徴とする請求項9または11のいずれかに記載の湿式電子写真装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−206381(P2007−206381A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25204(P2006−25204)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】