説明

満タン検出方法及びインクジェット方式画像形成装置

【課題】誤検知を防止した満タン検出方法を提供する。
【解決手段】満タンが検出された場合(キャップ62内がインクで満タンであると予備的に判断された場合)、キャップ62内に泡が発生しているか否かを判断するために、先ず、キャップ62内の泡を消す消泡動作が実行される。この消泡動作は、キャップ62を所定時間(例えば20秒間)だけ放置して待機させ(S1102)、その後、吸引ポンプ204を所定時間(例えば5秒間)だけ稼動させてキャップ62からインクを吸引する動作(S1103)である。この吸引動作が終了後、キャップ62内がインクで満タンになったか否かを再び判断する(S1104)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドから排出されたインクを受けるキャップがインクで満タンになったか否かを検出する満タン検出方法及びこの方法を実行するインクジェット方式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク(インク滴)を吐出するインク吐出口が複数形成されたインク吐出口形成面(フェイス面)を有する記録ヘッドを備え、複数のインク吐出口から選択的に記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェット記録装置)が広く知られている。このインクジェット方式画像形成装置では、記録中や待機中に記録ヘッドのノズルやインク吐出口の周りに増粘したインクやゴミが溜まったり、記録ヘッドの液室内に泡が溜まったりすることがある。このような場合は、インク吐出の不良や記録の乱れといった不具合が発生する。このような不具合を解決するために、インクジェット記録装置においては、記録ヘッド内のインクを強制的に排出させ、記録ヘッド内に溜まった泡や、フェイス面に付着した増粘インクやゴミを取り除いたり、弾性体からなるワイパーブレードによりフェイス面を払拭したりする動作(回復動作)などが知られている。特に長尺ヘッドでは、記録ヘッドの液室内の泡を排出させるために加圧回復によってインクを排出させる機構が用いられることが多い。加圧回復により記録ヘッドからインクを排出して記録ヘッドの液室内の泡を排出する技術では、記録ヘッドから排出されるインク量が多くなり、その排出されたインクを廃インクとした場合は、インクが無駄になりランニングコストが高くなってしまう。そこで、記録ヘッドからゴムキャップに一旦排出されたインクを、フィルターを通してポンプによりサブタンクに戻し、それを記録ヘッドに送って再利用(再使用)する方法が取られている。
【0003】
しかし、記録ヘッドから排出されたインクをフィルタに通して再利用する場合、このフィルターがゴミや増粘したインクにより詰まってインクの流路抵抗が大きくなることがある。このように流路抵抗が大きくなったときは、吸引ポンプによってキャップからサブタンクなどにリサイクルされるインクの単位時間当たりの流量が減少してくる。最悪の場合、記録ヘッドから排出される単位時間当たりの廃インク量が、リサイクルされる単位時間当たりのインク量を上回ってしまい、ゴムキャップからインクが漏れ出してしまうことがある。また、記録ヘッド内やインク流路の途中で発生してキャップに強制的に排出された気泡(泡)と、キャップ内で発生した気泡とでキャップ内が満たされてしまい、ゴムキャップから気泡が漏れ出してしまうこともある。さらに、吸引ポンプ自体の故障によりゴムキャップからインクが漏れ出してしまうこともある。
【0004】
上記の問題を解決するために、フィルターの下流側に圧力スイッチや圧力センサを取り付けておき、その検出圧力によってフィルタの詰まりや、ポンプの故障を判断しキャップからのインクや泡の漏れ出しを防止する構成が知られている(第1の解決策、例えば特許文献1参照。)。
【0005】
また、キャップ部に電極を用いた検知センサを配置しておき、この検知センサでインクの液面を検知して、キャップ内がインク又は気泡で満タンになったことが検知されたときはエラーを発生させ、装置を停止させる構成が知られている(第2の解決策、例えば特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−015836号公報
【特許文献2】特開2006−264205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した第1の解決策では、圧力をトリガにしてインク漏れを防止する構成であるので、誤検知も多く、また、キャップに溜まった気泡の検知は実質的に不可能である。
【0007】
上記した第2の解決策では、キャップ内のインクや気泡を直接に検知するので検知精度は良好である。ところで、キャップ内のインクの満タンを検知してエラーを発生させる原因(要因)としてフィルタの詰まりによるインク吸引量の低下及び吸引ポンプの故障が挙げられる。このような原因によってキャップ内のインクが満タンになった場合はキャップからインクが漏れ出るので、エラーを発生させて装置を停止し、サービスマン等の保守作業を受ける必要がある。
【0008】
しかし、記録ヘッド内やインク流路の途中で発生してキャップに強制的に排出された気泡とキャップ内で発生した気泡とでキャップ内が満たされた場合も、気泡によって通電する(電気が流れる)ので検知センサがインク満タンを検知してキャップ内がインクで満タンであると判断され、エラーを発生させる。このエラー発生に従って装置を停止させた場合、キャップから気泡が漏れ出すことを防止する効果はある。しかし、フィルタの詰まりや吸引ポンプの故障などではないので、サービスマン等の保守作業を受ける必要は無いものの、エラーが発生したので装置を停止させて不要な保守作業が実施されることとなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、誤検知を防止した満タン検出方法及びインクジェット方式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の満タン検出方法は、記録ヘッドのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、前記インク吐出口から排出されたインクを受けるキャップがインクで満タンになったか否かを検出する満タン検出方法において、
(1)前記キャップがインクで満タンであるか否かを予備的に判断し、
(2)満タンであると判断されたときは、前記キャップ内の泡を消す消泡動作を実行し、
(3)この消泡動作を実行した後に、前記キャップがインクで満タンであるか否かを最終的に判断し、
(4)この最終的判断に基づいて満タンか否かを検出することを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記消泡動作は、
(5)前記キャップを所定時間だけ放置して待機させ、その後、該キャップからインクを吸引する動作であってもよい。
【0012】
また、前記消泡動作は、
(6)前記キャップを気密にしてその内部を減圧する動作であってもよい。
【0013】
また、上記目的を達成するための本発明の他の満タン検出方法は、記録ヘッドのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、前記インク吐出口から排出されたインクを受けるキャップがインクで満タンになったか否かを検出する満タン検出方法において、
(7)前記キャップがインクで満タンであるか否かを予備的に判断し、
(8)満タンであると判断されたときは、前記キャップを所定時間だけ放置して待機させ、その後、該キャップからインクを吸引し、その後、
(9)前記キャップがインクで満タンであるか否かを最終的に判断し、
(10)この最終的判断に基づいて満タンか否かを検出することを特徴とするものである。
【0014】
ここで、前記キャップがインクで満タンであるか否かを最終的に判断するに先立って、
(11)前記キャップを気密にしてその内部を減圧し、続いて、該キャップからインクを吸引してもよい。
【0015】
また、 上記目的を達成するための本発明のインクジェット方式画像形成装置は、
(12)上記した満タン検出方法を実行し、前記キャップから吸引されたインクを再使用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャップ内がインクで満タンであるか否かを予備的に判断し、満タンであると判断されたときは、キャップ内の泡を消す消泡動作を実行する。この消泡動作によってキャップ内からは気泡が除去されてキャップ内にはインクが残る。これに続けて、キャップ内がインクで満タンであるか否かを最終的に判断し、この最終的判断に基づいてインクが満タンか否かを検出するので誤検知を防止できる。即ち、予備的な判断のときに気泡が存在していても、キャップがインクで満タンでない限りは、インクが満タンであると検出されることはない。この結果、フィルタの詰まりや吸引ポンプの故障などが無いときはエラーは発生せず、装置の停止による生産性の低下を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、長尺の記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置に実現された。
【実施例1】
【0018】
図1を参照して、本願発明のインクジェット方式画像形成装置の一例を説明する。図1は、本願発明のインクジェット方式画像形成装置の一例を示す模式図である。
【0019】
インクジェット方式画像形成装置(プリンタ)10は、このプリンタ10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。プリンタ10には、4つ(4本)の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yが記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクが吐出される。これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの長さは、プリンタ10で印刷できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、画像形成中は固定されて動かない(不動状態である)。
【0020】
4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、プリンタ10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40を用いて4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yを回復させることにより、4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからのインク吐出状態は初期のインク吐出状態に回復する(正常なインク吐出状態に回復する)。回復ユニット40には、回復動作のときに、4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの各インク吐出口が形成されたインク吐出口形成面(フェイス面)22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、図1の例では6色分(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、このうち2色分は記録ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、吸引キャップ52、クリーニングブレード(図示せず)、インク除去部材(図示せず)、ブレード保持部材(図示せず)などから構成されている。
【0021】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給され、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0022】
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置が記録ヘッド22Kの下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて記録ヘッド22Kの複数のインク吐出口からインクを選択的に吐出する。同様に記録ヘッド22C、記録ヘッド22M、記録ヘッド22Yの順に、各色のインクをロ−ル紙Pに吐出してカラー画像を形成する。
【0023】
プリンタ10には、上記の部品・部材の他、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Yや、記録ヘッド22K、22C、22M、22Yにインクを供給したり回復動作をしたりするための各種ポンプ(図示せず)などが備えられている。
【0024】
図2を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。図2は、図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【0025】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング機構50(図1参照)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0026】
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに記録ヘッド制御回路112を経由して(介して)転送する。
【0027】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの吸引等の制御を行う。
【0028】
図3を参照して、上記した記録ヘッド22K、22C、22M、22Yを保持しておくヘッドホルダについて説明する。図3は、ヘッドホルダ等を示す斜視図である。
【0029】
上記した記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、直方体状のヘッドホルダ30に着脱自在に装着されている。ヘッドホルダ30はヘッドアップダウンモータ118(図2参照)によって矢印B方向に上下動する。ヘッドホルダ30は上下動する際に所定の4つの位置で停止できるように構成されており、この4つの位置として、キッピング位置、ワイピング位置、退避位置、印字位置(記録位置)が設定されている。キッピング位置とは、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ys(図1参照)がキャッピング機構50のキャップで塞がれる位置である。ワイピング位置とは、インク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysがブレード66(図4参照)で拭かれるときの位置である(図7で示す位置である)。退避位置とは、インク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysをインクで濡らす位置である(図6で示す位置である)。印字位置とは、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yから記録媒体にインクを吐出する位置である(図8で示す位置である)。
【0030】
ヘッドホルダ30には、キャップ62(図4等参照)を塞ぐキャップ板32が取り付けられている。キャップ板32は、記録ヘッド22K、22C、22M、22Yが印字位置にあるときに、キャップ62(図6参照)のリップ部(上端部)を封止するようになっており、これによりキャップ62内は気密に保たれる。なお、キャッピング機構50はスライド板52に取り付けられており、キャッピングモータ122(図2参照)によって矢印C方向に移動できる構成となっている。スライド板52は矢印C方向に移動する際にキャッピング位置(回復位置)と印字位置で停止するように構成されている。また、スライド板52が図3の矢印C方向のうちの右方向に移動することによりワイピング動作が行われる。
【0031】
上記したキャッピング機構50について、図4から図8までを参照して説明する。
【0032】
図4は、キャッピング機構の概略を示す斜視図である。図5は、リテーナの長手方向一端部(図4における長手方向一端部)とその周辺を示す拡大図である。図6は、退避位置に位置するキャッピング機構を示す一部断面図である。図7は、ワイピング位置に位置するキャッピング機構を示す一部断面図である。図8は、印字位置に位置するキャッピング機構を示す一部断面図である。これらの図では、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。また、これらの図では、記録ヘッド22K用のキャッピング機構50を示しているが、他の記録ヘッド22C、22M、22Y用のキャッピング機構50も同一の構造である。また、下記の説明では記録ヘッド22Kの場合を例に挙げて説明するが、他の記録ヘッド22C、22M、22Yの場合も同様である。
【0033】
キャッピング機構50は、記録ヘッド22Kの長さ方向(図6等の紙面に垂直な方向)に延びる細長い直方体状の回復桶60に種々の部材・部品が固定されている。回復桶60の幅方向(矢印C方向)の中央部には、記録ヘッド22Kのインク吐出口形成面22Ksを塞ぐ(キャッピングする)キャップ62が取り付けられている。キャップ62はフェイス面22Ksを取り囲んで塞ぐものであり、図4に示すように細長い楕円形状である。
【0034】
回復桶60の内部のうちキャップ62の下方の部分には、記録ヘッド22Kのノズル22Kb(図示せず)から押し出されたインクが溜るインク溜り(図示せず)が形成されている。インク溜りの一端部(回復桶60の長手方向一端部)には、吸引ポンプ204(図3参照)によってサブタンク206(図9参照)にリサイクルされるインクを排出するためのリサイクル孔(開口部)64が形成されている。
【0035】
図5に示すように、キャップ62の長手方向他端部には、キャップ62内でインクが満タンになったか否かを検出するための電極軸80が挿入される穴が開いており、その穴にはSUS軸である電極軸80が挿入されている。この電極軸80にはSUS板状電極A82が取り付けられ、電極ベース84を経由して回復桶60に固定されている。また、キャップ62の電極軸80が挿入される穴の近傍のスリットには、電極B86が挿入されている。この電極B86は、電極A82と同様に電極ベース84を経由して回復桶60に固定されている。キャップ62内がインクで満タンになったときは、電極A82と電極B86が通電されて満タンになったことが検出される。但し、キャップ62内の一部がインクで残りが気泡で満たされているときにも電極A82と電極B86が通電されて満タンになったことが検出される。プリンタ10では、キャップ62内の気泡(泡)を消し(消泡動作を実行し)、キャップ62内がインクで満タンになったときに満タンを検出するように構成した。この点については後述する。
【0036】
回復桶60の幅方向の一端部には、記録ヘッド22Kのフェイス面22Ksをワイピングする(拭く)ブレード66が配置されている。このブレード66は弾性体からなり(弾性ブレードであり)、回復桶60に固定されたブレードホルダ68に保持されている。また、ブレード66には、インクを搬送するためのインク搬送ブレード69が接触して取り付けられている。さらに、インク搬送ブレード69の下端部には、インクを吸収するインク吸収体67が配置されている。インク搬送ブレード69はブレード66によって拭き取られたインクを下のインク吸収体67に導く機能を有する。
【0037】
キャッピング機構50は、図6等に示すように、回復桶60の幅方向中央部に配置されてその長手方向に延びる細長い直方体状のキャップフレーム70を備えている。キャップフレーム70には、記録ヘッド22Kのフェイス面22Ksから毛管作用によってインクを除去する複数のインク除去部材72と、複数のインク除去部材72とフェイス面22Ksとの距離が所定距離(所定間隔)になるように規制する間隔規制部材74とが保持されている。インク除去部材72と間隔規制部材74は、ばね78によって上方(フェイス面22Ksに向かう方向)に付勢されている。また、キャップフレーム70には、インク吸収体67につながるブレードインクリサイクル孔76が形成されている。ワイピングによってフェイス面22Ksから拭き取られたインクはブレードインクリサイクル孔76を通ってキャップ62の内部に一旦導き入れられる。
【0038】
回復動作の際には、キャッピング機構50が記録ヘッド22Kの真下に位置し、記録ヘッド22Kが下降してフェイス面22Ksが間隔規制部材74の上端に接触する(回復位置に移動する)ことにより、回復動作等の回復処理が開始される。この回復処理の際には、フェイス面22Ksのインク吐出口からインクが吐出される。
【0039】
図9を参照して、画像形成装置10に組み込まれている回復ユニットについて説明する。
【0040】
図9は、画像形成装置の回復ユニットを示す模式図である。図9では、記録ヘッド22Kにインクを供給し、この記録ヘッド22Kを回復させる回復ユニットを示すが、他の記録ヘッド22C、22M、22Yでも同じ構造の回復ユニットによって同じ手順で回復される。また、図9では、インクの動きを示す矢印は記録ヘッドの回復動作を実行しているときのインクの流れを示す。
【0041】
印字中は、ロ−ル紙Pの上方の所定位置に各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yが固定されており、6つのキャッピング機構50は、インク吐出を妨げないように各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの側方に位置している。一方、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの回復動作を行う際には、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yが上方に移動し、6つのキャッピング機構50のうち4つのキャッピング機構50が各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysの真下に位置する。
【0042】
記録ヘッド22Kからのインク吐出状態を初期の吐出状態に回復させる際には、先ず、CPU100(図2参照)の制御によってポンプモータ124(図2参照)が起動されて加圧ポンプ202が動作開始する。この動作開始以前に(先立って)回復弁204bは閉じており、リサイクル弁204cは開いている。なお、加圧ポンプ202とほぼ同時にCPU100は吸引ポンプ204も起動しておくように制御する。
【0043】
加圧ポンプ202が駆動することにより、サブタンク206内のインクは加圧ポンプ202を経由して記録ヘッド22Kの共通液室22Kaに向かうが、出口側の回復弁204bが閉じているので、加圧されたインクの全ては記録ヘッド22Kのノズル22Kbからキャッピング機構50のキャップへ押し出される。これにより、記録ヘッド22Kのノズル22Kbは健全な状態(初期のインク吐出状態)に回復されることになる。
【0044】
キャッピング機構50のキャップ内のインク溜り(図示せず)に押し出されたインクは吸引ポンプ204が駆動することにより、フィルタ208、リサイクル弁204c、吸引ポンプ204を順に経由して吸引されてサブタンク206に戻るのでリサイクルされることとなる。また、サブタンク206には、その内部を大気を連通させる大気開放弁204dが取り付けられている。さらに、吸引ポンプ204とインクカートリッジ28Kの間のインク供給管210には、供給弁212やフィルタ214が取り付けられている。
【0045】
上記した回復動作とは別に回復弁204bを開いた状態でサブタンク206と記録ヘッド22Kとの間でインクを循環させることにより、共通液室22Kaの内部で成長した気泡を取り除く等を目的にした種々の動作があるが詳しくは省略する。
【0046】
図10を参照して、記録ヘッドを回復させる回復動作の手順を説明する。
【0047】
図10は、記録ヘッドの一般的な回復動作の手順を示すフロー図である。
【0048】
図10に示すフローは、プログラムROM104(図2参照)に記憶された制御プログラムに従ってCPU100(図2参照)により実行される。記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの回復動作は同時に同じ手順で行われるので、ここでは記録ヘッド22Kを例に挙げて説明する。この回復動作を開始するにあたっては、先ず、記録ヘッド22Kをキャッピング位置から回復位置へ移動する(S1001)。回復位置では記録ヘッド22Kのフェイス面22Ksは間隔規制部材74(図6等参照)に接触するように設定されている。すなわち、記録ヘッド22Kが回復位置に位置するときは、間隔規制部材74がフェイス面22Ksに当接している。
【0049】
続いて、回復弁204b(図9参照)を閉じて(S1002)、吸引ポンプ204及び加圧ポンプ202を駆動させる(ONする)(S1003、S1004)。これら2つのポンプ204,202を駆動させることにより、記録ヘッド22Kのノズル22Kbからインクが押し出されてキャップ62(図4等参照)の下方のインク溜り(図示せず)に導かれる。このときに、上述したキャッピング機構50になっているので、ノズルから押し出されたインクの種類(フェイス面22Ksとの濡れ性)に拘らず、フェイス面22Ksから毛管現象でインクが効率良く除去される。インク溜り(図示せず)に溜まったインクは動作中の吸引ポンプ204によってサブタンク206に戻るので、インクはリサイクルされることとなる。
【0050】
上記の回復動作(記録ヘッド22Kを回復位置に位置させて、回復弁204bを閉じて吸引ポンプ204及び加圧ポンプ202をONする動作)を所定時間継続させる(S1005)。この所定時間が経過後に、加圧ポンプ202を停止させる(Offする)(S1006)。続いて、記録ヘッド22Kをキャッピング位置に戻し(S1007)、予備的な吐出を所定発数行う(S1008)。続いて、ブレード66(図6等参照)によって記録ヘッド22Kのフェイス面22Ksを拭う(ワイプする)ことにより、フェイス面22Ksに付着しているインクを拭き取る(S1009)。さらに所定時間経過したときに(S1010)、吸引ポンプ204を停止して(Offして)(S1011)、キャッピング機構50(図1等参照)内のインク溜り(図示せず)からのインク吸引動作を停止してこのフローを終了する。
【0051】
図11を参照して、図4等に示すキャップ62内がインクで満タンになった(インクが所定量貯まった)か否かを検出する満タン検出方法について説明する。図11は、図4等に示すキャップ62内がインクで満タンになった(インクが所定量貯まった)か否かを検出する手順を示すフロー図である。
【0052】
図11に示すフローは、図10に示す回復動作のフロー図において吸引ポンプON(S1003)から加圧ポンプOFF(S1006)までの間で有効(起動しており、満タン検出状態である)となる。図11に示すフローが起動中は、キャップ62内がインク又は気泡(又は、インク及び気泡)で満タンになったか否かが電極A82と電極B86(検出センサ)によって常に検出されている。図11に示す満タン検出動作が起動した場合、先ず、図5に示す電極A82と電極B86が通電されて満タンになったか否かが判断される(S1101)。電極A82と電極B86が通電される条件は、キャップ62内がインク又は気泡(又は、インク及び気泡)で満タンになったときである。
【0053】
このように電極A82と電極B86が通電された場合、従来は、キャップ62内がインクで満タンであると判断して、図9に示すフィルタ208が詰まったと判断し(又は、吸引ポンプ204の故障であると判断し)、プリンタ10(図1等参照)はエラーを発生していた。しかし、図11のフローでは、電極A82と電極B86が通電されても、キャップ62内がインク又は気泡(又は、インク及び気泡)で満タンになったのかを見極めて満タンを検出するようになっている。キャップ62内がインクで満タンになったときにだけプリンタ10(図1等参照)はエラーを発生する。
【0054】
図11に示す満タン検出動作が起動し、電極A82と電極B86が通電されて満タンが検出された場合(S1101であり、キャップ62内がインクで満タンであると予備的に判断された場合)、キャップ62内に泡が発生しているか否かを判断するために、先ず、キャップ62内の泡を消す消泡動作が実行される。この消泡動作は、キャップ62を所定時間(例えば20秒間)だけ放置して待機させ(S1102)、その後、吸引ポンプ204を所定時間(例えば5秒間)だけ稼動させてキャップ62からインクを吸引する動作(S1103)である。
【0055】
この吸引動作が終了後、キャップ62内がインクで満タンになったか否かを再び判断する(S1104、本発明にいう最終的な判断の一例であるが、ここではS1104を最終的な判断とせずに、中間的な判断としている。)。この判断の結果、満タンであると判断されなかった場合は、フィルタ208の詰まりは無く、吸引ポンプ204の故障も無いので、図10のS1003に進み回復動作を継続させ(S1105)、図11のフローを終了する。一方、S1104で満タンと判断された場合は、フィルタ208の詰まり又は吸引ポンプ204の故障の可能性があるので、これらを確認するための動作を実行する。この動作としては、先ず、記録ヘッド22K等を印字位置に移動させてキャップ62(図4等参照)をキャップ板32(図6等参照)で密閉する(キャップ62を気密にする)(S1106)。続いて、吸引ポンプ204(図9参照)を所定時間(例えば10秒間)だけ作動させて(S1107)、キャップ内を減圧してキャップ62内の気泡を消去する(消泡する)。続いて記録ヘッド22K等を回復位置に移動させ(S1108)、吸引ポンプ204(図9参照)を所定時間(例えば5秒間)だけ作動させて(S1109)キャップ62内のインクを吸引する。
【0056】
続いて、キャップ62内がインクで満タンになったか否かを再び判断する(S1110、本発明にいう最終的な判断の一例でもある。)。この判断の結果、満タンであると判断されなかった場合は、フィルタ208の詰まり又は吸引ポンプ204の故障は無いので、図10のS1003に進み回復動作を継続させ(S1112)、図11のフローを終了する。一方、S1110で満タンと判断された場合は、上記のように消泡動作がし尽くされているので、フィルタ208の詰まり又は吸引ポンプ204の故障の可能性が高く、プリンタ10にエラーを発生させて(S1111)装置の停止などの必要な処理を行う。
【0057】
上記のように消泡動作として待機時間の設定(S1102)及びキャップ62を気密にしてその内部を減圧しても(S1107)、キャップ62内が満タンであると検出された場合には、上述のように記録ヘッド22Kなどからの廃液の増加や、フィルター208(図9参照)の詰まりによる吸引量の低下、又は吸引ポンプ204(図9参照)の故障が考えられる。このような場合、これ以上回復動作を継続したときはキャップ62からインクが漏れ出す危険性が高いので、プリンタ10でエラーを発生させた。動作の過程で満タンを検知しなくなった場合は、消泡動作により発生していた泡が無くなり通常動作に復帰しても問題ないと判断できる。
【0058】
上述したようにプリンタ10によれば、キャップ62からのインク漏れ及び泡の漏れを確実に防止すると共に、装置の停止による生産性の低下を最小限に抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本願発明のインクジェット方式画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【図3】ヘッドホルダ等を示す斜視図である。
【図4】キャッピング機構の概略を示す斜視図である。
【図5】リテーナの長手方向一端部(図4における長手方向一端部)とその周辺を示す拡大図である。
【図6】退避位置に位置するキャッピング機構を示す一部断面図である。
【図7】ワイピング位置に位置するキャッピング機構を示す一部断面図である。
【図8】印字位置に位置するキャッピング機構を示す一部断面図である。
【図9】画像形成装置の回復ユニットを示す模式図である。
【図10】記録ヘッドの一般的な回復動作の手順を示すフロー図である。
【図11】図4等に示すキャップ内がインクで満タンになった(インクが所定量貯まった)か否かを検出する手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0060】
10 プリンタ
22K、22C、22M、22Y 記録ヘッド
62 キャップ
82 電極A
86 電極B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、前記インク吐出口から排出されたインクを受けるキャップがインクで満タンになったか否かを検出する満タン検出方法において、
前記キャップがインクで満タンであるか否かを予備的に判断し、
満タンであると判断されたときは、前記キャップ内の泡を消す消泡動作を実行し、
この消泡動作を実行した後に、前記キャップがインクで満タンであるか否かを最終的に判断し、
この最終的判断に基づいて満タンか否かを検出することを特徴とする満タン検出方法。
【請求項2】
前記消泡動作は、
前記キャップを所定時間だけ放置して待機させ、その後、該キャップからインクを吸引する動作であることを特徴とする請求項1に記載の満タン検出方法。
【請求項3】
前記消泡動作は、
前記キャップを気密にしてその内部を減圧する動作であることを特徴とする請求項1に記載の満タン検出方法。
【請求項4】
記録ヘッドのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、前記インク吐出口から排出されたインクを受けるキャップがインクで満タンになったか否かを検出する満タン検出方法において、
前記キャップがインクで満タンであるか否かを予備的に判断し、
満タンであると判断されたときは、前記キャップを所定時間だけ放置して待機させ、その後、該キャップからインクを吸引し、その後、
前記キャップがインクで満タンであるか否かを最終的に判断し、
この最終的判断に基づいて満タンか否かを検出することを特徴とする満タン検出方法。
【請求項5】
前記キャップがインクで満タンであるか否かを最終的に判断するに先立って、
前記キャップを気密にしてその内部を減圧し、続いて、該キャップからインクを吸引することを特徴とする請求項4に記載の満タン検出方法。
【請求項6】
請求項1から5までのうちのいずれかに記載された満タン検出方法を実行し、前記キャップから吸引されたインクを再使用することを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−5850(P2010−5850A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166093(P2008−166093)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】