説明

準静電界解析装置及び準静電界解析方法

【課題】微細な場所の状態を高精度で検出することができ、半導体デバイスに生じる欠陥の解析に適用可能な準静電界解析装置及び準静電界解析方法を提供する。
【解決手段】レーザ光の波長よりも小さいサイズの孔を有する近接場プローブ15を介して検査対象10に光を照射する。また、準静電界検出プローブ16を検査対象10の表面近傍に配置し、光の照射により発生する準静電界を検出する。制御部20は、検査対象10の光照射位置に対応する位置情報を画像処理部19に出力する。画像処理部19は、準静電界検出プローブ16で検出された準静電界の強度を制御部20から入力される位置情報に対応付けて信号処理し、ステージ11の移動にともなって検査対象10の表面状態の画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を用いて検査対象(試料)の状態を解析する準静電界解析装置及び準静電界解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI等の半導体デバイスは、より一層の微細化及び高集積化が促進されており、それにともなって半導体デバイスの内部に発生する欠陥のサイズも極めて小さくなっている。半導体デバイス内部の欠陥は、それにより発生する異常電流又は異常電圧などにより検出することができる。しかし、近年の半導体デバイスでは、欠陥により生じる異常電流又は異常電圧が極めて小さく、故障部位を高精度に検出して故障原因を解析することが難しくなってきている。
【0003】
半導体デバイスの欠陥検査方法として、オバーク法(OBIRCH:Optical Beam Induced Resistance CHange)及びオービック法(OBIC:Optical Beam Induced Current)が知られている。これらの方法では、いずれも半導体デバイスに電源を接続した状態でレーザ光を照射する。オバーク法では、レーザ照射により発生した熱による電流、電圧又は抵抗の変化を検出する。また、オービック法では、レーザ照射により生成された電子やホールを検出する。
【0004】
その他の方法として、微小な孔(アパーチャ)を有する近接場プローブを備えた光ファイバを使用し、近接場プローブの孔からしみ出す近接場光を使用して、半導体デバイスの端子間の電流又は電圧の変化から配線の欠陥検査を行う検査方法も提案されている。
【0005】
しかし、上述した方法は、いずれも金属配線の形成が完了した後の半導体デバイスにしか適用できない。これに対し、配線形成途中の半導体デバイスの状態の解析が可能なレーザスクイッド(Laser SQUID)法やテラヘルツ法などの解析法が提案されている。レーザスクイッド法では、励起レーザ照射による光起電流によって金属配線を含む閉ループを形成し、その閉ループで生じる磁場を検出する。テラヘルツ法では、パルス状のレーザ光を半導体デバイスに照射し、それにより生じる電磁波を検出する。
【0006】
しかし、レーザスクイッド法及びテラヘルツ法のいずれも、磁場や電磁波を検出するために金属配線を形成する必要がある。そこで、半導体デバイスにレーザ光を照射した際に発生する準静電界を検出することにより、金属配線がなくても半導体デバイスの状態解析が可能な方法(以下、「準静電界検出法」という)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−97839号公報
【特許文献2】特開平9−257882号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】伊藤、他1名、“微小静電界検出プローブによる故障解析手法”、第29回LSIテスティングシンポジウム(LSITS2009),H21.11.11-13、LSIテスティング学会予稿集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の準静電界検出法では、レーザ光の波長限界(光回析)により空間分解能が決定される。例えば波長が1340nmの近赤外レーザを用いた場合の空間分解能は0.7μm程度であり、波長が200nmの紫外光を用いた場合でも空間分解能は0.1μm程度である。近年の半導体デバイスに含まれる素子のサイズは極めて小さいため、上述した方法では欠陥を検出することは可能であるものの、欠陥箇所を詳細に特定することは難しい。
【0010】
以上から、微細な場所の状態を高精度で検出することができ、半導体デバイスに生じる欠陥の解析に適用可能な準静電界解析装置及び準静電界解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一観点によれば、光源と、前記光源から出射される光の波長よりも小さいサイズの孔が設けられ、前記孔を介して前記光源から出射された光を検査対象に照射する近接場プローブと、前記検査対象と容量結合して前記検査対象に発生する準静電界を検出する準静電界検出プローブと、前記検査対象が載置されるステージと、前記ステージを前記近接場プローブに対し相対的に移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記制御部から前記検査対象の位置情報を入力し、該位置情報を前記準静電界検出プローブの出力に対応付けて信号処理する信号処理部とを有する準静電界解析装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記一観点によれば、近接場プローブに設けられた光源から出射される光の波長よりも小さいサイズの孔を介して検査対象に光を照射する。これにより、検査対象に準静電界が発生する。準静電界は、検査対象の表面に沿って広く分布する性質がある。このため、準静電界検出プローブを近接場プローブから離れた位置に配置しても、準静電界を検出することができる。また、準静電界の強度は、検査対象の表面状態に依存する。
【0013】
近接場プローブを検査対象に対し相対的に移動させながら準静電界検出プローブの出力を検査対象の光照射位置に対応させて信号処理すると、検査対象の表面状態に応じた画像を得ることができる。この画像に基づいて、検査対象の状態を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る準静電界解析装置の概要を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は半導体デバイスのpn接合部にレーザ光を照射したときに発生するキャリアによって作られる電界を示す模式図、図2(b)はレーザ照射により発生した電子と正孔とからなる電子双極子を示す模式図である。
【図3】図3は、検査対象の表面近傍に分布する準静電界を示す模式図である。
【図4】図4は、準静電界、誘導電界及び放射電界の各強度と電界発生源からの距離(検査対象から離れる方向の距離)との関係を示す図である。
【図5】図5は、準静電界検出プローブの一例を示す模式図である。
【図6】図6は、準静電界検出プローブの他の例を示す模式図である。
【図7】図7は、近接場プローブの位置と準静電界検出プローブで検出される準静電界の強度との対応を示す図である。
【図8】図8は、近接場プローブ及び準静電界検出プローブの配置の一例を示す模式図である。
【図9】図9は、実施形態の準静電界解析装置により得られる半導体デバイスの画像を模式的に示す図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る準静電界解析装置の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る準静電界解析装置の概要を示すブロック図である。
【0017】
本実施形態に係る準静電界解析装置は、ステージ11と、ステージ駆動部12と、レーザ光源13と、近接場プローブ15を備えた光ファイバ14と、準静電界検出プローブ16と、アンプ18と、画像処理部19と、制御部20と、表示装置21とを有している。
【0018】
検査対象の半導体デバイス(LSIチップ)10は、ステージ11の上に載置される。このステージ11は、制御部20により制御されるステージ駆動部12により駆動されて、水平2軸方向(X軸方向及びY軸方向)に移動する。制御部20は、ステージ駆動部12によるステージ11の移動にともない、ステージ11のX軸方向及びY軸方向の位置を示す位置データを画像処理部19に伝達する。
【0019】
レーザ光源13は、制御部20からの信号に基づいて駆動制御される。レーザ光源13は光ファイバ14と光学的に接続されており、レーザ光源13から出射されたレーザ光は光ファイバ14内をその長さ方向に伝搬する。この光ファイバ14の先端部には近接場プローブ15が設けられており、近接場プローブ15の先端にはレーザ光の波長よりも小さい径の孔(アパーチャ)が設けられている。この近接場プローブ15を介して半導体デバイス10に近接場光を照射すると、半導体デバイス10に準静電界が発生する。準静電界については後述する。
【0020】
本実施形態において、レーザ光源13から出射される光の波長は320nm〜1340nmの範囲内であるとする。また、近接場プローブ15の先端に設けられた孔のサイズ(直径)は100nm以下とする。
【0021】
準静電界検出プローブ16は、検出電極16aを有している。この検出電極16aは半導体デバイス10の近傍に配置されて半導体デバイス10と容量結合し、半導体デバイス10に発生した準静電界を検出する。
【0022】
準静電界検出プローブ16には、バイアス電源17からバイアス電圧が供給される。また、準静電界検出プローブ16の出力はアンプ18により増幅され、画像処理部(信号処理部)19に伝達される。画像処理部19は、準静電界検出プローブ16で検出された準静電界の強度と、制御部20から伝達されたステージ11の位置データとに基づいて、半導体デバイス10の表面画像を生成し、その画像データを表示装置21に伝達する。
【0023】
表示装置21はCRT(cathode ray tube)又はLCD(liquid crystal display)等の画像表示が可能な表示素子を備え、画像処理部19から伝達された画像データに基づく画像を表示する。
【0024】
以下、準静電界について説明する。
【0025】
本実施形態では、近接場プローブ15を介して検査対象(半導体デバイス10)に近接場光を照射する。これにより、検査対象の極めて狭い範囲がレーザ光による熱又は光エネルギーにより励起され、正及び負のキャリア(電子双極子)が発生する。
【0026】
図2(a)は、半導体デバイスのpn接合部にレーザ光を照射したときに発生するキャリアによって作られる電界を示す模式図である。また、図2(b)は、レーザ照射により発生した電子eと正孔hとからなる電子双極子(ダイポールアンテナ)を示す模式図である。ここでは、電子e及び正孔hの電荷はいずれもQとする。また、図2(b)において、dは電気双極子の電子eと正孔hとの間の距離を示し、Pは任意の点を示し、rは電気双極子の中心点Oと点Pとの間の距離を示し、θは電気双極子の中心点Oと点Pとを結ぶ直線とZ軸とのなす角度を示している。
【0027】
マクスウェルの方程式により電気双極子と点Pとの間の電位を求め、距離rで微分して点Pのθ方向の電界Eθを求めると、下記(1)式が導き出される。
【0028】
【数1】

【0029】
ここで、βは波数(周波数:β=2π/λ)を示し、εは誘電率、jは定数である。
【0030】
電界Eθは、準静電界、誘導電界及び放射電界の3つの成分に分割することができる。(1)式の{}括弧内の第1項が準静電界成分、第2項が誘導電界成分、第3項が放射電界成分である。放射電界の強度は距離rに反比例(1/r)し、比較的遠方まで届く。無線通信に使用される電波はこの成分を利用している。
【0031】
誘導電界の強度は距離rの2乗に反比例(1/r2)するので、放射電界ほど遠方までは届かない。誘導電界は、主に低周波回路素子の周りに発生する電界として知られている。
【0032】
準静電界の強度は距離rの3乗に反比例(1/r3)し、誘導電界よりも更に到達距離が短い。しかし、波長に比べて距離rが十分短い場合は、準静電界の強度が放射電界及び誘導電界よりも強くなる。
【0033】
放射電界や誘導電界は、pn接合部に接続される配線の長さやループ電流回路に応じた指向性を有する。従って、指向性の範囲内であれば、検査対象(半導体デバイス)から離れた位置に検出センサを配置しても、これらの電界を検出することができる。一方、準静電界は遠方に届くことはないが、図3に模式的に示すように、検査対象31の表面(表側の面だけでなく裏側の面も含む)近傍に広く分布する性質がある。このため、検査対象31の表面近傍であれば、電界発生源から離れた場所に検出センサを配置しても、準静電界を検出することが可能である。
【0034】
図4は、横軸に距離rをとり、縦軸に電界強度(相対値)をとって、準静電界、誘導電界及び放射電界の各強度と電界発生源からの距離(検査対象から離れる方向の距離)との関係を示したものである。
【0035】
この図4に示すように、準静電界の強度は、検査対象から離れると急激に減少する。準静電界、誘導電界及び放射電界の強度が一致する点の電子双極子(中心点O)からの距離rは、約0.16λである。電界の周波数が3GHz(ギガヘルツ)の場合、距離rは約16mmであり、それよりも近い範囲内では準静電界が支配的となる。
【0036】
なお、レーザ光の照射により発生する電界は、主に近赤外線レーザ光の照射熱によるゼーベック効果(熱起電力)やシリコン基板のバンドギャップよりも高いエネルギーを有するレーザ光を照射した際に生じる電子・正孔対による光起電流によるものである。また、PZT等の強誘電体材料に近赤外線レーザを照射した場合には、発熱に起因する焦電電流による電界が発生する。レーザ光の半導体装置回路の回路パターンからの反射や吸収の違いによって、電界強度に変化が生じる。
【0037】
図5は、準静電界検出プローブ16の一例を示す模式図である。準静電界検出プローブ16として、例えば電界効果トランジスタ(以下、「FET」という)やブリッジ回路を用いることができる。本実施形態では、準静電界検出プローブ16としてFET32を使用した例を示している。このFET32のゲートGに検出電極16aが接続される。FET32のゲート自体を検出電極16aとしてもよい。
【0038】
FET32のソースS及びドレインDはアンプ18に接続されるが、本実施形態ではドレインDとアンプ18との間にバイアス電源17を接続している。このバイアス電源17は、10mV〜5Vのバイアス電圧をFET32に供給する。
【0039】
この準静電界検出プローブ16では、検出電極16aが検査対象31と容量結合して準静電界を検出し、それによってFET32のゲート電圧が変化して準静電界の強度に応じた電流がソースSとドレインDとの間に流れる。この電流をアンプ18で増幅(信号処理)し、画像処理部19により輝度信号に変換して画像を生成する。良好なS/N(信号/ノイズ)比を得るために、準静電界検出プローブ16として、キャリア移動度が高く且つ入力容量が低い(例えば2.0pF以下)FETを使用することが好ましい。
【0040】
検出電極16aは、検査対象に応じて使い分けてもよい。検出電極16aが広い平行面積を有する場合は、検出電界量が多くなるため、電界発生源から数mm離れた場合でも準静電界を検出することができる。従って、半導体装置に組み立てられた状態(樹脂で封止された状態)でも準静電界を検出することが可能になる。
【0041】
また、図6に示すように、検出電極16aと検査対象31との間に誘電率が高い材料からなる部材33を介在させると、検出電極16と検査対象31との間の結合容量が増大し、準静電界をより一層効率的に検出することができる。更に、検出電極16aと検査対象31との間に誘電体材料からなる部材を介在させることにより、検査対象31の表面に金属配線が露出していても検査対象31と検出電極16aとがショートすることなく、準静電界を検出することができる。
【0042】
図7は、近接場プローブ15の位置と準静電界検出プローブ16で検出される準静電界の強度との対応を示す図である。ここでは、半導体デバイス10の表面には、半導体層が露出した領域10aと素子分離層が露出した領域11bとが存在しているものとする。また、近接場プローブ15は、半導体デバイス10の表面上を図中矢印に示す方向に相対的に移動するものとする。
【0043】
近接場プローブ15から半導体デバイス10に近接場光を照射すると、半導体デバイス10では近接場プローブ15の先端の孔(アパーチャ)の径で決まる微小エリアで準静電界が発生する。この準静電界は瞬時に半導体デバイス10の表面に沿って広がり、準静電界検出プローブ16により検出される。
【0044】
図7に示すように半導体デバイス10の表面に半導体層が露出した領域10aと素子分離層が露出した領域10bとがあると、それらの境界部分では近接場光による温度勾配や電界勾配が大きくなり、準静電界検出プローブ16の出力が大きく変化する。
【0045】
以下、本実施形態に係る近接場光準静電界解析装置を使用した解析方法について、図1に示すブロック図を参照して説明する。
【0046】
まず、ステージ11上に検査対象の半導体デバイス10を載置する。そして、近接場プローブ15の先端を半導体デバイス10の表面近傍に配置する。また、準静電界検出プローブ16の検出電極16aを半導体デバイス10の表面近傍に配置する。
【0047】
近接場プローブ15と検出電極16aとを近接して配置する必要はなく、近接場プローブ15と検出電極16aとが離れていてもよい。例えば図8に示すように、近接場プローブ15を半導体デバイス10の上面側に配置し、準静電界検出プローブ16を半導体デバイス15の側面又は下面側に配置してもよい。
【0048】
次に、制御部20からの信号に基づいてレーザ光源13が稼働し、近接場プローブ15から半導体デバイス10に近接場光が照射される。これにより、近接場光が照射された部分に準静電界が発生する。この準静電界は、瞬時に半導体デバイス10の表面に沿って広がり、準静電界検出プローブ16により準静電界が検出される。そして、準静電界検出プローブ16に接続されたアンプ18からは、準静電界検出プローブ16で検出した準静電界の強度に応じた信号が出力される。画像処理部19はアンプ18の出力信号を入力し、そのアンプ18の出力信号に応じた強度の輝度信号を生成する。
【0049】
一方、制御部20は、ステージ駆動部12を制御して、近接場プローブ15が半導体デバイス10の表面を走査するようにステージ11をX軸方向及びY軸方向に移動させる。このステージ11の移動にともなって、制御部20から画像処理部19にステージ11の位置データが伝達される。これにより、画像処理部19では、近接場光が照射されている半導体デバイス10の位置と輝度信号とが対応付けされ、ステージ11のX軸方向及びY軸方向の移動にともなって半導体デバイス10の表面画像が生成される。この表面画像のデータは表示装置21に送られて、表示装置21に半導体デバイス10の表面画像が表示される。
【0050】
図9は、本実施形態の準静電界解析装置により得られる半導体デバイス(LSIチップ)の画像を模式的に示す図である。ここでは、半導体デバイス10を切断してその切断面に近接場プローブ15を配置したときに得られる画像の例を示している。この図9に示すように、本実施形態の準静電界解析装置によれば、微細な素子の断面形状や不純物拡散濃度の違いを可視化させることができる。それにより、例えば不純物拡散領域の形状異常や不純物濃度分布の異常等を検出することができる。
【0051】
本実施形態に係る準静電界解析装置の空間分解能は近接場プローブ15の孔の直径とほぼ同じ(100nm以下)になり、レーザ光の波長よりも小さい領域の状態を解析できる。また、本実施形態の準静電界解析装置は、金属配線を形成する前の半導体デバイスの検査にも適用できる。更に、本実施形態の準静電界解析装置は、検査電極16aを検査対象(半導体デバイス10)に接触させることなく、検査対象の状態解析が可能である。従って、本実施形態に係る準静電界解析装置は、半導体デバイスの故障原因の解析に極めて有用である。
【0052】
なお、従来から、前述したオバーク法やオービック法により故障個所を1μm〜100μm程度の範囲まで絞り込み、その後電子線解析装置により故障個所を更に10nm〜1μmの範囲まで絞り込んで半導体デバイスの故障原因を解析する方法がとられていた。この方法に対し、本実施形態に係る準静電界解析装置を用いた解析方法では、電子線解析装置を使用しなくても故障個所を詳細に解析することができ、解析に要する時間を短縮することができるという利点もある。
【0053】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る準静電界解析装置の概要を示すブロック図である。図10において、図1と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0054】
本実施形態に係る準静電界解析装置では、レーザ光源13と光ファイバ14との間に光変調素子41が配置されている。この光変調素子41には参照信号源(図示せず)から周波数f(例えば、10kHz〜10MHz)の参照信号が与えられる。光変調素子41は、レーザ光源13から出射されたレーザ光を参照信号の周波数fで変調する。これにより、近接場プローブ15の先端から半導体デバイス10に、周波数fで変調された近接場光が照射される。この近接場光により半導体デバイス10に準静電界が発生する。
【0055】
準静電界検出プローブ16は、その検出電極16aが半導体デバイス10と容量結合し、半導体デバイス10に発生した準静電界を検出する。この準静電界検出プローブ15の出力は、ロックインアンプ42に接続されている。
【0056】
ロックインアンプ42にも、参照信号源から周波数fの参照信号が入力される。このロックインアンプ42は、準静電界検出プローブ16の出力から参照信号と同一周波数の信号成分を抽出して画像処理部19に出力する。
【0057】
このように、光変調素子41とロックインアンプ42とを参照信号に同期させて動作させることにより、準静電界検出プローブ16の出力からノイズ成分を除去することができ、S/N比が向上する。これにより、本実施形態に係る準静電界解析装置は、第1の実施形態の準静電界解析装置に比べて空間分解能がより一層向上するという利点がある。
【0058】
なお、本実施形態では光変調素子41を用いてレーザ光源13から出射されるレーザ光を変調する場合について説明したが、参照信号の周波数でダイレクト変調が可能なレーザ光源を使用してもよい。
【0059】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0060】
(付記1)光源と、
前記光源から出射される光の波長よりも小さいサイズの孔が設けられ、前記孔を介して前記光源から出射された光を検査対象に照射する近接場プローブと、
前記検査対象と容量結合して前記検査対象に発生する準静電界を検出する準静電界検出プローブと、
前記検査対象が載置されるステージと、
前記ステージを前記近接場プローブに対し相対的に移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記制御部から前記検査対象の位置情報を入力し、該位置情報を前記準静電界検出プローブの出力に対応付けて信号処理する信号処理部と
を有することを特徴とする準静電界解析装置。
【0061】
(付記2)前記準静電界検出プローブが電界効果トランジスタを含み、該電界効果トランジスタのゲートが前記検査対象と容量結合することを特徴とする付記1に記載の準静電界解析装置。
【0062】
(付記3)前記準静電界検出プローブの入力容量が2pF以下であることを特徴とする付記1又は2に記載の準静電界解析装置。
【0063】
(付記4)前記光源と前記近接場プローブとの間に配置されて前記光源から出射された光を変調する光変調素子と、
前記準静電界検出プローブと前記信号処理部との間に配置されて前記準静電界検出プローブの出力を前記光変調素子の変調周波数で信号処理するロックインアンプと
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の準静電界解析装置。
【0064】
(付記5)前記準静電界検出プローブは、前記検査対象と容量結合する検出電極と、前記検出電極と前記検査対象との間に介在する誘電体部材とを有することを特徴とする付記1に記載の準静電界解析装置。
【0065】
(付記6)ステージ上に検査対象を載置する工程と、
前記光源から出射される光の波長よりも小さいサイズの孔が設けられた近接場プローブを介して前記検査対象に前記光源から出射された光を照射する工程と、
前記検査対象と容量結合した準静電界検出プローブにより前記検査対象に発生する準静電界を検出する工程と、
前記光が照射された前記検査対象の位置と前記準静電界検出プローブにより検出された準静電界とを対応付けて信号処理し、前記検査対象の画像を生成する工程と
を有することを特徴とする準静電界解析方法。
【0066】
(付記7)前記近接場プローブ及び前記準静電界検出プローブは、前記検査対象の同一面上に配置されることを特徴とする付記6に記載の準静電界解析方法。
【0067】
(付記8)前記近接場プローブ及び前記準静電界検出プローブは、前記検査対象の異なる面上に配置されることを特徴とする付記6に記載の準静電界解析方法。
【0068】
(付記9)前記近接場プローブを介して前記検査対象に照射する光を所定の周波数で変調し、前記準静電界検出プローブの出力を前記所定の周波数で動作するロックインアンプで信号処理することを特徴とする付記6乃至8のいずれか1項に記載の準静電界解析方法。
【0069】
(付記10)前記準静電界検出プローブの検出電極と前記検査対象との間に誘電体材料からなる部材を配置することを特徴とする付記6乃至9のいずれか1項に記載の準静電界解析方法。
【符号の説明】
【0070】
10…半導体デバイス(検査対象)、11…ステージ、12…ステージ駆動部、13…レーザ光源、14…光ファイバ、15…近接場プローブ、16…準静電界検出プローブ、16a…検出電極、17…バイアス電源、18…アンプ、19…画像処理部、20…制御部、21…表示装置、31…検査対象、32…FET、33…誘電体材料からなる部材、41…光変調素子、42…ロックインアンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射される光の波長よりも小さいサイズの孔が設けられ、前記孔を介して前記光源から出射された光を検査対象に照射する近接場プローブと、
前記検査対象と容量結合して前記検査対象に発生する準静電界を検出する準静電界検出プローブと、
前記検査対象が載置されるステージと、
前記ステージを前記近接場プローブに対し相対的に移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記制御部から前記検査対象の位置情報を入力し、該位置情報を前記準静電界検出プローブの出力に対応付けて信号処理する信号処理部と
を有することを特徴とする準静電界解析装置。
【請求項2】
前記準静電界検出プローブが電界効果トランジスタを含み、該電界効果トランジスタのゲートが前記検査対象と容量結合することを特徴とする請求項1に記載の準静電界解析装置。
【請求項3】
前記光源と前記近接場プローブとの間に配置されて前記光源から出射された光を変調する光変調素子と、
前記準静電界検出プローブと前記信号処理部との間に配置されて前記準静電界検出プローブの出力を前記光変調素子の変調周波数で信号処理するロックインアンプと
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の準静電界解析装置。
【請求項4】
前記準静電界検出プローブは、前記検査対象と容量結合する検出電極と、前記検出電極と前記検査対象との間に介在する誘電体部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の準静電界解析装置。
【請求項5】
ステージ上に検査対象を載置する工程と、
前記光源から出射される光の波長よりも小さいサイズの孔が設けられた近接場プローブを介して前記検査対象に前記光源から出射された光を照射する工程と、
前記検査対象と容量結合した準静電界検出プローブにより前記検査対象に発生する準静電界を検出する工程と、
前記光が照射された前記検査対象の位置と前記準静電界検出プローブにより検出された準静電界とを対応付けて信号処理し、前記検査対象の画像を生成する工程と
を有することを特徴とする準静電界解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−169615(P2011−169615A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31099(P2010−31099)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】