説明

溶出速度の検証

薬物パッチ(28)上の薬物と共に使用するための装置(50)が説明されており、該薬物パッチは、薬物側と背面側とを含んでいる。吸収材(54)が、面(56)の上に配置されるように、かつ、薬物パッチの下に配置されるように構成される。圧搾面を有する圧搾器具(52)が、薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾するように構成される。その他の実施形態もまた説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、Levinらの米国特許仮出願60/999,512の利益を主張するものであり、その仮出願は、2007年10月17日に出願され、「Dissolution rate verification」というタイトルであって、参照したことにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概しては、医療装置および医療方法に関する。具体的には、本発明は溶出可能な薬物パッチに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
近年多くの薬物が経皮送達(transdermal delivery、経皮デリバリー、経皮投与)のために発案されている。薬物の経皮送達は、多くの患者、とりわけ、経口的または注射によって薬物を投与することが困難に感じる患者にとっては、好ましい投与方法である。
【0004】
Sternらの米国特許出願公開2004/0137044(これは、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、乾燥または凍結乾燥された医薬組成物の経皮送達のためのシステムおよび該システムの使用方法が記載されている。該システムは、薬剤(agent)の経皮送達を促進するための装置を有し、親水性のマイクロチャネルを作り出すものであり、かつ、パッチを有し、該パッチは、医薬的に活性を有する薬剤を有している。該システムは、親水性の薬剤、特に高分子量のタンパク質の経皮送達のために有用であると記載されている。
【0005】
Avrahamiに対する米国特許5,983,135(これは、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、対象の皮膚に対して粉末を送達(デリバリー)するためのデバイスが記載されており、該デバイスは、パッドを有し、該パッドは絶縁材料によって作られかつ上側(upper side)および下側(lower side)を有し、該下側は、粉末を付与した後に皮膚に当てて配置されるものである。電力源がパッドに電位(electrical potential)を印加し、それによって、静電的な力により粉末がパッドの下部に付着し、その後電位が変化されると、該粉末がパッドから放出され、パッドが配置された皮膚に接触するようになる。
【0006】
Chappaらに対する米国特許7,097,850(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、1つまたは複数部分のシステムの形態になっているコーティング組成物が記載され、かつ、湿度が制御された条件下でそのような組成物を適用する方法が記載されており、これらは、デバイス表面をコーティングして、水溶性系(aqueous system)で生物活性物質(bioactive agent)を放出する能力を制御、および/または、改善するために使用される。該コーティング組成物は、ステントやカテーテルなど、送達および/または使用の過程で大きく屈曲しかつ/または拡張する医療器具と共に使用されるために特に適している。該組成物には、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアリル(メタ)アクリレート、ポリアラルキル(メタ)アクリレートまたはポリアリルオキシアルキル(メタ)アクリレートなどの第1のポリマー組成物およびポリ(エチレンコビニルアセテート)などの第2のポリマー組成物との組み合わせで生物活性薬剤が含まれる。
【0007】
Straubらに対する米国特許6,932,983(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、薬物、とりわけ低水溶性薬物が記載されており、それらは、多孔性基質(porous matrix)の形態にて、好ましくは微粒子にて提供され、水性媒体中での該薬物の溶出性を向上させる。該薬物の基質は、次の事項を含むプロセスを用いて作られることが好ましい。(i)薬物(好ましくは低水溶性の薬物)を揮発性溶媒に溶かして薬物溶液を形成すること、(ii)該薬物溶液を少なくとも1つのポア形成試薬とあわせて、乳液、懸濁液または第2の溶液を形成すること、および、(iii)その乳液、懸濁液または第2の溶液から該揮発性溶媒およびポア形成試薬を除去し、薬物の多孔性マトリックスを生じさせること。ポア形成試薬は、薬物溶媒と非混和性の揮発性液体または揮発性固体化合物(好ましくは揮発性塩)のいずれかであってよい。好ましい実施形態では、溶媒およびポア形成試薬を除去するためにスプレー乾燥が用いられる。得られる多孔性マトリックスは、該薬物の非多孔性マトリックス形態と比較して、患者への投与後の溶出速度がより大きいことが記載されている。好ましい実施形態では、多孔性薬物マトリックスの微粒子は、水性媒体と共に再構成されて非経口的に投与されるか、あるいは標準技術を用いて経口投与のために錠剤またはカプセル剤に加工される。
【0008】
Smolenに対する米国特許4,335,438(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、医薬製剤、農業製品、および工業製品の構成要素の溶出試験を行うための方法および装置が記載され、当該方法は、既知の薬物製剤または製品からの溶出特性を予測プロセスのための基準データとして用いるものであり、また、当該装置は、中央処理装置の制御下で、閉じたループと開いたループの両方の動作モードを通じて当該方法を実行するように構築されている。示された実施形態では、単一のフロースルー溶出セルの構成で2つの動作モードを連続的に使用して、インビトロの溶出測定からインビボでのバイオアベイラビリティーの経時変化を予測することが記載され、別の実施形態には、複数の溶出セルを使用すること、および閉じたループと開いたループの動作モードを同時に使用して、内部標準機能を実装することが記載されている。加えて、ランダム入力モデルの動作モードを通じて溶出試験のプロセスにおける適応能力が提供される。
【0009】
Carlsonらに対する米国特許7,024,955(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、試料物質の溶出特性を決定するための方法およびシステム、ならびに複数の試料物質を含むアレイによって規定されたライブラリーの可溶化スクリーニングのための方法およびシステムが記載されている。該方法およびシステムは、非常に小さな試料のサンプリングおよび評価ならびに薬物候補の評価のために好適であると記載されている。
【0010】
Laineらに対する米国特許4,593,563(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、固体物質の溶出速度を正確に決定するための方法および装置が記載されている。該方法および装置が向かっているシステムでは、粉末状であってもよい固体試料が試料ホルダーに置かれ、該試料ホルダーが次いでかん流チャンバー中に浸される。試料の重量は、試料が溶出する時間の関数として測定される。該試料ホルダーは、その中にある試料の量に調節される可変の内部容量を有するため、溶出速度の測定中に実質的に一定の液体/固体の界面面積を維持すると記載されている。
【0011】
Tianらに対する米国特許7,237,436(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、溶出試験または浸漬試験のための器具および方法、とりわけ、医薬製剤または他の製剤が試験中に動いたりまたは新たな方向に向いたりできるのを制限する器具および方法が記載されている。
【0012】
Shahらに対する米国特許3,801,280(その関連部分は、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、固体物質の溶出速度を測定するための装置および方法が記載されている。溶媒用の容器が提供され、固体物質用の穴の開いたチャンバーが該容器内に配置される。回転可能な空洞のフィルターもまた該容器内に位置し、その回転をもたらすための手段が提供される。回転は、フィルタースクリーンに固体粒子が無いままとしかつ溶媒を攪拌するという二重の機能を行う。ポンプ手段により物質含有溶液が空洞のフィルター内から取り出され、それが、溶媒中の溶質濃度を測定するための好適な手段(分光学的測定手段など)に送られる。物質含有溶液はその後、該容器に戻されてもよい。
【0013】
Sacksらの米国特許出願公開2007/0141132(これは、参照したことにより本明細書に組み込まれる)には、経皮パッチ製剤(transdermal patch formulation)が記載されており、該製剤は、ヒト成長ホルモン(hGH)、少なくとも1つの糖、1つのアミノ酸もしくはポリオール、および、緩衝液を有しており、該緩衝液は、該製剤のpHを約5から約9の範囲に保ち、かつ、該製剤は、グリシンおよびマンニトールの両方を含有しない。
【0014】
「FIP/AAPS guidelines to dissolution/in vitro release testing of novel/special dosage forms」というタイトルの論文(Siewertら,AAPS PharmSciTech 2003;4(1) Article 7)(その関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる)には、溶出試験が、医薬産業における薬品開発および品質管理において非常に重要なツールであることが述べられている。即放性(immediate release;IR)の固体経口製剤のために最初は開発され、その後放出制御性/徐放性の固体経口製剤に拡張されたとはいえ、溶出試験は、懸濁剤、口腔内崩壊錠、チュワブル剤、チューインガム、経皮パッチ、半固体局所用製剤、坐剤、インプラント式および注入式の微粒子製剤ならびにリポソームなどの「新規」または「特殊」な様々な剤形に拡大されてきたと記載されている。
【0015】
Siewertの論文では次のように述べられている。全ての製品の薬物放出特性を詳しく調べるために使用され得るような単一の試験システムを工夫することはできない、なぜならば、それらの新規/特殊な剤形の間で製剤設計における著しい違いがあり、それが物理化学的特性および放出特性の大きな違いに繋がっているからである。むしろ、異なる装置、手順および技術がケースバイケースで用いられる。方法は、剤形のカテゴリー、製剤タイプまたは特定の製品に特定されるかもしれない。
【0016】
Alza Corporation(CA,USA)は、「Macroflux(登録商標)」という製品を開発した。これは、精密なマイクロ突起体を持った薄いチタンのスクリーンを組み込んでおり、それが、皮膚に適用されたときに、皮膚の感覚の無い(dead)障壁層を通過する表層経路を生成し、高分子の輸送を可能とすると記載されている。Macroflux(登録商標)製品は、皮膚内へのボーラス送達のために、薬物を、Macroflux(登録商標)のマイクロ突起体のアレイ上にドライコーティングすることと、連続的な受動的または電気輸送式の適用のために薬物レザーバーを用いることとの選択肢を提供する。加えて、Macroflux(登録商標)経路の生成は、皮膚パッチでの処置領域にわたる薬物分布のよりよい制御および皮膚刺激の可能性の低減を可能とすると記載されている。
【0017】
pION(MA,USA)はμDISS Profiler(商標)を製造している。これは、固有の溶出の序列化、多形転移の検出、安定度特性の追跡および平衡溶解度の決定ができると記載されている。
【0018】
以下の特許および特許出願(これらの関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる)に注目してもよい。
Trautmanらに対する米国特許6,855,372、
Flockらの米国特許出願公開2004/0059282、
Horstmannに対する米国特許5,685,837、
Horstmannらに対する米国特許5,230,898、
Crispらに対する米国特許6,522,918、
Murdockに対する米国特許6,374,136、
Flockらに対する米国特許6,251,100、
Marchittoらに対する米国特許出願公開2003/0204163、
Leeらに対する米国特許5,141,750、
Suzukiらに対する米国特許6,248,349、
TsujiらのPCT公開WO 05/088299。
【0019】
以下の論文(これらの関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる)に注目してもよい。
Patel et al., ”Fast dissolving drug delivery systems: An update”, Pharmainfo.net (2006年7月)、
Levin et al., ”Transdermal delivery of human growth hormone through RF-microchannels”, Pharm.Res. 2005年4月;22(4):550-5. Epub 2005年4月7日。
【発明の概要】
【0020】
発明の要旨
本発明のいくつかの実施形態では、薬物パッチ上の薬物の溶出速度(rate of dissolution)が決定される。該実施形態は、典型的には、薬物パッチと共に用いられ、それら薬物パッチは、薬物側(drug side)と背面側(back side)とを有し、薬物側は、対象物の皮膚に当たるように配置されることによって、薬物を対象物に経皮的に送達するように構成されている。該パッチ上の薬物の溶出速度は、同様に製造されるパッチ上の薬物(それが対象物に送達されることになる)の比率の指標(indication)を与えるように決定される。
【0021】
いくつかの実施形態では、実験室において、一群のパッチから1つのパッチを、その薬物側が吸収材と接するように吸収材の上に置く。次いで、薬物パッチと吸収材とを、ある期間にわたっていっしょに圧搾する。溶出した薬物の量の指標(indication)は、吸収材を分析することにより決定される。
【0022】
典型的には、吸収材は、パッチが該吸収材上に置かれる前に湿らされる(wetted)。用途によっては、パッチの上に重りを置くことによって、パッチと吸収材とをいっしょに圧搾する。代替的または付加的には、パッチと吸収材とが、いっしょにクランプ(clamped、締め付け)される。
【0023】
吸収材の内容物は、該吸収材を直接分析することによって、または、該吸収材の内容物を吸収材から抽出し、抽出された内容物を分析することによって、のいずれかで分析される。例えば、圧搾している間に溶出した薬物は、溶液中で吸収材を振とうすることにより吸収材から抽出される。次いで、吸収材から抽出された薬物の量が、クロマトグラフィー、分光法、および/または、別の分析方法を用いて決定される。いくつかの実施形態では、吸収材は、分光法を用いて直接的に分析される。
【0024】
従って、本発明の一つの実施形態によれば、薬物パッチ上の薬物と共に使用するための装置が提供され、該薬物パッチは、薬物側と、背面側とを含んでおり、当該装置は、
面(surface)を有し、
吸収材を有し、該吸収材は、該面上に配置されるように、かつ、薬物パッチの下に配置されるように構成されており、かつ、
圧搾器具を有し、該圧搾器具は、薬物パッチを吸収材といっしょに圧搾するように構成された圧搾面を有する。
【0025】
一つの実施形態では、圧搾器具は、クランプ(clamp、締め具)を含む。
一つの実施形態では、圧搾器具は、薬物パッチの上に置かれるように構成された重りを含む。
一つの実施形態では、重りは、1グラムから35グラムの重量である。
一つの実施形態では、重りは、5グラムから15グラムの重量である。
一つの実施形態では、重りは、25グラムから35グラムの重量である。
一つの実施形態では、薬物パッチの単位面積ごと(per unit area)の、重りの重量は、3.5g/平方cmから5g/平方cmである。
一つの実施形態では、薬物パッチの単位面積ごとの、重りの重量は、4.1g/平方cmから4.3g/平方cmである。
一つの実施形態では、薬物パッチの単位面積ごとの、重りの重量は、6g/平方cmから7.5g/平方cmである。
一つの実施形態では、薬物パッチの単位面積ごとの、重りの重量は、6.8g/平方cmから7g/平方cmである。
一つの実施形態では、当該装置は、吸収材を湿らせる(wet、濡らす)ように構成された液体をさらに含む。
一つの実施形態では、当該装置は、吸収材の平方cm毎(per square cm)に、0.5マイクロリットルから20マイクロリットルの該液体を含む。
一つの実施形態では、当該装置は、吸収材の平方cmごとに、1マイクロリットルから12マイクロリットルの該液体を含む。
一つの実施形態では、当該装置は、吸収材を分析するように構成された分析ユニットをさらに含む。
一つの実施形態では、該分析ユニットは、吸収材を分析することにより、吸収材によって溶出した薬物の量を決定するように構成される。
一つの実施形態では、該分析ユニットは、吸収材から薬物を抽出するように構成された液体を含む。
一つの実施形態では、該液体は塩酸溶液を含む。
一つの実施形態では、該液体はリン酸緩衝液を含む。
一つの実施形態では、該面は、抽出された薬物を受け入れるように構成されたウェルを含む。
一つの実施形態では、該分析ユニットは、分光光度計を含む。
【0026】
本発明の一つの実施形態によれば、薬物パッチ上の薬物と共に使用するための方法が提供され、該薬物パッチは、薬物側と、背面側とを含んでおり、当該方法は、
薬物パッチの薬物側を吸収材の上に置くことを有し、
ある期間にわたって、薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾することを有し、かつ、
吸収材を分析することにより、該期間に溶出した薬物の量の指標を決定することを有する。
【0027】
一つの実施形態では、当該方法は、薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾する前に、吸収材を湿らせることをさらに含む。
一つの実施形態では、薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾することが、2分から15分までの期間にわたって、それらをいっしょに圧搾することを含む。
一つの実施形態では、該吸収材を分析することは、クロマトグラフィーおよび分光法からなる群から選択される処理手順(procedure)を行うことを含む。
【0028】
本発明は、図面と共に解釈される、本発明の実施形態についての以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一つの実施形態に係る、薬物パッチの溶出特性を検証するための装置の模式図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態に係る、薬物パッチの溶出特性を検証するための装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施形態の詳細な説明
図1を参照する。図1は、本発明の一つの実施形態に係る、薬物パッチ28の溶出特性を検証(verify)するための装置50の模式図である。該装置は、典型的には、薬物パッチと共に用いられ。該薬物パッチは、薬物側と背面側とを有し、薬物側が対象の皮膚に対するように置かれることによって、薬物を対象物に経皮的に送達(デリバリー)するように構成されている。好ましいパッチは、共に本明細書で引用したLevinらによる論文および’132特許出願公開に記載されている。パッチ上の薬物の溶出速度が決定されることによって、同様に製造され、対象物に送達されることになる、パッチ上の該薬物の比率の指標が提供される。
【0031】
いくつかの実施形態では、面(surface)56上に一片の吸収材54が置かれ、該吸収材上に薬物パッチが置かれる。例えば、吸収材54は、不織布材、織布材、織物、スクリーン、網織物、コットンウール、および/または、その他の種類の材料を有するものであってよい。典型的には、吸収材は、湿らされ、そして、該吸収材とパッチとの間には、液体媒体29が存在する(即ち、吸収材とパッチとを橋渡しするインターフェイスとして作用する)。該液体は、典型的には、吸収材およびパッチの両方と緊密に接している。吸収材は、典型的には、該吸収材の平方cmごとに、0.5マイクロリットルから20マイクロリットルまでの液体、例えば、1マイクロリットルから12マイクロリットルまでの液体で湿らされる。該液体は、例えば、リン酸緩衝液、生理食塩水、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)、蒸留水、リンガー溶液、および/または、その他の緩衝液を含む。典型的には、副甲状腺ホルモン(PTH(1−34))パッチと共に用いる場合、吸収材は、D−PBSで湿らされ、また、ヒト成長ホルモン(hGH)パッチと共に用いる場合には、吸収材は、0.025Mリン酸緩衝液で湿らされる。典型的には、上述したような親水性液体が、水溶解性薬物を含有する薬物パッチの溶出特性を検証するために使用される。いくつかの実施形態では、有機溶媒が、脂溶性薬物を含有する薬物パッチの溶出特性を検証するために液体媒体29として使用される。
【0032】
いくつかの実施形態では、パッチ28と吸収材54とが、重り52によって一緒に圧搾(squeezed)される。該重りは、パッチの背面側の上に置かれる。典型的には、パッチ28は、活性薬物コアと、該パッチを患者の皮膚に付着させるための粘着性裏当て材(adhesive backing)とを有する。粘着性裏当て材の縁(rim)は、本明細書に記載される溶出検証処理手順(dissolution verification procedure)を実行する前にパッチから取り除かれる。縁は、典型的には、ハサミ、および/または、その他の切断用具を用いて切り取られる。
【0033】
いくつかの実施形態では、パッチ28は、大きなパッチを含んでおり、重り52は、大きな重りである。大きなパッチは、典型的には円形であって、粘着性裏当て材の縁が取り除かれた後では30mmの直径を有する。そのような実施形態では、重り52は、典型的には25gから35gまで、例えば、30gの重量である。典型的には、重りは、3cmから4cmまで、例えば、3.3cmの直径を有する円形の重りである。典型的には、大きなパッチ上に置かれるパッチの単位面積ごと(単位面積当たり)の重量は、3.5g/平方cmから5g/平方cmまで、例えば、4.1g/平方cmから、4.3g/平方cmまでである。
【0034】
ある実施形態では、パッチ28は、小さなパッチを含んでおり、重り52は、小さな重りである。粘着性裏当て材の縁を取り除いた後では、小さなパッチは、典型的には、1平方cmの活性薬物コアを有する12mm×12mmの正方形である。そのような実施形態では、重り52は、円形であり、5gから15gまで、例えば、10gの重さである。重りの直径は、典型的には、1.5cmから2.5cmまで、例えば、2cmである。典型的には、パッチの単位面積ごとの重り(それが、小さなパッチ上に置かれる)は、6g/平方cmから7.5g/平方cmまで、例えば、6.8g/平方cmから7.0g/平方cmまでである。実施形態によっては、圧搾(squeezing)は、異なる期間継続されるが、典型的には、該圧搾は2分間から15分間継続される。概しては、圧搾が継続される期間は、薬物パッチ上の薬物の配合(formulation)に応じて、および、液体媒体29の配合に応じて異なる。さらに、典型的には、圧搾は、パッチの薬物側と吸収材54との間に、完全な(complete)または完全に近い(near-complete)接触があるようにされる。
【0035】
特定の寸法を有する薬物パッチについて上述しているが、本発明の範囲には、異なる寸法を有するパッチにおいて本明細書に開示されるパッチ溶出検証技法(patch dissolution verification techniques)を実行することが含まれる。異なる寸法を有する薬物パッチに当該技法を適用する場合、吸収材の寸法、および/または、他の装置の寸法は、それに応じて変動し得る。
【0036】
圧搾に続いて、吸収材54が分析されて、圧搾の期間に吸収材によってまたは吸収材中に溶出した薬物の量が特定される。図1に示すように、いくつかの実施形態では、面56はウェル(well)を有し、圧搾はウェル内で行われる。圧搾に続いて、重り52およびパッチ28がウェルから取り除かれる。吸収材によってまたは吸収材中に溶出した薬物は、ウェルに抽出液を加えてウェルを振とうすることによって吸収材から抽出される。典型的には、副甲状腺ホルモン(PTH(1−34))パッチでは0.01Mの塩酸溶液が抽出液として使用され、ヒト成長ホルモン(hGH)パッチでは0.025Mのリン酸緩衝液が使用される。パッチによって溶出した薬物の量は、クロマトグラフィーを用いてウェルの内容物を分析することによって決定される。代替的または付加的には、吸収材によって溶出した薬物の量は、分光法および/またはその他の分析方法を用いて決定される。
【0037】
図2を参照する。図2は、本発明の別の実施形態に係る、薬物パッチ28の溶出特性を検証するための装置50の模式図である。示した実施形態では、パッチ28は、クランプ68を用いて吸収材と一緒に圧搾される。クランプは、典型的には、上部圧搾面60、下部圧搾面62、ネジ棒(screw rod)64、および、ネジナット66を有する。他の全ての特徴については、装置は、一般に、図1に関して上述したものと同様である。
【実施例】
【0038】
実施例
1)直径が30mmであり、30%ポリプロピレンと70%セルロースとによってできている(Shalag Industries A.C.S., Ltd.)、円形の不織布片の吸収材を、pH7の0.025Mリン酸緩衝液(60マイクロリットル)で湿らせた。吸収材を6つのウェルを有するマルチウェルディッシュ上に置いた。hGHパッチを、該パッチの薬物側が吸収材と接するように、湿った該吸収材片上に置いた。この実験では、0.5mg、1mg、2.0mgおよび5mgを含有するヒト成長ホルモン(hGH)パッチを分析した。各パッチは、粘着性裏当て材ライナー、起泡(foam raising)パッド、プリンティングライナー(printing liner)、および、薬物層を有してなる。ハサミで切断することにより、粘着性裏当て材の縁を薬物パッチから取り除き、直径30mmの円形の薬物パッチの薬物コアとした。30gの重りを5分間、薬物パッチの背面側の上に置いた。吸収材に、さらなるリン酸緩衝液を加え、100rpmで5分間、ウェルに遠心力をかけることで該ウェルを攪拌して、該吸収材中に放出された薬物を抽出した。抽出された溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した。
【0039】
2)12×12mmの正方形片であり、その総面積の19.4%が開口部となっている、吸収性のポリエチレンテレフタレートのネット(PET、Sefar、カタログ番号140-34W PW)を、12個のウェルを有するマルチウェルディッシュ内に置いた。4マイクロリットルのD−PBS、pH7.4で、開口部を浸した。副甲状腺ホルモン(PTH(1−34))パッチを、薬物側を下にしてPETネット上に置き、10gの重りを5分間、パッチの背面側の上に置いた。0.01M塩酸溶液(0.5ml)を加え、100rpmで5分間、ウェルに遠心力をかけることで該ウェルを攪拌して、PET中に放出された薬物を抽出した。抽出された溶液をHPLCを用いて分析した。
【0040】
吸収材を湿らせるために、および、そこから薬物パッチの内容物を抽出させるために、特定の液体を記載してきたが、本発明の範囲には、これらの目的の一方または両方のために、他の液体を用いることが含まれる。典型的には、湿らせる液体および抽出液は、薬物パッチに含有される薬物の特徴(例えば、薬物の溶解性)に応じて選択される。
【0041】
本発明は、上記に特に示して説明したものに限定されないことが当業者に理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には、上述した様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせの両方、ならびに先行技術にはなく、上記記載を読んだ当業者が想起するであろうそれらの変形および改良が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物パッチ上の薬物と共に使用するための装置であって、該薬物パッチは、薬物側と、背面側とを含んでおり、当該装置は、
面を有し、
吸収材を有し、該吸収材は、該面上に配置されるように、かつ、薬物パッチの下に配置されるように構成されており、かつ、
圧搾器具を有し、該圧搾器具は、薬物パッチを吸収材といっしょに圧搾するように構成された圧搾面を有する、
前記装置。
【請求項2】
圧搾器具がクランプを有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
圧搾器具が、薬物パッチの上に置かれるように構成された重りを有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
重りの重量が、1グラムから35グラムである、請求項3記載の装置。
【請求項5】
重りの重量が、5グラムから15グラムである、請求項4記載の装置。
【請求項6】
重りの重量が、25グラムから35グラムである、請求項4記載の装置。
【請求項7】
薬物パッチの単位面積ごとの、重りの重量が、3.5g/平方cmから5g/平方cmである、請求項4記載の装置。
【請求項8】
薬物パッチの単位面積ごとの、重りの重量が、4.1g/平方cmから4.3g/平方cmである、請求項7記載の装置。
【請求項9】
薬物パッチの単位面積ごとの、重りの重量が、6g/平方cmから7.5g/平方cmである、請求項4記載の装置。
【請求項10】
薬物パッチの単位面積ごとの、重りの重量が、6.8g/平方cmから7g/平方cmである、請求項9記載の装置。
【請求項11】
吸収材を湿らせるように構成された液体をさらに有する、請求項1−10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
該液体が、吸収材の平方cmごとに、0.5マイクロリットルから20マイクロリットルの該液体を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
該液体が、該吸収材の平方cmごとに、1マイクロリットルから12マイクロリットルの該液体を有する、請求項12記載の装置。
【請求項14】
吸収材を分析するように構成された分析ユニットをさらに有する、請求項1−10のいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
分析ユニットが、吸収材を分析することにより、該吸収材によって溶出した薬物の量を決定するように構成されている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
分析ユニットが、分光光度計を有する、請求項14記載の装置。
【請求項17】
分析ユニットが、吸収材から薬物を抽出するように構成された液体を有する、請求項14記載の装置。
【請求項18】
該液体が塩酸溶液を有する、請求項17記載の装置。
【請求項19】
該液体がリン酸緩衝液を有する、請求項17記載の装置。
【請求項20】
該面が、抽出された薬物を受け入れるように構成されたウェルを有する、請求項17記載の装置。
【請求項21】
薬物パッチ上の薬物と共に使用するための方法であって、該薬物パッチは、薬物側と、背面側とを含んでおり、当該方法は、
薬物パッチの薬物側を吸収材の上に置くことを有し、
ある期間にわたって、薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾することを有し、かつ、
吸収材を分析することにより、該期間に溶出した薬物の量の指標を決定することを有する、
前記方法。
【請求項22】
薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾する前に、吸収材を湿らせることをさらに有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾することが、薬物パッチの背面側の上に重りを置くことを有する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾することが、薬物パッチと吸収材とをいっしょにクランプすることを有する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
薬物パッチと吸収材とをいっしょに圧搾することが、2分から15分までの期間にわたって、それらをいっしょに圧搾することを有する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
吸収材を分析することが、クロマトグラフィーおよび分光法からなる群から選択される処理手順を行うことを有する、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−500198(P2011−500198A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529503(P2010−529503)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001389
【国際公開番号】WO2009/050718
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】