説明

溶接方法

【課題】嵌合部分にクリアランスを有する円筒状部材の溶接において、円周振れ誤差の発生の少ない溶接方法を提供すること。
【解決手段】円筒状の第1部材21と、第1部材21に嵌挿される円筒状の第2部材22とを具備するワークWをワーク把持回転装置とレーザー溶接機とを使って溶接する溶接方法であって、第2部材22の最大半径点K1の角度位置を表すワークWの第1角度位置θ1を測定する段階と、第1角度位置θ1の正反対側のワークWの角度位置である第2角度位置θ2を第1角度位置θ1から算出する段階と、ワークを回転させる間に第1部材21と第2部材22とを周方向でレーザー溶接する段階であって、第2角度位置θ2で第1部材21と第2部材22との界面の溶融が始まるようにワーク把持回転装置の回転とレーザー溶接機とを制御する溶接方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒状部材の溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二つの円筒状部材を嵌合させ、つまり同軸に組み合わせてから周方向に溶融溶接をして結合することが様々な分野で行われている。その溶接の際には、溶接変形に基づく二部材間の同軸度の悪化あるいは円周振れの増大等をできるだけ抑えることが通常求められる。
【0003】
例えば特許文献1に記載の溶接方法では、二つの円筒状部材における溶接変形を抑制すること、及び溶接前のそれら部材の圧入箇所に生じた変形を矯正することを目的として、二つのレーザー照射ヘッドを周方向に90度離して配置することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−321077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二つの円筒状部材の嵌合部にはクリアランスを許容する「すきまばめ」が、部材コストあるいは組立コストを低減するためにしばしば採用され、そのような場合にはクリアランスに起因して、二つの円筒状部材には溶接前に既にそれぞれの軸心の偏心あるいは傾きが発生し得る。そのため、そのような偏心あるいは傾きが溶接変形により拡大されて、溶接後の部材の円周振れの誤差が著しく増大するという問題があった。またこの問題は、クリアランスを条件として考慮していない引用文献1に記載された溶接方法では解消することができない。
【0006】
本発明は前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、嵌合部分にクリアランスを有する円筒状部材の溶接において、円周振れ誤差の発生の少ない溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、円筒状の第1部材(21)と、第1部材(21)に嵌挿される円筒状の第2部材(22)とを具備するワーク(W)をレーザー溶接機を使って溶接する溶接方法であって、第1部材(21)を把持して第1部材(21)の縦軸線(Ar)を回転中心として回転させることができるワーク把持回転装置に第1部材(21)を固定する段階と、第2部材(22)を第1部材(21)に嵌挿する段階と、回転中心からの最大半径(Rmax)を有する第2部材(22)の外周上の点である最大半径点(K1)の角度位置を表すワーク(W)の第1角度位置(θ1)を測定する段階と、第1角度位置(θ1)の正反対側のワーク(W)の角度位置である第2角度位置(θ2)を第1角度位置(θ1)から算出する段階と、ワーク把持回転装置を回転させる間に第1部材(21)と第2部材(22)とを周方向でレーザー溶接する段階であって、ワーク(W)の第2角度位置(θ2)で第1部材(21)と第2部材(22)との界面の溶融が始まるようにワーク把持回転装置の回転とレーザー溶接機とを制御する、レーザー溶接する段階と、ワーク(W)をワーク把持回転装置から取り外す段階と、を含む溶接方法を提供する。
【0008】
このように、第1及び第2部材の界面における溶融が、溶接前の傾き又は偏心の方向とは反対側の第2角度位置で始まるように制御することにより、溶接前の傾き又は偏心が溶接後に矯正されることが見出され、したがって嵌合部分にクリアランスを有する円筒状部材の溶接に有効であることが確認できた。また、溶接前の傾き又は偏心が矯正される理由は、溶融開始時に接合力が働いて溶接開始方向(第2角度位置側)に第2部材が引き寄せられるためと考えられる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、第2角度位置を補正角度(α)で補正した第3角度位置(θ3)を算出する段階を、第2角度位置(θ2)を第1角度位置(θ1)から算出する段階の次にさらに含んでおり、補正角度(α)は、ワーク把持回転装置の始動から角速度が安定するまでの時間を考慮して予め定められた角度であり、レーザー溶接する段階において、ワーク(W)の第3角度位置(θ3)がレーザー溶接機の溶接ヘッド(23)に対向配置されてからワーク把持回転装置が回転始動される。
【0010】
これによれば、ワーク把持回転装置の回転が安定してから前記界面の溶融が始まるので、溶接の均一性が確保される。
【0011】
請求項3に記載の発明では、第1角度位置(θ1)を測定する段階が、ワーク把持回転装置を使ってワーク(W)を一方向に回転させる段階と、最大半径点(K1)を検出すると共に最大半径点(K1)が発生したときのワーク(W)の回転移動量(Tmax)を求める段階と、回転移動量(Tmax)に基づいて、最大半径点(K1)の第1角度位置(θ1)を求める段階と、ワーク(W)の回転を停止する段階とを含んでいる。
【0012】
また請求項4に記載の発明では、第1角度位置(θ1)を測定する段階において、帯状の光ビームをワーク(W)の第2部材(22)の測定対象部位に向けて照射する投光器(25)と、第2部材(22)の測定対象部位の幅に略等しい受光可能幅を有する受光器(26)にして第2部材(22)を挟んで投光器(25)に対向して配置された受光器(26)とを具備するエリアセンサ(24)が用いられる。これによれば、比較的簡易で且つ標準的なエリアセンサを利用して、第1角度位置の測定系を構築することが可能になる。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による溶接方法を適用することができる燃料噴射弁の縦断面図である。
【図2】本発明による第1の実施形態の溶接方法を適用するワークの模式的正面図である。
【図3】第1の実施形態の溶接方法で用いられるエリアセンサとワークと溶接ヘッドとの関係を模式的に示す図である。
【図4】第1の実施形態の溶接方法で用いられるエリアセンサとワークと溶接ヘッドとの関係を模式的に示す図である。
【図5】第2の実施形態の溶接方法におけるワークの各角度位置等を示す図である。
【図6】第1の実施形態による溶接方法のフロー図である。
【図7】第2の実施形態による溶接方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態による溶接方法は、円筒状の二つの部材のレーザー溶接方法に関するものであって、前記円筒状の二つの部材は様々な用途に用いられるものであってよいが、本明細書では、内燃機関に燃料を噴射供給する燃料噴射弁の構成部材をワークとした例により説明する。
【0016】
最初に燃料噴射弁の構成部材について簡単に説明する。
図1に示される燃料噴射弁1は、段付き円筒状の主パイプ部2、前記主パイプ部2の内側に配設されている内コネクタ部3と、内コネクタ部3の先端側に軸方向に対向して配設され、内コネクタ部3との間に発生する磁気吸引力により内コネクタ部3に吸引される可動コア4と、可動コア4と共に軸方向へ移動し、燃料を噴射する噴孔5を開閉する弁部材としてのニードル6と、外部から主パイプ部2内に燃料を導入するための外コネクタ部7とを有している。外コネクタ部7は、やはり段付き円筒状に形成されており、図の上側の小径部7aと下側の大径部7bとを有していて、大径部7bの下端に近い側にさらに大径の環状突出部7cを有している。この環状突出部7cよりも下側の部分の大径部7bを外コネクタ接合部7dと呼ぶ。また、前記各構成部品は共通の縦軸線Axに同軸に配設されている。
【0017】
また主パイプ部2の外周側には、通電することにより磁界を発生するコイル8及びコイル8に電流を供給するための端子9が配設されており、さらにコイル8の外周側及び先端側を覆い、コイル8を保持するためのコイルハウジング10が設けられている。
【0018】
燃料噴射弁1を組み立てるとき、主パイプ部2は、その内部にニードル6、可動コア4、及び内コネクタ部3等が収納され、さらにコイル8を収納したコイルハウジング10が溶接等により固定されて主ハウジング11が形成されてから、最後に上端側で外コネクタ接合部7dと溶接固定される。
【0019】
主ハウジング11の上端付近における接合部11a(以下「主ハウジング接合部11a」と呼ぶ)と外コネクタ接合部7dは勿論円筒状に形成されており、主ハウジング接合部11aの内側に外コネクタ接合部7dが嵌合挿入され、主ハウジング11の上端面が外コネクタ部7の環状突出部7cに当接することにより二部材は上下方向に位置決めされる。ただし、主ハウジング接合部11aと外コネクタ接合部7dの嵌め合いは「すきまばめ」が採用されており、したがって前記二つの接合部の間にはクリアランスが生じる。また溶接は、図1中の矢印Aで示される箇所を全周連続レーザー溶接で行われる。
【0020】
(第1の実施形態)
次に、図2〜図5を参照して、本発明の第1の実施形態による溶接方法及びその方法に用いられる装置等について説明する。図2は、燃料噴射弁とレーザー溶接機(図示せず)の溶接ヘッド23とを示す模式的正面図であるが、燃料噴射弁は図1のものより単純化されて作図されていて、参照符号21で指し示される部分が図1の主ハウジング11に相当し、参照符合22で指し示される部分が図1の外コネクタ部7に相当する。また以下の説明では、主ハウジングを「第1部材」と呼び、外コネクタ部を「第2部材」と呼ぶ。従ってワークWは第1部材21と第2部材22とにより構成される。
【0021】
本発明の第1の実施形態による方法では、最初に、図示されない一般的な三つ爪式のワーク把持回転装置に第1部材21が把持及び固定される。このワーク把持回転装置は、やはり図示されないステップモータによって、図2のZ軸に一致する回転軸線Arを中心に回転駆動される。またワーク把持回転装置(図示せず)はその回転軸線Arと第1部材21の軸心が一致するように第1部材21の外周部を把持することができる。また、レーザー溶接機(図示せず)の溶接ヘッド23は第1部材21の上端付近の第1部材接合部の外周面にレーザー光を照射するように固定されている。
【0022】
次の段階で、第2部材22を第1部材21の上端側に挿入する。そのとき、第2部材22が、その形状誤差あるいは嵌合部のクリアランス等が原因で第1部材21に対して角度δだけ傾くことがある。なお、図2では分かり易くするために角度δを誇張して示している。また図示されないが、このような角度δの傾きはないものの、前記クリアランスに起因して第2部材22が第1部材21に対して偏心して配置されることもある。
【0023】
このように第1部材21に対する第2部材22の傾き又は偏心が生じている場合にワークWをZ軸を中心に回転させると、傾き及び/又は偏心に基づく円周振れが生じる。このため第1の実施形態による方法では、次に、第2部材22の傾き及び/又は偏心がどの方向に生じているかを調べる。換言すると、Z軸に直交する所定の測定平面上の第2部材22の外周面における点のうち、Z軸からの最大半径Rmaxを有する点K1を検出する。したがって、最大半径Rmaxを有する点K1(以下「最大半径点」という)を検出する方法を、図3及び図4を参照して説明する。図3及び図4は、直交するX軸及びY軸と、回転軸線ArであるZ軸と、第1部材21に嵌挿された第2部材22の上端部の近傍の横断面の外周輪郭と、X軸上に配設された溶接ヘッド23と、後述する光学式のエリアセンサ24とを模式的に示している。
【0024】
最大半径点K1は、例えばダイヤルゲージ等(図示せず)を用いても検出可能であるが、本実施形態では、自動化への適合性がよいことから光学式のエリアセンサ24を用いて検出される。そのため、以下に本実施形態で用いられるエリアセンサ24について説明する。このエリアセンサ24は、図3,4では多数本の矢印線として模式的に示されているが1本の連続した帯状のレーザービームを発する投光器25と、前記帯状のレーザービームを受光する受光器26とから構成されており、投光器25と受光器26は図3に示されるようにワークWの測定対称部位である第2部材22を間に挟んで対向して配設される。帯状のレーザービームの幅WL及び受光器26の受光素子27の受光領域の幅WRは本実施形態では第2部材22の測定部位の外径とほぼ等しくされている。また受光素子27は、ビームの幅WLの方向で細分化された各部位毎の受光量と、その総計として受光素子27の全体の受光量の両方を測定できるものである。
【0025】
このエリアセンサ24を使って、前記最大半径点K1がどのように検出されるかを次に説明する。図3はワークWの回転前の初期状態を示しており、ワークWは円座標の0度の位置にワーク基準点K0を有しており、またこのワーク基準点K0から反時計回り方向でθ1度の角度位置に最大半径Rmaxを有する最大半径点K1を有している。この初期状態では、投光器25より発せられた帯状のレーザービームの中心より右側の領域のビームが第2部材22によって完全に遮断され、最左端の僅かな領域のビームだけが受光素子27に達していることがわかる。なお、本明細書ではワーク基準点K0を基準とした前記最大半径点K1の角度位置を第1角度位置θ1と呼ぶ。
【0026】
そして、ワーク把持回転装置を使って、初期状態のワークWをZ軸を中心に反時計回り方向に少なくとも一回転させる間に第1角度位置θ1を測定する。ワークWが回転し始めるとその回転移動量Tとともに受光器26の受光量が変化する。例えば、回転移動量Tが例えば(90−θ1)度のとき(図示せず)、つまり最大半径点K1がY軸線に一致したとき帯状レーザービームはワークWの第2部材22によって遮断され、その結果最小の受光量が測定される。これに対して、回転移動量Tが例えば(180−θ1)度のとき、つまり最大半径点K1がX軸線(円座標の180度(図4)又は0度(図示せず))に一致したとき受光素子27に到達する帯状レーザービームの右端側(図4)又は左端側(図示せず)のビーム幅WLが最大になり、その結果最大レベルの受光量が測定される。
【0027】
このため、受光量の最大値が生じたときのワークWの回転移動量Tmaxに基づいて最大半径点K1の角度位置即ち第1角度位置θ1を求めることができる。具体的には、受光量の最大値が生じたときY軸線より右側の領域の受光素子27の受光量が大であるなら(図4)、ワーク基準点K0に関する第1角度位置θ1は以下の(1)式により求められる。
θ1=(180−Tmax)° (1)
これに対して、受光量の最大値が生じたときY軸線より左側の領域の受光素子27の受光量が大であるなら(図示せず)、第1角度位置θ1は以下の(2)式により求められる。
θ1=(360−Tmax)° (2)
例えば、受光量の最大値が発生したときの回転移動量Tmaxが100度であって、Y軸線より右側の領域の受光素子27の受光量が大であったなら、ワーク基準点K0に関する第1角度位置θ1は(1)式より80度であることがわかる。
【0028】
本実施形態の溶接方法では次に、測定した第1角度位置θ1に180度をプラスすることにより、最大半径点K1の正反対側に位置する正反対点K2の角度位置を表す第2角度位置θ2を算出する。例えば第1角度位置θ1の測定値が80度であるなら、第2角度位置θ2は260度と算出される。
【0029】
本実施形態の溶接方法では、ワーク把持回転装置は少なくとも一回転した後一旦停止される。
【0030】
次に、ワーク把持回転装置を反時計回り方向に回転始動して一回転させる間に溶接ヘッド23からレーザー光を照射してワークWの連続周溶接を行う。但し、このとき第2角度位置θ2で第1部材21と第2部材22との界面の溶融が始まるようにワーク把持回転装置の回転運動及びレーザー光の照射のタイミングが制御される。なお、レーザー光の照射のタイミングが制御されるとは、具体的には、レーザー溶接機のレーザー照射スイッチの投入と前記界面の溶融開始との間のタイムラグを考慮してレーザー光の照射スイッチが投入されるということである。
【0031】
次に、ワークWをワーク把持回転装置から取り外す。以上で、一つのワークWに対する溶接が完了する。また、第1の実施形態による溶接方法のフローを図6に示す。
【0032】
前述したように、第1部材21と第2部材22の界面における溶融が、溶接前の傾き又は偏心の方向とは反対側の第2角度位置θ2で始まるようにワーク把持回転装置とレーザー溶接機を制御することにより、溶接前の傾き又は偏心が溶接後に矯正されることが見出された。これは、溶融開始時に接合力が働いて溶接開始方向(第2角度位置側)に第2部材22が引き寄せられるためと考えられる。
【0033】
ところで本実施形態では、エリアセンサ24を使って、傾き或いは偏心の発生している方向である最大半径点K1の角度位置を測定しているが、そのようなエリアセンサ24は、傾き或いは偏心の程度、つまり最大半径Rmaxの大きさを受光量の大きさとして測定することもできるので、例えば測定した最大半径Rmaxの大きさが所定の基準値を超えたワークWを不良品として除去する工程を加えることもできる。
【0034】
(第2の実施形態)
第2の実施形態による方法はそのフロー図である図7に示されるように、第1の実施形態による方法にほとんど同様であるので、以下に異なる部分のみを説明する。
ワーク把持回転装置の回転運動は、始動直後の角速度増大区間と、前記角速度増大区間の後に続く角速度一定区間とを含んでいるが、第2の実施形態による方法では、全周溶接における溶接の均一性を確保することを目的として、角速度増大区間を避けて、つまりワークWの回転の角速度が安定してから前記界面の溶融が始まるように溶接が制御される。
【0035】
このため、第2の実施形態による方法は、第1の実施形態の場合と同様に第2角度位置θ2を算出した後に、第2角度位置θ2にさらに所定の補正角度αをプラスした補正点K3を表す第3角度位置θ3を算出する段階を含んでいる。補正角度αは、ワーク把持回転装置が安定した角速度に達する時間を考慮して決められた角度であって、本実施形態では40度である。従って第3角度位置θ3は300度に設定される。
【0036】
また第2の実施形態では、第1角度位置θ1等を求めるためにワーク把持回転装置が少なくとも一回転された後にワーク把持回転装置の回転が一旦停止されるときに、ワークWはその第3角度位置θ3が円座標の0度に位置して溶接ヘッド23に対向して停止される。図5はワークWのこの状態を示している。
【0037】
次に、第3角度位置θ3が溶接ヘッド23に対向して停止している状態からワーク把持回転装置を反時計回り方向に回転始動して一回転させる間に溶接ヘッド23からレーザー光を照射してワークWの連続周溶接を行う。
【0038】
第2の実施形態による方法では、第3角度位置θ3は第2角度位置θ2に補正角度αをプラスして算出されたが、第3角度位置θ3が第2角度位置θ2から補正角度αをマイナスして算出されてもよい。但しその場合、溶接段階におけるワーク把持回転装置は反時計回り方向ではなく時計回り方向に回転始動されなければならない。
【0039】
(その他の実施形態)
前述の実施形態では、最大半径点K1の角度位置を測定した後に、ワーク把持回転装置の回転は一旦停止されるが、この停止は本発明においては必須ではなく、回転を継続したまま溶接段階に移行するようにワーク把持回転装置及び溶接機を制御してもよいことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0040】
21 第1部材
22 第2部材
23 溶接ヘッド
24 エリアセンサ
25 投光器
26 受光器
27 受光素子
0 基準点
1 最大半径点
2 正反対点
3 補正点
θ1 第1角度位置
θ2 第2角度位置
θ3 第3角度位置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の第1部材(21)と、前記第1部材(21)に嵌挿される円筒状の第2部材(22)とを具備するワーク(W)をレーザー溶接機を使って溶接する溶接方法であって、
前記第1部材(21)を把持して前記第1部材(21)の縦軸線(Ar)を回転中心として回転させることができるワーク把持回転装置に前記第1部材(21)を固定する段階と、
前記第2部材(22)を前記第1部材(21)に嵌挿する段階と、
前記回転中心からの最大半径(Rmax)を有する前記第2部材(22)の外周上の点である最大半径点(K1)の角度位置を表すワーク(W)の第1角度位置(θ1)を測定する段階と、
前記第1角度位置(θ1)の正反対側のワーク(W)の角度位置である第2角度位置(θ2)を前記第1角度位置(θ1)から算出する段階と、
前記ワーク把持回転装置を回転させる間に前記第1部材(21)と前記第2部材(22)とを周方向でレーザー溶接する段階であって、ワーク(W)の前記第2角度位置(θ2)で前記第1部材(21)と前記第2部材(22)との界面の溶融が始まるように前記ワーク把持回転装置の回転と前記レーザー溶接機とを制御する、レーザー溶接する段階と、
ワーク(W)を前記ワーク把持回転装置から取り外す段階と、を含むことを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
前記第2角度位置を補正角度(α)で補正した第3角度位置(θ3)を算出する段階を、前記第2角度位置(θ2)を前記第1角度位置(θ1)から算出する前記段階の次にさらに含む請求項1に記載の溶接方法であって、
前記補正角度(α)は、前記ワーク把持回転装置の始動から角速度が安定するまでの時間を考慮して予め定められた角度であり、
レーザー溶接する前記段階において、ワーク(W)の前記第3角度位置(θ3)を前記レーザー溶接機の溶接ヘッド(23)に対向配置してから前記ワーク把持回転装置を回転始動する、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記第1角度位置(θ1)を測定する前記段階が、
前記ワーク把持回転装置を使ってワーク(W)を一方向に回転させる段階と、
前記最大半径点(K1)を検出すると共に前記最大半径点(K1)が発生したときのワーク(W)の回転移動量(Tmax)を求める段階と、
前記回転移動量(Tmax)に基づいて、前記最大半径点(K1)の前記第1角度位置(θ1)を求める段階と、
前記ワーク(W)の回転を停止する段階と、を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記第1角度位置(θ1)を測定する前記段階において、帯状の光ビームをワーク(W)の前記第2部材(22)の測定対象部位に向けて照射する投光器(25)と、前記第2部材(22)の測定対象部位の幅に略等しい受光可能幅を有する受光器(26)にして前記第2部材(22)を挟んで前記投光器(25)に対向して配置された受光器(26)とを具備するエリアセンサ(24)が用いられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記第1部材(21)と前記第2部材(22)が、内燃機関に燃料を噴射供給する燃料噴射弁の構成部品であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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