説明

溶着部品

【課題】容易に分解できる溶着部品を提供する。
【解決手段】現像剤撹拌部材40を裏側から見たときには凹部56の開口が見える。この開口からマイナスドライバ42のような固いものの先端部を凹部56の開口から奥へ差し込み、軸部材50から押え板60とシート材70を引き離すようにマイナスドライバ42を捻る。この捻る力は凹部56の隅部に集中してこの隅部から、亀裂59が隅部の反対側に伝播して溶着用エンボス54が破壊される。この結果、現像剤撹拌部材40が軸部材50、押え板60、及びシート材70の3部品に容易に分解されてこれらをリサイクルできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着を利用して複数の部品を固定して作製された溶着部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶着を利用して複数の部品を固定することにより溶着部品が作製されている。溶着部品の一例を図8と図9を参照して説明する。
【0003】
図8は、溶着前の部品を示す斜視図である。図9は、溶着されて固定された溶着部品を示す斜視図である。
【0004】
溶着を利用して部品10と部品20を固定する場合について説明する。
【0005】
例えば鋼製の部品10には、孔(貫通孔)12が形成されている。樹脂製の部品20には、孔12に差し込まれるエンボス22が形成されている。溶着を利用して部品10と部品20を固定するに際しては、エンボス22を孔12に差し込んでエンボス22の先端部を孔12から突出させる。続いて、熱又は超音波等の振動をエンボス22に加えてエンボス22の先端部を半球状に溶融して溶融部32を形成することにより部品10と部品20を互いに固定する。これにより、部品10と部品20が強固に固定された溶着部品30が作製される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、各種部品や部材等のリサイクルが盛んに行われるようになっている。上記した溶着部品30を分解してリサイクルする場合、半球状の溶融部32を破壊して溶着部品30を部品10と部品20とに分解する。溶融部32は強固なものであり、これを破壊するには非常に大きな力が必要となる。また、溶融部32を破壊する際には、部品10と部品20を互いに反対方向に引っ張り合うので、溶融部32に力が作用しにくくて分解性に劣るという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、容易に分解できる溶着部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の溶着部品は、凸部が形成された第1部品の該凸部を、孔が形成された第2部品の該孔に差し込んで該凸部の先端部を前記孔から突出させ、この突出した部分を溶融して前記第1部品と前記第2部品が固定された溶着部品において、
(1)前記第1部品は、前記凸部の近傍に、溶着部品の分解時に工具が挿入される凹部を有することを特徴とするものである。
【0009】
ここで、
(2)前記第1部品の凹部は、その開口が外部に露出していてもよい。
【0010】
また、
(3)前記第2部品は、前記凸部の近傍に、前記第1部品の凹部まで貫通した穴部を有していてもよい。
【0011】
さらに、
(4)前記第1部品の前記凸部は、その根元部分に切欠きが形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の溶着部品によれば、第1部品と第2部品の素材が互いに異なったものであっても、第1部品の凹部に例えばマイナスドライバの先端を差し込んで適宜の方向に捻ることにより、第1部品の凸部を折って破壊できるので、溶着部品を容易に分解できてリサイクルできる。
【0013】
また、第1部品の凹部は、第2部品の孔につながっていない位置に形成されたものである場合は、凸部の溶融した部分が凹部に入り込まないので、溶着不良を防止できる。
【0014】
さらに、第1部品の凸部は、その根元部分に切欠きが形成されたものである場合は、凸部を折って破壊するときに切欠きに応力が集中するので、溶着部品をいっそう容易に分解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
現像装置の内部に配置されて現像剤を撹拌する現像剤撹拌部材に本発明を実現した。
【実施例1】
【0016】
図1から図4までを参照して実施例1を説明する。
【0017】
図1は、現像剤撹拌部材を分解して示す斜視図である。図2は、組み立てられた現像剤撹拌部材を示す斜視図である。図3は、図2のA―A断面図である。図4は、ドライバの先端を凹部に差し込んで現像剤撹拌部材を分解している様子を示す斜視図である。
【0018】
現像剤撹拌部材40(本発明にいう溶着部品の一例である)は、軸部材50(本発明にいう第1部品の一例である)、ステンレス製の押え板60(本発明にいう第2部品の一例である)、及び軸部材50と押え板60の間に挟み込まれるシート材70(本発明にいう第2部品の一例である)からなる。これら軸部材50、押え板60、及びシート材70の長さはほぼ同じである。押え板60の厚さは約0.3mmである。シート部材70の厚さは約30μmである。
【0019】
軸部材50には、押え板60とシート材70を位置決めするための複数の位置決め用エンボス52が形成されている。押え板60とシート材70には、位置決め用エンボス52が差し込まれる位置決め用孔62,72が形成されている。軸部材50と押え板60の間にシート材70を挟み込んで現像剤撹拌部材40を組み立てるときは、位置決め用エンボス52を位置決め用孔62,72に差し込んで嵌め合わす。これにより、これら軸部材50、押え板60、及びシート材70を正確に位置決めできる。
【0020】
また、軸部材50には、位置決め用エンボス52に並んで複数の溶着用エンボス54(本発明にいう凸部の一例である)が形成されている。複数の溶着用エンボス54は、軸部材50の長手方向に並んでいる。押え板60とシート材70には、溶着用エンボス54が差し込まれる溶着用孔64,74が形成されている。溶着用エンボス54の外径は溶着用孔64,74の内径よりもやや小さい。位置決め用エンボス52を位置決め用孔62,72に差し込んで軸部材50、押え板60、及びシート材70を正規の位置に位置決めをすることにより、溶着用エンボス54は溶着用孔64,74に差し込まれる。溶着用エンボス54が溶着用孔64,74に差し込まれた状態では、溶着用エンボス54の先端部が押え板60の表面から数ミリほど突出している(飛び出ている)。
【0021】
軸部材50のうち溶着用エンボス54の近傍の部分には凹部56が形成されている。この凹部56は、複数の溶着用エンボス54の近傍それぞれに形成されており、その深さは約1.0mmから約1.5mmまでの間である。また、この位置決めした状態において、凹部56の開口は外部に露出している。即ち、図4に示すように、現像剤撹拌部材40を裏側から見たときに、凹部56の開口が見える。
【0022】
溶着用エンボス54を溶着して軸部材50、押え板60、及びシート材70を互いに固定するに際しては、熱又は超音波等の振動を溶着用エンボス54に加えてこれを溶融する。これにより、溶着用エンボス54のうち押え板60の表面から突出している先端部は、図3に示すように、半球部58になる。この半球部58の直径は、溶着用孔64,74の内径よりも大きくてこれらを塞ぐようになる。この結果、軸部材50、押え板60、及びシート材70が互いに強固に固定される。
【0023】
上記のように軸部材50、押え板60、及びシート材70が互いに強固に固定された現像剤撹拌部材40を分解する手順を説明する。
【0024】
上述したように、現像剤撹拌部材40を裏側から見たときには凹部56の開口が見える。そこで、図4に示すように、この開口から工具例えばマイナスドライバ42のような固いものの先端部を凹部56の開口から奥へ差し込み、軸部材50から押え板60とシート材70を引き離すようにマイナスドライバ42を捻る。この捻る力は凹部56の隅部に集中してこの隅部から、図3に示すような亀裂59が隅部の反対側に伝播して溶着用エンボス54が破壊される。この結果、現像剤撹拌部材40が軸部材50、押え板60、及びシート材70の3部品に容易に分解されてこれらをリサイクルできる。
【実施例2】
【0025】
図5を参照して実施例2を説明する。
【0026】
図5は、実施例2の現像剤撹拌部材を切断して示す断面図であり、図3と同様に切断したものである。図5では、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0027】
図5に示す現像剤撹拌部材80が実施例1の現像剤撹拌部材40と相違する点は、軸部材90(本発明にいう第1部品の一例である)の溶着用エンボス94の形状にある。実施例1の軸部材50の溶着用エンボス54は円柱状のものであり、その根元部分には切欠きがない。これに対し、実施例2の軸部材90の溶着用エンボス94の根元部分には切欠き95が形成されている。この切欠き95には、溶着用エンボス94に作用する応力が集中する。
【0028】
上記のように溶着用エンボス94の根元部分に切欠き95が形成されている場合について、軸部材90、押え板60、及びシート材70が互いに強固に固定された現像剤撹拌部材80を分解する手順を説明する。
【0029】
実施例1と同様に、現像剤撹拌部材80を裏側から見たときには凹部96の開口が見える。そこで、図4に示すと同様に、この開口からマイナスドライバ42(図4参照)のような固いものの先端部を凹部96の開口から奥へ差し込み、軸部材90から押え板60とシート材70を引き離すようにマイナスドライバ42を捻る。この捻る力は溶着用エンボス94の切欠き95に集中してこの隅部から、図5に示すような亀裂99が切欠き95の反対側に伝播して溶着用エンボス94が破壊される。この結果、現像剤撹拌部材80が軸部材90、押え板60、及びシート材70の3部品に容易に分解されてこれらをリサイクルできる。
【実施例3】
【0030】
図6と図7を参照して実施例3を説明する。
【0031】
図6は、実施例3の現像剤撹拌部材100を示す斜視図である。図7は、図6のB―B断面図である。これらの図においては、図5に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0032】
実施例3の現像剤撹拌部材100(本発明にいう溶着部品の一例である)は、軸部材90(本発明にいう第1部品の一例である)、ステンレス製の押え板110(本発明にいう第2部品の一例である)、及び軸部材90と押え板110の間に挟み込まれるシート材120(本発明にいう第2部品の一例である)からなる。これら軸部材90、押え板110、及びシート材120の長さはほぼ同じである。押え板110の厚さは約0.3mmである。シート部材120の厚さは約30μmである。
【0033】
軸部材90には、押え板110とシート材120を位置決めするための複数の位置決め用エンボス92が形成されている。押え板110とシート材120には、位置決め用エンボス92が差し込まれる位置決め用孔112,122が形成されている。軸部材90と押え板110の間にシート材120を挟み込んで現像剤撹拌部材100を組み立てるときは、位置決め用エンボス92を位置決め用孔112,122に差し込んで嵌め合わす。これにより、これら軸部材90、押え板110、及びシート材120を正確に位置決めできる。
【0034】
また、軸部材90には、位置決め用エンボス92に並んで複数の溶着用エンボス94(本発明にいう凸部の一例である)が形成されている。複数の溶着用エンボス94は、軸部材90の長手方向に並んでいる。押え板110とシート材120には、溶着用エンボス94が差し込まれる溶着用孔114,124が形成されている。溶着用エンボス94の外径は溶着用孔114,124の内径よりもやや小さい。位置決め用エンボス92を位置決め用孔112,122に差し込んで軸部材90、押え板110、及びシート材120を正規の位置に位置決めをすることにより、溶着用エンボス94は溶着用孔114,124に差し込まれる。溶着用エンボス94が溶着用孔114,124に差し込まれた状態では、溶着用エンボス94の先端部が押え板110の表面から数ミリほど突出している(飛び出ている)。
【0035】
軸部材90のうち溶着用エンボス94の近傍の部分には凹部96が形成されている。この凹部96は、複数の溶着用エンボス94の近傍それぞれに形成されており、その深さは約1.0mmから約1.5mmまでの間である。また、軸部材90、押え板110、及びシート材120を正規の位置に位置決めした場合、凹部96は溶着用孔114,124にはつながらない(連通しない)。また、この位置決めした状態において、凹部96に重なる孔(貫通孔)116,126がそれぞれ押え板110とシート材120に形成されている。従って、押え板110の表面からは孔116,126を通して凹部96が見える。このため、後述するように現像剤撹拌部材100を分解するときは、現像剤撹拌部材100を裏返しにしなくて済む。
【0036】
溶着用エンボス94を溶着して軸部材90、押え板110、及びシート材120を互いに固定するに際しては、熱又は超音波等の振動を溶着用エンボス94に加えてこれを溶融する。これにより、溶着用エンボス94のうち押え板110の表面から突出している先端部は、図7に示すように、半球部98になる。この半球部98の直径は、溶着用孔114,124の内径よりも大きくてこれらを塞ぐようになる。この結果、軸部材90、押え板110、及びシート材120が互いに強固に固定される。
【0037】
上記のように軸部材90、押え板110、及びシート材120が互いに強固に固定された現像剤撹拌部材100を分解する手順を説明する。
【0038】
上述したように、押え板110の表面からは孔116,126を通して凹部96が見える。そこで、図7に示すように、孔116,126を通してマイナスドライバ130のような固いものの先端部を凹部96の開口から奥へ差し込み、軸部材90から押え板110とシート材120を引き離すようにマイナスドライバ130を捻る。この捻る力は溶着用エンボス94の切欠き95に集中してこの隅部から、図7に示すような亀裂99が切欠き95の反対側に伝播して溶着用エンボス94が破壊される。この結果、現像剤撹拌部材100が軸部材90、押え板110、及びシート材120の3部品に容易に分解されてこれらをリサイクルできる。
【0039】
なお、各実施例においては凹部の深さを1.0mmから1.5mmまでの範囲内と説明したが、深さはこの値に限定せず、1.5mm以上でも問題ない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、現像剤撹拌部材に限らず、溶着を利用して複数の部品を固定する部品、部材などに広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】現像剤撹拌部材を分解して示す斜視図である。
【図2】組み立てられた現像剤撹拌部材を示す斜視図である。
【図3】図2のA―A断面図である。
【図4】ドライバの先端を凹部に差し込んで現像剤撹拌部材を分解している様子を示す斜視図である。
【図5】実施例2の現像剤撹拌部材を切断して示す断面図であり、図3と同様に切断したものである。
【図6】実施例3の現像剤撹拌部材100を示す斜視図である。
【図7】図6のB―B断面図である。
【図8】従来の溶着前の部品を示す斜視図である。
【図9】溶着されて固定された従来の溶着部品を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
40,80,100 現像剤撹拌部材
50,90 軸部材
54,94 エンボス
56,96 凹部
60,110 押え板
70,120 シート材
116,126 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部が形成された第1部品の該凸部を、孔が形成された第2部品の該孔に差し込んで該凸部の先端部を前記孔から突出させ、この突出した部分を溶融して前記第1部品と前記第2部品が固定された溶着部品において、
前記第1部品は、
前記凸部の近傍に、溶着部品の分解時に工具が挿入される凹部を有することを特徴とする溶着部品。
【請求項2】
前記第1部品の凹部は、
その開口が外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の溶着部品。
【請求項3】
前記第2部品は、
前記凸部の近傍に、前記第1部品の凹部まで貫通した孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶着部品。
【請求項4】
前記第1部品の前記凸部は、
その根元部分に切欠きが形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の溶着部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−1065(P2006−1065A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177796(P2004−177796)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】