説明

溶融塩電池装置及び溶融塩電池装置の制御方法

【課題】容易に溶融塩電池を加熱すると共に、起動時の待機時間を短縮し、溶融塩電池の加熱に必要なエネルギーを低減することができる溶融塩電池装置、及び溶融塩電池装置の制御方法を提供する。
【解決手段】溶融塩電池装置1は、複数の溶融塩電池ユニット3,3,…と、室温で動作可能な補助電池(電力源)41を備える。各溶融塩電池ユニット3はヒータを備えている。起動時には、補助電池41は、一の溶融塩電池ユニット3のヒータへ電力を供給し、一の溶融塩電池ユニット3はヒータで加熱されて動作可能になる。動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3は、他の溶融塩電池ユニット3,3,…のヒータへ電力を供給し、他の溶融塩電池ユニット3,3,…はヒータで加熱されて動作可能になる。多くのエネルギーを必要とせずに容易に溶融塩電池が加熱され、溶融塩電池装置1が短時間で起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の溶融塩電池を備えた溶融塩電池装置、及び溶融塩電池を動作させるための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の効率的な利用のために、高エネルギー密度・高効率の蓄電池が必要とされている。このような蓄電池として、特許文献1に開示されたナトリウム−硫黄電池が開発されている。他の高エネルギー密度・高効率の蓄電池として、溶融塩電池がある。溶融塩電池は、電解質に溶融塩を用いた電池であり、溶融塩が溶融した状態で動作する。溶融塩電池を用いて蓄電を行う溶融塩電池装置の形態としては、家庭又は工場等に設置された定置型の形態、及び自動車に搭載されたもの等の非定置型の形態が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−273297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融塩電池が安定的に動作するためには、溶融塩が液体の状態を保てるように、溶融塩電池内の温度を溶融塩の融点よりもある程度以上高い温度に保つ必要がある。通常、溶融塩の融点は室温よりも高温であり、溶融塩電池は室温よりも高い温度で動作する。ここで、室温とは、加熱及び冷却のいずれも行われていない状態での温度であり、例えば1℃〜30℃程度である。このため、溶融塩電池装置には、溶融塩電池を加熱する機能が必要である。室温等の溶融塩の融点以下の温度で溶融塩電池が停止している状態から溶融塩電池装置を起動する際には、まず、溶融塩電池が動作可能な温度にまで溶融塩電池を加熱する必要がある。溶融塩電池を加熱する方法としては、ヒータで溶融塩電池を加熱する方法が考えられるものの、起動時には、溶融塩電池自身をヒータの電源として利用することはできない。特に、非定置型の溶融塩電池装置では、溶融塩電池を加熱するために外部からエネルギーを投入することが困難であるという問題がある。
【0005】
また、溶融塩電池が動作可能な温度にまで溶融塩電池を加熱するにはある程度の時間が必要であるので、溶融塩電池装置の起動時には使用可能となるまでに待機時間が発生する。特に、容量を増大させるために溶融塩電池を大型化した場合には、待機時間が長大化するという問題がある。また、エネルギー利用の効率化のためには、溶融塩電池を加熱するためのエネルギー消費を低減することが求められる。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、容易に溶融塩電池を加熱すると共に、起動時の待機時間を短縮し、溶融塩電池の加熱に必要なエネルギーを低減することができる溶融塩電池装置、及び溶融塩電池装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶融塩電池装置は、電解質として用いた溶融塩が室温よりも高い温度で溶融した状態で動作する複数の溶融塩電池を備える溶融塩電池装置であって、前記複数の溶融塩電池のそれぞれに設けられたヒータと、前記複数の溶融塩電池における一部の溶融塩電池に設けられたヒータへ、室温下で電力を供給する電力源と、前記一部の溶融塩電池からの電力を、他の一部の溶融塩電池に設けられたヒータへ供給する電力供給手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る溶融塩電池装置は、前記電力供給手段は、ヒータへの電力供給により加熱された一部の溶融塩電池から、他の一部の溶融塩電池に設けられたヒータへ、順送りに電力を供給する構成であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る溶融塩電池装置は、前記電力供給手段は、電力を供給すべきヒータの数を調整する手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る溶融塩電池装置は、前記電力源は、室温で動作することが可能な二次電池であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る溶融塩電池装置は、前記電力源は、キャパシタであることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る溶融塩電池装置は、外部から供給された電力で前記電力源を充電させる手段と、前記電力源を放電させて、前記電力源に充電されていた電力で前記複数の溶融塩電池の一部又は全部を充電させる手段とを更に備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る溶融塩電池装置は、前記複数の溶融塩電池の一部又は全部からの電力を外部へ出力する手段と、前記電力源からの電力を外部へ出力する手段とを更に備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る溶融塩電池装置の制御方法は、電解質として用いた溶融塩が室温よりも高い温度で溶融した状態で動作する複数の溶融塩電池と、それぞれの溶融塩電池を加熱するためのヒータと、室温で動作することが可能な電力源とを備える溶融塩電池装置を制御する方法であって、前記複数の溶融塩電池の温度が室温になっている状態で、前記電力源から、前記複数の溶融塩電池における一部の溶融塩電池を加熱するためのヒータへ電力を供給させ、前記ヒータで加熱されて溶融塩が溶融した前記一部の溶融塩電池から、他の一部の溶融塩電池を加熱するためのヒータへ電力を供給させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る溶融塩電池装置の制御方法は、前記溶融塩電池装置から外部へ出力する電力の需要を示す情報を受け付け、前記複数の溶融塩電池の内、ヒータへ電力を供給すべき溶融塩電池の数を前記情報に応じて調整することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、複数の溶融塩電池と室温で動作可能な電力源とを備える溶融塩電池装置は、室温下で電力源からの電力で一部の溶融塩電池を加熱して一部の溶融塩電池を動作させ、動作した一部の溶融塩電池からの電力で他の溶融塩電池を加熱する。溶融塩電池装置は、温度が室温になっている状態から起動することができる。
【0017】
また本発明においては、電力源からの電力で加熱された一部の溶融塩電池は、ヒータへ電力を供給することで他の溶融塩電池の一部を加熱し、加熱された溶融塩電池は更に他の溶融塩電池の一部を加熱することで、順送りに溶融塩電池が加熱される。
【0018】
また本発明においては、溶融塩電池装置は、複数の溶融塩電池の内、加熱して動作させる溶融塩電池の数を電力需要に応じて調整する。電力需要が小さい場合は、加熱すべき溶融塩電池の数が少なくなり、加熱に必要なエネルギー消費が低減される。
【0019】
また本発明においては、溶融塩電池装置は、電力源として二次電池を備えている。室温下で最初に二次電池が起動し、溶融塩電池を起動させることが可能である。二次電池は、外部から電力が供給された場合に充電を行うことも可能である。
【0020】
また本発明においては、溶融塩電池装置は、電力源としてキャパシタを備えている。室温下で最初にキャパシタが起動し、溶融塩電池を起動させることが可能である。キャパシタは、溶融塩電池装置の外部から電力が供給された場合に充電を行うことも可能である。
【0021】
また本発明においては、溶融塩電池装置は、外部から供給された電力で、電力源として用いる二次電池又はキャパシタに充電させ、その後、二次電池又はキャパシタを放電して溶融塩電池に充電させ直す。溶融塩電池よりも高速で充放電が可能な二次電池又はキャパシタを用いることにより、効率的に充電が行われる。
【0022】
また本発明においては、溶融塩電池装置は、電力源として用いる二次電池又はキャパシタから外部へ電力を出力することができる。このため、溶融塩電池装置は、起動時に、溶融塩電池がまだ動作できない段階でも、電力を出力することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にあっては、溶融塩電池装置は、温度が室温になっている状態であっても、電力源を動作させることで、容易に溶融塩電池を加熱して起動することが可能である。また、電力源からの電力は複数の溶融塩電池の一部を加熱するために利用されるので、溶融塩電池を加熱するためのエネルギー消費が低減される。また、加熱された溶融塩電池からの電力で他の溶融塩電池を加熱することにより、複数の溶融塩電池の加熱に必要な時間を短縮し、溶融塩電池装置の起動に必要な待機時間を短縮することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係る溶融塩電池装置の利用形態を示す模式図である。
【図2】実施の形態1に係る溶融塩電池装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】溶融塩電池ユニットの構成例を示す模式的斜視図である。
【図4】溶融塩電池セルの内部構成を示す模式的斜視図である。
【図5】実施の形態2に係る溶融塩電池装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】キャパシタの構成を示す模式的断面図である。
【図7】実施の形態3に係る溶融塩電池装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る溶融塩電池装置の利用形態を示す模式図である。溶融塩電池装置1は、車載用の蓄電装置であり、自動車2内に搭載されている。自動車2は、例えば、電気自動車又はハイブリッド車である。溶融塩電池装置1には、使用者が操作することによって動作開始の指示等の指示を入力するための操作部21が信号線で接続されている。また溶融塩電池装置1には、自動車2に搭載されたモータ等の負荷22が電力線で接続されている。
【0026】
図2は、実施の形態1に係る溶融塩電池装置1の電気的構成を示すブロック図である。溶融塩電池装置1は、複数の溶融塩電池ユニット3,3,…と、室温で動作可能な補助電池41とを備えている。複数の溶融塩電池ユニット3,3,…及び補助電池41は、外部に対して電力を入出力する入出力回路42に電力線で接続されている。入出力回路42は、図2には図示していない負荷22に接続されている。また、入出力回路42には、溶融塩電池ユニット3,3,…へ加熱のための電力を供給する電力供給回路43が接続されている。電力供給回路43には、溶融塩電池ユニット3,3,…が電力線で接続されている。また溶融塩電池装置1は、溶融塩電池装置1の動作を制御する制御部44を備え、制御部44は入出力回路42に接続されている。また制御部44には、操作部21からの信号を入力される信号入力部45と、溶融塩電池ユニット3,3,…のそれぞれの温度を測定する温度センサ46とが接続されている。また、図2には図示していないものの、制御部44は、電力供給回路43にも接続されている。
【0027】
図3は、溶融塩電池ユニット3の構成例を示す模式的斜視図である。溶融塩電池ユニット3は、複数の溶融塩電池セル31,31,…と、溶融塩電池セル31,31,…を加熱するための複数のヒータ32,32,…とを含んで構成されている。図3に示した例では、四個の溶融塩電池セル31を直線状に並べて互いに直列に接続してあり、更に、直列に接続された四個の溶融塩電池セル31からなる一列を九列並行に並べて互いに並列に接続してある。即ち、溶融塩電池ユニット3には36個の溶融塩電池セル31が含まれる。互いに接続された複数の溶融塩電池セル31の両極は、入出力回路42に接続されている。
【0028】
一列が四個の溶融塩電池セル31からなる九列の両端には、それぞれに、矩形平板状のヒータ32が配置されている。ヒータ32は、溶融塩電池セル31の側面に接触して配置されている。更に、三列目と四列目との間にヒータ32が配置され、六列目と七列目との間にもヒータ32が配置されている。即ち、溶融塩電池ユニット3には四個のヒータ32が含まれており、一列目、三列目、四列目、六列目、七列目及び九列目に含まれる溶融塩電池セル31のそれぞれにヒータ32が接触している。それぞれのヒータ32は、電力供給回路43に接続されている。ヒータ32,32,…は、ラバーヒータ又はセラミックヒータ等、電力を供給されることによって発熱する電熱ヒータである。ヒータ32,32,…は、電力供給回路43から電力を供給されることにより発熱し、溶融塩電池ユニット3内の溶融塩電池セル31,31,…を加熱する。溶融塩電池ユニット3の全体は、断熱材33で覆われている。図3中には、断熱材33の外形を破線で示している。なお、図3に示した複数の溶融塩電池セル31の配置及び接続態様並びに複数のヒータ32の配置は一例であり、複数の溶融塩電池セル31の配置及び接続態様並びに複数のヒータ32の配置はその他の形態であってもよい。
【0029】
図4は、溶融塩電池セル31の内部構成を示す模式的斜視図である。溶融塩電池31は、直方体の箱状の電池容器316内に、矩形板状に形成された複数の正極311,311,…及び負極312,312,…を交互に重ね、それぞれの正極311と負極312との間にシート状のセパレータ313を配置して構成されている。図4中には、電池容器316の外形を破線で示している。正極311,311,…、負極312,312,…及びセパレータ313,313,…は、電池容器316の底面に対して縦に配置されている。
【0030】
正極311,311,…は、矩形板状の集電体上にNaCrO2 等の正極活物質を含む正極材を塗布して形成してあり、負極312,312,…は、矩形板状の集電体上に、Sn(錫)等の負極活物質を含む負極材をメッキによって形成してある。セパレータ313,313,…は、ケイ酸ガラス又は樹脂等の絶縁性の材料で、内部に電解質を保持でき、また電荷のキャリアとなるイオンが通過できるような形状に形成されている。セパレータ313,313,…は、例えばガラスクロス又は多孔質の形状に形成された樹脂である。各セパレータ313は、正極311と負極312との間を離隔すべく配置されている。正極311,311,…、負極312,312,…及びセパレータ313,313,…には、溶融塩からなる電解質が含浸されている。
【0031】
電解質は、溶融状態で導電性液体となる溶融塩である。融点を低下させるために、電解質は、複数種類の溶融塩が混合していることが望ましい。例えば、電解質は、ナトリウムイオンをカチオンとしFSA(ビスフルオロスルフォニルアミド)をアニオンとしたNaFSAと、カリウムイオンをカチオンとしFSAをアニオンとしたKFSAとの混合塩である。なお、電解質である溶融塩は、TFSA(ビストリフルオロメチルスルフォニルアミド)又はFTA(フルオロトリフルオロメチルスルフォニルアミド)等の他のアニオンを含んでいてもよく、有機イオン等の他のカチオンを含んでいてもよい。
【0032】
正極311,311,…には、導電材製の正極用接続部材314が接続されており、負極312,312,…には、導電材製の負極用接続部材315が接続されている。正極用接続部材314及び負極用接続部材315は、それぞれに、溶融塩電池セル31で充放電を行うための図示しない端子に接続されている。端子は、他の溶融塩電池セル31又は入出力回路42に接続されている。なお、図4に示した溶融塩電池セル31の構成は模式的な構成であり、溶融塩電池セル31内には、充放電時の正極311,311,…及び負極312,312,…の変形を抑制するための弾性部材等、図示しないその他の構成物が含まれていてもよい。また、図4には負極312を正極311よりも一枚多く備える形態を示したが、負極312及び正極311は同数であってもよく、正極311の方が多くてもよい。また、溶融塩電池セル31は、一対の正極311及び負極312を備える形態であってもよい。また、溶融塩電池セル31の形状は直方体の形状に限るものではなく、円柱状等のその他の形状であってもよい。
【0033】
補助電池41は、鉛蓄電池又はリチウムイオン二次電池等、室温で動作することが可能な二次電池である。補助電池41は本発明における電力源として機能する。補助電池41の容量は、溶融塩電池ユニット3の容量よりも小さい。入出力回路42は、溶融塩電池ユニット3,3,…が放電する電流及び電圧を調整して、負荷22へ電力を出力する回路である。また入出力回路42は、負荷22又は図示しない外部電源から電力を供給され、供給された電力で溶融塩電池ユニット3,3,…及び補助電池41を充電することができる。更に、入出力回路42は、補助電池41又は溶融塩電池ユニット3,3,…からの電力を電力供給回路43へ入力することができる。電力供給回路43は、入力された電力を溶融塩電池ユニット3,3,…へ供給する。
【0034】
制御部44は、演算を行う演算部並びに各種のデータ及びプログラムを記憶するメモリを含んで構成された電子回路である。信号入力部45は、操作部21に接続されたインタフェースであり、操作部21で入力された動作開始の指示等の指示を示す信号を入力される。制御部44は、信号入力部45で入力された指示に従って、補助電池41、入出力回路42及び電力供給回路43を制御する。例えば、動作開始の指示が信号入力部45に入力された場合に、制御部44は、補助電池41から入出力回路42を介して電力供給回路43へ電力を出力させ、電力供給回路43に一の溶融塩電池ユニット3へ電力を供給させる。電力供給回路43から供給された電力は、溶融塩電池ユニット3内のヒータ32,32,…へ供給される。温度センサ46は、サーミスタ又は熱電対等でなり、溶融塩電池ユニット3の断熱材33の内側に配置されている。制御部44は、温度センサ46が測定する溶融塩電池ユニット3内の温度に基づいて、電力供給回路43から溶融塩電池ユニット3へ供給する電力を調整することにより、溶融塩電池セル31,31,…の温度を制御する処理を行う。
【0035】
次に、溶融塩電池装置1の動作を説明する。自動車2が移動している場合等、溶融塩電池装置1が動作している間は、溶融塩電池ユニット3,3,…は放電し、放電により出力された電力の一部は、電力供給回路43から溶融塩電池ユニット3,3,…へ供給される。供給された電力は、各溶融塩電池ユニット3内のヒータ32,32,…へ供給され、ヒータ32,32,…は溶融塩電池セル31,31,…を加熱する。制御部44は、温度センサ46が測定する温度に基づいて、溶融塩電池セル31内の溶融塩が溶融して溶融塩電池セル31が安定的に動作する温度に溶融塩電池ユニット3内の温度を維持するように、電力供給回路43から供給する電力を制御する。入出力回路42は、溶融塩電池ユニット3,3,…からの電力を負荷22へ出力する。また、入出力回路42は、適宜、負荷22からの回生電力、又は自動車2外の図示しない外部電源から電力を供給され、補助電池41及び溶融塩電池ユニット3,3,…の充電を行う。
【0036】
自動車2が駐車した場合等、溶融塩電池装置1が停止した場合は、溶融塩電池ユニット3,3,…の充放電が停止し、また電力供給回路43からの電力供給も停止する。溶融塩電池ユニット3内のヒータ32,32,…は加熱を停止し、溶融塩電池セル31,31,…の温度は溶融塩の融点未満の室温まで低下する。溶融塩電池セル31,31,…の温度が室温まで低下した後は、溶融塩は凝固して絶縁体となり、溶融塩電池ユニット3は動作不能となる。補助電池41は、充電された状態になっている。
【0037】
自動車2を始動させる場合等、停止状態から溶融塩電池装置1を起動させる場合は、使用者は、操作部21を操作することによって起動の指示を入力し、信号入力部45は、起動の指示を操作部21から入力される。制御部44は、信号入力部45に入力された起動の指示に従って、補助電池41に放電を開始させる。また、制御部44は、入出力回路42に、補助電池41からの電力を電力供給回路43へ入力させ、電力供給回路43に、電力を一の溶融塩電池ユニット3へ供給させる。電力を供給する対象の一の溶融塩電池ユニット3は、予め定められており、電力を供給する対象を示す情報が予め制御部44に記憶されている。なお、補助電池41からの電力を供給される一の溶融塩電池ユニット3は適宜変更されてもよい。電力を供給された溶融塩電池ユニット3では、ヒータ32,32,…が発熱し、溶融塩電池セル31,31,…を加熱する。制御部44は、温度センサ46が測定する温度に基づいて、溶融塩が溶融して溶融塩電池セル31,31,…が安定的に動作する温度になるまで溶融塩電池ユニット3を加熱させる。溶融塩電池セル31,31,…内の溶融塩が溶融して電解液となった状態で、電力を供給された一の溶融塩電池ユニット3は、動作可能になる。
【0038】
制御部44は、次に、動作可能になった溶融塩電池ユニット3に、放電を開始させる。また、制御部44は、入出力回路42に、溶融塩電池ユニット3からの電力を電力供給回路43へ入力させ、電力供給回路43に、電力を残りの溶融塩電池ユニット3,3,…へ供給させる。電力を供給された溶融塩電池ユニット3,3,…では、ヒータ32,32,…が溶融塩電池セル31,31,…を加熱し、溶融塩が溶融して電解液となった状態で、溶融塩電池ユニット3,3,…は動作可能になる。即ち、本発明では、補助電池41からの電力で一の溶融塩電池ユニット3を加熱し、動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3からの電力で残りの溶融塩電池ユニット3,3,…を加熱する。このようにして、入出力回路42、電力供給回路43及び制御部44は、本発明における電力供給手段として機能する。全ての溶融塩電池ユニット3が動作可能になった段階で、溶融塩電池装置1の起動が完了する。以後、制御部44は、溶融塩電池ユニット3,3,…に充放電を行わせ、入出力回路42に電力の入出力を実行させる。
【0039】
以上詳述した如く、本実施の形態においては、溶融塩電池装置1は、室温で動作可能な補助電池41を備えており、起動時には、補助電池41から一の溶融塩電池ユニット3へ電力を供給することにより、一の溶融塩電池ユニット3を加熱させて動作可能にする。動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3は、残りの溶融塩電池ユニット3,3,…へ電力を供給することにより、残りの溶融塩電池ユニット3,3,…を加熱させて動作可能にする。補助電池41は室温でも動作可能な電池であるので、溶融塩電池装置1は、温度が室温になっている状態であっても、補助電池41を放電させて、起動することが可能である。従って、本発明により容易に溶融塩電池を加熱して溶融塩電池装置1を起動することが可能となる。特に、非定置型の溶融塩電池装置1を実現することが可能となる。
【0040】
また、補助電池41からの電力では、一つの溶融塩電池ユニット3を加熱するだけであるので、全ての溶融塩電池ユニット3,3,…を加熱することに比べて、溶融塩電池を加熱するためのエネルギー消費を低減することが可能となる。補助電池41の容量は一つの溶融塩電池ユニット3を加熱するために十分な容量であればよいので、補助電池41の容量を小さくし、溶融塩電池装置1の小型化・軽量化を図ることができる。また、溶融塩電池ユニット3の容量は補助電池41よりも大きいので、大電力を他の溶融塩電池ユニット3,3,…へ供給することにより、補助電池41から全ての溶融塩電池ユニット3,3,…へ電力を供給することに比べて、より効率的に溶融塩電池ユニット3,3,…を加熱することができる。従って、溶融塩電池ユニット3,3,…の加熱に必要な時間を短縮し、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間を短縮することが可能となる。
【0041】
なお、溶融塩電池装置1は、補助電池41から電力を供給された一の溶融塩電池ユニット3から残りの溶融塩電池ユニット3,3,…へ電力を供給する形態に限らない。溶融塩電池装置1は、動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3から電力を供給する対象の溶融塩電池ユニット3,3,…の数を調整することができる形態であってもよい。例えば、自動車2は負荷22に必要な電力を検出するセンサを備え、電力需要を示す情報がセンサから信号入力部45へ入力される。また例えば、操作部21に予定走行距離又は乗車人数等の走行に関する情報が入力され、入力された情報に応じた電力需要を示す情報が信号入力部45へ入力される。制御部44は、信号入力部45に入力された情報が示す電力需要に応じて、動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3から電力を供給する対象の溶融塩電池ユニット3,3,…の数を調整する処理を行う。この処理により、動作する溶融塩電池ユニット3,3,…の数が調整される。制御部44は、動作する溶融塩電池ユニット3,3,…の数を一個単位で調整する。例えば、制御部44は、電力需要が予め定められた設定値以下である場合は、電力供給回路43に、一つの溶融塩電池ユニット3からの電力を残りの溶融塩電池ユニット3,3,…の内の一部へ供給させる。電力を供給された溶融塩電池ユニット3は動作可能となり、電力を供給されない溶融塩電池ユニット3は動作しない。即ち、この形態では、必要な電力が小さい場合に、溶融塩電池ユニット3,3,…の内の一部の溶融塩電池ユニット3が動作する。電力需要が小さい場合には、加熱すべき溶融塩電池ユニット3の数が少ないので、溶融塩電池を加熱するためのエネルギー消費がより低減される。また、一つの溶融塩電池ユニット3から電力を供給される溶融塩電池ユニット3の数が少ない場合は、それぞれの溶融塩電池ユニット3へ供給される電力が大きくなり、より早く溶融塩電池ユニット3内の温度が上昇する。従って、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間をより短縮することが可能となる。
【0042】
また、溶融塩電池装置1は、溶融塩電池ユニット3,3,…のそれぞれが順送りに互いに電力を供給する形態であってもよい。具体的には、補助電池41から電力を供給された溶融塩電池ユニット3は、残りの溶融塩電池ユニット3,3,…の内の一つに電力を供給し、電力を供給された溶融塩電池ユニット3は、更に次の一つの溶融塩電池ユニット3へ電力を供給する。この形態では、溶融塩電池ユニット3,3,…を加熱するための電力消費を各溶融塩電池ユニット3に分散させることができる。また、この形態では、電力需要に応じて動作させる溶融塩電池ユニット3,3,…の数を調整することも、容易に実行することができる。
【0043】
また、溶融塩電池装置1は、全ての溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になってから起動する形態に限るものではなく、一つの溶融塩電池ユニット3が動作可能になった段階で起動する形態であってもよい。この形態では、制御部44は、補助電池41から電力を供給された一つの溶融塩電池ユニット3からの電力を、他の溶融塩電池ユニット3,3,…へ供給させる一方で、入出力回路42から負荷22へ出力させる。補助電池41から電力を供給された一つの溶融塩電池ユニット3が動作可能となった段階で、他の溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になる前に、溶融塩電池装置1が起動し、電力を出力する。他の溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になった後では、溶融塩電池装置1は、複数の溶融塩電池ユニット3,3,…を用いた電力の入出力を行う。一つの溶融塩電池ユニット3が動作可能となった段階で溶融塩電池装置1が起動するので、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間をより短縮することが可能となる。
【0044】
また、溶融塩電池装置1は、補助電池41からの電力を入出力回路42から負荷22へ出力することが可能な形態であってもよい。この形態では、入出力回路42は、補助電池41が放電する電流及び電圧を調整して、負荷22へ電力を出力することが可能であり、制御部44は、必要に応じて、入出力回路42に、補助電池41からの電力を負荷22へ出力させる。例えば、溶融塩電池装置1は、まだ溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になる前の段階で、補助電池41からの電力を負荷22へ出力し、負荷22を動作させることができる。このとき、溶融塩電池装置1は、溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になる前に起動する。溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になった後では、溶融塩電池装置1は、溶融塩電池ユニット3,3,…を用いた電力の入出力を行う。従って、この形態では、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間を見掛け上短縮し、更に、負荷22を動作させて自動車2を起動する際の起動時間を短縮することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態においては、入出力回路42及び電力供給回路43を介して補助電池41から溶融塩電池ユニット3へ電力を供給する形態を示したが、溶融塩電池装置1は、補助電池41が一の溶融塩電池ユニット3に直接に接続されている形態であってもよい。また、溶融塩電池装置1は、補助電池41から電力を供給される溶融塩電池ユニット3が他の溶融塩電池ユニット3,3,…に直接に接続されている形態であってもよい。また、本実施の形態においては、補助電池41から一の溶融塩電池ユニット3へ電力を供給する形態を示したが、溶融塩電池装置1は、一部の複数の溶融塩電池ユニット3へ補助電池41から電力を供給する形態であってもよい。
【0046】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る溶融塩電池装置1の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態2では、溶融塩電池装置1は、実施の形態1における補助電池41の代わりに、キャパシタ5を備えている。キャパシタ5は入出力回路42に電力線で接続されており、キャパシタ5は入出力回路42及び電力供給回路43を介して一の溶融塩電池ユニット3へ電力を供給する。入出力回路42は、負荷22又は図示しない外部電源から電力を供給され、供給された電力でキャパシタ5を充電することができる。また入出力回路42は、キャパシタ5が放電する電流及び電圧を調整して、溶融塩電池装置1外の負荷22へキャパシタ5からの電力を出力することができる。また制御部44は、キャパシタ5に接続されており、キャパシタ5の動作を制御する。溶融塩電池装置1のその他の構成は実施の形態1と同様であり、対応する部分に同符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図6は、キャパシタ5の構成を示す模式的断面図である。キャパシタ5は、板状の正極層52及び負極層54がセパレータ53を間に挟んで積層された構造となっている。また正極層52の外側には正極基板51が設けられ、負極層54の外側には負極基板55が設けられている。正極基板51及び負極基板55は、ステンレス鋼板等の金属板である。正極層52及び負極層54は、何れも、板状の金属多孔体に導電性の活物質を付着させた構造となっている。金属多孔体は、スポンジ状の多孔質樹脂に金属をメッキし、多孔質樹脂を除去することにより製造され、三次元網状構造を持つ金属製の多孔体である。正極層52及び負極層54に用いられる金属多孔体は、例えばアルミニウム多孔体又はニッケル多孔体である。正極層52及び負極層54に金属多孔体を用いることにより、キャパシタ5は出力密度が高くなる。
【0048】
正極層52及び負極層54に含まれる導電性の活物質は、例えばカーボン粉末である。セパレータ53は、シート状に形成された多孔質樹脂である。セパレータ53の材料は例えばポリエチレンである。正極層52、セパレータ53及び負極層53には、キャパシタ5の動作温度で液体である電解質が含浸されている。電解質は、例えば、LiPF6 が溶解したプロピレンカーボネートである。キャパシタ5は、正極層52と負極層53との間に電圧が印加されることにより、電気二重層キャパシタとして機能する。なお、キャパシタ5の構造は、複数の正極層52及び負極層54がセパレータ53を間に介して積層した多層構造であってもよい。またキャパシタ5の構造は、積層構造ではなく、シート状の正極層52、セパレータ53及び負極層54が筒状に巻回した構造であってもよい。
【0049】
次に、溶融塩電池装置1の動作を説明する。自動車2が移動している場合等、溶融塩電池装置1が動作している間は、各溶融塩電池ユニット3内の温度は、電解質として用いている溶融塩が溶融して溶融塩電池セル31が安定的に動作する温度に維持されている。溶融塩電池ユニット3,3,…は、入出力回路42を介して充放電を行う。同様に、キャパシタ5は入出力回路42を介して充放電を行う。キャパシタ5は溶融塩電池セル31に比べて高速での充放電が可能であるので、制御部44は、短いサイクルの充放電をキャパシタ5に実行させ、より長いサイクルの充放電を溶融塩電池ユニット3,3,…に実行させる処理を行う。また制御部44は、一時的な大電流の充電が必要な場合にキャパシタ5に充電を実行させる処理を行う。例えば、自動車2の減速によって回生電力が発生した場合等、負荷22から入出力回路42へ大電力が供給された場合に、制御部44は、入出力回路42に供給された電力でキャパシタ5を充電させる処理を行う。また、制御部44は、充電後のキャパシタ5に放電を実行させ、入出力回路42に、キャパシタ5が放電した電力で溶融塩電池ユニット3,3,…を充電させる処理を行う。この処理により、回生電力等の一時的な大電力を効率的に溶融塩電池装置1で充電することができる。
【0050】
自動車2が駐車した場合等、溶融塩電池装置1が停止した後は、溶融塩電池ユニット3,3,…の温度は室温まで低下し、溶融塩電池ユニット3,3,…は動作不能となる。キャパシタ5は、充電された状態となっている。
【0051】
自動車2が始動する場合等、停止状態から溶融塩電池装置1が起動する場合、信号入力部45は起動の指示を入力され、制御部44は、キャパシタ5に一の溶融塩電池ユニット3への電力供給を開始させる。このように、キャパシタ5は本発明における電力源として機能する。キャパシタ5から電力を供給された溶融塩電池ユニット3は、ヒータ32,32,…によって加熱され、溶融塩電池セル31,31,…内の溶融塩が溶融して電解液となった状態で、動作可能になる。制御部44は、次に、動作可能になった溶融塩電池ユニット3に、残りの溶融塩電池ユニット3,3,…へ電力を供給させる。残りの溶融塩電池ユニット3,3,…は、加熱されて動作可能になり、全ての溶融塩電池ユニット3が動作可能になった段階で、溶融塩電池装置1の起動が完了する。以後、制御部44は、キャパシタ5及び溶融塩電池ユニット3,3,…に充放電を行わせ、入出力回路42に電力の入出力を実行させる。
【0052】
以上詳述したように、本実施の形態においては、溶融塩電池装置1は、キャパシタ5を備え、キャパシタ5からの電力で一の溶融塩電池ユニット3を加熱させ、動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3からの電力で残りの溶融塩電池ユニット3,3,…を加熱させる。キャパシタ5は室温でも動作可能であるので、溶融塩電池装置1は、温度が室温になっている状態であっても、キャパシタ5を放電させて、起動することが可能である。従って、本実施の形態においても、容易に溶融塩電池を加熱して溶融塩電池装置1を起動することが可能となる。また、キャパシタ5からの電力では、一つの溶融塩電池ユニット3を加熱するだけであるので、溶融塩電池を加熱するためのエネルギー消費を低減することが可能となる。また、実施の形態1と同様に、溶融塩電池ユニット3,3,…の加熱に必要な時間を短縮し、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間を短縮することが可能となる。更に、本実施の形態においては、キャパシタ5で外部からの電力の充電及び放電を行うことにより、回生電力等の一時的な大電力を効率的に溶融塩電池装置1で充電することが可能となる。
【0053】
なお、実施の形態1と同様に、溶融塩電池装置1は、動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3から電力を供給する対象の溶融塩電池ユニット3,3,…の数を調整する形態であってもよい。また、溶融塩電池装置1は、溶融塩電池ユニット3,3,…のそれぞれが順送りに互いに電力を供給する形態であってもよい。また、実施の形態1と同様に、溶融塩電池装置1は、一つの溶融塩電池ユニット3が動作可能になった段階で起動する形態であってもよい。
【0054】
また、溶融塩電池装置1は、キャパシタ5からの電力を入出力回路42から負荷22へ出力することが可能な形態であってもよい。この形態では、入出力回路42は、キャパシタ5が放電する電流及び電圧を調整して、負荷22へ電力を出力することが可能であり、制御部44は、必要に応じて、入出力回路42に、キャパシタ5からの電力を負荷22へ出力させる。例えば、溶融塩電池装置1は、まだ溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になる前の段階で、キャパシタ5からの電力を負荷22へ出力し、負荷22を動作させることができる。溶融塩電池ユニット3,3,…が動作可能になった後では、溶融塩電池装置1は、溶融塩電池ユニット3,3,…を用いた電力の入出力を行う。従って、この形態では、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間を見掛け上短縮し、更に、負荷22を動作させて自動車2を起動する際の起動時間を短縮することが可能となる。
【0055】
また、溶融塩電池装置1は、キャパシタ5から複数の溶融塩電池ユニット3へ電力を供給する形態であってもよい。また、溶融塩電池装置1は、キャパシタ5が一つの溶融塩電池ユニット3へ直接に接続されている形態であってもよい。
【0056】
また、溶融塩電池装置1は、キャパシタ5の代わりに、溶融塩電池よりも高速で充放電可能な二次電池を備えた形態であってもよい。この形態では、二次電池はキャパシタ5と同様に動作する。溶融塩電池装置1は、入出力回路42に大電力が供給された場合に二次電池を充電させ、充電後の二次電池に放電を実行させ、放電した電力で溶融塩電池ユニット3,3,…を充電させることができる。従って、この形態でも、一時的な大電力を効率的に溶融塩電池装置1で充電することができる。
【0057】
(実施の形態3)
実施の形態1及び2においては、溶融塩電池装置1が非定置型である形態を示したが、実施の形態3においては、定置型の形態を示す。図7は、実施の形態3に係る溶融塩電池装置1の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態2では、溶融塩電池装置1は、実施の形態1における補助電池41を備えておらず、入出力回路42には、外部の負荷とは別に、商用電源等の外部電源47が接続されている。入出力回路42は、外部電源47から入力された電力を電力供給回路43へ供給し、電力供給回路43は、供給された電力を一の溶融塩電池ユニット3へ供給する。本実施の形態においては、外部電源47が本発明における電力源として機能する。溶融塩電池装置1のその他の構成は実施の形態1と同様であり、対応する部分に同符号を付してその説明を省略する。
【0058】
溶融塩電池装置1が動作している間は、各溶融塩電池ユニット3内の温度は、電解質として用いている溶融塩が溶融して溶融塩電池セル31が安定的に動作する温度に維持されている。溶融塩電池ユニット3,3,…は、入出力回路42を介して充放電を行う。溶融塩電池装置1が停止した後は、溶融塩電池ユニット3,3,…の温度は室温まで低下し、溶融塩電池ユニット3,3,…は動作不能となる。
【0059】
停止状態から溶融塩電池装置1を起動させる場合、制御部44は、信号入力部45に入力された起動の指示に従って、入出力回路42及び電力供給回路43に外部電源47からの電力を一の溶融塩電池ユニット3へ供給させる。外部電源47から電力を供給された溶融塩電池ユニット3は、ヒータ32,32,…によって加熱され、溶融塩電池セル31,31,…内の溶融塩が溶融して電解液となった状態で、動作可能になる。制御部44は、次に、動作可能になった溶融塩電池ユニット3に、残りの溶融塩電池ユニット3,3,…へ電力を供給させる。残りの溶融塩電池ユニット3,3,…は、加熱されて動作可能になり、全ての溶融塩電池ユニット3が動作可能になった段階で、溶融塩電池装置1の起動が完了する。以後、制御部44は、溶融塩電池ユニット3,3,…に充放電を行わせ、入出力回路42に電力の入出力を実行させる。
【0060】
以上詳述したように、本実施の形態においては、溶融塩電池装置1は、外部電源47からの電力によって一の溶融塩電池ユニット3を加熱させ、動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3からの電力によって残りの溶融塩電池ユニット3,3,…を加熱させる。外部電源47からの電力により一つの溶融塩電池ユニット3を加熱するだけであるので、溶融塩電池装置1を起動させるために必要なエネルギー消費を低減することが可能となる。また、実施の形態1及び2と同様に、溶融塩電池ユニット3,3,…の加熱に必要な時間を短縮し、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間を短縮することが可能となる。
【0061】
なお、溶融塩電池装置1は、電力需要に応じて、動作可能になった一の溶融塩電池ユニット3から電力を供給する対象の溶融塩電池ユニット3,3,…の数を調整する形態であってもよい。また溶融塩電池装置1は、溶融塩電池ユニット3,3,…のそれぞれが順送りに互いに電力を供給する形態であってもよい。また、溶融塩電池装置1は、一つの溶融塩電池ユニット3が動作可能になった段階で起動する形態であってもよく、外部電源47から複数の溶融塩電池ユニット3へ電力を供給する形態であってもよい。また、溶融塩電池装置1は、外部電源47が一つの溶融塩電池ユニット3へ直接に接続されている形態であってもよい。
【0062】
更に、以上の実施の形態1〜3においては、溶融塩電池ユニット3の単位で溶融塩電池の動作を制御する形態を示したが、溶融塩電池装置1は、溶融塩電池セル31の単位で溶融塩電池の動作を制御する形態であってもよい。この形態の溶融塩電池装置1では、複数の溶融塩電池セル31,31,…の内、まず、一部の溶融塩電池セル31を加熱するためのヒータ32へ電力が供給される。一部の溶融塩電池セル31が動作可能になった後、他の溶融塩電池セル31,31,…を加熱するためのヒータ32,32,…へ、動作可能になった溶融塩電池セル31から電力が供給される。複数の溶融塩電池セル31,31,…が動作可能になった段階で、溶融塩電池装置1の起動が完了する。この形態においても、溶融塩電池装置1を起動させるために必要なエネルギー消費を低減することが可能となり、溶融塩電池装置1の起動時に必要な待機時間を短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 溶融塩電池装置
22 負荷
3 溶融塩電池ユニット
31 溶融塩電池セル
32 ヒータ
33 断熱材
41 補助電池
42 入出力回路
43 電力供給回路
44 制御部
46 温度センサ
47 外部電源
5 キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質として用いた溶融塩が室温よりも高い温度で溶融した状態で動作する複数の溶融塩電池を備える溶融塩電池装置であって、
前記複数の溶融塩電池のそれぞれに設けられたヒータと、
前記複数の溶融塩電池における一部の溶融塩電池に設けられたヒータへ、室温下で電力を供給する電力源と、
前記一部の溶融塩電池からの電力を、他の一部の溶融塩電池に設けられたヒータへ供給する電力供給手段と
を備えることを特徴とする溶融塩電池装置。
【請求項2】
前記電力供給手段は、
ヒータへの電力供給により加熱された一部の溶融塩電池から、他の一部の溶融塩電池に設けられたヒータへ、順送りに電力を供給する構成であること
を特徴とする請求項1に記載の溶融塩電池装置。
【請求項3】
前記電力供給手段は、電力を供給すべきヒータの数を調整する手段を有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の溶融塩電池装置。
【請求項4】
前記電力源は、室温で動作することが可能な二次電池であること
を特徴とする請求項1から3までの何れか一つに記載の溶融塩電池装置。
【請求項5】
前記電力源は、キャパシタであること
を特徴とする請求項1から3までの何れか一つに記載の溶融塩電池装置。
【請求項6】
外部から供給された電力で前記電力源を充電させる手段と、
前記電力源を放電させて、前記電力源に充電されていた電力で前記複数の溶融塩電池の一部又は全部を充電させる手段と
を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の溶融塩電池装置。
【請求項7】
前記複数の溶融塩電池の一部又は全部からの電力を外部へ出力する手段と、
前記電力源からの電力を外部へ出力する手段と
を更に備えることを特徴とする請求項4から6までの何れか一つに記載の溶融塩電池装置。
【請求項8】
電解質として用いた溶融塩が室温よりも高い温度で溶融した状態で動作する複数の溶融塩電池と、それぞれの溶融塩電池を加熱するためのヒータと、室温で動作することが可能な電力源とを備える溶融塩電池装置を制御する方法であって、
前記複数の溶融塩電池の温度が室温になっている状態で、前記電力源から、前記複数の溶融塩電池における一部の溶融塩電池を加熱するためのヒータへ電力を供給させ、
前記ヒータで加熱されて溶融塩が溶融した前記一部の溶融塩電池から、他の一部の溶融塩電池を加熱するためのヒータへ電力を供給させること
を特徴とする溶融塩電池装置の制御方法。
【請求項9】
前記溶融塩電池装置から外部へ出力する電力の需要を示す情報を受け付け、
前記複数の溶融塩電池の内、ヒータへ電力を供給すべき溶融塩電池の数を前記情報に応じて調整すること
を特徴とする請求項8に記載の溶融塩電池装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−93239(P2013−93239A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235328(P2011−235328)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】