説明

溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成糸を製造するための伸び増進剤

本発明は、非晶および熱可塑的方法で加工可能な伸び増進剤に関し、それをビニル系単量体をラジカルで重合させることで製造し、および前記伸び増進剤をこれと相溶しない溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成糸を製造する目的で用いる。本発明は、前記伸び増進剤に、熱による負荷を290℃のアルゴン雰囲気中で30分間受けさせた後に、それの最大総単量体含有量が6質量パーセントであるように前記伸び増殖剤に抗酸化物質の添加による熱安定化を受けさせることを特徴とする。本発明は、更に、前記伸び増進剤を含有させた粒状プラスチック材料およびそれの製造方法にも関する。また、溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体と伸び増進剤の重合体混合物から合成糸を溶融紡糸加工で製造する方法およびその後に前記合成糸を用いる方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶性で熱可塑的に加工可能な伸び増進剤(elongation−enhancing agent)に関し、ここでは、それをビニル系単量体をフリーラジカルで重合させることで形成させ、および前記伸び増進剤はこれと相溶しない溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体(melt−spinnable fibre−forming matrix polymer)から合成繊維を製造する時に用いるに適する。本発明は、更に、本伸び増進剤を含有させたプラスチックペレットおよびそれの製造方法にも関する。本発明は、更に、溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体と伸び増進剤から形成させた重合体混合物から合成繊維を溶融紡糸加工で製造する方法および更に前記合成繊維を使用する方法にも関する。
【0002】
従来技術
重合体混合物を合成繊維に紡糸することは良く知られている。本目的は、特定の紡糸速度で紡糸した繊維が示す破壊時伸び(breaking extension)を添加重合体(additive polymer)による改質を受けさせていない時に得られるそれよりも高くすることにある。それによって最終的糸を製造する時により高い延伸比を用いることが可能になることで、紡糸装置の生産性を向上させることができるはずである。
【0003】
そのように生産性が向上すると、製造工程の経済的効率の向上がもたらされるはずである。製造が困難であり、また高速装置の費用が高いとそのような経済的効率の妥協がある程度起こる。当該添加重合体の追加的費用は、実質的な影響を与え、その結果として、添加量に応じて経済的効率がゼロになる点さえ存在する。その上、市場に出ている添加重合体の入手性も重要な要因である。そのような理由で、文献に記述されている多数の添加剤が、大規模な工業的生産で果たす機能に関しては考慮されていない。
【0004】
製造業者または工程発案者も全体としての生産連鎖を考慮に入れるはずであり、前記連鎖の中のほんの一段階、例えば紡糸段階のみの生産性の向上に甘んじることはできないであろう。次の工程を悪化させるべきではない。より詳細には、本発明の主目的は、狭い意味ではなく、好適には、紡糸速度を速くしても、次の段階のさらなる工程条件が向上するようにすることにある。
【0005】
例えば、POY製造に関する従来技術には、重合体混合物を高い紡糸速度(これは、配向度が実質的に低下することで特徴づけられる)で紡糸した時でも破壊時伸びが非常に高いと報告されている。そのような紡糸したままのフィラメントは、貯蔵中に不安定であることが知られており、それを延伸−微細構造化工程(draw−texturing processes)に送り込んで高速加工するのは不可能である。紡糸速度を高くした時に、結晶化度が感知されるようになる転換点における破壊時伸びは<70%であると報告されたが、その地点で微細構造化工程で得ることができる強度が低下する。
【0006】
そのような問題を解決しようとする初期の試みがEP 0 047 464 B(Teijin)、DE 197 07 447(Zimmer)、DE 199 37 727(Zimmer)、DE 199 37 728(Zimmer)およびWO 99/07 927(Degussa)に開示されている。EP 0 047 464 Bは、2500−8000m/分の速度および相当する高延伸比で紡糸したままの繊維が示す破壊時伸びを向上させて生産性の改善を得ようとする目的で、−(−CH−CR−)−型の重合体、例えばポリ(4−メチル−1−ペンテン)または、ポリメタアクリル酸メチルなどを0.2−10質量%添加する方法で形成させた未延伸ポリエステル糸に関する。その添加重合体が、フィブリル化を起こさないようにするには、それを粒径が≦1μmになるように微細にし、かつ混合で均一に分散させるべきである。そのような特殊な効果は、下記の3特性の協力によるものであると述べられている:前記添加剤の分子が実質的に伸びることがない化学的添加剤構造;低可動性;およびポリエステルと添加剤の相溶性。そのような手段は、生産性の向上に役立つ。延伸微細構造化は必要ないと開示されている。WO99/07927の一部として前記技術的教示を再現した結果、添加剤の消費量が多いことに付随して、品質かつ更に加工性が悪化することが分かった。
【0007】
WO 99/47735(TEIJIN LTD.)には、EP 0 047 464 Bで用いられた添加剤は繊維の摩擦特徴の変化をもたらし、およびその結果として繊維を巻き取る時に、満足されるパッケージ構築(package build)を全く達成することができないことが開示されている。WO 99/47735によれば、重合体混合物が基になった繊維が満足される巻き取り性能を達成し得るのは、熱変形温度が105から130℃の範囲の添加剤、即ち、ポリエステルの熱変形温度よりかなり高い熱変形温度を示す添加剤を用い、かつ添加剤の含有量が低い繊維外側領域の繊維断面の中に添加剤含有量が、半径方向に分布するように特定の紡糸手段を選択した時のみである。そのような所望の添加剤分布を達成する目的で、大型の紡糸口金ダイス穴を選択することで代表的ではない高い延伸比を設定しているが、それに伴って通常は繊維破壊率が高くなる。さらに、満足される巻き取り性能を達成することができるようにする目的で、紡糸仕上げ用油を特別に配合することも記述されている。そのような手段と大規模な産業的要求、特に紡糸装置の中の長い滞留時間および、さらなる加工工程との適合性はうやむやのままである。添加剤の使用量は高いままである。
【0008】
DE 197 07 447(Zimmer)は、破壊時伸びが≦180%のポリエステル、または、ポリアミドフィラメントの製造に関する。(メタ)アクリル酸アルキルが0から90質量%で、マレイン酸もしくは無水マレイン酸が0から40質量%で、スチレンが5から85質量%の共重合体をポリエステルもしくはポリアミドに0.05から5質量%添加することで、紡糸取り出し速度を実質的に向上させている。
【0009】
DE 199 37 727(Zimmer)には、ガラス転移温度が90から170℃の範囲の相溶しない非晶質高分子添加剤を0.1から2.0質量%含有させた重合体混合物からポリエステルステープル繊維を製造することが開示されている。前記ポリエステル成分が示す溶融粘度に対する前記高分子添加剤が示す溶融粘度の比率は、1:1から10:1の範囲内である。
【0010】
DE 199 37 728(Zimmer)は、ポリエステルと高分子添加剤と任意の添加剤からHMLSフィラメントを2500から4000m/分の紡糸取り出し速度で製造する方法に関する。その高分子添加剤が示すガラス転移温度は、90から170℃の範囲内でありおよび前記ポリエステル成分が示す溶融粘度に対する前記高分子添加剤が示す溶融粘度の比率は、1:1から7:1の範囲内である。
【0011】
WO 99/07 927は、ポリエステルが基になった重合体混合物を少なくとも2500m/分の取り出し速度vで紡糸することでPOYを製造することに関し、そこではポリエステルをガラス転移温度が100℃以上の2番目の非晶質で熱可塑的に加工可能な共重合体と混合している。前記ポリエステル成分が示す溶融粘度に対する前記共重合体が示す溶融粘度の比率は、1:1から10:1の範囲内である。前記ポリエステルに前記共重合体をそれの少なくとも0.05質量%の量で添加しており、および前記ポリエステルに添加する共重合体の最大量Mは下記:
【0012】
【数1】

のような取り出し速度vに依存する。
【0013】
DE 10022889 A1(ZIMMER AG)には、商業的に受け入れられる品質および収率、即ち商業的に受け入れられる繊維破壊率を確保するように特定した押出し、および混合条件および、また紡糸装置の中の添加剤の滞留時間に関する制限も開示されている。
【0014】
DE 100 63 286 A1(ZIMMER AG)には、重合体混合物が、基になったフィラメントを巻き取る時の良好なパッケージ構築が可能になるように適合させた特定の紡糸手段組み合わせが記述されている。その教示を適用するには、とりわけ、巻き取り用マンドレルの振動数よりも少なくとも0.3%高い振動数で駆動するフィーラーロールが備わっている特定の巻き取り装置を用いる必要がある。
【0015】
そのような特定の手段を用いる場合には、添加剤の使用が非常に特殊なハードウエアが備わっているような製造プラントに限定される。ポリエステルフィラメント用の現存製造プラントの非常に多くは添加剤用のハードウエアを費用をかけて改造する必要がありかつまたプラントへの取り付けおよび改造作業を行う必要があり、それに伴ってかなりの休止時間を必要とする。それによってそのような技術の適用が大きく制限される。
【0016】
DE 101 15 203 A1に、繊維形成重合体が基になった混合物から合成繊維を製造する方法が記述されている。その方法は複数回の開始によって入手可能な重合体である添加剤が用いられることを特徴とする。複数回の開始で重合体に残存する単量体の量を少なくしており、特に、合成繊維を製造する時に起こる繊維破壊の数を更に低下させている。
【0017】
フリーラジカルで重合させたメタアクリレート重合体にアルキレンカルボン酸2−メルカプトエチル化合物を添加するか、或は3−メルカプトプロピオン酸アルキル化合物を分子量調節剤として重合で用いることで熱安定化を受けさせることは原則として公知である(例えばEP−A 0 178 115を参照)。
【0018】
(メタ)アクリレート共重合体にアクリレート単量体を共重合させることで熱安定化を受けさせることは原則として公知である(例えばKunststoff−Handbuch、「Polymethacrylate」、IX巻、27−28頁、1975を参照)。
【0019】
課題および解決法
記述されたような重合体混合物を前記工程条件下で紡糸する時に、上記に示した方法を用いると商業的に受け入れられる良好な繊維破壊率、品質、良好な巻き取り性能(フィラメントで用いる場合)および良好なさらなる加工性能がもたらされはするが、本産業は、それでも、紡糸工程の効率が更に向上し得るようにする目的で、重合体混合物を破壊末端部が、更により少なくなるように紡糸する方法を継続して要求している。別の要求は、合成繊維のさらなる加工特性を向上、特にPOYの場合の延伸微細構造化に関するさらなる加工特性を巻き取り性能、および、さらなる加工性能の点で向上させる要求である。最後に、そのような方法は、費用および特に現存製造プラントにおける不便さが受け入れられるように全幅の点でスケールアップすることができなければならない。更に、添加剤を工程の早い段階で添加することが可能な工程、即ち重合体生産場所と紡糸装置の間に要する注入場所が1カ所から数カ所であり、かつ注入施設に要求される投資額も低くかつまたプラントの複雑さも、小さい工程も望まれている。特に、ポリエステルと伸び増進剤(elongation−aiding agent)が基になっていることで押出し加工機による紡糸で伸び増進剤を紡糸自身で計量する必要なく原料として高い紡糸速度で紡糸可能なペレットを製造することを可能にする伸び増進剤および方法が望まれている。
【0020】
伸び増進剤を更に開発する必要性が継続して存在する。合成繊維を溶融紡糸工程で製造することが可能なように改良を受けさせた伸び増進剤を提供することが、本発明の目的であると考えた。
【0021】
本発明者らが、取り組むことを決定し、かつ従来技術では、そのような方法で取り扱うことが今まで成されなかった特別な課題は、上記に示した方法で用いられる伸び増進剤は、大規模な産業的紡糸プラントで、しばしば長期に渡って熱にさらされるが、その過程で、前記伸び増進剤が、熱で分解する結果として生じる二次的生成物が示す不利な影響にある。そのような影響は、特に、繊維破壊率が高いことと巻き取り、および、さらなる加工性能が悪化することにあるばかりでなく、また紡糸プラント内の排出物である。具体的には、大規模な紡糸プラントの場合、伸び増進剤とマトリックス重合体の溶融混合物を形成させた後に、それを用いて実際の溶融紡糸工程を実施するのが好適である。例えば、伸び増進剤をポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートなどを製造している過程の重縮合段階で添加してもよい。その後、その溶融混合物は、前記重縮合反応槽の中の高温に特定時間保持され、例えば、直接紡糸装置の溶融物分散ラインなどの中に実際の溶融紡糸工程が始まるまで保持される。それによって前記伸び増進剤は、熱にかなりの時間さらされる。溶融物の温度が約290℃の時の滞留時間は、例えば約30分であり得る。
【0022】
別の方法として、最初に伸び増進剤とマトリックス重合体のプラスチックペレットを溶融状態の混合物から形成させることも可能である。前記ペレットを溶融紡糸工程で溶融させる必要があるが、それは、その伸び増進剤を新たに熱にさらすことを伴う。本発明者は、従来技術の伸び増進剤は、実質的に全部がそのような条件下で熱分解を起こすことを確認し、それは、そのような高分子伸び増進剤から生じる単量体成分の生成量で監視可能である。熱分解によって生じる単量体の分率は、一般に、その伸び増進剤自身の重合の結果としてもたらされる比較的少量の残存単量体含有量よりもかなり高い。
【0023】
そのような単量体成分は気泡を発生させ、特に合成繊維の外側表面に気泡を発生させる可能性があり、それによって破壊末端部、巻き取り問題および糸品質に関する悪化が影響を受ける。そのような単量体成分が蒸発し得るのは繊維の外側表面からのみであり、内部にも残存することから、さらなる加工過程中にさらなる問題が生じる。
【0024】
重合自身に由来して、重合体の中にいくらか存在する、いわゆる残存単量体含有量は、特に添加剤合成過程中に開始を数回行うことで、残存単量体含有量を低くした時には、熱分解が理由で、後で生じ得る単量体の濃度と比較して、比較的少量であり、本発明の目的においても、通常無視出来るほど少量である。
【0025】
ビニル系単量体をフリーラジカル重合させることで形成させた非晶質で熱可塑的に加工可能な伸び増進剤(前記伸び増進剤と相溶しない溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成繊維を製造する時に用いるに適する)を用いて本目的を達成し、前記伸び増進剤は、これに熱暴露を290℃のアルゴン下で30分間受けさせた後に、ガスクロマトグラフィーヘッドスペース方法を用いて検出可能な分解生成物の総含有量が6質量%以下であるように抗酸化物質の添加による熱安定化を受けていることを特徴とする。
【0026】
前記ガスクロマトグラフィーヘッドスペース方法は、本分野の技術者に良く知られているであろう。ガスクロマトグラフィーヘッドスペース分析方法は、液体および固体の中に入っている揮発性成分を測定する方法[とりわけ熱可塑性プラスチックに入っている単量体;サンプルびんを、前以て290℃に加熱して温度自動調節した金属製ブロックの中に導入した時間から焼き戻し時間を測定し;ヘッドスペースが22mlのサンプルびんに入れるサンプル量を約30mgにする]である。熱暴露過程中に生じた検出可能な分解生成物は、主に解重合で逆生成した単量体、例えばメタアクリル酸メチルまたはスチレンなどである。単量体以外の分解生成物の分率は、一般に無視出来るほどである。
【0027】
メタアクリル酸メチルおよび/またはスチレンを高い分率で含有、例えばメタアクリル酸メチルおよび/またはスチレンを少なくとも50質量%または少なくとも60質量%、特に少なくとも70質量%含有する伸び増進剤の場合、実際、熱暴露を290℃のアルゴン下で30分間受けさせた後に、前記単量体の濃度を測定することで測定し、および、それを熱安定性の尺度として報告することで充分である。このような場合、前記単量体の濃度もまた6質量%以下、4質量%以下、3質量%以下または2質量%以下であるべきである。このような場合には、他の分解生成物は無視可能である。
【0028】
前記試験方法、即ち当該伸び増進剤に熱暴露を290℃のアルゴン下で30分間受けさせる方法は、上述した実際の条件下で起こり得るような熱暴露を模擬し、かつ熱安定化を受けた適切な伸び増進剤を選択するに適する。従って、熱安定化を受けた重合体または共重合体は、上述した条件を満足させる。熱安定化を受けていないと、単量体の含有量が一般に前記上限よりもずっと高くなり、例えば約10質量%以上になるであろう。
【0029】
本伸び増進剤に受けさせる適切な熱安定化は、例えば抗酸化物質を添加し、および/または、共重合したアクリル酸C‐からC12−アルキル、好適にはアクリル酸C−からC−アルキルを存在させ、および/または、重合をアルキルが直鎖もしくは分枝C−C18炭化水素基に相当する3−メルカプトプロピオン酸アルキルである分子量調節剤の存在下で実施する結果として達成可能である。本発明の目的で、重合体または共重合体が、例えば、前記測定手段の中の1つを含有するか、または前記手段で製造された場合にはそれは、熱安定化を受けていることで、それは、その請求する試験条件を満足させるものである。
【0030】
本伸び増進剤に抗酸化物質を0.05から5質量%の量で含有させてもよい。
【0031】
そのような抗酸化物質は、立体障害フェノールおよび/または二価チオ化合物および/または三価リン化合物および/または立体障害ピペリジン誘導体の種類から選択可能である。好適な抗酸化物質は3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルである。
【0032】
そのような抗酸化物質は、下記の化合物から選択可能である:
− 2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
− 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル(=Irganox 1076)
− テトラキス(メチレン 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン
− チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
− イソシアヌル酸1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)
− 1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
− 2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
およびこれらの混合物。
【0033】
本重合体に安定化を更に良好に受けさせることができるように、立体障害フェノールに加えて、さらなる抗酸化剤もしくは安定剤を添加することも可能である。種々の安定剤が商業的に入手可能であり、有機ホスファイト、立体障害ピペリジン誘導体(HALS=ヒンダードアミン系光安定剤)、チオエーテル、脂肪族硫黄化合物およびこれらの混合物から成る群に属する。
【0034】
適切な有機ホスファイトは脂肪族、芳香族または脂肪−芳香族ホスファイトおよびチオホスファイトのいずれか、例えば下記などであり得る:
− ビス(2,4−ジ−t−ブチル)ペンタエリスリトールジホスファイト
− テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト
− ジステアリルペンタエリスリトールジホスホナイト
− トリスノニルフェニルホスファイト
− トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
− ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト
− テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト
およびこれらの混合物。
【0035】
ヒンダードピペリジン誘導体は例えば下記であり得る:
− ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−5−トリアジン−2,4−ジイル]−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−イミノ]ヘキサメチレン−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]
− 2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
− セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)
− セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)
− こはく酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールから作られた重合体
およびこれらの混合物。
【0036】
適切なチオエステルは例えば下記であり得る:
− チオジプロピオン酸ジラウリル
− チオジプロピオン酸ジステアリル
− チオジプロピオン酸ジミリスチル
− チオジプロピオン酸ジトリデシル
− ペンタエリスリトールテトラキス−(3−ドデシルチオ)プロピオネート)
およびこれらの混合物。
【0037】
前記抗酸化物質を有利にはこれが重合を邪魔しないように重合前または重合中の単量体混合物に添加してもよい(例えばEP−A 254 348を参照)。これは、本熱安定化を受けた伸び増進剤の製造方法を簡潔にすると言った利点を有する。
【0038】
本重合体を前記抗酸化剤の存在下で製造すると、本重合体を後で溶融工程で更に加工する前でさえ前記抗酸化剤が本重合体全体に均一に分布することが確保されることで、本重合体がさらなる加工および最終コンパウンド化の過程で熱による損傷を受けることが実質的に防止される。
【0039】
抗酸化剤を重合中に添加するさらなる利点は、均一に熱安定化を受けた重合体を追加的コンパウンド化段階無しに製造すると費用が顕著に低くなることで見られる。
【0040】
本伸び増進剤に受けさせる適切な熱安定化は、例えばアクリル酸C−からC12−アルキルを熱安定化用の共重合用単量体として本伸び増進剤の総質量を基準にして1.5から15質量%の量で存在させることなどで達成可能である。特に、アクリル酸n−ブチルを熱安定化用の共重合用単量体として存在させるのが好適である。
伸び増進剤
本伸び増進剤の重合は一般式I
【0041】
【化1】

[式中、RおよびRは、同一もしくは異なり、各々独立して、任意の原子C、H、O、S、Pおよびハロゲン原子で構成されている置換基であり、RとRの分子量の合計は少なくとも40で多くて400ダルトンである]
で表される単量体を用いて実施可能である。
【0042】
本伸び増進剤は熱安定化を受けさせたポリメタアクリル酸メチルであってもよい。
【0043】
本伸び増進剤は、下記の単量体単位:
A=アクリル酸、メタアクリル酸またはCH=CR−COOR'[ここで、Rは水素原子またはCH基であり、およびR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]、
B=スチレンまたはC1−3−アルキル置換スチレン、
X=A以外のアクリル酸C−からC12−アルキル、好適にはアクリル酸C−からC−アルキル、
から形成させた共重合体に熱安定化を受けさせたものであってもよく、ここでは、前記共重合体を60から98質量%のAと0から40質量%のBと0から15質量%のX(AとBとXの合計=100質量%)で構成させる。
【0044】
本伸び増進剤はメタアクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルから形成させた共重合体に熱安定化を受けさせたものであってもよい。
【0045】
本伸び増進剤はメタアクリル酸メチルとスチレンおよびアクリル酸n−ブチルから形成させた共重合体に熱安定化を受けさせたものであってもよい。
【0046】
本伸び増進剤は、下記のEとFとGとHを一緒にした合計が100質量%の重合性単量体に相当するように下記の単量体単位の中の少なくとも3種類:
E=アクリル酸、メタアクリル酸および一般式CH=CR−COOR'[ここで、Rは水素原子またはCH基であり、およびR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]で表される化合物から成る群から選択した単量体を30から99質量%と、場合により
F=スチレンおよびC1−3−アルキル置換スチレンから成る群から選択した単量体を0から50質量%と、場合により
G=式II、IIIおよびIV
【0047】
【化2】

[式中、R、RおよびRは、各々、水素原子またはC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]で表される化合物から成る化合物群から選択した単量体を0から50質量%と、場合により
H=Eおよび/またはFおよび/またはGと一緒に共重合し得るα−メチルスチレン、酢酸ビニル、E以外のアクリル酸エステル、E以外のメタアクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテルおよびジエンから成る群の1種以上のエチレン系不飽和単量体を0から50質量%、
からなる共重合体に熱安定化を受けさせたものであってもよい。
【0048】
本伸び増進剤を好適にはEとFとGとHを一緒に加算した合計が再び100質量%になるように60から94質量%のEと0から20質量%のFと6から30質量%のGと0から20質量%のHで構成させてもよい。
【0049】
成分Hは任意の成分である。本発明に従って達成する利点は群EからGに属する成分を含有させた共重合体を用いることで既に得ることができるが、本発明に従って達成する利点は、また、群Hに属するさらなる単量体を本発明に従って用いる共重合体の構成に関与させた時にも得られる。
【0050】
成分Hを好適には、それが本発明に従って用いる共重合体の特性に悪影響を与えないように選択する。
【0051】
とりわけ、本共重合体の特性に修飾を所望方法で受けさせる、例えば溶融温度に加熱された時の流動特性が向上または改善するような修飾、または本共重合体にいくらか残存する色を薄くする修飾、または、本共重合体に特定度合の架橋が導入されるように多官能単量体を用いることによる修飾を受けさせる目的で成分Hを用いてもよい。
【0052】
そのような理由と同様に、また、1番目の理由としてMAおよびMMA(これらは自身では共重合しないが、3番目の成分、例えばスチレンなどを添加すると容易に共重合するであろう)の場合のように成分EからGのいずれかの共重合が増補されるか、または、起こり得るようにHを選択することも可能である。
【0053】
その目的で用いるに有用な単量体には、ビニルエステル、アクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルなど、メタアクリル酸メチル以外のメタアクリル酸エステル、例えばメタアクリル酸ブチルおよびメタアクリル酸エチルヘキシルなど、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレンおよび種々のハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテル、ジエン、例えば1,3−ブタジエンおよびジビニルベンゼンが含まれる。共重合体の色を薄くすることは、特に好適には、電子が豊富な単量体の使用、例えばビニルエーテル、酢酸ビニル、スチレンまたはα−メチルスチレンなどを使用することで達成可能である。
【0054】
成分Hの化合物の中で特に好適な化合物は芳香族ビニル単量体、例えばスチレンまたはα−メチルスチレンなどである。
【0055】
本伸び増進剤は、メタアクリル酸メチルとスチレンおよびN−シクロヘキシルマレイミドから形成させた三元重合体に熱安定化を受けさせたものであってもよい。
【0056】
本伸び増進剤は、下記のEとFとGとHとXを一緒にした合計が100質量%の重合性単量体に相当するように下記の単量体単位の中の少なくとも4種類:
E=アクリル酸、メタアクリル酸および一般式CH=CR−COOR'[ここで、Rは水素原子またはCH基であり、そしてR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]で表される化合物から成る群から選択した単量体を30から99質量%と、場合により
F=スチレンおよびC1−3−アルキル置換スチレンから成る群から選択した単量体を0から50質量%と、
G=式II、IIIおよびIV
【0057】
【化3】

[式中、R、RおよびRは、各々、水素原子またはC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]で表される化合物から成る化合物群から選択した単量体を0から50質量%と、場合により
H=Eおよび/またはFおよび/またはGと一緒に共重合し得るα−メチルスチレン、酢酸ビニル、E以外のアクリル酸エステル、E以外のメタアクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテルおよびジエンから成る群の1種以上のエチレン系不飽和単量体を0から50質量%、
X=E以外のアクリル酸C−からC12−アルキル、好適にはアクリル酸C−からC−アルキルを1.5から15質量%、
からなる共重合体であってもよい。
【0058】
成分Hは任意の成分である。本発明に従って達成する利点は群EからGに属する成分を含有させた共重合体を用いることで既に得ることができるが、本発明に従って達成する利点は、また、群Hに属するさらなる単量体を本発明に従って用いる共重合体の構成に参与させた時にも得られる。
【0059】
成分Hを好適には、それが本発明に従って用いる共重合体の特性に悪影響を与えないように選択する。
【0060】
とりわけ、本共重合体の特性に修飾を所望手段で受けさせる、例えば溶融温度に加熱された時の流動特性が向上または改善するような修飾、または本共重合体にいくらか残存する色を薄くする修飾、または本共重合体に特定度合の架橋が導入されるように多官能単量体を用いることによる修飾を受けさせる目的で成分Hを用いてもよい。
【0061】
そのような理由と同様に、また、1番目の理由としてMAおよびMMA(これらは自身では共重合しないが、3番目の成分、例えばスチレンなどを添加すると容易に共重合するであろう)の場合のように成分EからGのいずれかの共重合が増補されるか、或は起こり得るようにHを選択することも可能である。
【0062】
その目的で用いるに有用な単量体には、ビニルエステル、アクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルなど、メタアクリル酸メチル以外のメタアクリル酸エステル、例えばメタアクリル酸ブチルおよびメタアクリル酸エチルヘキシルなど、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレンおよび種々のハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテル、ジエン、例えば1,3−ブタジエンなどおよびジビニルベンゼンが含まれる。共重合体の色を薄くすることは、特に好適には、電子が豊富な単量体の使用、例えばビニルエーテル、酢酸ビニル、スチレンまたはα−メチルスチレンなどを使用することで達成可能である。
【0063】
成分Hの化合物の中で、特に好適な化合物は、芳香族ビニル単量体、例えばスチレンまたはα−メチルスチレンなどである。
【0064】
本伸び増進剤は、特に、メタアクリル酸メチルとN−シクロヘキシルマレイミドおよびアクリル酸n−ブチルから形成させた共重合体であってもよい。
【0065】
本伸び増進剤は、更に、メタアクリル酸メチル、スチレン、N−シクロヘキシルマレイミドおよびアクリル酸n−ブチルから形成させた共重合体であってもよい。
【0066】
さらなる目的
本発明の目的の1つは、繊維形成マトリックス重合体が、基になった混合物から合成繊維を製造しようとする時に合成繊維をより低い繊維破壊率で簡単な方法で製造することを可能にする方法を提供することにあると考えている。より詳細には、そのような方法は、ポリエステルが基になっていて破壊時伸び値が90%−165%の範囲でフィラメントパラメーターに関する均一性が高くおよびまた結晶化度が低いPOYを製造することを可能にすべきである。
【0067】
本発明のさらなる目的は、繊維成形マトリックス重合体が基になった混合物から合成繊維を製造しようとする時に、ペレット状ではない伸び増進剤を用いることができることで現存する方法に比べて経済性が実質的により高い方法を提供することにある。
【0068】
本発明のさらなる目的は、現存プラントを包含する大規模な産業的規模で普遍的に、経済的に実施可能な合成繊維紡糸方法を提供することにあった。その上、速度を3800m/分以上にした時でも良好なパッケージ構築がもたらされるように、フィーラーロールドライブを巻き取り機の巻き取り用マンドレルドライブに比べて上昇させる度合が、0.3%未満の時でも、またフィーラーロールを個別に駆動させることなく巻き取り機を用いた時でも繊維を巻き取ることができるべきである。それによって、フィーラーロールおよび巻き取り用マンドレルの間の振動数の差が大きい時に起こり得るような繊維およびフィーラーロールの間の滑りが起こる可能性が回避され、かつさらなる加工で繊維を染色している時の高い染色均一性が確保される。より詳細には、本発明の方法を用いると、取り出し速度を非常に高くしても、好適には≧2500m/分にしても、POYを製造することが可能になる。
【0069】
本発明によると、合成繊維のさらなる加工が簡潔になる。より詳細には、本発明に従って得たPOYに延伸または延伸−微細構造化工程でさらなる加工を、好適には高い工程速度で破壊末端部の数が少ないように受けさせることができる。
【0070】
従って、本発明は、繊維形成マトリックス重合体が基になった溶融状態の混合物から合成繊維を製造する方法を提供し、この方法は、前記繊維形成マトリックス重合体を熱安定化を受けさせておいた少なくとも1種の伸び増進剤(添加重合体)[これは前記繊維形成マトリックス重合体と相溶しない](前記繊維形成マトリックス重合体と相溶しない添加重合体の総質量を基準にして、例えば0.05から5質量%の量)と混合する段階を包含する。そのような方法を用いると繊維形成マトリックス重合体が、基になった混合物から合成繊維を簡潔な方法で、特に破壊率が低くなるように製造することが可能になるが、そのような方法は予測不可能な方法である。
【0071】
好適には、DE 101 15 203 A1に従い、合成に由来する残存単量体の含有量が低いことを確保する目的で、複数回の開始で本伸び増進剤を形成させる。これは、種々の開始剤を用いて同時に開始させるか、または、開始を逐次的に複数回行うことで実施可能である。
【0072】
プラスチックペレット
本発明は、本伸び増進剤および溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体を含んで成るか、または、本質的にそれらで構成させたプラスチックペレットを提供する。
【0073】
前記繊維形成マトリックス重合体は、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミドまたはポリプロピレンであってもよい。そのような溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであり、この場合、それは選択的に共重合体を15モル%以下および/または多官能分枝成分を0.5質量%以下の量で含有していてもよい。
【0074】
紡糸用押出し加工機の中で溶融を起こさせる前に、本伸び増進剤の熱分解による単量体の濃度を熱による条件付きで低下させておいたペレットが好適である。この目的で、本伸び増進剤のガラス転移温度より高い温度、好適には少なくとも10℃高い温度を用いることで、前記ペレットに入っている単量体の濃度を本伸び増進剤の質量分率を基準にして0.3質量%未満にまで低くしておく。この目的で、好適には、前記ペレットに熱によるコンディショニングを真空、乾燥空気または不活性ガス雰囲気下で、少なくとも4時間受けさせる。これは当該マトリックス材料、特にポリエステルを乾燥させている過程で、無理なく実施可能である。その上、そのような条件を当該マトリックス重合体を固体状態で縮合させている過程で、実施することも可能であり、そのような固体状態の縮合の反応速度は、本伸び増進剤の存在によって有意には悪化しないであろう。そのような工程変法は、高い温度を伴い、その結果として、特に、本発明の熱に安定な伸び増進剤を用いる必要がある。前記ペレットに入れる本伸び増進剤の濃度を紡糸に要する濃度より高くしてもよく、例えば5−30質量%にしてもよい。それによって、通常のマスターバッチ計量手段を用いて、本添加剤を添加することが可能になる。
【0075】
本添加剤を、より好適には、追加的材料、例えば顔料、蛍光増白剤または難燃剤などを含んで成るマスターバッチをコンパウンドにしている過程で添加してもよい。
【0076】
プラスチックペレットの製造方法
本発明ではプラスチックペレットの製造方法を提供し、この方法では、ペレット化に先立って、溶融させた本伸び増進剤を当該マトリックス重合体の溶融物の中に混合する前、または、後にそれを好適には脱気ゾーンに通して移送して、その中で、その溶融物に脱気を好適には真空をかけて受けさせておく。
【0077】
そのようにしてプラスチックペレットを製造することができ、本プラスチックペレットが、本伸び増進剤の熱分解に由来する単量体を含有する量は本伸び増進剤の質量分率を基準にして0.8質量%未満、好適には0.6質量%未満である。
【0078】
好適には、単軸押出し加工機、特に真空脱気ゾーンが少なくとも1ゾーン備わっている単軸押出し加工機、または、より好適には、二軸押出し加工機、特に真空脱気ゾーンが少なくとも1ゾーン備わっている二軸押出し加工機を用いて、本伸び増進剤を溶融させることができる。本伸び増進剤を当該押出し加工機に質量制御で仕込むか、または、本伸び増進剤を当該押出し加工機単独に仕込む時には、溶融物計量用ポンプを用いて容量分析的に仕込むことで本添加剤の計量を行う。二軸押出し加工機および高い処理量を用いる場合には、当該押出し加工機を供給不足下で運転するのが好適である。ペレット状にしていない伸び増進剤を溶融させる目的で、単軸押出し加工機を用いる時には、取り込み領域に溝を有する押出し加工機シリンダーが好適である。当該マトリックス材料への混合は押出し加工機自身および/または下流の固定式混合装置を用いて実施可能である。固定式混合装置のみを用いて穏やかな混合を行うのが特に好適である。混合素子の数を好適には溶融物を混合領域の中に通す時に結果としてもたらされる圧力降下が80バール未満、より好適には5から50バールであるように選択する。
【0079】
伸び増進剤の使用
本発明の伸び増進剤は、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミドまたはポリプロピレンである溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成繊維を製造する時の添加剤として使用可能である。
【0080】
前記溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、または、ポリブチレンテレフタレートであってもよく、この場合、前記ポリエステルは選択的に共重合体を15モル%以下および/または多官能分枝成分を0.5質量%以下の量で含有していてもよい。
【0081】
合成繊維の製造方法
本発明は、溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体および伸び増進剤から形成させた重合体混合物から合成繊維を溶融紡糸工程で製造する方法を提供し、この方法は、本発明による少なくとも1種の伸び増進剤を、前記繊維形成マトリックス重合体に本伸び増進剤と繊維形成マトリックス重合体の総質量を基準にして0.05から5質量%の量で添加することを特徴とする。
【0082】
本添加重合体と前記マトリックス重合体の添加および混合は従来方法で実施可能である。それは、例えばWO 99/07927またはDE 199 35 145またはDE 100 22 889(これらの開示は、各々明らかに本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0083】
本新規な添加重合体は向上した熱安定性を有することから、有利には、本添加重合体の熱分解の結果として形成した単量体の過剰な逆生成を伴うことなく、下記の添加方法を大規模な産業的規模で用いることが可能になる。
【0084】
当該マトリックス重合体および本伸び増進剤を原料としてペレットの形態で、合成繊維製造生産工程に導入することができる。
【0085】
同様に、溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルへの本伸び増進剤の添加を前記ポリエステル製造中に、重縮合プラントの最終段階で実施することも可能である。
【0086】
溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルへの本伸び増進剤の添加を重縮合プラントの最終段階で、ポリエステル溶融物を取り出した後に、実施することも可能であり、そして、それを直接紡糸工程に移送するが、この場合、好適には、本伸び増進剤をサイドストリーム押出し加工機で溶融させ、そして、その溶融させた伸び増進剤を好適には、脱気ゾーンの中に通して移送し、そして、その中で前記溶融物に真空をかけることで脱気を受けさせた後、その脱気を受けさせた溶融物を、大歯車定量ポンプで計量して、前記ポリエステル溶融物の流れの中に入り込ませ、そして固定式混合領域で、それと一緒に混合する。
【0087】
好適には、単軸押出し加工機、特に真空脱気ゾーンが、少なくとも1ゾーン備わっている単軸押出し加工機、または、より好適には二軸押出し加工機、特に真空脱気ゾーンが少なくとも1ゾーン備わっている二軸押出し加工機を用いて、本伸び増進剤を溶融させることができる。本伸び増進剤を当該押出し加工機に質量制御で仕込むか、または、本伸び増進剤を溶融物計量用ポンプを用いて容量分析的に仕込むことで、本添加剤の計量を行う。二軸押出し加工機および高い処理量を用いる場合には、当該押出し加工機を供給不足下で運転するのが好適である。ペレット状にしていない伸び増進剤を溶融させる目的で、単軸押出し加工機を用いる時には、取り込み領域に溝を有する押出し加工機シリンダーが好適である。当該マトリックス材料への混合を、下流の固定式混合装置を用いて実施する。混合素子の数を好適には、溶融物を混合領域の中に通す時に、結果としてもたらされる圧力降下が80バール未満、より好適には、5から50バールであるように選択する。
【0088】
紡糸取り出し速度を少なくとも2500m/分にするのが好適である。
【0089】
前記繊維形成マトリックス重合体は、特に熱可塑的に加工可能なポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートであってもよく、この場合、前記ポリエステルは選択的に共重合体を15モル%以下および/または多官能分枝成分を0.5質量%以下の量で含有していてもよい。
【0090】
合成繊維
本発明に従い、記述する入手可能方法を用いて合成繊維を得ることができる。
【0091】
合成繊維に、ポリエステルおよび本伸び増進剤の重合体混合物を含める、または、含有させるか或は、それを本質的にポリエステルおよび本伸び増進剤の重合体混合物で構成させるが、当該繊維が含有する本伸び増進剤の熱分解に由来する単量体の含有量は40ppm未満である。
【0092】
本合成繊維を延伸または延伸−微細構造化工程で使用または更に加工してもよい。
【0093】
本合成繊維は、ステープル繊維の製造で使用または更に加工可能である。
【0094】
本合成繊維は、不織物の製造で使用または更に加工可能である。
【0095】
本合成繊維は、産業用糸の製造で使用または更に加工可能である。
【0096】
それと同時に、本発明の方法は数多くのさらなる利点を有する。それらには下記が含まれる:
・ 本発明の方法は、大規模な産業的規模で経済的に簡潔な方法で実施可能である。より詳細には、本方法を用いると、紡糸および巻き取りを高い取り出し速度で行うことが可能になる。
・ 本方法で得ることができる合成繊維は、高い均一性を示すことから、良好なパッケージ構築の達成が簡単なことで、実質的に欠陥の無い均一な染色が保証され、および合成繊維のさらなる加工が保証される。
・ 本発明の方法は、特に、ポリエステルが基になっていて、90%−165%の範囲の破壊時伸び値を示し、フィラメントパラメーターに関して高い均一性を示し、および、また結晶化度も低いPOYを製造するに有用である。
・ 本方法で得ることができる合成繊維は、大規模な産業的規模で経済的に簡潔な方法で、更に加工可能である。例えば、本発明のPOYに延伸または延伸−微細構造化を、高速で破壊末端の数が少ないように受けさせることができる。
・ 紡糸時に放出される単量体の煙の量が少ない。
【0097】
本発明の方法は、繊維形成マトリックス重合体が基になった溶融状態の混合物から合成繊維を製造することに関する。
【0098】
そのような紡糸は、直接的紡糸工程(この工程では、本伸び増進剤を溶融物の形態で、当該マトリックス重合体の溶融物の中に計量して入れる)ばかりでなく、また押出し加工紡糸工程(この工程では、本伸び増進剤を固体として当該マトリックス重合体の中に計量して入れた後、その中で溶融させる)でも実施可能である。この挙げた工程に関するさらなる詳細を従来技術、例えばEP 0 047 464 B、WO 99/07 927、DE 100 49 617およびDE 100 22 889(これらの開示は各々明らかに、本明細書に組み入れられる)から得ることができる。
【0099】
本発明の文脈において、用語「合成繊維」は、合成重合体の熱可塑的加工可能混合物を紡糸することで得ることができる、あらゆる種類の繊維を包含する。それらには、ステープル繊維、テキスタイルフィラメント、例えばフラットヤーン、POY、FOYおよび産業用フィラメントなどが含まれる。
【0100】
合成繊維に関するさらなる詳細、および、また記述したグループ、特に材料特性および通例の製造条件に関するさらなる詳細を従来技術、例えば、Fourne「Synthetische Fasern:Herstellung,Maschinen und Apparate,Eigenschaften;Handbuch fuer Anlagenplanung,Maschinenkonstruktion und Betrieb」、Munich、Vienna;Hanser Verlag 1995、および、またDE 199 37 727(ステープル繊維)、DE 199 37 728およびDE 199 37 729(産業用糸)およびWO 99/07 927(POY)から得ることができる。従って、前記文献の開示内容は引用することによって、明らかに本明細書に組み入れられる。
【0101】
本発明の特に好適な態様では、本発明の方法をステープル繊維、フラットヤーン、POY、FOY、または、産業用フィラメントの製造で用いる。本発明の方法は、POYの製造に非常に有用であることを確認した。
【0102】
本発明に有用な繊維形成マトリックス重合体には、熱可塑的に加工可能な重合体、好適にはポリアミド、例えばナイロン−6およびナイロン−6,6など、およびポリエステルが含まれる。また、種々の重合体の混合物または混合物も考えられる。本発明では、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート(PTMT)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)の使用が好適である。本発明の特に好適な態様におけるマトリックス重合体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、特にポリエチレンテレフタレートである。
【0103】
本発明に従い、ホモ重合体が好適である。しかしながら、また、共重合体、好適には通常の共重合用単量体、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、イソフタル酸および/またはアジピン酸などを、約15モル%以下の量で含有するポリエステル共重合体を用いることも可能である。
【0104】
本発明の重合体に、さらなる構成成分として、熱可塑性プラスチック成形用組成物に、通常で重合体の特性の向上に貢献する添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤の例には、帯電防止剤、抗酸化剤、難燃剤、滑剤、染料、光安定剤、重合用触媒、重合補助剤、接着促進剤、艶消し剤および/または有機ホスファイトが含まれる。そのような添加剤の使用量は通常量、好適には、当該重合体混合物100質量%を基準にして、10質量%以下、好適には<1質量%である。
【0105】
本発明の方法で用いるポリエステルはまた分枝成分、即ち例えば多官能酸、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸など、または三価から六価のアルコール、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセロールまたは相当するヒドロキシ酸なども少量(0.5質量%以下)含有していてもよい。
【0106】
本発明では、前記マトリックス重合体を少なくとも0.05質量%の量の添加重合体と混合するが、前記添加重合体は非晶質であり、かつ前記マトリックス重合体に実質的に不溶である。前記2種類の重合体は、本質的に互いに相溶することはなく、顕微鏡下で区別可能な2相を形成する。本添加重合体は、更に好適には90℃以上、特に100℃以上のガラス転移温度(DSCで10℃/分の加熱速度を用いて測定)を示し、および熱可塑的に加工可能である。本添加重合体に持たせる溶融粘度を、時間ゼロに外挿した時のそれの溶融粘度[当該マトリックス重合体の溶融温度+34.0℃に相当する温度(ポリエチレンテレフタレートの場合には290℃)において2.4Hzの振動率で測定]と当該マトリックス重合体が示す溶融粘度(同じ条件下で測定した時)の比率が1:1から10:1の範囲になるように選択する。言い換えれば、本添加重合体が示す溶融粘度が当該マトリックス重合体が示す粘度と少なくとも同じか或は好適にはそれよりも高くなるようにする。
【0107】
上述した条件下で、本共重合体が示す溶融粘度と当該マトリックス重合体が示す粘度の比率が、好適には1.4:1から8:1の範囲になるようにする。前記溶融粘度の比率が1.7:1から6.5:1の範囲になるようにするのが特に好適である。そのような条件にすると、紡糸口金ダイスから押出された後の本添加重合体の平均粒径が140−350nmになる。
【0108】
繊維形成中に、当該マトリックス材料の固化が起こる前に、本添加剤のフィブリル構造の固化が起こり得るようにする目的で、本添加重合体が示す流動活性化エネルギーの方が、当該マトリックス重合体のそれよりも高く、ポリエステルの場合には、80kJ/モルより高くなるようにする。ポリエステル繊維を製造しようとする場合には、さらなる加工で用いられる温度を考慮して、70から104℃、好適には105℃未満のASTM D−648熱変形温度を示すような本添加重合体を用いるのが特に好適である。
【0109】
当該マトリックス重合体に添加すべき本添加重合体の量は、当該重合体混合物の総質量を基準にして0.05質量%から5質量%の範囲である。添加量を1.5%未満にすることで充分な用途が数多くの存在し、例えばPOYの製造では添加量を1.5%未満にすることで充分であり、取り出し速度が3500以上から6000m/分、または、それ以上に及ぶ場合でさえ、しばしば、1.0%未満で充分であり、これはかなりのコスト利点になる。
【0110】
本添加重合体と当該マトリックス重合体の混合を実施する従来方法、例えばWO 99/07 927またはDE 199 35 145またはDE 100 22 889(これらの各々の開示内容は、引用することによって明らかに本明細書に組み入れられる)に記述されている方法である。
【0111】
そのような重合体混合物の紡糸を220から320℃の範囲の温度(当該マトリックス重合体に依存)で実施する。
【0112】
伸び増進剤の製造
本発明に従って用いる本伸び増進剤を製造する方法は公知である。これらの製造は塊状、溶液、懸濁または乳化重合で実施可能である。塊状重合に関する役立つ情報がHouben−Weyl、E20巻、パート2(1987)、1145頁以降に見られる。溶液重合に関する情報も同書の1156頁以降に見られる。懸濁重合技術も同書の1149頁以降に記述されている一方、乳化重合も、同書の1150頁以降に記述および説明されている。
【0113】
本発明の目的で特にビード重合体が好適であり、それの粒径を特に好適な範囲にする。本発明に従って用いる本添加重合体、例えば、繊維用重合体の溶融物に混合する本添加重合体では、それの形態を特に好適には平均直径が0.1から1.0mmの粒子形態にする。しかしながら、また、より大きい、または、より小さいビードを用いることも可能である。
【0114】
織物用途用のポリエチレンテレフタレートの重合体混合物、例えば、約0.55から0.75dl/gの限定粘度値を示すPOYなどの場合、好適には、粘度値が70から130cm/g範囲内の伸び増進剤を用いて重合体混合物を形成させる。
【0115】
伸び増進剤を複数回の開始で得るのが好適である。これは残存する単量体の含有量が、比較的低い伸び増進剤が得られると言った利点を有する。付加重合が不完全なことで存在する残存単量体は、本伸び増進剤が、熱にさらされることが原因で起こる分解によって、追加的に生じる単量体と同様に有害であり得る。残存単量体の含有量が低いことは、本伸び増進剤に含まれる単量体の総濃度が低いことに貢献する。
【0116】
本明細書で用いる用語として「複数回の開始」は、フリーラジカル重合の補足的開始を1回または数回行うこと、即ち、反応時間の後期に開始剤を新たに1回、または、数回添加することばかりでなく、また、フリーラジカル重合を半減期が少しずつ変わる、少なくとも2種類の開始剤を含有する混合物の存在下で、実施することも包含するが、後者の任意選択が特に好適である。本明細書で用いるような「半減期が少しずつ変わる」は、少なくとも2種類の開始剤の各々を考慮した時に、それらが個別に特定の温度で異なる半減期を示すか、または同じ半減期を示す時の温度範囲が異なることを示す。各々が示す半減期が、1時間の時の温度範囲が少なくとも10℃離れている開始剤の使用が好適である。そのような個々の温度範囲から選択した開始剤は、各範囲毎に単一の化合物であってもよいが、また、各場合とも適切な温度範囲の適切な半減期を有する、2種以上の開始剤を用いることも可能である。
【0117】
そのような重合は、例えば資料である米国特許第4 588 798号、米国特許第4 605 717号、EP 489 318、DE 199 17 987およびそれらに引用されている文献などに記述されている。その引用した資料の開示内容は、参照することによって、明らかに本明細書に組み入れられる。
【0118】
本発明の目的で、半減期Tが、1時間の時が70から85℃の範囲内の開始剤Iおよび半減期Tが1時間の時が85から100℃の範囲内のさらなる開始剤Iを含有させた開始剤混合物の使用が特に有利であることを確認した。適宜、分解温度Tnが、好適にはTおよびTの範囲であるさらなる開始剤Inを用いることも可能である。
【0119】
そのような開始剤混合物の使用量は、比較的幅広い範囲内で多様であり得、その使用する開始剤の量を用いて、重合時間および、また時間温度を調節することができる。本発明に従って用いる量は、単量体100質量部当たりの開始剤の質量部であると指定する。開始剤混合物を単量体100質量部当たり約0.05から1.0質量部の総量で用い、有利には開始剤混合物を0.05から0.5質量部、特に開始剤混合物を単量体100質量部当たり0.15から0.4質量部用いるのが有利である。
【0120】
そのような開始剤混合物に含める個々の開始剤間の質量比も同様に幅広い範囲内で多様であり得る。個々の開始剤間の質量比を、好適には1:1から1:10の範囲内、より好適には1:1から1:4の範囲内にする。適切な量および混合比は簡単な予備試験で決定可能である。
【0121】
本発明で用いるに有用な開始剤には、フリーラジカルで開始させる重合でフリーラジカルを発生させる目的で用いられる、通常の開始剤が含まれる。それには有機過酸化物、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、例えばジラウロイルパーオキサイドなど、パーオキシジカーボネート、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネートなど、パーエステル、例えばパーオキシ−2−エチルヘキサン酸t−ブチルなどのような化合物が含まれる。また、フリーラジカルを発生し得る他の種類の化合物も本発明の目的で用いるに適する。それには特にアゾ化合物、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などが含まれる。
【0122】
特に有用な開始剤混合物は、下記の開始剤から選択した成分を含んで成る混合物である:
半減期T(1時間)=71℃のパーオキシピバル酸t−アミル、
半減期T(1時間)=71℃の2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、
半減期T(1時間)=72℃のジ−(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、
半減期T(1時間)=74℃のパーオキシピバル酸t−ブチル、
半減期T(1時間)=74℃の二塩酸2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、
半減期T(1時間)=78℃のジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、
半減期T(1時間)=79℃のジオクタノイルパーオキサイド、
半減期T(1時間)=80℃のジラウロイルパーオキサイド、
半減期T(1時間)=80℃のジデカノイルパーオキサイド、
半減期T(1時間)=80の2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチラミジン)、
半減期T(1時間)=81℃のジ−(2−メチルベンゾイル)パーオキサイド、
半減期T(1時間)=82℃の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
半減期T(1時間)=83℃の2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、
半減期T(1時間)=84℃の2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、
半減期T(1時間)=84℃の2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、
半減期T(1時間)=86℃の4,4’−アゾビス(シアノペンタン酸)、
半減期T(1時間)=89℃のジ−(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、
半減期T(1時間)=91℃のジベンゾイルパーオキサイド、
半減期T(1時間)=91℃のパーオキシ−2−エチルヘキサン酸t−アミル、
半減期T(1時間)=92℃のパーオキシ−2−エチルヘキサン酸t−ブチル、
半減期T(1時間)=96℃のパーオキシイソ酪酸t−ブチル。
【0123】
本発明の目的で過酸化開始剤が最も好適である。
【0124】
本伸び増進剤に熱安定化を受けさせる1つの方法は、その重合を3−メルカプトプロピオン酸アルキル(ここで、アルキルはメチル、エチル、n−ブチル、2−エチルヘキシルおよびn−オクタデシルを表す)である分子量調節剤を通常量、例えば、重合バッチを基準にして0.2から2質量%存在させて実施する方法である。それの驚くべき効果は、まだ理解していない。
【0125】
そのような重合は、実質的または主として、等温条件下で実施可能である。本発明の特に好適な態様では、重合を少なくとも2段階で実施する。1番目の段階は、重合を比較的低温、好適には60から85℃の範囲で実施することを包含する。2番目の段階で、重合をより高い温度、好適には85から120℃の範囲の温度で継続する。
【0126】
本伸び増進剤の残存単量体含有量は、好適には0.62質量%未満、有利には0.47質量%未満、好適には0.42質量%未満であり、これらは各々本添加重合体の総質量を基準にしたパーセントである。本発明の特に好適な態様では、本伸び増進剤の残存単量体含有量を、0.37質量%未満、好適には0.30質量%未満、有利には0.25質量%未満、特に0.20質量%未満にし、これらは各々本伸び増進剤の総質量を基準にしたパーセントである。
【0127】
ここで、本伸び増進剤の残存単量体含有量は、本発明に従い、重合を行ない、および重合体を単離した後に、重合体に残存する単量体の量を指す。重合体をフリーラジカル重合で形成させた場合の残存単量体含有量は、この重合体の総質量を基準にして、通常は0.65質量%から1.0質量%の範囲内である。重合体の残存単量体含有量を低くする方法は、従来技術で公知である。例えば、重合体溶融物に揮発物除去、好適には紡糸直前に押出し加工機内で受けさせることで、重合体に含まれる残存単量体の含有量を低くすることができる。
【0128】
流動助剤
本発明に関連して、更に、流動助剤を本伸び増進剤に混合するのが、極めて有利である。これに関連して、流動助剤は、粉末状または粒状の、特に吸湿性の物質が、一緒に凝集することも、固まることもなくて、永久的に自由に流れることを保証する目的で、前記物質に少量混合される如何なる補助剤も指す。有用な流動助剤(これはまた不粘着剤、抗固化剤または流動化剤としても知られる)には、ケイソウ土、火成シリカ、リン酸トリカルシウム、ケイ酸カルシウム、Al、MgO、MgCO、ZnO、ステアレート、脂肪アミンの粉末が含まれ、それらは水に不溶、または、疎水性あるいは水分を吸収する(CD Roempp Chemie Lexikon−Version 1.0、Stuttgart/New York:Georg Thieme Verlag 1995を参照)。本発明に関連して、そのような流動助剤の有用性は限られていることを確認した、と言うのは、それらは紡糸工程にとって不利であるからである。1番目として、それらは紡糸装置の中にとどまって配管およびノズルまたはダイスを詰まらせることで装置の不調をもたらす可能性がある。2番目として、そのような「外来材料」は、結果としてもたらされる合成繊維の材料特性を危うくし、かつ紡糸中の繊維破壊率を高める可能性がある。
【0129】
本発明に従って、重合体および/または共重合体を流動助剤として用いるのが特に好適である。本明細書の以下に示す重合体および/または共重合体が特に有用であることを確認した。
【0130】
そのような流動助剤は、一般式(I):
【0131】
【化4】

[式中、RおよびRは、任意の原子C、H、O、S、Pおよびハロゲン原子で構成されている置換基であり、RとRの分子量の合計は少なくとも40である]
で表される単量体を重合させることで得ることができる重合体であり得る。典型的な単量体単位には、アクリル酸、メタアクリル酸およびCH=CR−COOR'[ここで、RはH原子またはCH基であり、そしてR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]およびまたスチレンまたはC1−3−アルキル置換スチレンが含まれる。
【0132】
そのような流動助剤は、下記の単量体単位:
A=アクリル酸、メタアクリル酸またはCH=CR−COOR'[ここで、RはH原子またはCH基であり、そしてR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]と、
B=スチレンまたはC1−3−アルキル置換スチレン、
を含有する共重合体であってもよく、ここでは、前記共重合体を60から98質量%のAと2から40質量%のB、好適には、83から98質量%のAおよび2から17質量%のB、より好適には、90から98質量%のAおよび2から10質量%のBで構成させる(合計=100質量%)。
【0133】
そのような流動助剤は、下記の単量体単位:
C=スチレンまたはC1−3−アルキル置換スチレンと、
D=式II、IIIまたはIV
【0134】
【化5】

[式中、R、RおよびRは、各々、H原子またはC1−15−アルキル基、C6−14−アリール基またはC5−12−シクロアルキル基である]
で表される1種以上の単量体、
を含有する共重合体であってもよく、ここでは、前記共重合体を15から95質量%のCおよび2から80質量%のD、好適には50から90質量%のCおよび10から50質量%のD、より好適には70から85質量%のCと15から30質量%のDで構成させる(CとDの合計は100質量%である)。
【0135】
そのような流動助剤は、下記の単量体単位:
E=アクリル酸、メタアクリル酸または一般式CH=CR−COOR'[ここで、RはH原子またはCH基であり、そしてR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]と、
F=スチレンまたはC1−3−アルキル置換スチレンと、
G=式II、IIIまたはIV
【0136】
【化6】

[式中、R、RおよびRは、各々、H原子またはC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]
で表される1種以上の単量体と、
H=Eおよび/またはFおよび/またはGと一緒に共重合しかつα−メチルスチレン、酢酸ビニル、E以外のアクリル酸エステル、E以外のメタアクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテルおよびジエンから成る群から選択される1種以上のエチレン系不飽和単量体、
を含有する共重合体であってもよく、ここでは、前記共重合体を30から99質量%のE、0から50質量%のF、0から50質量%のGおよび0から50質量%のH、好適には45から97質量%のE、0から30質量%のF、3から40質量%のGおよび0から30質量%のH、より好適には60から94質量%のE、0から20質量%のF、6から30質量%のGおよび0から20質量%のH構成させる(E、F、GおよびHの合計は100質量%である)。
【0137】
成分Hは任意の成分である。本発明に従って、達成する利点は群EからGに属する成分を含有する共重合体を用いることで、既に得ることができるが、本発明に従って、達成する利点は、また、群Hに属するさらなる単量体を、本発明に従って用いる共重合体の構成に関与させた時にも得られる。
【0138】
成分Hを、好適には、それが本発明に従って用いる共重合体の特性に悪影響を与えないように選択する。
【0139】
とりわけ、前記共重合体の特性に修飾を所望方法で受けさせる、例えば、溶融温度に加熱された時の流動特性が、向上または改善するような修飾、または前記共重合体にいくらか残存する色を薄くする修飾、または前記共重合体に特定度合の架橋が導入されるように多官能単量体を用いることによる修飾を受けさせる目的で成分Hを用いてもよい。
【0140】
そのような理由と同様に、また、1番目の理由としてMAおよびMMA(これらは自身では共重合しないが、3番目の成分、例えばスチレンなどを添加すると容易に共重合するであろう)の場合のように、成分EからGのいずれかの共重合が増補される、または起こり得るようにHを選択することも可能である。
【0141】
その目的で用いる有用な単量体には、ビニルエステル、アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルなど、メタアクリル酸メチル以外のメタアクリル酸エステル、例えば、メタアクリル酸ブチルおよびメタアクリル酸エチルヘキシルなど、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレンおよび種々のハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテル、ジエン、例えば、1,3−ブタジエンなどおよびジビニルベンゼンが含まれる。共重合体の色を薄くすることは、特に好適には、電子が豊富な単量体の使用、例えばビニルエーテル、酢酸ビニル、スチレンまたはα−メチルスチレンなどを使用することで達成可能である。
【0142】
成分Hの化合物の中で、特に好適な化合物は、芳香族ビニル単量体、例えばスチレンまたはα−メチルスチレンなどである。
【0143】
前記流動助剤の製造を従来方法で実施する。これらの製造は塊状、溶液、懸濁または乳化重合で実施可能である。塊状重合に関する役立つ情報が、Houben−Weyl、E20巻、パート2(1987)、1145頁以降に見られる。溶液重合に関する情報も同書の1156頁以降に見られる。懸濁重合技術も同書の1149頁以降に記述されている一方、乳化重合も同書の1150頁以降に記述および説明されている。必要ならば、前記重合体を追加的に粉砕すべきである。
【0144】
特に、好適な範囲の粒径を持たせた流動助剤が好適である。それの形態を特に好適には平均直径が0.01から100μmの粒子形態にする。しかしながら、また、粒径がより大きい、または、より小さい流動助剤を用いることも可能である。
【0145】
イミド化型の共重合体の調製はイミド単量体を用いた単量体を用いることで実施可能なばかりでなく、また相当するマレイン酸誘導体を含有する共重合体に、後で完全または好適には部分的イミド化を受けさせることでも実施可能である。そのような流動助剤を、例えば、相当する共重合体を溶融相中でアンモニアまたは第一級アルキル−またはアリールアミン、例えばアニリンなどと完全または好適にはある程度反応させることなどで得る(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、16巻[1989]、Wiley、78頁)。必要ならば、その結果として得た共重合体を追加的に粉砕すべきである。
【0146】
本発明による共重合体、および、またこれらの非イミド化出発共重合体(存在する限り)は全部商業的に入手可能である、または本分野の技術者に良く知られた方法を用いて調製可能である。
【0147】
本発明に関連して、特に有用な流動助剤は、用いる本添加重合体の化学的組成と実質的に同じ化学的組成を有する。この用いる流動助剤が、含有する繰り返し単位と本添加重合体が含有する繰り返し単位が同じ度合を有利には50質量%以上、好適には60質量%以上、より好適には70質量%以上、特に80質量%以上にする(各質量パーセントは、それぞれ使用する前記流動助剤の総質量および本添加重合体の総質量が基になっている)。これに関連して、用語「繰り返し単位」は、元々用いた単量体から生じた繰り返し単位(当該重合体に含まれる)を指す。
【0148】
使用する前記流動助剤および本伸び増進剤が有する同じ繰り返し単位の度合が90質量%以上、好適には95質量%以上、特に97質量%以上であるようにすると、特に有利な結果を得ることができる(各質量パーセントは、それぞれ使用する前記流動助剤の総質量および本添加重合体の総質量が基になっている)。本発明の非常に特に好適な態様では、使用する前記流動助剤の重合体組成および本添加重合体の重合体組成は、繰り返し単位に関して完全に同じである。
【0149】
加うるに、使用する本添加重合体が有する平均分子量と同様な平均分子量を有する流動助剤の使用が有利であり得る。好適には、流動助剤の質量平均分子量と使用する本伸び増進剤の分子量の差が、50%未満、有利には30%未満、特に20%未満であるようにする。
【0150】
本添加重合体に入れる前記流動助剤の好適な濃度範囲は、0.05から5.0質量%、好適には0.05から1.0質量%(各パーセントは添加重合体と流動助剤の総質量が基になっている)であるが、これは本添加重合体が有する表面積、従って平均直径に依存する。平均粒径が0.7mmのビード重合体の場合には、前記流動助剤の濃度を好適には0.05から0.3質量%の範囲にする。流動促進効果に要する前記流動助剤の濃度は前記ビードの直径が小さくなるにつれて高くなる。前記流動助剤の濃度があまりにも低いと流動促進効果が充分でなくなる一方、流動助剤の濃度を過度に高くしても流動性のさらなる向上は得られず、その代わりに、微細な流動助剤粉末が過剰なことが原因で起こる工業的に望ましくない粉じんの発生が顕著に起こる。
【0151】
そのような流動助剤の調製を乳化重合方法で実施し、およびそれを噴霧乾燥で単離するのが有利である。そのような噴霧乾燥工程は、従来方法で実施可能である。噴霧乾燥の典型的な説明をDE 332 067またはUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、第5版(1988)、B2、4−23頁に見ることができる。噴霧組み立て品(材料1種類用ノズル、材料2種類用ノズルまたは噴霧機盤)に応じて、得る粒子の平均粒径は20から300μmである。
【0152】
非常に均一(均質)な伸び増進剤を得る目的で行う伸び増進剤および流動助剤の混合は従来方法で実施可能である。さらなる詳細が例えばUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、第5版(1988)、および、またRoempps Chemie Lexikon(CD)−Version 1.0、Stuttgart/New York:Georg Thieme Verlag 1995に記述されている。
【0153】
別の方法として、また、前記流動助剤(これを乳化重合で形成させた後)を水性乳液の形態で、本伸び増進剤に直接加えた後、後者と一緒に乾燥させることも可能である。
【0154】
本発明に関連して、流動床乾燥器を用いて本添加重合体(これを好適には、流動床乾燥器を用いて乾燥させておく)および噴霧乾燥流動助剤を混合するのが卓越して有利であることを確認した。流動床方法に関する詳細も同様に技術文献、例えばUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、第5版(1988)、および、またRoempps Chemie Lexikon(CD)−Version 1.0、Stuttgart/New York:Georg Thieme Verlag 1995から得ることができる。
【0155】
本発明に従って用いる伸び増進剤を、必要ならば顆粒状にしてもよい。これに関連して、顆粒化は、形状および大きさが同じペレットを形成させることを指す。顆粒にすべき重合体を、通常は単軸または二軸押出し加工機に、好適には、供給不足状態で仕込んで溶融させ、この工程中に、好適には、それに脱気を受けさせ、そしてそれをペレット化用機械に送る。細分は、冷ペレット化ばかりでなく、また熱ペレット化でも実施可能である。冷ペレット化では、顆粒用ダイスでストランド、ストリップまたは薄い自己支持型フ ィルムを形成させ、固化させた後、回転式ブレードで細分する。熱ペレット化では、合成重合体をダイスに通して押出し、そして出てきたストランドを回転式ブレード(これは通常はダイスプレートに固定されている)で細分する。その溶融物をペレット化後に、通常は空気または水のいずれかで冷却する。
【0156】
通常の紡糸手段、例えば刊行物DE 199 37 727(ステープル繊維)、DE 199 37 728、DE 199 37 729(産業用糸)およびWO 99/07 927(POY)に記述されているような手段を用いた溶融紡糸で、本発明の重合体混合物から合成繊維を製造する。前記文献の開示内容は引用することによって、明らかに本明細書に組み入れられる。
【0157】
本方法は、POYの製造に、特に有利であることを確認したことから、POYを製造するに適した新規な方法の、特に好適な態様をここに記述する。本発明の教示を、他の合成糸製造方法に適用する方法は、本分野の技術者に容易に明らかになるであろう。
【0158】
POYの溶融紡糸を、好適には少なくとも2500m/分の紡糸取り出し速度で実施する。公知の従来技術に従い、使用するフィルターパックにフィルター手段および/または拘束されていないフィルター媒体(例えば鋼砂)を装備する。
【0159】
その溶融状態の重合体混合物は、せん断を受け、および、ダイスパック内で濾過された後、ダイスプレートの中の毛細管を通って押出される。その後、その溶融状態のスレッドが下流のスレッドガイド上に、粘着すること、または、詰まりを起こすこともないように、それを冷却ゾーンの中で、冷却用空気で冷却することで、それの軟化温度未満にまで冷却する。その冷却ゾーンの形態は重要ではないが、但し、フィラメント束の中を均一に通す空気流れが均一であることが確保されることを条件とする。例えば、ダイスプレートの直ぐ下方に、休止空気ゾーンを設けることで、冷却を遅らせることも可能である。冷却用空気を空調機から横方向または半径方向の急冷で供給してもよい、または冷却用パイプを用いて、周囲からの自己吸引で入り込ませてもよい。
【0160】
前記フィラメントを冷却した後、束にして、紡糸仕上げを行う。これをオイラーパッド(これに紡糸仕上げ用エマルジョンを計量ポンプで供給する)を用いて達成する。その紡糸仕上げを受けさせた繊維を有利には絡み手段に通すことで束の密着性を向上させる。繊維が巻き取り組み立てに到達し、および円柱形ボビン中心に巻き取られて、パッケージが形成される所の前方に取り扱い、および、安全要素を存在させるのも同様に推奨される。糸パッケージの表面速度を、自動的に調整して巻き取り速度と等しくする。繊維は横方向に動くことから、繊維取り出し速度の方が巻き取り速度よりも0.2から2.5%高くなるようにしてもよい。場合により、紡糸仕上げ段階の下流であり、および巻き取り段階の上流に駆動ゴデットを用いてもよい。1番目のゴデット装置の表面速度を取り出し速度と呼ぶ。延伸または弛緩を起こさせる目的で、さらなるゴデットを用いることも可能である。
【0161】
特に、本伸び増進剤を高い巻き取り速度で用いる時には、スレッドの張力が高いことが原因で起こる末端部の落下が生じることなく、良好なパッケージ構築が達成され得るように束の密着性が良好であることが必須である。これに関連して、絡み節の数が多いことが要求される。下記の紡糸仕上げ条件を選択する時には、それを考慮に入れるべきである:繊維と繊維の摩擦を非常に高くする紡糸仕上げ剤を用いると、実際に絡み合いがしばしば悪化する。比較的滑らかな紡糸仕上げ剤を希乳液(<10%)の状態で塗布する方がより良好である。
【0162】
前記2種類の重合体が相溶しない原因は、前記重合体混合物が紡糸口金から出た直後の前記マトリックス重合体の中に存在する本添加重合体が形成する細長い粒子が糸が移動する方向に対して主に半径方向に対称的であることにある。その長さ/直径の比率は好適には>2であり、ここで、直径(d)は糸が移動する方向に対して直角に測定した直径であり、および長さは糸が移動する方向に対して平行に測定した長さである。粒子直径中点(算術的中点)d50が≦400nmから>1000nmの粒子がサンプル断面の中に存在する分率が1%未満の時に、最良の状態を得た。
【0163】
スピンライン(spinline)の延伸比が、前記粒子に対して示す効果を分析で立証した。紡糸したままの繊維を、透過電子顕微鏡(TEM)で検査した結果、フィブリル様構造物が存在することが分かった。そのフィブリルの直径中点は約40nmであると推定した。そのフィブリルの長さ/直径比は>50であった。そのようなフィブリルが生じない、または紡糸口金から出た時の本添加剤粒子の直径が、あまりにも大きいか、または大きさの分布があまりにも不均一(これは粘度比が充分でない時に当てはまる)である場合には、有益な効果が失われる。
【0164】
本発明による添加重合体を用いると、文献に記述されているローラー作用を実証することができなかった。繊維の横方向および縦方向の断面を顕微鏡検査で評価した結果は、本添加剤のフィブリルが形成される時に、スピンラインの伸び張力が本添加剤のフィブリルに伝達されること、および、当該重合体マトリックスが受ける伸びの張力が低いことを示唆している。その結果として、前記マトリックスは、配向の低下および紡糸で誘発される結晶化の抑制をもたらす条件下で変形を起こす。紡糸したままのフィラメント形成による影響および加工特性による影響を判断することは常識である。
【0165】
本発明による添加剤が示す効力に関して、この共重合体が少なくとも80kJ/モルの流動活性化エネルギーを有すること、即ち、当該重合体マトリックスが有する流動活性化エネルギーより高い流動活性化エネルギーを有することもさらなる利点である。そのような前提条件下で、本添加剤のフィブリルは当該ポリエステルマトリックスが固化する前に固化し、および、かかる紡糸張力のかなりの部分を吸収し得る。このようにして、紡糸プラントで望まれる能力向上を達成することができる。
【0166】
本発明による方法の上述した好適な態様は、POY(単一)フィラメントの線形密度が>3dtexから20dtex、または、それ以上のPOY繊維ばかりでなく、また、POYフィラメント線形密度が、フィラメント当たり<3dtexのPOYフィラメント、特にフィラメント当たり0.2から2.0dtexのミクロフィラメントも高速で紡糸するに有用である。
【0167】
本発明の方法では、複数回の添加で得ることができる、本添加重合体を添加し、その結果として、繊維破壊率が従来技術の方法を用いた時に比べて顕著に低い。本発明の好適な態様において、線形密度がフィラメント当たり>3dtexのPOYの製造に伴う繊維破壊率は、重合体混合物1メートルトン当たり0.75個未満の破壊、有利には重合体混合物1メートルトン当たり0.5個未満の破壊、好適には重合体混合物1メートルトン当たり0.4個未満の破壊である。
【0168】
本発明による方法を用いて得ることができる合成繊維は、そのままの形態で直接使用可能であるか、または、さもなければそれにさらなる加工を従来方法で受けさせてもよい。本発明の特に好適な態様では、ステープル繊維を製造する目的でそれを用いる。ステープル繊維製造に関するさらなる詳細を従来技術、例えば刊行物DE 199 37 727およびその中に引用されている文献から得ることができる。
【0169】
本発明の特に好適なさらなる態様では、本発明の方法で製造したPOYに延伸または延伸微細構造化を受けさせる。これに関連して、その紡糸した繊維に延伸−微細構造化工程で、さらなる加工を高速で受けさせる場合には、下記の観察が重要である。延伸微細構造化用供給糸として用いるべき本発明による紡糸繊維(通常はPOYとして知られる)の製造を好適には≧2500m/分、より好適には>3500m/分、最も好適には>4000m/分の取り出し速度で行う。このような糸は、特定度合の配向を示し、および、結晶化度が低いことで特徴づけられる物理的構造を持つはずである。糸を特徴づけるに有用なパラメーターは、破壊時伸び、複屈折率、結晶化度およびボイルオフ収縮率である。本発明によるポリエステルが基になった重合体混合物は、POYの場合、破壊時伸びが85%以上から180%以下であることを特徴とする。ボイルオフ収縮率は、32−69%であり、複屈折率は0.030から0.075の範囲であり、結晶化度は20%未満であり、そして破壊時引張り強さは、少なくとも17cN/texである。そのようなPOYが示す破壊時伸びは、好適には85から160%の範囲である。POYの破壊時伸びが、109から146%の範囲であると同時に、POYの破壊時引張り強さが少なくとも22cN/texであり、および、Uster値が0.7%以下である時の状態が特に好ましい。
【0170】
そのようにして入手可能な合成POYは、特に、延伸または延伸−微細構造化工程でさらなる処理を受けさせるに適切である。そのさらなる加工工程中の破壊末端部の数も絶えず低いであろう。そのような延伸−微細構造化をフィラメントの線形密度に応じて種々の速度で実施し、フィラメント当たり≧2dtexの通常の線形密度(最終的線形密度)を示すフィラメントの場合には≧750m/分の速度、好適には≧900m/分の速度を用いる。ミクロフィラメント、即ちフィラメント当たり<2dtexの微細な線形密度(最終的線形密度)を示すフィラメントの場合には、加工を好適には、400から750m/分の範囲の速度で実施する。本方法は、特にそのような線形密度の場合に有利であり、特にフィラメント当たり0.15から1.10dtex(最終的線形密度)の範囲のミクロフィラメントにとって有利である。
【0171】
その示したPOYで用いるべき延伸比は1.35から2.2の範囲であり、配向度が比較的低いPOYに受けさせる延伸比は、好適には前記範囲の上限であり、その逆も当てはまる。延伸微細構造化の場合の延伸比は、張力上昇の影響を加工速度の関数として受ける。従って、式:
延伸比=5・10−4・w(m/分)+b
[式中、
w=延伸−微細構造化速度(m/分)
b=1.15から1.50の範囲の定数]
に従う延伸比を用いるのが特に好適である。
伸び増進剤/マトリックス重合体の粘度比
本共重合体が示す溶融粘度と当該マトリックス重合体が示す溶融粘度の比率を、好適には1:1から10:1の範囲にしてもよい。前記マトリックス重合体に添加する本共重合体の量は、例えば少なくとも0.05質量%(当該重合体を基準)で、多くて量M[Mは式
【0172】
【数2】

で示される]
であってもよい。
【0173】
前記マトリックス重合体に、伸び増進剤(これは非晶質でありおよび前記マトリックス重合体に実質的に不溶である)を好適には、少なくとも0.05質量%の量で添加する。前記2種類の重合体は、本質的に互いに相溶することはなく、顕微鏡で区別可能な2相を形成する。本伸び増進剤は有利に、また90℃以上のガラス転移温度(DSCで10℃/分の加熱速度を用いて測定)を示し、および、熱可塑的に加工可能である。
【0174】
本伸び増進剤の溶融粘度は、時間ゼロに外挿した時の、それの溶融粘度[当該マトリックス重合体が示す溶融温度+34.0℃に相当する温度(ポリエチレンテレフタレートの場合には290℃)において2.4Hzの振動率で測定]と当該マトリックス重合体が示す溶融粘度(同じ条件下で測定した時)の比率が1:1から10:1の範囲になるように選択可能である。言い換えれば、本伸び増進剤が示す溶融粘度が、当該ポリエステルが示す粘度と少なくとも同じ、または、好適にはそれよりも高くなるようにする。本伸び増進剤が特定の範囲の粘度を示すように選択するか、または伸び増進剤およびマトリックス重合体、例えばポリエステルなどの粘度比が、特定の比率になるように選択することで、最適な効率を達成することができる。
【0175】
粘度比を最適にすると本添加剤の添加量を最小限にすることができる。その結果として、本方法の経済的効率が特に高くなり、特に好ましい工程特性が達成される。合成フィラメント糸を製造する目的で、重合体混合物を使用する場合の特に好適な粘度比は、2種類の重合体を混合する場合に、好ましいとして文献に示されている範囲よりも高い比率である。
【0176】
本添加重合体は、高い流動活性化エネルギーを有することから、その重合体混合物が紡糸口金のダイスから出た後の繊維形成領域の中の粘度比が劇的に高くなる。好ましい粘度比を選択することで、本添加剤が当該ポリエステルマトリックスの中で、特に狭い粒径分布を示すことが達成され、および、そのような粘度比と流動活性化エネルギーがポリエステルが示すそれ(PETは約60kJ/モルの流動化エネルギーを示す)よりも顕著に高い、即ち80kJ/モル以上、好適には100kJ/モル以上であることの組み合わせによって、本添加剤が紡糸したままの繊維の中で要求されるフィブリル構造を示すようになる。ガラス転移温度がポリエステルのそれよりも高いことから、そのようなフィブリル構造物が紡糸したままの繊維の中で、迅速に固化することが確保される。本添加重合体の最大粒径は紡糸口金ダイスから出た直後の約1000nmであるが、粒径中点は400nm以下である。
【0177】
本伸び増進剤が示す溶融粘度と当該マトリックス重合体が示す溶融粘度の比率が好適には、1.4:1から8:1の範囲になるようにする。前記溶融粘度の比率が、1.7:1から6.5:1の範囲になるようにするのが特に好適である。そのような条件にすると、本添加重合体の平均粒径が例えば220−350nmになり得る。
【0178】
当該ポリエステルに添加する本共重合体の量は、一般に少なくとも0.05質量%である。添加量を1.5%未満にすることで充分な用途は数多く存在し、取り出し速度が3500m/分以上から6000m/分、または、それ以上に及ぶ場合でさえ、しばしば、1.0%未満で充分であり、これはかなりのコスト利点になる。
添加する伸び増進剤の量
当該マトリックス重合体の量を基準にして添加すべき本伸び増進剤の最大量は、量M[ここで、Mは紡糸取り出し速度vの関数として下記の式
【0179】
【数3】

で定義可能である]
に相当する量である。
【0180】
従って、紡糸速度が3500から6000m/分の範囲の時に添加すべき最大量は、それぞれ1.39質量%および2.95質量%である。
【0181】
特に良好な経済的効率を得ようとする場合、取り出し速度が2900m/分以上の場合に添加すべき本伸び増進剤の上限は量M*[ここで、
【0182】
【数4】

]で定義可能である。
【0183】
前記式によって、紡糸速度が3500から6000m/分の場合に添加すべき量は0.39質量%から1.92質量%の範囲であることがもたらされるであろう。
取り出し速度が4200m/分を超える場合、当該マトリックス重合体に添加すべき本伸び増進剤の量は、好適には量N[ここで、
【0184】
【数5】

]以上、好適には0.05質量%以上である。
【0185】
従って、取り出し速度が4200から6000m/分の場合の最低量は0.057から0.57質量%の範囲であり得る。
【0186】
上述したポリエステルに対する本添加重合体の好適な粘度比が、当該マトリックス重合体(これは例えばポリエステルであり得る)の量を基準にして添加すべき本伸び増進剤の量に対応する場合、その量は、取り出し速度が3900m/分を超える場合、好適には量P[ここで、P=P*±0.2質量%]に等しい量であるが、0.05質量%以下であり、ここで、
【0187】
【数6】

【0188】
従って、そのような好適な場合に添加すべき本伸び増進剤の量は、紡糸速度が3900から6000m/分の場合、0.07質量%から0.39質量%の範囲であり得る。
【0189】
原則として、また、前記式は、紡糸速度が6000m/分以上から約12000m/分の場合にも当てはまり得る。
【0190】
マトリックス重合体
有用な繊維形成マトリックス重合体は、好適には、熱可塑的に加工可能なポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどである。それらは大部分がホモ重合体である。しかしながら、また、通常の共重合用単量体、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、イソフタル酸および/またはアジピン酸などを、約15モル%以下の分率で有する前記ポリエステルの共重合体を用いることも可能である。
【0191】
前記重合体に追加的に添加剤、例えば触媒、安定剤、蛍光増白剤および艶消し剤などを含有させることも可能である。前記ポリエステルは、また分枝成分、即ち例えば多官能酸、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸など、または三価から六価のアルコール、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセロールまたは相当するヒドロキシ酸なども少量(0.5質量%以下)含有していてもよい。
混合操作およびせん断速度
本伸び増進剤と当該マトリックス重合体の混合は、チップミキサーまたは質量計量装置を用いて、当該マトリックス重合体のチップを固体として、押出し加工機の入り口に添加するか、または別の方法として本添加重合体を溶融させ、ギアポンプで計量して、当該マトリックス重合体の溶融流れの中に注入することで実施可能である。その後、混合を前記押出し加工機内で行ないおよび/または固定式または動的混合装置を用いることで均一な分布を達成することができる。有利には、混合装置を特別に選択し、および溶融状態の混合物が生成物分配ラインの中を運ばれて、個々の紡糸位置および紡糸口金ダイスに到達する前の混合時間を特別に選択することで、限定された粒子分布に設定する。せん断速度が16から128秒−1で混合装置滞留時間が少なくとも8秒の混合装置が、有利であることが分かるであろう。切断速度(秒−1)と滞留時間(秒)の0.8乗の積が、250から2500の範囲、好適には300から600の範囲内になるようにすべきである。
【0192】
ここでは、せん断速度を表面せん断速度(秒−1)x混合装置係数[混合装置係数は混合装置の種類に特徴的なパラメーターである]として定義する。例えばSulzer SMXタイプの場合の前記係数は、約7−8である。前記表面せん断速度γを
【0193】
【数7】

に従って計算し、そして滞留時間τ(秒)を
【0194】
【数8】

に従って計算し、ここで、
F=重合体移送速度(g/分)
=空の管の内部容積(cm
R=空の管の直径(mm)
ε=空の体積分率(Sulzer SMXタイプの場合0.84から0.88)
δ=溶融状態の重合体混合物が示す名目密度(約1.2g/cm
温度
前記2種類の成分の混合ばかりでなく、また次に行う前記重合体混合物の紡糸も一般に、220から320℃の範囲内の温度(当該マトリックス重合体に依存)で実施する。
合成フィラメントの製造
当該マトリックス重合体および本伸び増進剤から合成フィラメントを取り出し速度が≧2500m/分の高速紡糸で製造する場合、この製造を好適には、通常の紡糸手段を用いて達成する。公知従来技術に従い、フィルターパックにフィルター手段、および/または、拘束されていないフィルター媒体(例えば鋼砂)を装備する。
【0195】
その溶融状態の重合体混合物は、せん断を受け、そしてダイスパック内で濾過された後、ダイスプレートの中の毛細管を通って押出される。その後、その溶融状態のスレッドが、下流のスレッドガイド上に粘着すること、または、詰まりを起こすこともないように、それを冷却ゾーンの中で、冷却用空気で冷却することで、それの軟化温度未満にまで冷却する。その冷却ゾーンの形態は重要ではないが、但し、フィラメント束の中を均一に通す空気流れが均一であることが確保されることを条件とする。例えば、ダイスプレートの直ぐ下方に、休止空気ゾーンを設けることで、冷却を遅らせることも可能である。冷却用空気を空調機から横方向または半径方向の急冷で供給してもよいか、または、冷却用パイプを用いて周囲からの自己吸引で入り込ませてもよい。
【0196】
前記フィラメントを冷却した後、束にして、紡糸仕上げを行う。これをオイラーパッド(これに紡糸仕上げ用エマルジョンを計量ポンプで供給する)を用いて達成する。その紡糸仕上げを受けさせたスレッドを有利には絡み手段に通すことで、束の密着性を向上させる。繊維が巻き取り組み立てに到達し、および、円柱形ボビン中心に巻き取られてパッケージが形成される所の前方に取り扱い、および、安全要素を存在させるのも同様に推奨される。糸パッケージの表面速度を自動的に調整して、巻き取り速度と等しくする。繊維は横方向に動くことから、繊維取り出し速度の方が、巻き取り速度よりも0.2から2.5%高くなるようにしてもよい。場合により、紡糸仕上げ段階の下流であるが、巻き取り段階の上流に駆動ゴデットを用いてもよい。1番目のゴデット装置の表面速度を取り出し速度と呼ぶ。延伸または弛緩を起こさせる目的で、さらなるゴデットを用いることも可能である。
【0197】
特に、本伸び増進剤を高い巻き取り速度で用いる時には、スレッドの張力が高いことが原因で起こる末端部の落下が生じることなく、良好なパッケージ構築が達成され得るように束の密着性が良好であることが必須である。これに関連して、絡み節の数が多いことが要求される。下記の紡糸仕上げ条件を選択する時には、それを考慮に入れるべきである:繊維と繊維の摩擦を非常に高くする紡糸仕上げ剤を用いると、実際に絡み合いがしばしば悪化する。比較的滑らかな紡糸仕上げ剤を希乳液(<10%)の状態で塗布する方がより良好である。
【0198】
前記2種類の重合体が相溶しない原因は、前記重合体混合物が、紡糸口金から出た直後の前記マトリックス重合体の中に存在する本添加重合体が、形成する細長い粒子が、糸の移動する方向に対して、主に半径方向に対称的であることにある。その長さ/直径の比率は、好適には>2である。粒子直径中点(算術的中点)d50が≦400nmから>1000nmの粒子が、サンプル断面の中に存在する分率が1%未満の時に最良の状態を得た。
【0199】
スピンラインの延伸比が、前記粒子に対して示す効果を分析で立証した。紡糸したままの繊維を透過電子顕微鏡(TEM)で検査した結果、フィブリル様構造物が存在することが分かった。そのフィブリルの平均直径は約40nmであると推定した。そのフィブリルの長さ/直径比は>50であった。そのようなフィブリルが生じないか或は紡糸口金から出た時の本添加剤粒子の直径があまりにも大きいか、または大きさの分布があまりにも不均一(これは粘度比が充分でない時に当てはまる)である場合には、有益な効果が失われる。
【0200】
本発明の熱安定化を受けさせた伸び増進剤を用いると、文献に記述されているローラー作用を実証することができなかった。繊維の横方向および縦方向の断面を、顕微鏡検査で評価した結果は、本添加剤のフィブリルが形成される時に、スピンラインの伸び張力が本添加剤のフィブリルに伝達されることおよび当該重合体マトリックスが受ける伸びの張力が、低いことを示唆している。その結果として、前記マトリックスは、配向の低下および紡糸で誘発される結晶化の抑制をもたらす条件下で変形を起こす。紡糸したままのフィラメント形成による影響および加工特性による影響を判断することは常識である。
【0201】
流動活性化エネルギー
本発明による伸び増進剤が示す効力に関して、この共重合体が少なくとも80kJ/モルの流動活性化エネルギーを有すること、即ち当該重合体マトリックスが有する流動活性化エネルギーより高い流動活性化エネルギーを有することもさらなる利点である。そのような前提条件下で、本添加剤のフィブリルは、当該ポリエステルマトリックスが固化する前に固化し、および、かかる紡糸張力のかなりの部分を吸収し得る。このようにして、紡糸プラントで望まれる能力向上を達成することができる。
【0202】
紡糸繊維の構造
紡糸繊維構造物が生じるのは、本質的に紡糸口金ダイスの下方の下流ゾーンの中である。未改質重合体の場合の下流ゾーンの長さは、スピンライン取り出し速度によって変わる。通常の取り出し速度である、少なくとも2500m/分の時のプレヤーンに典型的な値は約300mmの長さであり、POYの場合は、好適には≧250mmから≦700mmである。本発明の方法では、下流ゾーンの長さを通常の紡糸の場合よりも長くする。フィラメントが突然に起こすネッキング(これは速度が速い時に観察される)が抑制される。ドローダウン路に沿ったスピンライン速度の変化は、通常のPOYを3200m/分で製造した時の値に相当する値を取る。
【0203】
本発明の方法は、POY(単一)フィラメントの線形密度が>3dtexから20dtexまたはそれ以上のPOY繊維ばかりでなく、またPOYフィラメント線形密度が<3dtexのPOYフィラメント、特にフィラメント当たり0.2から2.0dtexのミクロフィラメントも高速で紡糸するに有用である。
【0204】
合成繊維のさらなる加工または使用
前記合成繊維に延伸微細構造化工程で、さらなる加工を高速で受けさせることも可能である。本発明に従って延伸微細構造化用供給糸として用いる合成繊維(通常はPOYとして知られる)の製造を≧2500m/分、好適には>3500m/分、より好適には>4000m/分の取り出し速度で行う。このような糸は、特定度合の配向および低い結晶化度を包含する物理的構造を有する。そのような特性を特徴づけるに有用なパラメーターは、破壊時伸び、複屈折率、結晶化度およびボイルオフ収縮率である。適切な重合体混合物が示す破壊時伸びは、例えば、紡糸したままのPET繊維(POY)の場合、85%以上から180%以下である。ボイルオフ収縮率は、好適には32−69%であり、複屈折率は一般に0.030から0.075の範囲であり、結晶化度は、好適には20%未満であり、そして破壊時引張り強さは有利に17cN/tex以上である。紡糸したままのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維が示す破壊時伸びは、より好適には例えば85から160%の範囲である。紡糸したままのPET繊維の破壊時伸びが、109から146%の範囲であると同時に、破壊時引張り強さが22cN/tex以上でありかつUster値が0.7%以下である時の状態が特に好ましい。
【0205】
延伸微細構造化は、フィラメントの線形密度に応じて、種々の速度で実施可能であり、フィラメント当たり≧2dtexの通常の線形密度(最終的線形密度)を示すフィラメントの場合には≧750m/分の速度、好適には≧900m/分の速度を用いる。ミクロフィラメント、即ちフィラメント当たり<2dtexの微細な最終的線形密度を示すフィラメントの場合には、加工を好適には400から750m/分の範囲の速度で実施する。本方法は、特にそのような線形密度の場合に有利であり、特にフィラメント当たり0.15から1.10dtex(最終的線形密度)の範囲のミクロフィラメントにとって有利である。
【0206】
その示した紡糸したままの繊維で用いるべき延伸比は、好適には1.35から2.2の範囲であり、配向度が比較的低い繊維に受けさせる延伸比は、好適には前記範囲の上限であり、その逆も当てはまる。延伸微細構造化の場合の延伸比は、張力上昇の影響を加工速度の関数として受ける。従って、式:
延伸比=5・10−4・w(m/分)+b
[式中、
w=延伸−微細構造化速度(m/分)
b=1.15から1.50の範囲の定数]
に従う延伸比を用いるのが特に好適である。
【0207】
高沸点分解生成物の減少
本伸び増進剤を大規模な産業的規模で用いる場合、揮発性の分解生成物(単量体)のガスが発生することが問題になるばかりでなく、高沸点の分解生成物が生じることも問題になる。高沸点の分解生成物は、破壊末端部の数を多くし、および巻き取り特性を悪化させることで紡糸収率を悪化させる可能性がある。その上、高沸点の分解生成物は、装置に付着してそれの悪化をもたらす可能性もある。そのような付着物が、紡糸装置の金属表面に生じる可能性がり、それをそれから再び除去する必要が生じ得る。そのような付着物が紡糸口金の穴に生じて繊維があまりにも細くなると、これは破壊末端部が生じる一因になり得る。それによって工程の一貫性および繊維の品質が危うくなる。高沸点の分解生成物はフィルターの寿命、紡糸口金の寿命および紡糸口金清掃サイクルを短くすることで、紡糸工程の収率を低くする。従って、本発明は、本発明の目的として、高沸点分解生成物の生成を制御する目的も有する。
【0208】
本発明に従い、ビニル系単量体をフリーラジカル重合させることで形成させた非晶質で熱可塑的に加工可能な伸び増進剤[この伸び増進剤は、これと相溶しない溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成繊維を製造する時に用いるに適し、滑性添加剤が有する残渣の含有量は0.05質量%以下であり、および/または開始剤に由来する生成物による残渣の含有量は0.06質量%以下である]を用いることで、本目的を達成する。本伸び増進剤に、熱暴露を290℃のアルゴン下で30分間受けさせた後に、ガスクロマトグラフィーヘッドスペース方法を用いて検出可能な分解生成物の総含有量が6質量%以下であるように(この上に記述したように)、本伸び増進剤に、抗酸化物質の添加による熱安定化を受けさせておいてもよい。本伸び増進剤の中に、高沸点分解生成物が存在すること、または、それの量は例えばガスクロマトグラフィーで測定可能である。
【0209】
本伸び増進剤を製造する時に滑剤を全く添加しないか、またはそれの添加濃度を0.02質量%以下にすることで、本伸び増進剤の中に存在する滑性添加剤に由来する残渣の量が0.05質量%以下、好適には0.03質量%以下、より好適には0.01質量%以下であることを達成することができる。
【0210】
本伸び増進剤を製造する時に用いた開始剤を、できるだけ減少させるか、または実質的に完全に除去しようとする時には、目的で追加的精製段階を用いることで、本伸び増進剤の中に存在する開始剤由来生成物による残渣の量が0.06質量%以下、好適には0.04質量%以下であることを達成することができる。適切な追加的精製段階の形態は、例えば、その溶融物に真空脱気を押出し加工機の中で連行剤、例えば、水または単量体(例えば、メタアクリル酸メチル)などの使用有り、または、無しで受けさせる形態などであり得る。
【0211】
適切なさらなる追加的精製段階の形態は、例えば、重合体を凝固助剤および/または追加的洗浄段階の有り、または、無しで凝固させ、その重合体溶融物に脱水を脱気ゾーンおよび脱水ゾーンが備わっている、二軸押出し加工機内で受けさせる形態などであり得る。
【0212】
伸び増進剤の製造
実施例
本発明に従って用いる伸び増進剤(添加重合体)の調製を従来方法で実施する。それらの調製は塊状、溶液、懸濁または乳化重合で実施可能である。塊状重合に関する役立つ情報がHouben−Weyl、E20巻、パート2(1987)、1145頁以降に見られる。溶液重合に関する情報も同書の1156頁以降に見られる。懸濁重合技術も同書の1149頁以降に記述されている一方、乳化重合も同書の1150頁以降に記述および説明されている。
【0213】
本発明の目的で、特にビード重合体が好適であり、それの粒径を特に好適な範囲にする。本発明に従って用いる本添加重合体、例えば繊維用重合体の溶融物に混合する本添加重合体では、それの形態を、特に好適には平均直径が0.1から1.0mmの粒子形態にする。しかしながら、また、より大きいか、またはより小さいビードを用いることも可能である。
【0214】
本発明の目的で、本添加重合体の残存単量体含有量を0.45質量%以下、有利には0.35質量%以下、好適には0.25質量%以下にするが、これらは各々本添加重合体の総質量を基準にしたパーセントである。本発明の特に好適な態様では、本添加重合体の残存単量体含有量は0.05質量%以上から0.25質量%以下の範囲であり、これらは各々本添加重合体の総質量を基準にしたパーセントである。
【0215】
ここで、本伸び増進剤(添加重合体)の残存単量体含有量は、本発明に従い、重合を行ない、および重合体を単離した後の本添加重合体に残存する単量体の量を指す。重合体をフリーラジカル重合で形成させた場合の残存単量体含有量は、この重合体の総質量を基準にして通常は0.4質量%から1.0質量%の範囲内である。重合体の残存単量体含有量を低くする方法は、従来技術で公知である。例えば、重合体溶融物に脱気を好適には紡糸直前に押出し加工機内で受けさせることで、重合体の残存単量体含有量を低くすることができる。さらに、また、重合パラメーターを賢明に選択することで、残存単量体含有量が低い重合体を得ることも可能である。
【0216】
本発明の好適な態様では、種々の半減期を有する複数の開始剤(例えばDE 101 15 203 A1を参照)を用いたフリーラジカル重合で本添加重合体を得る。
【0217】
本発明に関連して、更に、本添加重合体をいわゆる流動助剤(例えばDE 102 10 018 A1を参照)と混合するのも極めて有利である。
1. 伸び増進剤の調製
実施例:
イオンを完全に除去しておいた水が2400gでKHSOが0.324gでポリアクリル酸の13パーセント水溶液が41.1gの混合物を加熱/冷却用ジャケット、撹拌機、還流冷却器および温度計を取り付けておいた5lの重合槽に入れて40℃に加熱した。次に、撹拌を行ないながら第1表に示した成分の混合物を加えた。このバッチを80℃で130分間および98℃で60分間重合させた後、室温になるまで冷却した。重合体ビードを濾別し、イオンを完全に除去しておいた水で徹底的に洗浄した後、流動床乾燥器に入れて80℃で乾燥させた。
【0218】
第1a表
【0219】
【表1】

【0220】
第1b表
【0221】
【表2】

【0222】
【表3】

1)=チオグリコール酸2−エチルヘキシル
2)=t−ドデシルメルカプタン
3)=メルカプトプロピオン酸エチルヘキシル
4)=パーオキシ2−エチルヘキサン酸t−アミル
5)=3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸オクタデシル
6)=ステアリン酸とパルミチン酸の工業品質混合物
次に、前記乾燥させた重合体ビードを0.1質量部の噴霧乾燥MMA−スチレン乳化重合体と混合した後、流動床乾燥器に入れて約5分間混合した(DE 102 10 018に示されている広範な説明に従って)。
【0223】
それによって、第2表に報告するデータに従うDIN 7745粘度値、残存MMA含有量および平均粒径を示す重合体ビードを95%を超える収率で得た。
【0224】
第2表
【0225】
【表4】

【0226】
実施例13
容量が2.4 lの撹拌型反応槽を150℃に維持しながら、これにメタアクリル酸メチルが93.5質量部でスチレンが6.5質量部でパーオキシ−2−エチルヘキサン酸t−ブチルが0.035質量部で、3−メルカプトプロピオン酸メチルが0.075質量部の混合物を3385g/時の供給速度で連続的に供給した。この反応混合物の定常状態の重合体含有量は約45.5質量%である。反応混合物を供給材料の流量に相当する取り出し速度で連続的に取り出し、および45質量部の3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸オクタデシルを575質量部のメタアクリル酸メチルに入れることで形成させた溶液を重合体シロップに115.7g/時の速度で計量して入れる。その混合物をSulzer ChemtechのSMX固定式混合装置に通した後、熱交換器の中で180℃に加熱し、次に脱気用押出し、加工機に送る。実際には、スクリュー直径が20mmで、長さが25Dの単軸押出し加工機を240−250℃の範囲の温度で圧力を1から0.01バール(真空)にまで低下させることで操作した。単量体の蒸気を排出させ、凝縮させた後、再循環させることで出発反応混合物を形成させた。その重合体溶融物を厚みが約2mmの円形ストランドの形態に押出し、加工して水浴の中に通すことで軟化温度未満になるまで冷却した後、細分してペレットを形成させた。
【0227】
その結果として得た重合体は、メタアクリル酸メチル:スチレン=91.2:8.8質量%の組成を有し、96.2cm/gの溶液粘度値を示しおよび7.2cm/分のMVR(ISO 1133、250℃、10kg)を示す。
【0228】
実施例14
容量が2.4 lの撹拌型反応槽を150℃に維持しながら、これにメタアクリル酸メチルが94.5質量部でアクリル酸メチルが5.5質量部でパーオキシ−2−エチルヘキサン酸t−ブチルが0.03質量部で3−メルカプトプロピオン酸メチルが0.093質量部の混合物を3390g/時の供給速度で連続的に供給した。この反応混合物の定常状態の重合体含有量は約44質量%である。反応混合物を供給材料の流量に相当する取り出し速度で連続的に取り出し、および50.75質量部の3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸オクタデシルを、650質量部のメタアクリル酸メチルに入れることで形成させた溶液を重合体シロップに116g/時の速度で計量して入れる。その混合物をSulzer ChemtechのSMX固定式混合装置に通した後、熱交換器の中で180℃に加熱し、次に脱気用押出し加工機に送る。実際には、スクリュー直径が20mmで長さが25Dの単軸押出し加工機を240−250℃の範囲の温度で圧力を1から0.01バール(真空)にまで低下させることで操作した。単量体の蒸気を排出させ、凝縮させた後、再循環させることで出発反応混合物を形成させた。その重合体溶融物を厚みが約2mmの円形ストランドの形態に押出し加工して水浴の中に通すことで軟化温度未満になるまで冷却した後、細分してペレットを形成させた。
【0229】
その結果として得た重合体はメタアクリル酸メチル:アクリル酸メチル=96:4質量%の組成を有し、95.9cm/gの溶液粘度値を示しおよび6.5cm/分のMVR(ISO 1133、250℃、10kg)を示す。
【0230】
2. 伸び増進剤が示す熱安定性の測定
下記の方法を用いて熱安定性を測定する:
− 調査すべきサンプルを約30mg計量してヘッドスペースが22mlのサンプル瓶の中に入れる。
− 前記サンプル瓶を開放状態でグローブボックスに移し、アルゴンで不活性にした後、PTFE積層シリコン盤とリングウォッシャーとアルミニウム製ビードキャップの組み合わせを用いて前記グローブボックス内で密封する。
− その密封したサンプル瓶を前記グローブボックスから取り出した後、前記サンプル瓶の寸法に開けられた穴が備わっている金属製ブロックサーモスタットの中に入れて、それに焼き戻しを290℃(較正を受けさせておいた熱電対で温度を制御)で10、20または30分間(前記サンプル瓶を290℃に予熱しておいた金属製ブロックサーモスタットの中に入れた時間から測定した焼き戻し時間)受けさせる。
− 室温になるまで冷却した後、シリンジを用いてN,N−ジメチルホルムアミドを4ml計量して隔壁に通して入れた後、その残留物を前記金属製ブロックサーモスタットに入れて50℃で一時的に振とうすることでその中に完全に溶解させる(溶解操作に約30−60分間要する)。
− 溶液が蓋または隔壁から流れ出ることができるように、振とうを受けさせた後のサンプルを通常は約10分間放置するべきである。更に4mlのDMFを入れるのはその後であり、次に、前記サンプル瓶を新しい隔壁で密封する。
− 前記サンプル瓶をヘッドスペースサンプラーのオートサンプラーの中に入れて、固定式ヘッドスペースクロマトグラフィーの原理に従って分析する。バックフラッシュ技術を用いてDMF溶媒をフラッシュバックさせる。
【0231】
ヘッドスペース設定:
− サンプル温度: 130℃ −
圧力蓄積時間:2分
− 針温度: 135℃ −
注入時間:0.10分
− トランスファーライン温度: 150℃ −
滞留時間:0.20分
− 温度自動調節時間 20分間 −
サイクル時間:30分間
GC設定:
− カラム 2x30mの穴広毛細管GCカラム
ID 0.53mm;フィルム 1.00μm;フェーズ:100%ポリエチレングリコール
例えばHP−INNOWax(Agilentの)
− 担体気体/流れ:窒素5.0ml/分
− オーブン温度:90℃等温
− インジェクター温度:150℃
− 検出器温度:320℃(FID)
− バックフラッシュをオン:9.0分間
− バックフラッシュをオフ:25.0分間
装置:
Autosystem XL/HS 40 XLヘッドスペースガスクロマトグラフ(Perkin Elmerの)
− 生じた単量体の分率を外部較正で評価する。
【0232】
焼き戻し実験の結果を第3表に要約し、そして報告したのはメタアクリル酸メチル(MMA)とスチレンの含有量のみであり、他の単量体(アクリル酸ブチルまたはアクリル酸メチル)の分率は無視できるほどである(<0.08質量%)。
【0233】
第3表
【0234】
【表5】

*比較B=99質量%のメタアクリル酸メチルと1質量%のアクリル酸ブチルを用いて作られた粘度値が約75cm/gの市販共重合体。
【0235】
第4表
【0236】
【表6】

n.d.=測定せず
3. 試験方法
報告した特性値は下記のように測定した値であった。
【0237】
液体および固体に含まれる揮発性成分を測定する方法であるガスクロマトグラフィーヘッドスペース分析を用いて、残存単量体含有量を測定した(熱可塑性プラスチックに含まれる単量体を包含)。
【0238】
Alpineエアジェットふるい分け機(モデルA 200 LS)を用いたふるい分け分析で紡糸繊維用添加剤ビードの粒径中点を測定した。
【0239】
粘度値VN(またStaudingerファンクションとしても知られる)は、当該共重合体をクロロホルムに0.5%入れることで形成させた溶液の濃度が基になった相対的粘度の変化(溶媒が基準)であり、流れ時間の測定をDIN標準51562に従ってサスペンディッドレベル(suspended level)Ubbelohde粘度計であるSchottモデルNo.53203および0cキャピラリーを用いて25℃で実施した。使用した溶媒をクロロホルムであった。
【0240】
【数9】

ここで、
t=重合体溶液の流れ時間(秒)
=溶媒の流れ時間(秒)
c=濃度(g/100ccm)
4. ペレット予備混合物の製造
市販ポリエチレンテレフタレートペレット[固有粘度IVが0.66dl/gでTiOが約0.3質量%]と実施例6の処方に従う本発明の伸び増進剤で、構成させたペレット予備混合物を下記のように製造した。
【0241】
4.1. 添加剤が10%およびPETが90%のマスターバッチのコンパウンド化
原料の調整
PETペレット:
Karl Fischer Industrieanlagen GmbH(ベルリン)の連続TPE 50−5乾燥レンジを用いて結晶化と乾燥を下記の工業的条件下で実施した:
乾燥空気温度: 160℃
乾燥空気露点: <−40℃
滞留時間: 5.5時間
BrabenderのAquatrac水分メーターを用いて乾燥中の水分含有量を繰り返し測定した。測定水分濃度は10から30ppmであった。
【0242】
伸び増進剤:
Helios Geraetebau fuer Kunststofftechnil GmbH(Rosenheim)のバッチ乾燥空気乾燥器を用いて乾燥を下記の条件下で実施した:
温度: 80℃
乾燥時間: 5時間
乾燥空気: 露点 −40℃
測定水分値は50−100ppmであった。
マスターバッチのコンパウンド化
Coperion Werner und PfleidererのZSK40同方向回転二軸押出し加工機を用いて、前記PETマトリックスの中に伸び増進剤を下記の条件下で10質量%混合した(第5表参照):
第5表
【0243】
【表7】

【0244】
そのようにして合成した溶融混合物を水浴に通した後、ストランドペレタイザーを用いてペレットにすることで、添加剤含有量が10質量%のマスターバッチペレットを形成させた。
【0245】
4.2 添加剤含有量が0.42%の即時使用可能コンパウンドの調製
4.1で得たマスターバッチペレットを混合することで即時使用可能コンパウンドを製造した。
【0246】
原料の予備乾燥
PETは前期条件と同じ条件下で乾燥させた。
【0247】
連続Karl Fischer乾燥レンジを下記の条件下で用いて、そのようなコンパウンドを形成させるに必要なマスターバッチを結晶化させおよび乾燥させた:
乾燥空気温度: 105℃
乾燥空気露点: <−40℃
乾燥器内の滞留時間: 8時間
水分含有量: <50ppm
手順
Coperion Werner & PfleidererのZSK40同方向回転二軸押出し加工機を下記の工程条件に従って用いた(第6表):
第6表
【0248】
【表8】

【0249】
そのようにしてコンパウンドにした溶融混合物を水浴に通した後、ストランドペレタイザーを用いてペレットにすることで、添加剤含有量が0.42質量%の即時使用可能ポリエチレンテレフタレート添加コンパウンドをペレット形態で形成させた。
【0250】
5. 伸び増進剤を用いた紡糸試行
実施例15−17:
下記のプログラム:
115℃に5時間
145℃に12時間
160℃に5時間
に従って、真空タンブル乾燥器を用いることで結晶化および乾燥させておいたポリエステルチップ(固有粘度IVが0.67dl/gでTiOが約0.3質量%の市販ポリエチレンテレフタレート)をBarmag AG(Remscheid、ドイツ)の6E24D−LTD単軸押出し加工機に供給した。前記ポリエステルのチップに、前以て80℃の真空乾燥キャビネット内で、6時間乾燥させておいた個々の伸び増進剤を質量計量で0.6質量%(重合体総量を基準)の濃度で加えて押出し加工機の取り込み口に入れた。前記押出し加工機の中で、前記2種類の重合体は288℃で溶融して、計量用ギアポンプによってSulzer AG(チューリッヒ、スイス)の16 SMX型固定式混合要素を有する生成物ラインを通って約220バールの圧力下64.8g/分の処理量で紡糸口金ダイスパックに送られた。前記紡糸口金ダイスパックには(溶融物が流れる方向で見て)多数のフィルター[1x650メッシュ/cm、5x1600メッシュ/cm、60x16800メッシュ/cm、1x40000メッシュ/cm、10μmのフローフィルター(縁がアルミニウムのあや織りダッチ織り)、3x16800メッシュ/cm、1x縁付き支持用シーブ(24メッシュ)、自由面積が17%の分配板、1x16800メッシュ/cm、1x1600メッシュ/cm]および直径が80mmの紡糸口金ダイスプレート(これには0.50mmの毛細管長を有する0.25mmの毛細管穴が36個備わっている)が含まれていた。前記重合体の溶融物が、押出し加工機出口から紡糸口金ダイスプレート出口に至るまでの平均滞留時間は約7.5分間であった。前記ダイスプレートから出た溶融状態のフィラメントは、穴開き管の中に自己吸引される周囲空気で冷却された。その冷却されたフィラメントは、前記ダイスプレートから1800mm離れた地点に位置させたスロット形状の紡糸仕上げ用ストーンで束になり、それらに92%の水および8%の紡糸仕上げ用組成物[例えばGoulston Technologies,INC.(Monroe/米国)のLurol PT L220]で構成させた乳液を用いた紡糸仕上げを紡糸仕上げ剤付加%が0.35%になるように受けさせた。その後、空気圧力が2.5バールのエアジェット(Heberlein PolyJet SP ECO 25−E−H132/CN)を用いてフィラメントシートを絡ませた後、Barmag AG(Remscheid、ドイツ)のCW8巻き取り組み立てで巻き取り速度が4500m/分で糸張力が25から27gになるように巻き取ることで約145dtexの線形密度がもたらされた。
【0251】
この紡糸試行の結果および用いた個々の伸び増進剤を第6表に要約する。
【0252】
第6表
【0253】
【表9】

【0254】
伸び値および強度値はあらゆる実施例で満足される範囲内である。注目すべきは、実施例18および20の場合の伸びおよび強度値は、実施例15および19で添加剤を直接添加した場合と比較して、先行するコンパウンド化段階で追加的熱応力を受けたにも拘らず、ほとんど変わらない。
【0255】
実施例17(比較)では落下する末端部が生じる傾向が顕著であることを観察したが、これはスレッドの張力が望ましくなく高いことによる。あらゆる試行において、巻き取ったPOY繊維に含まれるメタアクリル酸メチルの含有量の方が延伸を受けていない押出し加工廃棄物の中のそれよりも約30%から40%低いであろう、と言うのは、メタアクリル酸メチルは冷却工程中に繊維から煙として出続けるからである。既に製造した繊維の中に入っているメタアクリル酸メチルの含有量も同様に本発明の実施例の方が比較実施例よりも顕著に低い。それらが一緒になってメタアクリル酸メチルが望ましくなく排出される量が減少する。このような効果は、溶融状態の混合物が有意により長い距離を移動する大規模な産業用プラントの場合の方が極めて重要である。本発明の実施例の場合の摩擦係数の方が比較実施例17の場合のそれよりも高く、それによって巻き取り挙動が向上した、と言うのは、糸がそれから落ちる傾向が低く、従ってスレッドの張力が高い望まれないスレッドが生じる度合が低いからである。そのことから、フラットヤーンがいくらか落下するのを防止しようとして、高価な特殊な施設を用いる必要も巻き取り装置技術を用いる必要も実質的にないか、または紡糸装置が同じ場合には、従来技術に比べて高い巻き取り速度で良好なパッケージ構築を達成することが可能になる。
【0256】
実施例18(本発明)
他の設定は変えないで、ポイント4.1下に記述したマスターバッチ(合成実施例6に従う添加剤を10%とPETを90%用いて構成させたプレミックス)[前以て160℃のタンブル乾燥器の中で6時間乾燥させておいた]を押出し加工機の取り込み口に質量計量で入れることで、前記ポリエステルチップに6.0質量%の濃度(重合体総量を基準)で加えた。乾燥後の前記マスターバッチに含まれるMMAの測定含有量は10ppm未満であった、即ち記述した乾燥条件を用いると初期MMA含有量が非常に有効に低くなった。本添加重合体の劣化は明らかに起こらなかった。乾燥を本添加重合体のガラス転移点以下、即ち約115℃以下で実施すると、前記マスターバッチに含まれるメタアクリル酸メチル含有量が顕著により高くなる可能性がある。このような紡糸試行の結果を第5表に要約する。本伸び増進剤をコンパウンドにした後でさえ、高い効率と良好な紡糸性は変わらないままであることを観察し、このことは、本伸び増進剤が良好な熱安定性を有することを示している。押出し加工廃棄物に含まれるMMA含有量、従って繊維の中に含まれるMMA含有量は非常に低いことから、紡糸プラントの中に放出される量は非常に低い。
【0257】
実施例19および20
紡糸パック当たりの重合体処理量を59g/分にまで下げそして巻き上げ速度も4100m/分にまで下げた。実施例19では、実施例6に従う添加剤を固体として0.42質量%の濃度で添加した。実施例20では、添加段階を設ける必要がないように、実施例6に従う添加剤を改質ポリエチレンテレフタレートチップの中に0.42質量%の濃度で既に存在させておく以外は同じ条件下でそれを用いた。注目すべきことに、繊維の摩擦係数が実施例19のそれに比べて更に高くなった。本発明による修飾を受けさせたポリエチレンテレフタレートチップを用いると、添加剤用の混合装置も計量装置も備わっていない通常の押出し加工機紡糸施設でも、本添加剤を紡糸工程で用いることが可能になる。
【0258】
測定方法:
1:1の1,2−ジクロロベンゼン/フェノールを40mlとPETを0.2g用いて構成させた溶液が示す固有粘度を25℃で測定した。
【0259】
破壊時伸びおよび破壊時強度をWO 99/07927に記述されているようにして測定した。
【0260】
PETと伸び増進剤で構成させた混合物のMMA含有量を押出し加工後にヘッドスペースガスクロマトグラフィーで測定した(約3gのサンプルを20mlのジメチルホルムアミドに入れて室温で3日)。
【0261】
繊維/繊維の摩擦係数をRothshild(チューリッヒ、スイス)のRotshild Fメーターを用いたコンピューター支援摩擦測定を用いて下記の測定条件(第7表)下で測定した。
【0262】
第7表
雰囲気の条件:22℃、65%の相対湿度
測定配置:繊維/繊維の動的
ラップ角:5x360゜(改質ヤーン路)
速度:50m/分
プレテンション:5cN
測定時間:2分
[Diolen Industrial Fibers GmbH(Obernburg、ドイツ)の測定指示]
本伸び増進剤に含まれる滑剤の残渣または開始剤に由来する生成物をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0263】
実施例21
種々の伸び増進剤を用いた銀鋼試験
この目的で、個々の伸び増進剤を2.5g計量して試験管(L=160mm、D=16mm、壁厚:1mm)の中に入れた後、この重合体の中に銀鋼ロッド(材料:DIN175に従うWN1.2210、粉砕および研磨した、L=130mm、D=5mm)を浸漬した。前記サンプルおよび前記ロッドが入っている試験管を300℃の熱いALブロックの中に3時間入れた。その後、クロロホルムを用いて前記ロッドから重合体断片を剥がして、鋼表面を黒色残留物に関して目で検査した。
【0264】
熱安定化を受けさせておいた本伸び増進剤が付着物を生じる度合の方が低く、特にそれの製造を全く滑剤(ステアリン酸およびパルミチン酸)の添加無しに行った時に低いことを確認した。
【0265】
これに関連して、紡糸を行う前に本伸び増進剤に脱気を受けさせておく方が有利であることが分かった。そのような脱気段階によって揮発性単量体ばかりでなく、また高沸点の付随物および分解生成物も除去される(第8表)。
第8表
【0266】
【表10】

*: ドコサン含有量
**: ラウリン酸ウンデシル含有量
***: パー−3−エチルヘキサン酸t−ブチル分解生成物の含有量
****: 脱気用ZSK70二軸押出し加工機、300kg/時、真空度が約850ミリバールの脱気ゾーンが1つ、245−270℃のシリンダー温度、210rpmの速度
滑剤成分であるステアリン酸およびパルミチン酸および開始剤由来生成物であるn−ドコサンおよびラウリン酸ウンデシルを測定する方法
ミリスチン酸を内部標準として既知量で入れておいたジクロロメタンに当該重合体を溶解させた後、n−ヘキサンを用いて沈澱を起こさせた。濾過後、その沈澱した重合体の中に含まれている被分析物を実質的に排除することができるように、濾過残留物に関して溶解と沈澱操作を繰り返した。その濾別した重合体を少量のn−ヘプタンで繰り返し洗浄した。ロータリーエバポレーターを用いて前記沈澱濾液に濃縮乾固を受けさせた後、限定量のジクロロメタンで取り上げた。50mの非極性ポリ(ジメチルシロキサン)カラムが備わっているキャピラリーガスクロマトグラフィーを用い、内部標準方法に従う較正を基にして、それに入っているステアリン酸、パルミチン酸およびn−ドコサンを量化した。ラウリン酸ウンデシルの含有量に関しては、高純度の物質を入手することができなかったことから、n−ドコサン係数を用いた割り当てで近似値を求めた。
パー−2−エチルヘキサン酸t−ブチルの分解生成物を測定する方法:
当該重合体がジクロロメタンに6%入っている溶液を調製した後、15mの非極性ポリジメチルシロキサンキャピラリーカラムが備わっているガスクロに直接かけた。パー−2−エチルヘキサン酸t−ブチルを標的にした分解でそれの分解生成物が示す保持時間を前以て測定しておいたが、この開始剤の分解生成物は全く検出されなかった。分解生成物であると思われるそれと同様な化学構造を有する物質から類推した推定検出限界は0.01質量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーラジカル重合されるビニル系単量体から形成された非晶質で熱可塑的に加工可能な伸び増進剤であるが、前記伸び増進剤と相溶しない溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成繊維を製造する時に用いるに適する伸び増進剤であって、熱暴露を290℃のアルゴン下で30分間受けさせた後にガスクロマトグラフィーヘッドスペース方法を用いて検出可能な分解生成物の総含有量が6質量%以下であるように抗酸化物質の添加による熱安定化を受けていることを特徴とする伸び増進剤。
【請求項2】
アクリル酸C−からC12−アルキルを共重合用単量体として含有しおよび/またはアルキルが直鎖もしくは分枝C−C18炭化水素基に相当する3−メルカプトプロピオン酸アルキルである分子量調節剤の存在下で重合させたものであることを特徴とする請求項1記載の伸び増進剤。
【請求項3】
抗酸化物質を0.05から5質量%の量で含有することを特徴とする請求項1または2記載の伸び増進剤。
【請求項4】
前記抗酸化物質が3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルでありおよび/または立体障害フェノールおよび/または二価チオ化合物および/または三価リン化合物および/または立体障害ピペリジン誘導体の種類から選択されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項5】
前記抗酸化物質が重合前または重合中の前記単量体混合物に添加されたことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項6】
アクリル酸C−からC12−アルキルが熱安定化用の共重合用単量体として該伸び増進剤の総質量を基準にして1.5から15質量%の量で存在することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項7】
アクリル酸n−ブチルが熱安定化用の共重合用単量体として存在することを特徴とする請求項6記載の伸び増進剤。
【請求項8】
一般式I
【化1】

[式中、RおよびRは、同一もしくは異なり、各々独立して、任意の原子C、H、O、S、Pおよびハロゲン原子で構成されている置換基であり、RとRの分子量の合計は少なくとも40で多くて400ダルトンである]
で表される単量体を重合させたものであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項9】
熱安定化を受けたポリメタアクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項10】
下記の単量体単位:
A=アクリル酸、メタアクリル酸またはCH=CR−COOR'[ここで、Rは水素原子またはCH基であり、そしてR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]と、
B=スチレンまたはC1−3−アルキル置換スチレンと、
X=A以外のアクリル酸C−からC12−アルキル、
から作られていて60から98質量%のAと0から40質量%のBと0から15質量%のX(AとBとXの合計=100質量%)で構成されている共重合体であることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項11】
メタアクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルの共重合体であることを特徴とする請求項10記載の伸び増進剤。
【請求項12】
メタアクリル酸メチルとスチレンとアクリル酸n−ブチルの共重合体であることを特徴とする請求項10記載の伸び増進剤。
【請求項13】
下記のE、F、GおよびHを一緒にした合計が100質量%の重合性単量体に相当するように下記の単量体単位の中の少なくとも3種類:
E=アクリル酸、メタアクリル酸および一般式CH=CR−COOR'[ここで、Rは水素原子またはCH基であり、そしてR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]で表される化合物から成る群から選択した単量体を30から99質量%と、場合により
F=スチレンおよびC1−3−アルキル置換スチレンから成る群から選択した単量体を0から50質量%と、場合により
G=式II、IIIおよびIV
【化2】

[式中、R、RおよびRは、各々、水素原子またはC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]
で表される化合物から成る化合物群から選択した単量体を0から50質量%と、場合により
H=Eおよび/またはFおよび/またはGと一緒に共重合し得るα−メチルスチレン、酢酸ビニル、E以外のアクリル酸エステル、E以外のメタアクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテルおよびジエンから成る群の1種以上のエチレン系不飽和単量体を0から50質量%、
からなる共重合体であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項14】
メタアクリル酸メチルとスチレンとN−シクロヘキシルマレイミドの三元重合体であることを特徴とする請求項13記載の伸び増進剤。
【請求項15】
下記のE、F、G、HおよびXを一緒にした合計が100質量%の重合性単量体に相当するように下記の単量体単位の中の少なくとも4種類:
E=アクリル酸、メタアクリル酸および一般式CH=CR−COOR'[ここで、Rは水素原子またはCH基であり、そしてR’はC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]で表される化合物から成る群から選択した単量体を30から99質量%と、場合により
F=スチレンおよびC1−3−アルキル置換スチレンから成る群から選択した単量体を0から50質量%と、
G=式II、IIIおよびIV
【化3】

[式中、R、RおよびRは、各々、水素原子またはC1−15−アルキル基またはC5−12−シクロアルキル基またはC6−14−アリール基である]
で表される化合物から成る化合物群から選択した単量体を0から50質量%と、場合により
H=Eおよび/またはFおよび/またはGと一緒に共重合し得るα−メチルスチレン、酢酸ビニル、E以外のアクリル酸エステル、E以外のメタアクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ハロゲン置換スチレン、ビニルエーテル、イソプロペニルエーテルおよびジエンから成る群の1種以上のエチレン系不飽和単量体を0から50質量%と、
X=E以外のアクリル酸C−からC12−アルキルを1.5から15質量%、
からなる共重合体であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項16】
メタアクリル酸メチル、N−シクロヘキシルマレイミドおよびアクリル酸n−ブチルの共重合体であることを特徴とする請求項15記載の伸び増進剤。
【請求項17】
メタアクリル酸メチル、スチレンとN−シクロヘキシルマレイミドおよびアクリル酸n−ブチルの共重合体であることを特徴とする請求項15記載の伸び増進剤。
【請求項18】
同時もしくは逐次的複数回の開始で重合させた伸び増進剤であることを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項記載の伸び増進剤と溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体で本質的に構成されているプラスチックペレット。
【請求項20】
前記繊維形成マトリックス重合体がポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミドまたはポリプロピレンであることを特徴とする請求項19記載のプラスチックペレット。
【請求項21】
前記溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートでありそして選択的に共重合体を15モル%以下および/または多官能分枝成分を0.5質量%以下の量で含有していてもよいことを特徴とする請求項20記載のプラスチックペレット。
【請求項22】
請求項19から21記載のプラスチックペレットを製造する方法であって、ペレット化を実施するに先立って、前記伸び増進剤を前記マトリックス重合体の溶融物の中に混合する前または後にそれを溶融状態で脱気ゾーンの中に通して移送しそしてその中で前記溶融物に真空をかけることで脱気を受けさせておくことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22による製造可能なプラスチックペレットであって、このペレットが含有する前記伸び増進剤の熱分解に由来する単量体の量が前記伸び増進剤の質量分率を基準にして0.8質量%未満であることを特徴とするプラスチックペレット。
【請求項24】
請求項1から18までのいずれか1項記載の伸び増進剤の使用であって、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミドまたはポリプロピレンである溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成繊維を製造する時に添加剤として用いる使用。
【請求項25】
前記溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートでありおよび選択的に共重合体を15モル%以下および/または多官能分枝成分を0.5質量%以下の量で含有していてもよいことを特徴とする請求項24記載の使用。
【請求項26】
溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体と伸び増進剤から形成させた重合体混合物から合成繊維を溶融紡糸工程で製造する方法であって、請求項1から18までのいずれか1項記載の少なくとも1種の伸び増進剤を前記繊維形成マトリックス重合体に前記伸び増進剤と繊維形成マトリックス重合体の総質量を基準にして0.05から5質量%の量で添加することを特徴とする方法。
【請求項27】
合成繊維を製造する目的で前記マトリックス重合体と前記伸び増進剤を原料として請求項19から21までのいずれか1項記載のペレットの形態で製造工程に導入することを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】
溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルへの前記伸び増進剤の添加を重縮合プラントの最終段階でポリエステルを製造している間に行うことを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項29】
溶融紡糸可能繊維形成ポリエステルへの前記伸び増進剤の添加を前記ポリエステル溶融物を重縮合プラントの最終段階で排出させた後に行ないそしてそれを直接紡糸工程に移送するが、この場合、前記伸び増進剤をサイドストリーム押出し加工機で溶融させそしてその溶融させた伸び増進剤を脱気ゾーンの中に通して移送しそしてその中で前記溶融物に真空をかけることで脱気を受けさせた後、その脱気を受けさせた溶融物を大歯車定量ポンプで計量して前記ポリエステル溶融物の流れの中に入り込ませそして固定式混合領域でそれと一緒に混合することを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項30】
紡糸取り出し速度を少なくとも2500m/分に調整することを特徴とする請求項26から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記繊維形成マトリックス重合体が熱可塑的に加工可能なポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートでありそして選択的に共重合体を15モル%以下および/または多官能分枝成分を0.5質量%以下の量で含有していてもよいことを特徴とする請求項26から30までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
請求項26から31までのいずれか1項記載の方法で入手可能な合成繊維。
【請求項33】
ポリエステルと請求項1から18までのいずれか1項記載の伸び増進剤から形成させた重合体混合物で本質的に構成されている請求項32記載の合成繊維であって、この繊維が含有する前記伸び増進剤の熱分解に由来する単量体の量が40ppm未満であることを特徴とする合成繊維。
【請求項34】
請求項32または33記載の合成繊維の使用またはさらなる加工であって、延伸または延伸−微細構造化工程における使用またはさらなる加工。
【請求項35】
請求項32または33記載の合成繊維の使用であって、ステープル繊維を製造するための使用。
【請求項36】
請求項32または33記載の合成繊維の使用であって、不織物を製造するための使用。
【請求項37】
請求項32または33記載の合成繊維の使用であって、産業用糸を製造するための使用。
【請求項38】
合成繊維を製造するための請求項19から21までのいずれか1項記載ペレットの使用またはさらなる加工であって、前記ペレットに熱によるコンディショニングを前記伸び増進剤のガラス転移温度より少なくとも10℃高い温度で受けさせることによって前記ペレットの中の前記伸び増進剤の熱分解に由来する単量体の濃度を前記ペレットを紡糸用押出し加工機の中で溶融させる前にその中に存在する前記伸び増進剤の質量分率を基準にして0.3質量%未満にまで低下させる使用またはさらなる加工。
【請求項39】
前記ペレットに熱によるコンディショニングを真空、乾燥空気または不活性ガス雰囲気下で少なくとも4時間受けさせることを特徴とする請求項38記載の使用。
【請求項40】
滑性用添加剤に由来する残渣の含有量が0.05質量%以下でありおよび/または開始剤から生じた生成物に由来する残渣の含有量が0.06質量%以下であることを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項記載の伸び増進剤。
【請求項41】
フリーラジカル重合されるビニル系単量体から形成される非晶質で熱可塑的に加工可能な伸び増進剤であるが、前記伸び増進剤と相溶しない溶融紡糸可能繊維形成マトリックス重合体から合成繊維を製造する時に用いるに適する伸び増進剤であって、滑性用添加剤に由来する残渣の含有量が0.05質量%以下でありおよび/または開始剤から生じた生成物に由来する残渣の含有量が0.06質量%以下であることを特徴とする伸び増進剤。

【公表番号】特表2006−524756(P2006−524756A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505015(P2006−505015)
【出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003645
【国際公開番号】WO2004/097083
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】