説明

溶解性IL−17RC変異体及びそれらの使用

本発明は、新規の溶解性IL-17RC変異体及びその治療的用途、特に炎症性または自己免疫性障害或いは神経系疾患を治療または予防するための治療的用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-17RC溶解性変異体ポリペプチド、sIL-17RC、及びそれらをコードする核酸分子に関する。さらに本発明は、炎症性、自己免疫性または神経系障害の予防及び/または治療おける新規のsIL-17RC変異体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IL-17Aは、活性化T-リンパ球によって分泌される主要な炎症性サイトカインであり、且つ樹立されたIL-17サイトカインファミリーのメンバーである。他のファミリーのメンバーは、IL-17B(コンドロロイキン(chondroleukin)としても公知である)、IL-17C、IL-17E及びIL-17Fである。IL-17ファミリーメンバーの受容体は、IL-17R、IL-17RB(IL-17RH1)、IL-17RC(IL-17RL)、IL-17RD(hSEF)及びIL-17REである。しかしながらこれらの多くの受容体の特異性は未だ確立されておらず、且つそれらの機能またはシグナル伝達経路についてはほとんど知られていない。IL-17サイトカインファミリー及び受容体は、Moseley等によって検討されてきた(Moseley等、2003)。
【0003】
もともとIL-17R受容体として発表されたIL-17Rは、タイプI 膜貫通性タンパク質であり、293個のアミノ酸の細胞外ドメイン、21個のアミノ酸の膜貫通性ドメイン及び525個のアミノ酸長の細胞質尾部から成る(Yao等、1997)。そのmRNAは、肺、腎臓、肝臓、及び脾臓、並びにラット及びマウスから単離された繊維芽細胞、上皮細胞、中皮細胞及び多様な骨髄細胞中に広範囲に発現することが示された(Yao等、1997)。IL-17Fは、比較的低い親和性でIL-17Aに結合する(Yao等、1997)。IL-17Rは、IL-17Aにいくらかの相同性を有するので(タンパク質レベルで58%)、シグナル伝達のためにIL-17Rが使用され得る(Hymowitz等、2001)。
【0004】
IL-17RB(IL-17RH1)は、ヒト腎臓、膵臓、肝臓、脳及び腸に発現し、且つIL-17B及びIL-17Eの受容体として働く(Lee等、2001;Shi等、2000)。IL-17RBの選択的スプライシングは、分泌溶解性タンパク質をもたらす(Tian等、2000)。
【0005】
Haudenschild等(Haudenschild等、2002)は、IL-17-RL(受容体様)と名付けられたIL-17Rに制限された相同性を有するシグナル伝達膜貫通性タンパク質をクローン化し、且つ特徴化した。この受容体は、WO01/04304においてIL-17RCまたはZcytor14としても知られている。19個のエクソンから転写されたIL-17RC(IL-17RL)の11個のスプライス変異体も報告されている。RNAの選択的スプライシングは、膜貫通性タンパク質よりもむしろ翻訳物の分泌をもたらす膜貫通性ドメインのC-末端の前にフレームシフト及び停止コドンを導入することが示されている。これらの発見は、WO 02/38764にも開示されている。
【0006】
溶解性IL-17RB及びIL-17RCおとり受容体の存在、並びに多様な受容体アイソフォームを生み出すIL-17-RCのmRNAスプライシングの組織特異的調節は、IL-17経路の調節が複雑であり、且つしっかりと調節されていることを暗示する(Moseley等、2003)。
【0007】
IL-17RDは、選択的スプライシングも示す(Moseley等、2003)。最終的にIL-17REは、ヒト脳、前立腺及び膵臓において発現する。IL-17RC、IL-17RD及びIL-17REに対するリガンドは、不確定のままである。
【0008】
IL-17ファミリーメンバーは、炎症性疾患、自己免疫性疾患及び癌において活性的な役割を果たす(KoIIs及びLinden、2004;Moseley等、2003によって検討された)。IL-17は、関節炎の発症に寄与する(Lubberts、2003)。抗原誘導関節炎の再活性化の間に内因性IL-17を中和することは、関節の炎症と骨侵食を予防することを示した(Koenders等、2005)。
【0009】
他のIL-17関連分子及びそれらの受容体のリウマチ性関節炎(RA)発症への寄与は、Hwang SY及びKim HYによって評価された。彼らのデータは、IL-17ホモログがRA関節炎の治療における免疫修飾のための標的として見なされるべきことも示唆する(Hwang及びKim、2005)。
【0010】
IL-17ファミリーメンバーは、腫瘍の免疫原性、宿主の免疫状態、及びIL-17ファミリーメンバーの血管形成活性に依存して抗腫瘍促進効果または抗腫瘍効果、その両方を発揮し得る。
【0011】
IL-17RCは、骨関節炎(OA)軟骨由来の発現クローニングcDNAライブラリーから単離されたので、OAにおいて役割を果たすことができる。機能的アッセイスクリーニング方法を用いて、軟骨細胞クラスタ形成の導入、OAに関連した表現型が示された(Quintavalla等、2005)。本明細書において示したような溶解性sIL-17RCアイソフォームは、当該疾患においてIL-17RC効果を拮抗し得る。
【0012】
さらに溶解性IL-17RCは、間質におけるIL-17RCの分布レベルが癌の悪性度に相関する前立腺癌等の癌の進行において役割を有し得る。したがってIL-17RCは、前立腺癌の悪性度を決定する診断マーカーであると提言された(Haudenshild等、2002;WO 02/38764)。
【0013】
WO 2005/051422は、治療的に有効量のIL-17活性阻害剤を投与することを含む多発性硬化症(MS)を治療及び/または予防するための方法を提供する。
【0014】
さらにIL-17サイトカイン、特にIL-17B(コンドロロイキン(chondroleukin))に対するアンタゴニストは、骨及び軟骨の異化分解に関与する。したがってIL-17Bに対するIL-17RC結合が溶解性または固定化IL-17RCを用いてコンドロロイキン(chondroleukin)活性を阻害することによって、骨及び軟骨の疾患または損傷を軽減または改善する方法を提供することが提言された(WO 02/38764)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがってサイトカイン類似物を含む新規の溶解性タンパク質及びそれらの受容体の発見及び開発は、広範囲の炎症性、自己免疫性及び神経系状態に関する新規の治療法に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
本発明は、配列番号1の配列を有する新規の溶解性IL-17RC変異体ポリペプチド、当該新規のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びそれらの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、IL-17RC受容体(sIL-17RC)の新規の溶解性アイソフォームを発表する。
【0018】
したがって本発明の第一の観点は、配列番号1のアミノ酸配列を含む新規の溶解性IL-17RC変異体ポリペプチドに関する。
【0019】
本明細書において使用される用語"溶解性IL-17RC変異体"、"sIL-17RC"または"IL-17RC_122"は、ヒトIL-17RC受容体の溶解性/分泌形態に関する。sIL-17RCのアミノ酸配列は、添付の配列表の配列番号1として本明細書において報告されている。
【0020】
本発明のポリペプチドは、スプライスアウトされるエクソン7及び14を除き、IL-17RC受容体の大部分の報告された細胞外ドメイン(NCBIタンパク質エントリーNP_703190:インターロイキン17受容体Cアイソフォーム2前駆体)を含み、報告されたIL-17RC膜貫通性ドメインの位置の前にフレームシフト及び停止コドンを導入する非膜全域C末端のエクソン15で終結する。
【0021】
本発明の好適な態様では、sIL-17RCは、血液脳関門(BBB)の通過を促進する担体分子、ペプチドまたはタンパク質と融合される。これはCNSが疾患に関与する場合における作用部位への分子の適切なターゲッティングのために働く。BBBを介する薬物送達の様式は、浸透手段、またはブラジキニン等の血管作用性物質の生物学的使用のいずれかによるBBBの中断(disruption)を必要とする。BBBを通過させるための他の戦略は、グルコース及びアミノ酸担体等の担体を介した輸送;インスリンまたはトランスフェリンのための受容体を介したトランスサイトーシス;及びp-糖タンパク質等の活性排出トランスポーター;ペネトラチンというアンテナペディアホメオプロテインの第三へリックスドメインから由来する16量体のペプチド(pAntp)、及びその誘導体を含む内因性輸送システムの使用を必要とし得る。BBBの薬物送達のための隠れた戦略は、脳内移植をさらに含む。
【0022】
本発明にかかるタンパク質はグリコシル化であっても非グリコシル化であってもよく、それらは体液等の天然源から由来してよく、またはそれらは好適には組み換え技術によって生産され得る。組み換え体発現は、大腸菌(E.coli)等の原核細胞発現系において、または昆虫細胞等の真核細胞において、及び好適にはCHO-細胞またはHEK-細胞等の哺乳動物発現系において実施され得る。
【0023】
本明細書において使用される"官能性誘導体"とは、sIL-17RCの誘導体、並びにそれらの突然変異タンパク質及び融合タンパク質を網羅する。官能性誘導体は、残基上の側鎖として発生する官能基、またはN-もしくはC-末端基から当業者に公知の手段によって調製でき、且つそれらが医薬的に許容され得るままである限り(すなわちそれらが実質的にsIL-17RCと同様の活性であるタンパク質の活性を壊さず、且つそれを含む組成物に毒性を与えない限り)本発明に含まれる。
【0024】
それらの誘導体は、例えば体液中でのsIL-17RCの抗原部位をマスクし、且つ滞留を延長し得るポリエチレングリコール側鎖を含む。他の誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第一もしくは第二アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部位により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN-アシル誘導体(例えばアルカノイルまたは炭素環式アロイル基)、或いはアシル部位により形成される遊離ヒドロキシル基のO-アシル誘導体(例えばセリルまたはスレオニル残基の誘導体)を含む。
【0025】
したがって本発明の好適な態様における溶解性IL-17RC変異体は、ペグ化である。
【0026】
sIL-17RCの官能性誘導体は、安定性、半減期、バイオアベイラビリティー、ヒト体内での耐性、または免疫原性等のタンパク質の特性を改善するためにポリマーと接合され得る。この目的を達成するために、sIL-17RCは、例えばポリエチレングリコール(PEG)と連結され得る。PEG化は、例えばWO 92/13095に発表された公知の方法によって実施され得る。
【0027】
本発明にかかるタンパク質は、例えば体液中で延長された滞留時間を有する他のタンパク質、ポリペプチド等と融合され得る。したがって本発明のさらに好適な態様では、sIL-17RCは、例えば免疫グロブリンまたはそれらのフラグメントに融合され得る。融合は直接的であってよく、または1〜3個の長さのアミノ酸残基よりも短くても、もしくはそれよりも長い例えば13個の長さのアミノ酸残基であり得る短いリンカーペプチドを経由してもよい。前記リンカーは、例えば配列E-F-M(Glu-Phe-Met)のトリペプチド、または13個のアミノ酸リンカー配列(例えばsIL-17RC配列と免疫グロブリン配列との間に導入されたGlu-Phe-Gly-Ala-Gly-Leu-VaILeu-Gly-Gly-Gln-Phe-Metを含む)であり得る。得られた融合タンパク質は、体液内での延長された滞留時間(半減期)、または増加した特異的活性、増加した発現レベル等の改良された特質を有する。さらにIg融合は、当該融合タンパク質の精製を促進し得る。
【0028】
さらに他の好適な態様では、sIL-17RCは、Ig分子の定常領域に融合される。好適にはsIL-17RCは、例えばヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインのような重鎖領域に融合される。さらにアイソフォームlgG2もしくはlgG4、または例えばIgMのような他のIg分類等の他のIg分子のアイソフォームは、本発明による融合タンパク質の産生に適している。融合タンパク質は、単量体または多量体、ヘテロ-またはホモ多量体であり得る。融合タンパク質の免疫グロブリン部分は、補体結合もしくは補体カスケードを活性化せず、またはFc-受容体に結合しない方法でさらに修飾され得る。
【0029】
さらにsIL-17RCの融合タンパク質は、形成を許容する他のタンパク質または二量体、三量体等から単離されたドメインを融合することによって調製され得る。本発明のポリペプチドの多量体化を許容するタンパク質配列の例は、hCG(WO 97/30161)、コラーゲンX(WO 04/33486)、C4BP(WO 04/20639)、Erbタンパク質(WO 98/02540)、またはコイル化されたコイルペプチド(WO 01/00814)等のタンパク質から単離されたドメインである。
【0030】
本発明の他の態様では、溶解性IL-17RC変異体ポリペプチドは、核酸分子、好適には添付の配列表の配列番号2のcDNAを含む核酸分子でコードされる。
【0031】
本発明のさらなる態様は、溶解性IL-17RC変異体をコードする核酸分子を含んで成るベクターに関する。
【0032】
用語"ベクター"とは、宿主細胞により外因性DNAを複製及び/または適切に発現させるべき、外因性DNAを当該宿主細胞に移動させるために有用である任意の外因性DNAまたはRNAのキャリアを言い、例えばプラスミド、発現ベクター、ウィルス性ベクター等を言う。
【0033】
発現ベクター配列は当業界において周知であり、それらは注目の遺伝子の発現を供するさらなる要素を含んで成る。それらはプロモーター及びエンハンサー配列、選択マーカー配列、複製開始点等の調節配列を含み得る。
【0034】
遺伝子治療のアプローチは、疾患を治療及び/または予防するためにも使用され得る。好都合にはsIL-17RCの発現は、in situであろう。
【0035】
好適な態様では、発現ベクターは、レンチウィルス由来ベクターである。レンチウィルスベクターは、遺伝子の移動、特にCNS中への移動において非常に有用であることが示されている。アデノウィルス由来ベクター等の他の良好に確立されたウィルスベクターも本発明に従い使用され得る。
【0036】
標的化ベクターは、血液脳関門を介するsIL-17RCの通過を増強させるために使用され得る。かかるベクターは、例えばトランスフェリン受容体または他の内皮輸送機構を標的にし得る。
【0037】
sIL-17RCの発現が正常には存在しない細胞におけるsIL-17RCの内因性の生産を誘導及び/または増強するため、或いは十分でない量のsIL-17RCを発現するためのベクターの使用も本発明において意図されている。当該ベクターは、sIL-17RCを発現することが所望される細胞において有効な調節配列を含み得る。かかる調節配列は、例えばプロモーターまたはエンハンサーであり得る。その後、当該調節配列は相同性組み換えによってゲノムの適切な遺伝子座に導入され、それによって発現の誘導または増強が要求される遺伝子に調節配列が作用可能式に連結される。当該技術は一般に"内因性遺伝子活性化"(EGA)と言われ、例えばWO 91/09955に発表されている。
【0038】
本発明の好適な態様では、発現ベクターは筋肉注射によって投与され得る。
【0039】
さらに本発明は、本発明のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞に関する。CHO、BHK、HEK293或いは他の不死化及び/または形質転換細胞に例示される植物及び動物細胞を含む多種多様な真核生物由来の初代または樹立細胞株等の多くの宿主細胞は、本発明に適している。
【0040】
他の態様では本発明は、溶解性IL-17RC変異体ポリペプチドの生産方法に関し、当該方法は本発明にかかる少なくとも1種のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を培養するステップを含んで成る。
【0041】
さらに好適な態様では本方法は、宿主細胞から発現タンパク質を単離するステップをさらに含んで成る。このステップは、分泌タンパク質を細胞培養上清から単純に単離するために特に都合がよく、且つ容易に実施される。しかしながらこのステップは、細胞膜、または細胞内区画からポリペプチドを単離するためにも同様に適用される。本方法は、タンパク質を精製するためのステップもさらに含んで成る。
【0042】
またさらに好適な態様では、精製タンパク質を医薬組成物に製剤化するステップをさらに含んで成る。
【0043】
さらに本発明は、本発明の溶解性IL-17RCと特異的に相互作用する抗体に関し、当該抗体は、好適にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0044】
モノクローナル抗体は、同種の抗体集団を有する抗体組成物である。当該用語は抗体の種または起源に関して限定されない。当該用語は、全部の免疫グロブリン及び単鎖抗体を包含する。一方、ポリクローナル抗体は、多様な細胞株から由来し、且つ多様なエピトープに特異性を有する抗体である。
【0045】
ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の作製方法は、当業界において公知である。ポリクローナル抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、トリ、またはヤギ等の適切な動物を、抗原をコードする遺伝子で形質転換した幹細胞等の注目の抗原により免疫化することによって作製される。免疫原性を増強するためには、免疫化前に抗原を担体に連結させることができる。適切な担体は、典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体(油滴またはリポソーム等)、及び不活性ウィルス粒子等の大きな、ゆっくり代謝される巨大分子である。かかる担体は、通常の当業者に周知である。さらに抗原は、それらの免疫原性を増強するために、ジフテリア、破傷風、コレラ等由来のトキソイドといった細菌性トキソイドに接合され得る。抗体は、当業界において公知の方法を用いて、in vitro免疫化によっても作製され得る。ポリクローナル抗血清は、後に免疫化動物から得られる。
【0046】
モノクローナル抗体は、一般にKohler及びMilsteinの方法(Kohler及びMilstein、1975)、またはそれらの改変を用いて調製される。典型的にマウスまたはラットは、上記のように免疫化される。しかしながら動物から血を出して血清を抽出するよりもむしろ、脾臓(及び任意にいくつかの大きなリンパ節)が取り除かれ、そして単一細胞に解離される。所望されるならば、脾臓細胞は、(非特異的接着細胞を除去した後に) 細胞懸濁物を、抗原を有するプレートまたは抗原で覆ったウェルに適用することによって検査され得る。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB-細胞はプレートに結合するだろうし、また残りの懸濁物で洗い流されない。得られたB-細胞、または全ての解離脾臓細胞は、後に骨髄腫細胞との融合を誘導され、ハイブリドーマを形成し、そして選択培地(例えばヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン(HAT)培地)中で培養される。得られたハイブリドーマは限界希釈法によってプレート化され、そして免疫化抗原に特異的に結合する(且つ 無関係な抗原には結合しない)抗体を生産するためにアッセイされる。選定されたモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマは、後にin vitro(例えば組織培養瓶またはホローファイバーリアクター中)、またはin vivo(例えばマウスの腹水)のいずれかにおいて培養される。
【0047】
ヒトモノクローナル抗体は、ネズミ科のハイブリドーマよりもむしろヒトを使って得られる。
【0048】
非ヒトのヒト化形態(例えばネズミ科)抗体は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含むそれらのフラグメント(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、または抗体の他の抗原結合サブシークエンス等)である。ヒト抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含み、ここではレシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基は、所望される特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラットまたはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換えられる。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応の非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても、外来のCDRまたはフレームワーク配列においても見出されない残基をも含み得る。一般にヒト化抗体は、少なくとも1種の、典型的には2種の可変ドメインの実質的に全てを含む。ここでの全てまたは実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、且つ全てまたは実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。またヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも1部分を含むだろう(Jones等、1986; Riechmann等、1988)。
【0049】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当業界において周知である。一般にヒト化抗体は、非ヒト起源由来のものに導入された1種以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば"インポート"残基と呼ばれ、典型的に"インポート"可変ドメインから引き継がれる。ヒト化は、本質的にWinter等の方法(Jones等、1986;Riechmann等、1988;Verhoeyen等、1988)に従い、対応のヒト抗体配列にげっ歯類CDRまたはCDR配列を置換することによって実施できる。したがってかかる"ヒト化"抗体は、キメラ抗体であり(米国特許 No.4,816,567)、ここでは実質的に無傷のヒト可変ドメイン未満は、非ヒト種由来の対応配列によって置換されている。実際にはヒト化抗体は、典型的にヒト抗体であり、ここでのいくつかのCDR残基、場合によってはいくつかのFR残基は、げっ歯類抗体のアナログ部位由来の残基によって置換される。
【0050】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(Marks等、1991)を含む当業界において公知の多様な技術を用いても産生され得る。Boerner等の技術は、ヒトモノクローナル抗体の調製のためにも利用できる(Boerner等、1991)。同様にヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のトランスジェニック動物(例えばマウス)への導入により作製され得る。ここでの内因性免疫グロブリン遺伝子は、部分的に、または完全に不活性化されている。ヒト抗体産生への取り組みでは、遺伝子再配列、集合、及び抗体レパートリーを含む全ての観点においてヒトに見られる密接な共通点が観察されている。このアプローチは、例えば米国特許No.5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016、及びFishwild等、1996;Marks等、1992の科学刊行物において発表されている。
【0051】
天然に分泌されたアイソフォームであるsIL-17RCは、人工的に分泌されたものよりも生物学的な利点を有する。当該天然のアイソフォームは、溶解性のおとり受容体として生物学的に活性であり得る。IL-17RCは、炎症性疾患に関与するIL-17ファミリーのサイトカインと潜在的に相互作用する。したがって本発明の他の観点は、自己免疫性疾患、炎症性疾患、または神経系疾患から成る群から選定される疾患を治療及び/または予防するための医薬を製造するためのsIL-17RCの使用に関する。
【0052】
本明細書において使用される用語"治療"及び"予防"とは、神経系疾患、及び神経系疾患を伴う兆候、疾患または合併症の1種以上の兆候または原因を予防、阻害、軽減、改善または正常化することとして理解されるべきである。神経系疾患を"治療する"場合では、本発明にかかる物質は疾患の発症後に与えられ、"予防"とは患者が気付くことができる疾患のサインの前に当該物質を投与することを言う。
【0053】
本明細書において使用される用語"神経系疾患"とは、全ての公知の神経系疾患もしくは障害、またはCNSもしくはPNSの損傷を包含する。
【0054】
神経系疾患は、CNSまたはPNSの機能不全に関連した障害を含む。かかる疾患は、神経伝達、頭痛、頭部外傷、CNS感染症、神経眼科系及び脳神経系障害、脳葉機能及び機能不全、運動障害、昏迷及び昏睡、脱髄性疾患、幻覚及び認知症、頭頸接合部の異常、発作障害、脊髄障害、睡眠障害、末梢神経系の障害、脳血管障害、または筋肉障害に関する。これらの障害の定義は、例えばMerck Research Laboratoriesより刊行されたThe Merck Manual for Diagnosis and Therapy、第7版、1999を参照する。
【0055】
好適には本発明の神経系疾患は、外傷性神経損傷、発作、CNSまたはPNSの脱髄性疾患、神経障害及び神経変性疾患から成る群から選定される。
【0056】
外傷性神経損傷は、PNSまたはCNSに関連し、上記の「背景技術」において発表したようなパラプレジアを含む脳または脊髄外傷であり得る。
【0057】
発作は、低酸素症または脳の虚血により引き起こされ得る。それは脳血管疾患または事故とも呼ばれる。
【0058】
末梢神経障害は、感覚喪失シンドローム、筋衰弱及び萎縮、減少した深部腱反射、及び血管運動症状の単独または任意の組み合せに関連し得る。神経障害は、単一の神経(単ニューロパシー)、別の領域の2種以上の神経(多発性単ニューロパシー)、または同時に多くの神経(多発ニューロパシー)に影響を及ぼし得る。軸索は(例えば糖尿病、ライム病、もしくは尿毒症において、または毒物により)最初に影響を受け、または(例えば急性もしくは慢性炎症性多発ニューロパシー、大脳白質萎縮症、またはギラン-バレー症候群において)髄鞘もしくはシュワン細胞も影響を受ける。さらに本発明により処置され得る神経障害は、例えば鉛毒性、ダプソン使用、ダニ咬傷、ポルフィリン症、またはギラン-バレー症候群に起因し、またそれらは運動繊維に最初に影響を及ぼし得る。癌の後根神経節炎、ハンセン病、AIDS、糖尿病、または慢性ピリドキシン中毒に起因するその他のものは、最初に後根神経節または知覚繊維に影響を及ぼし、知覚症状を生み出し得る。また脳神経は、例えばギラン-バレー症候群、ライム病、糖尿病、及びジフテリア等に関与し得る。
【0059】
さらに好適な態様における神経系障害は、脱髄性疾患である。脱髄性疾患は、好適には急性散在性脳脊髄炎(ADEM)及び多発性硬化症(MS)、並びに末梢神経系(PNS)の脱髄性疾患のようなCNSの脱髄性症状を含む。後者は、慢性炎症性脱髄性多発性神経根障害(CIDP)及びギラン-バレー症候群(GBS)と呼ばれる炎症性脱髄性多発性神経根障害等の急性、単相障害等の疾患を含む。
【0060】
任意の自己免疫性及び/または炎症性障害は、本発明に含まれる。特に含まれる障害は、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、便流変更性大腸炎(diversion colitis)、過敏性腸症候群、多発性硬化症を含む神経炎症;ギラン-バレー症候群、慢性炎症性多発ニューロパシー(CIPN)、急性呼吸窮迫症候群を含む肺疾患;骨関節炎及びリウマチ性関節炎を含む関節及び骨疾患;肝繊維症、肝硬変及び慢性肝疾患を含む肝疾患;狼瘡、糸球体硬化、全身性硬化皮膚繊維症、放射線照射後の繊維症及び嚢胞性繊維症を含む繊維性疾患;アテローム性動脈硬化症、心筋症及び心筋梗塞を含む血管病変;再狭窄;並びに筋萎縮性側索硬化症を含む中枢神経系の変性疾患または強皮症、乾癬またはアトピー性皮膚炎を含む皮膚の炎症性障害である。
【0061】
以下の障害も本発明に含まれる:喘息、閉塞性気道疾患、及び潜在的骨関節炎。
【0062】
炎症は、感染性因子、物理的損傷、低酸素症、または体内の任意の器官または組織近くでの疾患プロセス等の多様な体外または体内の損傷要因に対する体の基本的な応答である。炎症は、4つの周知の兆候、すなわち発赤、熱、圧痛/疼痛、及び腫れを引き起こす。より詳細には炎症は、標的部位での免疫系細胞と分子の凝集に関与する。慢性炎症性疾患の例は、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、及びI型糖尿病である。これらの疾患は、自己免疫性疾患または自己免疫性/炎症性障害としてもしばしば特徴付けられる。
【0063】
自己免疫性疾患は、体が自分自身の組織を外来物と認識して、それらに対して免疫応答を導く状態である。
【0064】
多種多様な自己免疫性疾患が存在し、且つそれらは多様な方法において、それぞれが体に影響を及ぼし得る。例えば自己免疫性反応は、多発性硬化症における脳、及びクローン病における消化管に対して導かれる。全身性エリテマトーデス(狼瘡)等の他の自己免疫性疾患では、影響を受ける組織及び器官は、同一の疾患を有する個体の中でも変化し得る。ある狼瘡を有する者は、皮膚及び関節に影響を受け得るが、一方他の者は、皮膚、腎臓、及び肺に影響を受け得る。最終的に免疫系による所定の組織に対する損傷は、1型糖尿病における膵臓のインスリン生産細胞の破壊を伴うような永続的なものであり得る。
【0065】
さらに本発明は、神経系疾患を治療及び/または予防するための医薬を製造するための核酸分子の使用に関し、当該核酸分子は、配列番号2の核酸配列、または配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードしている核酸配列を含む。
【0066】
さらに本発明は、自己免疫性及び/または炎症性障害及び/または神経系疾患を治療及び/または予防するための、溶解性IL-17RCを、任意に1種以上の医薬的に許容され得る賦形剤と共に含んで成る医薬組成物に関する。
【0067】
"医薬的に許容され得る"の定義は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、且つ投与される宿主に対して毒性でなく、またはその活性を増強し得る任意の担体を包含することを意味する。例えば非経口投与のための活性タンパク質は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー溶液等のビヒクル中での注入のための単位投与形態に製剤化され得る。
【0068】
本発明にかかる医薬組成物の活性成分は、多様な方法において個体に投与され得る。投与経路は、皮内、経皮(例えば徐放製剤)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所、髄腔内、直腸、及び鼻腔内経路を含む。任意の他の治療的に有効な投与経路は、例えば上皮もしくは内皮組織を介する吸収、または遺伝子治療によるものが使用され得る。ここでの遺伝子治療における活性剤をコードするDNA分子は、患者に投与され(例えばベクターを介して)、活性剤をもたらし、in vivoで発現及び分泌される。
【0069】
さらに本発明にかかるタンパク質は、医薬的に許容され得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤及びビヒクル等の生物学的活性剤である他の成分と一緒に投与することができる。
【0070】
非経口(例えば静脈内、皮下、筋肉内)投与についての活性タンパク質は、医薬的に許容され得る非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)及び等張性を維持する添加剤(例えばマンニトール)または化学的安定性を維持する添加剤(例えば保存剤及び緩衝剤)と関連して、溶液、懸濁物、エマルションまたは凍結乾燥パウダーとして製剤化され得る。製剤は一般的に使用される技術によって殺菌される。
【0071】
本発明にかかる活性タンパク質のバイオアベイラビリティーは、ヒト体内での分子の半減期を増加させる接合手段、例えばPCT出願WO 92/13095において発表されたようなポリエチレングリコール(PEG)に分子を連結することを使用することによっても改善され得る。
【0072】
活性タンパク質の治療的有効量とは、タンパク質の型、タンパク質の親和性、アンタゴニストによって示される任意の残留細胞毒性、投与経路、患者の臨床的症状(内因性sIL-17RC活性の非毒性レベルを維持することが望ましい場合を含む)を含む多くの可変関数であるだろう。
【0073】
"治療的有効量"とは、sIL-17RCが投与される場合に神経系疾患に有益な影響を発揮するような量である。個体への単回または反復用量としての投与量は、sIL-17RCの薬物動態特性、投与経路、患者の症状及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、兆候の広がり、同時治療、治療頻度及び所望される効果を含む多様な因子に依存して変化するだろう。
【0074】
上記のsIL-17RCは、好適には体重の約0.001〜100 mg/kg、または体重の約0.01〜10 mg/kg、または体重の約9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1 mg/kg、または体重の約0.1〜1 mg/kgの量で使用され得る。
【0075】
本発明にかかる好適な投与経路は、皮下経路による投与である。筋肉内投与は、本発明においてさらに好適である。
【0076】
さらに好適な態様では、sIL-17RCは毎日または一日置きに投与される。
【0077】
一日投与量は、通常は所望される結果を得るために有効な分割投与または徐放形態で投与される。二回目またはその後の投与は、当該個体への初回投与量または以前に投与された投与量と同量、それらよりも少量またはそれらよりも多くの量で実施され得る。
【0078】
本発明にかかるsIL-17RCは、他の治療計画または治療剤(例えば多剤計画)、特にインターフェロンに先立ち、同時に、または後に、治療有効量を個体に予防的にまたは治療的に投与され得る。他の治療剤と同時に投与される活性剤は、同一または異なる組成物において投与され得る。
【0079】
学術論文または概要、刊行されたまたは未刊行の米国または外国特許出願、発行された米国または外国特許、或いは任意の他の参照を含む本明細書において引用される全ての参照は、引用された参照中に示された全てのデータ、表、図面及び本文を含み本明細書に参照として全体が導入されている。さらに本明細書において引用された参照中に引用された参照の全部の内容もまた参照によって全体が導入されている。
【0080】
公知方法のステップ、慣用方法のステップ、公知方法または慣用方法への言及は、本発明の任意の観点、説明または態様が、関連技術において開示、教示または示唆されたものと認める任意の手段ではない。
【0081】
上記の特定の態様は、本発明の一般的な性質を十分に開示するので、過剰な実験をせずに、本発明の一般的な概念から逸脱せずに、他人が当業者の知識の範囲内で知識(本明細書において引用された参照の内容を含む)を適用することを可能にし、容易にかかる特定の態様を多様な応用に修飾及び/または適用することができる。したがってかかる適用及び修飾は、本明細書において提示された教示及び助言に基づき、開示された態様と同等の範囲の意味の中にあることが意図される。本明細書における語法または専門用語は説明を目的とし、限定を目的とするものではないと理解されるべきであり、本明細書の専門用語または語法は、本明細書における教示及び助言の観点から、通常の当業者の知識の組み合せにおいて、当業者によって理解されるものである。
【0082】
ここに発表した発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるだろう。これらの実施例は説明の方法によって提供され、且つ本発明を限定することを意図するものではない。
実施例
【実施例1】
【0083】
sIL-17RCの同定及びクローニング
cDNAクローンIL-17RC_122(プラスミド17998)を、非公的(内部の)cDNAライブラリーコレクションにおいて、全長IL-17RC受容体のBLASTサーチの際にIL-17RCタンパク質との配列相同性により、配列Hs-PA-sub_GTC_P03_l22として同定した。その後、cDNAプラスミドをサブトラクション・ヒト前脂肪細胞誘導cDNAライブラリー(pCMVSport6.1ベクターにおいて標準化されたカスタムcDNAライブラリー)から回収し、そして完全な配列分析ではその独自のスプライシングパターンを開示した。天然に分泌される溶解性アイソフォームに翻訳されるこのIL-17RCの新規のスプライス変異体は、sIL-17RCと名付けられた。
【0084】
sIL-17RCのクローニング
hs PA cDNAライブラリーを以下の多剤併用により誘導した休止前脂肪細胞及び前脂肪細胞から作製した:
- TNF 1 μg/ml;
- IFNg 1 μg/ml;
- LPS 10 μg/ml;
- PMA 5 ng/ml;
-インドメタシン 100 μg/ml;
-シクロヘキサミド 50 μg/ml。
【0085】
RNAは、処置後3時間で細胞から抽出した。cDNAライブラリーは、Invitrogen(Resgen)に特注した。さらにサブトラクション・ライブラリー(Hs-PA-sub)は、ドライバーとしてコントロール未処理ライブラリーを用いて誘導されたライブラリーから作製した。当該誘導(Hs-PA-ind)及びサブストラクション(Hs-PA-sub)ライブラリーをそれぞれ4000及び5000の配列の深さに対してシークエンシングにかけた。
【0086】
sIL-17RCの哺乳動物細胞発現ベクターの構造
cDNAライブラリーの構造制約のために、sIL-17RCをコードするプラスミド17998は、IL-17RCのN-末端領域の46個のアミノ酸を欠いている。したがって全長sIL-17RCを再構成及びクローンするために、プラスミド17996と一緒になったプラスミド17998(エクソン1から5'末端のIL-17RCを含む)をPCRテンプレートとして使用して、sIL-17RC ORF配列及びタグをコードする3'配列を含むpEAK12d及びpDEST12.2発現クローンを、Gateway(商標)クローニング手順(Invitrogen)を用いて作製した。このようにして予測されるN-末端(開始コドンを含む5'末端で最初の46塩基を予測)は、重複PCRによって付加された。
【0087】
フレームタグ配列中に融合したGateway適合sIL-17RC ORFの作製。
Gatewayクローニング工程の第一段階は、sIL-17RCのORF(5'末端でattB1組み換え部位及びKozak配列の側面に位置し、且つ3'末端でフレーム中のタグをコードする配列の側面に位置する)、停止コドン及びattB2組み換え部位(Gateway適合cDNA)を作製する3つのステップのPCR反応を伴う。sIL-17RC予測の5’末端での46個の欠落塩基は、一方はプラスミド17996由来のIL17RC_122FL-G1F及びIL17RC_l22R1bプライマーにより、そして他方はプラスミド17998由来のIL17RC_l22F2b及びIL17RC_122FL-G1Rにより作製される2つのPCR産物のPCR重複反応により付加された。
【0088】
第一のPCR反応(50 μlの最終容量中)は、それぞれ:1 μl(30 ng)のプラスミド17996、1.5 μlのdNTP(10 mM)、10 μlの1O×Pfxポリメラーゼ緩衝剤、1 μlのMgSO4(50 mM)、1×PCRxエンハンサー溶液(Invitrogen)、0.5 μlのそれぞれの遺伝子特異的プライマー(100 μM)(IL17RC_122FL-G1F及びIL17RC_l22R1b)及び0.5 μlのプラチナPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含む。PCR反応は、95℃、5分間の最初の変性ステップ、引き続き94℃、15秒間;55℃、30秒間及び68℃、1分間の30サイクル;及び4℃のホールディングサイクルを用いて実施した。増幅産物PCR1の25 μlのアリコートを1×TAE緩衝剤ゲル中の0.8%のアガロースゲルに添加し、そして予測される分子量でのバンド(322 bp)をWizard SVゲル及びPCRクリーンアップシステム(Promega)を用いて精製し、そして製造業者の指示の通りに50 μlの滅菌水中で回収した。
【0089】
第二のPCR反応(50 μlの最終容量中)は、それぞれ:1 μl (30 ng)のプラスミド17998、1.5 μlのdNTP(10 mM)、10 μlの10×Pfxポリメラーゼ緩衝剤、1 μlのMgSO4(50 mM)、1×PCRxエンハンサー溶液(Invitrogen)、0.5 μlのそれぞれの遺伝子特異的プライマー(100 μM)(IL17RC_l22F2b及びIL17RC_122FL-G1R)及び0.5 μlのプラチナPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含む。PCR反応は、95℃、5分間の最初の変性ステップ、引き続き94℃、15秒間;55℃、30秒間及び68℃、1分間の30サイクル;及び4℃のホールディングサイクルを用いて実施した。増幅産物PCR2の25 μlのアリコートを1×TAE緩衝剤ゲル中の0.8%のアガロースゲルに添加し、そして予測される分子量でのバンド(913 bp)をWizard SVゲル及びPCRクリーンアップシステム(Promega)を用いて精製し、そして製造業者の指示の通りに50 μlの滅菌水中で回収した。
【0090】
第三のPCR反応(50 μlの最終容量中)は、それぞれ5 μlの精製したPCR1及びPCR2産物、1.5 μlのdNTP(10 mM)、10 μlの10×Pfxポリメラーゼ緩衝剤、1 μlのMgSO4(50 mM)、1×PCRxエンハンサー溶液(Invitrogen)、0.5 μlのそれぞれのGateway変換プライマー(100 μM)(GCP前進及びGCP後進)及び0.5 μlのプラチナPfx DNAポリメラーゼを含んだ。PCR反応は、95℃、5分間の最初の変性ステップ、引き続き94℃、15秒間;55℃、30秒間及び68℃、1分間の30サイクル;及び4℃のホールディングサイクルを用いて実施した。増幅産物PCR3の25 μlのアリコートを1×TAE緩衝剤ゲル中の0.8%のアガロースゲルに添加し、そして予測される分子量でのバンド(1211 bp)をWizard SVゲル及びPCRクリーンアップシステム(Promega)を用いて精製し、そして製造業者の指示の通りに50 μlの滅菌水中で回収した。
【0091】
Gateway適合sIL-17RC ORFのエントリーベクターpDONR221並びに発現ベクターpEAK12d及びpDEST12.2へのサブクローニング
Gatewayクローニング工程の第二段階は、以下の通りGateway修飾PCR産物のGatewayエントリーベクターpDONR221(Invitrogen)へのサブクローニングを伴う:PCR3からの5 μlの精製産物を、1.5 μlのpDONR221(プラスミドID 13578)ベクター(0.1 μg/μl)、2 μlのBP緩衝剤及び1.5 μlのBPクロナーゼ混合酵素(Invitrogen)と共に、10 μlの最終容量にて、室温で1時間培養した。1 μl(2 μg/μl)のプロテイナーゼKを付加することにより反応を停止させ、そして37℃でさらに10分間培養した。反応物のアリコート(1 μl)を用いて、大腸菌(E. coli)DH 10B細胞をエレクトロポレーションによって以下のように形質転換した:25 μlのDH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコートを氷上で解凍し、そして1 μlのBP反応混合物を付加した。当該混合物を冷蔵した0.1 cmのエレクトロポレーションキュベットに移し、そして製造業者の推奨するプロトコールに従い、BioRad Gene-Pulser(商標)を用いて細胞を電気穿孔した。室温まで予め暖めたSOC培地(0.5 ml)をエレクトロポレーションの後に速やかに付加した。当該混合物を15 mlのスナップキャップチューブに移し、そして1時間、37℃で撹拌しながら培養した(220 rpm)。その後、形質転換混合物のアリコート(40 μl及び100 μl)を、カナマイシン(40 μg/ml)を含むL-ブロス(LB)プレート上に置き、そして37℃で一晩培養した。
【0092】
プラスミドミニプレップDNAを8個の得られたコロニー由来の5 mlの培養物から、Qiaprep BioRobot 8000 system(Qiagen)を用いて調製した。プラスミドDNA(150-200 ng)を、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ番号4336919)を用いて、製造業者の指示に従い、上記の21 M13、IL17RC-435F及びM13Revプライマーを有するDNAシークエンシングにかけた。プライマー配列は表1に示されている。シークエンシング反応物を、Montage SEQ 96クリーンアッププレート(MiILiporeカタログ番号LSKS09624)を用いて精製し、後にApplied Biosystems 700シーケンサーで解析した。
【0093】
後に正確な配列(pENTR_sIL-17RC-タグ、プラスミドID 18201 )を含む1つのクローン由来のプラスミド溶出液(およそ2 μl、150 ng)を、10μlの最終容量において、1.5 μlのpEAK12dベクターまたはpDEST12.2ベクター(0.1 μg/μl)、2 μlのLR緩衝剤及び1.5 μlのLRクロナーゼ(Invitrogen)を含む組み換え反応物において使用した。当該混合物を室温で1時間培養し、プロテイナーゼK (2 μg)を付加することにより停止させ、そして37℃でさらに10分間培養した。反応物のアリコート(1 μl)を用いて、大腸菌(E. coli)DH 10B細胞をエレクトロポレーションによって以下のように形質転換した:25 μlのDH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコートを氷上で解凍し、そして1 μlのLR反応混合物を付加した。当該混合物を冷蔵した0.1 cmのエレクトロポレーションキュベットに移し、そして製造業者の推奨するプロトコールに従い、BioRad Gene-Pulser(商標)を用いて細胞を電気穿孔した。室温まで予め暖めたSOC培地(0.5 ml)をエレクトロポレーションの後に速やかに付加した。当該混合物を15 mlのスナップキャップチューブに移し、そして1時間、37℃で撹拌しながら培養した(220 rpm)。後に形質転換混合物のアリコート(10 μl及び50 μl)を、アンピシリン(100 μg/ml)を含むL-ブロス(LB)プレート上に置き、そして37℃で一晩培養した。
【0094】
プラスミドミニプレップDNAを、それぞれのベクターにおいてサブクローン化した6個の得られたコロニー由来の5 mlの培養物から、Qiaprep BioRobot 8000 system(Qiagen)を用いて調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200-500 ng)を、上記のpEAK12F、IL17RC-435F及びpEAK12Rプライマーを有するDNAシークエンシングにかけた。pDEST12.2ベクター中のプラスミドDNA(200-500 ng)を、上記の21M13、IL17RC-435F及びM13Revプライマーを有するDNAシークエンシングにかけた。プライマー配列は表1に示されている。
【0095】
CsCl勾配精製したマキシプレップDNAを、配列検証されたクローン(pEAK12d_sIL-17RC-タグ、プラスミドID 18202)の500 mlの培養物から、Sambrook J.等、1989によって発表された方法(Molecular Cloning, a Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press)を用いて調製した。プラスミドDNAを、1 μg/μlの濃度で、滅菌水(または10 mMのTris-HCI、pH 8.5)中で再懸濁し、そして-20℃で貯蔵した。
【0096】
エンドトキシンが存在しないマキシプレップDNAを、配列検証されたクローン(pDEST12.2_sIL-17RC-タグ、プラスミドID 18203)の500 mlの培養物から、製造業者の指示に従いエンドフリープラスミドメガキット(Qiagen)を用いて調製した。精製したプラスミドDNAを、エンドトキシンが存在しないTE緩衝剤中で、少なくとも3 μg/μlの最終濃度で再懸濁し、そして-20℃で貯蔵した。
【0097】
部位特異的PCR突然変異誘発を行い、後述の実施例2においてコントロールとして使用したsIL-17RCexo7発現構成体を作製した。sIL-17RCexo7(本明細書では配列番号3として報告される)のアミノ酸配列は、WO 02/38764において配列番号15として報告されている溶解性スプライス変異体タンパク質#6とは1 aaが相違する(292位がGlnの代わりにArg)。sIL-17RCexo7構成体を作製するために、IL-17RCのエクソン7に相当する15 aa DCRGLEVWNSIPSCWをコードするDNA配列を、もとのsIL17-RCプラスミド17998中に、QuickChange XL部位特異的突然変異キット(Stratagene)並びに74量体オリゴヌクレオチドIL17RC_エクソンA及びIL17RC_エクソンBを用いて、製造業者の指示に従い挿入した。さらに全長sIL-17RCexo7のpEAK12d(18283)及びpDEST12.2(18284)へのクローニングを、sIL-17RCについて上記に発表したように実施した。
【0098】
【表1】

【0099】
sIL-17RC cDNAの配置、タンパク質及びプライマー配列は、図1に示されている。
【実施例2】
【0100】
HEK293トランスフェクト細胞からのsIL-17RCの分泌
新規sIL-17RC及びコントロールsIL-17RCexo7アイソフォームが分泌されたことを検証するために、リポフェクタミン試薬(Invitrogen)を用いて、製造業者の指示に従い、対応のpEAK12d及びpDEST12.2構成体をHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから3日後、20 μlのトランスフェクト細胞上清を収集し、そして4〜12%のNuPage Bis-Trisゲル上で、製造業者(invitrogen)の指示に従い、1×MOPS SDS処理緩衝剤により分離した。sIL-17RC及びsIL-17RCexo7タンパク質の効率的な発現と分泌を、製造業者の指示に従い、マウス抗タグ抗体(QIAGEN)と抗マウスHRP二次抗体(Sigma)を用いて、ウェスタンブロッティングによって実証した(図2参照)。
【実施例3】
【0101】
sIL-17RCを用いたリガンド結合の阻害
本アッセイのために、内因性または過剰発現した外因性受容体(全長膜結合ヒトIL-17RC等)を発現する細胞株を、IL-17ファミリーメンバー(例えばヒトIL-17Fタグ化タンパク質)と共に培養する。リガンドにより結合した細胞は、抗タグ抗体または抗-IL-7Fモノクローナル抗体により検出され、後に二次蛍光ラベル化抗体で検出され、そしてFACS(蛍光活性化細胞分類)によって測定される。sIL-17RCタンパク質は、結合活性の阻害を決定するためのリガンド結合培養ステップの間に、多様な濃度で試験される。またリガンド結合の阻害は、慣用のin vitro結合技術を用いても検証される。
【実施例4】
【0102】
自己免疫性/炎症性アッセイ
以下のアッセイは、sIL-17RCポリペプチドの生物学的活性を確認するために使用され得る。
【0103】
Tリンパ球応答を標的とするアッセイ
Fas-リガンド誘導T細胞死。本アッセイは、受容体介在性細胞死の新規のモジュレーターを明らかにするだろう。本アッセイでは、T細胞アポトーシスは、Jurkat細胞(ヒトT細胞株)をモノクローナル抗タグ抗体と組み合わされた組み換え6ヒスチジン-タグ化Fasリガンドにより刺激することによって誘導される。死は、LDHの放出、細胞が死んだ時に培養培地中に放出される細胞質酵素によって定められる。読み出しは、490 nmで読まれる比色分析である。T細胞は多くの自己免疫性疾患における病因であることが示されており、抗原特異的T細胞死を制御できることは、治療戦略となる(例えばクローン病を有する患者における抗-TNFa処置)。
【0104】
ヒトMLR:増殖及びサイトカイン分泌。この細胞に基づくアッセイは、リンパ球増殖及びサイトカイン分泌における新規のタンパク質の効果、または他のドナー由来のPBMCによる刺激の阻害(同種反応性)を測定する。これらのアッセイは、抗原特異的T細胞及び任意の自己免疫性疾患における重大な細胞応答である抗原提示細胞機能を取り扱う。分泌されたサイトカイン(IL-2、4、5、10、TNF-a及びIFN-g)は、CBAによって定められる。
注:増殖及びサイトカイン分泌は、独立した応答である。
【0105】
マウス-MLR:増殖。この細胞に基づくアッセイは、リンパ球増殖における新規のタンパク質の効果、または他のドナー(マウス血統)由来の脾臓細胞による刺激に伴うマウス脾臓細胞の阻害を測定する。この細胞に基づくアッセイは、Tリンパ球への新規のタンパク質の効果及び抗原提示細胞応答を測定し、またh-MLRアッセイにおいて同定される陽性活性及び的中を確認するために使用されるだろう。本アッセイは、ヒト疾患のネズミ科モデルにおいて試験されるタンパク質の選定に使用されるだろう。
【0106】
スーパー抗原、TSSTによって刺激されるヒトPBMC。スーパー抗原は、T細胞に影響を及ぼす免疫系の強力なモジュレーターである。スーパー抗原は、IBD、アトピー性皮膚炎及び乾癬のような炎症性皮膚疾患等の免疫学的介在性障害に影響を及ぼす。この細胞アッセイでは、我々は、TCRを介するが、古典的抗原に対するT細胞応答よりも多様な要求を伴う、特に共刺激性分子に関するTリンパ球活性化を特に標的にしている。
【0107】
ConAまたはPHAにより刺激されるヒトPBMC。これらの細胞に基づくアッセイは、異なる細胞に作用する2つの異なる刺激によって誘導されるサイトカイン分泌への新規のタンパク質の効果を、サイトカインビーズアレイ(CBA)アッセイ(IL-2、IFN-g、TNF-a、IL-5、IL-4及びIL-10)によって測定されるように測定する。
【0108】
大部分のサイトカインは、損傷、環境及び細胞内標的に応じて炎症性または抗炎症性の二重の作用を有することができる。サイトカイン分泌を調節する能力を有する任意のタンパク質は、治療的能力を有し得る(例えばIFN-g及びTNF-aを減じることは、Th1-介在性自己免疫性疾患において有益であるだろうが、反対にIL-4、IL-5を減じることは、MS及びSLEにおいて重要であるIL-10を導くTh2-介在性疾患において有益であり得る)。
【0109】
単球/マクロファージ及び顆粒球応答を標的にするアッセイ
LPSにより刺激されるヒトPBMC。この細胞に基づくアッセイは、単球/マクロファージ及び顆粒球に作用するLPSによって誘導されるサイトカイン分泌(IFN-g、TNF-a)への新規のタンパク質の効果を測定する。
【0110】
IFN-g及びTNF-a分泌を調節する能力を有する任意のタンパク質は、Th1-介在性自己免疫性疾患において有益であるだろう。
【0111】
好中球応答を標的とするアッセイ
好中球は、リウマチ性関節炎等の炎症性及び自己免疫性疾患において重要である。IL-8等の白血球化学誘引物質は、細胞と微小血管内皮の間の接着性相互作用の連続進行を開始し、好中球の活性化、接着及び最終的な移動をもたらす。好中球の組織進入は、これらの細胞の細胞形態学において特異的な変化を伴う細胞骨格要素の再編成に依存する。
【0112】
この細胞に基づくアッセイは、ヒト好中球の細胞骨格再編成における新規のタンパク質の影響を測定する。
【0113】
Bリンパ球応答を標的とするアッセイ
自己抗体及び浸潤性B細胞は、全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ性関節炎(RA)、シェーグレン症候群及び重症筋無力症等の多様な自己免疫性疾患の発症において重要であると考えられる。有力な証拠は、B細胞恒常性における脱調整が、免疫耐性に影響を及ぼし、病原性抗体及び持続性炎症を生成する自己反応性B細胞の不適切な残存を導き得ることを示す。B細胞受容体誘発に続くB細胞増殖、残存及び分化の調節において重要な役割を果たす新規の因子の同定は、新規の治療薬の開発において高い妥当性を有する。
【0114】
B細胞増殖。この細胞に基づくアッセイは、B細胞残存における新規のタンパク質の影響を測定する。
【0115】
B細胞共刺激。この細胞に基づくアッセイは、B細胞共刺激における新規のタンパク質の影響を測定する。
【0116】
単球及びミクログリア応答を標的にするアッセイ
THP-1カルシウムフラックス。THP1-細胞アッセイにおけるCa+-フラックスは、小胞体からの細胞内カルシウム放出を誘発するそれらの能力(一般的なセカンドメッセンジャー事象)における新規のタンパク質の効果を測定する。
【0117】
ミクログリア細胞増殖(次のIACに示されている)。ミクログリア前駆細胞の増殖の際には、いくつかのサイトカインを含む多くのコロニー刺激因子が主要な役割を果たすことが知られている。とりわけM-CSFはマクロファージ/ミクログリアの成熟の最終ステップに不可欠なものであり、また任意の他の因子で置き換えることができない。この生物学的応答の評価は、ミクログリア活性に影響を及ぼす方法を提示し得るので、MSに治療能を有する分子を同定する機会が存在する。
【0118】
細胞に基づくアッセイは、M-CSFに対するミクログリア細胞株の増殖応答を測定するために開発された。実現可能性及びロバスト性段階では、最適な結果を示した。本アッセイは、96ウェルプレートにおけるものであり;非放射性基質が容易に自動化されることが要求される。
【実施例5】
【0119】
神経系アッセイ
以下のアッセイは、神経系疾患におけるsIL-17RCポリペプチドの生物学的活性を確認するために使用され得る。多くの神経系アッセイは、本出願人によって開発されており、またタンパク質機能の生物学的関連性の調査において使用されるものである。本出願人によって開発されてきた神経系アッセイの例は、4つのタイプのアッセイを含む。それらについて以下に検討する。
【0120】
オリゴデンドロサイトに基づくアッセイ
オリゴデンドロサイトは、CNSにおけるミエリン形成に関与する。多発性硬化症ではそれらは攻撃される最初の細胞であり、またそれらを失うことは主要な行動障害を引き起こす。炎症を抑制することに加えて、MSにおいて発生する病変の不完全な再ミエリン化を増強させることが、MSの治療戦略として提案されている。ニューロンのような成熟オリゴデンドロサイトは分裂しないが、新しいオリゴデンドロサイトは前駆細胞から生じ得る。成人脳ではこれらの前駆細胞は殆どなく、また胚でさえもこれらの前駆細胞の数は、HTSにとって不十分である。
【0121】
Oli-neuは、t-neu腫瘍遺伝子によるオリゴデンドロサイト前駆細胞の不死化によって得られたネズミ科細胞株である。それらはよく研究されており、また早期のオリゴデンドロサイト生物学を研究するための代表的な細胞株として受け入れられている。これらの細胞は、2つのタイプのアッセイにおいて使用され得る。
【0122】
一方は、オリゴデンドロサイト増殖を刺激する因子を同定することであり、他方は、それらの分化を促進する因子を見出すことである。両方とも再生を助け、且つ脱髄性疾患を治療する観点における鍵となる。
【0123】
他の可能な細胞株は、ヒト細胞株、MO3-13である。MO3-13は、横紋筋肉種(rabdo-myosarcoma)細胞の成人ヒトオリゴデンドロサイトとの融合に起因する。しかしながらそれらの細胞は、減少したオリゴデンドロサイトへの分化能を有し、またそれらの増殖速度は、増殖アッセイを可能にするのに十分なものではない。それでもなおそれらは、オリゴデンドロサイトの確かな特徴を示し、またそれらの形態は、核転座研究によく適応される。
【0124】
したがって本細胞株は、3つの転写因子、それぞれNF-kB、Stat-1及びStat-2の核転座に基づくアッセイにおいて使用され得る。Jak/Stat転写経路は、IFN a、b、g、サイトカイン(例えばIL-2、IL-6;IL-5)またはホルモン(例えばGH、TPO、EPO)等の多くの因子によって活性化される複雑な経路である。応答の特異性は、活性化Statの組み合せによる。例えばIFN-bはStat l、2及び3核転座を活性化するが、その一方でIFN-gはStat lだけを活性化することが注目に値する。同様の方法において多くのサイトカインと成長因子がNF-kB転座を誘導した。これらのアッセイにおける目標は、所定のタンパク質の活性化経路の像を得ることである。
【0125】
アストロサイトに基づくアッセイ
アストロサイトの生物学は非常に複雑であるが、2つの一般的な状態が認識されている。一方の状態は休眠と呼ばれ、アストロサイトはグルタメートのポンピングによってニューロンの代謝及び興奮レベルを調節し、そしてニューロン及びオリゴデンドロサイトへ活動基質を提供する。活性化状態では、アストロサイトはケモカイン及びサイトカイン、並びに酸化窒素を生成する。第一の状態は健常と見なされるが、第二の状態は炎症、発作または神経変性疾患の間に発生する。この活性化状態が続く場合は、病理学的状態とみなされるべきである。
【0126】
多くの因子及び多くの経路がアストロサイト活性化を調節することが知られている。アストロサイト活性化を調節する新規の因子を同定するために、U373細胞、星細胞腫由来のヒト細胞株が使用され得る。NF-kB、c-Jun及びStatは、アストロサイト活性化において極めて重要な役割を果たすことが知られているシグナル伝達分子である。
【0127】
NF-kB、c-Jun及びStat l、2及び3の核転座に基づく一連のスクリーニングを実行することができる。これらの経路の原型的な活性化因子は、IL-1b、IFN-βまたはIFN-γである。目標は、CNS疾患の治療における治療剤として使用され得るタンパク質を同定することである。
【0128】
ニューロンに基づくアッセイ
ニューロンは非常に複雑で、且つ多様性の細胞であるが、それらは全て共通する2つのものを有する。第一にそれらは分裂終了細胞であり、第二にそれらは他の細胞を神経支配している。それらの生存は、標的細胞を神経支配することによってしばしば産生される栄養因子の存在に結びつく。多くの神経変性疾患において神経支配標的を失うことは、細胞体萎縮及びアポトーシス細胞死を導く。したがって標的欠損を補う栄養因子の同定は、神経変性疾患の治療において非常に重要である。
【0129】
この観点では、NS1細胞を用いる生存アッセイ、ラットPC12細胞のサブクローンを実施することができる。これらの細胞は何年もの間に使用されており、また多くの神経生物学的知識は、ニューロン生存と分化に関与する経路(MEK、PI3K、CREB)を含む一次ニューロンにおいて確認される以前に、これらの細胞において最初に獲得されてきた。一方、N2A細胞、マウス神経芽細胞腫は、古典的な神経栄養因子に応答しないが、Jun-キナーゼ阻害剤は、血清枯渇により誘導されるアポトーシスを阻害する。したがってこれらの2つの細胞株におけるアッセイは、"生存促進"タンパク質の多様なタイプを見出すことを助けるだろう。
【0130】
上記のアッセイにおいて、我々は増殖と分化の両方を促進する因子を同定することになるだろうということに留意することが重要である。ニューロン分化を特異的に促進する因子を同定するために、神経突起伸長に基づくNS1分化アッセイを使用することができる。神経変性疾患において軸索または樹状発芽を促進することは、2つの理由のために好都合であり得る。第一にそれは変性ニューロンを助けて、再成長させ及び標的細胞との接触を回復させるだろう。第二にそれは付随的な健常繊維からの発芽と呼ばれる、パーキンソンまたはAD等の神経変性の終末過程を遅らせる代償的現象を強化するだろう。
【0131】
内皮細胞に基づくアッセイ
脳と血管の間の血液脳関門(BBB)は、皮質の髄液と血清組成物との間の区別を担う。BBBは、内皮細胞とアストロサイトの間の密接な接触から生じる。それは脳中の白血球浸透を妨げることによって免疫耐性状態を維持し、そして同一の細胞内シグナル伝達経路を用いて2つの同等の内分泌系の発達を可能にする。しかしながら多くの疾患または外傷におけるBBB整合性は変化し、また白血球及び血清タンパク質は脳に入り、神経炎症を誘導する。簡易なBBBのin vitroモデルは存在しないが、ヒト胚臍帯内皮細胞(HUVEC)等の一次内皮細胞の培養物は、BBB生物学のいくつかの観点をまねることができる。例えばBBB漏れは、細胞内カルシウム放出を刺激するタンパク質によって誘導され得る。BBB整合性を調節するタンパク質を同定する観点において、カルシウム動員アッセイは、トロンビンの有無を問わずHUVECにおいて行うことができる。
【実施例6】
【0132】
マウスモデル
以下のマウスモデルは、本明細書において開示したようなsIL-17RCポリペプチドの生物学的活性を確認するために使用され得る。当該マウスモデルは、Chu等(Gene-engineered models for genetic manipulation and functional analysis of the cardiovascular system in mice. Chang Gung Med J. 2003 Dec;26(12):868-78)、Ma等(Neurocardiovascular regulation in mice: experimental approaches and novel findings. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2003 Nov;30(11):885-93)またはSvenson等(Invited review: Identifying new mouse models of cardiovascular disease: a review of high-throughput screens of mutagenized and inbred strains. J Appl Physiol. 2003 Apr;94(4): 1650-9; discussion 1673)において発表されている。
【0133】
或いは以下のマウスモデルは、Lu等(Lu等、Nature. 2004 Nov 11 ;432(7014): 179-86. Epub 2004 Oct 27)にて開示されるようなsIL-17RCポリペプチドの生物学的活性を、血管発達においてsIL-17RCポリペプチドをアッセイすることによって、特に静脈循環における血液蓄積を測定し及び心嚢活性における流動を測定し、または修飾した動脈血管から得られた末梢抵抗を測定し、または後脳における毛細血管の厚さと分岐を測定し、または内皮端細胞からの糸状仮足の伸長を測定し、またはセグメント間の血管(ISVs)軌道表現型(trajectory phenotype)及びより一般的には脈管分岐欠陥を特徴化することによって確認するために使用され得る。
【0134】
参考文献
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WO 02/38764
WO 2005/051422
WO 01/04304
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】sIL-17RC cDNAの配置、タンパク質及びプライマー配列を示す。
【図2】pEAK12d及びpDEST12.2発現ベクターによりトランスフェクトされたHEK293細胞からのsIL-17RC及びコントロールsIL-17RCexo7アイソフォームの分泌。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含んで成る、溶解性IL-17RC変異体ポリペプチド。
【請求項2】
前記溶解性IL-17RC変異体が血液脳関門の通過を促進する担体分子、ペプチドまたはタンパク質に融合される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記溶解性IL-17RC変異体がペグ化される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記溶解性IL-17RC変異体が免疫グロブリン(Ig)に融合される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
請求項1に記載の溶解性IL-17RC変異体をコードする核酸分子。
【請求項6】
配列番号2のcDNA配列を含んで成る、請求項5に記載の核酸分子DNA。
【請求項7】
請求項5または6に記載の分子を含んで成る、発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターによりトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の宿主細胞を培養するステップを含んで成る、溶解性IL-17RC変異体の生産方法。
【請求項10】
前記宿主細胞から発現タンパク質を単離するステップをさらに含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質を精製するステップをさらに含んで成る、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記精製したタンパク質を医薬組成物に製剤化するステップをさらに含んで成る、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の溶解性IL-17RC変異体と特異的に相互作用する抗体。
【請求項14】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
自己免疫性疾患、炎症性疾患または神経系疾患から成る群から選定される疾患を治療及び/または予防するための医薬を製造するための請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶解性IL-17RCの使用。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶解性IL-17RCを、任意に1種以上の医薬的に許容され得る賦形剤と一緒に含んで成る医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−520479(P2009−520479A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546279(P2008−546279)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012467
【国際公開番号】WO2007/071439
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(507348713)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (29)
【Fターム(参考)】