説明

滅点修理装置および滅点修理方法

【課題】滅点の生じた画素に対して、有機発光素子の欠陥部分を高抵抗化または絶縁化するのに適した大きさの逆バイアス電圧を印加することの可能な滅点修理装置および滅点修理方法を提供する。
【解決手段】各画素200の駆動に用いられる信号線DTL、ゲート線WSLおよびドレイン線DSLに、外部機器である滅点修理装置1の連結線10が連結されており、この連結線10を介して滅点修理装置1から有機EL素子112R等に逆バイアス電圧が印加される。このとき、有機EL素子112R等への逆バイアス電圧の印加は保持容量Cを介したカップリングによって行われるので、トランジスタTDrを介して有機EL素子112R等に逆バイアスを印加した場合よりも、有機EL素子112R等に対して大きな逆バイアス電圧を容易に印加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素の発光素子として有機発光素子を用いた表示装置における滅点を修理する滅点修理装置および滅点修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、画素の発光素子として、流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の光学素子、例えば有機EL(electro luminescence)素子を用いた表示装置が開発され、商品化が進められている。
【0003】
有機EL素子は、液晶素子などと異なり自発光素子である。そのため、有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、光源(バックライト)が必要ないので、光源を必要とする液晶表示装置と比べて画像の視認性が高く、消費電力が低く、かつ素子の応答速度が速い。
【0004】
表示装置に使われる有機EL素子は、陽極、有機層(有機化合物層)および陰極をこの順に積層してなる積層構造となっている。そのため、有機EL素子を形成する過程において、微小なパーティクルなどによって、薄い有機層にピンホール等の欠陥が形成されることがある。例えば、上面発光型の有機EL表示装置の場合には、有機層の厚さが数nm〜数10nmと非常に薄いので、1μm程度のパーティクルが有機EL素子に混入した場合であっても、ピンホール等が生じ得る。
【0005】
有機層にピンホール等の欠陥が存在すると、それによって陽極と陰極との間に電気的なショート回路が形成され、有機層に流れるべき電流の全部または一部がショート回路に流れてしまうことがある。そのような場合には、有機層が発光しないか、または有機層の発光輝度が低くなる現象が発生する。この現象が発生した画素は、滅点画素と呼ばれている。
【0006】
この滅点画素の発生は歩留まりの低下を招く。そのため、従来から、滅点画素に対する種々の対策が講じられている。例えば、特許文献1では、滅点画素に対して、逆バイアス電圧を印加して電流を流し、その電流によって生じる発熱現象を利用して欠陥部分を高抵抗化または絶縁化する方策が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−51384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7は、有機EL表示装置においてマトリクス状に配置された各画素の内部構成の一例を表したものである。図7に示した画素200は、駆動方式としてアクティブマトリクス方式が用いられている場合に一般的に採られる構造を有しており、有機EL素子210およびそれに接続された画素回路220により構成されている。画素回路220は、サンプリング用のトランジスタTWS、保持容量C、駆動用のトランジスタTDrによって構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。
【0009】
画素回路220において、ゲート線WSLがトランジスタTWSのゲートに接続され、ドレイン線DSLがトランジスタTDrのドレインに接続され、信号線DTLがトランジスタTWSのドレインに接続されている。トランジスタTWSのソースはトランジスタTDrのゲートと、保持容量Cの一端に接続されており、トランジスタTDrのソースと保持容量Cの他端とが有機EL素子210のアノードに接続されている。有機EL素子110のカソードは、グラウンド線GNDに接続されている。
【0010】
このような構成の画素100を備えた表示装置では、各画素200において画素回路220がオンオフ制御され、各画素200の有機EL素子210に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、陽極と陰極との間で多重反射し、陰極等を透過して外部に取り出され、その結果、画像が表示される。
【0011】
ところで、上記した画素200において滅点が生じた場合には、例えば、以下のようにして、滅点の生じた画素200のリペアを行うことが考えられる。すなわち、滅点の生じた画素100においてトランジスタTWS,TDrを共にオンした状態で、ドレイン線DSLの電圧をVini(<0)にする。このとき、画素200は、図8に示した等価回路で表されるので、有機EL素子210には、以下の式で表される逆バイアス電圧VEL1が印加される。
EL1=(Vini−Vca)×(REL/(REL+RDr))
【0012】
ここで、RDrはトランジスタTDrのオン抵抗、RELは有機EL素子210のショート抵抗、Vcaは有機EL素子210のカソード電圧をそれぞれ表している。
【0013】
ところで、RDrはRELと比べて極めて大きく、有機EL素子210の分圧比は極めて小さい。そのため、通常、各画素200を駆動する際にドレイン線DSLに印加される程度の電圧(Vini)を、滅点の生じた画素200のドレイン線DSLに印加することにより、有機EL素子210に逆バイアス電圧を印加したとしても、有機EL素子210の欠陥部分を高抵抗化または絶縁化することができない場合があるという問題がある。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、滅点の生じた画素に対して、有機発光素子の欠陥部分を高抵抗化または絶縁化するのに適した大きさの逆バイアス電圧を印加することの可能な滅点修理装置および滅点修理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の滅点修理装置は、以下の表示装置における滅点を修理するものである。修理対象となる表示装置は、有機発光素子および画素回路を画素ごとに有する表示部と、画素回路に接続された第1ないし第4の配線とを備えたものである。画素回路には、第1トランジスタと、第2トランジスタと、保持容量とが設けられている。第1のトランジスタのゲートが第1の配線に接続されており、第1のトランジスタのドレインまたはソースが第3の配線に接続されている。第1のトランジスタのドレインおよびソースのうち第3の配線に未接続の方が第2のトランジスタのゲートおよび保持容量の一端に接続されている。第2のトランジスタのドレインまたはソースが第2の配線に接続されており、第2のトランジスタのドレインおよびソースのうち第2の配線に未接続の方が保持容量の他端および有機発光素子のアノードに接続されている。有機発光素子のカソードが第4の配線に接続されている。そして、本滅点修理装置は、上記した表示装置の第1の配線に連結される第1の駆動部と、上記した表示装置の第2の配線に連結される第2の駆動部と、上記した表示装置の第3の配線に連結される第3の駆動部と、制御部とを備えている。ここで、第1の駆動部は、第1のトランジスタのオン電圧以上の第1の電圧を第1の配線に出力可能となっている。第2の駆動部は、第2の電圧と、第2の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第3の電圧とを第2の配線に出力可能となっている。第3の駆動部は、第2のトランジスタの閾値電圧よりも高い第4の電圧と、第4の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第5の電圧とを第3配線に出力可能となっている。制御部は、第1ないし第3の駆動部に対して以下の(A),(B)の各ステップを順次実行することを指示する制御信号を出力するようになっている。
【0016】
(A)第1の駆動部が第1の配線の電圧を第1の電圧にし、第2の駆動部が第2の配線の電圧を第2の電圧にし、第3の駆動部が第3配線の電圧を第4の電圧にする準備ステップ
(B)第1の配線の電圧が第1の電圧となっている時に、第2の駆動部が第2の配線の電圧を第3の電圧にし、第3の駆動部が第3配線の電圧を第5の電圧にする逆バイアス電圧印加ステップ
【0017】
本発明の滅点修理方法は、以下の滅点修理装置を用いて以下の表示装置における滅点を修理するものである。
【0018】
修理対象となる表示装置は、有機発光素子および画素回路を画素ごとに有する表示部と、画素回路に接続された第1ないし第4の配線とを備えたものである。画素回路には、第1トランジスタと、第2トランジスタと、保持容量とが設けられている。第1のトランジスタのゲートが第1の配線に接続されており、第1のトランジスタのドレインまたはソースが第3の配線に接続されている。第1のトランジスタのドレインおよびソースのうち第3の配線に未接続の方が第2のトランジスタのゲートおよび保持容量の一端に接続されている。第2のトランジスタのドレインまたはソースが第2の配線に接続されており、第2のトランジスタのドレインおよびソースのうち第2の配線に未接続の方が保持容量の他端および有機発光素子のアノードに接続されている。有機発光素子のカソードが第4の配線に接続されている。
【0019】
一方、上記した表示装置の修理に用いられる滅点修理装置は、上記した表示装置の第1の配線に連結される第1の駆動部と、上記した表示装置の第2の配線に連結される第2の駆動部と、上記した表示装置の第3の配線に連結される第3の駆動部とを備えている。ここで、第1の駆動部は、第1のトランジスタのオン電圧以上の第1の電圧を第1の配線に出力可能となっている。第2の駆動部は、第2の電圧と、第2の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第3の電圧とを第2の配線に出力可能となっている。第3の駆動部は、第2のトランジスタの閾値電圧よりも高い第4の電圧と、第4の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第5の電圧とを第3配線に出力可能となっている。そして、本発明の滅点修理方法は、上記した滅点修理装置の第1ないし第3の駆動部において上記した(A),(B)の各ステップを順次実行するものである。
【0020】
本発明の滅点修理装置および滅点修理方法では、外部機器(滅点修理装置)を用いることにより、滅点の生じた画素において、第1の配線の電圧が第1の電圧に設定され、第2の配線の電圧が第2の電圧に設定され、第3配線の電圧が第4の電圧に設定されたのち、第1の配線の電圧が第1の電圧となっている時に、第2の配線の電圧が第3の電圧に設定され、第3配線の電圧が第5の電圧に設定される。これにより、第2のトランジスタのソース電圧が保持容量を介したカップリングによって、(第5の電圧−第4の電圧)×(保持容量/(保持容量+第2のトランジスタのゲート−ドレイン間の寄生容量)となり、有機発光素子に逆バイアスが印加される。これにより、トランジスタを介して有機発光素子に逆バイアスを印加した場合よりも、有機発光素子に対して大きな逆バイアス電圧を容易に印加することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の滅点修理装置および滅点修理方法によれば、外部機器(滅点修理装置)を用いて、滅点の生じた画素において、第1の配線の電圧を第1の電圧に設定し、第2の配線の電圧を第2の電圧に設定し、第3配線の電圧を第4の電圧に設定するようにしたので、有機発光素子に対して大きな逆バイアス電圧を印加することができる。これにより、有機発光素子の欠陥部分を高抵抗化または絶縁化するのに適した大きさの逆バイアス電圧を印加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係る滅点修理装置1の全体構成を、修理対象となる表示装置100と共に表したものである。以下では、まず、表示装置100について説明したのち、滅点修理装置1について説明する。
【0024】
(表示装置100)
表示装置100は、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板(図示せず)上に、表示部110と、表示部110の周辺に形成された周辺回路部120(駆動部)とを備えている。
【0025】
表示部110は、複数の画素111を表示部110の全面に渡ってマトリクス状に配置したものであり、外部から入力された映像信号120aに基づく画像をアクティブマトリクス駆動により表示するものである。各画素111は、赤色用の画素111Rと、緑色用の画素111Gと、青色用の画素111Bとを含んでいる。
【0026】
図2は、画素111R,111G,111Bの内部構成の一例を表したものである。画素111R,111G,111B内には、図2に示したように、有機EL素子112R,112G,112B(発光素子)と、画素回路113とが設けられている。
【0027】
有機EL素子112R,112G,112B(以下、有機EL素子112R等と称する。)は、例えば、図示しないが、陽極(アノード)、有機層および陰極(カソード)が順に積層された構成を有している。有機層は、例えば、陽極の側から順に、正孔注入効率を高める正孔注入層と、発光層への正孔輸送効率を高める正孔輸送層と、電子と正孔との再結合による発光を生じさせる発光層と、発光層への電子輸送効率を高める電子輸送層とを積層してなる積層構造を有している。有機層に含まれる各層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層など)の材料は、有機EL素子112R等の発光色に応じた材料となっている。
【0028】
画素回路113は、サンプリング用のトランジスタTWS(第1のトランジスタ)、駆動用のトランジスタTDr(第2のトランジスタ)、保持容量Cによって構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。トランジスタTWS,TDrは、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により形成されている。
【0029】
周辺回路部120は、タイミング制御回路121と、水平駆動回路122と、書き込み走査回路123と、電源走査回路124とを有している。タイミング制御回路121は、信号生成回路121Aと、信号保持制御回路121Bとを含んでいる。また、周辺回路部120には、ゲート線WSL(第1配線)と、ドレイン線DSL(第2配線)と、信号線DTL(第3配線)と、グラウンド線GND(第4配線)とが設けられている。グラウンド線GNDは、グラウンドに接続されており、グラウンド電圧(参照電圧)に設定される。
【0030】
信号生成回路121Aは、外部から入力された映像信号120aに基づいて、例えば1画面ごと(1フィールドの表示ごと)に表示部110に表示するための表示信号121aを生成するようになっている。
【0031】
信号保持制御回路121Bは、信号生成回路121Aから出力された表示信号121aを1画面ごと(1フィールドの表示ごと)に、例えばSRAM(Static Random Access Memory)などから構成されたフィールドメモリに格納して保持するようになっている。
【0032】
この信号保持制御回路121Bはまた、各画素111を駆動する水平駆動回路122、書き込み走査回路123および電源走査回路124が連動して動作するように制御する役割も果たしている。具体的には、信号保持制御回路121Bは、書き込み走査回路123に対しては制御信号121bを、電源走査回路124に対しては制御信号121cを、水平駆動回路122に対しては制御信号121dをそれぞれ出力するようになっている。
【0033】
水平駆動回路122は、信号保持制御回路121Bから出力された制御信号121dに応じて、2種類の電圧(Vofs、Vsig)を出力可能となっている。具体的には、水平駆動回路122は、表示部110の各画素11に接続された信号線DTLを介して、書き込み走査回路123により選択された画素111へ2種類の電圧(Vofs、Vsig)を供給するようになっている。
【0034】
ここで、Vsigは、映像信号120aに対応する電圧値となっている。Vsigの最小電圧はVofsよりも低い電圧値となっており、Vsigの最大電圧はVofsよりも高い電圧値となっている。
【0035】
書き込み走査回路123は、信号保持制御回路121Bから出力された制御信号121bに応じて、2種類の電圧(Von1、Voff1)を出力可能となっている。具体的には、書き込み走査回路123は、表示部110の各画素111に接続されたゲート線WSLを介して、駆動対象の画素111へ2種類の電圧(Von1、Voff1)を供給し、サンプリング用のトランジスタTWSを制御するようになっている。
【0036】
ここで、Von1は、トランジスタTWSのオン電圧以上の値となっている。Von1は、後述の「Vth補正準備期間」および「最初のVth補正期間」に書き込み走査回路123から出力される電圧値である。また、Voff1は、トランジスタTWSのオン電圧よりも低い値となっており、かつ、Von1よりも低い値となっている。Voff1は、後述の「Vth補正休止期間」および「発光期間」に書き込み走査回路123から出力される電圧値である。
【0037】
電源走査回路124は、信号保持制御回路121Bから出力された制御信号121cに応じて、2種類の電圧(Vini、Vcc)を出力可能となっている。具体的には、電源走査回路124は、表示部110の各画素111に接続されたドレイン線DSLを介して、駆動対象の画素111へ2種類の電圧(Vini、Vcc)を供給し、有機EL素子112R等の発光および消光を制御するようになっている。
【0038】
ここで、Viniは、有機EL素子112R等の閾値電圧Velと、有機EL素子112R等のカソードの電圧Vcaとを足し合わせた電圧(Vel+Vca)よりも低い電圧値である。また、Vccは、電圧(Vel+Vca)以上の電圧値である。
【0039】
次に、図1、図2を参照して、各構成要素の接続関係について説明する。書き込み走査回路123から引き出されたゲート線WSLは、行方向に延在して形成されており、トランジスタTWSのゲートに接続されている。電源走査回路124から引き出されたドレイン線DSLも行方向に延在して形成されており、トランジスタTDrのドレインに接続されている。また、水平駆動回路122から引き出された信号線DTLは列方向に延在して形成されており、トランジスタTWSのドレインに接続されている。トランジスタTWSのソースは駆動用のトランジスタTDrのゲートと、保持容量Cの一端に接続されている。トランジスタTDrのソースが保持容量Cの他端と、有機EL素子112R等のアノードとに接続されている。有機EL素子112R等のカソードは、グラウンド線GNDに接続されている。
【0040】
(滅点修理装置1)
滅点修理装置1は、連結部10と、修理制御部20とを備えている。
【0041】
修理制御部20は、タイミング制御回路21(制御部)と、水平駆動回路22(第3駆動部)と、書き込み走査回路23(第1駆動部)と、電源走査回路24(第2駆動部)とを有している。タイミング制御回路21は、信号生成回路(図示せず)と、信号保持制御回路(図示せず)とを含んでいる。また、水平駆動回路22、書き込み走査回路23および電源走査回路24には連結部10が連結されている。連結部10には、連結線10A,10B,10Cが含まれており、連結線10Aが信号線DTLに連結され、連結線10Bがゲート線WSLに連結され、連結線10Cがドレイン線DSLに連結されている。
【0042】
さらに、連結線10Aには、図2に示したように、画素111R用の連結線10A、画素111G用の連結線10A、画素111B用の連結線10Aが含まれており、連結線10Aが画素111R用の信号線DTLに連結され、連結線10Aが画素111G用の信号線DTLに連結され、連結線10Aが画素111B用の信号線DTLに連結されている。また、連結線10Bには、図2に示したように、画素111R用の連結線10B、画素111G用の連結線10B、画素111B用の連結線10Bが含まれており、連結線10Bが画素111R用のゲート線WSLに連結され、連結線10Bが画素111G用のゲート線WSLに連結され、連結線10Bが画素111B用のゲート線WSLに連結されている。また、連結線10Cには、図2に示したように、画素111R用の連結線10C、画素111G用の連結線10C、画素111B用の連結線10Cが含まれており、連結線10Cが画素111R用のドレイン線DSLに連結され、連結線10Cが画素111G用のドレイン線DSLに連結され、連結線10Cが画素111B用のドレイン線DSLに連結されている。
【0043】
信号生成回路は、外部から入力された修理信号20aに基づいて、例えば、修理対象となる、滅点の生じる画素111R,111G,111Bに対して所定の逆バイアス電圧を印加するためのバイアス信号を生成するようになっている。
【0044】
信号保持制御回路は、信号生成回路から出力されたバイアス信号を例えばSRAMなどから構成されたフィールドメモリに格納して保持するようになっている。この信号保持制御回路はまた、各画素11を駆動する水平駆動回路22、書き込み走査回路23および電源走査回路24が連動して動作するように制御する役割も果たしている。具体的には、信号保持制御回路は、書き込み走査回路23に対しては制御信号21bを、電源走査回路124に対しては制御信号21cを、水平駆動回路22に対しては制御信号21dをそれぞれ出力するようになっている。
【0045】
水平駆動回路22は、信号保持制御回路から出力された制御信号21dに応じて、2種類の電圧(V、V)を出力可能となっている。具体的には、水平駆動回路22は、連結線10A(10A、10A、10A)および信号線DTLを介して、書き込み走査回路23により選択された画素111へ2種類の電圧(V、V)を供給するようになっている。
【0046】
ここで、Vは、トランジスタTDrの閾値電圧Vthよりも高い正の電圧値となっている。また、Vは、Vよりも低く、かつゼロボルトよりも低い電圧値となっている。
【0047】
書き込み走査回路23は、信号保持制御回路から出力された制御信号21bに応じて、2種類の電圧(Von2、Voff2)を出力可能となっている。具体的には、書き込み走査回路123は、連結線10B(10B、10B、10B)およびゲート線WSLを介して、修理対象の画素111へ2種類の電圧(Von2、Voff2)を供給し、トランジスタTWSを制御するようになっている。
【0048】
ここで、Von2は、トランジスタTWSのオン電圧以上の値となっている。Von2は、少なくとも後述の「逆バイアス電圧印加期間」に書き込み走査回路23から出力される電圧値である。また、Voff2は、トランジスタTWSのオン電圧よりも低い値となっており、かつ、Von2よりも低い値となっている。Voff2は、必要に応じて書き込み走査回路23から出力される電圧値である。
【0049】
電源走査回路24は、信号保持制御回路から出力された制御信号21cに応じて、2種類の電圧(V、V)を出力可能となっている。具体的には、電源走査回路24は、連結線10C(10C、10C、10C)およびドレイン線DSLを介して、修理対象の画素11へ2種類の電圧(V、V)を供給するようになっている。
【0050】
ここで、Vは、後述の「準備期間」における信号線DTLの電圧と同一またはほぼ同一の電圧値となっている。また、Vは、後述の「逆バイアス電圧印加期間」における信号線DTLの電圧と同一またはほぼ同一の電圧値となっている。
【0051】
次に、本実施の形態の表示装置100の動作(消光から発光までの動作)の一例について説明する。本実施の形態では、有機EL素子112R等のI−V特性が経時変化したり、トランジスタTDrの閾値電圧Vthや移動度μが経時変化したりしても、それらの影響を受けることなく、有機EL素子112R等の発光輝度を一定に保つようにするために、有機EL素子112R等のI−V特性の変動に対する補償動作およびトランジスタTDrの閾値電圧Vthや移動度μの変動に対する補正動作を組み込んでいる。
【0052】
図3は、表示装置100における各種波形の一例を表したものである。図3には、ゲート線WSLに2種類の電圧(Von1、Voff1)が、ドレイン線DSLに2種類の電圧(Vcc、Vini)が、信号線DTLに2種類の電圧(Vsig、Vofs1)が印加されている様子が示されている。さらに、図3には、ゲート線WSL、ドレイン線DSLおよび信号線DTLへの電圧印加に応じて、トランジスタTDrのゲート電圧Vおよびソース電圧Vが時々刻々変化している様子が示されている。
【0053】
(Vth補正準備期間)
まず、Vth補正の準備を行う。具体的には、ゲート線WSLの電圧がVoff1となっており、信号線DTLの電圧がVsigとなっており、ドレイン線DSLの電圧がVccとなっている時(つまり有機EL素子112R等が発光している時)に、電源走査回路124が制御信号121cに応じてドレイン線DSLの電圧をVccからViniに下げる(T)。すると、ソース電圧VがViniとなり、有機EL素子112R等が消光する。次に、水平駆動回路122が制御信号121dに応じて信号線DTLの電圧をVsigからVofsに切り替えたのち、ドレイン線DSLの電圧がViniとなっている間に、書き込み走査回路123が制御信号121bに応じてゲート線WSLの電圧をVoff1からVon1に上げる(T)。すると、ゲート電圧VがVofsに下がる。このとき、ゲート電圧Vとソース電圧Vとの電位差Vgs(=Vofs−Vini)がトランジスタTDrの閾値電圧Vthよりも大きくなるように、電源走査回路124および水平駆動回路122では、ドレイン線DSLおよび信号線DTLへの印加電圧(Vini、Vofs)が設定されている。
【0054】
(最初のVth補正期間)
次に、Vthの補正を行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVofsとなっている間に、電源走査回路124が制御信号121cに応じてドレイン線DSLの電圧をViniからVccに上げる(T)。すると、トランジスタTDrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れ、ソース電圧Vが上昇する。その後、水平駆動回路122が制御信号121dに応じて信号線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える前に、書き込み走査回路123が制御信号121bに応じてゲート線WSLの電圧をVon1からVoff1に下げる(T)。すると、トランジスタTDrのゲートがフローティングとなり、Vthの補正が一旦停止する。
【0055】
(最初のVth補正休止期間)
Vth補正が休止している期間中(すなわち、ゲート線WSLの電圧がVoff1となっており、かつドレイン線DSLの電圧がVccとなっている間)は、先のVth補正を行った行(画素)とは異なる他の行(画素)において、信号線DTLの電圧のサンプリングが行われる。具体的には、水平駆動回路122が、Vth補正が休止している期間中に、信号線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替えたのち、VsigからVofsに切り替える動作を行い、書き込み走査回路123が、信号線DTLの電圧がVsigとなっている間に、先のVth補正を行った行(画素)とは異なる他の行(画素)に接続されたゲート線WSLの電圧をVoff1からVon1に上げたのち、Von1からVoff1に切り替える。従って、水平駆動回路22は、ある行(画素)においてVth補正を実行するために1周期(図中の1Hで示された期間)の前半に信号線DTLの電圧をVofsとし、他の行(画素)においてサンプリングを行うために1周期の後半に信号線DTLの電圧をVsigとする動作を実行する。
【0056】
なお、Vth補正が不十分である場合、すなわち、トランジスタTDrのゲート−ソース間の電位差VgsがトランジスタTDrの閾値電圧Vthよりも大きい場合には、Vth補正休止期間中にも、先のVth補正を行った行(画素)において、トランジスタTDrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れ、ソース電圧Vが上昇し、保持容量Cを介したカップリングによりゲート電圧Vも上昇する。
【0057】
(2回目のVth補正期間)
Vth補正休止期間が終了した後、Vthの補正を再び行う。具体的には、ドレイン線DSLの電圧がVccとなっており、かつ信号線DTLの電圧がVofsとなっており、Vth補正が可能となっている時に、書き込み走査回路23が制御信号21bに応じてゲート線WSLの電圧をVoff1からVon1に上げ(T)、トランジスタTDrのゲートを信号線DTLに接続する。このとき、ソース電圧VがVofs−Vthよりも低い場合(Vth補正がまだ完了していない場合)には、トランジスタTDrがカットオフするまで(電位差VgsがVthになるまで)、トランジスタTDrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れる。これにより、ゲート電圧VがVofsとなり、ソース電圧Vが上昇し、その結果、保持容量CがVthに充電され、電位差VgsがVthとなる。その後、水平駆動回路122が信号線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える前に、書き込み走査回路123がゲート線WSLの電圧をVon1からVoff1に下げる(T)。すると、トランジスタTDrのゲートがフローティングとなるので、電位差Vgsを信号線DTLの電圧の大きさに拘わらずVthのままで維持することができる。このように、電位差VgsをVthに設定することにより、トランジスタTDrの閾値電圧Vthが画素回路13ごとにばらついた場合であっても、有機EL素子112R等の発光輝度がばらつくのをなくすることができる。
【0058】
(2回目のVth補正休止期間)
その後、Vth補正の休止期間中(すなわち、ゲート線WSLの電圧がVoff1となっており、かつドレイン線DSLの電圧がVccとなっている間)に、水平駆動回路122が制御信号121dに応じて信号線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える。
【0059】
(書き込み・μ補正期間)
2回目のVth補正休止期間が終了した後、書き込みとμ補正を行う。具体的には、信号線DTLの電圧がVsigとなっている間に、書き込み走査回路123が制御信号121bに応じてゲート線WSLの電圧をVoff1からVon1に上げ(T)、トランジスタTDrのゲートを信号線DTLに接続する。すると、トランジスタTDrのゲートの電圧が信号線DTLの電圧Vsigとなる。このとき、有機EL素子112R等のアノードの電圧はこの段階ではまだ有機EL素子112R等の閾値電圧Velよりも小さく、有機EL素子112R等はカットオフしている。そのため、電流Idsは有機EL素子112R等の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VがΔV3だけ上昇し、やがて電位差VgsがVsig+Vth−ΔV3となる。このようにして、書き込みと同時にμ補正が行われる。ここで、トランジスタTDrの移動度μが大きい程、ΔV3も大きくなるので、電位差Vgsを発光前にΔV3だけ小さくすることにより、画素ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。
【0060】
(発光期間)
最後に、書き込み走査回路123が制御信号121bに応じてゲート線WSLの電圧をVon1からVoff1に下げる(T)。すると、トランジスタTDrのゲートがフローティングとなり、トランジスタTDrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れ、ソース電圧Vが上昇する。その結果、有機EL素子112R等に閾値電圧Vel以上の電圧が印加され、有機EL素子112R等が所望の輝度で発光する。
【0061】
本実施の形態の表示装置100では、上記のようにして、各画素111において画素回路113がオンオフ制御され、各画素111の有機EL素子112R等に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、陽極と陰極との間で多重反射し、陰極等を透過して外部に取り出される。その結果、表示部110において画像が表示される。
【0062】
ところで、上記した有機EL素子112R等では、有機層の厚さが数nm〜数10nmと非常に薄い。そのため、有機EL素子112R等を製造する過程で、1μm程度のパーティクルが有機EL素子112R等に混入した場合には、有機層にピンホール等が生じ得る。有機層にピンホール等の欠陥が存在すると、それによって陽極と陰極との間に電気的なショート回路が形成され、有機層に流れるべき電流の全部または一部がショート回路に流れてしまうことがある。そのような場合には、有機層が発光しないか、または有機層の発光輝度が低くなり、滅点画素が発生する。
【0063】
この滅点画素の発生は歩留まりの低下を招く。そのため、滅点画素を修理することにより歩留まりの低下を抑えることが必要となる。滅点画素の修理方法の一つとして、有機EL素子112R等に逆バイアス電圧を印加し、有機EL素子112R等の欠陥部分を高抵抗化または絶縁化する方法がある。
【0064】
例えば、図13に示したような2Tr1Cの回路構成を有する画素200を備えた表示装置において、有機EL素子210に逆バイアス電圧を印加するためには、滅点の生じた画素200において、トランジスタTWS,TDrを共にオンした状態で、ドレイン線DSLの電圧をVini(<0)にすればよい。このとき、画素200は、図14に示した等価回路で表されるので、有機EL素子210には、以下の式で表される逆バイアス電圧VEL1を印加することができる。
EL1=(Vini−Vca)×(REL/(REL+RDr))
【0065】
ここで、RDrはトランジスタTDrのオン抵抗、RELは有機EL素子210のショート抵抗、Vcaは有機EL素子210のカソード電圧をそれぞれ表している。
【0066】
ところで、RDrはRELと比べて極めて大きく、有機EL素子210の分圧比が小さい。そのため、通常、各画素200を駆動する際にドレイン線DSLに印加される程度の電圧(Vini)を、滅点の生じた画素200のドレイン線DSLに印加することにより、有機EL素子210に逆バイアス電圧を印加したとしても、有機EL素子210の欠陥部分を高抵抗化または絶縁化することができない場合がある。
【0067】
一方、本実施の形態の表示装置1では、図1、図2に示したように、各画素200の駆動に用いられる信号線DTL、ゲート線WSLおよびドレイン線DSLに、外部機器である滅点修理装置1の連結線10が連結されており、この連結線10を介して滅点修理装置1から有機EL素子112R等に逆バイアス電圧が印加されるようになっている。これにより、例えば、以下に示した手順により、滅点の生じた画素111R,111G,111Bの修理を行うことができる。
【0068】
(準備期間)
図4は、滅点画素の修理を行う際の各種波形の一例を表したものである。まず、滅点の生じた画素111R,111G,111Bにおいて、図4、図5(A)に示したように、書き込み走査回路23が制御信号21bに応じてゲート線WSLの電圧をVonに設定し、電源走査回路24が制御信号21cに応じてドレイン線DSLの電圧をVに設定し、水平駆動回路22が制御信号21dに応じて信号線DTLの電圧をVに設定する。すると、トランジスタTWSがオンし、トランジスタTDrのゲート電圧が信号線DTLの電圧(V>0)と等しくなるので、トランジスタTDrもオンし、トランジスタTDrの有機EL素子112R等側の電圧(有機EL素子112R等のアノード電圧)がVに近い値となる。このようにして、逆バイアス電圧を印加する前に、有機EL素子112R等のアノード電圧を所定の値に設定しておく。
【0069】
(逆バイアス電圧印加期間)
次に、図4、図5(B)に示したように、ゲート線WSLの電圧がVonとなっている時に、電源走査回路24が制御信号21cに応じてドレイン線DSLの電圧をV(<0)に下げ、水平駆動回路22が制御信号21dに応じて信号線DTLの電圧をV(<0)に下げる(T10)。すると、ランジスタTDrのソース電圧Vが保持容量Cを介したカップリングによって、V+VEL2となり、有機EL素子112R等に逆バイアス電圧(VEL2−Vca)が印加される。つまり、トランジスタTDrを介さずに有機EL素子112R等に逆バイアス電圧が印加されている。なお、VEL2は以下の式で表される。
EL2=(V−V)×(C/(C+Cel
【0070】
次に、図4に示したように、所定の期間が経過したところで、電源走査回路24が制御信号21cに応じてドレイン線DSLの電圧をVに上げる(T11)。すると、トランジスタTDrのソース電圧VもVとなり、有機EL素子112R等への逆バイアスの印加が終了する。その後、水平駆動回路22が制御信号21dに応じて信号線DTLの電圧をVに戻しておく(T12)。
【0071】
なお、図4には、有機EL素子112R等に対して、断続的に逆バイアス電圧が印加されている場合が例示されているが、連続で逆バイアス電圧が印加されるようにしてもよい。また、図4には、水平駆動回路22および電源走査回路24が制御信号21c,21dに応じてドレイン線DSLおよび信号線DTLにV、Vを同時に出力しているが、どちらかを先に出力するようにしてもよい。
【0072】
本実施の形態では、上記のように保持容量Cを介したカップリングを利用することにより、トランジスタTDrを介さずに有機EL素子112R等に逆バイアスを印加している。そのため、トランジスタTDrを介して有機EL素子112R等に逆バイアスを印加した場合よりも、有機EL素子112R等に対して大きな逆バイアス電圧を容易に印加することができる。その結果、有機EL素子112R等の欠陥部分を高抵抗化または絶縁化するのに適した大きさの逆バイアス電圧を印加することができるので、滅点画素をより確実に修理することができる。
【0073】
ところで、本実施の形態では、書き込み・μ補正期間における書き込み動作時に、信号線DTLに対して電圧Vsigが印加され、保持容量Cに、以下の式で表される電圧Vinが書き込まれる。
in=Vsig−Vsig×(C/(C+Cel))
【0074】
このとき、通常は、保持容量Cへの書き込み電圧Vinを大きくするために、Cの値がCelよりも十分に小さくなるように、Cの値が設定される。そのため、有機EL素子112R等に対して大きな逆バイアス電圧(VEL2−Vca)を印加するためには、信号線DTLに印加する電圧Vを大きくすることが必要となる。例えば、C/(C+Celを0.2程度となるようにCの値が設定されている場合に、Vini−Vcaを−5Vに設定したときには、電圧Vを−25V程度にすることが必要となる。従って、このような大きな電圧を表示装置100内に設けた駆動回路から有機EL素子112R等に印加するよりは、本実施の形態のように、外部機器である滅点修理装置1から有機EL素子112R等に印加する方が、表示装置100の製造コスト抑制などの観点から好ましい。
【0075】
[変形例]
上記実施の形態では、滅点画素の修理に際して、信号線DTLに単一の電圧Vを印加していたが、信号線DTLに画素111R,111G,111Bごとに異なる電圧を印加するようにしてもよい。そのようにした場合には、有機EL素子112R,112G,112Bごとに異なる大きさの逆バイアス電圧を印加することができる。
【0076】
一般に、有機EL素子112R,112G,112Bでは、有機層は発光色の波長に応じた厚さとなっており、滅点画素の修理に最適な逆バイアス電圧の大きさは有機層の厚さに応じて異なっている。例えば、図6に示したように、赤色光を発する有機EL素子112Rの最適電圧Vは、緑色光を発する有機EL素子112Gの最適電圧Vおよび青色光を発する有機EL素子112Bの最適電圧Vよりも大きく、有機EL素子112Gの最適電圧Vは青色光を発する有機EL素子112Bの最適電圧Vよりも大きい。そのため、上記実施の形態のように、有機層の厚さに関係なく一律に、信号線DTLに単一の電圧Vを印加した場合には、ある有機層にとっては滅点画素の修理に最適な大きさの逆バイアス電圧の大きさとなっていない可能性がある。
【0077】
一方、本変形例のように、信号線DTLに画素111R,111G,111Bごとに異なる電圧を印加するようにした場合には、有機層の厚さに応じて滅点画素の修理に最適な大きさの逆バイアス電圧(V、V、V)を有機EL素子112R,112G,112Bに印加することができる。これにより、修理によって滅点画素をなくすることが可能となる。
【0078】
なお、滅点画素の修理に最適な逆バイアス電圧を大幅に超えることは好ましくない。例えば、図6に示したように、Vよりも大幅に大きな電圧(例えばV程度の電圧)を有機EL素子112Bに印加した場合には、有機EL層を破壊してしまうことが多くなり、滅点画素をなくすることができないからである。
【0079】
以上、実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0080】
例えば、上記実施の形態等では、表示装置100がアクティブマトリクス型である場合について説明したが、アクティブマトリクス駆動のための画素回路113の構成は上記実施の形態等で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを画素回路13に追加してもよい。その場合、画素回路113の変更に応じて、上述した水平駆動回路122、書き込み走査回路123、電源走査回路124のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0081】
また、上記実施の形態等では、水平駆動回路22,122、書き込み走査回路23,123および電源走査回路24,124の駆動を信号保持制御回路が制御していたが、他の回路がこれらの駆動を制御するようにしてもよい。また、水平駆動回路22,122、書き込み走査回路23,123および電源走査回路24,124の制御は、ハードウェア(回路)で行われていてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施の形態に係る滅点修理装置の一例を表す構成図である。
【図2】図1の表示装置の画素の内部構成の一例を表す構成図である。
【図3】図1の表示装置の発光動作の一例について説明するための波形図である。
【図4】図1の滅点修理装置の滅点補正の動作の一例について説明するための波形図である。
【図5】滅点補正時の逆バイアスについて説明するための等価回路図である。
【図6】逆バイアス電圧と滅点個数との関係の一例を有機EL素子の発光色ごとに表す特性図である。
【図7】従来の表示装置の画素の内部構成の一例を表す構成図である。
【図8】図7の構成における滅点補正時の逆バイアスについて説明するための等価回路図である。
【符号の説明】
【0083】
1…滅点修理装置、10,10A,10B,10C…連結部、20…修理制御部、21,121…タイミング制御回路、22,122…水平駆動回路、23,123…書き込み走査回路、24,124…電源走査回路、100…表示装置、110…表示部、111,111R,111G,111B…画素、112R,112G,112B…有機EL素子、113…画素回路、120…周辺回路部、121A…表示信号生成回路、121B…表示信号保持制御回路、C…保持容量、DSL…ドレイン線、DTL…信号線、Ids…電流、TDr,TWS…トランジスタ、V…ゲート電圧、Vgs…電位差、V…ソース電圧、Vth…閾値電圧、WSL…ゲート線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光素子および画素回路を画素ごとに有する表示部と、
前記画素回路に接続された第1ないし第4の配線と
を備え、
前記画素回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、保持容量とを有し、
前記第1のトランジスタのゲートが前記第1の配線に接続され、
前記第1のトランジスタのドレインまたはソースが前記第3の配線に接続され、
前記第1のトランジスタのドレインおよびソースのうち前記第3の配線に未接続の方が前記第2のトランジスタのゲートおよび前記保持容量の一端に接続され、
前記第2のトランジスタのドレインまたはソースが前記第2の配線に接続され、
前記第2のトランジスタのドレインおよびソースのうち前記第2の配線に未接続の方が前記保持容量の他端および前記有機発光素子のアノードに接続され、
前記有機発光素子のカソードが前記第4の配線に接続された表示装置の前記第1の配線に連結される第1の駆動部と、前記表示装置の前記第2の配線に連結される第2の駆動部と、前記表示装置の前記第3の配線に連結される第3の駆動部と、制御部とを備え、
前記第1の駆動部は、前記第1のトランジスタのオン電圧以上の第1の電圧を前記第1の配線に出力可能となっており、
前記第2の駆動部は、第2の電圧と、前記第2の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第3の電圧とを前記第2の配線に出力可能となっており、
前記第3の駆動部は、前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも高い第4の電圧と、前記第4の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第5の電圧とを前記第3配線に出力可能となっており、
前記制御部は、前記第1ないし第3の駆動部に対して以下の(A),(B)の各ステップを順次実行することを指示する制御信号を出力する滅点修理装置。
(A)前記第1の駆動部が前記第1の配線の電圧を前記第1の電圧にし、前記第2の駆動部が前記第2の配線の電圧を前記第2の電圧にし、前記第3の駆動部が前記第3配線の電圧を前記第4の電圧にする準備ステップ
(B)前記第1の配線の電圧が前記第1の電圧となっている時に、前記第2の駆動部が前記第2の配線の電圧を前記第3の電圧にし、前記第3の駆動部が前記第3配線の電圧を前記第5の電圧にする逆バイアス電圧印加ステップ
【請求項2】
前記制御部は、前記逆バイアス電圧印加ステップにおいて、前記第2の駆動部および前記第3の駆動部が前記第3の電圧および前記第5の電圧を同時に出力することを指示する制御信号を出力する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記有機発光素子は、陽極と、当該有機発光素子の発光色に応じた材料によって形成された有機発光層と、陰極とをこの順に積層してなる積層構造となっており、
前記第3の駆動部は、前記有機発光層の厚さに応じた大きさの電圧を前記第5の電圧として前記第3配線に出力可能となっている請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
有機発光素子および画素回路を画素ごとに有する表示部と、
前記画素回路に接続された第1ないし第4の配線と
を備え、
前記画素回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、保持容量とを有し、
前記第1のトランジスタのゲートが前記第1の配線に接続され、
前記第1のトランジスタのドレインまたはソースが前記第3の配線に接続され、
前記第1のトランジスタのドレインおよびソースのうち前記第3の配線に未接続の方が前記第2のトランジスタのゲートおよび前記保持容量の一端に接続され、
前記第2のトランジスタのドレインまたはソースが前記第2の配線に接続され、
前記第2のトランジスタのドレインおよびソースのうち前記第2の配線に未接続の方が前記保持容量の他端および前記有機発光素子のアノードに接続され、
前記有機発光素子のカソードが前記第4の配線に接続された表示装置の前記第1の配線に連結される第1の駆動部と、前記表示装置の前記第2の配線に連結される第2の駆動部と、前記表示装置の前記第3の配線に連結される第3の駆動部とを備え、
前記第1の駆動部は、前記第1のトランジスタのオン電圧以上の第1の電圧を前記第1の配線に出力可能となっており、
前記第2の駆動部は、第2の電圧と、前記第2の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第3の電圧とを前記第2の配線に出力可能となっており、
前記第3の駆動部は、前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも高い第4の電圧と、前記第4の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第5の電圧とを前記第3配線に出力可能となっている滅点修理装置の前記第1ないし第3の駆動部が以下の(A),(B)の各ステップを順次実行する滅点修理方法。
(A)前記第1の駆動部が前記第1の配線の電圧を前記第1の電圧にし、前記第2の駆動部が前記第2の配線の電圧を前記第2の電圧にし、前記第3の駆動部が前記第3配線の電圧を前記第4の電圧にする準備ステップ
(B)前記第1の配線の電圧が前記第1の電圧となっている時に、前記第2の駆動部が前記第2の配線の電圧を前記第3の電圧にし、前記第3の駆動部が前記第3配線の電圧を前記第5の電圧にする逆バイアス電圧印加ステップ
【請求項5】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
有機発光素子および画素回路を画素ごとに有する表示部と、
前記画素回路に接続された第1ないし第4の配線と
を有し、
前記画素回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、保持容量とを有し、
前記第1のトランジスタのゲートが前記第1の配線に接続され、
前記第1のトランジスタのドレインまたはソースが前記第3の配線に接続され、
前記第1のトランジスタのドレインおよびソースのうち前記第3の配線に未接続の方が前記第2のトランジスタのゲートおよび前記保持容量の一端に接続され、
前記第2のトランジスタのドレインまたはソースが前記第2の配線に接続され、
前記第2のトランジスタのドレインおよびソースのうち前記第2の配線に未接続の方が前記保持容量の他端および前記有機発光素子のアノードに接続され、
前記有機発光素子のカソードが前記第4の配線に接続された表示装置の前記第1の配線に連結される第1の駆動部と、前記表示装置の前記第2の配線に連結される第2の駆動部と、前記表示装置の前記第3の配線に連結される第3の駆動部と、制御部とを備え、
前記第1の駆動部は、前記第1のトランジスタのオン電圧以上の第1の電圧を前記第1の配線に出力可能となっており、
前記第2の駆動部は、第2の電圧と、前記第2の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第3の電圧とを前記第2の配線に出力可能となっており、
前記第3の駆動部は、前記第2のトランジスタの閾値電圧よりも高い第4の電圧と、前記第4の電圧よりも低く、かつゼロボルトよりも低い第5の電圧とを前記第3配線に出力可能となっており、
前記制御部は、前記第1ないし第3の駆動部に対して以下の(A),(B)の各ステップを順次実行することを指示する制御信号を出力する滅点修理装置。
(A)前記第1の駆動部が前記第1の配線の電圧を前記第1の電圧にし、前記第2の駆動部が前記第2の配線の電圧を前記第2の電圧にし、前記第3の駆動部が前記第3配線の電圧を前記第4の電圧にする準備ステップ
(B)前記第1の配線の電圧が前記第1の電圧となっている時に、前記第2の駆動部が前記第2の配線の電圧を前記第3の電圧にし、前記第3の駆動部が前記第3配線の電圧を前記第5の電圧にする逆バイアス電圧印加ステップ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−19973(P2010−19973A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178889(P2008−178889)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】