説明

漏斗用離型剤塗布装置

【課題】 漏斗の内側に付着した発泡カスを剥離させ易くするための離型剤の塗布の自動化を可能にした漏斗用離型剤塗布装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 漏斗用離型剤塗布装置1は、漏斗4の首部4aを挟むようにして支持すると共に、傾斜して延在するガイドレール3と、このガイドレール3の下流側で漏斗4の内壁面に向けて離型剤を噴射する離型剤噴射手段10と、漏斗4を、離型剤噴射手段10による離型剤の噴射位置に停止させるストッパ手段20と、を備えている。この装置1にあっては、ガイドレール3が傾斜して延在しているので、漏斗4をその自重によって流下させることができ、動力を使うことなく離型剤の噴射位置Sまで漏斗4を搬送させることができる。さらに、ポンプPをもった離型剤噴射手段10を利用することで、離型剤の塗布量や塗布時間の管理が容易になり、離型剤の均一な塗布が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、自動車のヘッドレスト、アームレストなどの表皮一体発泡品の製造に利用される合成樹脂製漏斗の内側に付着した発泡カスを剥離させ易くするための離型剤の塗布を自動化した漏斗用離型剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドレストやアームレストなどの表皮一体発泡品を製造するにあたって、特開2006−327059号公報に開示されているように、先ず、フレームが挿入された袋状の表皮を金型にセットする。その後、漏斗の先を表皮内に差し込んだ状態で、注入ノズルから流出する発泡液を、漏斗を介して表皮内に圧力充填する。金型内で発泡完了後、漏斗を金型から外して、金型から成形品を取り出す。このように、表皮一体発泡品を製造する場合、表皮内に発泡液を確実に充填させるために漏斗が一般的に利用されているが、漏斗は、使い捨てでなく再利用がなされるので、成形時において漏斗の内側に付着して固化した発泡カスを容易に除去するために、漏斗の内壁面には、離型剤が予め塗布されている。
【0003】
離型剤を漏斗の内壁面に塗布する方法としては、漏斗を手で持った状態で、離型剤タンクを有するハンドガンによって漏斗の内壁面に離型剤を手作業によって塗布するのが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特開2006−327059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手作業によって、離型剤を漏斗に一本一本塗布する作業は、作業者に負担を強いることになるので、離型剤の塗布量や塗布時間のバラツキが発生し易いといった問題点があった。
【0006】
本発明は、漏斗の内側に付着した発泡カスを剥離させ易くするための離型剤の塗布の自動化を可能にした漏斗用離型剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る漏斗用離型剤塗布装置は、漏斗の内壁面に離型剤を塗布する装置であって、
前記漏斗の首部を挟むようにして支持すると共に、傾斜して延在するガイドレールと、前記ガイドレールの下流側で前記漏斗の前記内壁面に向けて前記離型剤を噴射する離型剤噴射手段と、前記漏斗を、前記離型剤噴射手段による前記離型剤の噴射位置に停止させるストッパ手段と、を備えたことを特徴とする構成である。
【0008】
この漏斗用離型剤塗布装置においては、漏斗の注入口を上にした状態でガイドレールに沿って漏斗がその自重によって流下する。そして、ガイドレールに沿って流下する漏斗は、ストッパ手段によりガイドレール上で一旦停止させ、離型剤噴射手段によって漏斗の注入口から内壁面に向けて離型剤を噴射させる。この装置にあっては、ガイドレールが傾斜して延在しているので、漏斗をその自重によって流下させることができ、動力を使うことなく離型剤の噴射位置まで漏斗を搬送させることができる。さらに、ポンプなどを備えた離型剤噴射手段を利用することで、離型剤の塗布量や塗布時間の管理が容易になり、離型剤の均一な塗布が可能になる。
【0009】
また、前記離型剤の塗布完了後に、前記噴射位置で停止した前記漏斗に向けて上流側から空気を噴射する送り出し手段を更に備えると好適である。
【0010】
このような構成を採用した場合、送り出し手段から空気を噴射させることで、離型剤塗布完了後に漏斗を強制的に流下させることができので、ガイドレールの傾斜に依存することなく、漏斗を素早く且つ確実にガイドレールに沿って流下させることができる。
【0011】
また、前記ストッパ手段は、前記ガイドレールの流路を塞ぐ位置と、前記ガイドレールの前記流路を開放する位置との間で可動する係止部を有すると好適である。
【0012】
このような構成を採用した場合、係止部が流路を開放すると、漏斗がガイドレールに沿って流下するので、ガイドレールの後端側に設置された回収トレイ等に漏斗を集めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、漏斗の内側に付着した発泡カスを剥離させ易くするための離型剤の塗布の自動化を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る漏斗用離型剤塗布装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、漏斗用離型剤塗布装置1は、組み立てが可能なイレクターパイプからなるフレーム2を備え、フレーム2には、後述する漏斗4・・が自重により滑り落ちるように約15度の傾斜角を有するガイドレール3が固定されている。この図示するガイドレール3は、直線状の2本のガイドバー3a,3bから構成しているが,漏斗4・・が自重により滑り落ちるものであれば、湾曲したものでもよい。
【0016】
左右のガイドバー3a,3bは、多数の漏斗4の首部4aを挟むことができる程度に離間し、漏斗4の頭部4bが左右のガイドバー3a,3bに引っ掛かるようにして、漏斗4は、宙吊り状態でガイドレールにより支持され、漏斗4はその自重によりガイドレール3に沿って滑り落ちる。
【0017】
さらに、フレーム2の上部には、ガイドレール3の下流側に位置する離型剤塗布ユニット6が固定されている。この離型剤塗布ユニット6は、離型剤噴射手段10の離型剤噴射バルブ11と、1個の漏斗4を離型剤の噴射位置Sに停止させるストッパ手段20と、離型剤の塗布完了後に漏斗4を強制的に流下させる送り出し手段30と、次の漏斗4Aを待機させるための漏斗待機手段40とを備えている。
【0018】
離型剤噴射手段10は、離型剤塗布ユニット6のハウジング6aに固定されると共に、ガイドレール3の上方に配置された離型剤噴射バルブ11と、離型剤塗布バルブ11に離型剤を供給する離型剤タンク12とからなる。離型剤噴射バルブ11の噴射口からは、ポンプPにより、離型剤を、漏斗4の内壁面に向けて漏斗4の頭部4bの注入口4cの真上から、所定の塗布量及び塗布時間をもって噴射させる。
【0019】
ガイドレール3の下方に配置されたストッパ手段20は、ガイドレール3の流路を塞ぐ位置と、ガイドレール3の流路を開放する位置との間で水平方向に可動する第1の係止部21を有する。
【0020】
ピストン(不図示)によって往復動する第1の係止部21が前進して流路を塞ぐことで、1個の漏斗4のみが、待機中の他の漏斗4A・・の重みなどによりガイドレール3を滑り落ちて第1の係止部21に当たり、離型剤噴射バルブ11の真下で停止する。そして、漏斗4に離型剤を塗布し、その完了後に、第1の係止部21が後退すると、流路が開放されて漏斗4は送り出し手段30により流下する。
【0021】
なお、この第1の係止部21は、ガイドレール3の延在方向に直交して水平方向に直線的に進退するが、モータによって回動するものであってもよい。
【0022】
前記送り出し手段30は、ガイドレール3の上方に配置されたエアーノズル31と、エアーノズル31に空気を供給するためのエアーポンプ(不図示)とからなる。エアーノズル31は、離型剤の塗布完了後に、噴射位置Sで停止した漏斗4の頭部4bに向けて上流側から空気を噴射する。これによって、離型剤塗布後の漏斗4が流下する際の初動を付与させることができる。
【0023】
従って、ガイドレール3の傾斜に依存することなく、漏斗4を素早く且つ確実にガイドレール3に沿って流下させることができる。
【0024】
さらに、エアーノズル31が先端に固定されたアーム33は、枢軸34を中心に自由に上下に回動させることができ、漏斗4の頭部4bの高さに応じてエアーノズル31の噴射角度を調節させることができるようになっている。
【0025】
ガイドレール3の下方に配置された漏斗待機手段40は、ストッパ手段20の第1の係止部21より上流側に配置された第2の係止部41を有している。ピストン(不図示)によって往復動する第2の係止部41は、ガイドレール3の流路を塞ぐ位置と、ガイドレール3の流路を開放する位置との間で水平方向に可動する。
【0026】
第2の係止部41が前進して流路を塞ぐことで、後続の漏斗4Aは、第2の係止部41に当たって噴射位置Sよりも上流側で待機する。そして、第2の係止部41が後退すると、流路が開放されてその漏斗4Aの後続の漏斗の係止により、分離して配置される漏斗4Aのみがその自重と後続の漏斗の重みにより噴射位置Sまで流下する。このとき、塗布完了後の漏斗4を流下させるために一旦後退していた第1の係止部21が前進して流路を塞いでいる。
【0027】
このような漏斗待機手段40を利用することで、ガイドレール3に釣り下げられた漏斗4、4A・・・を連続して流下することができ、離型剤塗布作業の効率化を図ることができる。
【0028】
なお、第1の係止部21と第2の係止部41は、同一のピストンによって同期させてもよい。
【0029】
前述した漏斗用離型剤塗布装置1においては、漏斗4の注入口4cを上にした状態で、ガイドレール3に沿って、多数の漏斗4,4A・・はその自重によって流下する。そして、ガイドレール3に沿って流下する漏斗4は、ストッパ手段20の第1の係止部21によりガイドレール3上で一旦停止させられ、離型剤噴射手段10の離型剤噴射バルブ11によって、漏斗4の注入口4cから内壁面に向けて離型剤が真上から噴射される。
【0030】
この装置1にあっては、ガイドレール3が傾斜して延在しているので、漏斗4をその自重によって流下させることができ、動力を使うことなく離型剤の噴射位置Sまで漏斗4を搬送させることができる。さらに、ポンプPをもった離型剤噴射手段10を利用することで、離型剤の塗布量や塗布時間の管理が容易になり、離型剤の均一な塗布が可能になる。
【0031】
そして、第1の係止部21が流路を開放すると、離型剤塗布完了後の漏斗4がガイドレール3に沿って流下し、ガイドレール3の後端の真下に設置されたガイド板49を介して回収トレイ50に漏斗4,4A・・が集められる。なお、離型剤塗布完了後の漏斗4,4A・・をガイドレール4の後端から真下に落下させて、回収トレイ60に集めてもよい。
【0032】
また、本発明の離型剤塗布装置1は、ガイドレール3によって漏斗を宙釣り状態で搬送されるため、長い漏斗4Cや短い漏斗4Dなどの様々な形状の漏斗に容易に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る漏斗用離型剤塗布装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示された漏斗用離型剤塗布装置の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
1…漏斗用離型剤塗布装置、3…ガイドレール、4…漏斗、4a…漏斗の首部、10…離型剤噴射手段、20…ストッパ手段、21…係止部(第1の係止部)、30…送り出し手段、S…噴射位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏斗の内壁面に離型剤を塗布する装置であって、
前記漏斗の首部を挟むようにして支持すると共に傾斜して延在するガイドレールと、
前記ガイドレールの下流側で前記漏斗の前記内壁面に向けて前記離型剤を噴射する離型剤噴射手段と、
前記漏斗を、前記離型剤噴射手段による前記離型剤の噴射位置に停止させるストッパ手段と、を備えたことを特徴とする漏斗用離型剤塗布装置。
【請求項2】
前記離型剤の塗布完了後に、前記噴射位置で停止した前記漏斗に向けて上流側から空気を噴射する送り出し手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の漏斗用離型剤塗布装置。
【請求項3】
前記ストッパ手段は、前記ガイドレールの流路を塞ぐ位置と、前記ガイドレールの前記流路を開放する位置との間で可動する係止部を有することを特徴とする請求項1または2記載の漏斗用離型剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−255310(P2009−255310A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104262(P2008−104262)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】