説明

潤滑油添加剤

【課題】改善された粘度性能を有する潤滑油添加剤および潤滑油組成物を提供。
【解決手段】水素化度は少なくとも95%水素化されたスチレンブタジエン星形共重合体を、粘度指数向上剤潤滑油添加剤として使用する。粘度指数向上剤として使用される星形共重合体は、約3〜25%のスチレンおよび約97〜75%のブタジエンを含む。星形重合体は更に、基油に比較して約12重量%の量の星形共重合体として潤滑油添加剤中に取り入れられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン潤滑油組成物の配合に有用な、潤滑油添加剤、そして特に粘度指数向上剤に関する。より具体的には、本発明はスチレン−ブタジエン星形共重合体をその中に含む潤滑油添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クランク室のエンジン油中に使用のための潤滑油組成物は、基油と、潤滑油の性能を改善し、その有効寿命を延長する添加剤とを含む。クランク室の潤滑油組成物は、エンジン油の粘度性能を改善するために使用することができる様々な重合体成分を含むことができる。
【0003】
重合体は粘度指数向上剤として使用され、しばしば、なかでもエチレンとプロピレンの共重合体を含んでなる。油配合者の試練は、冷エンジン始動性能のような低温性能を改善するのみならずまた、高温粘度性能の双方を改善することができる重合体を見いだすことである。これらの属性はなかでも、一方の改善が他方の減少された性能により相殺され得る、ある重合体添加物に対して性能の交換を引き起こす可能性がある。更に、あるエンジン油製品または添加剤のコストを最低にするために、最低の妥当な濃度で重合体を有効にさせる、営業的な動機が常に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、改善された粘度性能を有する潤滑油添加剤および潤滑油組成物を提供することが本発明の目的である。本発明は水素化スチレン−ブタジエン星形共重合体の使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一例において、潤滑油は粘度指数向上剤を含んでなる。粘度指数向上剤は水素化スチレン−ブタジエン星形共重合体を含んでなり、その星形共重合体は約3〜25重量%のスチレン対約97〜75重量%のブタジエンの比率のスチレン単量体とブタジエン単量体から形成される。星形共重合体の水素化度は少なくとも95%である。潤滑油添加剤は更に、1種または複数の基油を含んでなり、その星形共重合体は粘度指数向上剤の約1〜20重量%を含んでなる。更に、潤滑油は、一般的に、100℃の等しい動粘度において(a)に記載されたVI向上剤とほぼ同等な希釈濃度に同一基油で希釈された、水素化スチレンイソプレン星形共重合体またはオレフィン共重合体を含む潤滑油に比較して、少なくとも5000cPのミニロータリー粘度計(MRV TP−1)値の改善を有する。あるいはまた、水素化星形共重合体は少なくとも98%の水素化度あるいは、少なくとも99%の水素化度を有することができる。スチレン単量体とブタジエン単量体の比率は約5〜20%のスチレン対約95〜80%のブタジエン、あるいはまた約10%のスチレン対90%のブタジエンであることができる。星形共重合体は一例において、粘度指数向上剤の約10〜15重量%で含まれるために使用することができる。星形共重合体は水素化されたランダムスチレン−ブタジエン共重合体、あるいは水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体であることができる。潤滑油は少なくとも8000cPのミニロータリー粘度計値の改善を有することができる。星形共重合体は潤滑油の約0.1〜5重量%で含まれてなることができる。潤滑油は1種または複数の、グループI、グループII、グループIIIまたはグループIVの油、あるいはそれらの混合物を含んでなることができる。
【0006】
他の態様において、本発明は粘度指数向上剤を調製する方法を含む。その方法は基油を
水素化スチレンブタジエン星形共重合体と混合する工程を含み、その星形共重合体は約3〜25重量%のスチレン対97〜75重量%のブタジエンの比率のスチレンとブタジエンから形成され、水素化度が少なくとも95%である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本発明は潤滑油添加剤、特に、水素化スチレン−ブタジエン星形共重合体を含んでなる粘度指数向上剤に関する。星形共重合体の形成に使用される単量体に関するスチレン対ブタジエンの比率は約3〜25%のスチレンと97〜75%のブタジエン、あるいは約5〜20%のスチレンと95〜80%のブタジエンである。一例において、星形共重合体中の成分の生成物のうちで、スチレンは約10%であり、ブタジエンは90%である。この星形共重合体は基油中に約1〜20重量%として溶解される。その後、潤滑油添加剤は完全に配合されたクランク室のモーター油中への使用の準備ができる。
【0008】
一例において、本明細書に記載される星形共重合体はジビニルベンゼン核(core)に結合されて、複数アーム(multi−arm)をもつ星形共重合体を形成する、スチレン−ブタジエン共重合体のアームを含む。最初に、前記のスチレン−ブタジエンアームに関して、星のアームの形成に使用されるスチレン単量体とブタジエン単量体の相対比は約3〜25%のスチレンと97〜75%のブタジエン、あるいは約5〜20%のスチレンと95〜80%のブタジエンであり、そして一例においては約10%のスチレンと90%のブタジエンである。
【0009】
これらの共重合体のアームは、特定の共重合体のアーム構造物を作成するための異なる方法で、または異なる方法の組み合わせで形成することができる。共重合体はランダム、テーパー形の、またはブロックの構造またはそれらの組み合わせ物をもつことができる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体を形成する反応は、スチレン単量体とブタジエン単量体がすべて同時に一緒に反応される、完全にランダムなものであることができる。その生成物は、単量体が共重合体のアームにランダムに分配されている、ランダムスチレン−ブタジエン共重合体である。あるいはまた、多段階の反応が使用されるように、スチレンとブタジエンがブロック共重合体のフォーマットに一緒に合わされることができる。各段階においてスチレンまたはブタジエンがその前の段階のアームに連続的に結合され、それによりブロック共重合体を形成する。直線のランダム共重合体とブロック共重合体の形成に加えて、反応の組み合わせを使用して、スチレンとブタジエンの一部ランダムおよび一部ブロック共重合体を形成することができる。更に、アームが一方の端で比較的純粋な第1の単量体よりなり、そして他方の端で比較的純粋な第2の単量体よりなるテーパー形の共重合体が形成されることができる。アームの中央部は2種の単量体の、勾配のついた組成物が多い。スチレンブタジエン共重合体の選択は、コスト、営業的利用性、処理の容易性およびその他の加工特性に左右されることができる。あるいはまた、スチレンブタジエン共重合体の特定の種類はまた、様々に形成されたスチレンブタジエン共重合体のアームのその後の試験の結果としての共重合体間の実際の性能の相異に基づくことができる。
【0010】
一例において、共重合体はアニオン重合法から調製される。反応開始剤は例えば、ヒドロカルビルリチウム反応開始剤、例えばアルキルリチウム化合物(例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム)、シクロアルキルリチウム化合物(例えば、シクロヘキシルリチウム)およびアリールリチウム化合物(例えば、フェニルリチウム、1−メチルスチリルリチウム、p−トリルリチウム、ナフチルリチウムおよび1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム)を含む。更に、有用な反応開始剤はナフタレンナトリウム、1,4−ジソジオ−1,1,4,4−テトラフェニルブタン、ジフェニルメチルカリウムまたはジフェニルメチルナトリウムを含む。
【0011】
前記の重合法は湿度と酸素の不在下で、そして少なくとも1種の不活性溶媒の存在下で実施される。1つの態様において、アニオン重合はアニオンの触媒系に有害なあらゆる不純物の不在下で実施される。不活性溶媒は炭化水素、芳香族溶媒またはエーテルを含む。適切な溶媒はイソブテン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジグリム、テトラグリム、オルソターフェニル、ビフェニル、デカリンまたはテトラリンを含む。
【0012】
放射状または星形構造をもつ共重合体は典型的には、核部分に化学結合することができる重合体のアームを含む。核部分は多価のカップリング剤、例えば多価のジビニル非アクリル単量体、オリゴマー重合体またはそれらの共重合体、あるいはは四塩化ケイ素であることができる。1つの態様において、多価ジビニル非アクリル単量体はジビニルベンゼンである。
【0013】
多価カップリング剤の量は、星形共重合体を提供するために、単量体、オリゴマーまたは重合体形態のカップリング剤を含んでなる核上へのアームとして、予め調製された共重合体のカップリングを提供するのに適した量であることができる。前記のように、幾つかの変数が関与する可能性があるが、適量は、最少の実験を使用して当業者により容易に決定することができる。例えば、過剰量のカップリング剤が使用されると、または重合体のアームの形成からの過剰の未反応単量体が系内に残ると、星形物質形成ではなくむしろ架橋反応が起る可能性がある。カップリング剤に対する共重合体のアームのモル比は典型的には、50:1〜1:1、または30:1〜2:1、または20:1〜4:1、または約15:1〜10:1であることができる。所望される比率はまた、アームの長さを考慮するように調整することができ、より長いアームは時には、短いアームより耐性で、より多量のカップリング剤を必要とする。調製される材料は典型的には、潤滑性粘度をもつ油中に可溶性である。
【0014】
1つの態様において、共重合体の重合体アームは、放射状または星形共重合体の形成の前に、または未カップリング単位上で測定される、2以下、または1.7以下、または1.5以下、例えば1〜1.4の多分散性を有する。
【0015】
放射状または星形構造をもつ重合体を含む全体の組成物は従ってまた、存在する未カップリング重合体アーム(重合体連鎖または直線状重合体とも呼ばれる)をもつことができ、放射状または星形重合体への重合体連鎖の転化率は少なくとも50%、例えば少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%であることができる。1つの態様において、放射状または星形共重合体への重合体連鎖の転化は90%、95%または約100%であることができる。1つの態様において、重合体連鎖の一部は星形共重合体を形成せず、直線状重合体として留まる。1つの態様において、重合体は(i)放射状または星形構造物を含む重合体、および(ii)直線状重合体の連鎖(未カップリング重合体アームとも呼ばれる)、の混合物である。異なる態様において、重合体組成物内の放射状または星形構造物の量は重合体の量の10重量%〜85重量%から25重量%〜70重量%であることができる。異なる態様において、直線状重合体の連鎖は星形共重合体の量の5重量%〜90重量%、または30重量%〜75重量%で存在することができる。
【0016】
放射状または星形構造をもつ共重合体は3本以上、または5本以上、または7本以上、または10本以上のアームをもつことができる。他の態様において、12本以上、または20本以上のアームが存在することができる。全般的に、アームの数は3〜30、あるいは4〜20にわたる。
【0017】
最終的星形共重合体の分子量Mは各分子上のアームのサイズおよび平均数に左右される。一例において、星形分子の分子量は700,000を超え、あるいは650,000
を超え、更にまた600,000を超える。これらの星形分子上の各アームの分子量は70,000を超え、あるいは60,000を超え、そして更にあるいはまた、50,000を超える。
【0018】
本発明の星形共重合体は水素化分子である。水素化度は99%を超え、あるいはまた98%を超え、そして更にあるいはまた約95%を超える。以下の実施例において、共重合体の水素化にチタン触媒が使用される。水素化工程は好ましくは、欧州特許出願第914,867号および第816,382号明細書に開示された方法に従って実施される。
【0019】
潤滑油添加剤、そして特に粘度指数向上剤を配合する際に、本明細書に記載の星形共重合体が潤滑性粘度をもつ基油に添加されて潤滑油添加剤を形成する。本発明の希釈剤として有用な潤滑性粘度をもつ油は天然の潤滑油、合成潤滑油およびそれらの混合物から選択することができる。
【0020】
天然油は動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、液体石油および水素化精製、溶媒処理もしくは酸処理鉱油またはパラフィンナフテンおよび混合パラフィン−ナフテンタイプを含む。石炭またはシェールから採取される潤滑性粘度をもつ油も有用な基油として役立つ。
【0021】
合成潤滑油は、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合および共重合オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル化合物およびアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびそれらの誘導体、類似体および同族体を含む。
【0022】
アルキレンオキシド重合体および共重合体および、末端のヒドロキシル基がエステル化、エーテル化、等により修飾されたそれらの誘導体、が知られた合成潤滑油のその他の群を構成する。
【0023】
合成潤滑油の他の適切な群は、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのジカルボン酸のエステルを含んでなる。
【0024】
希釈油はグループI、グループII、グループIII、グループIVまたはグループVの油または前記油のブレンドを含んでなることができる。希釈油はまた、1種または複数のグループIの油と、グループII、グループIII、グループIVまたはグループVの油の1種または複数とのブレンドを含むことができる。経済的な見地から、希釈油は好ましくは、グループIの油と、グループII、グループIII、グループIVまたはグループVの油の1種または複数との混合物、より好ましくは、グループIの油と、グループIIまたはグループIIIの油の1種または複数との混合物である。
【0025】
本明細書に使用されるような油の定義は、米国石油協会(API)刊行物の“Engine Oil Licensing and Certification System(エンジン油認可、認定システム)”,Industry Service Department(産業サービス省)、第4版、1996年12月、補遺1、1998年12月に認めるものと同一である。
【0026】
星形共重合体は基油に添加されて、1〜20重量%、あるいは10〜15重量%、または更に約12重量%の比率の潤滑油添加剤を形成する。
【0027】
最終的に、潤滑油添加剤は完全配合潤滑油組成物と関連して使用されると考えられる。
完全配合潤滑油組成物中に使用される潤滑油添加剤の量は、完全配合潤滑油組成物中約0.1〜5重量%の星形共重合体を提供するのに十分であり、あるいはまた、完全配合潤滑油の約.3〜2重量%、または更に約.5〜1.5重量%である。
【0028】
完全配合潤滑油組成物中に他の種類の添加剤を含むことは可能であり、かつむしろ望ましい。これらのその他の添加物は、洗剤、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、分散剤、粘度調整剤、極端加圧剤(extreme pressure agents)、抗摩耗剤、抗酸化剤、腐食抑制剤、発泡抑制剤、乳化剤、鋳込み温度降下剤、シール膨張剤およびそれらの混合物を含むことができる。これらのその他の潤滑油添加剤は相互に対し様々な量で組み合わせることができる。
【実施例1】
【0029】
(ランダムスチレン−ブタジエン星形共重合体)
以下の方法を使用して、スチレン/ブタジエン星形共重合体の一例を形成し、基油中にそれを取り入れて潤滑油添加剤を形成した。この実施例において、スチレン単量体とブタジエン単量体の完全にランダムな重合が存在する。
a.ブタジエンの1,2対1,4重合の量を制御するための調整剤としてのテトラヒドロフランの存在下で、触媒としてn−ブチルリチウムを使用してシクロヘキサン溶媒中で、約10%濃度、30〜70℃において、清浄な、酸素と湿度を含まない反応器中でブタジエン(〜90%)とスチレン(〜10%)を共重合させた。共重合は約20分で完了した。次に、重合体を星形構造物にカップリングさせるために、反応器にジビニルベンゼンを添加する。これは約60分を要する。最後にtert−ブタノールを反応物に添加して、更なる連鎖の延長が起り得ないように、あらゆる残存活性中心を中和する。
b.次に星形共重合体の溶液を、120℃でチタン触媒を使用して水素化し、そこで99+%の水素化度が達成される。
c.次に、一連の蒸気ストリッピング、押し出しおよび乾燥工程により、溶液から水素化スチレン−コ−ブタジエンの星形共重合体が回収される。
d.溶液を窒素雰囲気下で120〜150℃に4〜8時間加熱することにより、乾燥された水素化スチレン−コ−ブタジエンの星形共重合体を、約12重量%の重合体として基油中に溶解する。
【0030】
以上の方法は多数の点で変更することができる。ブタジエンとスチレンがその中で重合される溶媒はシクロヘキサン溶媒であるが、本明細書で以前に述べられたその他の不活性溶媒は許容され、使用されることができる。更に本重合反応中の触媒はn−ブチルリチウムである。その他のリチウム基剤の触媒を使用することができる。更に、ブタジエンの1,2対1,4重合の量を制御するための調整剤としてテトラヒドロフランの使用も注目される。その他のエーテル基剤の調整剤も同様に使用することができる。ブタジエンの1,2重合の量が最終重合体の約50%を超えて、あるいはまた53%を超えて、そして更にあるいはまた、54%を超えて構成することが好ましい。1,2ブタジエン重合体の約50%未満が存在する場合は、望ましくない結晶性共重合体が形成する。
【0031】
本実施例で形成される水素化スチレン−ブタジエンランダム共重合体が、表1の製品例R−1およびR−2として使用された。
【実施例2】
【0032】
スチレン−ブタジエンブロック共重合体星形重合体
以下の方法を使用して、スチレン/ブタジエン星形共重合体の一例を形成し、基油中にそれを取り入れて潤滑油添加剤を形成した。この実施例において、スチレンとブタジエンの星形ブロック共重合体が形成される。
a.スチレン(〜10%)を、触媒としてn−ブチルリチウムを使用してシクロヘキサン
溶媒中で、約10%濃度、30〜70℃で、清浄な、酸素および湿度を含まない反応器中で重合させ、約20分後に、ブタジエンの1,2および1,4重合量を制御するための調整剤としてのテトラヒドロフランの存在下で、ブタジエン(〜90%)を反応器に添加する。更なる重合は約20分で完了する。次に、重合体を星形構造物にカップリングさせるために反応器にジビニルベンゼンを添加する。これは約60分かかる。最後にtert−ブタノールを反応物に添加して、更なる連鎖延長が起り得ないように、あらゆる残存活性中心を中和する。
b.次に星形共重合体の溶液を、120℃でチタン触媒を使用して水素化し、そこで99+%の水素化度が達成される。
c.次に、一連の蒸気ストリッピング、押し出しおよび乾燥工程により、溶液から水素化スチレン−ブタジエンブロック星形共重合体が回収される。
d.溶液を窒素雰囲気下で120〜150℃に4〜8時間加熱することにより、乾燥された水素化スチレン−ブタジエンブロックの星形共重合体を、約12重量%の重合体になるように、基油中に溶解する。
【0033】
以上の方法は多数の点で変更することができる。ブタジエンとスチレンがその中で重合される溶媒はシクロヘキサン溶媒であるが、本明細書で以前に述べたその他の不活性溶媒は許容され得、使用されることができる。更に本重合反応中の触媒はn−ブチルリチウムである。その他のリチウム基剤の触媒を使用することができる。ブタジエンの1,2および1,4重合量を制御するための調整剤としてテトラヒドロフランの使用も注目される。これは本反応法の重要な態様である。ブタジエンの1,2重合量が最終共重合体の50%を超えて、あるいはまた53%を超えて、そして更にあるいはまた、54%を超えて構成することが好ましい。50%未満の1,2ブタジエン重合体が存在する場合は、望ましくない結晶性共重合体が形成する。更に前記のように、水素化を達成するためのチタン触媒の使用は有用である。チタン触媒は最終重合体中に単に残すことができ、除去される必要はない。
【0034】
本実施例で形成された水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体を表1の製品例B−1およびB2として使用した。
【0035】
潤滑油添加剤および配合潤滑油の例
以上の共重合体を使用して、潤滑油添加剤のサンプルを配合し、市販の基準製品と比較した。基準製品はShellVis 261(SV−261)およびLubrizol Lz7077(Lz7077)である。以下の表1は、潤滑油添加剤および前記の完全配合潤滑油組成物に対する基準品の物理的特徴および性能の属性の説明である。
【0036】
【表1】

【0037】
以上の表1は、VI向上剤組成物および配合10W40油組成物中にスチレン−ブタジエン星形共重合体を使用する結果として認められた有益な粘度法特性を報告している。粘度法特性は低温の特性、例えば冷温クランクシミュレーター試験(CCS)(ASTM D−5293)およびミニロータリー粘度計試験(MRV)(ASTM D−4684)を含む。高温特性は、重合体の添加時の増粘性および剪断安定性指数(SSI)(ASTM D−6278)を含む。
【0038】
重合体の分子量はゲル透過クロマトグラフを使用して測定した。2本のVarian(Agilent)PLgel 5umの混合−C、300×7.5mmのカラムを連続して使用した。移動相として、40℃の非安定化THFを使用した。カラムをPSS(Polymer Standards Service)のReadyCal−Kit Polystryrene(検量範囲=1090000−376)を使用して検量し、それから、三次元の検量曲線を構成し、100万を超える点は検量曲線から外挿された。
【0039】
アームと星形物質の分子量は別々にそして/または同時に測定することができる。星形重合体内のアーム数は星形重合体の重量平均分子量に1.2の因子をかけ、次にこの積をアーム重合体の重量平均分子量で割ることにより算定される。
【0040】
MRV試験と結果に特に注目される。MRV試験中、エンジン油は前以て決めた範囲に冷却する。ASTM D−4684試験(MRV)からの実験室の試験結果は、給油性(oil pumpability)の欠如のために、屋外試験では失敗した既知のエンジン油の不全(failures)として予測されていた。注目すべきことには、その中にスチレン−ブタジエン星形共重合体を有する油のMRV試験の結果は、その中に基準の重合体を有する油の試験結果より有意に低かった(良好であった)。試験結果は35,000未満、あるいはまた30,000未満の値を報告している。
【0041】
更に、示される優れたMRV性能が、減少した動粘度(100℃で)試験性能により相殺されないことに注目することは重要である。すなわち、本発明の例R−1、R−2、B−1およびB−2はすべて、SV−261およびLz7077の基準のオレフィン共重合体の例と全般的に同等な動粘度(100℃で)の性能の結果を有した。しかし、本発明のVI向上剤とほぼ同一希釈レベルの同一基油で希釈された基準のスチレンイソプレン星形共重合体とオレフィン共重合体に比較した、本発明の組成物のMRV性能の改善は少なくとも9000cP、またはあるいは少なくとも8000cP、または更にあるいは少なくとも5000cPであった。これらの差は、オレフィン共重合体を含む既存の潤滑油に比較した実質的な性能の改善を反映する。
【0042】
本明細書に提示された以前のデータは10W40油に関する。以下の表には、10W40と明らかに異なる粘度等級を伴う油を、重合体例R−1と基準の例SV−261双方と混合し、その星形重合体は水素化スチレン−イソプレンに基づいた。粘度等級は15W50(表2)、5W30(表3)および0W20(表4)である。各等級を比較する際に、重合体R−1とSV−261間で、DI、鋳込み温度降下剤および基油の種類(または基油混合物を使用する場合はその比率)を一定に維持し、同様なKV100とCCSを各等級の油に対して標的にした。以下にみられるように、重合体R−1は各事例においてSV−261より改善されたMRV性能を与える。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
表2〜4に示されたこの更なる試験は以前に認めたMRV性能の改善を強調する。本発明のVI向上剤とほぼ同一希釈レベルにおいて同一基油で希釈された基準のスチレンイソプレン星形共重合体に比較された本発明の組成物のMRV性能の改善は、少なくとも20,000cP、またはあるいは少なくとも30,000cP、または更にあるいは少なくとも約40,000cPであった。
【0047】
本発明はその実施において著しい変化を受け易い。従って、以上の説明は本発明を前記の本明細書に提示された特定の例に限定することを意図されず、限定するものと考えるべきではない。網羅されることが意図される事項はむしろ、法律問題として認可される以下
の請求項およびそれらの同等物中に示されるようなものである。
【0048】
本発明の特徴と態様を以下に示す。
【0049】
粘度指数向上剤を含んでなる潤滑油であって、
1.a.粘度指数向上剤が、水素化スチレンブタジエン星形共重合体、および基油を含んでなり、
ここで星形共重合体は約3〜25重量%のスチレン対約97〜75重量%のブタジエンの比率のスチレン単量体とブタジエン単量体から形成され、
星形共重合体の水素化度は少なくとも95%であり、
星形共重合体は粘度指数向上剤の約1〜20重量%で含まれてなる、
そして
b.潤滑油が、100℃の、全般的に等しい動粘度における水素化スチレンイソプレン星形重合体またはオレフィン共重合体を含む潤滑油に比較して、少なくとも5000cPのミニロータリー粘度計(MRV TP−1)値の改善を有する、
潤滑油。
【0050】
2.水素化星形重合体が約98%の水素化度を有する、第1項の潤滑油。
【0051】
3.星形共重合体が少なくとも約700,000の平均分子量(M)を有する、第1項の潤滑油。
【0052】
4.スチレン単量体とブタジエン単量体の比率が約5〜20%のスチレン対約95〜80%のブタジエンである、第1項の潤滑油。
【0053】
5.スチレン単量体とブタジエン単量体の比率が約10%のスチレンと90%のブタジエンである、第1項の潤滑油。
【0054】
6.星形重合体が粘度指数向上剤の約10〜15重量%で含まれてなる、第1項の潤滑油。
【0055】
7.星形重合体が水素化されたランダムスチレン−ブタジエン共重合体を含んでなる、第1項の潤滑油。
【0056】
8.星形重合体が水素化されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含んでなる、第1項の潤滑油。
【0057】
9.基油がグループIの基油である、第1項の潤滑油。
【0058】
10.少なくとも8000cPのミニロータリー粘度計値の改善を有する第1項の潤滑油。
【0059】
11.星形共重合体が潤滑油の約0.1〜5重量%で含まれてなる、第1項の潤滑油。
【0060】
12.潤滑油がグループI、グループII、グループIIIまたはグループIVの油を含んでなる、第1項の潤滑油。
【0061】
13.基油を水素化スチレンブタジエン星形共重合体と混合する工程を含んでなる、粘度指数向上剤を調製する方法であって、
その星形共重合体が約3〜25重量%のスチレン対約97〜75重量%のブタジエンの
比率のスチレンとブタジエンから形成され、そしてその水素化度が少なくとも95%である、方法。
【0062】
14.スチレン単量体とブタジエン単量体が約10%のスチレン対約10%ブタジエンの比率で供給される、第13項記載の方法。
【0063】
15.星形共重合体が約10〜15重量%の星形共重合体として基油中に混合される、第13項記載の方法。
【0064】
16.水素化工程が星形共重合体の少なくとも97%の水素化を含む、第13項記載の方法。
【0065】
17.水素化工程が星形共重合体の少なくとも98%の水素化を含む、第13項記載の方法。
【0066】
18.基油がグループIの油である、第13項記載の方法。
【0067】
19.潤滑油を粘度指数向上剤と混合する工程を含んでなる、潤滑油のミニロータリー粘度計値(MRV TP−1)を改善させる方法であって、
その粘度指数向上剤が、
a.水素化スチレンブタジエン星形共重合体
ここで、星形共重合体は約3〜25重量%のスチレン対97〜75重量%ブタジエンの比率のスチレン単量体とブタジエン単量体から形成され、
b.星形共重合体の水素化度は少なくとも95%である、および
c.基油、
を含んでなり、
ここで、星形共重合体は粘度指数向上剤の約1〜20重量%で含まれてなり、
そして
星形共重合体は潤滑油と粘度指数向上剤の混合物の約0.1〜5重量%で含まれてなる、
方法。
【0068】
20.更に、星形共重合体が水素化されたランダムスチレン−ブタジエン共重合体を含んでなる、第19項の方法。
【0069】
21.更に、星形共重合体が水素化されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含んでなる、第19項の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度指数向上剤を含んでなる潤滑油であって、
a.粘度指数向上剤が、水素化スチレンブタジエン星形共重合体、および基油を含んでなり、
ここで星形共重合体は約3〜25重量%のスチレン対約97〜75重量%のブタジエンの比率のスチレン単量体とブタジエン単量体から形成され、
星形共重合体の水素化度は少なくとも95%であり、
星形共重合体は粘度指数向上剤の約1〜20重量%で含まれてなる、
そして
b.潤滑油が、100℃の、全般的に等しい動粘度における水素化スチレンイソプレン星形重合体またはオレフィン共重合体を含む潤滑油に比較して、少なくとも5000cPのミニロータリー粘度計(MRV TP−1)値の改善を有する、
潤滑油。
【請求項2】
スチレン単量体とブタジエン単量体の比率が約5〜20%のスチレン対約95〜80%のブタジエンである、請求項1の潤滑油。
【請求項3】
スチレン単量体とブタジエン単量体の比率が約10%のスチレンと90%のブタジエンである、請求項1の潤滑油。
【請求項4】
星形重合体が水素化されたランダムスチレン−ブタジエン共重合体を含んでなる、請求項1の潤滑油。
【請求項5】
星形重合体が水素化されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含んでなる、請求項1の潤滑油。
【請求項6】
基油を水素化スチレンブタジエン星形共重合体と混合する工程を含んでなる、粘度指数向上剤を調製する方法であって、
星形共重合体が約3〜25重量%のスチレン対約97〜75重量%のブタジエンの比率のスチレンとブタジエンから形成され、そしてその水素化度が少なくとも95%である、方法。
【請求項7】
潤滑油を粘度指数向上剤と混合する工程を含んでなる、潤滑油のミニロータリー粘度計値(MRV TP−1)を改善させる方法であって、
その粘度指数向上剤が、
a.水素化スチレンブタジエン星形共重合体
ここで、星形共重合体は約3〜25重量%のスチレン対97〜75重量%ブタジエンの比率のスチレン単量体とブタジエン単量体から形成され、
b.星形共重合体の水素化度は少なくとも95%である、および
c.基油、
を含んでなる
ここで、星形共重合体は粘度指数向上剤の約1〜20重量%で含まれてなり、
そして
星形共重合体は潤滑油と粘度指数向上剤の混合物の約0.1〜5重量%で含まれてなる、
方法。

【公開番号】特開2012−92334(P2012−92334A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219130(P2011−219130)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】