説明

潤滑組成物

本発明は、(a)エステルを含有する粘度指数向上剤と、(b)ポリオキシアルキレンポリオールとを含む、潤滑組成物に関する。本発明はさらに、その潤滑組成物によって機械装置を潤滑するための方法とを提供する。実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度指数向上剤は、少なくとも1つの(a)ポリメタクリレート、(b)(i)ビニル芳香族モノマーおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のコポリマー、(c)(i)アルファオレフィンおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のインターポリマー、または(d)それらの混合物に由来する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)エステルを含有する粘度指数向上剤と、(b)ポリオキシアルキレンポリオールとを含む、潤滑組成物に関する。本発明はさらに、その潤滑組成物によって機械装置を潤滑するための方法とを提供する。
【背景技術】
【0002】
潤滑粘度のポリオキシアルキレンポリオール油を含む潤滑剤によって、ドライブライン動力伝達装置、内燃機関または液圧システムなどの機械装置を潤滑することは公知である。しかし、ポリアルキレングリコール流体の極性のため、完全に配合された潤滑剤の利用(例えば、マルチグレードの潤滑剤を調製する能力)には困難が生じる。
【0003】
加えて、ギアまたは変速機などのドライブライン動力伝達装置、特に車軸用流体および手動変速機用流体(manual transmission fluids:MTFs)は、非常に難しい技術的問題および複数のしばしば相反する潤滑要求を満たすための解決策を示す一方で、摩耗性能、耐久性および燃費のうちの少なくとも1つを提供する。性能に影響する重要なパラメータの1つは、潤滑剤の粘度、単一グレードの潤滑剤もしくはマルチグレードの潤滑剤のいずれが、低温粘性および/または高温粘性の制御に有用であるかということ、である。より低い粘度で機能できる潤滑剤は典型的により高い燃費を提供する(よってCAFE効率を改善する)。逆に、より低い粘度の流体はギアおよび変速機の動作温度の上昇にも寄与し、これは燃費を低減させると考えられている。加えて、潤滑剤の粘度を高めると、ギアおよび変速機により良い摩耗保護および耐久性が与えられると考えられている。
【0004】
したがって、ギアおよび変速機などの機械装置の要求に合うように正しくバランスを取った潤滑組成物を提供することが望ましい。
【0005】
本発明の潤滑組成物は、許容できる低温粘性、許容できる高温粘性、粘度指数(viscosity index:VI)、混合油濃化能力、せん断安定性、許容できる摩擦係数、動作温度の低減、許容できる摩耗性能、許容できる腐食性、許容できる酸化分解性、許容できる耐久性、または許容できる燃費のうちの少なくとも1つを与えることができる。
【0006】
特許文献1および特許文献2は、ポリアルキレングリコール潤滑組成物を開示する。
【0007】
特許文献1は、摩擦の減少によって出力損失を低減させるためのポリアルキレングリコールの使用を開示する。
【0008】
特許文献2は、ポリアルキレングリコール潤滑剤および少なくとも1つの硫黄を含有する耐摩耗剤または極圧剤を含有するギア油潤滑組成物を開示する。このギア油潤滑組成物は粘度調整剤を含まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,370,247号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第460 317号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の1つにおいて、本発明は、(a)エステルを含有する粘度指数向上剤と、(b)約30wt%またはそれ以上のポリオキシアルキレンポリオールとを含む潤滑組成物を提供する。
【0011】
実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度指数向上剤は、少なくとも1つの(a)ポリメタクリレート、(b)(i)ビニル芳香族モノマーおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のコポリマー、(c)(i)アルファオレフィンおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のインターポリマー、または(d)それらの混合物に由来する。
【0012】
実施形態の1つにおいて、本発明は、濃縮物の形の、本明細書に開示される潤滑組成物を提供する。
【0013】
実施形態の1つにおいて、本発明は、完全に配合された潤滑剤の形の、本明細書に開示される潤滑組成物を提供する。
【0014】
実施形態の1つにおいて、本発明は、(a)エステルを含有する粘度指数向上剤と;(b)約30wt%またはそれ以上のポリオキシアルキレンポリオールとを含む、潤滑組成物を機械装置に供給することによって機械装置を潤滑する方法を提供する。
【0015】
実施形態の1つにおいて、機械装置はドライブライン装置を含む。
【0016】
実施形態の1つにおいて、潤滑組成物はリンを含有する酸、塩もしくはエステル、またはそれらの混合物をさらに含む。
【0017】
実施形態の1つにおいて、潤滑組成物はリンを含有しない極圧剤またはその混合物をさらに含む。
【0018】
実施形態の1つにおいて、本発明は以下を含む潤滑組成物を提供する:
(a)約1.5wt%から約30wt%のエステルを含有する粘度指数向上剤;
(b)約55wt%から約98.29wt%のポリオキシアルキレンポリオール;
(c)約0.1wt%から約5wt%の、リンを含有する酸、塩またはエステル;
(d)約0.1wt%から約5wt%のリンを含有しない極圧剤;および
(e)約0.01wt%から約5wt%の、少なくとも1つの他の性能添加剤。
【0019】
実施形態の1つにおいて、本発明は、本明細書に開示される潤滑組成物のドライブライン装置における使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示されるとおり、本発明は、潤滑組成物と;本明細書に開示される潤滑組成物によって機械装置を潤滑する方法とを提供する。
【0021】
エステルを含有する粘度指数向上剤
実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度指数向上剤は、少なくとも1つの(a)ポリメタクリレート、(b)(i)ビニル芳香族モノマーおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のコポリマー(典型的にはインターポリマー)、(c)(i)アルファオレフィンおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のインターポリマー、または(d)それらの混合物に由来する。コポリマーまたはインターポリマーは典型的に、カルボン酸基または無水物基を適切な鎖長のアルコールと、必要に応じて公知のエステル化触媒の存在下で反応させることによってエステル化される。
【0022】
実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度指数向上剤はポリメタクリレートに由来する。ポリメタクリレートは典型的に、アルキルエステル基を含有する。このエステル基は直鎖または分岐鎖であってもよい。実施形態の1つにおいて、アルキルエステル基は直鎖である。実施形態の1つにおいて、アルキルエステル基は分岐鎖である。
【0023】
実施形態の1つにおいて、エステル基は分岐鎖であり、分岐のパーセントは10%から約65%、または約15%から約30%の範囲を含む。
【0024】
異なる実施形態において、エステルアルキル基は約6個もしくはそれ以上、または約6個から約18個、または約8個から約14個の炭素原子を含有する。
【0025】
実施形態の1つにおいて、エステル基は上記に引用した炭素遷移長の外側にアルキル基を含有してもよく、ここでエステル基の炭素原子の平均数は開示される範囲内にあるものとする。
【0026】
ポリメタクリレートを形成できる好適なメタクリレートモノマーの例は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、またはそれらの混合物を含む。
【0027】
実施形態の1つにおいて、不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体は、アクリル酸、メタクリル酸、ブテン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、またはそれらの混合物を含む。実施形態の1つにおいて、不飽和カルボン酸またはその誘導体は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、またはそれらの混合物を含む。実施形態の1つにおいて、不飽和カルボン酸またはその誘導体は、マレイン酸または無水マレイン酸を含む。
【0028】
実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度指数向上剤は、(i)ビニル芳香族モノマー;および(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のコポリマーに由来する。実施形態の1つにおいて、粘度指数向上剤は、(i)ビニル芳香族モノマー;および(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のインターポリマーに由来する。実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度調整剤は、エステル化無水マレイン酸−スチレンコポリマーを含む。
【0029】
ビニル芳香族モノマーの例は、スチレン(しばしばエテニルベンゼンと呼ばれる)、置換されたスチレン、またはそれらの混合物を含む。置換されたスチレンモノマーは、官能基、たとえばヒドロカルビル基、ハロ−、アミノ−、アルコキシ−、カルボキシ−、ヒドロキシ−、スルホニル−、またはそれらの混合物などを含む。官能基は、芳香族モノマー上のビニル基に関してオルト、メタまたはパラの位置に置かれたものを含み、オルトまたはパラの位置に置かれた官能基は特に有用である。実施形態の1つにおいて、官能基はパラ位置に置かれている。ハロ官能基は塩素、臭素、ヨウ素またはそれらの混合物を含む。実施形態の1つにおいて、ハロ官能基は塩素またはその混合物である。アルコキシ官能基は、約1個から約10個の炭素原子、または約1個から約8個の炭素原子、または約1個から約6個の炭素原子、または約1個から約4個の炭素原子を含有してもよい。1個から約4個の炭素原子を含有するアルコキシ官能基は、低級アルコキシスチレンと呼ばれる。
【0030】
ビニル芳香族モノマーの例は、スチレン、アルファメチルスチレン、パラメチルスチレン(しばしばビニルトルエンと呼ばれる)、パラ−tert−ブチルスチレン、アルファエチルスチレン、パラ低級アルコキシスチレン、またはそれらの混合物を含む。実施形態の1つにおいて、ビニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0031】
実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度指数向上剤は、(i)アルファオレフィン;および(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のインターポリマーに由来する。実施形態の1つにおいて、(i)アルファオレフィン;および(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のインターポリマーは、ジエステルである。
【0032】
実施形態の1つにおいて、不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体に由来するコポリマーは、(i)典型的には少なくとも約6個の炭素原子を有するアルファオレフィン;および(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のインターポリマーを含む。
【0033】
アルファオレフィンは、典型的には少なくとも約6個の炭素原子、または少なくとも約10個の炭素原子を含有する。実施形態の1つにおいて、アルファオレフィンは約10個から約30個の炭素原子を含有する。好適なアルファオレフィンの例は、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、および1−エイコセン、またはそれらの混合物を含む。
【0034】
(i)少なくとも約6個の炭素原子を有するアルファオレフィン;および(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のインターポリマーのより詳細な説明は、米国特許第4,526,950号に記載されている。
【0035】
典型的に、上記(b)および(c)などの粘度指数向上剤、すなわち(b)(i)ビニル芳香族モノマーおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のコポリマー(典型的にはインターポリマー)、(c)(i)アルファオレフィンおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体のインターポリマーは、不飽和カルボン酸をアルコールと反応させることによってエステル化される。
【0036】
異なる実施形態におけるエステルを含有する粘度指数向上剤のエステル基は、約6個もしくはそれ以上、または約6個から約18個、または約8個から約14個の炭素原子を含有する。
【0037】
以下に記載されるエステルを含有する粘度指数向上剤の分子量は、たとえばポリスチレン標準を用いたGPC分析などの公知の方法を用いて定められたものである。ポリマーの分子量を決定するための方法は周知である。その方法はたとえば以下に記載される:(i)P.J.Flory、“Principles of Polymer Chemistry”、Cornell University Press、1953、第VII章、pp266−315;または(ii)“Macromolecules, an Introduction to Polymer Science”、F.A.BoveyおよびF.H.Winslow、編集者、Academic Press(1979)、pp296−312。
【0038】
異なる実施形態において、粘度指数向上剤(ポリメタクリレートまたは(i)アルファオレフィンおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のインターポリマーなど)の重量平均分子量は、約8,000から約150,000、または約10,000から約100,000、または約15,000から約75,000、または約25,000から約70,000を含む範囲内にあってもよい。
【0039】
(i)ビニル芳香族モノマー;および(ii)不飽和カルボン酸、無水物またはその誘導体に由来する、エステルを含有する粘度指数向上剤の分子量は、ポリマー物質の分子サイズを表わす認識された手段である、ポリマーの「換算比粘度」によって表わされてもよい。本明細書において用いられる換算比粘度(reduced specific viscosity)(RSVと略される)とは、RSV=(相対粘度−1)/濃度という式に従って得られる値であり、ここで相対粘度は、約10cmのアセトン中の約1gのポリマーの溶液の粘度と、約30℃におけるアセトンの粘度とを、希釈粘度計によって測定することによって定められる。上記の式による計算のために、濃度は約10cmのアセトン当り約0.4gのインターポリマーに調整される。比粘度としても公知である換算比粘度のより詳細な考察、およびインターポリマーの平均分子量に対する換算比粘度の関係は、Paul J.Flory、Principles of Polymer Chemistry(1953年版)ページ308以下参照に示されている。異なる実施形態において、粘度指数向上剤(インターポリマーなど)は、約0.05から約2、約0.06から約1、および約0.06から約0.8からなる群より選択される範囲のRSVを有する。実施形態の1つにおいて、RSVは約0.69である。別の実施形態において、RSVは約0.12である。実施形態の1つにおいて、粘度指数向上剤のMw(重量平均分子量)は約10,000から約300,000である。
【0040】
実施形態の1つにおいて、エステルを含有する粘度指数向上剤は、潤滑組成物の約0.1wt%から約70wt%、または約0.5wt%から約64.97wt%、または約1wt%から約59.79wt%、または約1.25wt%から約49.79wt%、および約1.5wt%から約30wt%からなる群より選択される範囲で潤滑組成物中に存在する。
【0041】
ポリオキシアルキレンポリオール
本発明のポリオキシアルキレンポリオールは公知である。実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは潤滑粘度の油と同じぐらい主要または排他的に用いられる。
【0042】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、潤滑組成物の約30wt%から約99.9wt%、約35wt%から約99.38wt%、または約40wt%から約98.79wt%、または約50wt%から約98.54wt%、および約55wt%から約98.29wt%からなる群より選択される範囲で潤滑組成物中に存在する。
【0043】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールの重量平均分子量は、約200から約50,000、または約500から約20,000、または約750から約10,000、または約1000から約5000である。
【0044】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールはアルキレンオキシドのホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【0045】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールはコポリマーであり、ランダムまたはブロックであってもよい。実施形態の1つにおいて、コポリマーはブロックである。実施形態の1つにおいて、コポリマーはランダムである。
【0046】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシド、ノニレンオキシド、デシレンオキシド、ウンデシレンオキシド、ドデシレンオキシド、トリデシレンオキシド、テトラデシレン、ペンタデシレンオキシド、ヘキサデシレンオキシド、ヘプタデシレンオキシド、オクタデシレンオキシド、ノナデシレンオキシド、エイコシレンオキシド、またはそれらの混合物を含むアルキレンオキシドから得られる/得ることができるホモポリマーまたはコポリマーである。
【0047】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、(1)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのアルキレンオキシドと;(2)オクチレンオキシド、ノニレンオキシド、デシレンオキシド、ウンデシレンオキシド、ドデシレンオキシド、トリデシレンオキシド、テトラデシレン、ペンタデシレンオキシド、ヘキサデシレンオキシド、ヘプタデシレンオキシド、オクタデシレンオキシド、ノナデシレンオキシド、エイコシレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのアルキレンオキシドとの混合物から得られる/得ることができるコポリマーである。
【0048】
実施形態の1つにおいて、(2)のアルキレンオキシドは、デシレンオキシド、ウンデシレンオキシド、ドデシレンオキシド、トリデシレンオキシド、テトラデシレン、ペンタデシレンオキシド、ヘキサデシレンオキシド、ヘプタデシレンオキシド、オクタデシレンオキシド、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0049】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、2つまたはそれ以上のアルキレンオキシドのコポリマーから得られる/得ることができる。
【0050】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、(i)エチレンオキシドに由来するオキシアルキレン基の部分と;(ii)約3個から約8個の炭素原子を含有するアルキレンオキシドに由来するオキシアルキレン基の部分とを含む。
【0051】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーから得られる/得ることができる。
【0052】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールの(i)約0.1wt%から約80wt%のエチレンオキシドと、約20wt%から約99.9wt%にて存在する約3個から約8個の炭素原子を含有するアルキレンオキシドとを含む。
【0053】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールの(i)約0wt%から約75wt%のエチレンオキシドと、約25wt%から約100wt%にて存在する約3個から約8個の炭素原子を含有するアルキレンオキシドとを含む。
【0054】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールの(i)約1wt%から約70wt%のエチレンオキシドと、約30wt%から約99wt%にて存在する約3個から約8個の炭素原子を含有するアルキレンオキシドとを含む。
【0055】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールの(i)約5wt%から約60wt%のエチレンオキシドと、約40wt%から約95wt%にて存在する約3個から約8個の炭素原子を含有するアルキレンオキシドとを含む。
【0056】
好適な商業的に入手可能なポリオキシアルキレンポリオール化合物の例は、Bayerより入手可能なActaclearTMND−21、Emkarox(登録商標)VG−222、Emkarox(登録商標)VG−127W、Emkarox(登録商標)VG−132W(すべてのEmkarox製品はUniquemaより入手可能)、またはBASFより入手可能なさまざまな油溶性Synalox(登録商標)もしくはPluracol(登録商標)製品を含む。
【0057】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、(i)1つまたはそれ以上のアルキレンオキシドと、(ii)スチレンオキシドとのコポリマーから得られる/得ることができる。
【0058】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオール、単一もしくは2個のヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオール(本明細書においては一般的にヒドロカルビルでキャップされたポリアルキレンポリオールと呼ぶ)、またはそれらの混合物を含む。
【0059】
実施形態の1つにおいて、ヒドロキシルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールは、当業者には公知のプロセスによって(i)アルキレンオキシド、(ii)水および必要に応じてアルコール、ならびに(iii)塩基触媒を反応させるステップを含むプロセスによって得られる/得ることができる。
【0060】
ヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールは、塩基性の触媒作用によって調製されてもよい。米国特許第4,274,837号、第4,877,416号および第5,600,025号は、ヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールを作成するための塩基触媒としての、カリウムなどのアルカリ金属の使用を開示する。
【0061】
実施形態の1つにおいて、ヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールは、二金属シアン化物触媒を用いて調製されてもよい。好適な二金属シアン化物触媒は、米国特許第3,278,457号、第3,941,849号、第4,472,560号、第5,158,922号、第5,470,813号、および第5,482,908号に記載されている。
【0062】
好適な塩基触媒の例は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、ルイス塩基、および二金属シアン化物複合体を含む。
【0063】
実施形態の1つにおいて、ポリオキシアルキレンポリオールは、米国特許第6,821,308号に開示されるとおりに、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−tert−ブチルアルコール錯体を用いて調製されてもよい。
【0064】
反応は約50℃から約150℃、または約100℃から約120℃の反応温度範囲で行なわれてもよい。
【0065】
反応は約10kPaから約3000kPa(または約0.1バールから約30バール)、または約50kPaから約1500kPa(または約0.5バールから約15バール)の気圧にて行なわれてもよい。 塩基触媒は、酸中和、イオン交換、金属の吸着、またはそれらの混合を含む技術によって除去または中和されてもよい。
【0066】
開始剤は典型的には水および/またはアルコールである。アルコールは、一価アルコールまたは多価アルコールを含む。好適な多価アルコールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、グルコース、スクロース、メチルグルコシド、またはそれらの混合物を含む。一価アルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、またはそれらの混合物を含む。
【0067】
異なる実施形態において、直鎖一価アルコールはメタノール、ブタノール、またはそれらの混合物を含む。
【0068】
実施形態の1つにおいて、一価アルコールは直鎖状であり、約1個から約40個の炭素原子を含有する。実施形態の1つにおいて、一価アルコールは分岐鎖状であり、約1個から約60個の炭素原子を含有する。
【0069】
実施形態の1つにおいて、一価アルコールは直鎖状であり、約11個から約40個の炭素原子を含有する。
【0070】
実施形態の1つにおいて、一価アルコールは分岐鎖状であり、約6個から約40個の炭素原子を含有する。
【0071】
異なる実施形態において、好適な直鎖一価アルコールはC12−15アルコールの混合物、またはC8−10アルコールを含む。
【0072】
実施形態の1つにおいて、分岐鎖一価アルコールは2−エチルヘキサノール、もしくはイソトリデカノール、ゲルベアルコール、もしくは式R’R”CHCHOHの分岐鎖アルコール、またはそれらの混合物を含む。
【0073】
上述において定義された式のR’およびR”に対する好適な基の例は以下を含む:
1)C15−16ポリメチレン基を含有するアルキル基、たとえば2−C1−15アルキルヘキサデシル基(例、2−オクチルヘキサデシル)および2−アルキルオクタデシル基(例、2−エチルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシルおよび2−ヘキサデシルオクタデシル)など;
2)C13−14ポリメチレン基を含有するアルキル基、たとえば2−C1−15アルキルテトラデシル基(例、2−ヘキシルテトラデシル、2−デシルテトラデシルおよび2−ウンデシルトリデシル)および2−C1−15アルキルヘキサデシル基(例、2−エチルヘキサデシルおよび2−ドデシルヘキサデシル)など;
3)C10−12ポリメチレン基を含有するアルキル基、たとえば2−C1−15アルキルドデシル基(例、2−オクチルドデシル)および2−C1−15アルキルドデシル基(2−ヘキシルドデシルおよび2−オクチルドデシル)、2−C1−15アルキルテトラデシル基(例、2−ヘキシルテトラデシルおよび2−デシルテトラデシル)など;
4)C6−9ポリメチレン基を含有するアルキル基、たとえば2−C1−15アルキルデシル基(例、2−オクチルデシルおよび2,4−ジ−C1−15アルキルデシル基(例、2−エチル−4−ブチルデシル基)など;
5)C1−5ポリメチレン基を含有するアルキル基、たとえば2−(3−メチルヘキシル)−7−メチルデシルおよび2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクチル基)など;ならびに
6)2つまたはそれ以上の分岐鎖アルキル基の混合物、たとえばプロピレンオリゴマー(ヘキサマーからウンデカマーまで)に対応するオキソアルコールのアルキル残基、エチレン/プロピレン(約16:1〜1:11のモル比)オリゴマー、イソブテンオリゴマー(ペンタマーからオクタマーまで)、C5−17α−オレフィンオリゴマー(ダイマーからヘキサマーまで)など。
【0074】
実施形態の1つにおいて、ヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールは単一キャップされる(mono−capped)。
【0075】
一価アルコールは典型的に、ヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールにおけるキャップ基を形成する。
【0076】
異なる実施形態において、ポリオキシアルキレンポリオールのヒドロカルビルでキャップされた基は、約6個から約40個、または約6個から約30個、または約8個から約20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の一価アルコールの残基を含む。
【0077】
異なる実施形態において、ポリオキシアルキレンポリオールのヒドロカルビルでキャップされた基は、約6個から約60個、または約8個から約50個、または約8個から約30個、または約8個から約12個の炭素原子を含有する分岐鎖一価アルコールの残基を含む。分岐は鎖のあらゆる地点で起こってもよく、分岐はあらゆる長さであってもよい。
【0078】
約6個またはそれ以上の炭素原子を含有する分岐鎖一価アルコールの例は、2−エチルヘキサノールを含む。
【0079】
異なる実施形態において、ポリオキシアルキレンポリオールのヒドロカルビルでキャップされた基は、約1個から約60個、または約11個から約60個、または約11個から約30個、または約12個から約20個、または約12個から約18個の炭素原子を含有する直鎖一価アルコールの残基を含む。
【0080】
リンを含有する酸、塩またはエステル
実施形態の1つにおいて、潤滑組成物はリンを含有する酸、塩またはエステルを含む。このリンを含有する酸、塩またはエステルは、耐摩耗剤および/または極圧剤であってもよい。実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは混合物の形である。
【0081】
リンを含有する酸、塩またはエステルは、灰分含有(すなわち金属含有)であっても、または灰分なし(すなわち金属なし(他の成分と混合される前))であってもよい。
【0082】
リンを含有する酸、塩またはエステルは、(i)非イオン性リン化合物;(ii)リン化合物のアミン塩、例えばモノアルキルおよびジアルキルリン酸の混合物のアミン塩など、(iii)リン化合物のアンモニウム塩;(iv)金属ジアルキルジチオリン酸塩または金属ジアルキルリン酸塩など、リン化合物の一価もしくは二価の金属塩、;または(v)(i)、(ii)、(iii)または(iv)の2つまたはそれ以上の混合物を含む。
【0083】
実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、金属ジアルキルジチオリン酸塩を含む。ジアルキルジチオリン酸塩のアルキル基は約2個から約20個の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖を含み、ここで炭素の合計数はポリオキシアルキレンポリオールのヒドロカルビルでキャップされた基において金属ジアルキルジチオリン酸塩を可溶性にするために十分であるものとする。金属ジアルキルジチオリン酸塩の金属は典型的に、一価または二価の金属を含む。好適な金属の例は、ナトリウム、カリウム、銅、カルシウム、マグネシウム、バリウムまたは亜鉛を含む。実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、亜鉛ジアルキルジチオリン酸塩である。好適な亜鉛ジアルキルリン酸塩(zinc dialkylphosphate)(しばしばZDDP、ZDPまたはZDTPと呼ばれる)の例は、亜鉛ジ−(アミル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(1,3−ジメチルブチル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(ヘプチル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(オクチル)ジチオリン酸塩、ジ−(2−エチルヘキシル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(ノニル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(デシル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(ドデシル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(ドデシルフェニル)ジチオリン酸塩、亜鉛ジ−(ヘプチルフェニル)ジチオリン酸塩、またはそれらの混合物を含む。
【0084】
アルコールの混合物に由来する亜鉛ジアルキルジチオリン酸塩の例は、(i)アミルアルコールおよびイソブチルアルコールの混合物、(ii)2−エチルヘキシルアルコールおよびイソプロピルアルコール、ならびに(iii)4−メチル−2−ペンタノールおよびイソプロピルアルコールに由来するものを含む。
【0085】
実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、金属ジアルキルジチオリン酸塩以外のものである。
【0086】
実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、リンを含有する酸またはエステルのアンモニウム塩またはアミン塩を含む。
【0087】
リンの酸またはエステルのアミン塩は、リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびそのアミン塩;亜リン酸塩のアミン塩;ならびにリンを含有するカルボン酸エステル、エーテルおよびアミドのアミン塩;ならびにそれらの混合物を含む。
【0088】
リンの酸またはエステルのアミン塩は、単独または組合せて用いられてもよい。実施形態の1つにおいて、リン化合物のアミン塩は、リン化合物のアミン塩またはその混合物に由来する。
【0089】
実施形態の1つにおいて、リンの酸またはエステルのアミン塩は、部分的アミン塩−部分的金属塩の化合物またはその混合物を含む。実施形態の1つにおいて、リンの酸またはエステルのアミン塩は、分子中に少なくとも1つの硫黄原子をさらに含む。
【0090】
アミン塩を好適に作成するための好適なアミンは、一級アミン、二級アミン、三級アミン、およびそれらの混合物を含む。このアミンは、少なくとも1個のヒドロカルビル基を有するものか、または特定の実施形態においては、2個もしくは3個のヒドロカルビル基を有するものを含む。このヒドロカルビル基は約2個から約30個の炭素原子を含有してもよく、別の実施形態においては約8個から約26個、または約10個から約20個、または約13個から約19個の炭素原子を含有してもよい。
【0091】
一級アミンは、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミンおよびドデシルアミン、ならびにn−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびオレイルアミン(oleyamine)などの脂肪族アミンを含む。その他の有用な脂肪族アミンには、商業的に入手可能な脂肪族アミン、たとえば「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals、Chicago、Illinoisより入手可能な製品)などが含まれ、ArmeenにはArmeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SDなどがあり、この文字表示は脂肪基、たとえばココ、オレイル、獣脂、またはステアリル基などに関係する。
【0092】
好適な二級アミンの例は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、およびエチルアミルアミンを含む。二級アミンは、たとえばピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンなどの環状アミンを含む。
【0093】
実施形態の1つにおいて、アミンは三級脂肪族一級アミンを含む。三級脂肪族一級アミンの脂肪族基は、約2個から約30個、または約6個から約26個、または約8個から約24個の炭素原子を含有するアルキル基を含む。三級アルキルアミンは、モノアミン、たとえばtert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノシクロヘキサン、tert−オクチルアミン、tert−デシルアミン、tertドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミン、およびtert−オクタコサニルアミンなどを含む。
【0094】
実施形態の1つにおいて、リンの酸またはエステルのアミン塩は、約C11から約C14の三級アルキル一級基(tertiary alkyl primary group)を有するアミンまたはその混合物を含む。実施形態の1つにおいて、リン化合物のアミン塩は、約C14から約C18の三級アルキル一級アミン(tertiary alkyl primary amine)であるアミンまたはその混合物を含む。実施形態の1つにおいて、リン化合物のアミン塩は、約C18から約C22の三級アルキル一級アミンであるアミンまたはその混合物を含む。
【0095】
本発明においてはアミンの混合物が用いられてもよい。実施形態の1つにおいて、有用なアミンの混合物は「Primene(登録商標)81R」および「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RまたはPrimene(登録商標)JMT(どちらもRohm & Haasによって製造販売される)はそれぞれ、約C11から約C14の三級アルキル一級アミンおよび約C18から約C22の三級アルキル一級アミンの混合物である。
【0096】
実施形態の1つにおいて、リンの酸またはエステルのアミン塩は、約C14から約C18のアルキル化リン酸と、約C11から約C14の三級アルキル一級アミンの混合物であるPrimene 81R(登録商標)(Rohm & Haasによって製造販売される)との反応生成物である。
【0097】
リンの酸またはエステルのアミン塩の例は、イソプロピル、メチル−アミル(4−メチル−2−ペンチルまたはその混合物)、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチルまたはノニルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリンまたはPrimene 81RTM、およびそれらの混合物との反応生成物を含む。
【0098】
実施形態の1つにおいて、ジチオリン酸をエポキシドまたはグリコールと反応させてもよい。この反応生成物を、リンの酸、無水物または低級エステル(ここで「低級」とは、エステルのアルコール由来の部分における約1個から約8個、または約1個から約6個、または約1個から約4個、または1個から約2個の炭素原子を示す)とさらに反応させる。エポキシドは脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドを含む。有用なエポキシドの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、スチレンオキシドなどを含む。実施形態の1つにおいて、エポキシドはプロピレンオキシドである。グリコールの好適な例は、1個から約12個、または約2個から約6個、または約2個から約3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールを含む。これらのジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬、およびそれらを反応させる方法は、米国特許第3,197,405号および第3,544,465号に記載される。その結果得られる酸は、次いでアミンによって塩処理されてもよい。好適なジチオリン酸誘導体の一例は、五酸化リン(約64グラム)を58℃にて約45分間、約514グラムのヒドロキシプロピルO,O−ジ(4−メチル−2−ペンチル)ジチオリン酸(ジ(4−メチル−2−ペンチル)ジチオリン酸と、約1.3モルのプロピレンオキシドとを約25℃にて反応させることによって調製される)に加えることによって調製される。混合物は約75℃にて約2.5時間加熱され、珪藻土と混合され、約70℃にてろ過される。ろ液は、約11.8重量%のリンと、約15.2重量%の硫黄と、87の酸価(ブロモフェノールブルー)とを含有する。
【0099】
実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、非イオン性リン化合物を含む。典型的に、非イオン性リン化合物は+3または+5の酸化数を有してもよい。異なる実施形態は、亜リン酸エステル、リン酸エステル、またはそれらの混合物を含む。非イオン性リン化合物のより詳細な説明は、米国特許第6,103,673号の第9欄48行目から第11欄8行目を含む。
【0100】
実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、少なくとも1つの部分的にエステル化したモノチオリン酸のアミン塩、またはその混合物を含む。
【0101】
実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、少なくとも1つのリン酸の部分エステルのアミン塩を含む。
【0102】
少なくとも1つの部分的にエステル化したモノチオリン酸のアミン塩;および少なくとも1つのリン酸の部分エステルのアミン塩のより詳細な説明は、EP460 317号に開示される。
【0103】
実施形態の1つにおいて、リンを含有する酸、塩またはエステルは、潤滑組成物の約0wt%から約20wt%、約0.01wt%から約15wt%、または約0.1wt%から約10wt%、または約0.1wt%から約7.5wt%、および約0.1wt%から約5wt%からなる群より選択される範囲で潤滑組成物中に存在する。
【0104】
極圧剤
極圧剤は、典型的にリンを含有する酸、塩またはエステル以外である。
【0105】
極圧剤は、ホウ素含有化合物、硫黄含有化合物、またはそれらの混合物を含む。
【0106】
実施形態の1つにおいて、極圧剤は、ホウ素含有化合物またはその混合物を含む。
【0107】
実施形態の1つにおいて、極圧剤は、硫黄含有化合物またはその混合物を含む。
【0108】
実施形態の1つにおいて、極圧剤は、硫黄含有化合物およびホウ素含有化合物を含む。
【0109】
実施形態の1つにおいて、極圧剤は、潤滑組成物の約0wt%から約20wt%、約0.01wt%から約15wt%、または約0.1wt%から約10wt%、または約0.1wt%から約7.5wt%、および約0.1wt%から約5wt%からなる群より選択される範囲で潤滑組成物中に存在する。
【0110】
硫黄含有化合物
実施形態の1つにおいて、極圧剤は、硫黄含有化合物を含む。実施形態の1つにおいて、硫黄含有化合物は硫化オレフィン、ポリスルフィド、またはそれらの混合物を含む。
【0111】
硫化オレフィンの例は、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、有機硫化物および/もしくはベンジルジスルフィドを含むポリスルフィドに由来するオレフィン;ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド;ジブチルテトラスルフィド;ジ−三級ブチルポリスルフィド;ならびにオレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールス−アルダー付加物、アルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカルバメート;またはそれらの混合物を含む。実施形態の1つにおいて、硫化オレフィンは、プロピレン、イソブチレン、ペンテンまたはそれらの混合物に由来するオレフィンを含む。
【0112】
実施形態の1つにおいて、極圧剤硫黄含有化合物は、ジメルカプトチアジアゾール化合物またはその混合物を含む。ジメルカプトチアジアゾール化合物の例は、2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール、またはそのオリゴマーを含む。ヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾールのオリゴマーは典型的に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール単位の間に硫黄−硫黄結合を形成して、この2つまたはそれ以上のチアジアゾール単位のオリゴマーを形成することによって形成される。好適な2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール化合物は、2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールまたは2−tert−ノニルジチオ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールを含む。
【0113】
ヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのヒドロカルビル置換基の炭素原子の数は典型的に、約1個から約30個、または約2個から約20個、または約3個から約16個を含む。
【0114】
ホウ酸エステルまたはホウ酸アルコール
実施形態の1つにおいて、極圧剤はホウ素含有化合物を含む。ホウ素含有化合物は、ホウ酸エステル、ホウ酸アルコール、またはそれらの混合物を含む。
【0115】
実施形態の1つにおいて、ホウ素含有化合物はホウ酸エステルまたはホウ酸アルコールを含む。ホウ酸エステルまたはホウ酸アルコール化合物は、ホウ酸アルコールの少なくとも1つのヒドロキシル基がエステル化されていないことを除けば実質的に同じである。したがって、本明細書において用いられる「ホウ酸エステル」という用語は、ホウ酸エステルまたはホウ酸アルコールのいずれかを示すために用いられる。
【0116】
ホウ酸エステルは、ホウ素化合物と、エポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、エピハロヒドリン化合物、アルコールおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物との反応によって調製されてもよい。アルコールは、二価アルコール、三価アルコールまたは高級アルコールを含み、実施形態の1つに対する条件では、ヒドロキシル基が隣接する炭素原子上にあり、すなわち近接している。以後は、「エポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、エピハロヒドリン化合物およびそれらの混合物から選ばれる少なくとも1つの化合物」を示すときに「エポキシ化合物」が用いられる。
【0117】
ホウ酸エステルを調製するために好適なホウ素化合物は、ホウ酸(メタホウ酸、HBO、オルトホウ酸、HBO、およびテトラホウ酸、Hを含む)、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素およびアルキルボレートからなる群より選択されるさまざまな形を含む。ホウ酸エステルはホウ素ハロゲン化物から調製されてもよい。
【0118】
実施形態の1つにおいて、ホウ酸エステルは、ホウ酸処理剤(borating agent)と、エポキシ化合物、二価アルコール、三価アルコールまたは高級アルコールとの反応によって形成される。
【0119】
ホウ酸処理剤は、さまざまな形のホウ酸(メタホウ酸、HBO、オルトホウ酸、HBO、およびテトラホウ酸、Hを含む)、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素およびアルキルボレート、たとえば式(RO)B(OH)を有するものなどを含み、ここでxは1から3であり、yは0から2であり、xとyとの合計が3であり、Rは約1個またはそれ以上の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、このホウ酸処理剤はポリオキシアルキレンポリオールにおいて可溶性であるものとする。
【0120】
実施形態の1つにおいて、ホウ酸処理剤は、アルカリまたは混合されたアルカリ金属およびアルカリ土類金属ホウ酸塩を含む。これらの金属ホウ酸塩は一般的に、当該技術分野において公知の水和粒子金属ホウ酸塩である。実施形態の1つにおいて、金属ホウ酸塩は混合されたアルカリおよびアルカリ土類金属ホウ酸塩を含む。これらの金属ホウ酸塩は商業的に入手可能である。
【0121】
実施形態の1つにおいて、式(RO)B(OH)に対するxは2または3に等しい。xが2または3に等しいとき、上記の式当り少なくとも2つのR基がヒドロカルビル基である。あらゆる2つの隣接するR基が環の中でつながれているとき、ヒドロカルビル基はアルキル、アリールまたはシクロアルキルを含む。Rがアルキルのとき、この基は飽和または不飽和基を含む。実施形態の1つにおいて、ヒドロカルビル基は不飽和アルキルである。実施形態の1つにおいて、ヒドロカルビル基は環式である。実施形態の1つにおいて、ヒドロカルビル基はアルキルおよびシクロアルキルの混合物である。
【0122】
一般的に、分子の炭素原子の数に上限はないが、実際的な限界は約500、または約400、または約200、または約100、または約60を含む。たとえば、各R基に存在する炭素原子の数は、約1個から約60個、または約1個から約40個、または約1個から約30個の炭素原子を含み、ここでR基における炭素原子の合計数は典型的に約9個もしくはそれ以上、または約10個もしくはそれ以上、または約12個もしくはそれ以上、または約14個もしくはそれ以上の範囲にあるものとする。
【0123】
実施形態の1つにおいては、すべてのR基が約1個から約30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、ここで炭素原子の合計数は約9個またはそれ以上であるとする。
【0124】
R基の例は、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、アミル、2−ペンテニル、4−メチル−2−ペンチル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、イソオクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル(一般にオレイルと示される)、ノナデシルおよびエイコシル基を含む。
【0125】
実施形態の1つにおいて、本発明のエポキシ化合物は、C14−C16エポキシドまたはC14−C18エポキシドの商業的混合物を含む。実施形態の1つにおいて、本発明のエポキシ化合物は、純粋である。好適な純粋なエポキシ化合物の例は、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシブタデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカン、および1,2−エポキシイコサンを含んでもよい。実施形態の1つにおいて、純粋なエポキシ化合物は、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカンを含む。実施形態の1つにおいて、精製されたエポキシ化合物は1,2−エポキシヘキサデカンを含む。
【0126】
二価アルコール、三価アルコールまたは高級アルコールは、約2個から約30個、または約4個から約26個、または約6個から約20個の炭素原子を含有してもよい。アルコール化合物は、グリセロール化合物、たとえばモノオレイン酸グリセロールなどを含んでもよい。
【0127】
ホウ酸エステルは、上述のホウ酸処理剤とエポキシ化合物またはアルコールとを混合して、所望の反応が起こるまで、たとえば約80℃から約250℃、約90℃から約240℃、または約100℃から約230℃などの好適な温度で加熱することによって調製されてもよい。ホウ酸処理剤のエポキシ化合物に対するモル比は、約4:1から約1:4、または約1:1から約1:3、または約1:2を含む。反応を行なう際に不活性の液体が用いられてもよい。この液体はトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、またはそれらの混合物を含む。典型的には水が形成されて、反応中に蒸留して除去される。この反応を触媒するためにアルカリ試薬が用いられてもよい。
【0128】
実施形態の1つにおいて、好適なホウ素含有化合物は、トリプロピルボレート、トリブチルボレート、トリペンチルボレート、トリヘキシルボレート、トリヘプチルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、およびトリデシルボレートを含む。
【0129】
実施形態の1つにおいて、ホウ酸エステル化合物は、トリブチルボレート、トリ−2−エチルヘキシルボレートまたはそれらの混合物を含む。
【0130】
潤滑粘度の従来の油
実施形態の1つにおいて、本明細書に開示されるヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールは、潤滑粘度の従来の油と混合される。例えば、潤滑粘度の従来の油が本明細書に開示されるヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールと混合しない場合、当業者はエステル基油をさらに含んでもよい。理論に縛られることなく、エステル基油の存在は、本明細書に開示されるヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールと潤滑粘度の従来の油との可溶化を助けると考えられる。
【0131】
実施形態の1つにおいて、本発明の潤滑組成物は、本明細書に開示されるヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオールによって潤滑され、すなわちこの潤滑組成物は潤滑剤添加剤に従来から関連する希釈剤油以外の潤滑粘度の従来の油を含まない。
【0132】
潤滑粘度の従来の油は、本明細書に開示されるヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオール以外の油である。潤滑粘度の従来の油は、天然および合成の油、水素化分解、水素付加および水素化仕上げより得られる油、未精製、精製および再精製した油またはそれらの混合物を含む。
【0133】
未精製油は、一般的にさらなる精製処理なし(またはほとんどなし)に、天然または合成供給源から直接得られた油である。
【0134】
精製油は、1つまたはそれ以上の精製ステップにおいてさらに処理されることによって1つまたはそれ以上の特徴を改善されること以外は、未精製油と同様である。精製技術は当該技術分野において公知であり、溶媒抽出、二次的な蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、浸出ろ過などを含む。
【0135】
再精製油は再生油または再処理油としても公知であり、精製油を得るために用いられるのと同様のプロセスによって得られ、しばしば使用された添加剤および油分解生成物の除去に向けられた技術によって付加的に処理される。
【0136】
潤滑粘度の従来の油の作製に有用な天然油は、動物油、植物油(例、ヒマシ油、ラード油)、鉱物潤滑油、たとえば液体石油、および溶媒処理または酸処理された、パラフィン系、ナフテン系または混合パラフィン−ナフテン系の鉱物潤滑油、および石炭またはシェールまたはそれらの混合物に由来する油などを含む。
【0137】
潤滑粘度の従来の合成油は有用であり、炭化水素油、たとえば重合および共重合されたオレフィン(例、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)など;ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびそれらの混合物;アルキルベンゼン(例、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似物および相同体またはそれらの混合物を含む。
【0138】
潤滑粘度の別の従来の合成油は、本明細書に開示されるヒドロカルビルでキャップされたポリオキシアルキレンポリオール以外のポリオールエステル、ジエステル、リンを含有する酸の液体エステル(例、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、または重合テトラヒドロフランを含む。潤滑粘度の従来の合成油は、Fischer−Tropsch反応によって生成される油も含み、典型的には水素異性化したFischer−Tropsch炭化水素またはワックスであってもよい。実施形態の1つにおいて、潤滑粘度の従来の油は、Fischer−Tropschのガス−ツー−リキッド(gas−to−liquid)合成手順およびその他のガス−ツー−リキッド油によって調製されてもよい。
【0139】
実施形態の1つにおいて、潤滑組成物はマルチグレード流体である。
【0140】
潤滑粘度の従来の油は、米国石油協会(American Petroleum Institute:API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)において特定されるとおりに定義されてもよい。5つの基油グループは以下のとおりである:グループI(硫黄含有量>0.03wt%、および/または<90wt%飽和、粘度指数80〜120);グループII(硫黄含有量≦0.03wt%、および≧90wt%飽和、粘度指数80〜120);グループIII(硫黄含有量≦0.03wt%、および≧90wt%飽和、粘度指数≧120);グループIV(すべてのポリアルファオレフィン(polyalphaolefins:PAOs));およびグループV(グループI、II、IIIまたはIVに含まれないその他のものすべて)。潤滑粘度の油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVの油またはそれらの混合物を含む。潤滑粘度の油はしばしば、APIグループI、グループII、グループIII、グループIVの油またはそれらの混合物である。代替的に、潤滑粘度の油はしばしば、APIグループII、グループIIIもしくはグループIVの油またはそれらの混合物を含む。
【0141】
他の性能添加剤
本発明の潤滑組成物は任意に、少なくとも1つの他の性能添加剤をさらに含む。他の性能添加剤は、金属不活性化剤、界面活性剤、分散剤、抗酸化剤、腐食防止剤、泡止剤、抗乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤またはそれらの混合物を含む。
【0142】
実施形態の1つにおいて、無油の基礎に存在するその他の性能添加剤化合物の合計組合せ量は、潤滑組成物の0wt%から25wt%、または0.01wt%から10wt%、または0.01wt%から10wt%、または0.01wt%から10wt%、および0.01wt%から5wt%からなる群より選択される範囲で潤滑組成物中に存在する。1つまたはそれ以上のその他の性能添加剤が存在し得るが、その他の性能添加剤は互いに対して異なる量で存在することが一般的である。
【0143】
抗酸化剤は、モリブデン化合物、たとえばモリブデンジチオカルバメート、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、アミン化合物、たとえばアルキル化ジフェニルアミン(典型的にはジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、またはジオクチルジフェニルアミン)などを含む;界面活性剤は、中性または過塩基性の界面活性剤、ニュートンまたは非ニュートンの、アルカリ、アルカリ土類または遷移金属の塩基性塩を含み、これらはフェネート、硫化されたフェネート、スルホネート、カルボン酸、リン酸、モノ−および/またはジ−チオリン酸、サリゲニン、アルキルサリチレート、およびサリキサレートのうちの1つまたはそれ以上を有する;分散剤は、N置換された長鎖アルケニルスクシンイミド、およびマンニッヒ縮合生成物およびその後処置されたバージョンを含む。後処置された分散剤は、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換された無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、およびリン化合物との反応によるものを含む。
【0144】
付加的に、本発明は、脂肪族アミン、エステル、たとえばホウ酸グリセロールエステル、脂肪族グリセロール部分エステル(たとえばグリセロールモノオレエートまたはグリセロールジオレエートなど)など、脂肪族亜リン酸、脂肪酸アミド、脂肪族エポキシド、ホウ酸脂肪族エポキシド、アルコキシル化脂肪族アミン、ホウ酸アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、または脂肪族イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物を含む成分以外の摩擦調整剤(modifiers)を含んでもよい。
【0145】
その他の性能添加剤、たとえば、オクチルアミンオクタン酸、ドデセニルコハク酸または無水物およびオレイン酸などの脂肪酸のポリアミンとの縮合生成物を含む腐食防止剤;ベンゾトリアゾール(典型的にはトリルトリアゾール)、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾールの誘導体を含む金属不活性化剤;アクリル酸エチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルおよび必要に応じて酢酸ビニルのコポリマーを含む泡止剤;リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む抗乳化剤;無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤;ならびにExxon Necton−37TM(FN1380)およびExxon Mineral Seal Oil(FN3200)を含むシール膨潤剤;ならびに官能基化ポリオレフィン、たとえば無水マレイン酸とアミンとの反応生成物によって官能基化されたエチレン−プロピレンコポリマー、アミンで官能基化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応した無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルなどを含む分散粘度調整剤(dispersant viscosity modifiers:しばしばDVMと呼ばれる);が本発明の組成物に用いられてもよい。
【0146】
工業的適用
本発明の方法は、さまざまな機械装置を潤滑するために有用である。この機械装置は、内燃機関(クランクケース潤滑のため)、液圧システム、車軸、ギア、ギアボックスまたは変速機のうちの少なくとも1つを含む。実施形態の1つにおいて、この機械装置は、ドライブライン、たとえば車軸、ギア、ギアボックスまたは変速機を含む。
【0147】
変速機は、手動変速機、連続可変変速機(continuously variable transmissions:CVT)、無限可変変速機(infinitely variable transmissions:IVT)、トロイダル変速機、連続スリップトルク変換クラッチ(continuously slipping torque converted clutches:CSTCC)、自動変速機、有段自動変速機、トラクションドライブ変速機、またはデュアルクラッチ変速機(dual clutch transmissions:DVT)を含んでもよい。実施形態の1つにおいて、変速機は手動変速機である。
【0148】
実施形態の1つにおいて、本明細書に開示される潤滑組成物は、許容できる摩擦係数、粘度指数(VI)、混合油濃化能力、せん断安定性、良好な低温粘度性能、動作温度の低減、許容できる摩耗性能、許容できる耐久性、または許容できる燃費のうちの少なくとも1つを与え得る潤滑粘度の油を機械装置に提供できる。
【0149】
以下の実施例は、本発明の例示を提供するものである。これらの実施例は網羅的なものではなく、本発明の範囲を制限することは意図されていない。
【実施例】
【0150】
本明細書に引用される、以下の実施例に加えられる添加剤の量は、希釈剤の従来の量(添加剤によって0wt%から約60%であってもよい)を含む。
【0151】
実施例1:10wt%の商業的に入手可能な添加剤パッケージおよび約90wt%のプロピレングリコールに由来するC12−15アルキルアルコール開始ポリアルキレングリコール(BayerよりActaclearTMND−21という商品名で商業的に入手可能)を含有するギア油。このギア油は、約5wt%の粘度指数向上剤(無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル)、約4.6wt%の硫化オレフィン、約1.9wt%のリン耐摩耗剤、約3.25wt%の抗酸化剤(フェノール化合物およびアミン化合物を含む)をさらに含む。
【0152】

実施例2:10wt%の商業的に入手可能な添加剤パッケージおよび約90wt%の商業的に入手可能なプロピレングリコールに由来するブタノール開始ポリアルキレングリコールを含有するギア油。このギア油は、約5wt%の粘度指数向上剤(無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル)、約4.6wt%の硫化オレフィン、約1.9wt%のリン耐摩耗剤、約3.25wt%の抗酸化剤(フェノール化合物およびアミン化合物を含む)をさらに含む。
【0153】

実施例3:粘度調整剤が約10wt%にて存在する以外は実施例1と同様のギア油である。
【0154】
比較例1は、粘度調整剤がポリオレフィンコポリマーであること以外は実施例1と同じである。ポリオレフィンコポリマー粘度調整剤は潤滑組成物中で可溶性にならない。
【0155】
比較例2は、粘度指数向上剤が存在しないこと以外は実施例3と同様である。
【0156】
テスト1:車軸効率
実施例1および実施例2の車軸効率は、SAE論文番号第2003−01−3235号(表題:“Developing Next Generation Axle Fluids:Part III−Laboratory CAFE Simulation Test as Key Fluid Development Tool”、著者:Akucewich,E.S.;O’Connor,B.M.;Vinci,J.N.;Schenkenberger,C.)に開示される方法論を利用することによって定められる。このテスト方法は、連邦政府テスト手順75(Federal Test Procedure 75:FTP−75)をシミュレーションする。この方法は、実験室の実物大の車軸スタンドにおいて一連の定常状態速度および負荷条件を行なうことによって、FTP−75をシミュレーションする。このテスト方法は、複数の潤滑剤評価のために単一の車軸を使用する。新しい車軸に関連する効率性能のドリフトを最小化するために、テストを始める前に車軸に対する試運転手順が行なわれる。この試運転手順の後に、これらの例が2回評価される。得られた結果は以下のとおりである:
【0157】
【表1】

テスト2:摩擦係数
上述に開示される例示組成物の摩擦係数を、PCS Instrumentsより入手可能なMini Traction Machine(MTM)を用いて評価する。テスト構成は、直径約19.05mm(3/4インチ)の軸受スチールボールを、直径46mmの軸受スチールディスク上の高度に研磨された表面上に接触させたものである。ボールは、接点におけるスピンが排除されるようにディスクと接触する。回転速度、スライド/ロール比、温度および負荷は、各テストの際に変動し得るパラメータであった。サーボモータを用いて試料スピードを独立に制御することによって、接点における所望のスライド/ロール運動を生成する。試料は、約35mlの流体サンプルを含有する密封され温度制御されたリザーバに含まれる。テスト温度は電気ヒータを用いて制御される。接点は所望のヘルツ圧力に自動的に負荷される。この特定の研究に対して実行された一連のテストは、約1.25GPaのヘルツ圧力、約40℃から約120℃の温度範囲、約2.5m/sの回転速度、および約0%から約30%の連続的に変動可能なスライド対ロール比(slide to roll ratios)において行なわれた。得られた結果は以下のとおりである:
【0158】
【表2】

テスト3:粘度測定
運動力学的ブルックフィールド粘度は、それぞれ約100℃(KV100)におけるASTM法D445および約−40℃(BV−40)におけるD2983を用いて決定される。粘度指数(viscosity index:VI)はASTM法D2270を用いても決定される。得られたデータは以下のとおりである:
【0159】
【表3】

全体として、得られたデータから、本発明の潤滑組成物はマルチグレードの潤滑剤を提供できることが示される。加えて、本発明の潤滑組成物は、許容できる低温粘度、許容できる高温粘度、粘度指数(VI)、混合油濃化能力、せん断安定性、許容できる摩擦係数、動作温度の低減、許容できる摩耗性能、許容できる腐食、許容できる酸化的分解、許容できる耐久性、または許容できる燃費のうちの少なくとも1つを機械装置に提供できる。
【0160】
上述の材料のいくつかは、最終配合物中で相互作用し得ることが公知であるため、最終配合物の成分は最初に添加された成分とは異なる可能性がある。意図される使用において本発明の潤滑組成物を用いて形成された生成物を含む、この配合物によって形成された生成物は、容易な説明を許さない場合がある。それでもこうした変更および反応生成物はすべて本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上述の成分を混合することによって調製される潤滑組成物を含む。
【0161】
本発明を、そのさまざまな実施形態に関して説明したが、明細書を読めばそのさまざまな変更形が当業者に明らかになることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される発明はこうした変更形を添付の請求項の範囲内にあるものとしてカバーすることが意図されていることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エステルを含有する粘度指数向上剤と;
(b)約30wt%またはそれ以上のポリオキシアルキレンポリオールと
を含む、潤滑組成物。
【請求項2】
前記エステルを含有する粘度指数向上剤のエステルアルキル基は、約6個から約18個の炭素原子を含有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記エステルを含有する粘度指数向上剤の各エステル基は、約8個から約14個の炭素原子を含有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記エステルを含有する粘度指数向上剤は、少なくとも1つの(a)ポリメタクリレート、(b)(i)ビニル芳香族モノマーおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のコポリマー、(c)(i)アルファオレフィンおよび(ii)不飽和カルボン酸、無水物もしくはその誘導体のインターポリマー、または(d)それらの混合物に由来する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレンポリオールはアルキレンオキシドのホモポリマーまたはコポリマーである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記ポリオキシアルキレンポリオールはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーである、請求項5に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
リンを含有する酸、塩もしくはエステル、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記リンを含有する酸、塩またはエステルは、(i)非イオン性リン化合物;(ii)リン化合物のアミン塩;(iii)リン化合物のアンモニウム塩;(iv)金属ジアルキルジチオリン酸塩または金属ジアルキルリン酸塩など、リン化合物の一価または二価の金属塩;および(v)(i)、(ii)、(iii)または(iv)の2つまたはそれ以上の混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
リンを含有しない極圧剤またはその混合物をさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記リンを含有しない極圧剤は、ホウ素含有化合物、硫黄含有化合物、またはそれらの混合物のうち少なくとも1つを含む、請求項9に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
(a)約1.5wt%から約30wt%のエステルを含有する粘度指数向上剤と;
(b)約55wt%から約98.29wt%のポリオキシアルキレンポリオールと;
(c)約0.1wt%から約5wt%の、リンを含有する酸、塩またはエステルと;
(d)約0.1wt%から約5wt%のリンを含有しない極圧剤と;
(e)約0.01wt%から約5wt%の、少なくとも1つの他の性能添加剤と
を含む、潤滑組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の潤滑組成物を機械装置に供給することによって前記機械装置を潤滑する方法。
【請求項13】
前記機械装置はドライブライン装置である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ドライブライン装置は少なくとも、車軸、ギア、ギアボックスおよび変速機からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記変速機は少なくとも、手動変速機、連続可変変速機、無限可変変速機、トロイダル変速機、連続スリップトルク変換クラッチ、自動変速機、有段自動変速機、トラクションドライブ変速機、およびデュアルクラッチ変速機からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2010−516870(P2010−516870A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547411(P2009−547411)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/051872
【国際公開番号】WO2008/094807
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】