説明

潮流測定装置及び潮流測定方法

【課題】対地速度と対水速度の差から潮流を測定する潮流測定装置において、船体の動揺に起因する超音波信号の送波時と受波時における船体位置の相違を潮流測定演算時に補正し、動揺誤差を是正した正確な潮流測定を行うことができる潮流測定装置を提供する。
【解決手段】 GPS受信機4を用いて測定した超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における正確な対地船体速度を用いて、対水信号周波数から算出される対水速度、及び対地信号周波数から算出される対地速度の動揺誤差を補正する。これにより、船体の動揺が潮流測定に与える影響を防ぎ、正確な潮流を得ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
船舶等の船体に装備する潮流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、漁労援助等を目的として所望の深度における潮流を測定するのに潮流測定装置が用いられている。この従来の潮流測定装置の一例を図6を用いて簡単に説明する。
【0003】
図6は、従来の潮流測定装置の構成を示すブロック図である。
【0004】
従来の潮流測定装置は、例えば、航行方向と同じ方向で、かつ、船底から一定の俯角で超音波信号の送受波を行う超音波信号送受信部101を備えている。そして、超音波信号送受信部101が受信した設定深度から帰来する反射波の信号周波数(以下、対水信号周波数と称する。)を対水速度測定部102で測定するとともに、水底反射波の信号周波数(以下、対地信号周波数と称する。)を対地速度測定部103で測定する。その後、潮流演算部104がこれらの測定値を用いて設定深度における潮流速度を算出する。具体的には、潮流演算部104は、対地信号周波数と対水信号周波数との差をとり、システムの構成により一意に定まる定数を乗じることにより、設定深度における潮流を算出していた。
【0005】
また、特許文献1は、水底の深度が深く水底反射波が事実上受信できない場合であっても潮流を算出することができる潮流測定装置を開示している。具体的には、潮流測定装置にGPS受信機を設け、潮流の算出に必要な対地速度としてGPS受信機から得られる自船の速度情報を用いて設定深度における潮流の速度を算出している。
【特許文献1】特開昭62−195578号公報
【特許文献2】米国再発行特許発明第35535号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、潮流測定装置を搭載した船舶等は水上でその船体が常に動揺するため、船体速度が3次元方向(前後、上下、左右)に時々刻々と変化する。そのため、超音波信号送受信部からの超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時で船体速度がそれぞれ異なり、潮流測定装置による潮流演算時に動揺誤差が含まれてしまうといった問題点を有していた。特に、特許文献2に記載されている潮流測定装置のように広帯域信号処理を利用して潮流を測定する高精度な潮流測定装置においては、船体の動揺に起因する誤差が無視することができないものとなってきている。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、船体の動揺に起因する動揺誤差の補正を実現し、正確な潮流測定を行うことができる潮流測定装置及び潮流測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本願の請求項1に記載の発明は、船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信部と、前記超音波信号送受信部で受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数及び水底反射波の信号周波数である対地信号周波数を測定する信号周波数測定部と、前記超音波信号送受信部による超音波信号の送信時、前記対水信号周波数の測定時、及び前記対地信号周波数の測定時における対地船速情報を測定するGPS受信機と、前記信号周波数測定部で測定した対水信号周波数及び対地信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算部とを有することを特徴とする。
【0009】
この構成により、GPS受信機を用いて測定した超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における正確な対地船体速度を用いて、対水信号周波数から算出される対水速度及び対地信号周波数から算出される対地速度の動揺誤差を補正することができる。
【0010】
また、本願の請求項2に記載の発明は、船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信部と、前記超音波信号送受信部で受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数を測定する信号周波数測定部と、前記超音波信号送受信部による超音波信号の送信時、前記対水信号周波数の測定時における対地船速情報をそれぞれ測定するGPS受信機と、前記信号周波数測定部で測定した対水信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、及び対水信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算部とを有することを特徴とする。
【0011】
この構成により、GPS受信機を用いて測定した超音波信号の送信時、及び対水信号周波数の測定時における正確な対地船体速度を用いて、対水信号周波数から算出される対水速度の動揺誤差を補正することができる。また、自船の対地速度をGPS受信機から得ているため、水底の深度が深く水底反射波が事実上受信できないような場合であっても、正確な潮流測定を行うことが可能になる。
【0012】
また、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の潮流測定装置において、自船の方位情報を検出する方位検出部をさらに備え、前記潮流演算部が、前記信号周波数測定部での測定結果と、前記GPS受信機での測定結果と、前記方位検出部での検出情報と、を用いて設定深度における潮流を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項4に記載の発明は、船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信ステップと、前記超音波信号送受信ステップで受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数及び水底反射波の信号周波数である対地信号周波数を測定する信号周波数測定ステップと、前記超音波信号の送信時、前記対水信号周波数の測定時、及び前記対地信号周波数の測定時における対地船速情報をGPS受信機により測定するGPS測定ステップと、前記信号周波数測定ステップで測定した対水信号周波数及び対地信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算ステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
これにより、GPS受信機を用いて測定した超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における正確な対地船体速度を用いて、対水信号周波数から算出される対水速度及び対地信号周波数から算出される対地速度の動揺誤差を補正することができる。
【0015】
また、本願の請求項5に記載の発明は、船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信ステップと、前記超音波信号送受信ステップで受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数を測定する信号周波数測定ステップと、前記超音波信号の送信時、及び前記対水信号周波数の測定時における対地船速情報をGPS受信機により測定するGPS測定ステップと、前記信号周波数測定ステップで測定した対水信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、及び対水信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算ステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
これにより、GPS受信機を用いて測定した超音波信号の送信時、及び対水信号周波数の測定時における正確な対地船体速度を用いて、対水信号周波数から算出される対水速度の動揺誤差を補正することができる。また、自船の対地速度をGPS受信機から得ているため、水底の深度が深く水底反射波が事実上受信できないような場合であっても、正確な潮流測定を行うことが可能になる。
【0017】
また、本願の請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の潮流測定方法において、自船の方位情報を検出する方位検出ステップをさらに含み、前記潮流演算ステップで、前記信号周波数測定ステップでの測定結果と、前記GPS測定ステップでの測定結果と、前記方位検出ステップでの検出情報と、を用いて設定深度における潮流を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、GPS受信機で測定した超音波信号の送波時と受波時における正確な対地船速情報を利用して船体の動揺誤差を補正することができ、正確な潮流の測定結果を得ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
【0020】
本発明の実施の形態1による潮流測定装置は、GPS受信機で測定した超音波ビームの送波時、対水エコー受波時、対地エコー受波時における対地船速情報を利用して潮流算出演算を行うことにより、船体の動揺による潮流測定誤差を補正するものである。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1による潮流測定装置の構成の一例を示す図である。
図1において、本発明の実施の形態1による潮流測定装置は、超音波信号送受信部1と、対水信号周波数測定部2と、対地信号周波数測定部3と、GPS受信機4と、潮流測定部5と、方位検出部6とからなる。
【0022】
超音波信号送受信部1は、船底から一定の俯角で超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する。
【0023】
対水信号周波数測定部2は、超音波信号送受信部1で受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数を測定する。また、対地信号周波数測定部3は、超音波信号送受信部1で受信した信号より、水底反射波の信号周波数である対地信号周波数を測定する。なお、この対水信号周波数測定部2と対地信号周波数測定部3とが信号周波数測定部に相当する。
【0024】
GPS受信機4は、超音波信号送受信部に1よる超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報を測定する。なお、GPS受信機4が測定する超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報は、絶対的な船体の速度情報である必要はなく、相対的な速度情報であればよいため、GPS受信機4としては基準点のないGPS受信機(例えば特開2002−22816号公報に記載されているRTK−GPS)を用いることも可能である。
【0025】
潮流演算部5は、信号周波数測定部で測定した対水信号周波数及び対地信号周波数と、GPS受信機4で測定した超音波信号の送信時,対水信号周波数の測定時,及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報と、方位検出部6で検出した自船の方位情報と、を用いて設定深度における潮流を算出する。
【0026】
方位検出部6は、自船の方位情報を検出するものである。前述した信号周波数測定部で得られる情報は自船に対する相対的な情報であるのに対し、通常GPS受信機4から得られる情報は北方向基準の情報である。そのため、信号周波数測定部で得られる情報とGPS受信機4で得られる情報とを用いて潮流を算出するためには、基準となる方位が必要となり、方位検出部6を設ける必要がある。一方で、相対的な速度情報が検出できるGPS受信機4、例えば前述の基準点のないGPS受信機(例えば特開2002−22816号公報に記載されているRTK−GPS)を用いた場合には、基準方位が不要となるため、方位検出部6を設ける必要はない。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態1による潮流測定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図2において、まず、船底に設けられた超音波信号送受信部1から一定の俯角で超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する(S1)。この際、超音波信号送受信部1はGPS受信機4に対して超音波信号の送信タイミング情報を出力し、該送信タイミング情報に基づいてGPS受信機4は、超音波信号の送信時における対地船速情報を測定する(S2)。
【0028】
次に、対水信号周波数測定部2は、超音波信号送受信部1による送受波信号に基づいて超音波信号の送信時から設定深度に相当する時間経過後の受波信号周波数を測定し(S3)、対水信号周波数の測定タイミング情報をGPS受信機4に出力する。また、対地信号周波数測定部3は、超音波信号送受信部1による送受波信号に基づいて超音波信号の送信時から水底深度に相当する時間経過後の受波信号周波数を測定し(S4)、対地信号周波数の測定タイミング情報をGPS受信機4に出力する。
【0029】
GPS受信機4では、対水信号周波数測定部2からの対水信号周波数の測定タイミング情報及び対地信号周波数測定部3からの対地信号周波数の測定タイミング情報に基づいて、対水信号周波数の測定時における対地船速情報(S5)及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報(S6)を測定する。
【0030】
その後、潮流演算部5は、GPS受信機4で測定した超音波信号の送信時及び対水信号周波数の測定時における対地船速情報、及び方位検出部6で検出した方位情報を用いて、対水信号周波数測定部2で測定した対水信号周波数を補正する(S7)。また、同様に潮流演算部5は、GPS受信機4で測定した超音波信号の送信時及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報、及び方位検出部6で検出した方位情報を用いて対地信号周波数測定部3で測定した対地信号周波数を補正し(S8)、補正後の対地信号周波数と対水信号周波数との差から潮流を算出する(S9)。
【0031】
これにより、超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における船体の動揺を考慮した潮の潮向及び潮流速度を算出することができる。
【0032】
次に、本発明の実施の形態1による潮流測定装置について図3を用いてさらに詳細に説明する。
図3は、本発明の実施の形態1による潮流測定装置を説明するための説明図である。なお、ここでは説明の簡単化のため、時刻tにより変化する速度m(t)で動いている船体から、速度vで流れている水塊の流速を計測する、1次元モデルを考える。
【0033】
図3において超音波信号送受信部1は既知の周波数f0で振動するが、船体がm(t)という速度で移動しているので、実際に水中に送波される信号の周波数はドップラー効果により〔数1〕に示すf1へ変化する。このとき、超音波を送波する時刻をt0とし、ビームの発射方向の速度を正方向とする。
【数1】

【0034】
f1なる周波数の信号を、速度vで移動しているターゲット上で観測すると、その周波数は〔数2〕に示すf2となる。
【数2】

【0035】
さらにターゲットから反射して返ってくる音の周波数は、〔数3〕に示すf3となり、
【数3】

【0036】
最後に超音波信号送受信部1に届く音の周波数は、受波する時刻をt1とすると〔数4〕に示すf4となる。
【数4】

【0037】
次に、対地信号周波数測定部3により測定する対地信号周波数について説明する。
超音波信号送受信部1から実際に水中に送波される信号周波数は、対地信号についても対水信号のときと同様にf1で表される。
水底は動かないので、超音波ビームはターゲットに反射しても周波数はf1のままである。
【0038】
最後に超音波信号送受信部1に届く音の周波数は、受波する時刻をt2とすると、〔数4〕に、t1=t2とv=0を代入して、〔数5〕に示すf4'となる。
【数5】

【0039】
次に、潮流演算部5による潮流速度演算について説明する。
潮流速度は、対地信号周波数と対水信号周波数の差から求めるため、〔数5〕から〔数4〕を引き算すると、
【数6】

となり、〔数6〕からv(=潮流)を算出することができる。
【0040】
従来では船体の動揺による影響を無視し、m(t0)= m(t1)= m(t2)として〔数6〕を解き、vを求めていたため、船体の動揺により超音波信号送受信部1が揺れている場合には、求まった潮流速度には誤差が含まれることとなっていた。そのため、本発明ではGPS受信機により、送波時(t0)、対水エコー受波時(t1)、対地エコー受波時(t2)、の正確な対地船速を測定し、測定した値を〔数6〕に代入して潮流速度を算出する。これにより、超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における船体の動揺を補正した正しい潮流速度を算出することが可能となる。
【0041】
以上のように、本発明の実施の形態1による潮流測定装置によれば、GPS受信機4を用いて超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報を測定し、該測定した情報を用いて潮流測定時における船体の動揺に起因する動揺誤差を補正することにより、船体の動揺が潮流測定に与える影響を防止することができる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2による潮流測定装置について説明する。
本発明の実施の形態2による潮流測定装置は、水底からの反射波が十分得られないような場合にGPS受信機で測定した自船の速度情報を対地船速情報として用いる点において、前記実施の形態1による潮流測定装置と相違する。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態2による潮流測定装置の構成の一例を示す図である。
図4において、本発明の実施の形態2による潮流測定装置は、超音波信号送受信部1と、信号周波数測定部に相当する対水信号周波数測定部2と、方位検出部6と、GPS受信機7と、潮流測定部8とからなる。なお、前記実施の形態1による潮流測定装置と同様の構成要素については同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0044】
GPS受信機7は、超音波信号送受信部に1よる超音波信号の送信時及び対水信号周波数の測定時における対地船速情報を測定する。なお、GPS受信機4が測定する超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報は、絶対的な船体の速度情報である必要はなく、相対的な速度情報であればよいため、GPS受信機4としては、基準点のないGPS(例えば基準点の無いRTK−GPS)を用いることも可能である。
【0045】
潮流演算部8は、対水信号周波数測定部2で測定した対水信号周波数と、GPS受信機7で測定した超音波信号の送信時及び対水信号周波数の測定時における対地船速情報とを用いて設定深度における潮流を算出する。
【0046】
次に、本発明の実施の形態2による潮流測定装置の動作であるが、本発明の実施の形態2による潮流測定装置の動作は、前記本発明の実施の形態1による潮流測定装置で図2を用いて説明したステップS4、ステップS6、及びステップS8の処理を行わず、GPS受信機7で測定した対地船速情報を利用する点において相違するものであるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
次に、本発明の実施の形態2による潮流測定装置について図5を用いて詳細に説明する。
図5は、本発明の実施の形態2による潮流測定装置を説明するための説明図である。なお、ここでは説明の簡単化のため、時刻tにより変化する速度m(t)で動いている船体から、速度vで流れている水塊の流速を計測する、1次元モデルを考える。
【0048】
図5において、超音波信号送受信部1は既知の周波数f0で振動するが、船体がm(t)という速度で移動しているので、実際に水中に送波される信号の周波数はドップラー効果により〔数1〕に示すf1へ変化する。このとき、超音波を送波する時刻をt0とし、ビームの発射方向の速度を正方向とする。
【数1】

【0049】
f1なる周波数の信号を、速度vで移動しているターゲット上で観測すると、その周波数は〔数2〕に示すf2となる。
【数2】

【0050】
さらにターゲットから反射して返ってくる音の周波数は、〔数3〕に示すf3となり、
【数3】

【0051】
最後に超音波信号送受信部1に届く音の周波数は、受波する時刻をt1とすると〔数4〕に示すf4となる。
【数4】

【0052】
この式を変形してvを求める形にすると、
【数7】

【0053】
となる。
ここで、m(t0)、m(t1)は、GPS受信機4を用いて測定することができるので受信信号の周波数f4を測定すれば〔数7〕からv(=潮流)を算出することができる。これにより、超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時における船体の動揺を補正した正しい潮流速度を算出することが可能となる。
【0054】
以上のように、本発明の実施の形態2による潮流測定装置によれば、GPS受信機7を用いて超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時における対地船速情報を測定し、該測定した情報を用いて潮流測定時における船体の動揺に起因する動揺誤差を補正することにより、船体の動揺が潮流測定に与える影響を少なくすることができる。また、自船の対地船速情報をGPS受信機7を用いて測定するため、水底の深度が深く水底反射波が事実上受信できないような場合であっても、正確な潮流測定を行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
超音波信号の送波時及び受波時の船体の動揺により生じる動揺誤差を補正した潮流測定を行うことができるため、高い測定精度が要求される潮流測定装置に対して特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1による潮流測定装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1による潮流測定装置の動作を説明するためのフローチャート
【図3】本発明の実施の形態1による潮流測定装置を説明するための説明図
【図4】本発明の実施の形態2による潮流測定装置の構成の一例を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態2による潮流測定装置を説明するための説明図
【図6】従来の潮流測定装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0057】
1、102 超音波信号送受信部
2、102 対水信号周波数測定部
3、103 対地信号周波数測定部
4、7 GPS受信機
5、8、104 潮流演算部
6 方位検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信部と、
前記超音波信号送受信部で受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数及び水底反射波の信号周波数である対地信号周波数を測定する信号周波数測定部と、
前記超音波信号送受信部による超音波信号の送信時、前記対水信号周波数の測定時、及び前記対地信号周波数の測定時における対地船速情報を測定するGPS受信機と、
前記信号周波数測定部で測定した対水信号周波数及び対地信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算部とを有することを特徴とする潮流測定装置。
【請求項2】
船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信部と、
前記超音波信号送受信部で受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数を測定する信号周波数測定部と、
前記超音波信号送受信部による超音波信号の送信時、前記対水信号周波数の測定時における対地船速情報をそれぞれ測定するGPS受信機と、
前記信号周波数測定部で測定した対水信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、及び対水信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算部とを有することを特徴とする潮流測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の潮流測定装置において、
自船の方位情報を検出する方位検出部をさらに備え、
前記潮流演算部が、前記信号周波数測定部での測定結果と、前記GPS受信機での測定結果と、前記方位検出部での検出情報と、を用いて設定深度における潮流を算出することを特徴とする潮流測定装置。
【請求項4】
船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信ステップと、
前記超音波信号送受信ステップで受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数及び水底反射波の信号周波数である対地信号周波数を測定する信号周波数測定ステップと、
前記超音波信号の送信時、前記対水信号周波数の測定時、及び前記対地信号周波数の測定時における対地船速情報をGPS受信機により測定するGPS測定ステップと、
前記信号周波数測定ステップで測定した対水信号周波数及び対地信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、対水信号周波数の測定時、及び対地信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算ステップとを含むことを特徴とする潮流測定方法。
【請求項5】
船底から超音波信号を送信して水中から帰来する反射波を受信する超音波信号送受信ステップと、
前記超音波信号送受信ステップで受信した信号より、設定深度から帰来する反射波の信号周波数である対水信号周波数を測定する信号周波数測定ステップと、
前記超音波信号の送信時、及び前記対水信号周波数の測定時における対地船速情報をGPS受信機により測定するGPS測定ステップと、
前記信号周波数測定ステップで測定した対水信号周波数と,前記GPS受信機で測定した超音波信号の送信時、及び対水信号周波数の測定時における対地船速情報と,を用いて設定深度における潮流を算出する潮流演算ステップとを含むことを特徴とする潮流測定方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の潮流測定方法において、
自船の方位情報を検出する方位検出ステップをさらに含み、
前記潮流演算ステップで、前記信号周波数測定ステップでの測定結果と、前記GPS測定ステップでの測定結果と、前記方位検出ステップでの検出情報と、を用いて設定深度における潮流を算出することを特徴とする潮流測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−284242(P2006−284242A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101761(P2005−101761)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】