説明

濃度検出装置および濃度検出方法

【課題】 液体に溶けている物質の濃度を大きな装置を用いることなく正確に検出できる、濃度検出装置および濃度検出方法を提供する。
【解決手段】 濃度検出装置200は、メタノール水溶液を冷却するペルチェ素子202、冷却されるメタノール水溶液の温度を検出する水溶液温度センサ208、およびペルチェ素子202の温度を検出するペルチェ温度センサ210を含む。水溶液温度センサ208の検出結果とペルチェ温度センサ210の検出結果とに基づいて、メタノール水溶液の凝固点が検出され、検出された凝固点に基づいてメタノール水溶液のメタノール濃度が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は濃度検出装置および濃度検出方法に関し、より特定的には、燃料電池システムに用いられる濃度検出装置および濃度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直接メタノール型燃料電池システム等の燃料水溶液を燃料電池セルスタックに供給するタイプの燃料電池システムにおいては、燃料濃度が低いと高分子膜を損傷する恐れがあり、一方、燃料濃度が高すぎると燃料の使用効率が低下するため、循環される水溶液中に燃料を補給して燃料濃度を一定に保つことが行われている。そのためには、循環される水溶液に溶けている燃料の濃度を所定時間ごとに検出する必要がある。
【0003】
ここで、燃料濃度を検出する技術の一例として、超音波センサを用いる技術が特許文献1において開示されている。
また、ペルチェ素子を用いて結晶成長の温度を制御する装置が特許文献2において開示されている。
【特許文献1】特開2005−30949号公報
【特許文献2】特開平10−29899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1における超音波センサでは、一定の距離をおいて発信部と受信部とを設けなければならないので、装置が大型になるという問題があった。また、水溶液中に泡が生じると濃度を正確に検出できなくなる。
特許文献2の技術は、結晶成長の温度制御に用いる技術であり、濃度検出に用いるものではない。
それゆえに、この発明の主たる目的は、液体に溶けている物質の濃度を大きな装置を用いることなく正確に検出できる、濃度検出装置および濃度検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の濃度検出装置は、物質が溶けている液体を冷却する冷却手段、冷却される液体の温度を検出する第1温度検出手段、第1温度検出手段によって検出された温度に基づいて液体の凝固点を検出する凝固点検出手段、凝固点検出手段によって検出された凝固点に基づいて液体に溶けている物質の濃度を検出する濃度検出手段を備える。
【0006】
請求項2に記載の濃度検出装置は、請求項1に記載の濃度検出装置において、さらに、液体の温度を検出するために液体を停止状態で保持する検出部、および検出部内の液体を入れ替えるための入替手段を備え、第1温度検出手段は、検出部内の液体の温度を検出することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の濃度検出装置は、請求項1または2に記載の濃度検出装置において、液体を加熱する加熱手段をさらに含むことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の濃度検出装置は、請求項3に記載の濃度検出装置において、冷却手段および加熱手段に兼用される温度変更手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の濃度検出装置は、請求項1から4のいずれかに記載の濃度検出装置において、冷却手段の温度を検出する第2温度検出手段をさらに含み、凝固点検出手段は、第1温度検出手段の検出結果と第2温度検出手段の検出結果とに基づいて液体の凝固点を検出することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の濃度検出装置は、請求項1から5のいずれかに記載の濃度検出装置において、さらに、液体を収容するタンク、タンク内の液体を冷却手段近傍に送るための第1パイプ、および濃度検出後の液体をタンクに戻すための第2パイプを含むことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の燃料電池システムは、請求項1から6のいずれかに記載の濃度検出装置を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の輸送機器は、請求項7に記載の燃料電池システムを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項9に記載の濃度検出方法は、物質が溶けている液体を冷却空間に導入する工程、冷却空間に導入された液体を冷却手段によって冷却する工程、冷却手段の温度を検出する工程、冷却空間内で冷却される液体の温度を検出する工程、検出された冷却手段の温度と液体の温度とに基づいて液体の凝固点を検出する工程、および検出された液体の凝固点に基づいて液体に溶けている物質の濃度を検出する工程を備える。
【0014】
請求項10に記載の濃度検出方法は、請求項9に記載の濃度検出方法において、液体を冷却する工程は、第1の冷却能力で液体を冷却する第1工程と、第1の冷却能力よりも低い冷却能力で液体を冷却する第2工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項11に記載の燃料電池システムは、燃料水溶液を用いる燃料電池システムであって、燃料水溶液の凝固点を検出し、検出された凝固点に基づいて燃料水溶液の濃度を調整することを特徴とする。
【0016】
液体の凝固点と当該液体に溶けている物質の濃度との間には相関性がある。請求項1に記載の濃度検出装置では、この相関性を利用することによって、液体の凝固点に基づいて当該液体に溶けている物質の濃度を正確に検出できる。また、超音波センサのような大きな装置を用いる必要もない。請求項9に記載の濃度検出方法についても同様である。
【0017】
請求項2に記載の濃度検出装置では、検出部に導入された液体を停止させた状態で液体の温度を検出するので、液体の温度ひいては液体の凝固点を正確に検出でき、その結果、液体に溶けている物質の濃度を正確に検出できる。
【0018】
請求項3に記載の濃度検出装置では、濃度検出のために凝固された液体を溶かすことができるので、濃度検出される液体の入れ替えが確実かつ容易になる。
【0019】
請求項4に記載の濃度検出装置では、温度変更手段を液体の冷却および加熱に兼用できるので、装置の構成を簡素かつ小型にできる。
【0020】
冷却手段によって液体を冷却し凝固させるとき、液体が凝固し始めると発熱により液体の温度が一時的に上昇し、このとき液体と冷却手段との温度差も一時的に大きくなる。請求項5に記載の濃度検出装置では、液体だけではなく冷却手段の温度をも検出し液体が凝固するときの上記特性を利用することによって、液体と冷却手段との温度差に基づいて液体が凝固し始めていることを知ることができ、液体の凝固点をより正確に検出できる。
【0021】
請求項6に記載の濃度検出装置では、濃度検出された液体をタンクに戻すことによって、濃度検出のために液体を浪費することを防止できる。
【0022】
燃料電池システムにおいて燃料濃度を正確に検出することは重要であるので、この発明を、請求項7に記載のように燃料電池システムに用いること、ひいては請求項8に記載のように燃料電池システムを用いた輸送機器に用いることは有効である。
【0023】
請求項10に記載の濃度検出方法では、最初は比較的高速で冷却しその後冷却能力を下げることによって、濃度検出までの時間を短縮できるとともに濃度検出精度を向上できる。
【0024】
請求項11に記載の燃料電池システムのように、検出された凝固点に基づいて直接、燃料水溶液の濃度を調整するようにすれば、燃料水溶液に含まれている物質の濃度を検出することなく燃料水溶液の濃度を簡単に調整できる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、液体に溶けている物質の濃度を大きな装置を用いることなく正確に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。ここでは、この発明の濃度検出装置を含む燃料電池システムを、輸送機器の一例である二輪車10に搭載した場合について説明する。ここでは、濃度検出の対象となる液体(溶液)はメタノール水溶液である。したがって、溶媒は水であり、溶質はメタノールである。そして、溶媒中に溶質が分散している溶液における当該溶質の濃度が測定される。
【0027】
まず、二輪車10について説明する。この発明の実施の形態における左右、前後、上下とは、二輪車10のシートにドライバがそのハンドル24に向かって着座した状態を基準とした左右、前後、上下を意味する。
【0028】
図1〜図7を参照して、二輪車10は車体フレーム12を有する。車体フレーム12は、ヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14から後方へ斜め下方に延びる縦断面I字型のフロントフレーム16と、フロントフレーム16の後端部に連結されかつ後方へ斜め上方に立ち上がるリヤフレーム18と、リヤフレーム18の上端部に取り付けられるシートレール20とを備えている。フロントフレーム16の後端部はリヤフレーム18の中央部よりもやや下端部寄りの位置に接続され、フロントフレーム16およびリヤフレーム18全体で側面視略Y字状を呈している。
【0029】
フロントフレーム16は、上下方向に幅を有して後方へ斜め下方に延びかつ左右方向に対して直交する板状部材16aと、それぞれ板状部材16aの上端縁および下端縁に形成されかつ後方へ斜め下方に延び左右方向に幅を有するフランジ部16bおよび16cと、板状部材16aの両表面に突設される補強リブ16dと、後端部に設けられたとえばボルト等によってリヤフレーム18が連結される連結部16eとを備えている。補強リブ16dは、フランジ部16bおよび16cと共に板状部材16aの両表面を区画して、後述する燃料電池システム100の構成部品を収納する収納スペースを形成している。
【0030】
一方、リヤフレーム18は、それぞれ後方へ斜め上方に延び前後方向に幅を有しフロントフレーム16の連結部16eを挟むように配置される板状部材18aおよび18bを備えている。
【0031】
ヘッドパイプ14内には、主に図1に示すように、車体方向変更用のステアリング軸22が回動自在に挿通されている。ステアリング軸22の上端には、ハンドル24が固定されたハンドル支持部26が取り付けられており、ハンドル24の両端にはグリップ28が取り付けられている。右側のグリップ28は回動可能なスロットルグリップを構成している。
【0032】
ハンドル支持部26のハンドル24の前方には、表示操作部(以下、メータと略記する)30が配置されている。メータ30は、ドライバに対する走行状態等の各種情報提供用のたとえば液晶ディスプレイ等で構成された表示部、およびドライバからの各種情報入力用の入力部等が一体化されたものである。ハンドル支持部26におけるメータ30の下方には、ヘッドランプ32が固定されており、ヘッドランプ32の左右両側には、フラッシャランプ34がそれぞれ設けられている。
【0033】
また、ステアリング軸22の下端には左右一対のフロントフォーク36が取り付けられており、フロントフォーク36それぞれの下端には、前輪38が前車軸40を介して取り付けられている。前輪38は、フロントフォーク36によって緩衝懸架された状態で前車軸40によって回転自在に軸支されている。
【0034】
一方、リヤフレーム18の後端部には、フレーム状のシートレール20が取り付けられている。シートレール20は、リヤフレーム18の上端部にたとえば溶接によって固設され、略前後方向に配設されている。シートレール20上には図示しないシートが開閉自在に設けられている。シートレール20の後端部には取り付けブラケット42が固設されており、取り付けブラケット42にはテールランプ44および左右一対のフラッシャランプ46がそれぞれ取り付けられている。
【0035】
また、リヤフレーム18の下端部には、リヤアーム48がピボット軸50を介して揺動自在に支持されており、リヤアーム48の後端部48aには駆動輪である後輪52が回転自在に軸支されており、リヤアーム48および後輪52は、図示しないリヤクッションによってリヤフレーム18に対して緩衝懸架されている。
【0036】
さらに、リヤフレーム18の下端部の前側には、リヤフレーム18から左右方向に突出するようにフットレスト取付用バー54が固定され、フットレスト取付用バー54には図示しないフットレストが取り付けられる。フットレスト取付用バー54の後方には、メインスタンド56が回動可能にリヤアーム48に支持されており、メインスタンド56は、リターンスプリング58によって閉じ側に付勢されている。
【0037】
リヤアーム48の後端部48aよりも内側には、後輪52に連結されかつ後輪52を回転駆動させるためのたとえばアキシャルギャップ型の電動モータ60と、電動モータ60に電気的に接続される駆動ユニット62とが配設されている。駆動ユニット62は、電動モータ60の回転駆動を制御するためのコントローラ64を含む。
【0038】
このような二輪車10には、車体フレーム12に沿って燃料電池システム100が搭載されている。燃料電池システム100は、電動モータ60やその他の構成部品を駆動するための電気エネルギーを生成する。
【0039】
以下、燃料電池システム100について説明する。
燃料電池システム100は、メタノール(メタノール水溶液)を改質せずにダイレクトに発電に利用する直接メタノール型燃料電池システムである。
【0040】
燃料電池システム100は、フロントフレーム16の下方に配置される燃料電池セルスタック(以下、単にセルスタックという)102を含む。
【0041】
図8および図9に示すように、セルスタック102は、メタノールに基づく水素と酸素との電気化学反応によって電気エネルギーを生成することができる燃料電池(燃料電池セル)104をセパレータ106を挟んで複数個積層(スタック)して構成されている。セルスタック102を構成する各燃料電池セル104は、固体高分子膜等から構成される電解質(電解質膜)104aと、電解質104aを挟んで互いに対向するアノード(燃料極)104bおよびカソード(空気極)104cとを含む。アノード104bおよびカソード104cはそれぞれ、電解質104a側に設けられる白金触媒層を含む。
【0042】
図4等に示すように、セルスタック102はスキッド108上に載せられ、スキッド108はフロントフレーム16のフランジ部16cから吊されるステースタック110によって支持されている。
【0043】
図6に示すように、フロントフレーム16の下方でありかつセルスタック102の上方には、水溶液用のラジエータ112と気液分離用のラジエータ114とが配置されている。ラジエータ112と114とは一体的に構成され、その前面が車両の前方やや下向きに配置され、前面に対して直交するように設けられる複数の板状のフィン(図示せず)を有する。このようなラジエータ112および114は、走行時に風を十分に受けることができる。
【0044】
図6等に示すように、ラジエータ112は、旋回するように形成されるラジエータパイプ116を含む。ラジエータパイプ116は、ステンレス等からなる直線状パイプとU字状の継手パイプとを溶接することによって、入口118a(図5参照)から出口118b(図3参照)までの1本の連続したパイプに形成されている。ラジエータ112の裏面側にはラジエータパイプ116と対向するようにラジエータ冷却用のファン120が設けられている。
【0045】
同様に、ラジエータ114は、それぞれ蛇行するように形成される2本のラジエータパイプ122を含む。各ラジエータパイプ122は、ステンレス等からなる直線状パイプとU字状の継手パイプとを溶接することによって、入口124a(図3参照)から出口124b(図3参照)までの1本の連続したパイプに形成されている。ラジエータ114の裏面側にはラジエータパイプ122と対向するようにラジエータ冷却用のファン126が設けられている。
【0046】
図1〜図7に戻り主に図3を参照して、フロントフレーム16の連結部16eの後側には、上方から順に燃料タンク128、水溶液タンク130および水タンク132が配置されている。燃料タンク128、水溶液タンク130および水タンク132は、たとえばPE(ポリエチレン)ブロー成型によって得られる。
【0047】
燃料タンク128は、シートレール20の下側に配置され、シートレール20の後端部に取り付けられている。燃料タンク128は、セルスタック102の電気化学反応の燃料となる高濃度(たとえば、メタノールを約50wt%含む)のメタノール燃料(高濃度メタノール水溶液)を収容している。燃料タンク128はその上面に蓋128aを備え、蓋128aを取り外してメタノール燃料が供給される。
【0048】
また、水溶液タンク130は、燃料タンク128の下側に設けられ、リヤフレーム18に取り付けられている。水溶液タンク130は、燃料タンク128からのメタノール燃料をセルスタック102の電気化学反応に適した濃度(たとえば、メタノールを約3wt%含む)に希釈したメタノール水溶液を収容している。つまり、水溶液タンク130は、水溶液ポンプ146(後述)によってセルスタック102に向けて送り出すべきメタノール水溶液を収容している。
【0049】
燃料タンク128にはレベルセンサ129が装着され、燃料タンク128内のメタノール燃料の液面の高さが検出される。水溶液タンク130にはレベルセンサ131が装着され、水溶液タンク130内のメタノール水溶液の液面の高さが検出される。レベルセンサ129,131で液面高さを検出することによって、タンク内の液量を検出できる。水溶液タンク130内の液面は、たとえば図4においてXで示す範囲内にコントロールされる。
【0050】
水タンク132は、リヤフレーム18の板状部材18aおよび18b間でありかつセルスタック102の後側に配置されている。
【0051】
また、燃料タンク128の前側でありかつフロントフレーム16のフランジ部16bの上側には、二次電池134が配置されている。二次電池134は、セルスタック102で生成された電気エネルギーを蓄え、コントローラ156(後述)の指令に応じて電気エネルギーを対応する電気構成部品に供給する。たとえば、二次電池134は、補機類や駆動ユニット62に電気エネルギーを供給する。
【0052】
二次電池134の上方かつシートレール20の下方には、燃料ポンプ136が配置されている。
【0053】
また、水溶液タンク130の上方にはキャッチタンク140が配置されている。キャッチタンク140はその上面に蓋140aを備え、たとえば燃料電池システム100を一度も起動したことがない状態(水溶液タンク130が空の状態)において、蓋140aを取り外してメタノール水溶液が供給される。キャッチタンク140は、たとえばPE(ポリエチレン)ブロー成型によって得られる。
【0054】
また、フロントフレーム16とセルスタック102とラジエータ112,114とによって囲まれた空間には、エアフィルタ142が配置され、エアフィルタ142の後方斜め下側には水溶液フィルタ144が配置されている。
【0055】
また、図4に示すように、フロントフレーム16の左側の収納スペースには、水溶液ポンプ146およびエアポンプ147が収納されている。エアポンプ147の左側には、電磁バルブ148、濃度センサ149およびエアチャンバ150が配置されている。水溶液ポンプ146は水溶液タンク130よりも高い位置に設けられている。
【0056】
さらに、図5に示すように、フロントフレーム16の右側の収納スペースには、前方から順にメインスイッチ152、DC−DCコンバータ154、コントローラ156、防錆用バルブ158および水ポンプ160が配置される。なお、メインスイッチ152はフロントフレーム16の収納スペースを右側から左側に貫通するように設けられている。セルスタック102の前面にはホーン162が設けられている。
【0057】
このように配置される燃料電池システム100の配管について、図4〜図7および図10を参照して説明する。
燃料タンク128と燃料ポンプ136とはパイプP1によって連通され、燃料ポンプ136と水溶液タンク130とはパイプP2によって連通されている。パイプP1は、燃料タンク128の左側面下端部と燃料ポンプ136の左側面下端部とを結び、パイプP2は、燃料ポンプ136の左側面下端部と水溶液タンク130の左側面下端部とを結ぶ。燃料ポンプ136を駆動させることによって、燃料タンク128内のメタノール燃料がパイプP1,P2を介して水溶液タンク130に与えられる。
【0058】
水溶液タンク130と水溶液ポンプ146とはパイプP3によって連通され、水溶液ポンプ146と水溶液フィルタ144とはパイプP4によって連通され、水溶液フィルタ144とセルスタック102とはパイプP5によって連通されている。パイプP3は、水溶液タンク130の左側面下隅部と水溶液ポンプ146の後部とを結び、パイプP4は、水溶液ポンプ146の後部と水溶液フィルタ144の左側面とを結び、パイプP5は、水溶液フィルタ144の右側面とセルスタック102の前面右下隅部に位置するアノード入口I1とを結ぶ。水溶液ポンプ146を駆動させることによって、水溶液タンク130からのメタノール水溶液が、パイプP3側からパイプP4側へと送り出され、水溶液フィルタ144で不純物が除去された後、パイプP5を介してセルスタック102に与えられる。この実施形態ではパイプP4およびP5によって水溶液ポンプ146が送り出すメタノール水溶液をセルスタック102の各燃料電池104に案内するパイプが構成される。
【0059】
セルスタック102と水溶液用のラジエータ112とはパイプP6によって連通され、ラジエータ112と水溶液タンク130とはパイプP7によって連通されている。パイプP6は、セルスタック102の後面左上隅部に位置するアノード出口I2とラジエータ112の下面右側端部から引き出されるラジエータパイプ116の入口118a(図5参照)とを結び、パイプP7は、ラジエータ112の下面左側端部からやや中央寄りの位置から引き出されるラジエータパイプ116の出口118b(図3参照)と水溶液タンク130の左側面上隅部とを結ぶ。セルスタック102から排出される未反応メタノール水溶液および二酸化炭素はパイプP6を介してラジエータ112に与えられ温度が下げられて、パイプP7を介して水溶液タンク130に戻される。これによって水溶液タンク130内のメタノール水溶液の温度を下げることができる。
【0060】
上述したパイプP1〜P7は主として燃料の流路となる。
【0061】
また、エアフィルタ142とエアチャンバ150とはパイプP8によって連通され、エアチャンバ150とエアポンプ147とはパイプP9によって連通され、エアポンプ147と防錆用バルブ158とはパイプP10によって接続され、防錆用バルブ158とセルスタック102とはパイプP11によって接続されている。パイプP8は、エアフィルタ142の後部とエアチャンバ150の中央部よりもやや前方寄りの位置とを結び、パイプP9は、エアチャンバ150の中央部の下側とエアポンプ147の後部とを結び、パイプP10は、フロントフレーム16の板状部材16aの左側に位置するエアポンプ147と板状部材16aの右側に位置する防錆用バルブ158とを結び、パイプP11は、防錆用バルブ158とセルスタック102の後面右上端部に位置するカソード入口I3とを結ぶ。燃料電池システム100の運転時には防錆用バルブ158を開いておき、その状態でエアポンプ147を駆動させることによって、酸素を含む空気が外部から吸入される。吸入された空気は、エアフィルタ142で浄化された後、パイプP8、エアチャンバ150およびパイプP9を介してエアポンプ147に流入し、さらに、パイプP10、防錆用バルブ158およびパイプP11を介してセルスタック102に与えられる。防錆用バルブ158は、燃料電池システム100の停止時には閉じられており、エアポンプ147へ水蒸気の逆流を防ぎエアポンプ147の錆を防止する。
【0062】
セルスタック102と気液分離用のラジエータ114とは2本のパイプP12によって連通され、ラジエータ114と水タンク132とは2本のパイプP13によって連通され、水タンク132にはパイプ(排気管)P14が設けられている。各パイプP12は、セルスタック102の前面左下隅部に位置するカソード出口I4とラジエータ114の下面左側端部から引き出される各ラジエータパイプ122の入口124a(図3参照)とを結び、各パイプP13は、ラジエータ114の下面左側端部からやや中央寄りの位置から引き出される各ラジエータパイプ122の出口124b(図3参照)と水タンク132の前面上部とを結び、パイプP14は、水タンク132の後面上部に接続され、一旦上昇しその後下降するようにくの字状に形成されている。セルスタック102のカソード出口I4から排出される水分(水および水蒸気)や二酸化炭素を含む排気は、パイプP12を介してラジエータ114に与えられ、水蒸気が液化される。ラジエータ114からの排気は、パイプP13を介して水と共に水タンク132に与えられ、パイプP14を介して外部に排出される。
【0063】
上述したパイプP8〜P14は、主として排気の流路となる。
【0064】
さらに、水タンク132と水ポンプ160とはパイプP15によって連通され、水ポンプ160と水溶液タンク130とはパイプP16によって連通されている。パイプP15は、水タンク132の右側面下部と水ポンプ160の中央部とを結び、パイプP16は、水ポンプ160の中央部と水溶液タンク130の左側面上隅部とを結ぶ。水ポンプ160を駆動させることによって、水タンク132内の水がパイプP15,16を介して水溶液タンク130に戻される。
【0065】
上述したパイプP15,16は水の流路となる。
【0066】
また、パイプP4には、水溶液ポンプ146によって送り出されパイプP4を流れるメタノール水溶液の一部が流入するように、パイプP17が接続される。図4に示すように、パイプP17には電磁バルブ148が接続されている。電磁バルブ148と濃度センサ149とはパイプP18によって連通されている。さらに、パイプP18は、濃度センサ149と水溶液タンク130の上面とを結び、濃度センサ149と水溶液タンク130とが連通されている。
【0067】
濃度センサ149は、流入したメタノール水溶液のメタノール濃度(メタノール水溶液におけるメタノールの割合)を検出するためのセンサである。コントローラ156は、濃度センサ149からの検出信号に基づいてメタノール水溶液のメタノール濃度を検出する。
【0068】
上述したパイプP17およびP18は濃度検出用の流路となる。この実施形態では、パイプP18内に検出部や冷却空間が形成される。
【0069】
さらに、水溶液タンク130とキャッチタンク140とはパイプP19によって連通され、キャッチタンク140と水溶液タンク130とはパイプP20によって連通され、キャッチタンク140とエアチャンバ150とはパイプP21によって連通されている。パイプP19は、水溶液タンク130の左側面上隅部とキャッチタンク140の左側面上隅部とを結び、パイプP20は、キャッチタンク140の下端部と水溶液タンク130の左側面下隅部とを結び、パイプP21は、キャッチタンク140の左側面上部寄りの位置とエアチャンバ150の上端面とを結ぶ。水溶液タンク130内にある気体(主に、二酸化炭素、気化したメタノールおよび水蒸気)は、パイプP19を介してキャッチタンク140に与えられる。気化したメタノールと水蒸気とはキャッチタンク140で冷却、液化された後、パイプP20を介して水溶液タンク130に戻される。キャッチタンク140内の気体(二酸化炭素、液化されなかったメタノールおよび水蒸気)は、パイプP21を介してエアチャンバ150に与えられる。
【0070】
上述したパイプP19〜P21は主として燃料処理用の流路となる。
【0071】
このような燃料電池システム100は、メインスイッチ152をオンすることによって起動され、コントローラ156によって制御され、二次電池134によって電気エネルギーが補完される。また、DC−DCコンバータ154は電圧を24Vから12Vに変換し、変換された12Vの電圧によってファン120,126が駆動される。
【0072】
ついで、燃料電池システム100の運転時の主要動作について説明する。
燃料電池システム100は、メインスイッチ152がオンされることを契機として、水溶液ポンプ146やエアポンプ147等の補機類を駆動し、運転を開始する。
【0073】
水溶液ポンプ146の駆動によって、水溶液タンク130に収容されるメタノール水溶液が、パイプP3側からパイプP4側へと送り出され、水溶液フィルタ144に供給される。そして、水溶液フィルタ144で不純物等が除去されたメタノール水溶液は、パイプP5、アノード入口I1を介してセルスタック102を構成する各燃料電池セル104のアノード104bにダイレクトに供給される。
【0074】
一方、エアポンプ147の駆動によってエアフィルタ142から吸入された空気(エア)は、パイプP8を介してエアチャンバ150に流入することによって消音される。そして、吸入された空気およびエアチャンバ150に与えられたキャッチタンク140からの気体が、パイプP9〜P11、カソード入口I3を介してセルスタック102を構成する各燃料電池セル104のカソード104cに供給される。
【0075】
各燃料電池セル104のアノード104bでは、供給されたメタノール水溶液におけるメタノールと水とが化学反応し、二酸化炭素および水素イオンが生成される。生成された水素イオンは、電解質104aを介してカソード104cに流入し、そのカソード104c側に供給された空気中の酸素と電気化学反応して水(水蒸気)および電気エネルギーが生成される。つまり、セルスタック102において発電が行われる。生成された電気エネルギーは、二次電池134に送られて蓄えられると共に、二輪車10の走行駆動等に利用される。
【0076】
一方、各燃料電池セル104のアノード104bで生成された二酸化炭素および未反応メタノール水溶液は、上記電気化学反応によって発生する熱によって温度上昇し(たとえば約65℃〜70℃となる)、未反応メタノール水溶液の一部は気化される。二酸化炭素および未反応メタノール水溶液は、セルスタック102のアノード出口I2を介して水溶液用のラジエータ112内に流入し、ラジエータパイプ116を流れる間にファン120によって冷却される(たとえば約40℃となる)。冷却された二酸化炭素および未反応メタノール水溶液は、パイプP7を介して水溶液タンク130に戻される。
【0077】
一方、各燃料電池セル104のカソード104cで生成された水蒸気の大部分は液化して水となってセルスタック102のカソード出口I4から排出されるが、飽和水蒸気分はガス状態で排出される。カソード出口I4から排出された水蒸気の一部は、ラジエータ114で冷却され露点を下げることによって液化される。ラジエータ114による水蒸気の液化動作は、ファン126を動作させることによって行われる。カソード出口I4からの水分(水および水蒸気)は未反応の空気と共にパイプP12,ラジエータ114およびパイプP13を介して水タンク132に与えられる。また、各燃料電池セル104のカソード104cでは、キャッチタンク140からの気化したメタノールおよびクロスオーバーによってカソード104cに移動したメタノールが白金触媒層で酸素と反応して無害な水分と二酸化炭素とに分解される。メタノールから分解された水分と二酸化炭素とは、カソード出口I4から排出されラジエータ114を介して水タンク132に与えられる。さらに、水のクロスオーバーによって各燃料電池セル104のカソード104cに移動した水分が、カソード出口I4から排出されラジエータ114を介して水タンク132に与えられる。
【0078】
水タンク132に回収された水は、水ポンプ160の駆動によってパイプP15,P16を介して水溶液タンク130に適宜還流され、メタノール水溶液の水として利用される。
【0079】
運転中の燃料電池システム100では、各燃料電池セル104の劣化を防ぎつつ各燃料電池セル104に効率よく発電させるために、メタノール水溶液の濃度検出処理が定期的に実行される。そして、その検出結果に基づいてセルスタック102に供給すべきメタノール水溶液のメタノール濃度が調整される。具体的には、メタノール濃度の検出結果に基づいて、燃料タンク128内のメタノール燃料の水溶液タンク130への供給や水タンク132内の水の水溶液タンク130への還流が行われる。
【0080】
このような燃料電池システム100では、図11に示すように、水溶液タンク130、水溶液ポンプ146、電磁バルブ148、濃度センサ149、コントローラ156、パイプP3,P4,P17およびP18を含んで濃度検出装置200が構成されている。
【0081】
図11および図12を参照して、濃度センサ149は、短冊状のペルチェ素子202とその一方主面側に設けられるヒートシンク204とを含む。ペルチェ素子202とヒートシンク204との間には熱伝導性の良いシリコンシートなどの部材206が介挿されている。また、パイプP18の一部も濃度センサ149の構成部材となる。パイプP18は、パイプ部P181,P182およびP183と、パイプ部P181とP182との間に介挿されるパイプ部P184と、パイプ部P182とP183との間に介挿されるパイプ部P185とを含む。パイプ部P181,P182およびP183は、熱伝導性が比較的良いたとえばステンレスなどの金属からなる。パイプ部P184は、断熱性のあるたとえばテフロン(登録商標)などの樹脂からなる。パイプ部P185は、熱伝導性が悪いたとえばEPDM等のゴム材料からなる。パイプ部P182は、ペルチェ素子202の他方主面に接するようにU字状に設けられ、パイプ部P183は、ヒートシンク204を貫通するように設けられている。パイプ部P182が実質的に検出部となるチャンバとして機能する。
【0082】
また、パイプ部P182内には水溶液の温度を検出するための水溶液温度センサ208が設けられ、ペルチェ素子202の他方主面にはペルチェ素子202の温度を検出するためのペルチェ温度センサ210が設けられている。
【0083】
このようなペルチェ素子202、ヒートシンク204の一部、部材206、パイプ部P182、P184およびP185、水溶液温度センサ208およびペルチェ温度センサ210は樹脂212によってモールドされている。
【0084】
なお、パイプP3、パイプP4の一部、パイプP17、パイプP18のパイプ部P181,P184が、水溶液タンク130内のメタノール水溶液をペルチェ素子202近傍に送るための第1パイプとして機能し、パイプP18のパイプ部P185,P183が、濃度検出後のメタノール水溶液を水溶液タンク130に戻すための第2パイプとして機能する。また、ペルチェ素子202とヒートシンク204との組み合わせが、冷却手段および加熱手段を兼ねる温度変更手段を構成する。冷却手段、加熱手段は、ペルチェ素子202のみによって構成されてもよい。また、コントローラ156は、凝固点検出手段、濃度検出手段を構成する。電磁バルブ148が入替手段を構成し、濃度検出されるメタノール水溶液の流れが制御される。水溶液温度センサ208が第1温度検出手段を構成し、ペルチェ温度センサ210が第2温度検出手段を構成する。
【0085】
つづいて、コントローラ156について説明する。
コントローラ156は、必要な演算を行い燃料電池システム100の動作を制御するためのCPU214、および燃料電池システム100の動作を制御するためのプログラムやデータ等を格納するための、たとえばEEPROMからなるメモリ216を含む。水溶液温度センサ208およびペルチェ温度センサ210からの検出信号は、それぞれA/D変換器218および220によってA/D変換されてCPU214に入力される。また、CPU214から水溶液ポンプ146、電磁バルブ148およびペルチェ素子202への制御信号は、それぞれインタフェース回路222,224および226を介して与えられる。
【0086】
ここで、この発明で用いられる原理について説明する。
一般に、溶質を一定量の溶媒に溶かした溶液の凝固点は溶媒(純溶媒)の凝固点より、図13(a)に示すようにΔtだけ低くなる。この現象を凝固点降下といい、このときの温度差Δtを凝固点降下度という。このような溶液では、凝固点降下度Δtは、溶質の種類に拘わらず溶質の物質量(溶液の質量モル濃度)に比例する。
【0087】
図13(b)に示すように、一般に溶液を冷却していくと、凝固点になっても凝固しないで液体のままの状態がしばらく続き(この状態を過冷却という)、あるところ(グラフのA点)で急激に凝固が始まる。液体が固体になる反応は発熱反応であり、これが急激におこるのでA−Bのような温度の急激な上昇がみられる。アルコール系水溶液の場合、溶液が凝固するときは最初に析出する固相(初晶)に含まれる溶質はごくわずかであるため、凝固の進行とともに残された液相中の溶質濃度は大きくなり、やがて溶液の温度上昇は止まりその温度変化はB−Cのような右下がりになる。このとき、溶液の凝固点はD点であるが、B点とD点とはほぼ等しいので、B点の温度を凝固点とみなすことができる。そして、この凝固点とされたB点の温度に基づいて濃度を検出する。
【0088】
ついで、図14〜図16を参照して、濃度検出装置200の主要動作の一例について説明する。
図14を参照して、まず、コントローラ156からの指示に従って、電磁バルブ148が開けられ(ステップS1)、所定時間(たとえば2秒)が経過する(ステップS3がYESになる)まで電磁バルブ148の開放状態が継続される。これによって、水溶液ポンプ146によって送り出されパイプP4を流れるメタノール水溶液の一部がパイプP17を介してパイプP18内に導入され、パイプP18に満たされていたメタノール水溶液が排出される。すなわち、電磁バルブ148を開けることによって、検出部を構成するパイプ部P182へのメタノール濃度を検出すべき新しいメタノール水溶液の導入と、パイプ部P182からのメタノール濃度検出済みのメタノール水溶液の排出とが行われる。メタノール水溶液は、水溶液ポンプ146によって加圧されているので電磁バルブ148を開けるだけでパイプ部P182内に導入される。パイプP18から排出されたメタノール濃度検出済みのメタノール水溶液は水溶液タンク130に戻される。
【0089】
なお、水溶液ポンプ146の駆動開始時には電磁バルブ148は閉じられており、運転を開始してから1回目の濃度検出を行う前まではパイプP18に空気が満たされている。この場合、パイプP18を満たしていた空気が水溶液タンク130に流入することはいうまでもない。
【0090】
そして、所定時間が経過する(ステップS3がYESになる)と、電磁バルブ148が閉じられ(ステップS5)、パイプP18に流入したメタノール水溶液の流れ(流速)が抑えられる。ここでは、電磁バルブ148を完全に閉じることによって、パイプ部P182でメタノール水溶液を保持し、滞留(停止)させることができる。
そして後述する濃度検出が行われる(ステップS7)。
【0091】
濃度検出の終了後、凝固したメタノール水溶液がコントローラ156からの指示に従ってペルチェ素子202によって加熱されてパイプ部P182から排出されやすくなり、電磁バルブ148が開けられて濃度検出済みのメタノール水溶液がパイプ部P182から排出されるとともに次回濃度検出すべきメタノール水溶液がパイプ部P182内に導入される(ステップS9)。このとき時間をカウントしつつ所定時間(たとえば40秒間)だけ電磁バルブ148が開放されメタノール水溶液が入れ替えられる(ステップS11)。
【0092】
所定時間経過後、メタノール水溶液の加熱が停止され(ステップS13)、ステップS5に戻り電磁バルブ148が閉じられ、メタノール水溶液の入れ替えが終了する。以降、ステップS5〜S13の処理が繰り返される。
【0093】
なお、メタノール水溶液の入れ替えの確認については、たとえばパイプ部P182内の温度を検出し、その温度が所定条件を満たせば、ステップS13に進むようにしてもよい。たとえば、検出温度が燃料電池システムと同じ温度になれば、または検出温度が検出対象の凝固点以上(この実施形態では、検出対象は水溶液なので0℃以上)になれば、ステップS13に進むようにする。
【0094】
ついで、図15および図16を参照して濃度検出動作について説明する。
まず動作が開始されると、変数N=0が設定され(ステップS51)、コントローラ156からの指示によって、ペルチェ素子202への通電電流を最大にする冷却モードで検出部となるパイプ部P182が急速に冷却される(ステップS53)。これによって凝固点までの所要時間を短くできる。
【0095】
そして、ペルチェ温度センサ210によってペルチェ素子202の表面温度が検出され(ステップS55)、水溶液温度センサ208によって検出部となるパイプ部P182内のメタノール水溶液の温度が検出される(ステップS57)。ペルチェ素子202の表面温度に代えて、ペルチェ素子202を代表する温度を検出するようにしてもよい。
【0096】
ついで、パイプ部182内の水溶液温度とペルチェ素子202の温度との差が1℃未満になったか否かが判断されるとともに、パイプ部P182内の水溶液温度が、燃料を含まない溶媒(この実施形態では水)の状態の凝固点よりやや高めの温度(この実施形態では2℃)より低くなっているか否かが判断される(ステップS59)。パイプ部182内の水溶液温度とペルチェ素子202の温度との差が1℃未満になりかつパイプ部P182内の水溶液温度が2℃より低くなるまで、ステップS53〜S59の処理が繰り返され急速冷却が継続される。水溶液温度とペルチェ素子202の温度との差が1℃以上であればあるいは水溶液温度が2℃以上であれば、水溶液が凝固することがないため急速冷却しても問題はない。
【0097】
一方、ステップS59において、パイプ部182内の水溶液温度とペルチェ素子202の温度との差が1℃未満になりかつパイプ部P182内の水溶液温度が2℃より低くなれば、凝固点に近づいてきていると判断しステップS61に進む。ステップS61では、コントローラ156からの指示によって、ペルチェ素子202の冷却能力を最初より低下させる。すなわちペルチェ素子202への通電電流を中程度に設定して冷却を続ける。これは、凝固点に近づいてきているにも拘らず急速冷却を継続すると、過冷却から凝固するときに発生する熱を急速に奪ってしまい凝固点を正確に検出できなくなる恐れがあるとともに、温度の応答遅れが発生し以降のステップの温度差検出工程に影響を与えるためである。
【0098】
なお、冷却性能が検出したい水溶液の熱容量からみて低い場合には、徐々にしか冷やすことができないのでこのステップは不要となる。
【0099】
そして、ペルチェ素子202の表面温度が検出され(ステップS63)、パイプ部P182内の水溶液温度が検出され(ステップS65)、パイプ部182内の水溶液温度とペルチェ素子202の表面温度との差分が計算され(ステップS67)、その温度の差分がメモリ216に記憶される(ステップS69)。
【0100】
そして、ステップS51から第1所定時間(たとえば10分)以上経過したか否かが判断され(ステップS71)、経過していなければパイプ部P182内の水溶液温度が−20℃以下か否かが判断され(ステップS73)、−20℃以下でなければ変数N=0か否かが判断される(ステップS75)。変数N=0であれば、第2所定時間が経過したか否かが判断され(ステップS77)、第2所定時間(たとえば5分)が経過すれば変数Nが1インクリメントされ(ステップS79)、ステップS63に戻りペルチェ素子202およびパイプ部P182内の水溶液の温度検出が行われる。
【0101】
ステップS71において第1所定時間が経過している場合、またはステップS73においてパイプ部P182内の水溶液温度が−20℃以下になっている場合には、異常が発生していると判断して検出エラーを報知し(ステップS81)、終了する。通常、温度検出にそれほど時間がかかるものではなく、また、温度が想定される凝固点よりもかなり低くなるのは正常ではないからである。
【0102】
ステップS75がNOの場合には、図16に示すステップS83に進み、メモリ216に記憶されている前回の温度差(パイプ部182内の水溶液温度とペルチェ素子202の表面温度との差分)が今回の温度差(パイプ部182内の水溶液温度とペルチェ素子202の表面温度との差分)の方が大きいか否かが判断される。今回の温度差の方が大きくなれば水溶液の温度が上昇に転じたと判断する。これによって凝固が始まったと判断する。すなわち、凝固が始まるとペルチェ素子202による冷却を行っても凝固熱により水溶液の温度が下がらず逆に上昇するので、水溶液とペルチェ素子202との温度差が大きくなり、これによって凝固が始まったことを知ることができる。
【0103】
そして、第2所定時間が経過したか否かが判断され(ステップS85)、経過するまで待機し、第2所定時間が経過するとパイプ部P182内の水溶液温度が検出され(ステップS87)、その水溶液温度がメモリ216に記憶される(ステップS89)。そして、その水溶液温度が0℃を超えたか否かが判断され(ステップS91)、0℃を超えていなければ水溶液温度が降下したか否かが判断される(ステップS93)。水溶液温度が降下していなければステップS87に戻り、一方、水溶液温度が降下していれば、ステップS89以降の処理でメモリ216に記憶された水溶液温度中の最高温度が凝固点と仮置きされ(ステップS95)、その仮置きされた凝固点が−8℃以上0℃以下か否かが判断され(ステップS97)、その範囲内であれば凝固点として正式に決定される(ステップS99)。そして、図17に示すメモリ216に記憶されている理論凝固点とモル濃度換算値との関係を示すテーブルデータを参照し、検出された凝固点に最も近い理論凝固点に対応するモル濃度が取得され(ステップS101)、終了する。一方、ステップS91において水溶液温度が0℃を超えたとき、またはステップS97において仮置き凝固点が−8℃以上0℃以下でない場合には、エラーと判断してエラーが報知され(ステップS103)、終了する。
【0104】
なお、ステップS101においてモル濃度が取得されると、その濃度に基づいて水溶液タンク130内のメタノール水溶液に補給される燃料タンク128からのメタノール燃料の量や水タンク132からの水の量が決定される。そして、決定された量のメタノール燃料や水が補給されることによって水溶液タンク130内のメタノール水溶液が所望の濃度に調整される。
【0105】
このような濃度検出装置200によれば、メタノール水溶液の凝固点とモル濃度との相関性を利用することによって、メタノール水溶液の凝固点に基づいて当該水溶液に溶けているメタノールの濃度を正確に検出できる。また、超音波センサのような大きな装置を用いる必要もない。
【0106】
また、検出部であるパイプ部P182に導入されたメタノール水溶液を停止させた状態でその温度を検出するので、メタノール水溶液の温度ひいてはその凝固点を正確に検出でき、その結果、メタノール水溶液に溶けているメタノールの濃度を正確に検出できる。
【0107】
さらに、濃度検出のために凝固させたメタノール水溶液を溶かすことができるので、濃度検出されるメタノール水溶液の入れ替えが確実かつ容易になる。
【0108】
また、ペルチェ素子202とヒートシンク204との組み合わせをメタノール水溶液の冷却および加熱に兼用できるので、装置の構成を簡素かつ小型にできる。
【0109】
さらに、メタノール水溶液が凝固するときの図13(b)に示すような特性を利用することによって、メタノール水溶液とペルチェ素子202との温度差に基づいてメタノール水溶液の凝固が始まったことを知ることができ、メタノール水溶液の凝固点をより正確に検出できる。
【0110】
また、濃度検出されたメタノール水溶液を水溶液タンク130に戻すことによって、濃度検出のためにメタノール水溶液を浪費することを防止できる。
【0111】
また、濃度検出時に、最初は比較的高速で冷却しその後冷却能力を下げることによって、濃度検出までの時間を短縮できるとともに濃度検出精度を向上できる。
【0112】
燃料電池システム100において燃料濃度を正確に検出することは重要であるので、この発明を燃料電池システム100に用いること、ひいては燃料電池システム100を搭載した二輪車10等の輸送機器に用いることは有効である。
【0113】
なお、上述の実施形態ではメタノール濃度検出済みのメタノール水溶液を水溶液タンク130に戻す場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、パイプP18内のメタノール濃度検出済みのメタノール水溶液をパイプP4に押し戻すようにしてもよい。また、パイプP18を、パイプP4とパイプP17との接続部よりも下流側でパイプP4に接続し、メタノール濃度検出済みのメタノール水溶液をセルスタック102に供給するようにしてもよい。
【0114】
また、燃料電池システム100において、メタノール水溶液の凝固点を検出すると、モル濃度を取得することなくその凝固点に基づいて直接、水溶液タンク130内のメタノール水溶液の濃度を調整するようにしてもよい。この場合、メタノール燃料および/または水の補給量と凝固点との対応関係を予め設定しておき、検出された凝固点に対応する量のメタノール燃料および/または水を水溶液タンク130内のメタノール水溶液に補給すればよい。
【0115】
このようにすれば、メタノール水溶液に含まれているメタノールの濃度を検出することなくメタノール水溶液の濃度を簡単に調整できる。
【0116】
さらに、上述の実施形態では、燃料としてメタノールを、燃料水溶液としてメタノール水溶液を用いたが、これに限定されず、燃料としてエタノール等のアルコール系燃料、燃料水溶液としてエタノール水溶液等のアルコール系水溶液を用いてもよい。
【0117】
この発明は、物質が溶けている液体であれば、任意の物質が溶けている任意の液体の濃度検出に用いることができる。
【0118】
この発明の燃料電池システムは、二輪車だけではなく、自動車、船舶等の任意の輸送機器にも好適に用いることができる。
【0119】
この発明は、改質器搭載タイプの燃料電池システムにも適用できる。また、この発明は、小型の据え付けタイプの燃料電池システムにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】この発明の燃料電池システムを搭載する二輪車を示す左側面図である。
【図2】二輪車の車体フレームに対する燃料電池システムの配置状態を左斜め前方からみた斜視図である。
【図3】二輪車の車体フレームに対する燃料電池システムの配置状態を左斜め後方からみた斜視図である。
【図4】燃料電池システムの配管状態を示す左側面図である。
【図5】燃料電池システムの配管状態を示す右側面図である。
【図6】燃料電池システムの配管状態を左斜め前方からみた斜視図である。
【図7】燃料電池システムの配管状態を右斜め前方からみた斜視図である。
【図8】燃料電池セルスタックを示す図解図である。
【図9】燃料電池セルを示す図解図である。
【図10】燃料電池システムの配管を示すシステム図である。
【図11】濃度検出装置の一例を示す図解図である。
【図12】(a)は濃度センサを示す斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図13】(a)は溶媒および溶液の冷却時間に対する温度変化を示すグラフであり、(b)は溶液およびペルチェ素子の冷却時間に対する温度変化を示すグラフである。
【図14】この発明の主要動作の一例を示すフロー図である。
【図15】濃度検出処理の動作の一例を示すフロー図である。
【図16】図15の動作の続きを示すフロー図である。
【図17】凝固点とモル濃度との対応関係を示すテーブルである。
【符号の説明】
【0121】
10 二輪車
100 燃料電池システム
102 燃料電池セルスタック
130 水溶液タンク
146 水溶液ポンプ
148 電磁バルブ
149 濃度センサ
156 コントローラ
200 濃度検出装置
202 ペルチェ素子
204 ヒートシンク
208 水溶液温度センサ
210 ペルチェ温度センサ
214 CPU
216 メモリ
P1〜P21 パイプ
P181〜P185 パイプ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質が溶けている液体を冷却する冷却手段、
冷却される前記液体の温度を検出する第1温度検出手段、
前記第1温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記液体の凝固点を検出する凝固点検出手段、
前記凝固点検出手段によって検出された凝固点に基づいて前記液体に溶けている物質の濃度を検出する濃度検出手段を備える、濃度検出装置。
【請求項2】
さらに、前記液体の温度を検出するために前記液体を停止状態で保持する検出部、および前記検出部内の前記液体を入れ替えるための入替手段を備え、
前記第1温度検出手段は、前記検出部内の前記液体の温度を検出する、請求項1に記載の濃度検出装置。
【請求項3】
前記液体を加熱する加熱手段をさらに含む、請求項1または2に記載の濃度検出装置。
【請求項4】
前記冷却手段および前記加熱手段に兼用される温度変更手段を備える、請求項3に記載の濃度検出装置。
【請求項5】
前記冷却手段の温度を検出する第2温度検出手段をさらに含み、
前記凝固点検出手段は、前記第1温度検出手段の検出結果と前記第2温度検出手段の検出結果とに基づいて前記液体の凝固点を検出する、請求項1から4のいずれかに記載の濃度検出装置。
【請求項6】
さらに、前記液体を収容するタンク、
前記タンク内の前記液体を前記冷却手段近傍に送るための第1パイプ、および
濃度検出後の前記液体を前記タンクに戻すための第2パイプを含む、請求項1から5のいずれかに記載の濃度検出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の濃度検出装置を含む、燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池システムを含む、輸送機器。
【請求項9】
物質が溶けている液体を冷却空間に導入する工程、
前記冷却空間に導入された前記液体を冷却手段によって冷却する工程、
前記冷却手段の温度を検出する工程、
前記冷却空間内で冷却される前記液体の温度を検出する工程、
検出された前記冷却手段の温度と前記液体の温度とに基づいて前記液体の凝固点を検出する工程、および
検出された前記液体の凝固点に基づいて前記液体に溶けている物質の濃度を検出する工程を備える、濃度検出方法。
【請求項10】
前記液体を冷却する工程は、第1の冷却能力で前記液体を冷却する第1工程と、前記第1の冷却能力よりも低い冷却能力で前記液体を冷却する第2工程とを含む、請求項9に記載の濃度検出方法。
【請求項11】
燃料水溶液を用いる燃料電池システムであって、
前記燃料水溶液の凝固点を検出し、検出された前記凝固点に基づいて前記燃料水溶液の濃度を調整する、燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−343268(P2006−343268A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170712(P2005−170712)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】