説明

濃淡インクを用いた印刷装置、これに用いるカートリッジ、画像記録方法および記録媒体

【課題】濃淡インクを用いて印刷を行なうプリンタで、濃度の高いインクと低いインクとを混在させ、印刷の品位を高める。
【解決手段】 入力した階調データから濃度の高いインクの記録率のテーブルを参照して濃ドットを形成するか否かを判断し、形成すると判断した場合には、そのインクのヘッドのピエゾ素子PEを駆動して濃ドットを形成する。他方、濃ドットを形成しない場合には、濃度の低いインクによりドットを形成するか否かを判断し、平均的な記録率が所定の値となるように淡ドットのオン・オフを決定する。このとき、参照するテーブルでは、淡ドットの記録率が最大値となる階調データ以下の領域で濃ドットの形成を開始しているので、淡ドットによる記録から濃ドットによる記録へのつなぎ目における混色が極めてスムースであり、印刷の品質を極めて高くすることができる。なお、シアンインクと記録位置に対応する位置のマゼンタの濃度に応じて、淡ドットの記録率を可変しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃淡インクを用いた印刷の技術に関し、詳しくは画像を表わす階調信号に基づいて濃淡2種類以上のインクの各ドットの分布を制御して多階調の画像を印刷する印刷装置,これに用いるカートリッジ,画像記録方法ならびにこの方法を実現するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの出力装置として、数色のインクをヘッドから吐出するタイプのカラープリンタが広く普及し、コンピュータ等が処理した画像を多色多階調で印刷するのに広く用いられている。シアン、マゼンタ、イエロー(CMY)の三色のインクにより多色の画像を印刷する場合、こうしたプリンタでは、一度に吐出するインクにより用紙上に形成されるドットの大きさは一定であり、印刷される画像の階調は、ドットの密度(単位面積当たりの記録密度)により表現される。所定長さ当たりに形成できるドットの密度は、年々高まっているが、プリンタの場合には、300dpiないし720dpi程度に留まっており、銀塩写真の表現力との間では未だ隔たりは大きい。銀円フィルムにおける解像度は、数千dpiと言われている。
【0003】
ドットがあるかないか(ドットのオン・オフとも呼ぶ)により画像を表現するプリンタでは、画像濃度の低い領域、即ち印刷されるドット密度の低い領域では、ドットがまばらに形成され、いわゆる粒状化が起きることから、ドットが目に付いてしまう。そこで、印刷品位の更なる向上を目的とし、濃淡インクを用いた印刷装置および印刷方法が提案されている。これは、同一色について濃度の高いインクと低いインクを用意し、両インクの吐出を制御することにより、階調表現に優れた印刷を実現しようとするものである。例えば、下記特許文献には、同一色について濃淡2種類のドットを形成するヘッドを備え、入力された画像の濃度情報に応じて、所定のドットマトリックス内に形成する濃淡ドットの数およびその重なりを制御することで、多階調の画像を記録する記録方法およびその装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−108254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の濃淡インクを用いた印刷装置では、濃度の高いインクと低いインクとを、元の画像の階調信号に対してどのように対応させるかという点については、特に配慮されておらず、画像の階調信号に対して単純に濃度の低いインクから順に割り当てているに過ぎなかった(例えば、特開平2−215541号公報、第9図)。
【0006】
本発明の一つの目的は、同一色について濃淡2種類以上のインクを吐出可能な印刷装置において、濃度の高いインクと低いインクとを、元の画像の階調信号に対して適切に対応させ、記録される画像の品位を向上することを目的とする。特に、原画像における低濃度領域の表現あるいは低濃度領域から高濃度領域に移行する領域での表現を、改善することを目的の一つとする。更に、本発明はこうした印刷装置に適したカートリッジを提案することを、他の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的の少なくとも一つを達成するため、本願発明の第1の印刷装置では、入力手段により印刷しようとする画像の階調信号を入力し、この階調信号に基づいて、ドット生成手段が、濃淡2種類以上のインクのドットの記録密度を求める。かかるドットの記録密度を求める際、ドット生成手段は、低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号で、高濃度のインクによるドットが出現する特性に基づいて、処理を行なう。この結果、低い濃度の側のインクのドットの記録密度が最大値となる以前から濃度が高い側のインクのドットが混在し始め、よりスムースな階調表現が実現される。
【0008】
また、本発明の第2の印刷装置は、印刷しようとする画像の階調信号を入力手段により入力し、この階調信号に基づいて、ドット生成手段が、濃淡2種類以上のインクのドットの記録密度を求める。かかるドットの記録密度を求める際、この印刷装置では、ドット生成手段が、低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも高い階調信号では、低濃度のインクによるドットの記録密度が急峻に低減する特性に基づいて、処理を行なう。この結果、低い濃度の側のインクのドットの記録密度が最大値を越えて、濃度が高い側のインクのドットが混在し始めると低い濃度の側のインクのドットの記録密度は急激に低下し、よりスムースな階調表現が実現される。
【0009】
こうした濃淡インクを用いた印刷装置では、前記ドット生成手段は、前記入力した階調信号から前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの記録密度を与えるテーブルを有することも、演算を容易にする上で好適である。
【0010】
また、濃淡インクが2種類のインクからなる場合、低濃度インクの染料濃度を、高濃度インクの染料濃度の略1/4とすると、実際に印刷されたものの階調の変化が最もスムースに感じられる。
【0011】
こうした印刷装置のヘッドとして、色相の異なる複数のインクについて、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドを設けるものとし、前記ドット生成手段を、色相の異なる少なくとも2種類のインクの各々について、前記各ドットの記録密度を求める処理を行なう各色ドット生成手段を備えることも望ましい。この場合には、複数の色相のインクについて、適正な濃淡インクのドットを生成することができる。こうした色相の異なる複数のインクとしては、シアンおよびマゼンタのインクが含まれる。この場合、各色ドット生成手段は、シアンおよびマゼンタについて前記処理を行なう手段とすることができる。
【0012】
更に、各色ドット生成手段としては、対応する画素に吐出される他の色相のインクのデータに関連付けて、前記ドットの記録密度を決定する構成とすることができる。この場合には、単色の場合と比べて、淡インクのドットの記録密度を可変することができ、カラー印刷の場合に、より適正なドットの形成を行なうことができる。特に、各色ドット生成手段が、対応する画素に吐出される他の色相インクの濃度が高いほど、前記低濃度インクによるドットの記録密度を低く補正するものとすれば、複数色のインクが吐出される箇所では、濃度の低いインクの吐出量を低減し、全体として単位面積当たりのインク量を低減することができる。この結果、用紙における単位面積当たりの吐出可能なインク量の制限(インクデューティ)に対して余裕を持って印刷を行なうことができる。
【0013】
インクの吐出方式については、様々な構成が採用可能であり、インク通路に設けられた電歪素子への電圧の印加によりインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた構成や、インク通路に設けられた発熱体への通電により発生する気泡により該インク通路のインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた構成などを、採用することができる。これらの構成に拠れば、インク粒子を微細にし、かつそのインク量を適切に制御することが容易であり、更に多数の吐出ノズルをヘッド上に用意することも容易である。多数のノズルを設ける場合には、インク粒子の吐出用ノズルは、各色および各濃度のインク毎に、印刷される用紙の搬送方向に沿って複数個配列することができる。複数個のノズルを用意することにより、印刷速度の向上に資することができる。
【0014】
本発明の第3の印刷装置は、
色相の異なる複数のインクが吐出可能であり、該複数のインクのうちの少なくとも一つについては、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドを備えており、印刷すべき画像の階調信号を入力すると、該入力した階調信号に基づいて、前記色相の異なる複数のインクの各ドットの記録密度を求めると共に、前記濃淡2種類以上のインクのうちの淡インクについては、対応する画素に吐出される他の色相のインクの濃度に関連付けて、ドットの密度を決定する。したがって、低濃度インクの記録率については、他の色相のインクの濃度にも関連付けられることになる。
【0015】
こうした低濃度インクの記録率と他の色相のインクの濃度との関連付けとしては、対応する画素に吐出される他の色相インクの濃度が高いほど、前記低濃度インクによるドットの記録密度を低くする関係を考えることができる。この場合には、見た目の画質に影響の少ない範囲で低濃度インクの記録率を低減でき、インクデューティの制限を緩和することができる。
【0016】
また、原画像の持つ色相のデータから色相の異なる複数のインクについての濃淡ドットの記録率を直接求めるルックアップテーブルを持つことも、記録率を求める処理を高速化する点で有効である。
【0017】
上述した印刷装置に用いられるインクカートリッジの発明は、濃度の異なる濃淡2種以上のカラーインクを、黒色インクとは別体の容器に収納してなることを特徴とする。このインクカートリッジは、黒色のインクとは別の容器に収納されていることから、その交換の時期が、通常の文字を中心とした印刷に用いられる黒色インクの消尽とその交換時期に影響されることがない。
【0018】
こうしたインクカートリッジでは、色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクを、互いに隣接する位置に配設することができ、具体的には、濃度の異なる濃淡2種以上のインクが、一端から順に、シアンインク、該シアンインクより染料濃度の低いインク、マゼンタインク、該マゼンタインクより染料濃度の低いインク、イエロインクの順に配設することが可能である。
【0019】
更に、本発明の第1の画像記録方法は
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、記録しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を記録する方法であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号の範囲から、高濃度のインクによるドットが出現する特性を記憶し、
印刷すべき画像の階調信号を入力し、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクのドットの有無を各々決定し、
該決定されたドットの有無に従って前記ヘッドからのインクの吐出を制御し、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無による階調表現を行なうことを要旨としている。
【0020】
また、本発明の第2の画像記録方法は、
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、記録しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を記録する方法であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも高い階調信号では、低濃度のインクによるドットの記録密度が急峻に低減する特性を記憶し、
印刷すべき画像の階調信号を入力し、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの有無を決定し、
該決定されたドットの有無に従って前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なうことを要旨としている。
【0021】
また、本発明の第3の画像記録方法は、
異なる色相のインクにより形成されるドットの分布密度を制御して画像の記録を行なう画像記録方法であって、
色相の異なる複数のインクが吐出可能であり、該複数のインクのうちの少なくとも一つについては、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドを用い、
印刷すべき画像の階調信号を入力し、
該入力した階調信号に基づいて、前記色相の異なる複数のインクの各ドットの記録密度を求めると共に、前記濃淡2種類以上のインクのうちの淡インクについては、対応する画素に吐出される他の色相のインクの濃度に関連付けて、ドットの密度を決定し、
前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、前記色相の異なる複数のインク及び前記濃淡2種類以上のインクのドットを被記録物上に記録すること
を要旨としている。
【0022】
本発明の第1の記録媒体は、
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを駆動し、印刷しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を形成するためのプログラムの少なくとも一部をコンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号の範囲から、高濃度のインクによるドットが出現する特性を記憶したテーブルと、
印刷すべき画像の階調信号を入力する第1のプログラムと、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクのドットの有無を各々決定する第2のプログラムと
を記録したことを要旨としている。
【0023】
また、本発明の第2の記録媒体は、
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを駆動し、印刷しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を形成するためのプログラムの少なくとも一部をコンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも高い階調信号では、低濃度のインクによるドットの記録密度が急峻に低減する特性を記憶したテーブルと、
印刷すべき画像の階調信号を入力する第1のプログラムと、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクのドットの有無を各々決定する第2のプログラムと
を記録したことを要旨としている。
【0024】
更に、本発明の第3の記録媒体は、
色相の異なる複数のインクが吐出可能であり、該複数のインクのうちの少なくとも一つについては、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドを駆動し、該異なる色相のインクにより形成されるドットの分布密度を制御して画像の記録を行なうプログラムの少なくとも一部をコンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体であって、
印刷すべき画像の階調信号を入力する第1のプログラムと、
該入力した階調信号に基づいて、前記色相の異なる複数のインクの各ドットの記録密度を求めると共に、前記濃淡2種類以上のインクのうちの淡インクについては、対応する画素に吐出される他の色相のインクの濃度に関連付けて、ドットの密度を決定する第2のプログラムと
を記録したことを要旨としている。
【0025】
なお、これらの記録媒体としては、ROM、RAM、フレキシブルディスク、CD−ROM、メモリカード、その他の光磁気ディスクなど、様々な媒体を考えることができる。もとより、バーコード等が記録された紙や所定のコード体系に従ってパンチ孔等があけられたカードなども含まれる。また、上述した記録媒体には、ドットの有無やドット密度を求めるプログラムが記録されているが、決定されたドットの有無や求められたドット密度にしたがってヘッドにおけるインク吐出等の制御を行なうプログラムが、プリンタやコンピュータにファームウェアの形で予め用意される場合には、記録媒体に用意するプログラムは、ドットの有無やドット密度を求めるまでで足りるからである。これらのファームウェアが用意されていない場合あるいは独自にこれらの処理に相当するプログラムを用意する場合等には、決定されたドットの有無やドット密度に従って、ヘッドからのインクの吐出を制御する信号を出力する第3のプログラムを、記録媒体に併せて記録するものとしても良い。なお、これらの第1ないし第3のプログラムは、単一の記録媒体に記録しておく必要はなく、分離されたいくつかの媒体に分けて記録しても差し支えない。もとより、所定の暗号化や圧縮を行なって記録することも差し支えない。
【0026】
発明の他の態様:
この発明は、以下のような他の態様も含んでいる。その一つは、印刷装置の入力手段およびドット生成手段を印刷装置の筐体内部ではなく、印刷しようとする画像を出力する装置の側に置く構成である。ドット生成手段は、ディスクリートな回路によっても実現可能であるが、CPUを中心とした算術論理演算回路におけるソフトウェアによっても実現可能である。後者の場合には、印刷しようとする画像を出力する側、例えばコンピュータ側にドットの生成に関する処理まで行なわせ、印刷装置の筐体内には、生成されたドットを、ヘッドからのインクの吐出を制御して、用紙上などに形成する機構のみを収納する形態も考えることができる。もとより、ドット生成手段の機能を、いくつかに分け、その一部を、印刷装置の筐体内で実現し、残りを、画像を出力する側で実現すると言った構成も可能である。
【0027】
また他の形態として、上記の画像記録方法を実現するプログラムや上記の記録媒体に記録されたプログラムを通信回線を介して供給する供給装置としての形態を考えることができる。こうした形態では、プログラムをネットワーク上のサーバなどに置き、通信回線を介して、必要なプログラムをコンピュータにダウンロードし、これを実行することで、上記の画像記録方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明第1実施例の印刷装置10の概略構成である。
【図2】実施例で用いたプリンタ20の概略構成図である。
【図3】プリンタ20における制御回路40の構成を示すブロック図である。
【図4】キャリッジ30の構成を示す斜視図である。
【図5】印字ヘッド28における各色ヘッド61ないし66の配置を示す説明図である。
【図6】カラーインク用カートリッジ70の形状を示す斜視図である。
【図7】各色ヘッド61ないし66におけるインク吐出のための構成を示す説明図である。
【図8】ピエゾ素子PEの伸張によりインク粒子Ipが吐出される様子を示す説明図である。
【図9】コンピュータ90が扱う画像情報から印刷が行なわれるまでの処理の様子を例示するブロック図である。
【図10】各色インクの成分を示す説明図である。
【図11】各色インクの記録率と明度との関係を例示するグラフである。
【図12】ハーフトーンモジュール99における処理を例示するフローチャートである。
【図13】濃ドットの形成判断処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】本実施例における淡インクと濃インクとによる記録率と階調データとの関係を例示するグラフである。
【図15】濃ドットのオン・オフを判断するための分散型ディザの閾値マトリックスの一例を示す説明図である。
【図16】誤差拡散において誤差が拡散される各画素への重み付けの一例を示す説明図である。
【図17】淡ドット形成判断処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図18】本実施例における淡インクC2によるドットの形成と濃インクC1によるドットの形成の様子を例示する説明図である。
【図19】淡インクと濃インクとによる記録率と階調データとの関係の他の例を示すグラフである。
【図20】淡インクと濃インクとによる記録率と階調データとの関係の更に他の例を示すグラフである。
【図21】第二実施例におけるシアンインクの記録率を求めるグラフである。
【図22】第二実施例におけるマゼンタインクの記録率を求めるグラフである。
【図23】プリンタドライバ296の変形例を示すブロック図である。
【図24】RGBデータから直接各色インクの記録率を求めるルックアップテーブルを示す説明図である。
【図25】インク粒子の吐出機構の他の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1に示すように、本発明の一実施例である印刷装置10は、コンピュータ90とこれに接続されたプリンタ20とから構成されている。コンピュータ90には、更にスキャナ12が接続されており、このコンピュータ90に所定のプログラムがロードされ実行されることにより、全体として画像読み取り機能を有する印刷装置10として機能する。図示するように、このコンピュータ90は、プログラムに従って画像処理に関わる動作を制御するための各種演算処理を実行するCPU81を中心に、バス80により相互に接続された次の各部を備える。ROM82は、CPU81で各種演算処理を実行するのに必要なプログラムやデータを予め格納しており、RAM83は、同じくCPU81で各種演算処理を実行するのに必要な各種プログラムやデータが一時的に読み書きされるメモリである。入力インターフェイス84は、スキャナ12やキーボード14からの信号の入力を司り、出力インタフェース85は、プリンタ20へのデータの出力を司る。CRTC86は、カラー表示可能なCRT21への信号出力を制御し、ディスクコントローラ(DDC)87は、ハードディスク16やフレキシブルドライブ15あるいは図示しないCD−ROMドライブとの間のデータの授受を制御する。ハードディスク16には、RAM83にロードされて実行される各種プログラムやデバイスドライバの形式で提供される各種プログラムなどが記憶されている。このほか、バス80には、シリアル入出力インタフェース(SIO)88が接続されている。このSIO88は、モデム18に接続されており、モデム48を介して、公衆電話回線PNTに接続されている。コンピュータ90は、このSIO88およびモデム18を介して、外部のネットワークに接続されており、特定のサーバーSVに接続することにより、画像処理に必要なプログラムをハードディスク76にダウンロードすることも可能である。また、必要なプログラムをフレキシブルディスクFDやCD−ROMによりロードし、コンピュータ90に実行させることも可能である。
【0030】
プリンタ20は、図2に示すように、紙送りモータ22によって用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ30に搭載された印字ヘッド28を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御する機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印字ヘッド28および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とから構成されている。
【0031】
用紙Pを搬送する機構は、紙送りモータ22の回転をプラテン26のみならず、図示しない用紙搬送ローラに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ30を往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
【0032】
制御回路40を中心としたプリンタ20の構成を、図3にしたがって説明する。図示するように、この制御回路40は、周知のCPU41,プログラムなどを記憶したP−ROM43,RAM44,文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45などを中心とする算術論理演算回路として構成されており、この他、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なうI/F専用回路50、このI/F専用回路50に接続されヘッド28を駆動するヘッド駆動回路52、同じく紙送りモータ22およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54を備える。また、I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータに接続されて、コンピュータが出力する印刷用の信号を受け取ることができる。コンピュータからの画像信号の出力については後述する。
【0033】
次にキャリッジ30の具体的な構成と、キャリッジ30に搭載された印字ヘッド28によるインクの吐出原理について説明する。図4に示すように、キャリッジ30は、略L字形状をしており、図示しない黒インク用カートリッジとカラーインク用カートリッジ70とを搭載可能であって、両カートリッジを装着可能に仕切る仕切板31を備える。キャリッジ30の下部の印字ヘッド28には、図5に示すように、計6個のインク吐出用ヘッド61ないし66が形成されており、キャリッジ30の底部には、この各色用ヘッドにインクタンクからのインクを導く導入管71ないし76が立設されている。キャリッジ30に黒インク用のカートリッジおよびカラーインク用カートリッジ70を上方から装着すると、各カートリッジに設けられた接続孔に導入管71ないし76が挿入される。
【0034】
インクが吐出される機構を簡単に説明する。図6に示すインク用カートリッジ70がキャリッジ30に装着されると、毛細管現象を利用してインク用カートリッジ内のインクが導入管71ないし76を介して吸い出され、図7に示したように、キャリッジ30下部に設けられた印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし66に導かれる。各色ヘッド61ないし66には、図5および図7に示したように、各色毎ノズルnが一列に設けられている。本実施例では各色毎のノズル数は、32個である。各ノズルn毎に、ピエゾ素子PEが配置されている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行なう素子である。ピエゾ素子PEとノズルnとの構造を詳細に示したのが、図8(A)および(B)である。図示するように、ピエゾ素子PEは、ノズルnまでインクを導くインク通路68に接する位置に設置されている。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、図8(B)に示すように、ピエゾ素子PEは、急速に伸張し、インク通路68の一側壁を変形させる。この結果、インク通路68の体積は、ピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルnの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着された用紙Pに染み込むことにより、印刷が行なわれることになる。
【0035】
印字ヘッド28における各色ヘッド61ないし66の配列は、上述したピエゾ素子PEを配置する関係上、図5に示したように、2つのヘッドを一組として、3組に分けて配設されている。黒インク用カートリッジに近接した側の端に黒インク用のヘッド61が配設されており、その隣がシアン用のインクヘッド62である。また、この組に隣接するのが、シアン用インクヘッド62に供給されるシアンインクより濃度の低いインク(以下、ライトシアンインクと呼ぶ)用のヘッド63とマゼンタ用のインクヘッド64である。更にその隣の組には、通常のマゼンタインクより濃度の低いインク(以下、ライトマゼンタインクと呼ぶ)用のヘッド65と、イエロ用のヘッド66とが配置されている。各インクの組成および濃度については後述する。
【0036】
以上説明したハードウェア構成を有する本実施例のプリンタ20は、紙送りモータ22によりプラテン26その他のローラを回転して用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし66のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行ない、用紙P上に多色の画像を形成する。なお、プリンタ20は、図9に示すように、コンピュータ90などの画像形成装置からコネクタ56を介して受け取った信号に基づいて、多色の画像を形成する。この例では、コンピュータ90内部で動作しているアプリケーションプログラムは、画像の処理を行ないつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ93に画像を表示している。このアプリケーションプログラム95が、印字命令を発行すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像情報をアプリケーションプログラムから受け取り、これをプリンタ20が印字可能な信号に変換している。図9に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、アプリケーションプログラム95が扱っている画像情報をドット単位の色情報に変換するラスタライザ97、ドット単位の色情報に変換された画像情報(階調データ)に対して画像出力装置(ここではプリンタ20)の発色の特性に応じた色補正を行なう色補正モジュール98、色補正された後の画像情報からドット単位でのインクの有無によりある面積での濃度を表現するいわゆるハーフトーンの画像情報を生成するハーフトーンモジュール99が備えられている。これらの各モジュールの動作は、周知のものなので、説明は原則として省略し、ハーフトーンモジュール99の内容については、必要に応じて説明する。
【0037】
以上説明したように、本実施例のプリンタ20は、その印字ヘッド28に、いわゆるCMYKの4色のインク以外に、ライトシアンインクとライトマゼンタインク用のヘッド63,65を備える。これらのインクは、図10にその成分を示すように、通常のシアンインクおよびマゼンタインクの染料濃度を低くしたものである。図示するように、通常濃度のシアンインク(図10中C1で示す)は、染料であるダイレクトブルー199を3.6重量パーセント、ジエチレングリコール30重量パーセント、サーフィノール465を1重量パーセント、水65.4重量パーセントとしたものであるのに対して、ライトシアンインク(図10中C2で示す)、染料であるダイレクトブルー199を、シアンインクC1の1/4である0.9重量パーセントとし、粘度調整のためにジエチレングリコールを35重量パーセント、水を63.1重量パーセントに変更したものである。また、通常濃度のマゼンタインク(図10中M1で示す)は、染料であるアシッドレッド289を2.8重量パーセント、ジエチレングリコール20重量パーセント、サーフィノール465を1重量パーセント、水76.2重量パーセントとしたものであるのに対して、ライトマゼンタインク(図10中M2で示す)は、染料であるアシッドレッドを、マゼンタインクM1の1/4である0.7重量パーセント、ジエチレングリコール25重量パーセント、水73.3重量パーセントに変更したものである。
【0038】
なお、図10に示したように、イエロインクYと、ブラックインクKは、染料としてダイレクトイエロ86とフードブラック2とを用い、それぞれ1.8重量パーセント、4.8重量パーセントとしたものである。いずれのインクも、粘度がおよそ3[mPa・s]程度に調整されている。粘度を同一に調整しているので、各色ヘッド毎のピエゾ素子PEの制御を同一にすることができる。
【0039】
これらの各色インクの明度を測定したものを図11に示した。図11の横軸はプリンタの記録解像度に対する記録率であり、ノズルnから吐出したインク粒子Ipにより白色の用紙Pにドットを記録した割合を示している。即ち、記録率100とは、用紙Pの全面がインク粒子Ipにより覆われた状態を示している。本実施例では、シアンインクC1に対してライトシアンインクC2は、染料の濃度が重量パーセントで約1/4としており、このときの両インクの明度は、ライトシアンインクC2の記録率が100パーセントの場合の明度が、シアンインクC1の記録率が約35パーセントの場合の明度と等しくなっている。この関係は、マゼンタインクM1,ライトマゼンタインクM2においても同様である。濃度の異なるインクが同一明度となる記録率の割合は、両インクを混在して印刷した場合の混色の美しさの点から定めたものであるが、実用上は、20ないし50パーセントの範囲に調整することが望ましい。この関係を、両インクにおける染料の重量パーセントの割合で表現すると、濃度の高いインク(シアンインクC1およびマゼンタインクM1)における染料の重量パーセントに対して、濃度の低いインク(ライトシアンインクC2およびライトマゼンタインクM2)における染料の重量パーセントの関係を、後者が前者の約1/5ないし1/3程度に調整することとほぼ等価である。
【0040】
次に、プリンタドライバ96のハーフトーンモジュール99内の処理に沿って、本実施例のプリンタ20における濃淡インクを用いた印刷の様子について説明する。図12は、ハーフトーンモジュール99の処理の概要を示すフローチャートである。
【0041】
図示するように、印刷の処理が開始されると、一つの画像の左上隅を原点として各画素を順にスキャンし、まず色補正モジュール98から、キャリッジ30のスキャン方向に沿った順に、一つの画素の色補正済みの階調データDS(CMYK各8ビット)を入力する(ステップS100)。
【0042】
なお、以下では、シアンインクのみにより印刷が行なわれるものとして説明するが、実際には多色の印刷が行なわれることになり、マゼンタについては、濃度の高いマゼンタインクM1と濃度の低いライトマゼンタインクM2とにより、濃ドットおよび淡ドットが形成される。またイエロについては、イエロインクYによりドットが形成され、黒色についてはブラックインクKによりドットが形成されることになる。また、所定の領域内に異なる色のインクによるドットが形成される場合には、混色による色の再現性を良好なものとするために必要な制御、例えば異なる色のドットを同位置箇所に印刷しないものとする制御などが行なわれる。
【0043】
次に、入力した階調データDSに基づき、濃ドットのオン・オフを決定する処理を行なう(ステップS120)。この濃ドットのオン・オフを決定する処理の詳細を、図13の濃ドット形成判断処理ルーチンにしたがって説明する。この処理ルーチンでは、まず、階調データDSに基づいて、図14に示したテーブルを参照して、濃レベルデータDthを生成する処理を行なう(ステップS122)。図14は、元の画像の階調データに対して、淡インクと濃インクの記録率をどの程度にするかを設定するテーブルを示す。階調データは、各色について0〜255までの値をとるものしているから(各色8ビット)、以下階調データの大きさを16/256等のように表現する。図14のテーブルは、得られる印刷物における濃インクと淡インクの平均的な割合を示すものであり、ある階調データDSが与えられたときに実現すべき濃インクと淡インクの平均的な記録率を与える。したがって、個々の画素の濃インクまたは淡インクによるドットのオン・オフを、一意に定めるものではない。
【0044】
入力した階調データDSに基づいて、図14のテーブルを参照することにより、予め定めた濃インクの記録率に対応した濃レベルデータDthを得る(図14右側縦軸)。例えば、入力したシアンの階調データが50/256のベタの領域を印刷する場合には、濃インクであるシアンインクC1の記録率は0パーセントであり、濃レベルデータも値0となる。階調データが95/256のベタの領域を印刷する場合には、濃インクであるシアンインクC1の記録率は7パーセントであり、濃レベルデータDthは値18となる。更に、階調データが191/256のベタ領域を印刷する場合にはシアンインクC1の記録率は75パーセントであって、濃レベルデータは値191となる。なお、これらの場合の対応するライトシアンインクC2の記録率は36パーセント、58パーセント、0パーセントとなっており、淡レベルデータDtnは、それぞれ92/255,148/255,0/255となる。
【0045】
更に、図14に示したライトシアンインクC2の記録率とシアンインクC1の記録率と関係には、次の特徴がある。
(1)入力される階調データが低い領域(実施例では0/256から63/256)では、ライトシアンインクC2のみが記録される。その記録率は、階調データの大きさに応じて単調増加する。
(2)入力される階調データの増加に応じて大きな値となるライトシアンインクC2の記録率が最大値(実施例では58パーセント)となるよりも以前から、階調データの増加に応じて、濃度の高いインクであるシアンインクC1によるドットの形成が開始され、記録率が徐々に増加する。実施例では、入力される階調データが63/256を越えると、シアンインクC1によるドットが形成されることになる。なお、ライトシアンインクC2による記録率が最大となる階調データの値は、実施例では95/256である。
【0046】
(3)ライトシアンインクC2の記録率が最大値となる値より階調データが大きくなると、ライトシアンインクC2の記録率は急速に低減する。一方、シアンインクC1の記録率は、階調データの増大にほぼ比例して増加する。実施例では、階調データが127/256を越えるとライトシアンインクC2の記録率は急減し、階調データが191/256を越えると、その記録率はほぼ0となる。
(4)ライトシアンインクC2の記録率がほぼ0となる値より階調データが大きな領域では、シアンインクC1の記録率は、階調データの増加に応じて最大値100パーセントまで順次増加するが、それ以前の領域と比べると、階調データの増加に対する記録率の増加の割合は、やや低くなっている。
【0047】
本実施例では、図14に示したこの関係を用いて濃レベルデータDthを得て、濃インクのオン・オフを決定する以下の処理を行なっている。まず、こうして得られた濃レベルデータDthが閾値Dref1より大きいか否かの判断を行なう(図13、ステップS124)。この閾値Dref1は、着目した画素に濃インクによるドットを形成するか否かの判定値である。この例では、この閾値の設定に分散型ディザの閾値マトリックスを採用し、特に64×64程度の大域的マトリックス(ブルーノイズマトリックス)を利用し、組織的ディザ法を適用した。従って、濃ドットのオンオフを定める閾値Dref1は、着目する画素毎に異なった値となる。図15に、組織的ディザ法における閾値の考え方を示す。図15では、マトリックスの大きさは図示の都合上4×4としたが、実際には、64×64の大きさのマトリックスを用い、その内部のいずれの16×16の領域をとっても閾値(0〜255)の出現に偏りがないように閾値を決めている。こうした大域的なマトリックスを用いると、疑似輪郭などの発生が抑制される。分散型ディザとは、その閾値マトリックスにより決定されるドットの空間周波数が高いものであり、ドットが領域内でバラバラに発生するタイプを言う。具体的には、Beyer型の閾値マトリックスなどが知られている。分散型のディザを採用すると、濃ドットの発生がバラバラに行なわれるので、濃淡ドットの分布が偏らず、画質が向上する。なお、濃ドットのオンオフを決定するには、その他の手法、例えば濃度パターン法や画素配分法などを採用しても差し支えない。
【0048】
濃ドットデータDthが閾値Dref1より大きい場合には、その画素の濃ドットをオンにするものと判断し、更に結果値RVを演算する処理を行なう(図13、ステップS126)。結果値RVは、その画素の濃度に相当する値(濃ドット評価値)であり、濃ドットがオン、即ちその画素に濃度の高いインクによるドットを形成すると判断した場合には、その画素の濃度の対応した値(例えば値255)が設定される。この結果値RVは、固定値でも良いが、濃レベルデータDthの関数として設定しても良い。
【0049】
他方、濃レベルデータDthが閾値Dref1以下の場合には、濃ドットをオフ、即ち形成しないと判断し、更に結果値RVに値0を代入する処理を行なう(ステップS128)。濃度の高いインクによるドットが形成されない箇所は、用紙の白地が残ることから、結果値RVを値0とするのである。
【0050】
こうして濃ドットのオン・オフを決定し、結果値RVを演算する処理(図12ステップS120)を行なった後、次に、淡ドットのオン・オフを決定するための淡ドット用データDxを求める処理を行ない(ステップS130)、これに処理済みの画素からの拡散誤差△Duを加えて補正データDCを求める処理を行なう(ステップS135)。淡ドット用データDxは、次式により求める。
Dx=Dth・Z/255+Dtn・z/255
ここで、Dtnは、図14のグラフに基づいて階調データDSから求めた淡ドットデータである。また、Zは、濃ドットが形成された場合の評価値であり、ここでは上述した通り、値255である。したがって、上記式は、
Dx=Dth+Dtn・z/255
となる。また、zは、淡ドットが形成された場合の評価値である。淡ドットの場合には、ドットが形成された場合でも、濃ドットと比べれば、その評価は小さい。本実施例では、z=160とした。
【0051】
また、これに拡散誤差△Duを加えて補正データDCを求めるのは、淡ドットについては、誤差拡散の処理を行なっているからである。誤差拡散で印刷を行なう場合、処理済みの画素について生じた濃淡の誤差を予めその画素の周りの画素に所定の重みを付けて予め配分しておく。そこで、該当する誤差分を読み出し、これを今から印刷しようとする画素に反映させるのである。淡ドットについてのオン・オフを決定した処理済みの画素PPに対して、周辺のどの画素にどの程度の重み付けで、この誤差を配分するかを、図16に例示した。オン・オフを決定した画素PPに対して、キャリッジ30の走査方向で数画素、および用紙Pの搬送方向後ろ側の隣接する数画素に対して、濃度誤差が所定の重み(1/4,1/8、1/16)を付けて配分される。
【0052】
補正データDCを求めた後、濃ドットをオン(シアンインクC1によるドット形成)としたか否かを判断し(ステップS138)、濃ドットを形成していない場合には、濃度の低いドット、即ちライトシアンインクC2によるドット(以下、淡ドットと呼ぶ)のオン・オフを決定する処理を行なう(ステップS140)。淡ドットのオン・オフを決定する処理について、図17に示した淡ドット形成判断処理ルーチンに拠って説明する。淡ドットのオン・オフを決定する処理では、ライトシアンインクC2によるドットの形成は、この例では、誤差拡散法を適用し、誤差拡散の考え方で補正した階調データDCが淡ドット用の閾値Dref2より大きいか否かの判断を行なう(ステップS144)。この閾値Dref2は、着目した画素に濃度の低い淡インクによるドットを形成するか否かの判定値であって、本実施例では、固定値127とした。この閾値Dref2を、補正済みのデータDCに応じて可変される値として設定することも可能である。例えば、閾値Dref2を、判断の対象である補正データDCの関数とし、補正データDCの最小値付近および最大値付近で、それぞれ閾値Dref2を最小値および最大値になるようにすれば、階調の下限または上限近くのドット形成の遅延や、領域の階調が急変した場合の走査方向に一定の範囲で生じるドット形成の乱れ(いわゆる尾引き)などを抑制することができる。
【0053】
補正データDCが閾値Dref2より大きければ淡ドットをオンすると判断し、結果値RV(淡ドット評価値)を演算する(ステップS146)。結果値RVは、ここでは、値122を基準値とし、補正データDCにより補正される値としたが、固定値とすることも可能である。他方、補正データDCが閾値Dref2以下と判断された場合には、淡ドットをオフにすると判断し、結果値RVに値0を算入する処理を行なう(ステップS148)。
【0054】
こうして淡ドットのオン・オフと結果値RVの演算とを行なった後(図12、ステップS140)、次に誤差計算を行なう(ステップS150)。誤差計算は、補正データDCから結果値RVを減算することにより求める。濃淡いずれのドットも形成されなかった場合には結果値RVは値0に設定されているから、誤差ERRには、補正値DCが算入される。即ち、その画素において実現されるべき濃度が全く得られなかったので、その濃度が誤差として計算されるのである。他方、濃ドットもしくは淡ドットが形成された場合には、各ドットに対応した結果値RVが代入されているから、判断の元になったデータDCとの差分が、誤差ERRとなる。
【0055】
次に、誤差拡散の処理を行なう(ステップS160)。ステップS150で得られた誤差に対して所定の重み(図16参照)を付け、処理を行なっている画素の周辺画素に、この誤差を拡散する。以上の処理の後、次の画素に移動して、上述したステップS100以下の処理を繰り返す。
【0056】
こうして淡ドットと濃ドットによる記録が行なわれることになるが、この様子をシアンインクC1とライトシアンインクC2とについて模式的に示したのが、図18である。入力された階調データが低い領域(実施例では、階調データが0/256〜63/256の領域)では、図18(a),(b)に示すように、ライトシアンインクC2によるドットだけが形成され、かつ階調データが高くなるにつれて、所定の領域内に存在する淡ドットの割合は増加して行く。
【0057】
階調データが所定値を越える領域(実施例では、64/256以上の領域)では、図18(c)に示すように、淡ドットの割合も増加するが濃ドットの記録も開始され、徐々に増加する。更に、階調データが高い領域(実施例では95/256以上の領域)では、図18(d)および図18(e)に示すように、濃ドットは増加し、淡ドットの割合は減少して行く。
【0058】
階調データが更に高い領域(実施例では191/256以上の領域)となると、淡ドットの形成はなされなくなり、図18(f)および図18(g)に示すように、濃ドットだけが形成される。階調データが最大となれば、図18(h)に示すように、濃ドットによる記録率が100パーセントとなり、用紙Pの全面が濃度の高いインク(シアンインクC1)により印刷されることになる。
【0059】
以上説明したように本実施例の濃淡インクを用いたプリンタ20は、染料濃度が約4倍異なる2種類のインクを用いて画像の記録を行なうから、特に階調の低い領域での粒状感の解消を中心として、印字品質が向上する。しかも図14に示したように、濃度の低いインク(図14ではライトシアンインクC2)による淡ドットの記録率が最大となる階調データ以下の領域から濃度の高いインク(図14ではシアンインクC1)による濃ドットの形成を開始しているので、淡ドットによる記録から濃ドットによる記録へのつなぎ目における混色が極めてスムースであり、印刷の品質が極めて高いという特徴を有する。
【0060】
更に、濃インクによるドットの形成を淡インクの記録率が最大となる階調データ以下の領域から開始しているので、淡インクについては、その記録率の最大を60パーセント程度にすることができる。この結果、階調が低い領域で淡インクによるベタ塗りの状態が生じることがなく、この近傍の階調で疑似輪郭が生じると言ったことがない。また、濃インクによるドットの分布の自由度が高く、見た目に違和感のない綺麗な分布とすることができる。この結果、濃度の高いインクと低いインクとが混じり始める階調近傍の表現が極めて自然なものとなっている。
【0061】
また、淡インクの記録率が最大となる階調より大きな領域では、淡インクの記録率を急速に低下している。従って、階調が大きくなるにつれて、淡インクのドットは濃インクのドットに置き換えられることになり、同一の階調を表現するのに必要なインクのドット数、即ち吐出量は低減され、全体としてインクの使用量を低減することができる。淡インクの記録率を急速に低下する結果、淡インクの記録率は、濃インクの記録率が100パーセント(入力データ255)に達するかなり以前でほぼ0となっている。したがって、画像の階調が濃い領域を印刷する際、無駄に淡インクを使用することがないばかりか、全体としての吐出インク量を低減することができるので、用紙に対する単位面積当たりのインク量の制限という面からも好ましい。
【0062】
なお、階調データの大きさと淡インクおよび濃インクによる記録率との関係は、図14に限定されるものではなく、例えば図19に直線Jc1,Jc2として示したように、濃インクによるドットの形成が開始される階調データを上記実施例よりもかなり低い値とした特性や、同図に破線Bc1,Bc2として示したように、淡インクによる記録率がほぼ0まで低下する階調データの値を、上記実施例よりもかなり大きな値とした特性を採用することも可能である。また、図20に示したように、淡インクの記録率が最大値となる階調データ以上の領域における淡インクの記録率を極めて大きな割合で低減する特性とすることも可能である。
【0063】
また、本実施例では、黒色インクのカートリッジとカラーインク用のカートリッジ70とを別体にしているので、通常文字の印刷に多用される黒色インクの消尽とその交換時期に併せてカラーインク用カートリッジ70まで交換しなければならないと言うことがない。カラーインク用カートリッジ70におけるカラーインクの配列は、同色(シアンまたはマゼンタ)で濃度の異なるインクを隣接しており、濃度の高いインクから低いインクまでの物理的な距離が、インク毎に同一となっている。したがって、濃淡両方のインクが印字される場合のドット位置の制御を正確に行なうことができる。また、本実施例では、用紙Pの搬送方向に沿って多数のノズルを用意しているので、全体として高速の印刷が可能となっている。
【0064】
以上本発明の一実施例について説明したが、本発明はこの様な実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、濃度の異なる三種類以上のインクを用いることも可能である。この場合は、インクの染料濃度の比を、等比級数的(1:n:2×n・・)としてもよいし、累乗的な関係(1:n2 :n4 ・・)としてもよい。なお、ここでn=2,3・・・である。
【0065】
また、本実施例では、シアンとマゼンタについてのみ濃度の異なる2種類のインクを用意したが、イエロやブラックについても濃度の異なるインクを組み合わせて用いることも差し支えない。インクは、CMYKの組合せに限定されるものではなく、他の組合せに適用しても差し支えないし、金や銀等の特色について濃度の異なる2種類以上のインクを用いることも可能である。
【0066】
なお、本実施例では、濃淡のドットを制御するプログラムは、プリンタ20側ではなくコンピュータ90のプリンタドライバ96側に用意したが、プリンタ20内に用意することも可能である。例えば、コンピュータ90からは、ポストスクリプトなどの言語により印刷する画像情報が送られてくる場合には、プリンタ20側にハーフトーンモジュール99などを持つことになる。また、これらの機能を実現するソフトウェアプログラムは、本実施例では、コンピュータ90内のハードディスク等に記憶されており、コンピュータ90が起動する際にプリンタドライバの形態でオペレーティングシステムに組み込まれるが、フロッピディスクやCD−ROM等の携帯型記憶媒体(可搬型記憶媒体)に格納され、携帯型記憶媒体からコンピュータシステムのメインメモリまたは外部記憶装置に転送されるものとすることも可能である。また、コンピュータ90からプリンタ20の内部に転送して利用する形態とすることも可能である。なお、通信回線を介して、これのソフトウェアプログラムを提供する装置を設け、上記ハーフトーンモジュールの処理内容を、通信回線を介して、このコンピュータやプリンタ20に転送して利用する形態とすることもできる。
【0067】
次に、本発明の第二の実施の態様について説明する。第二実施例のプリンタ200は、第一実施例のプリンタ20と同一のハードウェア構成を有し、コンピュータ90内のハーフトーンモジュール99における処理のみが異なる。即ち、ハーフトーンモジュール内での処理のうち、原画像の画素の階調データから濃淡インクの記録率を求める際、第一実施例では図14に示した関係を参照したのに対して、本実施例では、図21に示したグラフを参照するのである。即ち、この実施例では、図21(A),(B)に示すように、淡インクのドットの記録率と濃インクのドットの記録率を、ハーフトーンモジュール99が現在処理している色のインク、たとえばシアンインクの階調データのみならず、着目している画素の他の色のインク、ここではマゼンタインクの階調データによっても異なるものとしている。具体的には、シアンインクについて言うと、着目している画素に対応して吐出すべきマゼンタインクの量が多い場合には、シアンインクのうちのライトシアンインクC2の記録率を全体に低下させ、その分シアンインクC1の記録率を高めている。同様に、図22(A),(B)に示したように、マゼンタインクについても、着目している画素に対応して吐出すべきシアンインクの量が多い場合には、マゼンタインクのうちのライトマゼンタインクM2の記録率を全体に低下させ、その分マゼンタインクM1の記録率を高めている。
【0068】
以上説明した実施例では、第一実施例同様、染料濃度が異なる2種類のインクを用いて画像の記録を行ない、特に、濃度の低いインク(図14ではライトシアンインクC2)による淡ドットの記録率が最大となる階調データ以下の領域から濃度の高いインク(図14ではシアンインクC1)による濃ドットの形成を開始しているので、淡ドットによる記録から濃ドットによる記録へのつなぎ目における混色が極めてスムースであり、印刷の品質が極めて高いという特徴を有する。本実施例では、同じ画素についての他の色のインク濃度が高いほど、濃度の低いインク(C2またはM2)の記録率を低減し、その分を濃度の高いインク(C1またはM1)に振り替えているが、他の色のインクのにじみがあるから、単色の場合と比べて粒状化が目立つことはない。
【0069】
また、本実施例では、第一実施例と同様、濃インクによるドットの形成を淡インクの記録率が最大となる階調データ以下の領域から開始しているが、この実施例では、淡インクによるドットの発生限界を早め、淡インクについては、いつまでもドットを発生させず、濃インクのドットの発生を早めている。この場合も、濃度の高いインクと低いインクとが混じり始める階調近傍の表現の自然さを損なうことがない。
【0070】
この結果、着目している画素に対応した位置に記録されるシアンインクまたはマゼンタインクの記録率は、同じ画素に対応して記録されるマゼンタインクまたはシアンインクの記録率が高い場合には、濃度の低いインク(C2またはM2)を濃度の高いインク(C1またはM1)に置き換えられるので、画質を低下させることなく、単位面積当たりに吐出される全インク量を低減することができる。従って、用紙毎に決められている単位面積当たりに吐出可能なインク量の制限(いわゆるインクデューティ)に対して十分な余裕をもって、各色インクを吐出することができる。この結果、用紙がインクによって膨潤したり、インクデューティの制限から不自然な色になったりすることがない。
【0071】
なお、上記の第二の実施例では、着目している画素について、その色相を表現するために必要なシアンの濃度(階調データ)、マゼンタの濃度(階調データ)、イエロの濃度(階調データ)をまず求めてから、次にこれらの相関により、濃淡インクによるドットの記録率を定めるものとして説明したが、プリントドライバの内部で、着目している画素のRGBデータから、直接各色の濃淡インクによるドットの記録率を求めるものとすることもできる。即ち、図23に示したように、プリントドライバ296の内部に、ラスタライザ297、色補正兼ハーフトーンモジュール299、ルックアップテーブル300を設け、ラスタライザ297によって画素単位のRGBデータを得た後、そのRGBデータに基づいてルックアップテーブルを参照することにより、直接シアン,マゼンタについての濃淡インクの記録率とイエロインクについての記録率を求める構成とすることもできる。図24(A),(B)に、着目している画素のRGBデータから直接シアンインクの記録率を求めるルックアップテーブルの一例を示した。
【0072】
この構成例では、RGBデータから直接各色インクの記録率を求めることができるので、構成を簡略化することができるという利点がある。なお、上記の第二実施例及びその変形例では、マゼンタ(またはシアン)の濃度が高いほど、シアン(またはマゼンタ)についての淡インクのドットの記録率を低くして、濃インクの記録率を高めるようにしているが、更にイエロの濃度によっても、濃淡インクの記録率を異ならせるものとすることも可能である。また、着目している画素についてシアン,マゼンタ,イエロのインクの記録率がいずれもゼロでない場合には、三色をブラックインクに置き換えて印刷するものとし、ブラックインクの濃度に応じて、ライトシアンインクC2やライトマゼンタインクM2の記録率を低減し、シアンインクC1やマゼンタインクM1の記録率を高めるものとしても良い。
【0073】
上述したいくつかの実施例では、ライトシアンインクC2,ライトマゼンタインクM2の記録率は、着目している画素に対応した位置のマゼンタ濃度,シアン濃度により、全体に低くするものとしているが、特にこうした関係に限られるものではない。即ち、着目している画素に対応した位置の他のインクの濃度に応じて、自由に淡インクのドット記録率、濃インクのドット記録率を定めることができる。たとえば、インクデューティの制限に該当しないよう複数のインクが吐出される場合には、淡インクの記録率を低くしたり、シアン,マゼンタ,イエロが存在する画素についてこれをブラックに置き換える際、濃インクを減らして淡インクを一時的に増加し、つなぎ目の粒状感を目立たなくする等の対応をとることができる。
【0074】
また、上述した実施例では、濃淡いずれのインクの吐出も、ピエゾ素子PEを用い、ピエゾ素子PEに所定時間幅の電圧を印可することにより行なっているが、この他のインク吐出方式を採用することも容易である。実用化されているインク吐出方式としては、大まかに分けると、連続したインク噴流からインク粒子を分離して吐出する方式と、上述した実施例でも採用された方式であるオンデマンド方式に大別される。前者には、荷電変調によりインクの噴流から液滴を分裂させる荷電変調方式、インクの噴流から大径粒子が分裂する際に生じる微少なサテライト粒子を印字に利用するマイクロドット方式などが知られている。これらの方式も、複数種類の濃度のインクを利用した本発明の印刷装置に適用可能である。
【0075】
また、オンデマンド方式は、ドット単位でインク粒子が必要となったとき、インク粒子を生成するものであり、上述した実施例で採用したピエゾ素子を用いた方式の他、図25(A)ないし(E)に示すように、インクのノズルNZ近傍に発熱体HTを設け、インクを加熱することでバブルBUを発生させ、その圧力によりインク粒子IQを吐出する方式などが知られている。これらのオンデマンド方式のインク吐出方式も、複数種類の濃度のインクを利用する本発明の印刷装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
20…プリンタ
22…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
25…ジエチレングリコール
26…プラテン
28…印字ヘッド
30…キャリッジ
31…仕切板
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置検出センサ
40…制御回路
41…CPU
43…ROM
44…RAM
50…I/F専用回路
52…ヘッド駆動回路
54…モータ駆動回路
56…コネクタ
61〜66…インク吐出用ヘッド
68…インク通路
70…カラーインク用カートリッジ
71…導入管
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
93…CRTディスプレイ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…ラスタライザ
98…色補正モジュール
99…ハーフトーンモジュール
P…用紙
PE…ピエゾ素子
n…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、該濃淡2種類以上のインクのドットの分布により多階調の画像を記録可能な印刷装置であって、
印刷すべき画像の階調信号を入力する入力手段と、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号で、高濃度のインクによるドットが出現する特性に基づいて、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの記録密度を求め、前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なうドット生成手段と
を備えた濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項2】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、該濃淡2種類以上のインクのドットの分布により多階調の画像を記録可能な印刷装置であって、
印刷すべき画像の階調信号を入力する入力手段と、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも高い階調信号では、低濃度のインクによるドットの記録密度が急峻に低減する特性に基づいて、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの記録密度を求め、前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なうドット生成手段と
を備えた濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の濃淡インクを用いた印刷装置であって、
前記ドット生成手段は、前記入力した階調信号から前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの記録密度を与えるテーブルを有する濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項4】
濃淡インクは2種類のインクからなり、低濃度インクの染料濃度は、高濃度インクの染料濃度の略1/4である請求項1または請求項2記載の濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項5】
前記ヘッドは、色相の異なる複数のインクについて、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドであり、前記ドット生成手段は、色相の異なる少なくとも2種類のインクの各々について、前記各ドットの記録密度を求める処理を行なう各色ドット生成手段を備えた請求項1または請求項2記載の濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項6】
請求項5記載の印刷装置であって、
色相の異なる複数のインクが、シアンおよびマゼンタのインクを含み、
前記各色ドット生成手段は、シアンおよびマゼンタについて前記処理を行なう手段である印刷装置。
【請求項7】
各色ドット生成手段は、対応する画素に吐出される他の色相のインクのデータに関連付けて、前記ドットの記録密度を決定する請求項5記載の印刷装置。
【請求項8】
各色ドット生成手段は、対応する画素に吐出される他の色相インクの濃度が高いほど、前記低濃度インクによるドットの記録密度を低く補正する補正手段を備えた請求項5記載の印刷装置。
【請求項9】
請求項5記載の印刷装置であって、
前記各色ドット生成手段は、原画像の持つ色相のデータから色相の異なる複数のインクについての濃淡ドットの記録率を直接求めるルックアップテーブルを有する印刷装置。
【請求項10】
前記ヘッドは、インク通路に設けられた電歪素子への電圧の印加によりインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた請求項1または請求項2記載の濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項11】
前記ヘッドは、インク通路に設けられた発熱体への通電により発生する気泡により該インク通路のインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた請求項1または請求項2記載の濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項12】
前記ヘッドには、各色および各濃度のインク毎に、前記インク粒子の吐出用ノズルが、印刷される用紙の搬送方向に沿って複数個配列された請求項10または請求項11記載の印刷装置。
【請求項13】
請求項1または請求項2記載の印刷装置に用いられるインクカートリッジであって、前記濃度の異なる濃淡2種以上のカラーインクを、黒色インクとは別体の容器に収納してなるインクカートリッジ。
【請求項14】
請求項1または請求項2記載の印刷装置に用いられるインクカートリッジであって、色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクを、互いに隣接する位置に配設してなるインクカートリッジ。
【請求項15】
請求項14記載のインクカートリッジであって、前記濃度の異なる濃淡2種以上のインクが、一端から順に、シアンインク、該シアンインクより染料濃度の低いインク、マゼンタインク、該マゼンタインクより染料濃度の低いインク、イエロインクであるインクカートリッジ。
【請求項16】
異なる色相のインクにより形成されるドットの分布密度を制御して印刷を行なう印刷装置であって、
色相の異なる複数のインクが吐出可能であり、該複数のインクのうちの少なくとも一つについては、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドと、
印刷すべき画像の階調信号を入力する入力手段と、
該入力した階調信号に基づいて、前記色相の異なる複数のインクの各ドットの記録密度を求めると共に、前記濃淡2種類以上のインクのうちの淡インクについては、対応する画素に吐出される他の色相のインクの濃度に関連付けて、ドットの密度を決定するドット頻度決定手段と、
前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、前記色相の異なる複数のインク及び前記濃淡2種類以上のインクのドットを被記録物上に記録するドット記録手段と
を備えた印刷装置。
【請求項17】
前記ドット頻度決定手段は、前記関連付けとして、対応する画素に吐出される他の色相インクの濃度が高いほど、前記低濃度インクによるドットの記録密度を低くする関係とし、該関係により低濃度インクによるドットの記録密度を補正する補正手段を備えた請求項16記載の印刷装置。
【請求項18】
請求項16記載の印刷装置であって、
前記ドット頻度決定手段は、原画像の持つ色相のデータから色相の異なる複数のインクについての濃淡ドットの記録率を直接求めるルックアップテーブルを有する印刷装置。
【請求項19】
前記ヘッドは、インク通路に設けられた電歪素子への電圧の印加によりインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた請求項16記載の濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項20】
前記ヘッドは、インク通路に設けられた発熱体への通電により発生する気泡により該インク通路のインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた請求項16記載の濃淡インクを用いた印刷装置。
【請求項21】
前記ヘッドには、各色および各濃度のインク毎に、前記インク粒子の吐出用ノズルが、印刷される用紙の搬送方向に沿って複数個配列された請求項19記載の印刷装置。
【請求項22】
前記ヘッドには、各色および各濃度のインク毎に、前記インク粒子の吐出用ノズルが、印刷される用紙の搬送方向に沿って複数個配列された請求項20記載の印刷装置。
【請求項23】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、該濃淡2種類以上のインクのドットの分布により多階調の画像を記録可能な印刷装置に用いられるインクカートリッジであって、
前記印刷装置は、低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号で、高濃度のインクによるドットが出現する特性に基づいて、入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの記録密度を求め、前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なうよう前記インクカートリッジからのインクの吐出量を制御するものであり、
前記インクカートリッジは、前記濃度の異なる濃淡2種以上のカラーインクを、黒色インクとは別体の容器に収納してなるインクカートリッジ。
【請求項24】
請求項23記載のインクカートリッジであって、色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクを、互いに隣接する位置に配設してなるインクカートリッジ。
【請求項25】
請求項24記載のインクカートリッジであって、前記濃度の異なる濃淡2種以上のインクが、一端から順に、シアンインク、該シアンインクより染料濃度の低いインク、マゼンタインク、該マゼンタインクより染料濃度の低いインク、イエロインクであるインクカートリッジ。
【請求項26】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、該濃淡2種類以上のインクのドットの分布により多階調の画像を記録可能な印刷装置に用いられるインクカートリッジであって、
前記印刷装置は、低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも高い階調信号では、低濃度のインクによるドットの記録密度が急峻に低減する特性に基づいて、入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの記録密度を求め、前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なうよう前記インクカートリッジからのインクの吐出量を制御するものであり、
前記インクカートリッジは、色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクを、互いに隣接する位置に配設してなるインクカートリッジ。
【請求項27】
請求項26記載のインクカートリッジであって、前記濃度の異なる濃淡2種以上のインクが、一端から順に、シアンインク、該シアンインクより染料濃度の低いインク、マゼンタインク、該マゼンタインクより染料濃度の低いインク、イエロインクであるインクカートリッジ。
【請求項28】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、印刷しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を記録する方法であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号の範囲から、高濃度のインクによるドットが出現する特性を記憶し、
印刷すべき画像の階調信号を入力し、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクのドットの有無を各々決定し、
該決定されたドットの有無に従って前記ヘッドからのインクの吐出を制御し、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無による階調表現を行なう
濃淡インクを用いた画像記録方法。
【請求項29】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを備え、印刷しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を記録する方法であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも高い階調信号では、低濃度のインクによるドットの記録密度が急峻に低減する特性を記憶し、
印刷すべき画像の階調信号を入力し、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクの各ドットの有無を決定し、
該決定されたドットの有無に従って前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、該濃淡2種類以上のインクのドットの有無により階調表現を行なう
濃淡インクを用いた画像記録方法。
【請求項30】
異なる色相のインクにより形成されるドットの分布密度を制御して画像の記録を行なう画像記録方法であって、
色相の異なる複数のインクが吐出可能であり、該複数のインクのうちの少なくとも一つについては、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドを用い、
印刷すべき画像の階調信号を入力し、
該入力した階調信号に基づいて、前記色相の異なる複数のインクの各ドットの記録密度を求めると共に、前記濃淡2種類以上のインクのうちの淡インクについては、対応する画素に吐出される他の色相のインクの濃度に関連付けて、ドットの密度を決定し、
前記ヘッドからのインクの吐出を制御して、前記色相の異なる複数のインク及び前記濃淡2種類以上のインクのドットを被記録物上に記録する
濃淡インクを用いた画像記録方法。
【請求項31】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを駆動し、印刷しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を形成するためのプログラムの少なくとも一部をコンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも低い階調信号の範囲から、高濃度のインクによるドットが出現する特性を記憶したテーブルと、
印刷すべき画像の階調信号を入力する第1のプログラムと、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクのドットの有無を各々決定する第2のプログラムと
を記録した記録媒体。
【請求項32】
濃度の異なる濃淡2種類以上のインクをそれぞれ吐出可能なヘッドを駆動し、印刷しようとする画像の階調信号に基づいて該濃淡2種類以上のインクのドットの分布を制御して多階調の画像を形成するためのプログラムの少なくとも一部をコンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体であって、
低濃度のインクによるドットの記録密度が最大値になる階調信号よりも高い階調信号では、低濃度のインクによるドットの記録密度が急峻に低減する特性を記憶したテーブルと、
印刷すべき画像の階調信号を入力する第1のプログラムと、
前記記憶した特性に従って、前記入力した階調信号から、前記濃淡2種類以上のインクのドットの有無を各々決定する第2のプログラムと
を記録した記録媒体。
【請求項33】
色相の異なる複数のインクが吐出可能であり、該複数のインクのうちの少なくとも一つについては、濃淡2種類以上のインクを吐出可能なヘッドを駆動し、該異なる色相のインクにより形成されるドットの分布密度を制御して画像の記録を行なうプログラムの少なくとも一部をコンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体であって、
印刷すべき画像の階調信号を入力する第1のプログラムと、
該入力した階調信号に基づいて、前記色相の異なる複数のインクの各ドットの記録密度を求めると共に、前記濃淡2種類以上のインクのうちの淡インクについては、対応する画素に吐出される他の色相のインクの濃度に関連付けて、ドットの密度を決定する第2のプログラムと
該決定された各ドットの密度に従って、前記ヘッドを制御する信号を出力する第3のプログラム手段と
を記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−71620(P2012−71620A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6572(P2012−6572)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2011−158176(P2011−158176)の分割
【原出願日】平成9年6月27日(1997.6.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】