説明

濾過装置

本発明は、フィルター室で、清浄室と非清浄室とを分離する少なくとも1つのフィルター本体を有するフィルター装置(2)と、清浄燃料や外部媒体を用いてフィルター本体を逆洗するための逆洗装置と、清浄室と連絡するように接続されるシリンダ室に、ストローク調整可能に配置されるピストンを有する補償装置(4)と、を備える、内燃機関用の、特に、例えば船舶用ディーゼル機関などの大型ピストンエンジン用の液体燃料を濾過するための濾過装置(1)に関するものである。ハウジング(5)が一体型の本体(27)の中にフィルター室及びシリンダ室を有している場合には、コンパクト且つ安価な設計を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の、特に、例えば船舶用ディーゼル機関やコジェネレーション装置などの大型ピストンエンジン用の液体燃料を濾過するための濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型エンジンは、低品質の高粘性燃料で運転されることが多い。かかる低品質の燃料は、燃料が個々のピストンエンジンの燃焼室に到達する前に適切な濾過装置によって濾過して取り除かれなければならない、比較的粗い不純物及びいわゆる「cat fines(20μmより小さい粒度を有する触媒残渣)」を含有することができる。このために、前述のタイプの濾過装置を用いることができる。かかる濾過装置は、通常、フィルター室において清浄室と非清浄室とを分離するフィルター本体を有するフィルター装置を備えている。濾過作業の間に、不純物は、フィルター本体の非清浄側に蓄積することができ、その結果、徐々にフィルター本体を目詰まりさせる。これを解消するために、例えば清浄燃料又は圧縮空気などの外部媒体を用いてフィルター本体を逆洗することができる逆洗装置が知られている。濾過作業の間にかかる逆洗を実施することができるようにするために、例えば、清浄室と連絡するように接続されるシリンダ室に、ストローク調整可能に配置されるピストンを有する補償装置をさらに設けることができる。逆洗の間、燃料は清浄側から非清浄側へ流れることができ、このことが清浄側に圧力損失を招く可能性がある。かかる圧力損失を減少させ又は回避するために、補償装置のピストンは、清浄側の燃料をシリンダ室から清浄室へ押し出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述のタイプの濾過装置のための、特に比較的安価な方法で実施できることを特徴とし且つ特に比較的コンパクトな設計である改善された実施形態、を提案するという課題に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明に係る独立クレームの内容によって解決される。有利な実施形態は従属クレームの内容である。
【0005】
本発明は、濾過装置のハウジングを、フィルター室及びシリンダ室を有する一体型の本体とする、という一般観念に基づいている。1つの部品として又は1つの部品から作られたかかる本体は、フィルター室を含むハウジングとシリンダ室を含むハウジングとを、別々の2つのハウジング部を製造するよりも安価な1つの共通の構成部分として、組み合わせる。さらに、かかる濾過装置の場合に生じる可能性のある高い作業圧力に起因する費用の増加を伴う、別々のハウジング部の組み立てが省かれる。さらに、基本的にかかる共通のハウジングは、フィルター室及びシリンダ室を加熱するために、1箇所だけを加熱すればよいという点は特に有利である。このことは特に本体が金属製の場合に当て嵌まり、それによって、本体へ移る熱は本体全体に自動的に分布する。ハウジングの加熱は、比較的高粘性を有する燃料として重油が用いられる場合には、特に有利である。低い雰囲気温度で、かかる低質燃料は、濾過作業を台無しにするほどに、比較的粘性を増す可能性がある。共通のハウジングによって、別個の清浄装置の、必要とされる加熱が省かれる。濾過装置のフィルター室及びシリンダ室を加熱することによって、一方においては、濾過装置の無故障運転が確保され、他方においては、シリンダ室の中に蓄えられている濾過された燃料を直ちに圧力補正に供することができる。
【0006】
好ましい実施形態によれば、ピストンは、シリンダ室において貯蔵室から不純物室を分離することができる。不純物室は、非清浄室と、又は、非清浄室に不純物流路が配置された逆洗装置の不純物流路と、連絡するように接続される。それに対し、貯蔵室は、清浄室と連絡するように接続され、且つ、清浄燃料を貯蔵する役割を果たす。このように、一方でピストンは、清浄室における圧力損失を抑えるために、貯蔵室から清浄室へ燃料を供給するのに用いることができる。他方、ピストンは同時に、不純物を非清浄室又は不純物流路から吸い出し、且つ、上記不純物を不純物室へ吸い込むのに用いることができる。これによって、ピストンは二重の機能を担い、それによって、例えば、不純物流路に負圧を発生させるための、又は、不純物を非清浄室から吸い出すための、付加的な吸引装置を排除することができる。
【0007】
他の有利な実施形態によれば、本体は加熱手段入口及び加熱手段出口を備えることができる。加熱手段入口と加熱手段出口とを、ハウジングの内側を走る加熱手段通路によって、互いに連絡するように接続することが可能である。このように、非常に簡単な方法で、加熱装置をハウジングと接続することができる。内部の加熱手段通路を通って、加熱装置によって供給された熱を、特に有利な態様で、濾過装置が運転されている間及び好ましくは運転されていない間も加熱されるべき、ハウジングにおける位置又は領域へ供給することができる。例えば、その結果、フィルター室及びシリンダ室を、好ましい態様で、加熱することができる。加熱手段として適しているのは、例えば、熱媒油などの適切な液体、又は、蒸気などの気体である。
【0008】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、下位クレーム、図面、及び、図面に基づく形態の関連した説明から生じる。
【0009】
上述の特徴及び未だ説明されていない以下の特徴を、それぞれ言及される組み合わせにおいてのみならず、他の組合せ又は単体においても、本発明の文脈から逸脱することなく、用いることができることが理解されるであろう。
【0010】
本発明の好ましい代表的な実施形態は、図面で説明されるとともに、下記の記述においてさらに詳細に説明される。図面及び下記の記述においては、同一の参照番号は、同一の、又は類似の、又は機能的に同一の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】濾過装置の側面図を模式的に示す。
【図2】90°回転し且つ図1のII方向から見た、さらなる濾過装置の側面図を模式的に示す。
【図3】図1のIII線による、濾過装置の断面図を模式的に示す。
【図4】図2のIV線による、濾過装置の断面図を模式的に示す。
【図5】補償装置の辺りにおける濾過装置の断面図を模式的に示す。
【図6】図3と同じ断面図を反対方向から見た断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図6に示すように、液体燃料を濾過することができる濾過装置1は、フィルター装置2、逆洗装置3、補償装置4及びハウジング5を備えている。濾過装置1は、内燃機関、特に大型ピストンエンジン又は大型エンジンに用いられる。なぜなら、それらは低品質の燃料で運転されることが多いからである。例えば、船舶用ディーゼル機関での使用が考えられる。同様に、発電機又はコジェネレーション装置での使用も考え得る。「内燃機関」という用語は、あらゆるタイプのピストンエンジン(レシプロピストンエンジン及びロータリーピストンエンジン)及びターボ機関を含んでいる。
【0013】
図3〜図6に示すように、フィルター装置2は、フィルター室7に配置される少なくとも1つのフィルター本体6を備えている。このフィルター室7では、フィルター本体6が清浄室9から非清浄室8を分離する。逆洗装置3はフィルター本体6を逆洗するのに役立ち、逆洗には、浄化され若しくは濾過された燃料又は外部媒体が用いられる。このため、図4に示すように、逆洗装置3は、非清浄室8に配置された不純物流路10を有している。不純物流路10は、非清浄側でフィルター本体6の表面に沿って延びるように、非清浄室8に位置するサクションパイプ11で形成されている。サクションパイプ11は、それぞれのフィルター本体6に面している側に、いずれの場合にも、それによって不純物吸引を実行できる、少なくとも1つのスロット形状の吸い込み口12を有している。不純物は、各々の吸い込み口12を通って、吸込流路10に入るとともに、吸込流路10を経由して排出されることが可能である。
【0014】
この例では、フィルター本体6は、筒状、特に円筒状をしている。フィルター本体6の長手方向の重心軸は、図3及び図4中の符号13で示される。この例では、サクションパイプ11は、フィルター本体6の軸方向の全高を超えて延びている。図3、図4及び図6に示す好ましい実施形態では、フィルター本体6は2層のシリンダーとして構成されており、これにより、上記2層のシリンダーは、内側シリンダー14及び外側シリンダー15を備えている。両シリンダーはフィルターのように作動し、それ故、それぞれがフィルター本体を形成する。一方、図5に示すように、フィルター本体6が1つのシリンダーしか有していない実施形態もまた可能である。図の実例では、シリンダー14,15を孔のあいた壁で示しているが、これが代表的な実施形態を示しているに過ぎないのは明らかである。特に、それぞれのシリンダー14,15は、その他の適切なフィルター構造を有することが可能である。例えば、シリンダー14,15を、エッジフィルターとして構成することができる。それらもまた、孔のあいたフォイル、特に孔のあいたエッジフォイルを備えることができる。同様に、襞のあるフィルター材料を用いることができる。
【0015】
ここに示す、2層のフィルター本体6で動作するフィルター装置2の場合、非清浄室8は、2つのシリンダー14,15の径方向の間に形成された環状室16を有する。ここで、この例では、フィルター本体6は、それによって環状室16が残りの非清浄室8と連絡する、上記環状室16の部位において、底に向かって開口している。それに対し、清浄室9は、内側シリンダー14の内側に形成された円柱状内側室17、及び、外側シリンダー15とハウジング壁19との径方向の間に形成された環状外側室18を有している。ハウジング壁19は、環状にフィルター室7を囲んでいる。内側室17は、フィルター本体6の軸端で2つのシリンダー14,15を相互に連結する円盤状の基部21に形成された少なくとも1つの軸開口部20を介して残りの清浄室9又は外側室18と連絡している。
【0016】
図5に示す実施形態では、前述の実施形態とは異なり、単一のシリンダーだけを有するフィルター本体6が用いられている。この実施形態では、清浄室9がフィルター本体6を環状に囲み、さらにフィルター本体6が非清浄室8を環状に囲んでいる。
【0017】
補償装置4は、シリンダ室23にストローク調整可能に配置されるピストン22を有している。ストローク調整は、ねじ駆動によって又は油圧式駆動、空圧駆動若しくは電気駆動の作業シリンダーによって実行できる。シリンダ室23は、清浄室9と連絡している。適切な、好ましくは一体型の接続路24を、図5に示す。図5に示すように、ピストン22は、シリンダ室23において、図5でピストン22の左に示される不純物室25を、図5でピストン22の右に示される貯蔵室26から分離する。貯蔵室26は、清浄燃料を貯蔵する役目を果たすとともに、例えば接続路24を介してフィルター装置2の清浄室9と連絡している。対照的に、不純物室25は、以下でより詳しく説明するように、不純物流路10と連絡している。
【0018】
ハウジング5は、一体形成された本体27を有しており、それ故に、1つの部品として又は1つの部品から作られている。例えば、本体27には、一体形成された鋳物が含まれる。本体27は金属製であることが好ましい。本体27は、フィルター室7及びシリンダ室23を有している。それ故に、本体27は、フィルター装置2の構成要素及び補償装置4の構成要素を収容する役目を果たす。特に、フィルター本体6及びピストン22は本体27に収容される。このことは、特に、濾過装置1のコンパクトな設計をもたらす。少なくとも軸方向において、それ故にフィルター本体6の長手方向と平行に、本体27及びそれ故に濾過装置1が比較的短く設計される。例えば図5に示すように、特に、接続路24もまた、本体27内部に一体形成される。
【0019】
本体27又はハウジング2は、非清浄側に燃料入口28を、また清浄側に燃料排出口29を備えている。燃料入口28には、入口フランジ30が装備されている。同様に、燃料排出口29には、対応する出口フランジ31が装備されている。上記フランジ30,31は、本体27に取り付けられているか、又は、本ケースのように、本体に一体形成されている。例えば、ねじ式接続又はクランプファスナーなどの他の接続方式もまた可能である。
【0020】
ハウジング5又は本体5はさらに、不純物流路10と連絡するように接続される第1不純物ポート32を備えている。さらに、本体27又はハウジング5には、不純物室25と連絡するように接続される第2不純物ポート33が設けられている。第1不純物ポート32は、本体27に一体形成されるのが好ましい。対照的に、第2不純物ポート33は、シリンダ室23を不純物室25に面している側で軸方向に閉じるカバー34に形成されている。ここで、上記カバー34は、ねじで本体27に固定されている。一方、仮にカバーの代わりに、基部がハウジング5又は本体27に一体形成されている場合には、かかるカバー34を無くすことができる。2つの不純物ポート32,33は、切り替え弁35によって制御される。切り替え弁35を作動させるために、作動装置36が設けられている。切り替え弁35は、3つのポート、すなわち、第1不純物ポート32に接続される第1ポート37、第2不純物ポート33に接続される第2ポート38、及び、取り除かれた不純物を集めるために、適切な不図示の接続管路を介して、同様に不図示の不純物容器と接続することが可能な第3ポート39を備えている。3つのポートを有する切り替え弁35に代わる手段として、各々2つのポートを有する2つの切り替え弁もまた可能である。第1接続管路40は、第1ポート37を第1不純物ポート32と接続する。第2接続管路41は、第2ポート38を第2不純物ポート33と接続する。第1スイッチ位置では、切り替え弁35が、第1ポート37と第2ポート38とを接続するとともに、第3ポート39を閉じる。したがって、第1スイッチ位置では、2つの不純物ポート32,33が、連絡するように互いに接続される。第2スイッチ位置では、切り替え弁35が、第1ポート37を閉じるとともに、第2ポート38と第3ポート39とを接続する。したがって、第2スイッチ位置では、第2不純物ポート33及び言及された不純物容器が、連絡するように互いに接続される。
【0021】
図5に示すように、補償装置4は、ピストン22のストロークを調整することができるねじ駆動機構42を有している。このため、ねじ駆動機構42は、シリンダ室23の長手方向の重心軸44と同軸方向に延びるねじ山の付いた心棒43を有している。図示の例では、ねじ山の付いた心棒43は、ねじ切り開口部45でピストン22を貫通するとともに、ここで回転自在に駆動される。このために、特に電動機47とギヤ装置48とを備えることが可能な回転駆動機構46が設けられている。さらに、ねじ駆動機構42は、ねじ山の付いた心棒43に平行に延び、且つ、ガイド開口部50で偏心してピストン22を貫通する少なくとも1つのガイドロッド49を有している。このように、ピストン22は、ねじ山の付いた心棒が回転した場合に、ねじ山の付いた心棒43とともに回転することができず、それによって、ピストン22の軸方向のストロークが強制される。シリンダ室23及びフィルター室7は、フィルター室7の長手方向の重心軸13がシリンダ室23の長手方向の重心軸44に対して直角に延びるように、本体27に配置されるのが好ましい。2つの長手方向の重心軸13,44は、交差するものではなく、ある距離を置いてすれ違うことが可能であることは明らかである。同様に、他の方向を、長手方向の軸13,44として実施することができる。例えば、それらは互いに平行に延びることも可能である。
【0022】
逆洗装置3は、濾過作業をできるだけ阻害しないように、フィルター本体6の周方向で制限される、周方向のセグメントと常に協働するのが有利である。フィルター本体6の表面又はシリンダー14,15の表面を、それらの全周囲に沿って逆洗することができるように、サクションパイプ11とフィルター本体6との間の相対運動が必要である。このために、ここに示す例では、ハウジング5内でフィルター本体6をフィルター本体6の長手方向の重心軸13の周りに回転自在に駆動することができる駆動機構51が設けられている。このために、フィルター本体6は、本体27に回転自在に取り付けられている。対応するピボット軸受は、図6では符号52で示される。回転駆動機構51は、例えば、駆動軸55を介してフィルター本体6を駆動する、電動機53及びギヤ装置54を有している。フィルター本体6の回転によって、フィルター本体6の又はシリンダー14,15の非清浄側の全表面を吸い込み口12に向けさせることができるように、サクションパイプ11は本体27に固定取り付けされている。これによって、不純物流路10は、逆洗するための2つのシリンダー14,15と協働することができる。一方、フィルター本体6をハウジング5内に起立した状態で配置するとともに、フィルター本体6の長手方向の重心軸13の周りで駆動し且つ上記サクションパイプを回転駆動機構51と適切に連結するように、サクションパイプ11を配置することも可能である。
【0023】
図6並びに図1及び図4に示すように、加熱手段出口56及び加熱手段入口57は、本体27又はハウジング5に形成されている。ハウジング5の内側では、図6において矢印で示す、ハウジング5の内側を延びる加熱手段通路58によって、加熱手段出口56と加熱手段入口57とが連絡するように互いに接続される。上記加熱手段通路58を形成するために、ハウジング5又は本体27は、フィルター室7と反対を向いた側に空洞59を有していて、かかる空洞は、本体27に挿入されるカバー60によって閉じられている。この例では、間仕切壁61は、上記カバー60に取り付けられ、且つ、カバー60から突き出ているとともに空洞59の内部に突出している。一方、間仕切壁61もまた、本体27に一体形成することができる。間仕切壁61は、当該間仕切壁61と、カバー60と向かい合った壁62との間に、間隔63が残り、それによって流れがカバー60から遠い方の間仕切壁61の先端を通り越し又は避けることができるような寸法に作られている。その結果、加熱手段通路58が間仕切壁61の周囲に広がる。加熱手段通路58は、加熱手段出口56と連絡するように接続される排出室64と、加熱手段入口57と連絡するように接続される供給室65と、を有し又は接続する。この例では、本体27に一体形成されたハウジング壁66によって、排出室64がシリンダ室23から分離されている。さらに、この例では、同様に本体27に一体形成された前述のハウジング壁62によって、供給室65がフィルター室7から分離されている。このことは結果的に、加熱手段通路58で運ばれる加熱手段と、各々のハウジング壁62又は66との間の集中的な熱伝達をそれぞれもたらす。このように、簡単な方法で、本体27を加熱することができる。さらに、運ばれた又は本体27に収容された燃料、及び、そこから濾過して取り除かれた不純物を加熱することができる。加熱手段出口56及び加熱手段入口57に接続されるヒーター回路は、例えば水蒸気などの気体、又は、例えば水若しくは熱媒油などの液体といった適切な加熱手段を用いて運転される。
【0024】
図5に示すように、シリンダ室23は、ねじで本体27に固定される、さらなるカバー又は基部67によって、貯蔵室26に面している側で軸方向に閉じられている。本体27又はハウジング5は、駆動機構51を支え、駆動軸55によって貫通され、且つ、この例では、ねじで本体27に固定されるカバー68によって、補償装置4と反対を向いた側で軸方向に閉じられている。このために、本体27には、適切なフランジ69が装備されている。さらに、図6は、図1に示す排出弁71によって制御することが可能な排出開口部70を示す。
【0025】
ここで述べられた濾過装置1は、次の通りに運転される。
【0026】
燃料入口28を通って、浄化されていない液体燃料が非清浄室8に到達する。清浄室9に到達するするために、燃料はフィルター本体6又はフィルター本体のシリンダー14,15を通過しなければならない。一方、清浄燃料は、清浄室9から貯蔵室26に到達する一方、燃料排出口29を経てハウジング5外に出る。フィルター本体6又はシリンダー14,15の逆洗を実施するために、不純物流路10に清浄室9に対する負圧が生成される。ここに示す例では、ピストン22の軸方向変位によって、上記負圧が実現される。その際に、ピストン22は、不純物室25の最小体積と貯蔵室26の最大体積とで特徴付けられる、図5に示す元の位置から起動する。ピストン22の軸方向変位によって、不純物室25の体積が増大し、それによって、そこでの圧力が低下する。切り替え弁35のその第1スイッチ位置への移動は、上記圧力差が不純物流路10に伝播されるという結果をもたらす。その結果、不純物は、シリンダー14,15の表面から吸い込み口12を通って非清浄側に吸い出される。同時に、燃料は、清浄側から濾過方向と反対方向に、要するに清浄側から非清浄側へ流れ続け、それによって所望の逆洗が実施される。逆洗された不純物は、不純物流路10を通って不純物室25に吸い込まれる。ピストン22のストローク調整は、同時に貯蔵室26の体積を減少させ、それによってその中に収容された濾過された燃料が、接続路24を介して清浄室9に到達する。これによって、一般的に逆洗に付随して起こる、清浄室9における圧力損失を、完全に又は少なくとも部分的に相殺することができる。特に、濾過作業を中断することなく続行することができる。逆洗工程が終わると、例えばフィルター本体6の十分な回転の後、切り替え弁35が第2スイッチ位置に移る。そして、ピストン22が図5に示す元の位置に戻される。たとえ増大する貯蔵室26が清浄室9からの清浄燃料で徐々に満たされていても、清浄側に大幅な圧力損失が生じないように、逆行する動きは比較的ゆっくり行われる。同時に、ピストン22をリセットすることによって、不純物室25に集められた大量の不純物が排出される。切り替え弁35の第2スイッチ位置によって、不純物が第3ポート39を通って不純物容器の方向に押し出される。
【0027】
ハウジング5又は本体27をヒーター回路と一体化することによって、粘性燃料の場合にも、また特に燃料から濾過して取り除かれた例えばタールなどの粘性不純物の場合にも、例えば、濾過装置1を適切に稼動させ且つ同時に特に粘性不純物を放出することが可能な、適切な温度を確保することができるように、補償装置4及びフィルター装置2を十分に加熱することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば船舶用ディーゼル機関などの特に大型ピストンエンジン用の液体燃料を濾過するための濾過装置であって、
フィルター室(7)で、清浄室(9)と非清浄室(8)とを分離する少なくとも1つのフィルター本体(6)を有するフィルター装置(2)と、
清浄燃料を用いて上記フィルター本体(6)を逆洗するための逆洗装置(3)と、
上記清浄室(9)と連絡するように接続されるシリンダ室(23)に、ストローク調整可能に配置されるピストン(22)を有する補償装置(4)と、
一体型の本体(27)の中に、上記フィルター室(7)及び上記シリンダ室(23)を有するハウジング(5)と、を備えている濾過装置。
【請求項2】
請求項1記載の濾過装置において、
上記ピストン(22)は、上記シリンダ室(23)において、上記清浄室(9)と連絡するように接続される、清浄燃料のための貯蔵室(26)から、上記非清浄室(8)と、又は、上記非清浄室(8)に配置された上記逆洗装置(3)の不純物流路(10)と、連絡するように接続される不純物室(25)を分離することを特徴とする濾過装置。
【請求項3】
請求項2記載の濾過装置において、
上記ハウジング(5)は、上記本体(27)の表面に、上記非清浄室(8)と又は上記不純物流路(10)と連絡するように接続される第1不純物ポート(32)を有していて、そこにおいてさらに、上記不純物室(25)と連絡するように接続される第2不純物ポート(33)が設けられていることを特徴とする濾過装置。
【請求項4】
請求項3記載の濾過装置において、
第1スイッチ位置では、上記第1不純物ポート(32)に接続されるその第1ポート(37)を、上記第2不純物ポート(33)に接続されるその第2ポート(38)と接続し、且つ、不純物タンクと接続することが可能なその第3ポート(39)を閉じるとともに、第2スイッチ位置では、上記第1ポート(37)を閉じ、且つ、上記第2ポート(38)を上記第3ポート(39)と接続する、3つのポートを有する切り替え弁(35)が設けられていることを特徴とする濾過装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記ハウジング(5)は、上記本体(27)の表面に、上記非清浄室(8)と連絡するように接続される入口(28)と、上記清浄室(9)と連絡するように接続される出口(29)と、を有していることを特徴とする濾過装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記ピストン(22)のストロークを調整するために、上記補償装置(4)は、ねじ切り開口部(45)で上記ピストン(22)を貫通する、中央のねじ山の付いた心棒(43)と、ガイド開口部(50)で上記ピストン(22)を貫通する、少なくとも1つの偏心したガイドロッド(49)と、を有するねじ駆動機構(42)を備えていることを特徴とする濾過装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記フィルター室(7)及び上記シリンダ室(23)は、上記フィルター室(7)の長手方向の重心軸(13)が上記シリンダ室(23)の長手方向の重心軸(44)に対して直角に走るように、上記本体(27)に配置されていることを特徴とする濾過装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記フィルター本体(6)は、駆動機構(51)によって、その長手方向の重心軸(13)の周りで回転自在に駆動されることが可能であり、且つ、上記本体(27)に回転自在に取り付けられていることを特徴とする濾過装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記フィルター本体(6)は、フィルタのように作用するシリンダーであり、
上記非清浄室(8)は円筒状室(16)を有していることを特徴とする濾過装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記フィルター本体(6)は、各々フィルタのように作用する内側シリンダー(14)及び外側シリンダー(15)を有しており、
上記非清浄室(8)は、上記シリンダー(14,15)の間に形成される環状室(16)を有しており、
上記清浄室(9)は、上記内側シリンダー(14)の内側に形成された円柱状内側室(17)と、上記外側シリンダー(15)とハウジング壁(19)との間に形成された環状外側室(18)と、を有していることを特徴とする濾過装置。
【請求項11】
請求項10記載の濾過装置において、
上記不純物流路(10)は、上記環状室(16)に配置されており、且つ、逆洗するための上記フィルター本体(6)の両シリンダー(14,15)と協働することを特徴とする濾過装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記本体(27)が金属部品であることをことを特徴とする濾過装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の濾過装置において、
上記ハウジング(5)は、その本体(27)に、当該ハウジング(5)の内側を走る加熱手段通路(58)によって、連絡するように互いに接続される、加熱手段出口(56)と加熱手段入口(57)とを有していることを特徴とする濾過装置。
【請求項14】
請求項13記載の濾過装置において、
上記加熱手段通路(58)は、上記加熱手段出口(56)と連絡するように接続される排出室(64)と、上記加熱手段入口(57)と連絡するように接続される供給室(65)と、を有していて、これらの室(64,65)の少なくとも1つが、ハウジング壁(62,66)によって、上記シリンダ室(23)及び/又は上記フィルター室(7)から分離されていることを特徴とする濾過装置。
【請求項15】
請求項14記載の濾過装置において、
上記排出室(64)は、流れが通り越すことが及び/又は避けることが可能な間仕切壁(61)によって、上記供給室(65)から分離されていることを特徴とする濾過装置。
【請求項16】
請求項15記載の濾過装置において、
上記間仕切壁(61)は、上記本体(27)に挿入されるカバー(60)に形成され、又は、上記本体(27)に一体形成されていることを特徴とする濾過装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−518114(P2012−518114A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549585(P2011−549585)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051841
【国際公開番号】WO2010/094646
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(506292974)マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26−46, D−70376 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】