説明

濾過運転方法

【課題】 安定した濾過性能を維持できる濾過運転方法の提供。
【解決手段】 少なくとも凝集槽における凝集処理工程後に、膜分離槽に浸漬された膜分離モジュールよる膜分離処理工程を有する濾過運転方法であり、前記凝集処理工程が、被処理液のCOD500〜1000ppmに対して、同等以上の量の凝集剤を添加し、攪拌機により、350〜500r/minで、5〜30分間攪拌しながら凝集処理する工程である、濾過運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分野の水処理に使用できる、浸漬型膜分離装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野の水処理において、凝集処理と膜分離処理を併用する方法が採用されている。凝集処理後に膜分離処理を行う方法は、凝集処理液に含まれるフロックにより、膜が閉塞され、濾過性能が低下するおそれもある。
【特許文献1】特開平11−333483号公報
【特許文献2】特開2001−129557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、凝集処理と膜分離処理を併用する濾過運転方法であり、膜分離処理の分離能力が高められた濾過運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、課題の解決手段として、
少なくとも凝集槽における凝集処理工程後に、膜分離槽に浸漬された膜分離モジュールよる膜分離処理工程を有する濾過運転方法であり、
前記凝集処理工程が、被処理液のCOD500〜1000ppmに対して、同等以上の量の凝集剤を添加し、攪拌機により、350〜500r/minで、5〜30分間攪拌しながら凝集処理する工程である、濾過運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の濾過運転方法によれば、安定した濾過性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1により、本発明の濾過運転方法を説明する。図1は、本発明の濾過運転方法に適した浸漬型膜分離装置の概念図である。図1中の丸で囲まれたPは、ポンプを示している。
【0007】
<浸漬型膜分離装置>
原水槽1は、原水ライン21により供給された原水で満たされており、内部にポンプが浸漬されている。原水槽1は、原水供給ライン22で凝集槽2に接続されている。
【0008】
凝集槽2は、所定量の凝集剤を添加するための凝集剤添加装置11、槽内を攪拌するための攪拌機12、槽内の被処理水のpHを調整するためのpH調整装置13を備えている。凝集槽2の内部にはポンプが浸漬されている。凝集槽2は、凝集処理水ライン23で膜分離槽3に接続されている。攪拌機12は、パドル型、プロペラ型等の攪拌羽根(攪拌翼)を有するものである。
【0009】
膜分離槽3内は、内部が仕切壁14により第1槽3aと第2槽3bとに分けられている。第1槽3aと第2槽3bの容積は、同程度であるか、第2槽3bの方が大きいことが好ましい。
【0010】
仕切壁14は、膜分離槽3の対向する壁面に両側面が固定されており、下面14aは膜分離槽3の底面から離れており、上面14bは満水状態のときに水面よりも下に位置するように設定されている。このため、第1槽3aと第2槽3bは、仕切壁14の上面(上端)14b側と下面(下端)14a側にて液の流通が可能なように連通されている。
【0011】
第1槽3aには、槽内を攪拌するための攪拌機16が備えられており、第2槽3b内には、膜分離モジュール15が吊り下げられた状態で浸漬されている。膜分離モジュール15としては、例えば、公知の中空糸膜モジュール(外圧型又は内圧型であるが、好ましくは外圧型)を用いることができる。
【0012】
膜分離モジュール15の直下の第2槽3bの底面には、散気装置17が設置されている。膜分離槽3の底面と一方の側面の境界は、図示するように傾斜面31となっている。攪拌機16は、パドル型、プロペラ型等の攪拌羽根(攪拌翼)を有するものである。
【0013】
膜分離槽3は、ポンプを備えた透過水ライン24で透過水槽4に接続され、散気装置17は、散気ライン26で空気供給源に接続されている。
【0014】
透過水槽4と膜分離槽3内の膜分離モジュール15の透過水出口は、ポンプを備えた逆圧洗浄ライン25で接続されている。
【0015】
膜分離槽3は、傾斜面31において汚泥引抜ライン27で汚泥貯留槽5に接続されている。汚泥引抜ライン27により、膜分離槽3の底面付近に溜まった汚泥を水とともに汚泥含有水として引き抜くことができる。
【0016】
汚泥貯留槽5内には、図示していない濾過手段(例えば、JIS規格で10メッシュ程度のポリエステルからなる不織布製の濾布が、ステンレス製の枠や籠等の支持体に固定されたもの)が設置されており、汚泥引抜ライン27から送られた汚泥含有水を汚泥と水に分離する(汚泥を脱水する)。汚泥貯留槽5は、返送ライン28により、原水槽1に接続されている。
【0017】
<浸漬型膜分離装置を用いた濾過運転方法>
原水が満たされた原水槽1内のポンプを作動させ、原水供給ライン22から凝集槽2に原水を供給する。
【0018】
凝集槽2では、攪拌機12により槽内を攪拌しながら、凝集剤添加装置11により、所要量の凝集剤を添加する。このとき、必要に応じてpH調整装置13により、pH調整剤を添加してpHを9〜10に調整する。
【0019】
凝集剤の添加量は、原水のCOD500〜1000ppmに対して、凝集剤の種類に拘わらず同等以上の量である。凝集剤は、例えば、吸着剤、凝結剤、高分子凝集剤等を用いることができる。吸着剤としては、珪藻土、モンモリロナイト、活性白土等の油吸着剤、凝結剤としては、硫酸アルミニウム等の無機化合物、高分子凝集剤としては、アニオン系とカチオン系の高分子凝集剤を挙げることができる。
【0020】
攪拌機12による攪拌は、350〜500r/minで、5〜30分間行う。
【0021】
凝集槽2で凝集処理した処理水は、ポンプを作動させ、ライン23から膜分離槽3に送る。
【0022】
次に、膜分離槽3では、第1槽3aと第2槽3bが凝集処理水で満たされた状態で、第1槽3aでは攪拌機16で攪拌しながら、第2槽3bでは膜分離モジュール15で濾過する。攪拌機16による攪拌は、凝集処理工程における攪拌機12と同様にして行うことが望ましい。
【0023】
膜分離モジュール15による濾過時には、膜面を外側から洗浄するため、散気装置17から散気することができる。また、適当間隔をおいて、逆圧洗浄ライン25により、逆圧洗浄することができる。
【0024】
膜分離槽3内の濾過時において、第1槽3a内が攪拌機16で攪拌されているため、第1槽3aと第2槽3b内の凝集処理水は、仕切壁14の下面14aの下を通り、上面14bを越えて互いに流通する。このため、膜分離槽3内の凝集処理水は、フロックが偏在することなく均一状態になり、分離膜モジュール15による濾過性能が安定する。
【0025】
膜分離槽3で濾過した透過水は、透過水ライン24により、透過水タンク4に送られ、貯水される。透過水タンク4内の透過水は、適宜河川等に放流するほか、膜分離モジュール15の逆圧洗浄水としても用いられる。
【0026】
膜分離槽3の底面付近に溜まったフロック(汚泥)は、汚泥引抜ライン27から引き抜き、汚泥貯留槽5に送る。汚泥貯留槽5では、汚泥を脱水して、水は原水槽1に返送し、汚泥は廃棄する。
【実施例】
【0027】
実施例1
凝集槽2は、高さ0.85m、幅0.55m、奥行き0.33m(容積0.5m)を用いた。攪拌機12は、パドル型の長さ0.2mの攪拌羽根を有するものを用いた。
【0028】
凝集槽2では、COD52ppm,nヘキサン抽出物量7.6mg/L、濁度52、pH7.3の原水(化粧品工場の排水)に対して、凝集剤(商品名メムフロックU002;ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製)を濃度が80ppmとなるように添加し、攪拌機12により、360r/minで10分間、攪拌しながら凝集処理を行った。
【0029】
膜分離槽3(図1に示す傾斜面31を有している)は、高さ1.35m、幅0.63m、奥行き0.86m(容積0.81m)で、幅方向1/3〜1/2の位置に、高さ1mの仕切壁が、上側に0.35m、下側に0.25mの隙間を空けて、槽の壁に固定されたものを用いた。
【0030】
膜分離槽3では、攪拌機16(攪拌機12と同じもの)により360r/minで攪拌しながら、膜分離モジュール(ポリエーテルスルホン中空糸膜を充填したケーシングフリーの浸漬型中空糸膜エレメント〔有効膜面積2.2m〕を8ユニット組み合わせたもの)により、吸引濾過した。
【0031】
濾過運転は、散気管17(パールコン;ダイセン・メンブレン・システムズ社製,PMD-T06)により散気しながら行った。濾過運転30分ごとに45秒間の逆圧洗浄をした。
【0032】
濾過運転1時間経過時の透過水は、COD38ppm、nヘキサン抽出物量0.6mg/L以下、濁度0.2であり、そのまま河川放流ができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の浸漬型膜分離装置の概念図。
【符号の説明】
【0034】
1 原水槽
2 凝集槽
3 膜分離槽
3a 第1槽
3b 第2槽
4 透過水槽
5 汚泥貯留槽
11 凝集剤添加装置
12 攪拌機
14 仕切壁
15 膜分離モジュール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも凝集槽における凝集処理工程後に、膜分離槽に浸漬された膜分離モジュールよる膜分離処理工程を有する濾過運転方法であり、
前記凝集処理工程が、被処理液のCOD500〜1000ppmに対して、同等以上の量の凝集剤を添加し、攪拌機により、350〜500r/minで、5〜30分間攪拌しながら凝集処理する工程である、濾過運転方法。





【図1】
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【公開番号】特開2009−28613(P2009−28613A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194074(P2007−194074)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】