説明

火災警報システム

【課題】火災発生時にセキュリティシステムにおいても火災警報を報知することで安全性を向上する。
【解決手段】親局TR1の制御部1は、全ての子局TR2,…から応答メッセージを受信すると、火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2からセキュリティ親機10に対して送信させる。セキュリティ親機10は、親局TR1から受け取った火災警報メッセージに基づき、音や光によって火災警報を報知する。従って、火災発生時には全ての火災警報器TRで火災警報が報知されるだけでなく、火災警報メッセージを受け取ったセキュリティシステムのセキュリティ親機10においても火災警報を報知することができるので、利用者が火災警報を知覚する(警報音を聞く)機会が増えるために安全性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の火災警報器が電波を媒体とする無線信号を送受信するようにした火災警報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国で使用する無線局については、占有周波数帯幅や隣接チャンネル漏洩電力などの使用電波の特性(RF特性)が電波法の規定を満たしていなくてはならない。また、電波法では使用目的ごとに異なる規格(通信規格)が規定されている。例えば、電波法第4条ただし書きにおいて免許を要しない無線局の一つとして規定される「小電力無線局」には、「コードレス電話の無線局」、「特定小電力無線局」、「小電力セキュリティシステム」、「小電力データ通信システムの無線局」などがあり、それぞれの無線局の無線設備について同法施行規則の設備規則によって規格が規定されている。
【0003】
一方、住宅火災による犠牲者を減らすことを目的として住宅への火災警報器の設置義務が法制化されたため、既存住宅への施工性の観点から無線信号を利用して複数の火災警報器を連動させる火災警報システムが望まれている。かかる火災警報システムは、多箇所に設置された複数台の火災警報器(無線局)がそれぞれに火災を感知する機能と警報音を鳴動する機能を有しており、何れかの火災警報器が火災を感知すると、当該火災警報器が警報音を鳴動するとともに火災感知を知らせる情報(火災感知情報)を無線信号で他の火災警報器に伝送することにより、火元の火災警報器だけでなく複数台の火災警報器が連動して一斉に警報音を鳴動することにより、火災の発生を迅速且つ確実に知らせることができる。このような火災警報器は、火災感知情報を無線信号で伝送するという特性を活かすために電池を電源として駆動され、しかも、通常は室内の天井のようにメンテナンス(電池交換)のし難い場所に設置されることから、例えば数年といった長期間にわたってメンテナンス無しに使用できることが望ましい。
【0004】
ここで、上述のような火災警報システムでは火災が感知されると複数の火災警報器の間で相互に無線信号が伝送されるのであるが、その際、各火災警報器が勝手に(非同期に)無線信号を送信すると無線信号が衝突してしまうことになる。このような衝突を回避するものとして、例えば、特許文献1には複数の火災警報器がTDMA(時分割多重アクセス)方式で無線信号を伝送するようにした火災警報システムが記載されている。特許文献1に記載されている従来例では、各火災警報器が自器に割り当てられたタイムスロットに無線信号を格納して送信するため、上述のような衝突を回避することができる。
【0005】
また、最近では、火災以外のガス漏れや不審者の侵入などの異常を検出して報知するセキュリティシステムも普及しつつある(例えば、特許文献2参照)。この種のセキュリティシステムは、対象領域内の異常(例えば、ガス漏れや窓ガラスの破壊、監視領域内への侵入など)を検出するセキュリティセンサと、各セキュリティセンサとの間で無線通信を行うとともにセキュリティセンサから異常検出を通知する無線信号を受信したときに当該異常の発生を音や光で報知するセキュリティ親機とを備えている。
【特許文献1】特開2006−343983号公報
【特許文献2】特開2007−233681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来は火災警報システムとセキュリティシステムが各々独立して動作しており、火災警報システムで火災警報を発しているときにセキュリティシステムでは異常の発生を報知することができなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、火災発生時にセキュリティシステムにおいても火災警報を報知することで安全性を向上した火災警報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、複数の火災警報器を備え、これら複数の火災警報器の間で電波を媒体とする無線信号を伝送する火災警報システムであって、各火災警報器は、火災を感知する火災感知手段と、火災警報を報知する警報手段と、無線信号を送信する送信手段と、無線信号を受信する受信手段と、火災感知手段で火災を感知したときに警報手段に火災警報を報知させるとともに他の火災警報器に火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、さらに受信手段により他の火災警報器から送信される無線信号を受信して前記火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させる制御手段とを具備し、何れかの火災警報器から火災警報メッセージを含む無線信号が送信された場合、当該無線信号を受信した特定の火災警報器の制御手段が他の全ての火災警報器に対して火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させるとともに、対象領域内の異常を検出するセキュリティセンサ並びにセキュリティセンサとの間で無線通信を行うとともにセキュリティセンサから異常検出を通知する無線信号を受信したときに当該異常の発生を報知するセキュリティ親機を有するセキュリティシステムの当該セキュリティ親機に対して、火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、火災発生時には全ての火災警報器で火災警報が報知されるだけでなく、火災警報メッセージを受け取ったセキュリティシステムのセキュリティ親機においても火災警報を報知することができる。その結果、利用者が火災警報を知覚する機会が増えるために安全性を向上することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、特定の火災警報器は、他の火災警報器並びにセキュリティ親機を識別する識別符号を記憶する記憶手段を具備し、特定の火災警報器の制御手段は、前記記憶手段に識別符号が記憶されている他の火災警報器並びにセキュリティ親機に対してのみ火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、特定の火災警報器の記憶手段に他の火災警報器並びにセキュリティ親機の識別符号を記憶させれば、他に設定作業をしなくても、前記記憶手段に識別符号が記憶されている他の火災警報器並びにセキュリティ親機に対して特定の火災警報器の制御手段が火災警報メッセージを含む無線信号を送信するので、システムの施工が容易に行える。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、各火災警報器は電源供給用の電池を具備し、各火災警報器の制御手段は、受信手段を間欠的に起動し他の火災警報器から送信される無線信号を受信して火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させ、他の火災警報器の制御手段は、特定の火災警報器から送信された火災警報メッセージを含む無線信号を受信したことを確認するための応答メッセージを含む無線信号を送信手段から特定の火災警報器に対して送信させ、特定の火災警報器の制御手段は、他の全ての火災警報器から送信される応答メッセージを含む無線信号を受信手段で受信した後に、一定周期の同期信号を送信手段から送信させ、特定の火災警報器を含む全ての火災警報器では、受信手段で同期信号が受信可能となった時点から後、制御手段が当該同期信号によって規定される複数のタイムスロットのうちで自己に割り当てられている特定のタイムスロットに無線信号を格納して送信手段から送信させてなり、特定の火災警報器の制御手段は、他の全ての火災警報器から送信される応答メッセージを含む無線信号を受信手段で受信してから送信手段に同期信号の送信を開始させるまでの間にセキュリティ親機に対して火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、応答メッセージを含む無線信号を送信した他の全ての火災警報器では受信手段を起動して受信可能な状態にしておけば、特定の火災警報器からセキュリティ親機への火災警報メッセージを含む無線信号の送信が完了した後に特定の火災警報器の送信手段から送信される同期信号を受信することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、特定の火災警報器を除く他の全ての火災警報器の制御手段は、受信手段で同期信号が受信できない期間が、特定の火災警報器の制御手段がセキュリティ親機に対する火災警報メッセージを含む無線信号の送信を完了するまでの時間よりも長い所定時間以上継続したときに受信手段を休止させることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、特定の火災警報器と他の全ての火災警報器との間で時分割多重伝送を行いながら、特定の火災警報器からセキュリティ親機へ火災警報メッセージを含む無線信号を送信することができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3の発明において、特定の火災警報器の制御手段は、セキュリティ親機に対するメッセージを含む無線信号を送信手段に送信させる前に、他の全ての火災警報器に対して同期信号の送信を一定時間だけ中断することを通知する中断通知メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、当該無線信号を受信した他の全ての火災警報器の制御手段は、前記中断通知メッセージで通知された前記一定時間が経過するまで受信手段を停止させるとともに一定時間の経過後に受信手段を起動させることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、特定の火災警報器と他の全ての火災警報器との間で時分割多重伝送を行いながら、特定の火災警報器からセキュリティ親機へ火災警報メッセージを含む無線信号を送信することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、火災発生時にセキュリティシステムにおいても火災警報を報知することで安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
図1は本実施形態のシステム構成図であり、複数台(図示は2台のみ)の火災警報器TRで火災警報システムが構成され、さらに、複数(図示例では2つ)のセキュリティセンサ11とセキュリティ親機10とでセキュリティシステムが構成されている。なお、以下の説明では、火災警報器TRを個別に示す場合は火災警報器TR1,TR2,…,TRnと表記し、総括して示す場合は火災警報器TRと表記する。
【0021】
セキュリティシステムのセキュリティセンサ11は、対象領域(例えば、住宅)内の異常(例えば、ガス漏れや窓ガラスの破壊、監視領域内への侵入など)を検出する検出機能と、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送信する送信機能とを有し、検出機能で異常が検出されたときに送信機能によって異常発生を通知する無線信号をセキュリティ親機10に送信するものである。セキュリティ親機10は、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送受信する通信機能と、音や光で異常発生を報知する報知機能とを有し、通信機能によって何れかのセキュリティセンサ11から無線信号を受け取ると、報知機能によって異常発生を報知するものである。但し、このようなセキュリティ親機10並びにセキュリティセンサ11については特許文献2にも記載されているように従来周知であるから、詳細な構成並びに動作の説明は省略する。
【0022】
火災警報器TRは、アンテナ3から電波を媒体とした無線信号を送信するとともに他の火災警報器TRが送信した無線信号をアンテナ3で受信する無線送受信部2と、音(ブザー音や音声メッセージなど)による火災警報(以下、「警報音」と呼ぶ。)を報知(スピーカから鳴動)する警報部5と、マイコンや書換可能な不揮発性の半導体メモリなどからなるメモリ部1aを主構成要素とし火災感知部4で火災を感知したときに警報部5に警報音を鳴動させるとともに他の火災警報器TRに対して火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる制御部1と、後述するように警報音の鳴動を停止するための操作入力などを受け付ける操作入力受付部6と、乾電池等の電池を電源として各部に動作電源を供給する電池電源部7とを具備している。操作入力受付部6は1乃至複数のスイッチ(例えば、押釦スイッチ)を有しており、スイッチが操作されることで各スイッチに対応した操作入力を受け付けるとともに当該操作入力に対応した操作信号を制御部1に出力する。なお、各火災警報器TR1,TR2,…には固有の識別符号が割り当てられてメモリ部1aに格納されており、当該識別符号によって無線信号の宛先並びに送信元の火災警報器TR1,TR2,…が特定できる。
【0023】
無線送受信部2は、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送受信するものである。また火災感知部4は、例えば、火災に伴って発生する煙や熱、炎などを検出することで火災を感知するものである。但し、無線送受信部2並びに火災感知部4の詳細な構成については、従来周知であるから詳細な説明は省略する。
【0024】
制御部1は、メモリに格納されたプログラムをマイコンで実行することによって後述する各種の機能を実現している。火災感知部4で火災の発生が感知されると、制御部1は警報部5が備えるブザーを駆動して警報音を鳴動させたり、あるいは予めメモリ等に格納されている警報用の音声メッセージ(例えば、「火事です」など)をスピーカに鳴動させることで火災警報を報知するとともに、他の火災警報器TRにおいても火災警報を報知させるため、火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる。また、他の火災警報器TRから送信された無線信号を無線送受信部2で受信することにより火災警報メッセージを受け取ったときも、制御部1が警報部5を制御して警報音を鳴動させる。つまり、制御部1では火災感知部4が火災を感知したときに警報部5から警報音を鳴動させて火災警報を報知するとともに火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる機能を有している。
【0025】
ここで、電波法施行規則の無線設備規則第49条の17「小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備」では、無線信号を連続して送信してもよい期間(送信期間)が3秒以下、送信期間と送信期間の間に設けられた、無線信号を送信してはいけない期間(休止期間)が2秒以上とすることが規定されている(同条第5号参照)。このために本実施形態における制御部1では、上記無線設備規則に適合する送信期間に無線信号を送信させるとともに休止期間に送信を停止し且つ受信可能な状態としている。
【0026】
また電池電源部7の電池寿命をできるだけ長くするため、制御部1ではマイコンに内蔵するタイマで所定の間欠受信間隔(但し、間欠受信間隔は前記送信期間よりも長い時間とする)を繰り返しカウントするとともに間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TRが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックし、当該電波が捉えられなければ直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させることで平均消費電力を大幅に低減している。なお、電波の受信チェックは、無線送受信部2から出力される、受信信号強度の大小に比例した直流電圧信号である受信信号強度表示信号(Receiving Signal Strength Indication:RSSI信号)に基づいて制御部1が行っており、詳細については従来周知であるから省略する。
【0027】
さらに特定の火災警報器TR1(以下、親局と呼ぶ。)の制御部1では、定期的(例えば、25時間毎)に無線送受信部2を起動して他の火災警報器TR2,TR3,…(以下、子局と呼ぶ。)が正常に動作しているか否かの確認(定期監視)を行うために定期監視メッセージを含む無線信号を送信させる。子局TR2,…においては、制御部1が火災感知部4の故障の有無及び電池電源部7の電池切れの有無を一定周期で(例えば、1時間毎に)監視するとともに、その監視結果(故障の有無及び電池切れの有無)を図示しないメモリに記憶しており、親局TR1から定期監視メッセージを受け取ったときに、メモリに記憶している監視結果を通知するための通知メッセージを含む無線信号を親局TR1に返信する。親局TR1の制御部1は、通知メッセージを含む無線信号を送信した後、無線送受信部2を受信状態に切り換えて各子局TR2,…から送信される無線信号を受信し、定期監視メッセージを含む無線信号を送信してから所定時間内に通知メッセージを含む無線信号を送信してこない子局TR2,…があったり、あるいは、何れかの子局TR2,…が送信してきた通知メッセージが故障有り若しくは電池切れ有りの監視結果を通知するものである場合に、警報部5が備えるブザーを駆動して報知音を鳴動させるなどして子局TR2,…に異常(通信不可や故障有り、電池切れなど)が発生したことを知らせる機能も有している。尚、親局TR1及び子局TR2,…の制御部1は、故障若しくは電池切れが生じていると判断した場合、直ちに警報部5から異常(故障若しくは電池切れ)の発生を知らせるための警告音(ブザー音や音声メッセージなど)を警報部5のスピーカから鳴動させるようになっている。
【0028】
また親局TR1の制御部1は、火災感知部4が火災を感知して警報部5から警報音を鳴動させるとともに各子局TR2,…に火災警報メッセージを送信した後、若しくは何れかの子局TR2,…から火災警報メッセージを受信した後においては、無線送信部2に一定周期で同期信号を送信させる。この同期信号は、複数の火災警報器TR同士でTDMA(時分割多元接続)方式の無線通信(以下、「同期通信」と呼ぶ。)を行うために必要なタイムスロットを規定する信号であって、その1周期(サイクル)が複数のタイムスロットに分割され、全ての子局TR2,…にそれぞれ互いに異なるタイムスロットが1つずつ割り当てられる。そして、親局TR1から子局TR2,…へのメッセージは同期信号に含めて送信され、子局TR2,…から親局TR1へのメッセージを含む無線信号は、各子局TR2,…に割り当てられているタイムスロットに格納されて送信される。故に、複数台の火災警報器TR(親局TR1並びに子局TR2,…)から送信される無線信号の衝突を確実に回避することができる。なお、各火災警報器TRに対するタイムスロットの割当は固定であってもよいが、親局TR1から送信する同期信号によってタイムスロットの割当情報を各子局TR2,…に通知しても構わない。
【0029】
図2は火災警報器TRが送受信する無線信号のフレームフォーマットを示しており、同期ビット(プリアンブル:PA)、フレーム同期パターン(ユニークワード:UW)、宛先アドレスDA、送信元アドレスSA、メッセージM、CRC符号で1フレームが構成されている。ここで、宛先アドレスDAとして各火災警報器TRの識別符号を設定すれば当該識別符号の火災警報器TRのみが無線信号を受信してメッセージを取得することになるが、宛先アドレスDAとして何れの火災警報器TRにも割り当てられていない特殊なビット列(例えば、すべてのビットを1としたビット列)を設定することで無線信号を同報(マルチキャスト)して全ての火災警報器TRにメッセージを取得させることができる。例えば、火災警報メッセージを含む無線信号が親局TR1から全ての子局TR2,…に同報される。
【0030】
ここで、セキュリティシステムにおいては火災警報システムとの混信を避けるために火災警報システムで使用する周波数チャネルと異なる周波数チャネルで無線信号を送受信しているが、親局TR1の無線送受信部2は周波数チャネルを切り換える機能を有しており、周波数チャネルを切り換えることでセキュリティ親機10との間においても無線信号の送受信が可能となっている。尚、親局TR1においては、セキュリティ親機10との間で無線信号を送受信するためにセキュリティ親機10の識別符号がメモリ部1aに格納されており、同じくセキュリティ親機10にも親局TR1の識別符号が記憶されている。
【0031】
次に、図3のタイムチャートを参照して、TDMA方式の無線通信に移行する際の本実施形態の送受信動作を説明する。
【0032】
例えば、子局TR2において火災感知部4が火災を感知すると、子局TR2の制御部1は警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2を起動し、火災警報メッセージを含む無線信号を他の全ての火災警報器TR(親局TR1及び他の子局TR3,…)に宛てて送信する。この際、送信元の子局TR2の制御部1は、送信期間内で送信可能なフレーム数だけ無線信号を連続して送信し、送信期間後の休止期間(受信期間)には無線送受信部2を受信状態に切り換える。尚、各火災警報器TRは非同期で間欠受信しているが、ある程度の回数(例えば、3回)の送信期間を繰り返せば、火災警報メッセージを含む無線信号を受信することができる。
【0033】
ここで、小電力無線を利用すれば、無線通信距離としては通常の住宅ひとつのエリア内であれば十分カバーできるので、火災元の子局TR2が、他の火災警報器TR(親局TR1及び他の子局TR3,…)に対しメッセージを送信することは通常は十分可能である。しかしながら、上述したように親局TR1は各子局TR2〜TR5に対して定期監視を行っており、親局TR1と各子局TR3〜TR5との間では通信パスの正常性が確認されているが、子局TR2〜TR5間の通信パスは確認されていないため、例えば障害物などの影響によって、ある子局にはメッセージが届いていない可能性もある。
【0034】
そこで、火災警報メッセージを受信した親局TR1の制御部1は、送信元の子局TR2を除く他の子局TR3〜TR5に対して火災警報メッセージを含む無線信号を複数回連続して送信する。他の子局TR3〜TR5の制御部1では、子局TR2又は親局TR1から送信された火災警報メッセージを受け取ると直ちに警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2より火災警報メッセージの受信を確認する応答メッセージ(ACK)を無線信号によって返信する。尚、このように少なくとも1台の火災警報器TRで火災が感知されることで全ての火災警報器TRが火災警報を報知(警報音を鳴動)することを、以下では「火災連動」と呼ぶ。
【0035】
親局TR1の制御部1は、他の全ての子局TR3〜TR5からACKを受け取れば、タイムスロットを規定するための同期信号を一定の周期で無線送受信部2から送信させる。尚、本実施形態では先頭のタイムスロットTS1を子局TR2に、2番目のタイムスロットTS2を子局TR3に、3番目のタイムスロットTS3を子局TR4に、4番目のタイムスロットTS4を子局TR5にそれぞれ割り当てている。
【0036】
ここで、親局TR1は各子局TR2〜TR5に対して定期監視を行っており、親局TR1と各子局TR3〜TR5との間では通信パスの正常性が確認されているが、子局TR2〜TR5間の通信パスは確認されていない。したがって、子局TR2,…が多数配置された場合、子局TR2,…間の通信パスの数は非常に多くなる為、子局TR2,…間の通信パスの正常性の確認を行うと電池消耗が激しくなるので、上述のように特定の火災警報器TR1を親局とし、その他の火災警報器TR2,…を子局として親局TR1から各子局TR2,…に火災警報メッセージやその他のメッセージ(後述する)を通知することで相互に通信パスが確立できない子局が存在する場合でも確実に火災連動させることができるものである。
【0037】
また、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動することにより連動が開始されると、上述のように親局TR1から一定周期で同期信号が送信され、非同期通信からTDMA方式の同期通信に移行するのであるが、親局TR1の制御部1では、同期信号に含めることで火災警報メッセージを一定周期で全ての子局TR2,…に繰り返し送信している。そして、各子局TR2,…の制御部1では、親局TR1から送信される火災警報メッセージを受け取る度に警報部5の状態を確認し、仮に警報部5が停止していたとしたら警報部5に再度警報音を鳴動させる。したがって、全ての火災警報器TRで火災警報が報知され始めてからは特定の火災警報器(親局)TR1が送信する同期信号によって規定される複数のタイムスロットに他の全ての火災警報器(子局)TR2,…を割り当てて時分割多元接続(TDMA)による無線通信を行うことで衝突を回避することができ、さらに、特定の火災警報器(親局)TR1から他の全ての火災警報器(子局)TR2,…に対して火災警報メッセージを同期信号に含めて周期的に送信することで確実に火災警報を報知することができる。その結果、無線信号の衝突を回避しつつ複数の火災警報器TRを効果的に連動させることができる。
【0038】
ところで、定期監視はほぼ1日に1回の頻度で行われているが、前記の定期監視で通信パスが正常であったとしても、何からの原因(新たなノイズ源の発生や突然の故障など)によって何れかの子局TR3〜TR5と親局TR1との通信パスが確立できないことがある。そこで親局TR1の制御部1では、何れかの子局TR3〜TR5(例えば、TR5)からACKを受け取らなかった場合に再度火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2から送信させ、当該子局TR5からACKを受け取った時点で無線送受信部2に同期信号を送信させるようにしている。但し、火災警報メッセージを所定の複数回数送信しても子局TR5からACKを受け取ることができなければ、親局TR1の制御部1は、火災警報メッセージの再送を中止して無線送受信部2に同期信号を送信させる。また、定期監視において通信パスが確立できなかったり、あるいは定期監視において電池切れ有りの通知メッセージを受け取った子局TR2,…に対して、親局TR1の制御部1が上述した火災警報メッセージを含む無線信号の再送を行わないようにしたり、再送回数を減らしたり、あるいは当該子局TR2,…からの応答メッセージを受け取ったか否かに関わらずに同期信号を送信させるようにしても構わない。但し、定期監視における通知メッセージによって故障有りの監視結果のみを通知してきた子局TR2,…については、火災警報メッセージに対して警報部5から警報音を鳴動させることが可能である場合も考えられるので、親局TR1の制御部1が火災警報メッセージを含む無線信号の再送を行うことが望ましい。
【0039】
ここで、親局TR1から火災警報メッセージを受け取った各子局TR2,…が非同期で応答メッセージを含む無線信号を返信した場合、複数の子局TR2,…が送信した無線信号が衝突して親局TR1に届かず、親局TR1が火災警報メッセージの再送を繰り返すことで電池の消耗が早まったり、非同期通信から同期通信への切り換わりが遅れてしまう虞がある。
【0040】
そこで本実施形態の火災警報システムでは、図4に示すように親局TR1の制御部1が火災警報メッセージを含む無線信号(フレーム)をN回連続して無線送受信部2から送信させるとともに、当該N回の送信後に無線送受信部2を受信状態に切り換えている。このとき、親局TR1の制御部1では、それぞれの無線信号(フレーム)におけるメッセージMの先頭に当該フレームの順番i(i=1,2,…,N)を格納しており、各子局TR2,…の制御部1においては、受信した無線信号のメッセージMに格納されている順番iに基づいて親局TR1の無線送受信部2が送信状態から受信状態に切り換わるタイミングを推定している。
【0041】
そして、親局TR1の無線送受信部2が受信状態に切り換わっている期間をM個のタイムスロットに分割し、各子局TR2,…毎に決められた順番、例えば、予め割り当てられているTDMA方式の同期通信におけるタイムスロットの番号(スロット番号)TSに一致したタイムスロットk(k=1,2,…,M)に応答メッセージを含む無線信号を格納して各子局TR2,…から親局TR1に返信すれば、子局TR2,…から送信される応答メッセージを含む無線信号の衝突を回避することができる。図4においては、各子局TR2,TR3,TR4,TR5がそれぞれタイムスロット1,2,3,4に応答メッセージを含む無線信号を格納して親局TR1に返信している。尚、各子局TR2,…の制御部1は、応答メッセージを含む無線信号を親局TR1に返信した後、無線送受信部2を受信状態に切り換えて親局TR1から送信される同期信号を受信可能な状態に維持している。
【0042】
さらに、親局TR1の制御部1では、全ての子局TR2,…から応答メッセージを受信するか、若しくは火災警報メッセージを含む無線信号を規定の再送回数送信したら、無線送受信部2の周波数チャネルをセキュリティシステムで使用される周波数チャネルに切り換えた後、火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2からセキュリティ親機10に対して送信させる(図4参照)。当該無線信号を受信したセキュリティ親機10では、火災警報メッセージを受け取ったことを確認するための応答メッセージ(ACK)を含む無線信号を親局TR1に返信するとともに、親局TR1から受け取った火災警報メッセージに基づき、音や光によって火災警報を報知する。そして、親局TR1の制御部1は、セキュリティ親機10から応答メッセージを受け取った後、無線送受信部2に同期信号の送信を開始させる。各子局TR2,…では無線送受信部2が受信状態に維持されているから、親局TR1から送信される同期信号を受信して直ちに同期通信に移行することができる。
【0043】
上述のように本実施形態によれば、火災発生時には全ての火災警報器TRで火災警報が報知されるだけでなく、火災警報メッセージを受け取ったセキュリティシステムのセキュリティ親機10においても火災警報を報知することができるので、利用者が火災警報を知覚する(警報音を聞く)機会が増えるために安全性を向上することができる。
【0044】
ところで、本実施形態の火災警報システムは、何れの火災警報器TRにおいても火災が検出されていない状態(待機状態)と、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動している状態(連動鳴動状態)と、後述するように火災を検出している(火元の)火災警報器TRのみが警報音を鳴動し、火元以外の火災警報器TRが警報音を停止している状態(連動停止状態)との間で動作状態を遷移させている。すなわち、待機状態において少なくとも何れか1台の火災警報器TR(例えば、子局TR2)で火災が検出されると、上述したように火元の子局TR2並びに親局TR1から他の全ての子局TR3,…に火災警報メッセージが送信されることで親局TR1と子局TR2,…を含む全ての火災警報器TRで警報音が鳴動されて連動鳴動状態に遷移する。
【0045】
そして、連動鳴動状態において何れかの火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音の鳴動を停止するための操作入力が受け付けられた場合、当該火災警報器TRが親局TR1であれば親局TR1から全ての子局TR2,…に対して警報音の停止を要求するメッセージ(警報停止メッセージ)を送信することにより、あるいは、当該火災警報器TRが子局TR2,…であれば当該子局TR2,…から警報停止メッセージを受け取った親局TR1が他の子局TR2,…に対して警報停止メッセージを送信することにより、火元以外の火災警報器TRで警報音が停止されて連動停止状態に遷移する。但し、火元の火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音停止の操作入力が受け付けられた場合、当該火元の火災警報器TRにおいても警報音を停止する。ここで、親局TR1の制御部1はメモリ部1aに親局TR1並びに各子局TR2,…毎の火災検出状況を随時更新しながら保持しており、後述するように全ての火災警報器TRで火災が検出されなくなったときに火災連動状態から待機状態に遷移する。
【0046】
また、連動鳴動状態から連動停止状態に遷移した場合、親局TR1の制御部1では所定の警報音停止時間(例えば、5分間)の限時を開始する。そして、警報音停止時間が経過したのち、親局TR1の制御部1はメモリ部1aに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ、同期信号によって復旧通知のメッセージを送信することで火災連動状態から待機状態に遷移し、仮に少なくとも1台の火災警報器TRで火災を検出していれば、同期信号によって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。尚、連動停止状態において何れかの火災警報器TRが新たに火災を検出した場合にも親局TR1の制御部1が同期信号によって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
【0047】
例えば、図5のタイムチャートに示すように、親局TR1を火元とする火災連動状態(連動鳴動状態)において、火元でない子局TR4の操作入力受付部6で警報音停止の操作入力が受け付けられることで当該子局TR4から警報停止メッセージが送信されると、警報停止メッセージを受け取った親局TR1の制御部1は同期信号によって警報停止メッセージM2を送信しつつ警報音停止時間の限時を行う。但し、火元である親局TR1では警報部5による警報音の鳴動は継続される。そして、警報音停止時間が経過したのち、親局TR1の制御部1は自らの火災感知部4による火災検出状況並びに子局TR2,…おける火災検出状況を確認し、少なくとも何れか1台の火災警報器TRが火災を検出しているときは再度火災警報メッセージを同期信号により各子局TR2,…に送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
【0048】
一方、図6のタイムチャートに示すように、警報音停止時間内に火災が鎮火して火災感知部4が火災を検出しなくなっていれば、親局TR1の制御部1は警報音停止時間が経過したのちに同期信号によって各子局TR2,…に復旧通知メッセージを送信し、全ての子局TR2,…から返信されるACKを受け取った時点で連動停止状態から待機状態に遷移し、同期信号の送信を停止することでTDMA方式による無線通信(同期通信)から間欠送信・間欠受信による無線通信(非同期通信)に戻る。
【0049】
また、図7のタイムチャートに示すように、子局TR4を火元とする連動鳴動状態において、火元の火災が鎮火して子局TR4の火災感知部4が火災を検出しなくなれば、子局TR4から親局TR1に宛てて復旧通知メッセージが送信される。当該復旧通知メッセージを受け取った親局TR1の制御部1はメモリ部1aに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ同期信号によって復旧通知メッセージM3を各子局TR2,…に送信する。そして、全ての子局TR2,…から返信されるACKを親局TR1の制御部1が受け取れば、連動停止状態から待機状態に遷移し、同期信号の送信を停止することで同期通信から非同期通信に戻る。
【0050】
一方、図8のタイムチャートに示すように、新たに別の火災警報器(例えば、子局TR3)で火災が検出された場合、初めの火元である子局TR4から復旧通知メッセージを受け取った親局TR1の制御部1は、メモリ部1aに保持している火災検出状況を参照し、子局TR3が火災検出中であることから復旧通知メッセージを送信せず、引き続き火災警報メッセージを送信することで火災連動状態を維持する。
【0051】
ここで、火災連動状態における親局TR1の制御部1が行う処理について、図9のフローチャートを参照して簡単にまとめる。待機状態において何れかの子局TR2,…から火災警報メッセージを受け取ると(ステップS1)、親局TR1の制御部1はメモリ部1aに各子局TR2,…毎に保持している火災検出状況を更新(火災非検出から火災検出へ変更)し(ステップS2)、一方、火元の子局TR2,…から復旧通知メッセージを受け取れば(ステップS3)、当該子局TR2,…の火災検出状況を火災検出から火災非検出に更新する(ステップS4)。火災連動状態において何れの子局TR2,…からも復旧通知メッセージを受け取っていないときに何れかの子局TR2,…から警報停止メッセージを受け取った場合(ステップS5)、親局TR1の制御部1は警報を停止することを決定して無線送受信部2から警報停止メッセージを含む同期信号を送信させる(ステップS6)。また、連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移してから警報音停止時間が経過するまでの間は同期信号によって定期的に警報停止メッセージを送信し(ステップS7,S8,S6)、警報音停止時間が経過したら(ステップS8)、メモリに保持している火災検出状況を参照して火災検出中の火災警報器(親局TR1及び子局TR2,…)が残っているか否かを判断し(ステップS9)、1台でも火災検出中の火災警報器が残っていれば火災連動の継続を決定して無線送受信部2から火災警報メッセージを含む同期信号を送信させ(ステップS10)、一方、全ての火災警報器が火災非検出になっていれば火災連動状態から待機状態への復旧を決定して無線送受信部2から復旧通知メッセージを含む同期信号を送信させる(ステップS11)。
【0052】
ここで、何れかの子局TR2,…が復旧通知メッセージに対してACKを返信しなかった場合、親局TR1の制御部1は、再度復旧通知メッセージを含む無線信号を無線送受信部2から送信させ、当該子局TR2,…からACKを受け取った時点、若しくは復旧通知メッセージを所定の複数回数再送してから一定時間が経過した時点で無線送受信部2に同期信号の送信を停止させることが望ましい。また、連動鳴動状態若しくは連動停止状態において親局TR1が故障して同期信号が送信されなくなった場合、子局TR2,…の無線送受信部2が同期信号を受信するために受信状態のままとなって電池が著しく消耗してしまう虞があるので、子局TR2,…の制御部1では、同期信号が受信できない期間が所定時間(例えば、同期信号の数周期分の時間)以上継続したときに無線送受信部2を休止させて電池の消耗を抑えることが望ましい。
【0053】
ところで、同期通信を行っている間、親局TR1の無線送受信部2は一定周期で同期信号を送信するとともに同期信号を送信していない期間では、タイムスロットTSに格納されて各子局TR2,…から送信される無線信号を受信できるように受信状態に維持されているから、上述した警報停止メッセージや復旧通知メッセージなどを含む無線信号をセキュリティ親機10へ送信することができない。
【0054】
そこで親局TR1の制御部1は、同期信号の送信を一時的に中断し、無線送受信部2の周波数チャネルをセキュリティシステムの周波数チャネルに切り換えて警報停止メッセージや復旧通知メッセージなどを含む無線信号をセキュリティ親機10へ送信させ、セキュリティ親機10から返信されるACKを受信したら、無線送受信部2の周波数チャネルを火災警報システムの周波数チャネルに戻して同期信号の送信を再開させる。このとき、各子局TR2,…の制御部1では、同期信号が受信できない期間が所定時間以上継続したときに無線送受信部2を休止させてしまうが、前記所定時間を、親局TR1とセキュリティ親機10との間で警報停止メッセージや復旧通知メッセージなどを含む無線信号並びに応答メッセージ(ACK)を含む無線信号を授受するのに要する時間よりも長い時間(例えば、同期信号の数周期分の時間)に設定しておけば、同期信号の中断中に子局TR2,…の無線送受信部2が休止してしまうのを防ぐことができる。
【0055】
あるいは、親局TR1の制御部1が同期信号の送信を一定時間だけ中断する旨のメッセージ(中断通知メッセージ)を同期信号によって各子局TR2,…に通知し、各子局TR2,…の制御部1が当該中断通知メッセージを受け取ってから前記一定時間が経過するまでの間は無線送受信部2を休止させ、当該一定時間が経過したら無線送受信部2を起動して親局TR1から送信が再開された同期信号を受信するようにしても構わない。尚、セキュリティ親機10では警報停止メッセージや復旧通知メッセージを受け取ると、当該メッセージに応じた処理(例えば、火災警報の停止など)を行う。
【0056】
ところで、親局TR1の制御部1では、メモリ部1aに子局TR2,…の識別符号が1つも格納(登録)されおらず、且つセキュリティ親機10の識別符号も格納(登録)されていなければ無線送受信部2を常時停止させ、火災感知部4で火災が感知されたときに警報部5から火災警報を報知するとともに操作入力受付部6で警報音の鳴動を停止するための操作入力が受け付けられるか、あるいは火災感知部4で火災を感知しなくなったときに警報部5に火災警報の報知を停止させる処理のみを実行する。また、セキュリティ親機10の識別符号のみがメモリ部1aに格納(登録)されている場合、親局TR1の制御部1は、無線送受信部2を動作させてセキュリティ親機10と火災連動する処理も行う。このように親局TR1においては、制御部1のメモリ部1aに子局TR2,…及びセキュリティ親機10の何れの識別符号も格納(登録)されていない状態では単独の火災警報器として動作し、子局TR2,…若しくはセキュリティ親機10の識別符号の少なくとも何れか一方が格納(登録)されていれば、上述した火災連動などの処理を実行するのであって、親局TR1のメモリ部1aに識別符号を登録する作業以外の作業、例えば、セキュリティシステムとの連動の有無の設定作業などを行わなくてもよいから、システムの施工が容易に行えるという利点がある。尚、親局TR1に子局TR2,…並びにセキュリティ親機10の識別符号を登録するには、例えば、親局TR1の制御部1を登録モードで動作させた状態で子局TR2,…及びセキュリティ親機10から登録用の無線信号を送信させ、受信した無線信号の送信元アドレスSAをメモリ部1aに格納すればよく、子局TR2,…及びセキュリティ親機10への親局TR1の識別符号の登録も同様に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態における火災警報器(親局及び子局)のブロック図である。
【図2】同上における無線信号のフレームフォーマットである。
【図3】同上の待機状態から火災連動状態へ遷移する動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】同上の非同期通信から同期通信へ移行する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】同上の連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】同上の連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】同上の火災連動状態から待機状態へ遷移する動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】同上の火災連動状態における動作を説明するためのタイムチャートである。
【図9】同上の火災連動状態における親局の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
TR1 火災警報器(親局)
TR2 火災警報器(子局)
1 制御部(制御手段)
1a メモリ部(記憶手段)
2 無線送受信部(受信手段,送信手段)
4 火災感知部(火災感知手段)
5 警報部(警報手段)
10 セキュリティ親機
11 セキュリティセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の火災警報器を備え、これら複数の火災警報器の間で電波を媒体とする無線信号を伝送する火災警報システムであって、
各火災警報器は、火災を感知する火災感知手段と、火災警報を報知する警報手段と、無線信号を送信する送信手段と、無線信号を受信する受信手段と、火災感知手段で火災を感知したときに警報手段に火災警報を報知させるとともに他の火災警報器に火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、さらに受信手段により他の火災警報器から送信される無線信号を受信して前記火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させる制御手段とを具備し、
何れかの火災警報器から火災警報メッセージを含む無線信号が送信された場合、当該無線信号を受信した特定の火災警報器の制御手段が他の全ての火災警報器に対して火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させるとともに、対象領域内の異常を検出するセキュリティセンサ並びにセキュリティセンサとの間で無線通信を行うとともにセキュリティセンサから異常検出を通知する無線信号を受信したときに当該異常の発生を報知するセキュリティ親機を有するセキュリティシステムの当該セキュリティ親機に対して、火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させることを特徴とする火災警報システム。
【請求項2】
特定の火災警報器は、他の火災警報器並びにセキュリティ親機を識別する識別符号を記憶する記憶手段を具備し、特定の火災警報器の制御手段は、前記記憶手段に識別符号が記憶されている他の火災警報器並びにセキュリティ親機に対してのみ火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させることを特徴とする請求項1記載の火災警報システム。
【請求項3】
各火災警報器は電源供給用の電池を具備し、各火災警報器の制御手段は、受信手段を間欠的に起動し他の火災警報器から送信される無線信号を受信して火災警報メッセージを受け取ったときに警報手段に火災警報を報知させ、
他の火災警報器の制御手段は、特定の火災警報器から送信された火災警報メッセージを含む無線信号を受信したことを確認するための応答メッセージを含む無線信号を送信手段から特定の火災警報器に対して送信させ、
特定の火災警報器の制御手段は、他の全ての火災警報器から送信される応答メッセージを含む無線信号を受信手段で受信した後に、一定周期の同期信号を送信手段から送信させ、
特定の火災警報器を含む全ての火災警報器では、受信手段で同期信号が受信可能となった時点から後、制御手段が当該同期信号によって規定される複数のタイムスロットのうちで自己に割り当てられている特定のタイムスロットに無線信号を格納して送信手段から送信させてなり、
特定の火災警報器の制御手段は、他の全ての火災警報器から送信される応答メッセージを含む無線信号を受信手段で受信してから送信手段に同期信号の送信を開始させるまでの間にセキュリティ親機に対して火災警報メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させることを特徴とする請求項1又は2記載の火災警報システム。
【請求項4】
特定の火災警報器を除く他の全ての火災警報器の制御手段は、受信手段で同期信号が受信できない期間が、特定の火災警報器の制御手段がセキュリティ親機に対する火災警報メッセージを含む無線信号の送信を完了するまでの時間よりも長い所定時間以上継続したときに受信手段を休止させることを特徴とする請求項3記載の火災警報システム。
【請求項5】
特定の火災警報器の制御手段は、セキュリティ親機に対するメッセージを含む無線信号を送信手段に送信させる前に、他の全ての火災警報器に対して同期信号の送信を一定時間だけ中断することを通知する中断通知メッセージを含む無線信号を送信手段から送信させ、
当該無線信号を受信した他の全ての火災警報器の制御手段は、前記中断通知メッセージで通知された前記一定時間が経過するまで受信手段を停止させるとともに一定時間の経過後に受信手段を起動させることを特徴とする請求項3記載の火災警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−265763(P2009−265763A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111699(P2008−111699)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】