灯器、交通信号灯器、交通信号制御機、及びアンテナユニット
【課題】アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段として、アンテナを組み込んだ信号灯器を提供する。
【解決手段】信号灯器1は、光学ユニット2とアンテナ4とを備えている。光学ユニット2は、LED7と、可視光透過性を有しLED7を前方で覆うカバー部材9とを有している。アンテナ4は、LED7の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子11a,11bを有する。
【解決手段】信号灯器1は、光学ユニット2とアンテナ4とを備えている。光学ユニット2は、LED7と、可視光透過性を有しLED7を前方で覆うカバー部材9とを有している。アンテナ4は、LED7の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子11a,11bを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は灯器に関するものであり、特に道路に設置される交通信号灯器、交通信号制御機、及び、この灯器に設けられるアンテナユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
このような路車間通信を無線によって行う場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するために、アンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくない。
そこで、道路には車両感知器や光ビーコンのヘッド等が設置されているため、これらを取り付けている支柱やアームにアンテナを併設することが考えられる。しかし、この場合においても、美観の点で好ましくない。
【0005】
そこで、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする。
この灯器によれば、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込ませ、アンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込ませることで、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナ素子は、発光体の前端よりも前方に配置されているので、発光体が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮することができる。さらに、アンテナ素子は、前後方向に沿った面と平行に配置されているので、発光体を前方(正面)から見たときにその光がアンテナ素子によって遮られてしまうのを防止することができる。したがって、灯器の光の視認性を十分に確保することができる。なお、ここでいう「前後方向に沿った面」とは、実在する面に限らず仮想の面をも含む。
【0007】
前記光学ユニットは、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材を有し、
前記アンテナ素子が、前記カバー部材と前記発光体の前端との間に配置されていることが好ましい。この構成によれば、アンテナ素子を、カバー部材から発光体の前端までの範囲として灯器の光学ユニットに組み込ませることができ、アンテナを目立たなくすることができる。
【0008】
前記光学ユニットは、発光ダイオードからなる前記発光体を複数有し、
前記アンテナ素子は、前方からみて複数の前記発光ダイオード間に対応して配置されていることが好ましい。このような構成によって、発光ダイオードとアンテナ素子とが前方(正面)からみて重複しない状態となり、発光ダイオードの光がアンテナ素子によって遮られるのを確実に防止することができ、正面からの灯器の光の視認性をより向上することができる。
【0009】
前記アンテナ素子は、アンテナ用基板にパターン形成された線路からなる構成とすることができる。これにより、アンテナ素子を所定の形状とすることが容易となる。また、この場合、アンテナ用基板及びアンテナ素子が可視光透過性を有する構成とすることができる。これにより、例えばアンテナ素子が前後方向かつ上下方向に沿った面に平行に配置されている場合には、左右斜め前方からの灯器の光の視認性を確保することができ、アンテナ素子が前後方向かつ左右方向に沿った面に平行に配置されている場合には、上下斜め前方からの灯器の光の視認性を確保することができる。
【0010】
前記光学ユニットは前記発光体を前面に実装した発光体用基板を備え、前記アンテナは、前記発光体用基板の前方に配置された支持部材によって支持されていることが好ましい。
光学ユニットに組み込まれるアンテナは、光学ユニットを構成する発光体用基板によって支持することが考えられるが、発光体用基板によってアンテナを支持する場合、アンテナを取り付けるためのネジ穴等の取付部を基板に形成しなければならず、当該取付部を避けるような複雑な配線が必要となる。また、ネジ穴を避けた配線とすることができない場合にはジャンパケーブルによって配線を接続しなければならず、部品数及び製造工程が増え、製造コストが増大するという不都合が生じる。本発明の場合、アンテナが発光体用基板の前方に配置された支持部材によって支持されるので、以上のような不都合を回避することができる。
【0011】
前記アンテナは、前記支持部材よりも後方に配置され当該支持部材によって支持されたグランド素子を有することができ、前記アンテナ素子は、前記グランド素子に取り付けることができる。さらに、この場合は、前記支持部材に前記アンテナ素子を前後方向に貫通させる開口部が形成されていることが好ましい。これによって、グランド素子に取り付けられたアンテナ素子を支持部材よりも前方に配置することができ、アンテナ素子を発光体の前端よりも前方に配置しやすくなる。
【0012】
前記アンテナは、前記支持部材の前面に取り付けられていてもよい。この場合、支持部材には、前記アンテナに接続されるケーブルを貫通させる孔が形成されていることが好ましい。これによって、支持部材の後方からアンテナへケーブルを接続することができる。
【0013】
前記支持部材は、前記光学ユニット外部の所定の方向から入射する光が前記発光体基板及び前記発光体の少なくとも一方により反射するのを防止する機能を有していることが好ましい。
灯器が、交通信号用の灯器として用いられる場合、基板や発光体に照りつけた西日や朝日が地上へ反射し、その反射光によって、灯器が見づらくなったり、点灯していない灯器が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりする。
本発明は、光学ユニット外部の所定の方向から入射(西日や朝日のように斜め上方から入射)する光が基板や発光体により反射するのを防止する機能を支持部材に持たせることによって、灯器が見づらくなったり擬似点灯が生じたりするのを防止することができる。言い換えると、本発明は、光の反射を防止する部材を用いてアンテナを支持することによって、部品の兼用による構造の簡素化や、製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
また、本発明の交通信号灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする。
この交通信号灯器によれば、アンテナを交通信号灯器の光学ユニットに組み込ませ、アンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを光学ユニットに組み込ませることで、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナ素子は、発光体の前端よりも前方に位置しているので、発光体が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮することができる。さらに、アンテナ素子は、前後方向に沿った面と平行に配置されているので、発光体を前方(正面)から見たときにその光がアンテナ素子によって遮られてしまうのを防止することができる。したがって、交通信号灯器の光の視認性を十分に確保することができる。
また、交通信号灯器は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置される。このため、この信号灯器を道路の所定の位置に設置すれば、前記アンテナと車両の車載機との間で無線通信を行う上で、見通しが良好な状態が得られる。
【0015】
本発明の交通信号制御機は、前記交通信号灯器に接続され、前記交通信号灯器の点灯および消灯を行う交通信号制御機であって、前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されているものである。
【0016】
本発明のアンテナユニットは、発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有している平衡型のアンテナを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、平衡型のアンテナを備えているアンテナユニットを、灯器の光学ユニットに組み込ませることで、そのアンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込むため、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナ素子は、発光体の前端よりも前方に位置しているので、発光体が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮することができる。さらに、アンテナ素子は、前後方向に沿った面と平行に配置されているので、発光体を前方(正面)から見たときにその光がアンテナ素子によって遮られてしまうのを防止することができる。したがって、灯器の光の視認性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、アンテナは灯器の光学ユニットに組み込まれるため、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の灯器の実施の一形態を示す正面図である。図1の灯器は道路に設置される交通信号灯器1(以下、単に信号灯器という)であり、車両用のものである。
歩道等の路側に支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
【0019】
信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。各光学ユニット2にはひさし(図示せず)が取り付けられる。
また、支柱40には、信号灯器1を制御する制御装置5が取り付けられている。なお、信号灯器1の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、図示しないが前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1が歩道橋に架設されたものであってもよい。また、制御装置5は、信号灯器1の筐体3内に設けられたものであってもよい。
なお、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置5が、後述するアンテナ4を介した無線通信制御を行うように構成することができるが(あるいは無線通信制御を行う装置を同一筐体内に内蔵させることができるが)、別々の装置としてもよい。別々とする場合、前記無線通信制御を行う装置は、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置の近傍(同一の支柱40)に設置することが好ましい。
【0020】
図2、図3及び図4は、一つの光学ユニット2の斜視図、正面図及び断面図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下LEDという)と、複数のLED7が前面8aに実装されているLED基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。また、本実施の形態の光学ユニット2は、LED基板8やLED7による太陽光の反射を防止するための反射防止部材(遮光部材)10を有している。
【0021】
LED基板8は、円形の板状に形成されている。LED基板8の裏面には配線パターンが形成されており、LED7の端子37と繋がっている。LED基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。LED7はレンズ部38を有し、このレンズ部38内にLED素子(図示せず)が設けられている。
【0022】
収容部材6は、鋼板、アルミ又は合成樹脂材により形成され、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。側部6bの開口側の内周には段部6cが形成され、この段部6cに、カバー部材9が着脱可能に取り付けられている。これにより、収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されており、この収容空間部SにLED7及びLED基板8が収容されている。そして、LED基板8は反射防止部材10を介して収容部材6に固定されている。収容空間部Sのうち、LED基板8よりも前方を前空間部S1とし、LED基板8よりも後方を後空間部S2としている。
【0023】
カバー部材9は、ガラス又は樹脂製のレンズで可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。カバー部材9の後面(背面)9aは凹曲面であり、前面9bは凸局面である。ただし、信号灯器1がLED灯器であれば、カバー部材9をレンズではなく、後面9a及び前面9bが平面であるガラス等の平板とすることもできる。なお、この光学ユニット2において、前方とは光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。
【0024】
反射防止部材10は、LED基板8やLED7内の反射鏡7a(図6参照)に対して西日や朝日等の太陽光が入射するのを制限することにより、LED基板8や反射鏡7aによる反射で信号灯器1が見づらくなったり、点灯していない信号灯器1が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりすることを防止するものである。また、反射防止部材10は、LED基板8や、後述するアンテナ4を支持する支持部材としての機能を有している。
【0025】
反射防止部材10は、絶縁部材である合成樹脂材により形成され、図4に示すように、LED基板8よりも前方に配置されている。反射防止部材10は、円形の板状(面状)に形成された板状部10aを備え、この板状部10aは、LED7の前端39よりも後方に配置されている。板状部10aには、LED7の配置に対応して、LED7を挿通させるための複数の挿通孔10bが形成されている。なお、挿通孔10bは、概ね径方向外方へ放射状に配列されている。
この板状部10aは、主にLED基板8に対して太陽光が直接当たることを防止している。反射防止部材10は、黒色の合成樹脂材により形成されるか、少なくとも板状部10aの前面が黒色に塗装され、太陽光の反射が防止されている。反射防止部材10は、板状部10aの外周部を収容部材6の段部6cに嵌合し、段部6cに形成された図示しない爪を板状部10aに係合することによって収容部材6に固定されている。
【0026】
板状部10aの後面にはボス部10cが後方突出状に形成されている。LED基板8は、ボス部10cのネジ穴に螺合されたネジ25によって板状部10aに固定されている。LED基板8の前面8aはボス部10cの先端面に当接されており、板状部10aとLED基板8との間には、ボス部10cの高さに相当する間隔があけられている。
【0027】
図5は、反射防止部材10の後面(背面)図である。反射防止部材10の板状部10aの後面には、円形状のリブ10d,放射状のリブ10eが一体形成されている。また、板状部10aの後面には周方向等間隔に4個の前記ボス部10cが一体形成されている。さらに、板状部10aの後面には、ボス部10cとは周方向及び径方向にずれた位置に、周方向等間隔に4個のボス部10fが一体形成されている。このボス部10fは、後述するグランド素子12を取り付けるための取付部とされる。また、ボス部10fは、ボス部10cよりも低く、リブ10d,10eと同じ高さかやや高く形成されている。各挿通孔10bの周囲には、後方へ突出する筒状部10gが設けられ、この筒状部10gは、ボス部10fと同じ高さかやや低く形成されている。
【0028】
図2〜図4に示すように、反射防止部材10の挿通孔10bの上縁には、庇部10hが前方に突出するように形成されている。図6に示すように、庇部10hは、西日や朝日などの斜め上方から照りつける太陽光OがLED7の反射鏡7aに入射することを防止している。したがって、当該太陽光Oが反射鏡7aによって反射されるのを好適に防止することができる。庇部10hの前端は、LED7の前端よりも突出している。反射防止部材10の筒状部10gは、LED7の外周面を囲い、LED7の姿勢を保持している。
なお、反射防止部材10は、LED基板8による太陽光の反射を防止する機能のみを有するものであってもよく、LED7による太陽光の反射を防止する機能のみを有するものであってもよい。
【0029】
図2〜図4に示すように、光学ユニット2にはアンテナ4が組み込まれている。具体的には、アンテナ4は、収容空間部Sにおいて、カバー部材9とLED基板8との間に配置されている。アンテナ4は、アンテナ用基板16を備えており、このアンテナ用基板16にアンテナ素子11a,11bが設けられている。また、アンテナ用基板16には、さらにストリップ線路31が形成されており、ストリップ線路31も光学ユニット2に組み込まれている。
アンテナ用基板16は矩形の平板からなり、ガラスエポキシ等の誘電体から形成されている。また、アンテナ用基板16の厚さは1mm程度である。
【0030】
アンテナ4は平衡型であり、図示しているものは、平衡二線で給電されるダイポールアンテナである。図8(a)に示すように、アンテナ4は、ダイポール部11と、一対の平衡給電線部32a,32bと、グランド素子12とを備えている。ダイポール部11及び平衡給電線部32a,32bは、アンテナ用基板16の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。ダイポール部11は、上下方向に向けて延びるように配置された上下一対のアンテナ素子11a,11bからなる。一対の平衡給電線部32a,32bは、前後方向(前方を矢印Fで示す)に向けて延び、互いに平行に配置されている。一方の平衡給電線部32aの前端には、一方のアンテナ素子11aが直交するように接続されている。他方の平衡給電線部32bの前端には他方のアンテナ素子11bが直交するように接続されている。
【0031】
ストリップ線路31は、前記アンテナ用基板16の他面側(ダイポール部11及び平衡給電線部32a,32bとは反対の面)に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。ストリップ線路31は、アンテナ用基板16の他面側であって平衡給電線部32aの裏側となる位置で前後方向に直線的に延びて形成され、そして、ダイポール部11のアンテナ素子11a,11b間の中央部においてU字状に方向を反転し、アンテナ用基板16の他面側であって平衡給電線部32bの裏側となる位置で前後方向に直線的に延びて形成されている。
ダイポール部11、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミ等による金属箔が好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属箔とすることもできる。
【0032】
アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をアンテナ用基板16に形成する方法として、以下のものがある。アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をそれぞれ単独で薄膜導電体として形成し、各々をアンテナ用基板16に貼り付ける。この場合、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をアンテナ用基板16に粘着部材(粘着テープ)によって接着する。または、アンテナ用基板16に対して金属蒸着を行うことでアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を形成してもよい。または、アンテナ用基板16に対して印刷によってアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を形成してもよい。例えば、一般的なプリント配線基板を作製する場合と同様の工程で、表面に銅箔を施したアンテナ用基板16に、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31のパターンのレジストを印刷し、エッチングを施すことによってこれらアンテナ素子等11a,11b,32a,32b,31を形成してもよい。または、アンテナ用基板16に対して金属メッキを施してアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を形成してもよい。
【0033】
グランド素子12は、図3及び図4に示すように、円形の板状(面状)に形成されており、LED基板8の前面8a側で反射防止部材10に取り付けられている。より具体的には、図6に示すように、反射防止部材10の後面にはボス部10fが形成されており、グランド素子12はボス部10fのネジ穴に後方から螺合されたネジ26によって固定されている。グランド素子12の前面はボス部10fの先端面に当接されており、ボス部10fはグランド素子12と反射防止部材10の板状部10aとの間隔を設定するスペーサとして機能している。また、図5に示すように、ボス部10fと、リブ10d,10e及び筒状部10gとが同じ高さである場合、リブ10d,10e及び筒状部10gもスペーサとして機能する。なお、グランド素子は矩形又は多角形等でもよく、灯器内に収納できる形状であればどういうかたちであってもよい。
【0034】
図4に示すように、グランド素子12は、反射防止部材10のみで固定され、前後方向についてLED基板8とLED7の前端39との間の位置に設けられている。また、グランド素子12は、LED基板8と反射防止部材10の板状部10aと間でLED基板8及び板状部10aと平行に配置されている。グランド素子12には、LED7(LED7のリード線)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されている。この孔14の配置は、LED7の配置と一致させてあり、グランド素子12は網目構造となっている。つまり、ここでいう網目構造には、例えば練炭のように平板に孔がいくつか空けられた構造も含まれる。なお、グランド素子12には、反射防止部材10のボス部10cを貫通させる孔が形成されているが、当該ボス部10cがグランド素子12の外周側に配置されている場合は、当該孔は不要となる。
【0035】
グランド素子12は金属板から形成されている。グランド素子12の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。また、高周波は表面に電流が流れることから、板部材に、金属蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものであってもよい(図示せず)。
【0036】
グランド素子12の前面には、アンテナ用基板16が直立した状態で取り付けられている。具体的には図8(a)(b)に示すように、グランド素子12の前面(金属面)に、2つの取付具33を介してアンテナ用基板16が固定されている。取付具は金属製でL字形状に形成され、その一辺部がグランド素子12に取付ネジ及びナット等の締結具36により固定され、他辺部がアンテナ用基板16の平衡給電線部32a,32bに接触した状態で半田付け等により固定されている。したがって、グランド素子12と平衡給電線部32a,32bとが取付具33を介して接続されている。ここで、グランド素子12及び平衡給電線部32a,32bはともにストリップ線路31に対するグランドとして機能する。そして、ストリップ線路31、平衡給電線部32a,32b、及びグランド素子12によってバルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。なお、取付具33は、アンテナ用基板16及びグランド素子12の双方に締結具36を用いて取り付けたり、半田付けによって取り付けたりすることも可能である。
【0037】
グランド素子12は、前後方向(LED7の投光方向)に対して垂直に配置され、このグランド素子12にアンテナ用基板16が直立した状態で取り付けられているので、アンテナ用基板16に形成されたアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31は、アンテナ用基板16の板面と同様に、前後方向に沿うように(前後方向に沿った面(仮想面)と平行に)配置される。
【0038】
図4に示すように、収容部材6(底部6a)には、アンテナ4用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられており、この端子部19に、図1の制御装置5から延びる同軸ケーブル15を接続することができる。そして、この端子部19から後空間部S2へ延びる同軸ケーブル15aが、アンテナ4と接続されている。同軸ケーブル15aは、図8(a)(b)にも示すように、内導体(中心導体)15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有しており、この同軸ケーブル15の中心導体15bが前記ストリップ線路31に接続されており、外導体15dがグランド素子12(平衡給電線部32b)に接続されている。内、外導体15b,15dと各部とを半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
なお、図1の制御装置5から延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED用基板8と接続されている。
【0039】
図4に示すように、アンテナ用基板16は、グランド素子12から前方に突出し、反射防止部材10の板状部10aを貫通している。具体的には、反射防止部材10には、アンテナ用基板16を貫通させるためのスリット(開口部)35が形成されており、アンテナ用基板16はスリット35を貫通して反射防止部材10よりも前方へ突出している。また、図3に示すように、スリット35は、上下方向に沿って長く形成されており、したがって、アンテナ用基板16も上下方向に沿った状態で配置されている。
【0040】
スリット35は、複数のLED7の間に形成されている。LED7は、光学ユニット2の正面の中心から概ね径方向外方へ向けて配列されているので、複数のLED7の間も概ね径方向に沿って直線状に延びている。したがって、スリット35も径方向に沿った方向(上下方向)に直線状に形成することができる。
図4に示すように、スリット35を貫通したアンテナ用基板16のアンテナ素子11a,11bは、LED7の前端39よりも前方でカバー部材9よりも後方に配置されている。すなわち範囲Aに配置されている。
【0041】
以上の形態によれば、前記アンテナ4(ストリップ線路31も含む)は、信号灯器1に組み込まれたものとなっている。そして、アンテナ4のアンテナ素子11a,11bは、LED7の前端39よりも前方に配置されており、これによってLED基板8やLED7が電波の送受信の妨げとなるのを防止することができる。また、アンテナ用基板16やアンテナ素子11a,11bは、前後方向に沿うように配置されているので、光学ユニット2を正面(前方)から見たとき、LED7の光がアンテナ用基板16及びアンテナ素子11a,11bによって遮られず、信号灯器1の光の視認性を損なうことはほとんどない。
また、アンテナ素子11a,11bは上下方向に沿うように配置されているので、地上から斜め上方に信号灯器1を見上げたときにも、LED7の光がアンテナ素子11a,11bによって遮られることはほとんどない。
【0042】
図4に示すように、グランド素子12とLED7とは前後方向の位置について重複しているが、グランド素子12にはLED7(LED7の端子37)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されているので、グランド素子12がLED7に干渉することがないように、グランド素子12の孔14にLED7を挿し入れ、グランド素子12を所定の位置に設置することができる。なお、グランド素子12に形成している前記開口部の構成としては、図示しているように、素子に孔14をあけて素子と干渉しないようにLED7を配置することができ、または、図示しないが、孔を設けずに、例えば素子の導電体部分(導体部分)を蛇行状に配置して(導電体部分を一筆書きになるように配置して)、素子と干渉しないようにLED7を配置することもできる。
【0043】
反射防止部材10にはスリット35が形成されているので、反射防止部材10よりも後方のグランド素子12に立設したアンテナ用基板16を反射防止部材10の前側に突出させ、アンテナ素子11a,11bをLED7の前端よりも前方に配置することができる。
アンテナ4(グランド素子12、アンテナ用基板16)は、反射防止部材10に取り付けられて支持されているため、LED基板8にはアンテナ4を取り付けるためのネジ穴等の取付部を設ける必要がない。したがって、当該取付部を設けるためにLED基板8の回路配線(配線パターン部)が複雑になったり、配線設計の制約が大きくなったりすることもない。また、当該取付部を設けるためにジャンパケーブル等が必要になることもないので、部品数や製造工程が増えることもなく、製造コストの増大を抑制することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、LED基板8も反射防止部材10に取り付けられている。したがって、反射防止部材10には、アンテナ4及びLED基板8が取り付けられ、これらは一体化されている。そのため、これらの一体化された部品を1つのユニットとして構成することができる。そして、反射防止部材10を収容部材6に取り付ければ、このユニット全体を収容部材6に取り付けることができるので、収容部材6への当該ユニットの取り付けが容易になる。収容部材6には、反射防止部材10用の取付部を設ければ足りるため、構造を簡素化することができる。ただし、収容部材6には、反射防止部材10以外の部品をサポートするための部材が設けられていてもよい。
【0045】
反射防止部材10は、図7に示すような構造とすることもできる。この反射防止部材10には庇部が設けられておらず、反射防止部材10の板状部10aはLED7の前端39に略一致する位置(板状部10aの厚さ内にLED7の前端39が含まれる位置)に配置されている。また、挿通孔10bの中心はLED7の中心よりもやや下側に配置されている。このような構造により、庇部がなくても斜め上方から照りつける太陽光Oが反射鏡7aによって反射されるのを好適に防止することができる。なお、図7のように、板状部10aがLED7の前端39に略一致する形態も、図6の場合と同様に、板状部10aがLED7の前端39よりも後方にある場合に含まれる。また、図示しないが、板状部10aは、LED7の前端39よりも前方に配置することも可能である。
【0046】
また、反射防止部材10の後面には、図4に示すようなボス10fではなく、反射防止部材10とは別体のスペーサ28が設けられ、このスペーサ28を貫通するボルト29とナット30とによって板状部10aにグランド素子12が固定されている。
【0047】
前述のように、アンテナ素子11a,11bをLED7の前端よりも前方に配置し、前後方向及び上下方向に沿うように配置した場合、正面からの信号灯器1の視認性は十分に確保することができる。しかし、信号灯器1を左右斜め前方から見たときにアンテナ用基板16によって一部のLED7が隠れてしまい、同方向からの信号灯器1の視認性が下がる可能性がある(図2参照)。これを防止するため、アンテナ用基板16や、これに形成する線路11a,11b、32a,32b、31を可視光透過性を有する(可視光に対して透明である)構成とすることも可能である。
【0048】
例えば、アンテナ用基板16は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル又はポリエチレンテレフタラート等の可視光透過性を有する材質とする。そして、このアンテナ用基板16上のアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をメッシュ構造とすることにより、可視光透過性を持たせることができる。
【0049】
アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をメッシュ構造とするために、アンテナ用基板16の一面及び他面に、金属膜(金属薄膜)による網目を形成することができる。この金属膜の網目によるアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31の具体例としては、アンテナ用基板16の面に、例えば線幅10μmであってピッチ(メッシュの間隔)を100μmとする導線部からなる微細なメッシュを形成すればよい。このようにアンテナ用基板16に微細なメッシュを形成する場合、線幅が1μm以上で50μm以下であり、ピッチが50μm以上で1000μm以下とするのが好ましく、さらには、線幅が5μm以上で50μm以下であり、ピッチが100μm以上で1000μm以下とするのが好ましい。
なお、メッシュ形状は、四角形状に限らず、三角形状、ハニカム形状とすることができ、また、全体として放射形状(蜘蛛の巣形状)等とすることができる。
【0050】
また、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31に可視光透過性を持たせるために、これらを、可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)とすることができる。そして、この薄膜導電体を前記アンテナ用基板16に形成することで、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を薄く、所定の形状に形成することができる。この場合、薄膜導電体の厚さを1μm以上であり100μm以下とするのが好ましく、これにより、可視光透過性を有するものとなる。
【0051】
図9は、アンテナ4を光学ユニット2に内蔵したアンテナ内蔵型信号灯器の他の実施の形態を示す正面図である。この実施の形態と、図3に示す実施の形態との違いは、アンテナ用基板16(アンテナ素子11a,11b)が、前後方向かつ左右方向に沿うように配置されている点であり、その他の構成は同様である。
この実施の形態の場合、正面及び左右斜め前方からの信号灯器1の視認性は十分に確保することができる。ただし、上下斜め前方から信号灯器1を見た場合、一部のLED7がアンテナ用基板16によって隠れてしまい、同方向からの信号灯器1の視認性が下がる可能性がある。同方向からの視認性を高めるため、上述したようにアンテナ用基板16やこれに形成する線路11a,11b、32a,32b、31に可視光透過性を持たせてもよい。
【0052】
図10は、アンテナ4を光学ユニット2に内蔵したアンテナ内蔵型信号灯器の他の実施の形態を示す正面図である。この実施の形態と、図3に示す実施の形態との違いは、アンテナ4のアンテナ用基板16が2つ備えられ、2つのアンテナ用基板16が十字状に直交して配置されたものである。この場合、各アンテナ用基板16に形成されたアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ素子31は互いに接しない配置とする。これによって、90°角度のずれた(直交する)デュアル偏波のアンテナ4を構成することができる。また、この場合、2つのアンテナ用基板16は、いずれも前後方向に沿った配置となるため、正面からの信号灯器1の視認性を阻害することはほとんどない。なお、2つのアンテナ用基板16は、45°傾けることによってX字状に配置することも可能である。2つ(または3以上)のアンテナ用基板16を用いる例として、2つのアンテナ用基板16を交差させることなく横並べにしたり、平行に配置したり、T字状、L字状に配置したりすることも可能である。また、90°角度のずれた(直交する)2つの偏波のアンテナ4に、それぞれ同振幅(同強度)で90°位相のずれた信号を入力することによって、2つのアンテナ4を1つの円偏波のアンテナ4として使用することも可能である。
【0053】
図11は、アンテナ4を光学ユニット2に内蔵したアンテナ内蔵型信号灯器の他の実施の形態を示す側面図である。この実施の形態では、アンテナ4が、グランド素子12を備えておらず、アンテナ用基板16には、2つの平衡給電線部32a,32bを短絡する部分34が形成され、ストリップ線路31には同軸ケーブル15の中心導体15bが接続され、平衡給電線部32a,32b又は部分34に同軸ケーブル15aの外導体15dが接続されている。したがって、平衡給電線部32a,32b、部分34がストリップ線路31のグランドとして機能している。そして、アンテナ用基板16は、直接、反射防止部材10の前面に取付具33’を介して固定されている。なお、この実施の形態の場合、反射防止部材10には、同軸ケーブル15aを貫通させる孔が形成される。
本実施形態では、アンテナ4の構成がコンパクトとなり、光学ユニット2内に組み込み易くなり、しかも、反射防止部材10は、アンテナ用基板16を貫通させるためのスリットが必要ないので、構造が簡単になる。ただし、この構造のアンテナ4において、反射防止部材10にスリットを形成し、アンテナ用基板16の一部をスリットに挿入させたうえで、アンテナ用基板16を反射防止部材10に固定してもよい。
【0054】
なお、反射防止部材10が、導電率の高い材料(例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属)で形成されている場合には、この反射防止部材10をグランド素子12として用い、反射防止部材10に図8に示す形態のアンテナ用基板16を取り付けることも可能である。このように、反射防止部材10にグランド素子12としての機能を持たせることによって、アンテナ4又は光学ユニット2を構成する部品が少なくなり、コスト低減や構造の簡素化、収容部材6の小型化(薄型化)が可能となる。反射防止部材10は、アンテナ用基板16を貫通させるためのスリットが必要ないので、構造が簡単になる。
【0055】
反射防止部材10をグランド素子12として用いるための別の例として、合成樹脂材により形成された反射防止部材10の前面に、金属蒸着したものや金属メッキを施し、グランド素子12とすることもできる。また、グランド素子12として機能する部分(例えば、反射防止部材10の内周側)のみを金属で形成し、反射防止部材10のみとして機能する部分(例えば外周側)を合成樹脂材で形成することもできる。これらの場合、反射防止部材10の全体を金属によって構成する場合に比べて、重量を抑制することができる。
【0056】
以上の各実施の形態によれば、アンテナ4は信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれたものとなる。なお、図1の信号灯器1は三つの光学ユニット2を有しており、それぞれの光学ユニット2にアンテナ4が組み込まれている。これにより、アンテナ4を目立たなくして信号灯器1に設置することができ、道路の美観を損なうことがない。そして、アンテナ4が信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれていることから、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。さらに、アンテナ4が露出した状態(突出した状態)にないため、信号灯器1を取り付けるための支柱40及びアーム41(図1)の設計において、アンテナ4が受ける風荷重を追加的に考慮する必要がない。また、アンテナ4に対する防錆、防塵についても追加的に考慮する必要がない。
【0057】
また、交通用の信号灯器1は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置されているため、各実施の形態の信号灯器を道路の所定位置に設置することで、アンテナ4と車両の車載機との間で無線通信を行う上で、見通しが良好な状態が自然と得られる。したがって、この光学ユニット2に組み込んだアンテナ4を、路車間で無線通信を行う高度道路交通システム(ITS)に活用することができ、また、良好な通信状態が得られる。
【0058】
なお、本実施例に記載の交通信号灯器1を制御する制御装置5(交通信号制御機)は、アンテナ4を介して、交通信号灯器1を設置した道路もしくは近傍の道路等を走行する車両に対して、前記交通信号灯器1の現在及び将来の表示に関する信号情報を提供することができる。
信号情報としては、交通信号灯器1が表示する現在もしくは将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報等を含むものである。
例えば、現在表示している灯色は青信号でその継続予定時間は5秒であり、その次に表示する灯色は黄信号でその継続予定時間は8秒であり、その次に表示する灯色は右折青矢印灯でその継続予定時間は5乃至10秒である、といった情報を所定の形式で表現して含ませるとよい。なお、提供するのは現在表示している灯色とその継続時間だけとしてもよいし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしてもよい。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませてもよい。
【0059】
そして、前記信号情報を受信した車両側の車載コンピュータは、停止線までの距離と車両の走行速度や加速度等から、停止線に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。そして、例えば現時点で青信号を表示していたとしても、停止線に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線の手前で停止するように、車載コンピュータは制御すればよい。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、速度を維持するように制御すればよい。
また、車載コンピュータは、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしてもよい。
また、車載コンピュータは、前記判断の結果を車両の搭乗者に対して、音声や画像情報によって通知するようにしてもよい。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置の画面上に文字や図柄で表示したりしてもよい。
【0060】
また、この発明の灯器は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。また、前述の実施の形態では、アンテナ用基板16にアンテナ素子11a,11bや平衡給電線部32a,32bを形成したものとしているが、アンテナ用基板16を備えずに、アンテナ素子11a,11bや平衡給電線部32a,32bを板金製としたり、線材(電線)により形成したりすることもできる。平衡型のアンテナとしては、前記ダイポールアンテナ以外であってもよく、ループアンテナとしてもよい。さらにこの発明は、信号灯器以外に道路の照明用の照明灯器であってもよい。この場合、発光体として水銀灯やナトリウムランプがある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の灯器の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】光学ユニットの斜視図である。
【図3】光学ユニットの正面図である。
【図4】光学ユニットの断面図である。
【図5】反射防止部材の背面図である。
【図6】反射防止部材に対するグランド素子の取付部分を拡大して示す断面図である。
【図7】別の形態の反射防止部材と、この反射部材に対するグランド素子の取付部分の別の例を拡大して示す断面図である。
【図8】(a)はアンテナ用基板を拡大して示す側面図、(b)は同底面図である。
【図9】さらに別の実施の形態の光学ユニット及びアンテナを示す正面図である。
【図10】さらに別の実施の形態の光学ユニット及びアンテナを示す正面図である。
【図11】さらに別の実施の形態のアンテナ用基板を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 信号灯器(灯器)
2 光学ユニット
4 アンテナ
5 制御装置(交通信号制御機)
7 LED(発光体)
8 LED基板(発光体用基板)
9 カバー部材
10 反射防止部材(支持部材)
11a,11b アンテナ素子
12 グランド素子
16 アンテナ用基板
35 開口部
【技術分野】
【0001】
この発明は灯器に関するものであり、特に道路に設置される交通信号灯器、交通信号制御機、及び、この灯器に設けられるアンテナユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
このような路車間通信を無線によって行う場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するために、アンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくない。
そこで、道路には車両感知器や光ビーコンのヘッド等が設置されているため、これらを取り付けている支柱やアームにアンテナを併設することが考えられる。しかし、この場合においても、美観の点で好ましくない。
【0005】
そこで、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする。
この灯器によれば、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込ませ、アンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込ませることで、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナ素子は、発光体の前端よりも前方に配置されているので、発光体が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮することができる。さらに、アンテナ素子は、前後方向に沿った面と平行に配置されているので、発光体を前方(正面)から見たときにその光がアンテナ素子によって遮られてしまうのを防止することができる。したがって、灯器の光の視認性を十分に確保することができる。なお、ここでいう「前後方向に沿った面」とは、実在する面に限らず仮想の面をも含む。
【0007】
前記光学ユニットは、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材を有し、
前記アンテナ素子が、前記カバー部材と前記発光体の前端との間に配置されていることが好ましい。この構成によれば、アンテナ素子を、カバー部材から発光体の前端までの範囲として灯器の光学ユニットに組み込ませることができ、アンテナを目立たなくすることができる。
【0008】
前記光学ユニットは、発光ダイオードからなる前記発光体を複数有し、
前記アンテナ素子は、前方からみて複数の前記発光ダイオード間に対応して配置されていることが好ましい。このような構成によって、発光ダイオードとアンテナ素子とが前方(正面)からみて重複しない状態となり、発光ダイオードの光がアンテナ素子によって遮られるのを確実に防止することができ、正面からの灯器の光の視認性をより向上することができる。
【0009】
前記アンテナ素子は、アンテナ用基板にパターン形成された線路からなる構成とすることができる。これにより、アンテナ素子を所定の形状とすることが容易となる。また、この場合、アンテナ用基板及びアンテナ素子が可視光透過性を有する構成とすることができる。これにより、例えばアンテナ素子が前後方向かつ上下方向に沿った面に平行に配置されている場合には、左右斜め前方からの灯器の光の視認性を確保することができ、アンテナ素子が前後方向かつ左右方向に沿った面に平行に配置されている場合には、上下斜め前方からの灯器の光の視認性を確保することができる。
【0010】
前記光学ユニットは前記発光体を前面に実装した発光体用基板を備え、前記アンテナは、前記発光体用基板の前方に配置された支持部材によって支持されていることが好ましい。
光学ユニットに組み込まれるアンテナは、光学ユニットを構成する発光体用基板によって支持することが考えられるが、発光体用基板によってアンテナを支持する場合、アンテナを取り付けるためのネジ穴等の取付部を基板に形成しなければならず、当該取付部を避けるような複雑な配線が必要となる。また、ネジ穴を避けた配線とすることができない場合にはジャンパケーブルによって配線を接続しなければならず、部品数及び製造工程が増え、製造コストが増大するという不都合が生じる。本発明の場合、アンテナが発光体用基板の前方に配置された支持部材によって支持されるので、以上のような不都合を回避することができる。
【0011】
前記アンテナは、前記支持部材よりも後方に配置され当該支持部材によって支持されたグランド素子を有することができ、前記アンテナ素子は、前記グランド素子に取り付けることができる。さらに、この場合は、前記支持部材に前記アンテナ素子を前後方向に貫通させる開口部が形成されていることが好ましい。これによって、グランド素子に取り付けられたアンテナ素子を支持部材よりも前方に配置することができ、アンテナ素子を発光体の前端よりも前方に配置しやすくなる。
【0012】
前記アンテナは、前記支持部材の前面に取り付けられていてもよい。この場合、支持部材には、前記アンテナに接続されるケーブルを貫通させる孔が形成されていることが好ましい。これによって、支持部材の後方からアンテナへケーブルを接続することができる。
【0013】
前記支持部材は、前記光学ユニット外部の所定の方向から入射する光が前記発光体基板及び前記発光体の少なくとも一方により反射するのを防止する機能を有していることが好ましい。
灯器が、交通信号用の灯器として用いられる場合、基板や発光体に照りつけた西日や朝日が地上へ反射し、その反射光によって、灯器が見づらくなったり、点灯していない灯器が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりする。
本発明は、光学ユニット外部の所定の方向から入射(西日や朝日のように斜め上方から入射)する光が基板や発光体により反射するのを防止する機能を支持部材に持たせることによって、灯器が見づらくなったり擬似点灯が生じたりするのを防止することができる。言い換えると、本発明は、光の反射を防止する部材を用いてアンテナを支持することによって、部品の兼用による構造の簡素化や、製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
また、本発明の交通信号灯器は、発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする。
この交通信号灯器によれば、アンテナを交通信号灯器の光学ユニットに組み込ませ、アンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを光学ユニットに組み込ませることで、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナ素子は、発光体の前端よりも前方に位置しているので、発光体が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮することができる。さらに、アンテナ素子は、前後方向に沿った面と平行に配置されているので、発光体を前方(正面)から見たときにその光がアンテナ素子によって遮られてしまうのを防止することができる。したがって、交通信号灯器の光の視認性を十分に確保することができる。
また、交通信号灯器は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置される。このため、この信号灯器を道路の所定の位置に設置すれば、前記アンテナと車両の車載機との間で無線通信を行う上で、見通しが良好な状態が得られる。
【0015】
本発明の交通信号制御機は、前記交通信号灯器に接続され、前記交通信号灯器の点灯および消灯を行う交通信号制御機であって、前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されているものである。
【0016】
本発明のアンテナユニットは、発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有している平衡型のアンテナを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、平衡型のアンテナを備えているアンテナユニットを、灯器の光学ユニットに組み込ませることで、そのアンテナを目立たなくすることができる。さらに、アンテナを灯器の光学ユニットに組み込むため、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナ素子は、発光体の前端よりも前方に位置しているので、発光体が障害となることなく所望のアンテナ性能を発揮することができる。さらに、アンテナ素子は、前後方向に沿った面と平行に配置されているので、発光体を前方(正面)から見たときにその光がアンテナ素子によって遮られてしまうのを防止することができる。したがって、灯器の光の視認性を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、アンテナは灯器の光学ユニットに組み込まれるため、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の灯器の実施の一形態を示す正面図である。図1の灯器は道路に設置される交通信号灯器1(以下、単に信号灯器という)であり、車両用のものである。
歩道等の路側に支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。
【0019】
信号灯器1は、複数(図例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2を組み込んでいる筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、赤、黄、青の灯光色を有している。各光学ユニット2にはひさし(図示せず)が取り付けられる。
また、支柱40には、信号灯器1を制御する制御装置5が取り付けられている。なお、信号灯器1の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、図示しないが前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1が歩道橋に架設されたものであってもよい。また、制御装置5は、信号灯器1の筐体3内に設けられたものであってもよい。
なお、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置5が、後述するアンテナ4を介した無線通信制御を行うように構成することができるが(あるいは無線通信制御を行う装置を同一筐体内に内蔵させることができるが)、別々の装置としてもよい。別々とする場合、前記無線通信制御を行う装置は、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置の近傍(同一の支柱40)に設置することが好ましい。
【0020】
図2、図3及び図4は、一つの光学ユニット2の斜視図、正面図及び断面図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下LEDという)と、複数のLED7が前面8aに実装されているLED基板8と、収容部材6と、カバー部材9とを有している。また、本実施の形態の光学ユニット2は、LED基板8やLED7による太陽光の反射を防止するための反射防止部材(遮光部材)10を有している。
【0021】
LED基板8は、円形の板状に形成されている。LED基板8の裏面には配線パターンが形成されており、LED7の端子37と繋がっている。LED基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。LED7はレンズ部38を有し、このレンズ部38内にLED素子(図示せず)が設けられている。
【0022】
収容部材6は、鋼板、アルミ又は合成樹脂材により形成され、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有している皿形状であり、前方に開口している。側部6bの開口側の内周には段部6cが形成され、この段部6cに、カバー部材9が着脱可能に取り付けられている。これにより、収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されており、この収容空間部SにLED7及びLED基板8が収容されている。そして、LED基板8は反射防止部材10を介して収容部材6に固定されている。収容空間部Sのうち、LED基板8よりも前方を前空間部S1とし、LED基板8よりも後方を後空間部S2としている。
【0023】
カバー部材9は、ガラス又は樹脂製のレンズで可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。カバー部材9の後面(背面)9aは凹曲面であり、前面9bは凸局面である。ただし、信号灯器1がLED灯器であれば、カバー部材9をレンズではなく、後面9a及び前面9bが平面であるガラス等の平板とすることもできる。なお、この光学ユニット2において、前方とは光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。
【0024】
反射防止部材10は、LED基板8やLED7内の反射鏡7a(図6参照)に対して西日や朝日等の太陽光が入射するのを制限することにより、LED基板8や反射鏡7aによる反射で信号灯器1が見づらくなったり、点灯していない信号灯器1が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりすることを防止するものである。また、反射防止部材10は、LED基板8や、後述するアンテナ4を支持する支持部材としての機能を有している。
【0025】
反射防止部材10は、絶縁部材である合成樹脂材により形成され、図4に示すように、LED基板8よりも前方に配置されている。反射防止部材10は、円形の板状(面状)に形成された板状部10aを備え、この板状部10aは、LED7の前端39よりも後方に配置されている。板状部10aには、LED7の配置に対応して、LED7を挿通させるための複数の挿通孔10bが形成されている。なお、挿通孔10bは、概ね径方向外方へ放射状に配列されている。
この板状部10aは、主にLED基板8に対して太陽光が直接当たることを防止している。反射防止部材10は、黒色の合成樹脂材により形成されるか、少なくとも板状部10aの前面が黒色に塗装され、太陽光の反射が防止されている。反射防止部材10は、板状部10aの外周部を収容部材6の段部6cに嵌合し、段部6cに形成された図示しない爪を板状部10aに係合することによって収容部材6に固定されている。
【0026】
板状部10aの後面にはボス部10cが後方突出状に形成されている。LED基板8は、ボス部10cのネジ穴に螺合されたネジ25によって板状部10aに固定されている。LED基板8の前面8aはボス部10cの先端面に当接されており、板状部10aとLED基板8との間には、ボス部10cの高さに相当する間隔があけられている。
【0027】
図5は、反射防止部材10の後面(背面)図である。反射防止部材10の板状部10aの後面には、円形状のリブ10d,放射状のリブ10eが一体形成されている。また、板状部10aの後面には周方向等間隔に4個の前記ボス部10cが一体形成されている。さらに、板状部10aの後面には、ボス部10cとは周方向及び径方向にずれた位置に、周方向等間隔に4個のボス部10fが一体形成されている。このボス部10fは、後述するグランド素子12を取り付けるための取付部とされる。また、ボス部10fは、ボス部10cよりも低く、リブ10d,10eと同じ高さかやや高く形成されている。各挿通孔10bの周囲には、後方へ突出する筒状部10gが設けられ、この筒状部10gは、ボス部10fと同じ高さかやや低く形成されている。
【0028】
図2〜図4に示すように、反射防止部材10の挿通孔10bの上縁には、庇部10hが前方に突出するように形成されている。図6に示すように、庇部10hは、西日や朝日などの斜め上方から照りつける太陽光OがLED7の反射鏡7aに入射することを防止している。したがって、当該太陽光Oが反射鏡7aによって反射されるのを好適に防止することができる。庇部10hの前端は、LED7の前端よりも突出している。反射防止部材10の筒状部10gは、LED7の外周面を囲い、LED7の姿勢を保持している。
なお、反射防止部材10は、LED基板8による太陽光の反射を防止する機能のみを有するものであってもよく、LED7による太陽光の反射を防止する機能のみを有するものであってもよい。
【0029】
図2〜図4に示すように、光学ユニット2にはアンテナ4が組み込まれている。具体的には、アンテナ4は、収容空間部Sにおいて、カバー部材9とLED基板8との間に配置されている。アンテナ4は、アンテナ用基板16を備えており、このアンテナ用基板16にアンテナ素子11a,11bが設けられている。また、アンテナ用基板16には、さらにストリップ線路31が形成されており、ストリップ線路31も光学ユニット2に組み込まれている。
アンテナ用基板16は矩形の平板からなり、ガラスエポキシ等の誘電体から形成されている。また、アンテナ用基板16の厚さは1mm程度である。
【0030】
アンテナ4は平衡型であり、図示しているものは、平衡二線で給電されるダイポールアンテナである。図8(a)に示すように、アンテナ4は、ダイポール部11と、一対の平衡給電線部32a,32bと、グランド素子12とを備えている。ダイポール部11及び平衡給電線部32a,32bは、アンテナ用基板16の一面側に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。ダイポール部11は、上下方向に向けて延びるように配置された上下一対のアンテナ素子11a,11bからなる。一対の平衡給電線部32a,32bは、前後方向(前方を矢印Fで示す)に向けて延び、互いに平行に配置されている。一方の平衡給電線部32aの前端には、一方のアンテナ素子11aが直交するように接続されている。他方の平衡給電線部32bの前端には他方のアンテナ素子11bが直交するように接続されている。
【0031】
ストリップ線路31は、前記アンテナ用基板16の他面側(ダイポール部11及び平衡給電線部32a,32bとは反対の面)に薄膜導電体としてパターン形成された線路からなる。ストリップ線路31は、アンテナ用基板16の他面側であって平衡給電線部32aの裏側となる位置で前後方向に直線的に延びて形成され、そして、ダイポール部11のアンテナ素子11a,11b間の中央部においてU字状に方向を反転し、アンテナ用基板16の他面側であって平衡給電線部32bの裏側となる位置で前後方向に直線的に延びて形成されている。
ダイポール部11、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミ等による金属箔が好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属箔とすることもできる。
【0032】
アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をアンテナ用基板16に形成する方法として、以下のものがある。アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をそれぞれ単独で薄膜導電体として形成し、各々をアンテナ用基板16に貼り付ける。この場合、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をアンテナ用基板16に粘着部材(粘着テープ)によって接着する。または、アンテナ用基板16に対して金属蒸着を行うことでアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を形成してもよい。または、アンテナ用基板16に対して印刷によってアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を形成してもよい。例えば、一般的なプリント配線基板を作製する場合と同様の工程で、表面に銅箔を施したアンテナ用基板16に、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31のパターンのレジストを印刷し、エッチングを施すことによってこれらアンテナ素子等11a,11b,32a,32b,31を形成してもよい。または、アンテナ用基板16に対して金属メッキを施してアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を形成してもよい。
【0033】
グランド素子12は、図3及び図4に示すように、円形の板状(面状)に形成されており、LED基板8の前面8a側で反射防止部材10に取り付けられている。より具体的には、図6に示すように、反射防止部材10の後面にはボス部10fが形成されており、グランド素子12はボス部10fのネジ穴に後方から螺合されたネジ26によって固定されている。グランド素子12の前面はボス部10fの先端面に当接されており、ボス部10fはグランド素子12と反射防止部材10の板状部10aとの間隔を設定するスペーサとして機能している。また、図5に示すように、ボス部10fと、リブ10d,10e及び筒状部10gとが同じ高さである場合、リブ10d,10e及び筒状部10gもスペーサとして機能する。なお、グランド素子は矩形又は多角形等でもよく、灯器内に収納できる形状であればどういうかたちであってもよい。
【0034】
図4に示すように、グランド素子12は、反射防止部材10のみで固定され、前後方向についてLED基板8とLED7の前端39との間の位置に設けられている。また、グランド素子12は、LED基板8と反射防止部材10の板状部10aと間でLED基板8及び板状部10aと平行に配置されている。グランド素子12には、LED7(LED7のリード線)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されている。この孔14の配置は、LED7の配置と一致させてあり、グランド素子12は網目構造となっている。つまり、ここでいう網目構造には、例えば練炭のように平板に孔がいくつか空けられた構造も含まれる。なお、グランド素子12には、反射防止部材10のボス部10cを貫通させる孔が形成されているが、当該ボス部10cがグランド素子12の外周側に配置されている場合は、当該孔は不要となる。
【0035】
グランド素子12は金属板から形成されている。グランド素子12の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。また、高周波は表面に電流が流れることから、板部材に、金属蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものであってもよい(図示せず)。
【0036】
グランド素子12の前面には、アンテナ用基板16が直立した状態で取り付けられている。具体的には図8(a)(b)に示すように、グランド素子12の前面(金属面)に、2つの取付具33を介してアンテナ用基板16が固定されている。取付具は金属製でL字形状に形成され、その一辺部がグランド素子12に取付ネジ及びナット等の締結具36により固定され、他辺部がアンテナ用基板16の平衡給電線部32a,32bに接触した状態で半田付け等により固定されている。したがって、グランド素子12と平衡給電線部32a,32bとが取付具33を介して接続されている。ここで、グランド素子12及び平衡給電線部32a,32bはともにストリップ線路31に対するグランドとして機能する。そして、ストリップ線路31、平衡給電線部32a,32b、及びグランド素子12によってバルン(平衡不平衡変換部)が構成されている。なお、取付具33は、アンテナ用基板16及びグランド素子12の双方に締結具36を用いて取り付けたり、半田付けによって取り付けたりすることも可能である。
【0037】
グランド素子12は、前後方向(LED7の投光方向)に対して垂直に配置され、このグランド素子12にアンテナ用基板16が直立した状態で取り付けられているので、アンテナ用基板16に形成されたアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31は、アンテナ用基板16の板面と同様に、前後方向に沿うように(前後方向に沿った面(仮想面)と平行に)配置される。
【0038】
図4に示すように、収容部材6(底部6a)には、アンテナ4用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられており、この端子部19に、図1の制御装置5から延びる同軸ケーブル15を接続することができる。そして、この端子部19から後空間部S2へ延びる同軸ケーブル15aが、アンテナ4と接続されている。同軸ケーブル15aは、図8(a)(b)にも示すように、内導体(中心導体)15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有しており、この同軸ケーブル15の中心導体15bが前記ストリップ線路31に接続されており、外導体15dがグランド素子12(平衡給電線部32b)に接続されている。内、外導体15b,15dと各部とを半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
なお、図1の制御装置5から延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED用基板8と接続されている。
【0039】
図4に示すように、アンテナ用基板16は、グランド素子12から前方に突出し、反射防止部材10の板状部10aを貫通している。具体的には、反射防止部材10には、アンテナ用基板16を貫通させるためのスリット(開口部)35が形成されており、アンテナ用基板16はスリット35を貫通して反射防止部材10よりも前方へ突出している。また、図3に示すように、スリット35は、上下方向に沿って長く形成されており、したがって、アンテナ用基板16も上下方向に沿った状態で配置されている。
【0040】
スリット35は、複数のLED7の間に形成されている。LED7は、光学ユニット2の正面の中心から概ね径方向外方へ向けて配列されているので、複数のLED7の間も概ね径方向に沿って直線状に延びている。したがって、スリット35も径方向に沿った方向(上下方向)に直線状に形成することができる。
図4に示すように、スリット35を貫通したアンテナ用基板16のアンテナ素子11a,11bは、LED7の前端39よりも前方でカバー部材9よりも後方に配置されている。すなわち範囲Aに配置されている。
【0041】
以上の形態によれば、前記アンテナ4(ストリップ線路31も含む)は、信号灯器1に組み込まれたものとなっている。そして、アンテナ4のアンテナ素子11a,11bは、LED7の前端39よりも前方に配置されており、これによってLED基板8やLED7が電波の送受信の妨げとなるのを防止することができる。また、アンテナ用基板16やアンテナ素子11a,11bは、前後方向に沿うように配置されているので、光学ユニット2を正面(前方)から見たとき、LED7の光がアンテナ用基板16及びアンテナ素子11a,11bによって遮られず、信号灯器1の光の視認性を損なうことはほとんどない。
また、アンテナ素子11a,11bは上下方向に沿うように配置されているので、地上から斜め上方に信号灯器1を見上げたときにも、LED7の光がアンテナ素子11a,11bによって遮られることはほとんどない。
【0042】
図4に示すように、グランド素子12とLED7とは前後方向の位置について重複しているが、グランド素子12にはLED7(LED7の端子37)を挿通させる開口部として複数の孔14が形成されているので、グランド素子12がLED7に干渉することがないように、グランド素子12の孔14にLED7を挿し入れ、グランド素子12を所定の位置に設置することができる。なお、グランド素子12に形成している前記開口部の構成としては、図示しているように、素子に孔14をあけて素子と干渉しないようにLED7を配置することができ、または、図示しないが、孔を設けずに、例えば素子の導電体部分(導体部分)を蛇行状に配置して(導電体部分を一筆書きになるように配置して)、素子と干渉しないようにLED7を配置することもできる。
【0043】
反射防止部材10にはスリット35が形成されているので、反射防止部材10よりも後方のグランド素子12に立設したアンテナ用基板16を反射防止部材10の前側に突出させ、アンテナ素子11a,11bをLED7の前端よりも前方に配置することができる。
アンテナ4(グランド素子12、アンテナ用基板16)は、反射防止部材10に取り付けられて支持されているため、LED基板8にはアンテナ4を取り付けるためのネジ穴等の取付部を設ける必要がない。したがって、当該取付部を設けるためにLED基板8の回路配線(配線パターン部)が複雑になったり、配線設計の制約が大きくなったりすることもない。また、当該取付部を設けるためにジャンパケーブル等が必要になることもないので、部品数や製造工程が増えることもなく、製造コストの増大を抑制することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、LED基板8も反射防止部材10に取り付けられている。したがって、反射防止部材10には、アンテナ4及びLED基板8が取り付けられ、これらは一体化されている。そのため、これらの一体化された部品を1つのユニットとして構成することができる。そして、反射防止部材10を収容部材6に取り付ければ、このユニット全体を収容部材6に取り付けることができるので、収容部材6への当該ユニットの取り付けが容易になる。収容部材6には、反射防止部材10用の取付部を設ければ足りるため、構造を簡素化することができる。ただし、収容部材6には、反射防止部材10以外の部品をサポートするための部材が設けられていてもよい。
【0045】
反射防止部材10は、図7に示すような構造とすることもできる。この反射防止部材10には庇部が設けられておらず、反射防止部材10の板状部10aはLED7の前端39に略一致する位置(板状部10aの厚さ内にLED7の前端39が含まれる位置)に配置されている。また、挿通孔10bの中心はLED7の中心よりもやや下側に配置されている。このような構造により、庇部がなくても斜め上方から照りつける太陽光Oが反射鏡7aによって反射されるのを好適に防止することができる。なお、図7のように、板状部10aがLED7の前端39に略一致する形態も、図6の場合と同様に、板状部10aがLED7の前端39よりも後方にある場合に含まれる。また、図示しないが、板状部10aは、LED7の前端39よりも前方に配置することも可能である。
【0046】
また、反射防止部材10の後面には、図4に示すようなボス10fではなく、反射防止部材10とは別体のスペーサ28が設けられ、このスペーサ28を貫通するボルト29とナット30とによって板状部10aにグランド素子12が固定されている。
【0047】
前述のように、アンテナ素子11a,11bをLED7の前端よりも前方に配置し、前後方向及び上下方向に沿うように配置した場合、正面からの信号灯器1の視認性は十分に確保することができる。しかし、信号灯器1を左右斜め前方から見たときにアンテナ用基板16によって一部のLED7が隠れてしまい、同方向からの信号灯器1の視認性が下がる可能性がある(図2参照)。これを防止するため、アンテナ用基板16や、これに形成する線路11a,11b、32a,32b、31を可視光透過性を有する(可視光に対して透明である)構成とすることも可能である。
【0048】
例えば、アンテナ用基板16は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル又はポリエチレンテレフタラート等の可視光透過性を有する材質とする。そして、このアンテナ用基板16上のアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をメッシュ構造とすることにより、可視光透過性を持たせることができる。
【0049】
アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31をメッシュ構造とするために、アンテナ用基板16の一面及び他面に、金属膜(金属薄膜)による網目を形成することができる。この金属膜の網目によるアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31の具体例としては、アンテナ用基板16の面に、例えば線幅10μmであってピッチ(メッシュの間隔)を100μmとする導線部からなる微細なメッシュを形成すればよい。このようにアンテナ用基板16に微細なメッシュを形成する場合、線幅が1μm以上で50μm以下であり、ピッチが50μm以上で1000μm以下とするのが好ましく、さらには、線幅が5μm以上で50μm以下であり、ピッチが100μm以上で1000μm以下とするのが好ましい。
なお、メッシュ形状は、四角形状に限らず、三角形状、ハニカム形状とすることができ、また、全体として放射形状(蜘蛛の巣形状)等とすることができる。
【0050】
また、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31に可視光透過性を持たせるために、これらを、可視光透過性を有する薄膜導電体(薄膜金属)とすることができる。そして、この薄膜導電体を前記アンテナ用基板16に形成することで、アンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ線路31を薄く、所定の形状に形成することができる。この場合、薄膜導電体の厚さを1μm以上であり100μm以下とするのが好ましく、これにより、可視光透過性を有するものとなる。
【0051】
図9は、アンテナ4を光学ユニット2に内蔵したアンテナ内蔵型信号灯器の他の実施の形態を示す正面図である。この実施の形態と、図3に示す実施の形態との違いは、アンテナ用基板16(アンテナ素子11a,11b)が、前後方向かつ左右方向に沿うように配置されている点であり、その他の構成は同様である。
この実施の形態の場合、正面及び左右斜め前方からの信号灯器1の視認性は十分に確保することができる。ただし、上下斜め前方から信号灯器1を見た場合、一部のLED7がアンテナ用基板16によって隠れてしまい、同方向からの信号灯器1の視認性が下がる可能性がある。同方向からの視認性を高めるため、上述したようにアンテナ用基板16やこれに形成する線路11a,11b、32a,32b、31に可視光透過性を持たせてもよい。
【0052】
図10は、アンテナ4を光学ユニット2に内蔵したアンテナ内蔵型信号灯器の他の実施の形態を示す正面図である。この実施の形態と、図3に示す実施の形態との違いは、アンテナ4のアンテナ用基板16が2つ備えられ、2つのアンテナ用基板16が十字状に直交して配置されたものである。この場合、各アンテナ用基板16に形成されたアンテナ素子11a,11b、平衡給電線部32a,32b、及びストリップ素子31は互いに接しない配置とする。これによって、90°角度のずれた(直交する)デュアル偏波のアンテナ4を構成することができる。また、この場合、2つのアンテナ用基板16は、いずれも前後方向に沿った配置となるため、正面からの信号灯器1の視認性を阻害することはほとんどない。なお、2つのアンテナ用基板16は、45°傾けることによってX字状に配置することも可能である。2つ(または3以上)のアンテナ用基板16を用いる例として、2つのアンテナ用基板16を交差させることなく横並べにしたり、平行に配置したり、T字状、L字状に配置したりすることも可能である。また、90°角度のずれた(直交する)2つの偏波のアンテナ4に、それぞれ同振幅(同強度)で90°位相のずれた信号を入力することによって、2つのアンテナ4を1つの円偏波のアンテナ4として使用することも可能である。
【0053】
図11は、アンテナ4を光学ユニット2に内蔵したアンテナ内蔵型信号灯器の他の実施の形態を示す側面図である。この実施の形態では、アンテナ4が、グランド素子12を備えておらず、アンテナ用基板16には、2つの平衡給電線部32a,32bを短絡する部分34が形成され、ストリップ線路31には同軸ケーブル15の中心導体15bが接続され、平衡給電線部32a,32b又は部分34に同軸ケーブル15aの外導体15dが接続されている。したがって、平衡給電線部32a,32b、部分34がストリップ線路31のグランドとして機能している。そして、アンテナ用基板16は、直接、反射防止部材10の前面に取付具33’を介して固定されている。なお、この実施の形態の場合、反射防止部材10には、同軸ケーブル15aを貫通させる孔が形成される。
本実施形態では、アンテナ4の構成がコンパクトとなり、光学ユニット2内に組み込み易くなり、しかも、反射防止部材10は、アンテナ用基板16を貫通させるためのスリットが必要ないので、構造が簡単になる。ただし、この構造のアンテナ4において、反射防止部材10にスリットを形成し、アンテナ用基板16の一部をスリットに挿入させたうえで、アンテナ用基板16を反射防止部材10に固定してもよい。
【0054】
なお、反射防止部材10が、導電率の高い材料(例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属)で形成されている場合には、この反射防止部材10をグランド素子12として用い、反射防止部材10に図8に示す形態のアンテナ用基板16を取り付けることも可能である。このように、反射防止部材10にグランド素子12としての機能を持たせることによって、アンテナ4又は光学ユニット2を構成する部品が少なくなり、コスト低減や構造の簡素化、収容部材6の小型化(薄型化)が可能となる。反射防止部材10は、アンテナ用基板16を貫通させるためのスリットが必要ないので、構造が簡単になる。
【0055】
反射防止部材10をグランド素子12として用いるための別の例として、合成樹脂材により形成された反射防止部材10の前面に、金属蒸着したものや金属メッキを施し、グランド素子12とすることもできる。また、グランド素子12として機能する部分(例えば、反射防止部材10の内周側)のみを金属で形成し、反射防止部材10のみとして機能する部分(例えば外周側)を合成樹脂材で形成することもできる。これらの場合、反射防止部材10の全体を金属によって構成する場合に比べて、重量を抑制することができる。
【0056】
以上の各実施の形態によれば、アンテナ4は信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれたものとなる。なお、図1の信号灯器1は三つの光学ユニット2を有しており、それぞれの光学ユニット2にアンテナ4が組み込まれている。これにより、アンテナ4を目立たなくして信号灯器1に設置することができ、道路の美観を損なうことがない。そして、アンテナ4が信号灯器1の光学ユニット2に組み込まれていることから、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。さらに、アンテナ4が露出した状態(突出した状態)にないため、信号灯器1を取り付けるための支柱40及びアーム41(図1)の設計において、アンテナ4が受ける風荷重を追加的に考慮する必要がない。また、アンテナ4に対する防錆、防塵についても追加的に考慮する必要がない。
【0057】
また、交通用の信号灯器1は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置されているため、各実施の形態の信号灯器を道路の所定位置に設置することで、アンテナ4と車両の車載機との間で無線通信を行う上で、見通しが良好な状態が自然と得られる。したがって、この光学ユニット2に組み込んだアンテナ4を、路車間で無線通信を行う高度道路交通システム(ITS)に活用することができ、また、良好な通信状態が得られる。
【0058】
なお、本実施例に記載の交通信号灯器1を制御する制御装置5(交通信号制御機)は、アンテナ4を介して、交通信号灯器1を設置した道路もしくは近傍の道路等を走行する車両に対して、前記交通信号灯器1の現在及び将来の表示に関する信号情報を提供することができる。
信号情報としては、交通信号灯器1が表示する現在もしくは将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報等を含むものである。
例えば、現在表示している灯色は青信号でその継続予定時間は5秒であり、その次に表示する灯色は黄信号でその継続予定時間は8秒であり、その次に表示する灯色は右折青矢印灯でその継続予定時間は5乃至10秒である、といった情報を所定の形式で表現して含ませるとよい。なお、提供するのは現在表示している灯色とその継続時間だけとしてもよいし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしてもよい。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませてもよい。
【0059】
そして、前記信号情報を受信した車両側の車載コンピュータは、停止線までの距離と車両の走行速度や加速度等から、停止線に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。そして、例えば現時点で青信号を表示していたとしても、停止線に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線の手前で停止するように、車載コンピュータは制御すればよい。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、速度を維持するように制御すればよい。
また、車載コンピュータは、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしてもよい。
また、車載コンピュータは、前記判断の結果を車両の搭乗者に対して、音声や画像情報によって通知するようにしてもよい。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置の画面上に文字や図柄で表示したりしてもよい。
【0060】
また、この発明の灯器は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。また、前述の実施の形態では、アンテナ用基板16にアンテナ素子11a,11bや平衡給電線部32a,32bを形成したものとしているが、アンテナ用基板16を備えずに、アンテナ素子11a,11bや平衡給電線部32a,32bを板金製としたり、線材(電線)により形成したりすることもできる。平衡型のアンテナとしては、前記ダイポールアンテナ以外であってもよく、ループアンテナとしてもよい。さらにこの発明は、信号灯器以外に道路の照明用の照明灯器であってもよい。この場合、発光体として水銀灯やナトリウムランプがある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の灯器の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】光学ユニットの斜視図である。
【図3】光学ユニットの正面図である。
【図4】光学ユニットの断面図である。
【図5】反射防止部材の背面図である。
【図6】反射防止部材に対するグランド素子の取付部分を拡大して示す断面図である。
【図7】別の形態の反射防止部材と、この反射部材に対するグランド素子の取付部分の別の例を拡大して示す断面図である。
【図8】(a)はアンテナ用基板を拡大して示す側面図、(b)は同底面図である。
【図9】さらに別の実施の形態の光学ユニット及びアンテナを示す正面図である。
【図10】さらに別の実施の形態の光学ユニット及びアンテナを示す正面図である。
【図11】さらに別の実施の形態のアンテナ用基板を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 信号灯器(灯器)
2 光学ユニット
4 アンテナ
5 制御装置(交通信号制御機)
7 LED(発光体)
8 LED基板(発光体用基板)
9 カバー部材
10 反射防止部材(支持部材)
11a,11b アンテナ素子
12 グランド素子
16 アンテナ用基板
35 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記光学ユニットが、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材を有し、
前記アンテナ素子が、前記カバー部材と前記発光体の前端との間に配置されている請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
前記光学ユニットが、発光ダイオードからなる前記発光体を複数有し、
前記アンテナ素子が、前方からみて複数の前記発光ダイオード間に対応して配置されている請求項1又は2に記載の灯器。
【請求項4】
前記アンテナ素子が、アンテナ用基板にパターン形成された線路からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の灯器。
【請求項5】
前記アンテナ用基板及び前記アンテナ素子が可視光透過性を有している請求項4に記載の灯器。
【請求項6】
前記光学ユニットが前記発光体を前面に実装した発光体用基板を備え、
前記アンテナが、前記発光体用基板の前方に配置された支持部材によって支持されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の灯器。
【請求項7】
前記アンテナが、前記支持部材よりも後方に配置されかつ当該支持部材によって支持されたグランド素子を有し、前記アンテナ素子が、前記グランド素子に取り付けられ、前記支持部材には前記アンテナ素子を前後方向に貫通させる開口部が形成されている請求項6に記載の灯器。
【請求項8】
前記アンテナが、前記支持部材の前面に取り付けられている請求項6に記載の灯器。
【請求項9】
前記支持部材に、前記アンテナに接続されるケーブルを貫通させる孔が形成されている請求項8に記載の灯器。
【請求項10】
前記支持部材は、前記光学ユニット外部の所定の方向から入射する光が前記発光体基板及び前記発光体の少なくとも一方により反射するのを防止する機能を有している請求項6〜9のいずれか1つに記載の灯器。
【請求項11】
発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項12】
請求項11に記載の交通信号灯器に接続され、前記交通信号灯器の点灯および消灯を行う交通信号制御機であって、
前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されていることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項13】
発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲で前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有する平衡型のアンテナを備えていることを特徴とする灯器用のアンテナユニット。
【請求項1】
発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記光学ユニットが、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材を有し、
前記アンテナ素子が、前記カバー部材と前記発光体の前端との間に配置されている請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
前記光学ユニットが、発光ダイオードからなる前記発光体を複数有し、
前記アンテナ素子が、前方からみて複数の前記発光ダイオード間に対応して配置されている請求項1又は2に記載の灯器。
【請求項4】
前記アンテナ素子が、アンテナ用基板にパターン形成された線路からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の灯器。
【請求項5】
前記アンテナ用基板及び前記アンテナ素子が可視光透過性を有している請求項4に記載の灯器。
【請求項6】
前記光学ユニットが前記発光体を前面に実装した発光体用基板を備え、
前記アンテナが、前記発光体用基板の前方に配置された支持部材によって支持されている請求項1〜5のいずれか1つに記載の灯器。
【請求項7】
前記アンテナが、前記支持部材よりも後方に配置されかつ当該支持部材によって支持されたグランド素子を有し、前記アンテナ素子が、前記グランド素子に取り付けられ、前記支持部材には前記アンテナ素子を前後方向に貫通させる開口部が形成されている請求項6に記載の灯器。
【請求項8】
前記アンテナが、前記支持部材の前面に取り付けられている請求項6に記載の灯器。
【請求項9】
前記支持部材に、前記アンテナに接続されるケーブルを貫通させる孔が形成されている請求項8に記載の灯器。
【請求項10】
前記支持部材は、前記光学ユニット外部の所定の方向から入射する光が前記発光体基板及び前記発光体の少なくとも一方により反射するのを防止する機能を有している請求項6〜9のいずれか1つに記載の灯器。
【請求項11】
発光体を有する光学ユニットと、前記光学ユニットに組み込まれている平衡型のアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記発光体の前端よりも前方に位置しかつ前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有していることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項12】
請求項11に記載の交通信号灯器に接続され、前記交通信号灯器の点灯および消灯を行う交通信号制御機であって、
前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されていることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項13】
発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲で前後方向に沿った面と平行に配置されたアンテナ素子を有する平衡型のアンテナを備えていることを特徴とする灯器用のアンテナユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−169726(P2009−169726A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7838(P2008−7838)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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