説明

炉を操作する方法およびこの方法を行うためのデバイス

本発明は炉(2)を操作する方法に関し、少なくとも1種の金属元素を含む出発材料を溶融し、ある燃料体積流量の燃料およびある酸化剤体積流量の酸化剤で操作される少なくとも1つのバーナー(4)を使用して出発材料を加熱する。排気ガスライン(6)の二次燃焼領域下流の少なくとも1つの測定点(17)で炉(2)の排気ガス温度をモニタし、標準操作状態で目標燃料体積流量と目標酸化剤体積流量をバーナー(4)に送り、排気ガス温度の変化(26)を所定時間間隔で記録し所定限界値(25)と比較する。時間単位当たりの排気ガス温度の変化(26)が閾値(25)より大きい場合、バーナー(4)を所定減少期間、減少操作状態にし、燃料体積流量の酸化剤体積流量に対する比率を以下の動作:A)燃料体積流量の減少体積流量への急な減少およびB)酸化剤体積流量の増加体積流量への急な増加の少なくとも1つによって低下させ、低下期間が経過した後に前記比率を標準操作状態に戻す。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は炉、特に金属、たとえば屑鉄を溶融させるための炉を操作する方法およびデバイスに関する。
【0002】
金属の溶融は所望の結果を達成するのに大量のエネルギーを使用しなければならないエネルギー大量消費プロセスの1つである。炉を操作するための対応する方法が、たとえば、US 6247416により知られている。非常に増加するエネルギーコストと二酸化炭素排出に関する論議とのために、金属を溶融させる溶融プロセスをよりエネルギー効率の良いものにすることが望ましい。
【0003】
これに基づいて、炉を操作する方法であって、満足させるエネルギー需要を減少する方法を提供することが本発明の目的である。この方法を行うための対応するデバイスを提供することも目的である。
【0004】
これらの目的は独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は有利な改良に関する。
【0005】
炉を操作するための本発明による方法であって、少なくとも1種の金属元素を含む出発材料を、ある燃料体積流量の燃料およびある酸化剤体積流量の酸化剤で操作される少なくとも1つのバーナーを使用して前記出発材料を加熱することによって溶融させ、排気ガスラインにおいて二次燃焼領域の下流にある少なくとも1つの測定点で炉の排気ガス温度をモニタし、標準操作状態において設定値燃料体積流量および設定値酸化剤体積流量をバーナーへ送り、排気ガス温度の変化を予め決定できる時間間隔で記録し予め決定できる限界値と比較する方法は、単位時間当たりの排気ガス温度の変化が限界値より大きい場合、バーナーを予め決定できる減少期間にわたって減少操作状態にして、ここで燃料体積流量の酸化剤体積流量に対する比を、以下の手段:
A)燃料体積流量の減少体積流量への予め決定できる急な減少および
B)酸化剤体積流量の増加体積流量への予め決定できる急な増加
のうち少なくとも一方によって低下させ、
減少期間が経過したのちに標準操作状態に戻すことを特徴とする。
【0006】
体積流量の急な増加または減少は体積流量の少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%の即時変化を意味することが意図される。急な変化はしたがってジャンプのような非連続的な変化である。排気ガス温度を測定点においてモニタすることによって排気ガス温度の変化をモニタする。記録した排気ガス温度を比較することによって排気ガス温度の変化を決定できる。バーナーは、好ましくは、操作中にバーナーの火炎が出発材料に触れるおよび/またはその上および/または周りに広がるように構成されている。出発材料は通常、溶融される金属と任意に添加物、たとえば石炭および/または炭素を含有する添加物もしくは化合物とを含む。二次燃料領域は、排気ガスの二次燃焼が、それらが炉から出た後に起こりうる領域を意味することが意図される。特に、このような二次燃焼領域は、特にエアギャップとして形成されうる、炉の下流に空気を供給するための手段の下流にある。
【0007】
溶融される金属はたとえば屑鉄、またはアルミニウムを含んでもよい。出発材料中のさらなる添加物は、不純物によってまたは溶融される品目のコンシステンシーのための構成成分によっても形成される。たとえば、溶融される飲料缶は塗料または残った内容物の形態にある不純物を有する。たとえば、溶融されるモーターは潤滑剤またはトランスミッションオイルの形態にある不純物を有する。溶融される多くの工業的材料はプラスチックの部品、構成部材および/またはコーティングを有する。
【0008】
炉の操作中、大量の炭素または炭素を含有した材料が酸化に突然に利用可能な操作状態が生じる。これは、たとえば、石炭および/または炭素を含有する添加物、たとえばコークスおよび/またはグラファイトまたはプラスチック成分を添加しながら金属を回転炉内で溶融させる際に、回転炉の回転中に大量の石炭または炭素が対応する酸化剤に接触する場合である。たとえば飲料缶、または他のコーティングされたもしくは塗装された金属物体を溶融させる場合、対応するコーティングまたは塗料の酸化が酸化剤と接触するとすぐにまたは対応するコーティングまたは塗料の対応する引火点に達したときに起こる。このような条件は、燃料体積流量および酸化剤体積流量のために、比較的大量の一酸化炭素が形成される状況をもたらす。これを以下一酸化炭素放出と呼ぶ。この一酸化炭素は酸化剤とさらに接触することで二酸化炭素へと酸化されうる。このプロセスは発熱性である。炉の操作条件がそれにより変化しないかまたは僅かしか変化しない場合には、周囲空気が排気ガスを冷却するためにしばしば排気ガス中に供給されるので、この一酸化炭素放出および続いての一酸化炭素の二酸化炭素への酸化は排気ガス温度の著しい急上昇をもたらす。これは、たとえば、燃料供給、すなわち燃料体積流量または酸化剤体積流量が小さなステップで僅かしか変化しない場合である。次に排気ガス温度の激しい上昇、たとえば300℃以上の上昇が新鮮な空気と接触するいわゆる二次燃焼の際に起こる。これは、排気ガス系で起こるため、出発材料を溶融させるのに事実上利用できない温度上昇である。しかし、温度上昇は排気ガス系、特にその耐火被覆により大きな応力をもたらす。
【0009】
本発明によると、一酸化炭素放出とともに起こる排気ガスの激しい温度上昇が検出され、燃料体積流量の減少体積流量への予め決定できる急な減少が続けて直ちに行われる。この減少体積流量は設定値燃料体積流量とは相当、たとえば10%以上異なる。燃料供給の急な減少がこのように行われる一方で、酸化剤体積流量は一定に保たれる。一酸化炭素は酸化され続けるので、実質的に一定の燃料体積流量での状況と比較すれば排気ガス温度の著しい低下は起こるが、それは一酸化炭素放出物の酸化のおかげで高いままである。このようにして、排気ガスラインの材料は熱的な応力をあまり受けず、それによってより長い有効寿命を有する。
【0010】
代わりとしてまたはこれに加えて、酸化剤体積流量を予め定められた増加体積流量へ急に増やしてもよい。このようにすると、一酸化炭素放出物の酸化が制御された方法で炉内において既に行われるので、高い溶融能力を達成できる。これは溶融プロセスをより効率的にする。
【0011】
原理的には、燃料体積流量の酸化剤体積流量に対する比の急な減少はより効率のよいプロセス管理をもたらし、場合により炉材料への応力をあまり与えない。
【0012】
特に、炭化水素などの有機化合物、たとえば天然ガスを燃料として使用してもよい。
【0013】
本発明による方法の有利な形態によると、限界値はこの限界値が通常の測定値の変動よりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍大きくなるように選択される。
【0014】
ここで、通常の測定値変動は実験的に測定した温度の値の通常の広がりに加えて、一酸化炭素放出を原因としない僅かな温度変化を意味することを意図している。限界値と通常の測定値の変動との間の少なくとも2という倍数によって達成できる効果は、減少操作状態における意図しないおよび不必要な操作を避けられることである。
【0015】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、限界値を、それが炉内での一酸化炭素放出による温度上昇の端に対応するように選択する。
【0016】
これは、限界値を、著しい温度上昇があった場合にのみ炉の操作状態の標準操作状態から減少操作状態への変更を行うように選択することを意味している。
【0017】
もう1つの有利な形態によると、限界値は少なくとも4ケルビン/sである。
【0018】
限界値が少なくとも10ケルビン/秒である形態が特に好ましい。温度のこれらの激しい急上昇は実際には一酸化炭素放出にもっぱら起因しうる。加熱サイクルによる通常の温度上昇および測定値の変化はほとんどない。限界値を少なくとも5ケルビン/秒、および特に少なくとも10ケルビン/秒かまたは少なくとも20ケルビン/秒に設定することは、一酸化炭素放出の信頼のおける検出をこのようにして確実にすることができるので結果として有利である。
【0019】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、減少期間を、それが炉内での一酸化炭素放出による温度上昇の期間に対応するように選択する。
【0020】
一酸化炭素放出による温度上昇の期間およびレベルの両方は、これらの炉が特定の組成の出発材料、すなわちたとえば特定の量の屑鉄および特定の量の添加石炭で通常は操作されるので、既知であるかまたは測定可能である。これに基づいて、この知識は、限界値および減少期間の両方および/または減少体積流量および/または増加体積流量を確定するのに使用できる。炉に応じて、これは必要とされるエネルギー入力量の最適な減少、または炉効率の対応する増加をもたらす。
【0021】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、減少期間は少なくとも20秒である。
【0022】
通常の一酸化炭素放出は少なくとも20秒の長さの温度上昇、すなわちピークをもたらす。これに基づいて、減少期間を少なくとも20秒に設定することにより、エネルギー投入量の減少を特に有利に達成できる。
【0023】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、減少体積流量を、設定値燃料体積流量と減少体積流量との差に減少期間を乗じたものが、その発熱量が炉内での一酸化炭素放出の平均発熱量に対応する燃料体積に対応するように大きさを決める。代わりとしてまたはこれに加えて、増加体積流量を、一酸化炭素放出物の完全な酸化を行えるように大きさを決めてもよい。
【0024】
発熱量は対応するプロセスにおいて熱的に放出されるエネルギーの量を意味することが意図される。たとえば、1m3の一酸化炭素の二酸化炭素への酸化によって約3.5kWh(キロワット時)に等しいエネルギーの量が放出されることが知られている。排気ガス体積は通常既知であるかまたは排気ガス分析によって測定でき、排気ガス中の通常の一酸化炭素濃度は既知であるかまたは測定できるので、一酸化炭素放出中に一酸化炭素が二酸化炭素へと変換される量を算出することが可能である。燃料投入量の減少すべき程度はこれから算出できる。これは燃料体積流量の減少によりおよび減少期間により達成される。代わりとしてまたはこれに加えて、増加体積流量を、一酸化炭素放出の完全な酸化を行えるように大きさを決めてもよい。
【0025】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、減少体積流量と設定値燃料体積流量との比は0.3ないし0.9の範囲内にある、および/または酸化剤体積流量と増加体積流量との比は0.3ないし0.9の範囲内にある。これらの比は一酸化炭素放出物の二酸化炭素への酸化の熱エネルギーの対応する利用を有利に可能にする。急な燃料体積流量の減少および/または酸化剤体積流量の増加は設置値操作状態から減少操作状態への切り替えの際に行われることが再度指摘されるべきである。10ないし50%の燃料体積流量の減少および/または酸化剤体積流量の増加が好ましい。
【0026】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、酸化剤は以下の物質のうち少なくとも1種を含む:
a)空気および
b)酸素。
【0027】
たとえば純粋な酸素または周囲空気、およびこれらの混合物を酸化剤として使用することが可能である。酸素の割合が100%までの酸化剤が好ましい。
【0028】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、増加体積流量を、それが通常の一酸化炭素放出物の完全な酸化に十分なように大きさを決める。
【0029】
既知の操作条件では、一酸化炭素放出物中の一酸化炭素濃度も通常既知であるかまたは測定でき、そのため増加体積流量を既知の減少期間で調節することができる。
【0030】
もう1つの有利な態様によると、出発材料は炭素を含む。
【0031】
この場合、炭素は化合物たとえば塗料、またはオイル、グリースとして、たとえばモーターなどを溶融させる場合には潤滑油、トランスミッションオイルとして存在してもよいし、または純粋な形態で、たとえば無煙炭の形態で存在してもよい。
【0032】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、出発材料は以下の金属元素のうち1種以上を含む:
a)鉄;
b)アルミニウム;
c)マンガン;
d)錫;
e)亜鉛;および
f)鉛。
【0033】
これらの元素は、特に工業製品たとえばモーター、バッテリーまたは半田の錫をリサイクルする場合には化合物として存在しうる。本発明による方法は屑鉄を溶融させるのに特に有利に使用できる。この場合、高融点のために大量のエネルギーが必要とされるので、大きなエネルギー節約が本発明による方法によって達成できる。
【0034】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、炉は以下のタイプのうち1つの炉である:
a)回転炉;
b)溶銑炉;
c)転炉;
d)可傾炉;
e)溶融/鋳造炉;および
f)タンク炉。
【0035】
特に、回転炉を操作するための本発明による方法の使用は、出発材料の炉内での回転中の一定混合によって一酸化炭素放出がしばしば起こるので有利である。溶銑炉では、一酸化炭素放出はたとえば石炭層じゅうが燃焼したあとに出発材料が溶銑炉内に落ちるときに起こる。
【0036】
本発明による方法のもう1つの有利な形態によると、以下の量のうち少なくとも1つを、通常操作状態での温度変化の関数として連続的に変動させる:
a)設定値燃料体積流量および
b)設定値酸化剤体積流量。
【0037】
したがって、これは温度変化が限界値未満にある状況に当てはまる。このような操作状態では、特に設置値燃料体積流量の変動は、減少体積流量へ急に行われるよりもむしろ、非常に小さな値だけ行われる。設定値燃料体積流量および/または設定値酸化剤体積流量はそれゆえに急よりもむしろ連続的に適合されうる。
【0038】
本発明のもう1つの態様は本発明による方法を行うためのデバイスであって、本発明による方法を行うのに好適でそうすることを意図した制御手段と、炉の排気ガスの温度を記録するための温度センサとを有するデバイスを提供する。
【0039】
本発明によるデバイスの好ましい形態では、排気ガスラインは方向変化部を伴って形成されており、温度センサは方向変化部の下流に形成されている。
【0040】
排気ガスラインの方向変化部は出発材料の一部、たとえば相当の大きさのスクラップ部分が温度センサに到達してそれを傷つけうることを防ぐであろう。代わりとしてまたはこれに加えて、排気ガスラインは傾斜のある部分をさらに有していてもよく、この場合温度センサは好ましくは炉の出口と比較して上がった領域に形成されており、それにより温度センサの保護を達成する。
【0041】
本発明による方法について開示される詳細および利点は本発明によるデバイスにも適用および適合されるであろうし、逆もまた同じである。本発明は添付する図面の助けによって以下により詳細に説明されるが、ここに示す詳細および例示的実施形態に限定されない。
【0042】
それらは以下の事項を模式的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による方法によって操作できる炉。
【図2】本発明による方法を使用しない場合の温度および一酸化炭素濃度のプロファイル。
【図3】本発明による方法を使用しない場合の温度プロファイルの詳細。
【図4】本発明による方法を使用した場合の温度プロファイルの詳細。
【0044】
図1は炉2を操作するための本発明によるデバイス1の例示的実施形態を模式的に示している。炉2は、その中で少なくとも1種の金属元素を含む出発材料、たとえば添加物、たとえば石炭とともに屑鉄が溶融される回転炉である。炉2はバーナー4を備えた入口3を有している。酸化剤、たとえば酸素、空気または酸素富化空気と燃料、たとえば天然ガスとが、バーナー4を通して炉2に導入される。炉2は出口5をさらに有しており、これを通して炉2内での燃焼および酸化プロセスの排気ガスが排気ガスライン6へ移される。排気ガスライン6は方向変化部7を有しており、これは湾曲部8を介して直線部9に接続されている。吸引デバイス10によって、炉2から排気ガスライン6を通して排気ガスを取り出すことができる。排気ガスの濾過および/または少なくとも部分的な化学反応を引き起こす濾過手段11はこの場合排気ガスライン6中に形成されていてもよい。特に排気ガスライン6の湾曲部8と炉2の内側(ここでは図示していない)とは、排気ガス、溶融金属および生じるスラグの高温に対する耐久性を得るために耐火材料12によって覆われている。
【0045】
直線部9の入口領域13は広げられており、その内径は炉2の対応する出口5よりも大きい。入口領域13はさらに炉2の出口5から間隔14をもって形成されている。エアギャップとして働くこのスペーシング14を用いて、周囲空気15が排気ガスへ添加されて後者を冷却するようにする。入ってくる周囲空気15は一酸化炭素の二酸化炭素への酸化を引き起こすことができ、そのため間隔14は空気供給手段として働く。一酸化炭素の二酸化炭素へのこの酸化は二次燃焼と呼ばれる。それは、適切な反応条件が存在する場合に二次燃焼領域27で起こりうる。
【0046】
デバイス1は炉2の排気ガスの温度を測定するための温度センサ16を有している。この温度センサ16は排気ガスラインにおける測定点17に、具体的には排気ガスライン6の方向変化部7における二次燃焼領域27の下流、すなわち湾曲部8の下流に形成されている。温度測定センサ16はデータライン18を介して制御手段19に接続されている。制御手段19では、燃料体積流量が燃料ライン20によって制御され、酸化剤体積流量がバーナー4へ通じている酸化剤ライン21によって制御される。制御手段19は測定点17で排気ガスの温度を記録する。この温度は予め決定できる時間間隔で記録され、記録された温度の値は互いに比較されて時間の関数として温度の変化が算出される。測定点17は排気ガスライン6の二次燃焼領域27の下流に形成されており、ここで適切な反応条件が存在している場合に、特にエアギャップを形成している間隔14を通って入りうる大気酸素と反応できる一酸化炭素を排気ガスが含有している場合に二次燃焼が起こりうる。
【0047】
温度変化が予め決定できる限界値、たとえば5℃/秒を超える場合、炉2を減少操作状態にする。これは、燃料体積流量を設定値燃料体積流量から減少体積流量へ急に低下させる、すなわち減少体積流量が設定値燃料体積流量よりも少なくとも5%低い、好ましくは設定値燃料体積流量よりもさらには少なくとも10%低いことを意味する。減少操作状態は予め決定できる減少期間にわたって維持される。この減少期間の間は、燃料体積流量の変更は行われず、一定のままである。
【0048】
前記期間および設置値燃料体積流量と減少体積流量との間の差は、それらが、炉2内での一酸化炭素放出がこの炉へと導入されるエネルギーに寄与する大きさと同様の発熱量を有する減少燃料供給量に対応するように大きさを決める。酸化剤体積流量を増加させる必要はなく、これは減少燃料供給のために酸化剤の直接的な消費を減らし、変わらずに利用可能な酸化剤、たとえば酸素を、一酸化炭素を二酸化炭素へと酸化させるのに使用できるからである。それによって生じる熱エネルギーを出発材料の炉2内でのさらなる加熱に使用する。
【0049】
一酸化炭素放出は炭素を含有するより大量の材料、たとえば石炭が十分に多量な酸化剤と接触する場合および/または対応する火炎温度に達する場合に起こる。回転炉では、たとえば、これは、屑鉄が石炭、たとえば無煙石炭とともに溶融され、より大きなバッチの石炭が炉2の回転中に酸化剤と接触する場合であろう。その後、完全には酸化されていない炭素から一酸化炭素放出が生じる。この一酸化炭素放出物は対応する高い温度で酸化剤と接触することによって二酸化炭素へとさらに酸化される。このプロセスは発熱性である。燃料供給を減少しない場合、しばしば数百℃より大きい、たとえば350℃以上までの、排気ガスの温度の激しい上昇が起こる。排気ガスの、結果として炉内の出発材料の、ならびに炉のこの加熱は、それが出発材料を溶融させるのに必要ではなく、ならびに炉、特にその内壁および排気ガスライン6上での高い熱応力を伴うので望ましくない。ここで、本発明によるプロセス管理によって、この温度上昇を著しく減少する。これは一方では燃料を節約することによる相当なエネルギー節約と、他方では炉2および排気ガスライン6に対する非常に低い熱応力とをもたらす。濾過手段11も熱応力にあまり曝されない。
【0050】
図2は実験的に測定した排気ガス温度の温度プロファイル22と実験的に測定した回転炉の排気ガス中の一酸化炭素含有量の一酸化炭素プロファイル23とを示している。一酸化炭素プロファイル曲線23が上昇する場合、温度プロファイル曲線22も上昇することがわかる。一酸化炭素放出24は一酸化炭素プロファイル23での対応するピークを指している。実験的な測定は一酸化炭素プロファイルにおける対応するピークが対応する温度プロファイル22における対応するピークにほぼ同時に対応することを明らかにした。
【0051】
図3は図2の温度プロファイル22の詳細を模式的に示している。温度プロファイル22は急勾配の上昇を示している。予め決定できる限界値25と比較することにより、温度の変化26が予め決定できる限界値25よりも大きいことがわかる。この場合、まだ減少操作にない場合には、炉2を標準操作状態から減少操作状態へ変化させる。予め決定できる減少期間が経過したあと、炉2を再び標準操作状態で操作する。
【0052】
図4は本発明による方法を使用する場合の排気ガス中の対応する温度プロファイル22を示している。一酸化炭素放出は非常に低い温度上昇をもたらし、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化の熱エネルギーがよりよく利用される。排気ガス中の一酸化炭素プロファイル23は非常に低いピークを示す。
【0053】
本発明による方法および本発明によるデバイスはたとえば屑鉄を溶融させるための炉2を従来技術により知られている方法と比較して高いエネルギー節約の可能性を以って操作することを有利に可能にし、これは、この場合燃料体積流量の急なおよび著しい減少が、著しい量の一酸化炭素の放出およびさらなる反応に起因しうる温度の大きな変化が起こったときに行われるからである。一酸化炭素の二酸化炭素への燃焼によって生じる熱はたとえば出発材料のさらなる加熱に使用できる。さらに、炉2および排気ガスライン6への熱応力は有利に減少され、これら装置の部材の有効寿命が延長される。
【0054】
参照符号のリスト
1 炉を操作するためのデバイス
2 炉
3 入口
4 バーナー
5 出口
6 排気ガスライン
7 方向変化部
8 湾曲部
9 直線部
10 吸引デバイス
11 濾過手段
12 耐火材料
13 入口領域
14 間隔
15 周囲空気
16 温度測定センサ
17 測定点
18 データライン
19 制御手段
20 燃料ライン
21 酸化剤ライン
22 温度プロファイル
23 一酸化炭素プロファイル
24 一酸化炭素放出
25 限界値
26 温度変化
27 二次燃焼領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉(2)を操作する方法であって、少なくとも1種の金属元素を含む出発材料を、ある燃料体積流量の燃料およびある酸化剤体積流量の酸化剤で操作される少なくとも1つのバーナー(4)を使用して前記出発材料を加熱することによって溶融し、排気ガスライン(6)において二次燃焼領域の下流にある少なくとも1つの測定点(17)で前記炉(2)の排気ガス温度をモニタし、標準操作状態において設定値燃料体積流量および設定値酸化剤体積流量を前記バーナー(4)へ送り、前記排気ガス温度の変化(26)を予め決定できる時間間隔で記録して予め決定できる限界値(25)と比較する方法において、単位時間当たりの前記排気ガス温度の前記変化(26)が前記限界値(25)より大きい場合、前記バーナー(4)を予め決定できる減少期間にわたって減少操作状態にして、ここで前記燃料体積流量の前記酸化剤体積流量に対する比を、以下の手段:
A)前記燃料体積流量の減少体積流量への予め決定できる急な減少および
B)前記酸化剤体積流量の増加体積流量への予め決定できる急な増加
のうち少なくとも一方によって低下させ、
前記減少期間が経過したのちに前記標準操作状態に戻すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記限界値(25)を、それが通常の測定値の変動よりも少なくとも2倍大きくなるように選択する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記限界値(25)を、それが前記炉(2)内での一酸化炭素放出による温度上昇の端に対応するように選択する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記限界値(25)は少なくとも4K/sである請求項1ないし3のうちの1項に記載の方法。
【請求項5】
前記減少期間を、それが前記炉(2)内での一酸化炭素放出による温度上昇の期間に対応するように選択する請求項1ないし4のうちの1項に記載の方法。
【請求項6】
前記減少期間は少なくとも20秒である請求項1ないし5のうちの1項に記載の方法。
【請求項7】
前記減少体積流量を、前記設定値燃料体積流量と前記減少体積流量との差に前記減少期間を乗じたものが、その発熱量が前記炉内での一酸化炭素放出の平均発熱量に対応する燃料体積に対応するように大きさを決める請求項1ないし6のうちの1項に記載の方法。
【請求項8】
前記減少体積流量と前記設定値燃料体積流量との比および/または前記設置値酸化剤体積流量と前記増加体積流量との比が0.3ないし0.9の範囲内にある請求項1ないし7のうちの1項に記載の方法。
【請求項9】
前記増加体積流量を、それが通常の一酸化炭素放出物の完全な酸化に十分なように大きさを決める請求項1ないし8のうちの1項に記載の方法。
【請求項10】
前記出発材料が炭素を含む請求項1ないし9のうちの1項に記載の方法。
【請求項11】
前記出発材料が以下の金属元素のうち1種以上を有する請求項1ないし10のうちの1項に記載の方法:
a)鉄;
b)アルミニウム;
c)マンガン;
d)錫;
e)亜鉛;および
f)鉛。
【請求項12】
前記炉(2)は以下のタイプのうち1つの炉(2)である請求項1ないし11のうちの1項に記載の方法:
a)回転炉;
b)溶銑炉;
c)転炉;
d)可傾炉;
e)溶融/鋳造炉;および
f)タンク炉。
【請求項13】
以下の量のうち少なくとも1つを、前記通常操作状態での前記温度変化の関数として連続的に変動させる請求項1ないし12のうちの1項に記載の方法:
a)前記設定値燃料体積流量および
b)前記設定値酸化剤体積流量。
【請求項14】
請求項1ないし13のうちの1項に記載の方法を行うためのデバイス(1)であって、請求項1ないし13のうちの1項に記載の方法を行うのに好適でそうすることを意図した制御手段(19)と、前記炉(2)の前記排気ガスの温度を記録するための温度センサ(16)とを有するデバイス。
【請求項15】
前記排気ガスライン(6)は方向変化部(7)を伴って形成されており、前記温度センサ(16)は前記方向変化部(7)の下流に形成されている請求項14に記載のデバイス(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−500959(P2012−500959A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524257(P2011−524257)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006249
【国際公開番号】WO2010/022964
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】