説明

炊飯器および炊飯方法

【課題】立上加熱工程における炊きムラを抑制するとともに、沸騰維持工程中の熱の伝わりを良くし、炊きムラを解消することを目的とした圧力炊飯器を提供する。
【解決手段】鍋10内と外気とを連通或は遮断する圧力弁13と、前記圧力弁に付設され該圧力弁を閉状態から強制的に開状態にする圧力弁開放機構19と、加熱手段の加熱量を制御するとともに前記圧力弁開放機構による前記圧力弁の開閉動作の制御を行う制御手段30とを備え、一連の炊飯工程のうち立上加熱工程中に加圧状態にして炊飯を行う圧力式炊飯器において、前記制御手段は、前記立上加熱工程中に、昇圧された前記鍋内圧力を前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を強制的に開作動させて少なくとも0.1気圧以上一気に低下させることにより前記鍋内に瞬間的に気圧変化を発生させて、鍋内の被炊飯物の攪拌対流を起こして炊飯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍋内を加圧状態にして炊飯を行うことにより、短時間で美味しい御飯を炊き上げるようにした圧力式炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炊飯器は、今や一般家庭において必需品の一つとなっており、様々なタイプの炊飯器が開発されている。この電気炊飯器は、鍋内の圧力をほぼ常圧で炊飯する常圧式と、大気圧以上の圧力に昇圧して炊飯する圧力式とに大別されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、炊飯時に鍋内を大気圧以上に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器が開示されている。なお、図11は下記特許文献1に記載された圧力式炊飯器の炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図である。
【0004】
この圧力式炊飯器は、開口を有し内部に米と水とを含む炊飯物が入れられる鍋と、この鍋が収容されて該鍋内の炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、鍋および炊飯器本体の開口を塞ぐ蓋体と、鍋内の圧力を調整する圧力弁と、この圧力弁を強制的に開放させる圧力弁開放機構と、加熱手段の加熱量を制御して所定の炊飯工程を実行するとともに圧力弁を開放制御する制御装置とを備えている。
【0005】
炊飯工程は、鍋内の炊飯物に所定量の水を吸水させる吸水工程と、この吸水工程後に沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程と、この立上加熱工程後に沸騰状態に維持する沸騰維持工程と、この沸騰維持工程後に所定時間掛けて蒸らす蒸らし工程および所定温度で保温する保温工程となっている。
【0006】
制御装置は、立上加熱工程において吸水工程が終了するとフルパワーで鍋を加熱して昇温するとともに圧力弁を閉成して鍋内を1.2気圧に昇圧して該立上加熱工程を実行し、次の沸騰維持工程では圧力弁を少なくとも1回強制的に開放させて、沸騰中の鍋内の圧力を大気圧近傍まで一気に低下させて鍋内の米粒を撹拌する制御を行っている。
【0007】
この圧力式炊飯器によれば、沸騰維持工程中に炊飯物が効率よく攪拌されるので、炊きムラを無くして美味しいご飯を炊き上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−344568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の構成では沸騰維持工程中で鍋内の圧力を低下させ突沸現象を発生させるため、沸騰維持工程中のごはんのムラは抑制して炊き上げることができたが、沸騰以前の米の段階で、鍋内には加熱ムラが発生しており、結果として完全に炊きムラは解消されていなかった。
【0010】
この種の圧力式炊飯器は、吸水工程が終了すると立上加熱工程へ移行し、この立上加熱工程で圧力弁を閉成して加熱手段へフルパワー給電を開始し、鍋内を急速加熱して沸騰するまで昇温するとともに大気圧以上(上記炊飯器では1.2気圧)に昇圧している。この昇温および昇圧により、鍋内の炊飯物は、鍋底に設けた加熱手段で高熱に加熱され、鍋内での温度ムラが出来やすく、沸騰するまでに鍋の内側壁に近い領域にある米は十分に加熱されるものの、内側壁から離れた鍋の中央部から中央上部にある米は加熱不足となり、加熱ムラ(炊きムラ)が生じやすい構造になっていた。
【0011】
さらに、鍋の内側壁に近い領域にある米は、過加熱となり中央部にある米よりも先にでんぷんの糊化が始まり、米同士が結合しあい、沸騰維持工程中に発生する沸騰した泡が鍋底部から真上に突き抜けにくく、熱が伝わらず、特に大容量炊飯時では、鍋内上部中央部付近に炊きムラが生じやすい構造になっていた。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、立上加熱工程における炊きムラを抑制するとともに、沸騰維持工程中の熱の伝わりを良くし、炊きムラを解消することを目的とした圧力炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明の圧力式炊飯器は、水と米とを含む所定量の被炊飯物が投入される鍋と、前記鍋を収容する開口部及び該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記鍋内と外気とを連通或は遮断する圧力弁と、前記圧力弁に付設され該圧力弁を閉状態から強制的に開状態にする圧力弁開放機構と、前記加熱手段の加熱量を制御するとともに前記圧力弁開放機構による前記圧力弁の開閉動作の制御を行う制御手段とを備え、一連の炊飯工程のうち立上加熱工程中に加圧状態にして炊飯を行う圧力式炊飯器において 前記制御手段は、前記立上加熱工程中に、昇圧された前記鍋内圧力を前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を強制的に開作動させて少なくとも0.1気圧一気に低下させることにより加熱中の前記鍋内の圧力を低下させ前記鍋内に瞬間的に気圧変化を発生させて、鍋内の被炊飯物の攪拌対流が起きるように制御することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、炊飯時に鍋内の圧力を高めて炊飯するものにおいて、立上加熱工程の加熱初期から沸騰直前に昇圧された鍋内と大気とを連通して鍋内圧力を低下させるものであるから、鍋内の圧力が抜け大気圧に戻ろうとする際の瞬間的な気圧変化により、鍋底から泡が発生し被炊飯物が鍋内で撹拌対流され、鍋の内側壁に近い領域の被炊飯物と中央部にある被炊飯物が対流を起こし、結果として米粒全体に十分な熱が加わり、立上加熱工程の均一の加熱がなされる。そして、鍋の内側壁で糊化し始め膜となり結合していた米同士が泡の勢いにより膜が破れ次工程の沸騰維持工程で連続して発生する沸騰泡が中央部まで伝わりやすくなり、充分に加熱することが出来、炊きムラを解消することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明は、一連の炊飯工程のうち立上加熱工程中に加圧状態にして炊飯を行う圧力式炊飯器において、昇圧された鍋内圧力を強制的に圧力弁を開作動させて低下させることにより、瞬間的に気圧変化を発生させて、鍋底から泡を発生させ、鍋内の被炊飯物の攪拌対流を起こすことにより、鍋の内側壁に近い領域のお湯と中央部にあるお湯が対流を起こし、結果として米粒全体に十分な熱が加わり立上加熱工程の均一の加熱がなされる。さらに、鍋の内側壁で糊化し、膜となり結合していた米同士が泡の勢いにより膜が破れ次工程の沸騰維持工程で連続して発生する泡が中央部まで伝わりやすくなり、以降の工程からも充分に加熱することが出来やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の正面図である。
【図2】図2は図1の圧力式炊飯器を縦方向で切断した断面図である。
【図3】図3は図2の圧力弁開放機構部分を拡大した拡大断面図である。
【図4】図4は図1の圧力式炊飯器に収容される制御装置のブロック図である。
【図5】図5は本発明の第1の形態における炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図である。
【図6】図6は図4の制御装置で実行する白米・ふつう炊飯コースの立上加熱工程までのフローチャート図である。
【図7】図7は本発明の第2の形態における炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図である。
【図8】図8は本発明の第3の形態における炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図である。
【図9】図9は本発明の第4の形態における炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図である。
【図10】図10は本発明の第5の形態における炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図である。
【図11】図11は従来技術の圧力式炊飯器の炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の発明は、水と米とを含む所定量の被炊飯物が投入される鍋と、前記鍋を収容する開口部及び該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記鍋内と外気とを連通或は遮断する圧力弁と、前記加熱手段の加熱量を制御するとともに前記圧力弁開放機構による前記圧力弁の開作動の制御を行う制御手段とを備え、前記加熱手段および圧力弁開放機構を制御して前記鍋内の炊飯物に吸水させる吸水工程および沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程並びに沸騰状態に維持する沸騰維持工程を含む炊飯工程を実行する制御装置と炊飯メニューを設定して前記炊飯工程を実行させるメニュー設定手段とを備えた圧力式炊飯器において、前記吸水工程終了後の前記立上加熱工程で、前記圧力弁を閉成して前記鍋内を大気圧以上に昇圧して該立上加熱工程を実行し、前記制御手段は、前記立上加熱工程で前記鍋内の被炊飯物の水分が十分にある期間に前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を開作動させて少なくとも0.1気圧一気に低下させ、加熱中の前記鍋内の圧力を一気に低下させ瞬間的に気圧変化を発生さて鍋内の被炊飯物の攪拌対流が起こすことにより、鍋の内側壁に近い領域の被炊飯物と中央部にある被炊飯物が対流を起こし、結果として米粒全体に十分な熱が加わり前記立上加熱工程の均一の加熱がなされる。そして、鍋の内側壁で糊化し始め膜となり結合していた米同士が泡の勢いにより膜が破れ次工程の沸騰維持工程で連続して発生する沸騰泡が中央部まで伝わりやすくなり、充分に加熱することが出来る。
【0018】
第2の発明は、特に、炊飯量の多い場合において、第1の発明の前記立上加熱工程での前記圧力弁の開作動を少なくとも、1回以上加熱中の前記鍋内の圧力を一気に低下させ瞬間的に気圧変化を発生させて鍋内の被炊飯物の攪拌対流が起きることにより、特に、大容量炊飯時の鍋内の被炊飯物の攪拌対流を充分に行うことが出来る。
【0019】
第3の発明は、特に、第1の発明の前記立上加熱工程での前記圧力弁の開作動を前記立上加熱工程で前記蓋体に付設された蒸気センサの検出値が所定の設定基準値になったとき、あるいは、前記吸水工程終了時の前記蒸気センサの検出値から、前記立上加熱工程で所定の温度上昇設定値以上となったとき、前記圧力弁を開動作させることにより、前記圧力弁の開動作を最適なタイミングで行うことが出来る。
【0020】
第4の発明は、特に、第1の発明の前記立上加熱工程での前記圧力弁の開作動を前記立上加熱工程で前記蓋体に付設された圧力センサの検出値が所定の圧力値以上になったとき、前記圧力弁を開動作させることにより、前記圧力弁を開動作を最適なタイミングで行うことが出来る。
【0021】
第5の発明は、特に、第1の発明の前記圧力弁開放機構により前記圧力弁の開作動を前記吸水工程が標準炊飯メニューと比べ長いメニューにおいて複数回開動作させることにより、鍋の内側壁で糊化し始め膜となり結合していた米同士が泡の勢いにより膜が破れ次工程の沸騰維持工程で連続して発生する沸騰泡が中央部まで伝わりやすくなり、特に大容量でも充分に加熱することが出来る。
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための圧力式炊飯器を例示するものであって、本発明をこの圧力式炊飯器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0023】
(実施の形態1)
図1、図2を参照して、本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の概要を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る圧力式炊飯器の正面図、図2は図1の圧力式炊飯器を縦方向で切断した断面図である。
【0024】
圧力式炊飯器1は、炊飯時に鍋内の圧力を大気圧以上、例えば1.2気圧程度に昇圧して炊飯する圧力式炊飯器となっている。なお、この圧力は1.2気圧に限定されるものでなく、それ以上にしてもよい。この圧力式炊飯器1は、図2に示すように、米と水とを含む炊飯物が入れられる大型の鍋10と、上方にこの鍋10が収容される開口および内部にこの鍋10を加熱し炊飯物を加熱する鍋底ヒータH1および側面ヒータH2を有する大型の炊飯器本体(以下、単に「本体」という)2と、この本体2の一側に枢支されて本体2および鍋10の開口を覆い閉塞状態にロックするロック機構16および蓋ヒータH3を有する大判の蓋体11とを備えている。以下、この炊飯器の個々の構成を説明する。
【0025】
まず、主に図2を参照して、本体を説明する。
【0026】
本体2は、外装ケース3と、この外装ケース3に収容されてその中に鍋10が収容される大きさの内ケース4とからなり、外装ケース3と内ケース4との間に所定の隙間が形成されて、この隙間に制御装置30(図4参照)を構成する制御回路基板等(図示省略)が配設されている。また、この隙間には、図示を省略したが本体内部を強制冷却する冷却ファンおよびこの冷却ファンを駆動するモータなどが収容されている。
【0027】
鍋10は、図2に示すように、上方に開口10aおよびこの開口周縁に鍔状のフランジ部10bを有し、所定量の米、例えば3カップ程度を入れて炊飯できる大型容器で形成されている。この鍋10は、熱伝導性の高い材料、例えば銅或いはアルミニウム等からなる内層と、磁性材料、例えばステンレス鋼からなる外層とを有し、内層の表面がフッ素樹脂等で被覆された構成となっている。
【0028】
本体2には、炊飯のスタート、タイマー予約および保温などの操作を行う表示操作部5(図1参照)と、この表示操作部5からの炊飯の開始信号に従って鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3からなる加熱手段および圧力弁開放機構19を制御する制御回路基板等(図示省略)とが設けられている。
【0029】
外装ケース3は、内ケース4より大きな外形を有する化粧ボックスで形成されている。この外装ケース3は、その上方に開口31が設けられている。この外装ケース3は、内部に内ケース4を収容し、両ケース3、4間に制御回路基板等を配設する隙間が設けられているので、外装ケースの開口31は、内ケース4の開口41より大きく、その形状は略楕円形状になっている。なお、内ケースの開口41は、鍋10の開口と同じように略円形状になっている。また、この外装ケース3の正面には、図1に示すように、表示操作部5が設けられている。この表示操作部5は、各種の操作キー類を配設した操作パネル5aと、この操作スイッチ類によって設定される設定状態を表示する表示パネル5bとで構成されている。この操作パネル5aには、スタートキー、メニューキー、予約キー、保温キーなどが設けられている。表示パネル5bには、炊飯する米種、例えば白米・ふつう炊飯コース、その他の炊飯コース、例えば玄米炊飯コースなどが表示されてメニューキーによって、選定できるようになっている。
【0030】
内ケース4は、所定の直径を有する略椀状の底部4aと、この椀状の底部4aの周囲から所定長さ立設された筒状の側壁部4bとを有し、筒状側壁部の上方が開口して、この開口41から鍋10が収容される大きさの容器からなり、耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。椀状の底部4aには、ドーナツ状に巻装された電磁誘導コイルからなる鍋底ヒータH1が支持具(図示省略)で固定されている。鍋底ヒータH1は、例えば1200ワットとなっている。この電磁誘導コイルにより、鍋10にうず電流が発生して鍋自体が自己発熱する。また、この底部4aには、鍋底温度を検出するサーミスタ等からなる底センサSen1が設けられている。この底センサSen1により鍋10の底部の温度を検知することで鍋10内の炊飯量等が検出される。また、筒状の側壁部4bは、その内周壁面、すなわち鍋10が収容される側の内周壁面に、側面ヒータ体H2が装着される取付け部42が形成されている。この取付け部42は、上方の開口41と底部4aとの間にあって、鍋10が収容される側の内周壁面から外周壁面に向かって所定の深さに窪んだ凹み穴となっている。この凹み穴に側面ヒータH2が装着されている。
【0031】
外装ケース3および内ケース4の開口31、41は、図2に示すように、フレームカバー補強部材7を介在してフレームカバー6で覆われる。このフレームカバー6は、内部に鍋10の開口10aより若干大きい開口と、この開口から外方へ延びて内ケース4および外装ケース3の開口41および31を覆う大きさの鍔状の周縁部とを有し、所定の肉厚の略楕円形状の板状体からなり、樹脂成形体で形成されている。このフレームカバー6の表面の開口周辺は、鍋10のフランジ部分10bが載置される載置部となっている。この載置部は、一端に蓋体11のロック機構16が係止される係止部材8が設けられている。この係止部材8は、ロック機構16の係止爪17aが係止される金属板からなる係止片8bと、この係止片8bの上方に位置してこの係止片8bを固定する台座8aとからなり、これらの台座8a、係止片8bおよびフレームカバー6並びに後述するフレームカバー補強部材7には、ネジ孔が形成されて、これらが積層されてネジ止めされる。台座8aの上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。なお、台座8aは、耐熱性の樹脂材で形成されている。また、載置部は、他端に台座8aと同じ水平度で鍋のフランジ部10bが載置される台座8a’および蓋体11を枢支するヒンジ部材9が設けられている。このヒンジ部材9は、フレームカバー6に固定する短片の第1の取付け部9aと、蓋体11の一端が枢支される比較的長片の第2の取付け部9bとを有し、側面視で略L字型をなし堅固な部材で形成されている。この部材は、肉厚を厚くした金属材、例えば2〜5mm程度の肉厚を有するステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金の何れかからなるダイキャスト成型体などで形成され、大判で重量が重い蓋体および鍋内の圧力上昇に耐えるように補強されている。これらの台座8a’、フレームカバー6およびヒンジ部材9並びに第1の取付け部9aにネジ孔が形成されて、これらが積層されてネジ止めされる。台座8a’の上には、鍋10のフランジ部10bが載置される。
【0032】
図2、図3を参照して、蓋体の構成を説明する。なお、図3は図2の圧力弁および圧力弁開放機構の部分を拡大した拡大断面図である。
【0033】
蓋体11は、図2に示すように、鍋10の開口10aを閉蓋する内蓋12と、この内蓋12の上方に位置して本体2の開口部を閉蓋する外蓋15とを有し、外蓋15にはおねば貯留タンク24を装着する窪み部24’が形成されて周囲が化粧カバー18で覆われている。また、外蓋15は、堅固な蓋体フレームで構成されている。
【0034】
内蓋12は、図2、図3に示すように、大型の鍋開口10aを塞ぐ大きさを有する円盤状の大判の蓋体からなり、その上部に圧力弁13、鍋10内の圧力が異常上昇したときに鍋10内の蒸気を外部に逃がすための安全弁V1などが設けられている。この内蓋12の外周囲には、鍋10の開口10aに当接されるシール部材が装着されている。また、この内蓋12の外周囲には外方へ突出して外蓋15の固定手段に着脱自在に係止される係止部材(図示省略)が設けられている。圧力弁13は、図3に示すように、所定径の弁孔131が形成された弁座13aと、この弁孔131を塞ぐように弁座13a上に載置される金属製ボール14と、この金属製ボール14の移動を規制し弁座13a上に保持するカバー13bとで構成されている。この金属製ボール14は、所定の重さを有し、その自重により、弁孔131を閉塞するようになっている。
【0035】
外蓋15は、一端に蓋体11のロック機構16と、このロック機構16に隣接した箇所に圧力弁開放機構19および他端にこの外蓋15がヒンジ部材9に支軸されてしかも開成作動を支援すると共に開成状態に保持するバネ枢支機構(図示省略)が設けられている。また、この外蓋15には、蓋ヒータH3が設けられている。さらに、圧力弁開放機構19とバネ枢支機構との間には、おねば貯留タンク24が装着される窪み部24’が設けられている。ロック機構16は、図2に示すように、外蓋15のフレームに揺動自在に固定された揺動棹17を有し、この揺動棹17の一端に本体2の係止部材8に係止される係止爪17aと、他端に係止爪17aの係止を解除する解除釦17bとが設けられている。
【0036】
圧力弁開放機構19は、図3に示すように、電磁コイルが巻回されたシリンダ20と、電磁コイルの励磁により金属製ボール14を移動させるプランジャ21と、このプランジャ21の先端に装着されたバネ体および作動棹22とで構成されている。バネ体は伸張コイルバネとなっている。作動棹22は、弾力性を有するシール部材23で支持されている。
【0037】
圧力弁開放機構19によって圧力弁13が作動される。圧力弁は、通常、図2に示すように、バネ体の伸張により、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動して弁孔131を開放させている。制御装置30(図4参照)からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると、プランジャ21がバネ体の伸張力に抗してシリンダ20内へ引き込まれて、これまで作動棹22で金属製ボール14を押動していた押動力がなくなり、金属製ボール14が弁座13aの傾斜によって横へ移動して、ボール自身の自重により弁孔131が閉塞される。また、この閉塞状態において、電磁コイルへの励磁がストップされると、再びばね体の伸張力によって、プランジャ21が突出して金属製ボール14を押動して弁孔131が開放される。また、圧力弁13の上部には、蒸気温度を検知する蒸気センサSen2が取付けられている。
【0038】
おねば貯留タンク24は、図2に示すように、圧力弁13を介して放出される蒸気などを吐出させる吐出筒24aと、うまみ成分のおねばを一時貯留する空室24bと、蒸気を外部へ放出する蒸気放出口24cとを有し、空室24bの底部には、貯留されたおねばを鍋10内に戻すおねば戻し弁V2が設けられている。なお、このうまみ成分であるおねばは、圧力弁13から蒸気が噴出する際に、この蒸気と一緒に鍋10内から圧力弁13を通して導出されて、このおねば貯留タンク24の空室24bに一時貯留される。この空室24bに貯留されたおねばは、所定量になるとおねば戻し弁V2が開いて鍋10内へ戻される。このおねば貯留タンク24は、このおねば貯留タンク24の吐出筒24aが外蓋15の窪み部24’に設けた装着孔15aへ圧入固定される。
【0039】
図4を参照して、制御装置を説明する。なお、図4は制御装置のブロック図である。
【0040】
制御装置30は、図4に示すように、種々の演算処理を行うCPU、各種データの記憶を行うROMおよびRAMからなる記憶手段、選択された炊飯メニューを検出する炊飯メニュー検出回路、圧力弁13の開閉時間が設定する弁開閉タイマー、圧力弁13の開閉回数をカウントするカウンタと、鍋10内の加熱温度および加熱時間を制御する加熱制御回路、表示パネル5bに表示される表示画面を制御するための表示パネル制御回路、圧力弁開放機構19を駆動させて圧力弁13の開閉タイミングを制御する圧力弁開放機構19の駆動回路などを備えている。記憶手段には、各種の炊飯メニューに対応した炊飯プログラムが記憶されている。この炊飯プログラムは、吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程、蒸らし工程およびこれらの炊飯工程終了後の保温工程となっている。加熱制御回路は、鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3にそれぞれ接続されている。
【0041】
図5、図6を参照して、この制御装置による炊飯工程を説明する。なお、図5は炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図、図6は白米・ふつう炊飯コースの炊飯工程の立上加熱工程までのフローチャート図である。
【0042】
メニュー選択で白米・ふつう炊飯コースを選定した白米・ふつう炊飯コースの炊飯工程を説明する。
【0043】
(a)吸水工程
表示操作部5の操作で白米・ふつう炊飯コースを選択すると、まず、吸水工程Iが実行される。この吸水工程Iは、圧力弁13を「開」状態にして(S101)、鍋底ヒータH1への給電を開始し(S102)、所定の吸水温度θ2および所定の吸水時間t1を掛けて行われる。吸水温度θ2は、下限値θ21(例えば54℃)および上限値θ22(例えば55℃)の範囲に設定し、吸水時間t1は例えば15分である。吸水温度θ2は、底センサSen1の検出値K1に基づいてコントロールされ、吸水時間t1は吸水タイマー(図示せず)よって計時される(S103)。この吸水工程Iで鍋10内の米に所定量の水が吸水される。
【0044】
(b)立上加熱工程
吸水の計時時間TKが所定の吸水時間t1を経過すると(S104)、立上加熱工程IIへ移行する(S105)。この立上加熱工程では、前の吸水工程Iで圧力弁13を開にした状態から、閉にした状態にして、鍋10を鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3を全てON、すなわちフルパワー給電で加熱する。鍋10をフルパワー給電で加熱すると、鍋10内の鍋底温度は急勾配で上昇を開始する(図5の鍋底温度参照)。この鍋底温度の上昇により、鍋10内に蒸気が発生し、蒸気温度は鍋底温度より若干遅れて上昇する(図5の蒸気温度参照)。また、蒸気が発生しても、最初は、鍋開口と内蓋とをシールするシール部材との間に若干の隙間があることから、この蒸気はこの隙間から漏出し、鍋10内の圧力は上昇しない。したがって、立上加熱工程IIへの移行後の所定時間までは、圧力弁13が閉状態に維持されているが、鍋10内の圧力が上昇しない。鍋底ヒータH1などへのフルパワー給電が継続すると鍋10がさらに加熱されて鍋底温度が上昇するとともに蒸気温度も上昇する。そこで、この蒸気温度を蒸気センサSen2で検出し、この検出値K2が所定の設定基準値θ1(例えば40℃)を検出したときに、圧力弁開放機構19を作動させて圧力弁13を開成させ(S105〜S107)、鍋10内の圧力が略大気圧に戻る程度の時間(すなわち4秒程度)少なくとも0.1気圧以上一気に低下させることにより前記鍋内に瞬間的に気圧変化を発生させて、鍋内の被炊飯物の攪拌対流を起こさせ、再び閉成し圧力炊飯を再開する。この圧力弁13の開成(S105〜S107)は、図5に示すように、立上加熱工程IIの開始時点から所定時間t21だけ遅れている。この所定時間t21は圧力弁13の開成を遅らせる遅延時間となっている。この遅延時間t21は、鍋10内の炊飯量に対応しており、炊飯量が少ないときは、蒸気温度の上昇曲線が速く立ち上がって、設定基準値θ1に速く到達し、その結果、遅延時間が短くなり、また、炊飯量が多くなると、上昇曲線の立ち上りが遅くなって、設定基準値への到達が遅くなり、その結果、遅延時間が長くなる。鍋10内は、この昇温および昇圧された状態で推移する。そして、蒸気センサSen2で蒸気温度を検出し、この検出値K2が所定の設定基準値θ3に到達すると、次の沸騰維持工程IIIへ移行する(S108、S109)。この設定基準値θ3は、例えば75℃である。このプロセスから、立上加熱工程IIでは、この立上加熱時間t2は、炊飯量に対応しており、炊飯量が少ないときは短く、多いときは長くなる。
【0045】
(c)沸騰維持工程
検出蒸気温度K2が設定基準値θ3(例えば75度)になったことを検出すると(S109)、鍋10内で沸騰が始まる沸騰維持工程IIIに移行する。
【0046】
この沸騰維持工程IIIでは、制御装置30からの指令に基づいて、圧力弁開放機構19により圧力弁13の開放制御が行われる。この圧力弁開放制御は、圧力弁13を所定時間単位で数回開放させて、鍋10内の圧力を1.2気圧から大気圧近傍低下させる作動を行って、鍋10内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象を起こさせて炊飯物を攪拌させる。詳述すると、沸騰維持工程IIIへ移行すると、鍋10内の圧力は大気圧以上の約1.2気圧となり、炊飯物はこの圧力に対応する飽和温度で沸騰する。この状態で、制御装置30により圧力弁開放機構19を作動させて金属製ボール14を移動させることで弁孔131を開放させる。この弁孔131の強制的開放により、鍋10内の圧力が大気圧近傍まで一気に低下する。このように鍋10内の圧力を所定沸騰圧力(約1.2気圧)から一気に大気圧近傍まで低下させると、鍋10内は激しい突沸状態となる。この突沸状態になると、鍋10内に泡が発生し、この泡によって米が攪拌される。その結果、米が均一に加熱されて炊きムラなく炊き上げられる。弁孔131を強制的に開放する所定時間は、1回目の弁孔131の強制開動作により鍋10内の圧力が略大気圧に戻る程度の時間(すなわち4秒程度)に定められている。弁孔131を強制的に大気圧に開放する時間をこのように設定することにより、大きな攪拌エネルギーを得ることができる。また、弁孔131の強制的な開放を上記所定時間(4秒間)行った後、圧力弁開放機構19を作動させて再び弁孔131を閉状態とし、所定時間、例えば28秒間再び加熱する。なお、この加熱時間(28秒間)は、鍋10内の圧力が前述の所定圧力(約1.2気圧)まで回復するのに必要な時間である。また、この時間は予め実験的に求められる。そして、この28秒間の加熱の後、再びプランジャ21を作動させて上述した突沸を起こさせるようにしてもよい。この圧力弁開放機構19による圧力弁13の強制的開放は複数回、例えば4回繰り返される。弁孔131を複数回開放する操作を終えると、圧力弁開放機構19の制御が停止され、弁孔131を閉状態とされる。圧力弁13の開放に伴って、おねばが吹出されるが、このおねばは貯留タンク24に一時貯留されて、再び、鍋内へ戻る。この工程により、炊飯量の多少にかかわらず、突沸現象を利用した攪拌によって鍋内で米を十分にかき混ぜるようにして炊飯を行うことができる。
【0047】
(d)蒸らし工程
鍋底温度が所定温度、設定基準値θ5(例えば130℃)になると、鍋10内の水が枯れて強制ドライアップが終了したと判断されるので、加熱手段による加熱作用が停止される。続いて、蒸らし工程IVが開始され、蒸らし時間の計時が開始される。所定の蒸らし時間が所定時間、例えば4分経過すると、圧力弁開放機構19により圧力弁13の弁孔131が強制的に開放され、追い炊き工程に移行される。この追炊き工程に入ると、加熱手段により再加熱して米の表面に付着した水を蒸発させると共に、追い炊き(再加熱)時間の計測を行う。そして、所定の追い炊き時間、例えば3分が経過すると、加熱手段による加熱動作が停止され、蒸らし工程に移行され、蒸らし時間が計時される。そして、蒸らし時間が所定時間、例えば6分経つと、炊飯が終了され、保温工程に移行され、標準炊飯工程が終了する。
【0048】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお本体の構成は実施形態1と同じであるため、説明は省略する。
【0049】
次に実施形態2の動作について図7の炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図を中心に説明する。なお炊飯工程の構成は実施形態1と同じであるため、(b)立ち上げ加熱工程以外の説明は省略する。
【0050】
(b)立上加熱工程
吸水の計時時間TKが所定の吸水時間t1を経過すると(S104)、立上加熱工程IIへ移行する(S105)。この立上加熱工程では、前の吸水工程Iで圧力弁13を開にした状態から、閉にした状態にして、鍋10を鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3を全てON、すなわちフルパワー給電で加熱する。鍋10をフルパワー給電で加熱すると、鍋10内の鍋底温度は急勾配で上昇を開始する(図7の鍋底温度参照)。この鍋底温度の上昇により、鍋10内に蒸気が発生し、蒸気温度は鍋底温度より若干遅れて上昇する(図7の蒸気温度参照)。この蒸気温度は、炊飯量が多い場合は上昇が遅れる。蒸気が発生しても、最初は、鍋開口と内蓋とをシールするシール部材との間に若干の隙間があることから、この蒸気はこの隙間から漏出し、鍋10内の圧力は上昇しない。鍋底ヒータH1などへのフルパワー給電が継続すると鍋10がさらに加熱されて鍋底温度が上昇するが、蒸気温度の上昇が無い場合(例えば10分)のときは、炊飯量が多いと判定する。そしてフルパワー給電が継続し、この蒸気温度を蒸気センサSen2で検出し、この検出値K2が所定の設定基準値θ1(例えば40℃)を検出したときに、圧力弁開放機構19を作動させて圧力弁13を開成させ(S105〜S107)、開放回数は少なくとも1回圧力弁を開動作させる。
【0051】
(実施の形態3)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお本体の構成は実施形態1と同じであるため、説明は省略する。
【0052】
次に実施形態3の動作について図8の炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図を中心に説明する。なお炊飯工程の構成は実施形状1と同じであるため、(b)立ち上げ加熱工程以外の説明は省略する。
【0053】
(b)立上加熱工程
吸水の計時時間TKが所定の吸水時間t1を経過すると(S104)、立上加熱工程IIへ移行する(S105)。この立上加熱工程では、前の吸水工程Iで圧力弁13を開にした状態から、閉にした状態にして、鍋10を鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3を全てON、すなわちフルパワー給電で加熱する。鍋10をフルパワー給電で加熱すると、鍋10内の鍋底温度は急勾配で上昇を開始する(図8の鍋底温度参照)。この鍋底温度の上昇により、鍋10内に蒸気が発生し、蒸気温度は鍋底温度より若干遅れて上昇する(図8の蒸気温度参照)。また、蒸気が発生しても、最初は、鍋開口と内蓋とをシールするシール部材との間に若干の隙間があることから、この蒸気はこの隙間から漏出し、鍋10内の圧力は上昇しない。鍋底ヒータH1などへのフルパワー給電が継続すると鍋10がさらに加熱されて鍋底温度が上昇するとともに蒸気温度も上昇する。前の吸水工程終了時の蒸気センサSen2の検出から立上加熱工程で所定の温度上昇値(例えば3℃上昇)以上となったとき、圧力弁を開動作させる。
【0054】
(実施の形態4)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお本体の構成は実施形態1と同じであるため、説明は省略する。
【0055】
次に実施形態4の動作について図9の炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図を中心に説明する。なお炊飯工程の構成は実施形態1と同じであるため、(b)立ち上げ加熱工程以外の説明は省略する。
【0056】
(b)立上加熱工程
吸水の計時時間TKが所定の吸水時間t1を経過すると(S104)、立上加熱工程IIへ移行する(S105)。この立上加熱工程では、前の吸水工程Iで圧力弁13を開にした状態から、閉にした状態にして、鍋10を鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3を全てON、すなわちフルパワー給電で加熱する。鍋10をフルパワー給電で加熱すると、鍋10内の鍋底温度は急勾配で上昇を開始する(図9の鍋底温度参照)。この鍋底温度の上昇により、鍋10内に蒸気が発生し、最初は、鍋開口と内蓋とをシールするシール部材との間に若干の隙間があることから、この蒸気はこの隙間から漏出し、鍋10内の圧力は上昇しない。なお、この隙間は鍋内圧力が所定値以上に上昇したときに塞がるように設計されている。鍋底ヒータH1などへのフルパワー給電が継続すると鍋10がさらに加熱されて鍋底温度が上昇するとともに圧力も上昇する。そこで、圧力センサ(図示せず)が圧力値を検出し、この検出値K2が所定の設定基準値Σ1(例えば1.05気圧)を検出したとき、圧力弁を開動作させる。
【0057】
(実施の形態5)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。なお本体の構成は実施形態1と同じであるため、説明は省略する。
【0058】
次に実施形態5の動作について図10の炊飯工程における鍋内の温度および圧力の変化を示した温度・圧力曲線図を中心に説明する。なお炊飯工程の構成は実施形態1と同じであるため、(a)吸水工程および(b)立ち上げ加熱工程以外の説明は省略する。
【0059】
(a)吸水工程
表示操作部5の操作で白米・やわらか炊飯コースを選択すると、まず、吸水工程Iが実行される。この吸水工程Iは、圧力弁13を「開」状態にして(S101)、鍋底ヒータH1への給電を開始し(S102)、所定の吸水温度θ2および所定の吸水時間t1を掛けて行われる。吸水温度θ2は、下限値θ21(例えば54℃)および上限値θ22(例えば55℃)の範囲に設定し、吸水時間t1は、白米ふつう炊飯コースと比べ米粒の中心まで水分を浸水させやわらかく炊き上げる必要があるため、通常長く設定されており例えば25分である。吸水温度θ2は、底センサSen1の検出値K1に基づいてコントロールされ、吸水時間t1は吸水タイマー(図示せず)よって計時される(S103)。この吸水工程Iで鍋10内の米に所定量の水が吸水される。
【0060】
(b)立上加熱工程
吸水の計時時間TKが所定の吸水時間t1を経過すると(S104)、立上加熱工程IIへ移行する(S105)。なお白米ふつうコースと比べ、長く吸水時間を有したので、でんぷんや洗米時に発生する破砕米鍋底に溜まりやすく立ち上げ加熱工程における米同士の結合が現れやすく沸騰維持工程中に発生する沸騰した泡が鍋底部から真上に突き抜けにくく、熱が伝わらず、特に大容量炊飯時では、鍋内上部中央部付近に炊きムラが生じやすい構造になっている。この立上加熱工程では、前の吸水工程Iで圧力弁13を開にした状態から、閉にした状態にして、鍋10を鍋底ヒータH1、側面ヒータH2および蓋ヒータH3を全てON、すなわちフルパワー給電で加熱する。鍋10をフルパワー給電で加熱すると、鍋10内の鍋底温度は急勾配で上昇を開始する(図10の鍋底温度参照)。この鍋底温度の上昇により、鍋10内に蒸気が発生し、最初は、鍋開口と内蓋とをシールするシール部材との間に若干の隙間があることから、この蒸気はこの隙間から漏出し、鍋10内の圧力は上昇しない。鍋底ヒータH1などへのフルパワー給電が継続すると鍋10がさらに加熱されて鍋底温度が上昇するとともに蒸気温度も上昇する。そこで、この蒸気温度を蒸気センサSen2で検出し、この検出値K2が所定の設定基準値θ1(例えば40℃)を検出したときに、圧力弁開放機構19を作動させて圧力弁13を開成させ(S105〜S107)、圧力を抜き、再び圧力弁13の閉成開成を繰り返し行い、複数回圧力弁を開動作させる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明にかかる炊飯器および炊飯方法は、一連の炊飯工程のうち立上加熱工程中に加圧状態にして炊飯を行う圧力式炊飯器において、充分に加熱することが可能となり、炊きムラの少なく美味しいごはんを炊飯することが出来る機能を有する炊飯器として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 圧力炊飯器
2 本体
3 外装ケース
4 内ケース
5 表示操作部
10 鍋
11 蓋体
12 内蓋
13 圧力弁
15 外蓋
19 圧力弁開放機構
30 制御装置
I 吸水工程
II 立上加熱工程
III 沸騰維持工程
H1 鍋底ヒータ
H2 側面ヒータ
H3 蓋ヒータ
Sen1 底センサ
Sen2 蒸気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と米とを含む所定量の被炊飯物が投入される鍋と、前記鍋を収容する開口部及び該鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段を有する炊飯器本体と、前記鍋及び前記炊飯器本体の開口部を塞ぐ蓋体と、前記鍋内と外気とを連通或は遮断する圧力弁と、前記加熱手段の加熱量を制御するとともに前記圧力弁開放機構による前記圧力弁の開作動の制御を行う制御手段とを備え、前記加熱手段および圧力弁開放機構を制御して前記鍋内の炊飯物に吸水させる吸水工程および沸騰するまで昇温加熱する立上加熱工程並びに沸騰状態に維持する沸騰維持工程を含む炊飯工程を実行する制御装置と炊飯メニューを設定して前記炊飯工程を実行させるメニュー設定手段とを備えた圧力式炊飯器において、前記吸水工程終了後の前記立上加熱工程で、前記圧力弁を閉成して前記鍋内を大気圧以上に昇圧して該立上加熱工程を実行し、前記制御手段は、前記立上加熱工程で前記鍋内の被炊飯物の水分が十分にある期間に前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を開作動させて少なくとも0.1気圧加熱中の前記鍋内の圧力を低下させることを特徴とする圧力式炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記吸水工程終了後の前記立上加熱工程で、前記圧力弁を閉成して前記鍋内を大気圧以上に昇圧して該立上加熱工程を実行し、前記制御手段は、前記立上加熱工程で前記鍋内の被炊飯物の水分が十分にある期間に前記圧力弁開放機構により前記圧力弁を開作動させて少なくとも、1回加熱中の前記鍋内の圧力を低下させることを特徴とする請求項1に記載の圧力式炊飯器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記立上加熱工程で前記蓋体に付設された蒸気センサの検出値が所定の設定基準値になったとき、あるいは、前記吸水工程終了時の前記蒸気センサの検出値から、前記立上加熱工程で所定の温度上昇設定値以上となったとき、前記圧力弁を開動作させることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力式炊飯器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記立上加熱工程で前記蓋体に付設された圧力センサの検出値が所定の圧力値以上になったとき、前記圧力弁を開動作させることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力式炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記炊飯メニュー設定により前記吸水工程が標準炊飯メニューと比べ長いメニューにおいて前記圧力弁を複数回開動作させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の圧力式炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−81501(P2013−81501A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221610(P2011−221610)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】