説明

炊飯器

【課題】鍋内に高温蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザとしては新たな作業が必要のない炊飯器を提供することを目的としたものである。
【解決手段】鍋2内で発生する蒸気を蓋3外に排出する蒸気筒8は、ご飯の糊化促進時において蒸気の排出を止める開閉弁15と、鍋2内で加熱された水および蒸気を凝縮して保持する吸湿性材料層9と、開閉弁15により蒸気の排出を止めているときに吸湿性材料層9を加熱して蒸気を生成させる吸湿性材料層加熱手段10とを有し、吸湿性材料層9から生成する蒸気を鍋2内に供給するようにした。これにより、ご飯の糊化促進時において高温の蒸気が供給でき、ご飯の乾燥を伴わずにご飯の糊化を促進させることができ、しかも蒸気筒8の吸湿性材料層9から蒸気が生成できるため、ユーザとして新たな手入れや作業が不要なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭または業務用として使用される炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器において、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から蒸気を鍋内に噴射し米飯および水の加熱を行うことにより、ご飯の糊化を促進させて食味を向上させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これは、図4に示すように、炊飯器本体51に着脱自在に内装される鍋52と、鍋52の上面を開閉自在に覆う蓋53と、鍋52を加熱する鍋加熱手段54と、水タンク56と水タンク加熱手段57とを有する蒸気発生手段55とを備えている。そして、鍋加熱手段54で炊飯後、水タンク56内の水を水タンク加熱手段57によって加熱沸騰し、発生した水蒸気を、蒸気管58を通して蒸気孔59から鍋52に供給するようにしている。これにより、上層のご飯を乾燥させることなく、しかも炊きあげ終了後、すぐに高温の水蒸気を供給して糊化を促進させるので、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。
【特許文献1】特開2003−144308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、ユーザは洗米した米と計量した水とを鍋52に入れ、その鍋52を炊飯器本体51の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業に加えて、水タンク56に所定量の水を入れ、水タンク56を炊飯器本体51の所定の位置にセットするという新たな作業を行う必要があった。さらに、水タンク56というこれまでの炊飯器には存在しなかった部品を有するため、ユーザが掃除を行うべき部品点数が多かった。すなわち、従来の炊飯器は高い炊飯性能を実現する(おいしいご飯を炊く)ために、ユーザは新たな作業が必要であった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、鍋内に高温蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進でき、しかもユーザとしては新たな作業が必要のない炊飯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、鍋内で発生する蒸気を蓋外に排出する蒸気筒は、ご飯の糊化促進時において蒸気の排出を止める開閉弁と、鍋内で加熱された水および蒸気を凝縮して保持する吸湿性材料層と、開閉弁により蒸気の排出を止めているときに吸湿性材料層を加熱して蒸気を生成させる吸湿性材料層加熱手段とを有し、吸湿性材料層から生成する蒸気を鍋内に供給するようにしたものである。
【0007】
これにより、ご飯の糊化促進時において吸湿性材料層から高温の蒸気が供給でき、ご飯の乾燥を伴わずにご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上させることができる。しかも炊飯中の水および蒸気を凝縮して保持した蒸気筒の吸湿性材料層から蒸気が生成できるため、ユーザとして新たな手入れや作業が不要なものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器は、ご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進しご飯の食味を向上させることができ、しかもユーザとして新たな手入れや作業が不要なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記蓋に配設され、前記鍋内で発生する蒸気を蓋外に排出する蒸気筒とを備え、前記蒸気筒は、ご飯の糊化促進時において蒸気の排出を止める開閉弁と、前記鍋内で加熱された水および蒸気を凝縮して保持する吸湿性材料層と、開閉弁により蒸気の排出を止めているときに前記吸湿性材料層を加熱して蒸気を生成させる吸湿性材料層加熱手段とを有し、吸湿性材料層から生成する蒸気を鍋内に供給するようにした炊飯器とすることにより、ご飯の糊化促進時において吸湿性材料層から高温の蒸気が供給でき、ご飯の乾燥を伴わずにご飯の糊化を促進させることができ、鍋内全体にわたってご飯の食味を向上させることができる。しかも炊飯中の水および蒸気を凝縮して保持した蒸気筒の吸湿性材料層から蒸気が生成できるため、ユーザとして新たな手入れや作業が不要なものである。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明において、吸湿性材料層から生成する蒸気を過熱する蒸気加熱手段を有することにより、鍋内に供給する蒸気は高温となり、さらにご飯の食味を向上させることができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、炊飯の蒸らし工程において吸湿性材料層から生成する蒸気を鍋内に供給するようにしたことにより、ご飯を焦がすことなく高温で米を加熱でき、澱粉の糊化が進み、おいしいご飯を炊くことができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、蒸気筒は蓋に対して着脱自在に配設したことにより、蒸気筒が蓋から取り外せるので、ユーザが簡単に手入れを行うことができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、炊飯を行う米の性質に応じて吸湿性材料層から生成する蒸気の量を変化させるようにしたことにより、炊飯を行う米が柔らかく炊ける性質の米か、硬く炊ける性質の米かによって、鍋内に投入する蒸気の量を変化させるので、米の性質に合わせて最適な炊飯を行うことができる。蒸気の量は、貯水容積、蒸気の投入時間などによって制御できる。
【0014】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、吸湿性材料層は、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナのうち少なくとも1つを有することにより、水分の吸脱着性能を高くすることができる。
【0015】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、吸湿性材料層に脱臭機能を有する物質を添加したことにより、保温時に発生するご飯の嫌な臭いを抑えることができる。
【0016】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、吸湿性材料層は、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナおよび脱臭機能を有する物質のうち少なくとも1つをハニカム構造体とし、その基材の表面に形成したことにより、水分の吸脱着量および吸脱着効率を高くすることができる。
【0017】
第9の発明は、特に、第8の発明において、基材はセラミックスからなることにより、高い蓄熱性を持ち、炊飯時の熱を蓄熱することで保温時の消費電力を少なくすることができる。
【0018】
第10の発明は、特に、第8の発明において、基材は発熱可能な金属からなることにより、水分の脱離時に基材を直接発熱させ基材表面に形成された吸湿性材料層を直接加熱し、熱伝導特性を向上させ水分の吸脱着量および効率を高くすることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における炊飯器および吸湿性材料層を示したものである。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態においては、上面が開口した炊飯器の本体1と、前記本体1内に着脱自在に収納される鍋2と、前記本体1の上面を開閉自在に覆う蓋3と、前記鍋2の底部を誘導加熱する誘導加熱コイルである鍋加熱手段4と、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5と、蓋3に着脱自在に装備されるとともに中心部に蒸気孔7を有し鍋2の開口部を覆う加熱板6と、前記蓋3に着脱自在に配設され、前記鍋2内で発生する蒸気を蓋3外に排出する蒸気筒8と、加熱板6を誘導加熱する誘導加熱コイルである加熱板加熱手段18と、加熱板6と圧接しその温度を検知する加熱板温度検知手段19と、制御手段50とを備えている。
【0022】
前記加熱板6は、加熱板シールパッキン20を有し、蓋3の下面に取り付けられる。加熱板6の中心部の蒸気孔7と対向する蓋3部分には、蒸気孔22とこれを囲んで加熱板6と圧接する蓋シールパッキン21を設けている。
【0023】
前記蓋3に着脱自在に配設された蒸気筒8は、蓋3外に開口した蒸気孔14と、ご飯の糊化促進時において蒸気孔14を閉じて蒸気の排出を止める開閉弁15と、前記鍋2内で加熱された水および蒸気を凝縮して保持する吸湿性材料層9と、開閉弁15により蒸気の排出を止めているときに前記吸湿性材料層9を加熱して蒸気を生成させる吸湿性材料層加熱手段10と、蓋3の蒸気孔22と対向して設けた蒸気孔23とを有している。そして、炊飯中に前記鍋2内で加熱された水および蒸気を吸湿性材料層9で凝縮して保持するとともに吸湿性材料層9から生成する蒸気を鍋2内に供給するようにしている。
【0024】
前記吸湿性材料層9は、図2に示すように、ゼオライトをセラミックハニカム構造体に担持したものとし、発熱板11を上下から挟み込むようにして固定されている。
【0025】
前記吸湿性材料層加熱手段10は、吸湿性材料層9により挟み込まれた発熱板11と、蓋3に設けられ発熱板11を誘導加熱する吸湿性材料層加熱コイル12とから構成されている。そして、発熱板11の温度は蓋3に設けた蒸気筒温度検知手段13により検知されている。
【0026】
また、開閉弁15は、その下部に上マグネット16が設けられ、これと対向する蓋3位置には、下マグネット17を設けている。これにより、開閉弁15は、下マグネット17の極性に応じて上下方向に動き、蒸気孔14を開閉する。
【0027】
前記制御手段50は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。制御手段50はソフトウエアにより、ユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段19、蒸気筒温度検知手段13から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板6、発熱板11の加熱制御および開閉弁15の開閉制御を行う。また、制御手段50は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段18、吸湿性材料層加熱コイル12の加熱量を、各加熱手段の通電率および/または通電量によって制御する。さらに、制御手段50は、開閉弁15の開閉を下マグネット17の極性を変化させることによって制御する。
【0028】
以上のように構成された本実施の形態における炊飯器の動作を説明する。
【0029】
ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。さらにユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。炊飯工程は、時間順に前炊き、炊き上げ、沸騰維持、蒸らしに大分される。前炊き工程において、鍋2の温度が米の吸水に適した温度(50℃)になるように鍋加熱手段4を制御し、鍋2内の米と水とを加熱する。次に、炊き上げ工程において、鍋2の温度が所定値(100℃)になるまで鍋加熱手段4によって鍋2を所定の熱量で加熱する。この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。沸騰維持工程において、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた所定値になるまで、鍋加熱手段4および加熱板加熱手段18に通電し、米と水を加熱する。
【0030】
前炊き、炊き上げ、沸騰維持の各工程においては、開閉弁15は開いており、吸湿性材料層加熱コイル12には通電されていない。鍋2内で発生する蒸気は蒸気孔7、蒸気孔22を通り、蒸気筒8に蒸気孔23から入る。蒸気筒8の中に入った水および蒸気は、一部が蒸気孔14から炊飯器の外に排出され、残りが吸湿性材料層9に凝縮され保持される。従って、沸騰維持工程において、吹きこぼれが起きない。
【0031】
最後に、蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4および加熱板加熱手段18による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、制御手段50は開閉弁15を閉じ、吸湿性材料層加熱コイル12に通電し発熱板11の温度を所定温度に制御し、吸湿性材料層9に保持されていた水が脱離する温度まで上昇する。その結果、発生した蒸気は、蒸気孔23、22、7を通り鍋2内に供給される。加熱板6と蓋3との間には蓋シールパッキン21が設けられているので、蒸気は確実に鍋2内に供給される。水蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘みおよび香りが増し、鍋2内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。
【0032】
また、水蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4および加熱板加熱手段18による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げを抑えることができる。吸湿性材料層9に保持されていた水が全て蒸発すると、発熱板11の温度が所定温度を超え、蒸気筒温度検知手段13は、発熱板11の温度が所定温度を超えたことを検知し、吸湿性材料層加熱コイル12への通電を止める。
【0033】
また、ユーザは炊飯開始前に、炊飯器の操作パネル(図示しない)を操作し、炊飯する米の銘柄を制御手段50に指定できる。制御手段50は指定された銘柄が、柔らかく炊ける性質の米(魚沼産コシヒカリ、宮城産ササニシキなど)か、標準的な性質の米(一般のコシヒカリ、ササニシキ、夏場の魚沼産コシヒカリ、新米きらら397など)か、硬く炊ける性質の米(きらら397、夏場のコシヒカリ、ササニシキなど)かについて判断し、蒸らし工程における高温蒸気の投入時間(すなわち、高温蒸気の投入量)を制御する。制御手段50は蒸らし工程において、柔らかく炊ける性質の米の場合は高温蒸気を3分間鍋2に供給し、標準的な性質の米の場合は高温蒸気を5分間鍋2に供給し、硬く炊ける性質の米の場合は高温蒸気を8分間鍋2に供給する。
【0034】
このように、本実施の形態における炊飯器は、米の性質に合わせて最適な炊飯を行えるものであり、制御手段50は、高温蒸気を上記した所定時間鍋2に供給した後、開閉弁15を開き、吸湿性材料層9に保持されていた水分を全て蒸発させる。吸湿性材料層9に保持されていた水分が全て蒸発すると、発熱板11の温度が所定温度を超え、蒸気筒温度検知手段13は、発熱板11の温度が所定温度を超えたことを検知し、吸湿性材料層加熱コイル12への通電を止める。
【0035】
なお、蒸気の投入時間に代えて、吸湿性材料層9の容積を米の性質に応じて変化させることによって、蒸気の投入量を変化させる構成としてもよい。なお、所定温度は、典型的には水の沸点温度である。
【0036】
本実施の形態における炊飯器は、ユーザに、洗米した米と計量した水とを鍋2に入れ、その鍋2を本体1の所定の位置にセットするという一般的な炊飯準備作業以外の炊飯準備作業は必要とせず、鍋2内に蒸気を投入しご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進できる。ユーザが手入れを行う部品の点数が、蒸気筒8を有する一般的な炊飯器と同じであり、ユーザは新たな手入れ作業を行う必要がない。また、吸湿性材料層加熱手段10として誘導加熱による加熱を利用するので、蒸気筒8を簡単な構成で着脱可能に蓋3に設けることができる。したがって、吸湿性材料層9を容易に洗浄することが可能であり、常に清潔な状態で炊飯することができる。
【0037】
なお、蒸気を鍋2内に投入する時に、加熱板6の温度を100℃以上に加熱しておけば、蒸気温度をより高温にし、よりおいしいご飯を炊くことができることができる。
【0038】
また、吸湿性材料層9に保持されていた水分を脱離し蒸気を発生させる時に、開閉弁15を強固に閉じて炊飯器内部を大気圧より高い圧力にすれば、蒸気温度を上げる(例えば、105℃)ことができる。
【0039】
また、炊飯時の蒸気の回収手段として吸湿性材料を用いることで、水分の吸着熱として吸湿性材料層9に一部畜熱される。この保持された水分と熱は炊飯終了後の保温時におけるご飯表面からの水分蒸発をなくし、保温時におけるご飯のパサツキを軽減させる効果がある。本実施の形態では、ゼオライトをセラミックハニカム構造体に担持して吸湿性材料層9としたが、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、シリカゲル、活性アルミナを用いても吸湿量を確保できるものである。例えば、吸湿量をより重視する場合には吸湿性樹脂を用い、蓄熱も重視したい場合にはセラミックハニカム構造体にゼオライトやシリカゲルなどのセラミックスを担持して用いればよい。また、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、吸湿性材料層9に吸湿材料と脱臭作用を有する材料、例えば、活性炭を添加するか、あるいは保水性材料自体に脱臭作用を有するもの、例えば、活性炭含有化学繊維などを添加して構成することにより、保温時の嫌な臭いを除去することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、吸湿性材料層9は発熱板11を上下から挟み込むようにして固定しているが、吸湿性材料層9の基材を発熱可能な金属とすることで、誘導加熱により基材を直接発熱させ、基材表面に形成された吸湿性材料層を直接加熱し、熱伝導特性の向上をはかり水分の吸脱着量および効率を高くすることができる。
【0042】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における炊飯器を示したものである。実施の形態1と同じ部分には共通の符号を使用し、説明を省略する。
【0043】
本実施の形態における炊飯器は、蓋3に着脱自在に装備された加熱板40には、中心部に蒸気孔7を有するとともに、加熱板加熱手段18と対向する部分に蒸気過熱部41を形成するくぼみが設けられ、吸湿性材料層9から生成する蒸気を過熱する蒸気加熱手段としている。蒸気加熱手段を構成するくぼみには蒸気過熱部温度検知手段49が設けられ、その外側には蒸気投入孔42が設けられる。
【0044】
また、蓋3下面の中心部の蒸気孔7と対向する部分には、逆止弁付蒸気孔31が設けられる。また、蒸気孔23に対向し、蓋シールパッキン21の外側に逆止弁付蒸気孔32が設けられる。蓋シールパッキン21は、蓋3の下面に、逆止弁付蒸気孔31を囲むように設けられる。加熱板温度検知手段19は、加熱板40の蓋シールパッキン21の外側部分に圧接される。蒸気シールパッキン43は、蒸気過熱部41および蒸気投入孔42を囲むように設けられる。
【0045】
制御手段50は、蒸気過熱部温度検知手段49からも信号が入力され、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、実施の形態1と同様、鍋2、加熱板40、発熱板11の加熱制御および開閉弁15の開閉制御を行う。
【0046】
以上のように構成された本実施の形態における炊飯器の動作を説明する。
【0047】
本実施の形態における炊飯器は、実施の形態1と同様に、鍋2内の米と水とを加熱調理する。鍋2内で発生する水および蒸気は、蒸気孔7、逆止弁付蒸気孔31を通り、蒸気筒8に蒸気孔23から入る。蒸気筒8の中に入った水分の一部は、蒸気孔14から炊飯器の外に排出される。残りの蒸気は、吸湿性材料層9に凝縮して保持される。
【0048】
そして、蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。蒸らし工程では、制御手段50は加熱板加熱手段18に通電し、加熱板温度検知手段19の出力信号に基づき加熱板40の温度を130℃に制御する。また、制御手段50は開閉弁15を閉じ、吸湿性材料層加熱コイル12に通電し発熱板11の温度を所定温度に制御し、吸湿性材料層9に吸着されていた水分が脱離する温度まで上昇する。その結果、発生した蒸気は、蒸気孔23、逆止弁付蒸気孔32を通り、蒸気過熱部41に流れ込み、加熱板40でさらに過熱される。蒸気過熱部41内で発生した100℃以上の温度を有する蒸気は、蒸気投入孔42から鍋2内に供給される。加熱板40と蓋3との間には蒸気シールパッキン43が設けられており、逆止弁付蒸気孔31は閉じており、高温蒸気は確実に鍋2内に供給される。高温の蒸気は細かい粒子となって鍋2内の米の隙間を通り鍋2の下部まで行き渡り、米の一粒一粒を包み込む。従って、ご飯の温度が高温に保たれ糊化が進み、ご飯の甘みおよび香りが増し、鍋2内全体にわたってご飯の食味を向上することができる。高温蒸気を供給しながら、鍋加熱手段4および加熱板加熱手段18による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げを抑えることができる。その他は実施の形態1と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、ご飯の乾燥を伴わずに糊化を促進しご飯の食味を向上させることができ、しかもユーザとして新たな手入れや作業が不要なものであるので、家庭用または業務用の炊飯器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器における吸湿性材料層を一部破断して示した斜視図
【図3】本発明の実施の形態2における炊飯器の断面図
【図4】従来の炊飯器の断面図
【符号の説明】
【0051】
1 本体
2 鍋
3 蓋
4 鍋加熱手段
8 蒸気筒
9 吸湿性材料層
10 吸湿性材料層加熱手段
15 開閉弁
41 蒸気過熱部(蒸気加熱手段)
50 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した本体と、前記本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記本体を開閉自在に覆う蓋と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、前記蓋に配設され、前記鍋内で発生する蒸気を蓋外に排出する蒸気筒とを備え、前記蒸気筒は、ご飯の糊化促進時において蒸気の排出を止める開閉弁と、前記鍋内で加熱された水および蒸気を凝縮して保持する吸湿性材料層と、開閉弁により蒸気の排出を止めているときに前記吸湿性材料層を加熱して蒸気を生成させる吸湿性材料層加熱手段とを有し、吸湿性材料層から生成する蒸気を鍋内に供給するようにした炊飯器。
【請求項2】
吸湿性材料層から生成する蒸気を過熱する蒸気加熱手段を有する請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
炊飯の蒸らし工程において吸湿性材料層から生成する蒸気を鍋内に供給するようにした請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
蒸気筒は蓋に対して着脱自在に配設した請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
炊飯を行う米の性質に応じて吸湿性材料層から生成する蒸気の量を変化させるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
吸湿性材料層は、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナのうち少なくとも1つを有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項7】
吸湿性材料層に脱臭機能を有する物質を添加した請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
吸湿性材料層は、吸湿性繊維、吸湿性樹脂、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナおよび脱臭機能を有する物質のうち少なくとも1つをハニカム構造体とし、その基材の表面に形成した請求項1〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項9】
基材はセラミックスからなる請求項8に記載の炊飯器。
【請求項10】
基材は発熱可能な金属からなる請求項8に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−75315(P2006−75315A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261917(P2004−261917)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】