説明

炊飯器

【課題】加熱手段に適切な時に電力が供給されているか否かの情報を炊飯器内で得ることができる炊飯器を提供する。
【解決手段】交流電源の電力を直流電力に変換する整流手段と、直流電力を高周波電力に変換するインバータ回路と、高周波電力により鍋を加熱する加熱手段と、交流電源から整流手段への電力供給を可能とする通電状態と停止する停止状態とを切り換え可能な電源通電切換手段と、電源通電切換手段を通電状態にする通電信号又は停止状態にする停止信号を出力する制御手段と、電源通電切換手段が通電状態のとき通電状態信号を出力し停止状態のとき停止状態信号を出力する通電状態検出手段とを備え、制御手段は、電源通電切換手段の切換駆動手段に出力する信号に示される状態と通電状態検出手段の出力信号に示される状態とが同一か否かを判断し、同一のときインバータ回路を駆動し、同一でないときインバータ回路を駆動又は停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、待機動作時の消費電力を削減して省エネルギー化を実現する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化等の環境悪化を防止するため、電化製品の省エネルギー化が推進されている。このため、炊飯器においても、炊飯動作及び保温動作を行っていない待機動作時にかかる消費電力を削減することで省エネルギー化を実現するものが、例えば特許文献1(特開2006−326141号公報)に開示されている。
【0003】
図5は、従来の炊飯器の概略構成を示すブロック図である。図5に示すように、従来の炊飯器は、交流電源101に通電し、交流電源101から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する整流手段110と、直流電力を高周波電力に変換するインバータ回路120と、高周波電力により鍋102を加熱する加熱手段130とを備えている。
【0004】
交流電源101と整流手段110との通電経路の片側には、電源通電切換手段140が接続されている。電源通電切換手段140は、交流電源101から整流手段110への交流電力の供給を可能とする通電状態と交流電力の供給を停止する停止状態とを切り換え可能に構成されている。電源通電切換手段140は、切換駆動手段150を介して制御手段160と接続されている。
【0005】
制御手段160は、複数の動作プログラムを予め記憶している。制御手段160は、入力手段(図示せず)を介して使用者の指示を入力され、当該指示に応じた動作プログラムを選択する。この選択した動作プログラムに基づいて制御手段160は、電源通電切換手段140を通電状態にする通電信号又は停止状態にする停止信号のいずれかの信号を切換駆動手段150に出力する。切換駆動手段150は、制御手段160の出力信号に応じて電源通電切換手段140の切り換えを駆動する。また、制御手段160は、加熱駆動手段170を介してインバータ回路120に接続され、前記予め記憶された動作プログラムに基づいてインバータ回路120を駆動制御する。
【0006】
以上のように構成される従来の炊飯器によれば、待機動作時に電源通電切換手段140を停止状態に切り替えることで、整流手段110、インバータ回路120、及び加熱手段130に電力を供給しないようにすることができる。これにより、待機動作時において、整流手段110、インバータ回路120、及び加熱手段130を構成する部品の消費電力を削減することができ、炊飯器の省エネルギー化を実現することができる。
【特許文献1】特開2006−326141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の炊飯器では、電源通電切換手段140として機械的な接点を有するスイッチング素子を用いた場合、当該スイッチング素子が切換駆動手段150の指示に従って適切に切り換わらないことがある。すなわち、スイッチング素子が開状態から閉状態にならないこと、及び接点が溶着するなどによりスイッチング素子が閉状態から開状態にならないことがある。
【0008】
このため、スイッチング素子が開状態から閉状態にならない場合には、整流手段110及びインバータ回路120を介して加熱手段130に電力が供給されず、炊飯動作及び保温動作を行うことができない。一方、スイッチング素子が閉状態から開状態にならない場合には、整流手段110及びインバータ回路120を介して加熱手段130に常に電力が供給されることになるので、炊飯動作及び保温動作は行われるが、省エネルギー化を実現することができない。
【0009】
従来の炊飯器では、前記のような切換不良が発生しているときであっても、加熱手段130に適切な時に電力が供給されているか否かを制御手段160が検知することができないため、炊飯器が異常状態であることに使用者自身が気づく必要がある。
【0010】
すなわち、スイッチング素子が開状態から閉状態にならない切換不良の場合には炊飯動作及び保温動作を行うことができないが、使用者はそれが電源通電切換手段140の切換不良によるものであるのか分からない。このため、使用者は、例えば何度も入力手段を介して炊飯動作の開始を繰り返し指示し、その指示に炊飯器が応じないことで初めて炊飯器が異常状態であることに気づくことができる。一方、スイッチング素子が閉状態から開状態にならない切換不良の場合には、炊飯動作及び保温動作は正常に行われるため、省エネルギー化が実現できていないことに使用者が気づくことは困難である。このため、加熱手段に適切な時に電力が供給されているか否かの情報については、炊飯器内で得ることが好ましい。
【0011】
従って、本発明の目的は、待機動作時の消費電力を削減して省エネルギー化を実現する炊飯器において、加熱手段に適切な時に電力が供給されているか否かの情報を炊飯器内で得ることができる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、整流素子とチョークコイルと高周波平滑コンデンサとを有し、交流電源に通電し、前記交流電源から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する整流手段と、
前記直流電力を高周波電力に変換するインバータ回路と、
前記高周波電力により鍋を加熱する加熱手段と、
前記交流電源と前記整流手段との通電経路の片側に接続され、前記交流電源から前記整流手段への前記交流電力の供給を可能とする通電状態と前記交流電力の供給を停止する停止状態とを切り換え可能な電源通電切換手段と、
前記インバータ回路を駆動制御するとともに、前記電源通電切換手段を前記通電状態にする通電信号又は前記停止状態にする停止信号を出力する制御手段と、
前記制御手段の出力信号に応じて前記電源通電切換手段の切り換えを駆動する切換駆動手段と、
前記電源通電切換手段が前記通電状態又は前記停止状態のいずれの状態であるか検出し、前記電源通電切換手段が前記通電状態のとき通電状態信号を出力し、前記電源通電切換手段が前記停止状態のとき停止状態信号を出力する通電状態検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と、前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一か否かを判断する判断部を有し、
前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一と判断したとき、前記制御手段は前記インバータ回路を駆動可能にし、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記制御手段は前記インバータ回路を駆動可能にするか、もしくは前記インバータ回路の駆動を停止する炊飯器を提供する。
ここで、「インバータ回路を駆動可能にする」とは、インバータ回路が鍋を加熱できる状態にすることをいう。また、「インバータ回路の駆動を停止する」とは、インバータ回路が鍋を加熱できない状態にすることをいう。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記制御手段は、前記切換駆動手段に前記停止信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記インバータ回路を駆動可能にする第1態様に記載の炊飯器を提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記制御手段は、前記切換駆動手段に前記通電信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記インバータ回路の駆動を停止する第2態様に記載の炊飯器を提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、さらに、炊飯器の動作状態を表示する表示手段を備え、
前記制御手段は、前記切換駆動手段に前記停止信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記炊飯器が非省エネルギー状態であることを前記表示手段に表示するとともに、前記切換駆動手段に前記通電信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記炊飯器が異常状態であることを前記表示手段に表示する第1〜3態様のいずれか1つに記載の炊飯器を提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記制御手段は、前記炊飯器が炊飯動作中であるときは前記非省エネルギー状態であることを前記表示手段に表示せず、前記炊飯器が保温動作又は待機動作中であるときに前記非省エネルギー状態であることを前記表示手段に表示する第4態様に記載の炊飯器を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の炊飯器によれば、電源通電切換手段が通電状態又は停止状態のいずれの状態であるか検出する通電状態検出手段を備えるとともに、切換駆動手段に出力する信号に示される電源通電切換手段の状態と、通電状態検出手段の出力信号に示される電源通電切換手段の状態とが同一か否かを判断する判断部を制御手段が備えている。これにより、加熱手段に適切な時に電力が供給されているか否かの情報を炊飯器内で得ることができる。また、前記情報を得ることによって、例えば炊飯器の動作状態を表示する表示手段に表示することで炊飯器の異常状態を使用者に知らせることも可能となる。
【0018】
また、本発明の炊飯器によれば、切換駆動手段に出力する信号に示される電源通電切換手段の状態と、通電状態検出手段の出力信号に示される電源通電切換手段の状態とが、同一のときインバータ回路を駆動可能にし、同一でないときインバータ回路を駆動可能にするか、もしくは駆動を停止するようにしている。すなわち、2つの出力信号に示される電源通電切換手段の状態が同一でないときには、電源通電切換手段に切換不良が生じているので、その切換不良の状態に応じてインバータ回路を駆動可能にするか駆動を停止するかのいずれかを選択して行うようにしている。これにより、例えば電源通電切換手段のスイッチング素子が閉状態から開状態にならない切換不良の場合には、省エネルギー化を実現することはできないが、炊飯動作及び保温動作は正常に行うことができるので、インバータ回路を駆動可能にして炊飯動作及び保温動作を行うことができる。また、省エネルギー化を重視する場合には、インバータ回路の駆動を停止して炊飯動作及び保温動作を停止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
《実施形態》
図1を用いて、本発明の実施形態にかかる炊飯器の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる炊飯器の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態にかかる炊飯器は、整流手段10と、インバータ回路20と、加熱手段の一例である加熱コイル30と、電源通電切換手段40と、切換駆動手段50と、制御手段60と、通電状態検出手段70と、表示手段80とを備えている。
【0022】
整流手段10は、交流電源1の一方の端子(以下、V3端子という)側に直列に接続された整流素子11と、整流素子11の高電位側の出力端14に一端を接続されたチョークコイル12と、チョークコイル12の他端と整流素子11の低電位側の出力端に接続された高周波平滑コンデンサ13とを有している。整流素子11の低電位側の出力端はグランド端子3と接続されている。整流手段10は、交流電源1に通電し、整流素子11とチョークコイル12と高周波平滑コンデンサ13とにより、交流電源1から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する。
【0023】
インバータ回路20は、高周波平滑コンデンサ13と並列に接続された、共振コンデンサ21とスイッチング素子の一例であるトランジスタ22との直列接続体を有している。
また、加熱コイル30は、共振コンデンサ21と並列に接続されている。インバータ回路20は、トランジスタ22がオンオフ制御されたとき、加熱コイル30と共振コンデンサ21とで構成される共振回路により直流電力を高周波電力に変換する。
【0024】
加熱コイル30は、インバータ回路20が変換した高周波電力により鍋2を誘導加熱する。
【0025】
電源通電切換手段40は、交流電源1の他方の端子(以下、V4端子という)側と整流手段10との通電経路の片側に接続されている。電源通電切換手段40は、機械的な接点を有するスイッチング素子(図示せず)を有し、交流電源1のV4端子側から整流手段10への交流電力の供給を可能とする通電状態又は交流電力の供給を停止する停止状態のいずれかの状態に切り換え可能に構成されている。電源通電切換手段40には切換駆動手段50を介して制御手段60が接続されている。
切換駆動手段50は、後述する制御手段60の出力信号に応じて電源通電切換手段40の切り換えを駆動する。
【0026】
制御手段60は、炊飯器の炊飯動作、保温動作、及び待機動作を制御する主制御部61と、複数の動作プログラムを予め記憶している記憶部62と、電源通電切換手段40の通電状態を判断する判断部63とを備えている。制御手段60は、図示していないが、交流電源1の交流電力を変換した直流電力又は別途設けた電源からの直流電力が供給されて、各制御動作を行う。
【0027】
主制御部61は、例えば操作パネルなどの入力手段(図示せず)を介して使用者の指示を入力され、当該指示に応じた動作プログラムを記憶部62より選択する。この選択した動作プログラムに基づいて主制御部61は、電源通電切換手段40を通電状態にする通電信号又は停止状態にする停止信号のいずれかの信号を切換駆動手段50に出力する。また、主制御部61は、インバータ回路20のトランジスタ22のゲートに接続され、記憶部62より選択した動作プログラムに基づいてトランジスタ22をオンオフ制御して、インバータ回路20を駆動制御する。判断部63については後述する。
【0028】
通電状態検出手段70は、交流電源1の両端に接続され、電源通電切換手段40が通電状態又は停止状態のいずれの状態であるか検出する。通電状態検出手段70は、電源通電切換手段40が通電状態のとき通電状態信号を制御手段60に出力し、電源通電切換手段40が停止状態のとき停止状態信号を制御手段60に出力する。
【0029】
より具体的には、通電状態検出手段70は、抵抗71,72,74,77,78と、整流素子73と、スイッチング素子の一例であるトランジスタ75と、電源76とを有している。
抵抗71,72は交流電源1に直列に接続されている。抵抗74と抵抗78とは直列に接続されており、抵抗71と抵抗72との接点V1とグランド端子4とに接続されている。整流素子の一例であるダイオード73は抵抗74に並列に接続されている。トランジスタ75は、ベースが抵抗74の一端に接続され、エミッタが抵抗74の他端に接続され、コレクタが制御手段60の判断部63と抵抗77を介して電源76とに接続されている。トランジスタ75は、所定のしきい値以上の電圧が印加されたときオンし、所定のしきい値より低い電圧が印加されたときオフするように構成されている。
また、トランジスタ75のベースとエミッタ間には並列にダイオード73を接続しており、トランジスタ75のベース・エミッタ間に逆電圧が印加され、トランジスタ75が破壊するのを防止している。
【0030】
制御手段60の判断部63は、主制御部61が切換駆動手段50に出力する信号に示される電源通電切換手段40の状態(通電状態又は停止状態)と、通電状態検出手段70の出力信号に示される電源通電切換手段40の状態(通電状態又は停止状態)とが同一か否かを判断する。2つの出力信号に示される電源通電切換手段40の状態が同一のとき、判断部63は、主制御部61がインバータ回路20を駆動可能な状態に制御するように、主制御部61に駆動可能信号を出力する。主制御部61は、駆動可能信号に応じてインバータ回路20を駆動可能にする。すなわち主制御部61はトランジスタ22をオンオフ制御する。
【0031】
一方、2つの出力信号に示される電源通電切換手段40の状態が同一でないとき、判断部63は、主制御部61がインバータ回路20を駆動可能な状態にするか駆動停止状態にするかのいずれかの状態にするように、主制御部61に駆動可能信号又は駆動停止信号を出力する。より具体的には、主制御部61が切換駆動手段50に停止信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が通電状態信号であるとき、電源通電切換手段40のスイッチング素子が溶着等によって閉状態から開状態に切り換わらないが炊飯動作及び保温動作は行うことができる状態であるので、判断部63は駆動可能信号を主制御部61に出力する。主制御部61は、駆動可能信号に応じてインバータ回路20を駆動可能にする。すなわち主制御部61はトランジスタ22をオンオフ制御する。一方、主制御部61が切換駆動手段50に通電信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が停止状態信号であるとき、電源通電切換手段40のスイッチング素子が開状態から閉状態に切り換わらず、炊飯動作及び保温動作を行うことができない状態であるので、判断部63は駆動停止信号を主制御部61に出力する。主制御部61は、駆動停止信号に応じてインバータ回路20の駆動を停止する。すなわち主制御部61はトランジスタ22をオフ制御にする。
【0032】
表示手段80は、使用者から見えるような位置、例えば炊飯器の操作パネルに配置されている。表示手段80は、主制御部61に接続され、炊飯器の動作状態、例えば炊飯動作、保温動作、待機動作などの状態を表示する。判断部63は、主制御部61が切換駆動手段50に停止信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が通電状態信号であるとき、炊飯器が非省エネルギー状態であること示す非省エネルギー状態信号を主制御部61に出力する。主制御部61は、非省エネルギー状態信号に基づいて、炊飯器が非省エネルギー状態であることを表示手段80に表示する。これにより、使用者は、炊飯器が非省エネルギー状態であることを知ることができる。
また、判断部63は、主制御部61が切換駆動手段50に通電信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が停止状態信号であるとき、炊飯器が異常状態であることを示す異常状態信号を主制御部61に出力する。主制御部61は、異常状態信号に基づいて、炊飯器が異常状態であることを表示手段80に表示する。これにより、使用者は、炊飯器が異常状態であることを知ることができる。
【0033】
次に、以上のように構成される本実施形態の炊飯器において、加熱手段30に適切な時に電力が供給されているか否かの情報を得る方法について、図1〜図4を参照しつつ説明する。図2は、交流電源1のV4端子側の出力電圧の波形図である。図3は、電源通電切換手段40が停止状態における通電状態検知手段70の抵抗71と抵抗72との接点V1の電圧と判断部63への出力電圧信号V2の電圧波形図である。図4は、電源通電切換手段40が通電状態における通電状態検知手段70の抵抗71と抵抗72との接点V1の電圧と判断部63への出力電圧信号V2の電圧波形図である。
【0034】
まず、電源通電切換手段40のスイッチング素子が開状態について説明する。すなわち、電源通電切換手段40は、停止状態になっている。
【0035】
この状態で交流電源1のV4端子側から図2に示すような電圧波形の交流電力が出力されたとき、電源通電切換手段40のスイッチング素子が開状態であるため、整流手段10の整流素子11には、交流電源1に接続されている片側の半波成分だけが入力される。すなわち、交流電源1のV4端子側の電位が+電圧の場合、V4端子から抵抗71と抵抗78と抵抗74を経由して整流素子11の低電位側の出力端(グランド端子3側)に電流が流れ、交流電源1のV3端子側に電流が流れる。一方、交流電源1のV4端子側の電位が−電圧の場合、言い換えると交流電源1のV3端子側の電位が+電圧の場合、V3端子から整流素子11の高電位側の出力端14を経由して低電位側の出力端(グランド端子3側)に電流が流れ、ダイオード73と抵抗78と抵抗71とを経由して交流電源1のV4端子側に電流が流れる。従って、接点V1の電圧波形は、図3に示すような波形になる。
【0036】
接点V1の電圧が所定のしきい値(図3では一点破線で示す)より低いとき、トランジスタ75はオフ状態であるので、電源76より供給される電圧は抵抗77を介して判断部63に供給される。一方、接点V1の電圧が所定のしきい値以下のとき、トランジスタ75はオン状態であるので、電源76より供給される電圧は抵抗77を介してトランジスタ75側に供給される。このため、出力電圧信号V2の電圧波形は図3に示すような波形になる。
【0037】
次に、電源通電切換手段40のスイッチング素子が閉状態について説明する。すなわち、電源通電切換手段40は、通電状態になっている。
【0038】
この状態で交流電源1のV4端子側から図2に示すような電圧波形の交流電力が出力されたとき、電源通電切換手段40のスイッチング素子が閉状態であるため、整流手段10の整流素子11には、交流電源1に接続されている両側の成分が入力される。すなわち、交流電源1のV4端子側の電位が+電圧の場合、V4端子から抵抗71と抵抗78と抵抗74を経由して整流素子11の低電位側の出力端(グランド端子側)3に電流が流れ、交流電源1のV3端子側に電流が流れる。一方、交流電源1のV4端子側の電位が−電圧の場合、言い換えると交流電源1のV3端子側の電位が+電圧の場合、V3端子から抵抗72と抵抗78と抵抗74を経由して整流素子11の低電位側の出力端(グランド端子側)3に電流が流れ、交流電源1のV4端子側に電流が流れる。従って、接点V1の電圧波形は図4に示すような波形になる。
【0039】
接点V1の電圧が所定のしきい値(図4では一点破線で示す)より低いとき、トランジスタ75はオフ状態であるので、電源76より供給される電圧は抵抗77を介して判断部63に供給される。一方、接点V1の電圧が所定のしきい値以下のとき、トランジスタ75はオン状態であるので、電源76より供給される電圧は抵抗77を介してトランジスタ75側に供給される。このため、出力電圧信号V2の電圧波形は図4に示すような波形になる。
【0040】
主制御部61が切換駆動手段50に停止信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が、図3に示すような電源通電切換手段40が停止状態のときの電圧波形であるとき、判断部61は2つの出力信号に示される電源通電切換手段40の状態が同一であると判断する。すなわち、判断部63は炊飯器が適切に動作していると判断する。また、主制御部61が切換駆動手段50に通電信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が、図4に示すような電源通電切換手段40が通電状態のときの電圧波形であるとき、判断部63は2つの出力信号に示される電源通電切換手段40の状態が同一であると判断する。すなわち、判断部63は炊飯器が適切に動作していると判断する。このとき、加熱手段30には適切な時に電力が供給されていることの情報を得ることができる。次いで、判断部63は主制御部61に駆動可能信号を出力する。主制御部61は、駆動可能信号に応じてインバータ回路20を駆動可能にする。なお、このとき、炊飯器が適切に動作していることを主制御部61が表示手段80に表示するようにしてもよい。
【0041】
主制御部61が切換駆動手段50に停止信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が、図4に示すような電源通電切換手段40が通電状態のときの電圧波形であるとき、判断部63は、2つの出力信号に示される電源通電切換手段40の状態が同一でないと判断するとともに、炊飯器が非省エネルギー状態であると判断する。このとき、加熱手段30には適切でない時に電力が供給されていることの情報を得ることができる。次いで、判断部63は、駆動可能信号と非省エネルギー状態信号とを主制御部61に出力する。主制御部61は、駆動可能信号に応じてインバータ回路20を駆動可能にするとともに、非省エネルギー状態信号に基づいて炊飯器が非省エネルギー状態であることを表示手段80に表示する。これにより、使用者は、炊飯器が非省ネルギー状態であることを知ることができる。
【0042】
主制御部61が切換駆動手段50に通電信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が、図3に示すような電源通電切換手段40が停止状態のときの電圧波形であるとき、判断部63は、2つの出力信号に示される電源通電切換手段40の状態が同一でないと判断するとともに、炊飯器が異常状態であると判断する。このとき、加熱手段30には適切な時に電力が供給されていないことの情報を得ることができる。次いで、判断部63は、駆動停止信号と異常状態信号とを主制御部61に出力する。主制御部61は、駆動停止信号に応じてインバータ回路20の駆動を停止するとともに、異常状態信号に基づいて炊飯器が異常状態であることを表示手段80に表示する。これにより、使用者は、炊飯器が異常状態であることを知ることができる。
【0043】
本発明の実施形態の炊飯器によれば、電源通電切換手段40が通電状態又は停止状態のいずれの状態であるか検出する通電状態検出手段70を備えるとともに、切換駆動手段50に出力する信号に示される電源通電切換手段40の状態と、通電状態検出手段70の出力信号に示される電源通電切換手段40の状態とが同一か否かを判断する判断部63を制御手段60が備えている。これにより、加熱手段30に適切な時に電力が供給されているか否かの情報を炊飯器内で得ることができる。
【0044】
また、本発明の実施形態の炊飯器によれば、切換駆動手段50に出力する信号に示される電源通電切換手段40の状態と、通電状態検出手段70の出力信号に示される電源通電切換手段40の状態とが、同一のときインバータ回路20を駆動可能とし、同一でないときインバータ回路20を駆動可能にするか、もしくは駆動を停止するようにしている。すなわち、2つの出力信号に示される電源通電切換手段40の状態が同一でないときには、電源通電切換手段40に切換不良が生じているので、その切換不良の状態に応じてインバータ回路20を駆動可能にするか駆動を停止するかのいずれかを選択して行うようにしている。これにより、例えば電源通電切換手段40のスイッチング素子が閉状態から開状態にならない切換不良の場合には、省エネルギー化を実現することはできないが、炊飯動作及び保温動作は正常に行うことができるので、インバータ回路20を駆動可能にして炊飯動作及び保温動作を行うことができる。
【0045】
なお、前記では、交流電源1に電力が供給されているときについて説明したが、交流電源1に電力が供給されていないときについて、以下に説明する。
交流電源1に電力が供給されていないとき(例えば、炊飯器のコンセントが抜かれているときのような停電状態のとき)においては、交流電源1の両端に接続される通電状態検知手段70には電力が供給されない。このため、図1に示すように構成される通電状態検知手段70は、通電状態信号又は停止状態信号のいずれの信号も出力しない。すなわち、出力電圧信号V2は、一定電圧(例えば0V)のまま変動しない。このため、この一定電圧を判断部63が検知したとき、炊飯器が停電状態であることを示す停電信号を判断部63が出力し、主制御部61が停電信号に基づいて各部及び各手段を制御するように構成することが好ましい。これにより、前記異常状態等の検知に加えて、停電状態も検知することができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、主制御部61が切換駆動手段50に停止信号を出力したときに通電状態検出手段70から出力される信号が通電状態信号であるとき、判断部63が駆動可能信号を出力して、主制御部61がインバータ回路20を駆動可能にするものとしたが、本発明はこれに限定されない。主制御部61がインバータ回路20を駆動可能にする場合には、炊飯器の省エネルギー化を実現できないので、省エネルギー化を重視する場合には、判断部63が駆動停止信号を出力して、主制御部61がインバータ回路20の駆動を停止するようにしてもよい。
【0047】
また、炊飯器が非省エネルギー状態であることを判断部63が表示手段80に表示するのは、炊飯器が非省エネルギー状態であっても炊飯動作及び保温動作は正常に行うことができるので、炊飯器が炊飯動作中でないときに行われることが好ましい。すなわち、炊飯器が保温動作又は待機動作中に行われることが好ましい。これにより、例えば、炊飯器が炊飯動作中のときに使用者が非省エネルギー状態の表示に驚いて誤って炊飯動作を停止してしまうことを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、鍋を加熱する加熱手段に適切な時に電力が供給されているか否かの情報を炊飯器内で得ることができるので、待機動作時の消費電力を削減して省エネルギー化を実現する炊飯器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態にかかる炊飯器の概略構成を示すブロック図である。
【図2】交流電源の出力電圧の波形図である。
【図3】図1の接点V1の電圧波形図である。
【図4】図1の出力電圧信号V2の電圧波形図である。
【図5】従来の炊飯器の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 交流電源
2 鍋
3,4 グランド端子
10 整流手段
11 整流素子
12 チョークコイル
13 高周波平滑コンデンサ
20 インバータ回路
21 共振コンデンサ
22 トランジスタ
30 加熱コイル
40 電源通電切換手段
50 切換駆動手段
60 制御手段
61 主制御部
62 記憶部
63 判断部
70 通電状態検知手段
71,72,74,77 抵抗
73 ダイオード
75 トランジスタ
76 電源
80 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流素子とチョークコイルと高周波平滑コンデンサとを有し、交流電源に通電し、前記交流電源から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する整流手段と、
前記直流電力を高周波電力に変換するインバータ回路と、
前記高周波電力により鍋を加熱する加熱手段と、
前記交流電源と前記整流手段との通電経路の片側に接続され、前記交流電源から前記整流手段への前記交流電力の供給を可能とする通電状態と前記交流電力の供給を停止する停止状態とを切り換え可能な電源通電切換手段と、
前記インバータ回路を駆動制御するとともに、前記電源通電切換手段を前記通電状態にする通電信号又は前記停止状態にする停止信号を出力する制御手段と、
前記制御手段の出力信号に応じて前記電源通電切換手段の切り換えを駆動する切換駆動手段と、
前記電源通電切換手段が前記通電状態又は前記停止状態のいずれの状態であるか検出し、前記電源通電切換手段が前記通電状態のとき通電状態信号を出力し、前記電源通電切換手段が前記停止状態のとき停止状態信号を出力する通電状態検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と、前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一か否かを判断する判断部を有し、
前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一と判断したとき、前記制御手段は前記インバータ回路を駆動可能にし、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記制御手段は前記インバータ回路を駆動可能にするか、もしくは前記インバータ回路の駆動を停止する炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記切換駆動手段に前記停止信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記インバータ回路を駆動可能にする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記切換駆動手段に前記通電信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記インバータ回路の駆動を停止する請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
さらに、炊飯器の動作状態を表示する表示手段を備え、
前記制御手段は、前記切換駆動手段に前記停止信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記炊飯器が非省エネルギー状態であることを前記表示手段に表示するとともに、前記切換駆動手段に前記通電信号を出力したときに、前記判断部が前記切換駆動手段に出力する信号に示される前記電源通電切換手段の状態と前記通電状態検出手段の出力信号に示される前記電源通電切換手段の状態とが同一でないと判断したとき、前記炊飯器が異常状態であることを前記表示手段に表示する請求項1〜3のいずれか1つに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記炊飯器が炊飯動作中であるときは前記非省エネルギー状態であることを前記表示手段に表示せず、前記炊飯器が保温動作又は待機動作中であるときに前記非省エネルギー状態であることを前記表示手段に表示する請求項4に記載の炊飯器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate