説明

炊飯器

【課題】外部へ排出される蒸気の温度を低下させるとともに、炊飯器が消費する電力を増加させることなく、蒸気の持つ圧力エネルギーを有効に活用することのできる炊飯器を得る。
【解決手段】上面が開口した本体4と、被加熱物が投入されて本体4内に収容される内釜2と、内釜2を加熱する加熱手段3と、内釜2の上部開口を閉塞可能な内蓋8bを有し、本体4の上面開口部を開閉する蓋体8と、内蓋8bに接続されて容器内で発生する蒸気を通過させる蒸気導管9と、蒸気導管9内に配置されたタービン70と、タービン70の回転力を受けて発電する磁石74aとコイル74bと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯中に鍋から発生する蒸気の圧力を利用する手段を備えた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器として、「蓋体の外部と連通する吸入口および排出口を有する排出管と、一端の連通口が容器の内側と連通し、他端の噴出口が排出管の内側と連通する連通管とを設け、連通管の噴出口を排出管の排出口に向け」、「排出管8の吸入口8aにその形状に一致するファン11を設け、外部の気体を排出管8内部に強制的に導入」するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、外気と連通した送風装置を備え、「蒸気経路の蒸気経路出口を送風経路の経路壁に開口させるとともに、この蒸気経路出口と鍋内と連通する蒸気経路入口とを水平方向に位置をずらせて配置した」ものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3682252号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2009−28513号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に記載の技術によれば、加熱により発生した蒸気の温度を低下させて、その蒸気を外部へ排出する。しかしながら、蒸気は外部に排出されるのみで、蒸気が持つ圧力エネルギーは有効に利用されていなかった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、蒸気の持つ圧力エネルギーを有効に活用することのできる炊飯器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、上面が開口した本体と被加熱物が投入されて前記本体内に収容される容器と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器の上部開口を閉塞可能な内蓋を有し、前記本体の上面開口部を開閉する蓋本体と、前記内蓋に接続されて前記容器内で発生する蒸気を通過させる蒸気導管と、前記蒸気導管内に配置された蒸気タービン翼と、前記蒸気タービン翼の回転力を受けて発電する発電機構と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器によれば、加熱により発生する蒸気を用いて発電することができる。このため、発電した電力を電気負荷に供給すれば、従来は排出されるのみであった蒸気のエネルギーを回収し、有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る炊飯器の外観模式図である。
【図2】実施の形態1に係る炊飯器の側面視の断面模式図である。
【図3】実施の形態1に係る炊飯器の側面視の断面模式図であり、蓋体を開いて内蓋を取り外した状態を示している。
【図4】実施の形態1に係る炊飯器の蒸気経路を中心に示す模式図である。
【図5】実施の形態1に係る炊飯器のシステムブロック図である。
【図6】実施の形態1に係る炊飯器の、炊飯工程・保温工程における生成電力の利用形態の例を説明する図である。
【図7】実施の形態1に係る炊飯器の、炊飯工程における生成電力の他の利用形態の例を説明する図である。
【図8】実施の形態2に係る炊飯器の側面視の断面模式図である。
【図9】実施の形態2に係る炊飯器の回転伝達手段を説明する図である。
【図10】実施の形態2に係る炊飯器のタービン及び発電機素子を説明する要部模式図である。
【図11】実施の形態3に係る炊飯器の外観模式図である。
【図12】実施の形態3に係る炊飯器の側面視の断面模式図である。
【図13】実施の形態3に係る炊飯器の蒸気導管を説明する図である。
【図14】実施の形態4に係る炊飯器の側面視の断面模式図である。
【図15】実施の形態4に係る炊飯器の蒸気導管及び回転伝達手段を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る炊飯器1の外観模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図を示している。図2は、実施の形態1に係る炊飯器1の側面視の断面模式図であり、蓋体を閉めた状態を示している。図3は実施の形態1に係る炊飯器1の側面視の断面模式図であり、蓋体8を開いて内蓋8bを取り外した状態を示している。なお、各図において同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0010】
(炊飯器の全体構成)
炊飯器1は、米や水などの被加熱物(米rや水W等)を収容する内釜2と、上部が開口しその内部に内釜2を収納する本体4と、本体4の背面側縁部にヒンジ機構7により支持されて内釜2の上部開口を開閉自在に閉塞する蓋体8とを備え、本体4を4点で支持する脚部10を備える。また、内釜2内の被加熱物から発生する蒸気を導く蒸気導管9を備える。本体4の背面側には、内部に電源回路と制御回路を収容した制御ケース11を備え、さらに、送風ファン80を備える。本体4の両側の側面には、本体4を移動させるときなどに使用するハンドルhを備える。ハンドルhは、図1(b)に示す矢印のように回動可能に取り付けられている。
なお、本実施の形態1において、内釜2は本発明の容器に、蓋体8は本発明の蓋本体にそれぞれ相当する。
【0011】
表示器77は、加熱状態などの炊飯器1の状態を表示するものであり、蓋体8の表面に設けられている。表示器77は、液晶画面やLEDなどで構成される。
【0012】
炊飯器1は、加熱手段として、内釜2を底部から加熱する誘導加熱コイル等の加熱手段3と、内釜2を側面から加熱する電気ヒータなどの補助加熱手段90とを備える。加熱手段3は、本体4の内側の底部であって、内釜2を本体4に収納したときに内釜2の底部と近接する位置に設けられている。補助加熱手段90は、本体4の内側の側面に設けられている。
【0013】
蓋体8は、外蓋8aと内蓋8bとを有する。この内蓋8bには、加熱中に発生する蒸気を内釜2の外部へ排出するための小穴8cが形成されている。
また、図2に示すように、内蓋8bには、被加熱物の初期水温や沸騰を検知する蓋センサ22が設けられている。
【0014】
制御ケース11は、その内部に制御装置101と電源切替回路102(図2には図示せず、図5参照)などを収容するケースであり、本体4の背面側の側部に固定されている。また、制御ケース11内には後述する蓄電装置76が収容されている。
制御装置101は、予め記憶された動作プログラムや蓋センサ22の検知情報などに基づいて、加熱手段3や補助加熱手段90を駆動制御する。
なお、本実施の形態1において、制御装置101と電源切替回路102が、本発明の電源制御手段に相当する。
【0015】
送風ファン80は、制御ケース11の内部及び加熱手段3へ送風するものであり、本発明の送風手段に相当する。送風ファン80が送風を行うことにより、駆動により高温化する制御装置101、電源切替回路102、及び加熱手段3を冷却し、これらが過度に高温化するのを抑制する。
【0016】
蒸気導管9は、加熱中に内釜2内の被加熱物から発生する蒸気を炊飯器1の外部へと導く通路である。内釜2から蒸気導管9へと蒸気を導入させる唯一の口が、噴出口64である。噴出口64は、複数の小穴8cの総面積と同等の口径(流路断面積)を有している。
蒸気導管9は、蓋体8に設けられた蒸気排気口99に連結されている。すなわち、蒸気導管9は、噴出口64と蒸気排気口99とを結ぶ通路であるといえる。
【0017】
(タービンの構成)
タービン70は、噴出口64から蒸気排気口99へ至る蒸気導管9内に設置されている。タービン70は、蒸気導管9を通過する蒸気の流れに向き合う方向で設置され、翼70aと回転軸71とを有する。
【0018】
図3に示すように、内蓋8bは外蓋8aから取り外し可能に取り付けられている。そして、内蓋8bに取り付けられた蒸気導管9は、内蓋8bとともに外蓋8aから着脱可能となっている。
【0019】
(発電機構の構成)
発電機素子74は、一又は複数の磁石74aと一又は複数のコイル74bとで構成されており、本発明の発電機構に相当する。
磁石74aは、タービン70の蒸気と衝突しない面(噴出口64に面しない面)に設置されている。
コイル74bは、外蓋8aの内側であって、磁石74aと対向する位置に設置されている。コイル74bは、外蓋8aの内側に形成されたカバー73に収容されている。カバー73は、その内部に蒸気が進入しないように構成されている。なお、カバー73は、本発明の発電機構を収納する収納部に相当する。
【0020】
発電機素子74は、タービン70の回転で発生する力により発電する装置である。タービン70の回転によってタービン70に設置された磁石74aが回転し、磁石74aが回転することによりコイル74bに起電力が生じて発電を行う。
【0021】
次に、図4を参照して、蒸気導管9、タービン70、及び内蓋8bの詳細な構造を説明する。図4は、図2のうち蒸気経路を中心として示す模式図であり、図4(a)は部分分解断面図、図4(b)はタービンの斜視図を示している。
図4(a)に示すように、蒸気導管9は内蓋8bと分離可能であり、蒸気導管9はさらに、上部蒸気導管9aと下部蒸気導管9bとに分離可能となっている。
【0022】
上部蒸気導管9aには、タービン70の回転軸71が取り付けられている。
下部蒸気導管9bには、蒸気導管9内に蒸気を進入させるための蒸気導入口9cが形成されている。蒸気導入口9cは、蒸気導管9を内蓋8bに取り付けたときに小穴8cの真上となる位置に設けられている。下部蒸気導管9bの蒸気導入口9cは、蒸気シール8eを介して噴出口64に嵌合可能である。蒸気導入口9cを噴出口64に嵌合させると、小穴8cから蒸気導管9に至る蒸気の通路が形成される。蒸気導入口9cと噴出口64との嵌合部は、蒸気シール8eによってシールされるため、この嵌合部から蒸気が漏れないようになっている。
【0023】
内蓋8bの蒸気導管9が位置する側には爪8dが形成され、また、下部蒸気導管9bには爪91が形成されている。下部蒸気導管9bの爪91を内蓋8bの爪8dに引っかけることで、蒸気導管9が内蓋8bに取り付けられる。爪91は弾性のある部材で構成されており、蒸気導管9を内蓋8bに取り付けあるいは取り外すときには、ユーザの手の力で爪91の引っかかりを容易に操作することができる。
【0024】
このように、内蓋8bと蒸気導管9とは分離可能な構造であって、さらに、蒸気導管9は上部蒸気導管9aと下部蒸気導管9bとに分離可能な構造である。このため、内蓋8bと蒸気導管9を容易に清掃することができる。
さらに、蒸気導管9は外蓋8aの下部(蓋体8の内部)に収納されており、蓋体8の上面部には蒸気導管9が表れないようになっている。すなわち、図1(a)に示すように、蓋体8の上面には蒸気排気口99が形成されているのみであり、蒸気導管9に起因した凹凸等が無い。このため、蓋体8の清掃を容易に行うことができ、さらに、継ぎ目の無い見栄えの良いデザインを実現できる。
【0025】
図5は、実施の形態1に係る炊飯器1の主要構成要素のシステムブロック図である。
図5に示すように、タービン70、回転軸71、発電機素子74、充電整流回路75、蓄電装置76が順に接続されている。
【0026】
蓄電装置76は、ニッケル水素充電池、リチウムイオン充電池、ニッカド充電池、電気二重層コンデンサ、電界コンデンサなどの蓄電可能な装置である。
蓄電装置76としては上記のものあるいはこれ以外のものを用いてもよいが、電気二重層コンデンサを用いた場合、その急速充電特性により、発電機素子74が生成する電力を余すことなく効率よく充電することができる。また、蓄電装置76として小型の電気二重層コンデンサを用いた場合は、制御装置101を構成する制御基板に搭載することもできる。
【0027】
充電整流回路75は、生成した電力を、蓄電に適した電圧・電流に整流する回路である。発電機素子74は、内釜2内で被加熱物が発生させる蒸気により発電を行うわけだが、被加熱物である米や水の量によって発生する蒸気の量が異なるために発電機素子74が発生させる電力の電圧にもバラツキが生じうる。充電整流回路75により整流することで、蓄電装置76に安定して充電させることができる。
【0028】
表示器77は、コイル74bの下流側に接続され、コイル74bから電源の供給を受けて発光する。
【0029】
また、商用電源から電源の供給を受ける電源100を有し、蓄電装置76と電源100から加熱手段3、補助加熱手段90への電源供給を制御する電源切替回路102を有する。
電源切替回路102は、電源100又は蓄電装置76から、加熱手段3と補助加熱手段90へ電源を供給するための回路であり、回路の接続状態は制御装置101により制御される。加熱手段3は、電源100により電源供給を受けることができ、電源切替回路102における電源100との接続は制御装置101により制御される。補助加熱手段90は、電源100もしくは蓄電装置76から電源供給を受けることができ、いずれと接続されるかは制御装置101により制御される。
【0030】
また、図5において、加熱手段3、補助加熱手段90と内釜2とを結ぶ破線は、加熱手段3、補助加熱手段90により内釜2が加熱されることを示している。また、加熱されることにより内釜2内から発生する蒸気とタービンとを結ぶ破線は、蒸気がタービンに衝突して圧力エネルギーを伝えることを示している。
【0031】
(炊飯器の動作)
次に、本実施の形態1に係る炊飯器1の動作を説明する。
本実施の形態1に係る炊飯器1は、被加熱物(米rや水W等)を収容した内釜2を、加熱手段3で加熱することで被加熱物を炊きあげるものである。
具体的には、ユーザが米r及び水Wを入れた内釜2を本体4内に収容し、蓋体8を閉め、図示しない操作スイッチ等の操作手段を操作して炊飯開始を指示すると、炊飯動作を開始する。炊飯動作においては、制御装置101によって制御された加熱手段3が、内釜2を介して米rや水Wを加熱する。なお、炊飯時には、内釜2の上部開口は内蓋8bにより閉塞されている。
【0032】
加熱によって内釜2の内部から発生した蒸気は、小穴8c、噴出口64を経由して蒸気導管9へと進み、タービン70の翼70aに衝突してタービン70を回転させる。
タービン70の回転により、タービン70に設置された磁石74aも回転し、磁石74aと対向する位置に設置されたコイル74bに対して磁力の変化を与える。そして、コイル74bには磁力の変化により電磁誘導が生じて、発電が行われる。すなわち、蒸気の持つ圧力エネルギーの一部が、電力に変換されることとなる。
【0033】
次に、蒸気導管9を通過する蒸気の挙動を説明する。
噴出口64から蒸気導管9内へ進入した蒸気は、前述したようにタービン70に衝突する。そして、タービン70に圧力を伝えた直後に膨張し、温度が下がり、凝結して水滴となる。この水滴は、蒸気導管9の傾斜面に沿って内釜2の中に戻る。また、タービン70を回転させた水蒸気のうち、一部凝結しなかったものは蒸気導管9を通って蒸気排気口99から炊飯器1の外部へと排出される。
したがって、炊飯中に内釜2から出た水蒸気の多くは、凝縮されて再び内釜2へ戻ることとなる。このため、炊飯器1の外部へと排出される蒸気量を低減することができ、蒸気が排出されることによる室内環境の湿気増加を抑制できる。
【0034】
また、蒸気導管9の蒸気導入口9cと噴出口64との嵌合部には蒸気シールが設けられており、蓋体8の内部への蒸気の流出を抑制している。さらに、発電を行うコイル74bは、カバー73で覆われており、蒸気導管9上には配置されていない。すなわち、蒸気の経路と電気回路とは物理的に分離して構成されている。一般的に、電気回路へ蒸気が侵入すると、結露などにより電気回路がショートして故障を起こす可能性があるが、本実施の形態1に係る構成によれば蒸気経路と電気回路とが物理的に分離されているので、電気回路への蒸気侵入による故障を回避できる。
【0035】
(生成された電力の利用形態)
次に、蒸気の持つ圧力エネルギーによって発電機素子74により生成された電力(以下、生成電力という)の利用形態を説明する。
【0036】
まず、図5に示すように発電機素子74に接続された表示器77は、生成電力の一部の供給を受けて発光する。このように表示器77を発光させることで、加熱中(炊飯中)であることをユーザに報知することができる。
【0037】
また、発電機素子74により生成された他の電力は、充電整流回路75により蓄電に適した電流と電圧に変換された後、蓄電装置76に電力として蓄えられる。そして、蓄電装置76に蓄えられた電力を、炊飯時の内釜2の加熱に利用する。
ここで一般に、炊飯工程は、予熱工程、沸騰工程、蒸らし工程の3つの工程により構成され、その後、必要に応じて保温工程が設けられる。なお、いわゆる「お急ぎ炊飯」などのモードで運転する場合は、予熱工程が無い場合もある。
【0038】
図6は、炊飯工程・保温工程における生成電力の利用形態の例を説明する図である。ここで、内釜2からの蒸気は、主に沸騰工程中において発生するため、図6では沸騰工程中に発生した蒸気により生成した電力を、炊飯の各工程で利用する例を示している。
【0039】
(1)沸騰工程、蒸らし工程、保温工程で生成電力を利用
図6(a)は、沸騰工程、蒸らし工程、保温工程で生成電力を利用する例を示している。
(S101)
沸騰工程において発生した蒸気により電力を生成し、この生成電力を補助加熱手段90に供給する。そして、補助加熱手段90は供給された電力により内釜2の加熱を行う。
(S102)
また、生成電力を蓄電装置76に蓄電させ、蓄電した電力を後の工程で利用可能とする。
このような生成電力の加熱への利用と(ステップS101)、蓄電(ステップS102)とを交互に行う。
(S103)
蒸らし工程や保温工程においては、ステップS102で蓄電した電力を補助加熱手段90に供給して、蒸らしや保温のための加熱に生成電力を利用する。
【0040】
(2)蒸らし工程で生成電力を利用
図6(b)は、蒸らし工程で生成電力を利用する例を示している。
(S111)
沸騰工程において発生した蒸気により電力を生成し、この生成電力を蓄電装置76に蓄電させる。
(S112)
蒸らし工程では、蓄電装置76に蓄電された電力を補助加熱手段90に供給し、補助加熱手段90が蒸らし加熱を行う。
【0041】
(3)保温工程で生成電力を利用
図6(c)は、保温工程で生成電力を利用する例を示している。
(S121)
沸騰工程において発生した蒸気により電力を生成し、この生成電力を蓄電装置76に蓄電させる。
(S122)
保温工程では、蓄電装置76に蓄電された電力を補助加熱手段90に供給し、補助加熱手段90が保温加熱を行う。保温工程が長時間化して蓄電装置76に蓄電された電力を消費した場合には、電源100からの電源供給に切り替えることもできる。
【0042】
以上、図6で説明したように、蒸気の持つ圧力エネルギーにより生成された電力を、炊飯の各工程での加熱に利用することができる。
【0043】
沸騰工程において生成電力を補助加熱手段90に供給することで、電源100からの電源供給を受けることなく、補助加熱手段90による加熱を行うことが可能となる。ここで、炊飯においては、強火で加熱するほど蒸気気泡の発生量が増えてごはん粒の合間に蒸気気泡が通り、ごはん粒同士の距離が保たれ、ふっくらとしたごはんを炊くことができる。したがって、加熱手段3に加え、生成電力の供給を受ける補助加熱手段90での加熱を行うことで、商用電源の消費電力を増加させることなく、沸騰時の加熱を強くすることができる。このため、さらに食感の良いふっくらしたおいしいごはんを炊くことができる。あるいは、沸騰工程において必要な加熱量の一部を、生成電力の供給を受ける補助加熱手段90による加熱でまかなうようにしてもよい。このようにすることで、従来通りの加熱量を得つつ、商用電源の消費電力を減少させることができ、省エネに資する。
【0044】
また、蒸らし工程において、蓄電装置76に蓄電された生成電力を補助加熱手段90に供給することで、電源100からの電源供給を受けることなく、補助加熱手段90による加熱を行うことができる。したがって、蒸らし工程において、商用電源の消費電力を減少させることができ、省エネに資する。
【0045】
また、保温工程において、蓄電装置76に蓄電された生成電力を補助加熱手段90に供給することで、電源100からの電源供給を受けることなく、補助加熱手段90による加熱を行うことができる。したがって、保温工程において、商用電源の消費電力を減少させることができ、省エネに資する。さらに、蓄電装置76から供給される生成電力により保温加熱ができるので、商用電源との接続を解除した状態(すなわち、炊飯器の図示しない電源コンセントを抜いた状態)でも、保温加熱を一定時間継続することができる。このようにすることで、炊飯が終わった後、使用者が炊飯器1を商用電源の無い場所などへ移動させた場合でもいわゆる「コードレス保温」が可能となり、使い勝手を大幅に向上させることができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態1に係る炊飯器1によれば、蒸気を受けて回転するタービンと、タービンの回転により発電する発電機素子を設けた。このため、蒸気の持つ圧力エネルギーを電気エネルギーとして活用することができる。
また、発電した電力は、炊飯時の沸騰工程、蒸らし工程、保温工程に利用するようにした。このため、これらの工程における電源100からの電源供給を低減させることができ、省エネに資する。また、蓄電装置76に蓄電された電力を補助加熱手段90に供給可能としたので、上述のように「コードレス保温」が可能となり、使い勝手を大幅に向上させることができる。
【0047】
また、生成電力の一部は、表示器77に供給して表示器77を発光させるようにした。このため、表示器77の発光により炊飯(沸騰)中であることを使用者に報知することができる。したがって、使用者は、順調に炊飯が進行していることなどを確認できて安心感を得るなど、使い勝手を向上させることができる。
【0048】
また、内釜2内で発生した蒸気を、タービン70に衝突させるようにした。このため、蒸気の持つ圧力エネルギーの一部を電力に変換することができる。さらに、タービン70に衝突した蒸気はタービン70に衝突した直後に膨張し温度が下がり、凝結して水滴となる。このため、例えば従来技術のように送風機を用いるなどして電気エネルギーを消費することなく、炊飯器1の外部へ排出される高温蒸気の量を減らすことができ、生活環境の湿度改善に資する。
【0049】
なお、本実施の形態1の図5においては、表示器77を発電機素子74の下流に接続することとしたが、充電整流回路75の下流に接続してもよい。このようにすることで、充電整流回路75により整流された電力を表示器77に供給することができる。あるいは、蓄電装置76の下流に表示器77を接続し、蓄電装置76から表示器77に電源供給するようにしてもよい。この場合は、制御装置101により、表示器77の発光を制御することもできる。
【0050】
また、上記説明では、蓄電装置76を設けて生成電力を蓄電し、蒸らし工程や保温工程で生成電力を利用したが、図7に示すように、発電機素子74が生成する電力をその都度、補助加熱手段90に供給して加熱に利用することもできる。この場合は、蓄電装置76を設けない構成とすることができる。
【0051】
実施の形態2.
本実施の形態2では、タービンの回転を発電機構に伝達する回転伝達手段及び、発電機構の構成を中心に説明する。
図8は、実施の形態2に係る炊飯器1Aの側面視の断面模式図である。図9は、実施の形態2に係る炊飯器1Aの回転伝達手段を説明する図であり、図9(a)は蓋体8を開けて内蓋8b及び蒸気導管9を外蓋8aから取り外した状態を示す図、図9(b)、図9(c)は図9(a)の要部拡大模式図である。また、図10は、タービン70及び発電機素子74の近傍を説明する要部模式図である。なお、各図において、前述の実施の形態1と同一又は対応する構成要素には、同一の符号を付している。
【0052】
(回転伝達手段の構成)
本実施の形態2において、回転伝達手段は、回転軸71と、プーリー71aと、ベルト71bと、プーリー71cとで構成される。
図9(b)に示すように、プーリー71aには凹状のカップリング500aが形成されている。また、図9(c)に示すように、回転軸71の先端には凸状のカップリング500bが形成されている。カップリング500bはカップリング500aに嵌合させることで、回転軸71とプーリー71aとが連結される。
【0053】
図10に示すように、プーリー71aとプーリー71cにはベルト71bが架け回されており、プーリー71aの回転がベルト71bによってプーリー71cに伝達されるようになっている。
したがって、タービン70の回転により回転軸71が回転すると、カップリング500a、500bのカップリング構造により回転軸71からプーリー71aへ回転が伝達され、さらに、プーリー71aの回転がベルト71bによりプーリー71cに伝達される。そして、プーリー71cには、プーリー71cとともに回転するプーリー回転軸71dが連結されている。
【0054】
なお、図10に示すように回転軸71は、上部蒸気導管9aに設けられた軸シール400を介してカバー73内のプーリー71aと連結される。
【0055】
(発電機素子の構成)
図10に示すように、発電機素子174は、N極とS極の一対の磁石174aと、コイル174bとで構成される。発電機素子174は、本発明の発電機構に相当し、磁石174aとコイル174bとがワンパッケージ化された一体型に構成されている。一対の磁石174aは、カバー73内であってプーリー71cの近傍に固定されている。コイル174bは、プーリー71cのプーリー回転軸71dに取り付けられており、プーリー回転軸71dの回転によりコイル174bも回転するようになっている。
【0056】
なお、図9に示すように、前述の実施の形態1と同様、内蓋8bは外蓋8aと着脱可能に構成されている。さらに、タービン70を収納した蒸気導管9は内蓋8bと着脱可能であり、蒸気導管9を構成する上部蒸気導管9aと下部蒸気導管9bも互いに着脱可能である。
【0057】
(炊飯器の動作)
炊飯を開始して加熱手段3が駆動すると、内釜2を介して米rや水Wが加熱される。加熱によって内釜2の内部から発生した蒸気は、小穴8c、噴出口64を経由して蒸気導管9へと進み、タービン70の翼70aに衝突してタービン70を回転させる。
【0058】
また、タービン70の回転は、タービン70の回転軸71とカップリング500a、カップリング500bを介してプーリー71aに伝達され、プーリー71aが回転する。さらに、プーリー71aに架け渡されたベルト71bを介して、プーリー71aの回転がプーリー71cに伝達される。そして、プーリー71c、プーリー回転軸71dの回転により、プーリー回転軸71dに取り付けられたコイル174bが回転する。
【0059】
コイル174bが回転すると、コイル174bの近傍に設置された一対の磁石174aによってコイル174bに磁力の変化が与えられ、この磁力の変化によりコイル174bに電磁誘導が生じて発電が行われる。すなわち、蒸気の持つ圧力エネルギーの一部が、電力に変換されることとなる。
【0060】
発電機素子174は、蓋体8の内側に設けられたカバー73の中に配置されており、蒸気導管9上には配置されていない。すなわち、蒸気経路と電気経路とは物理的に分離されて構成されている。一般的に、電気回路へ蒸気が侵入すると、結露などにより電気回路がショートして故障を起こす可能性があるが、本実施の形態2に係る構成によれば蒸気経路と電気回路とが物理的に分離されているので、電気回路への蒸気侵入による故障を回避できる。
【0061】
次に、蒸気導管9を通過する蒸気の挙動を説明する。
噴出口64から蒸気導管9内へ進入した蒸気は、前述したようにタービン70に衝突する。そして、タービン70に圧力を伝えた直後に膨張し、温度が下がり、凝結して水滴となる。この水滴は、蒸気導管9の傾斜面に沿って内釜2の中に戻る。また、タービン70を回転させた水蒸気のうち、一部凝結しなかったものは蒸気導管9を通って蒸気排気口99から炊飯器1の外部へと排出される。
したがって、炊飯中に内釜2から出た水蒸気の多くは、凝縮されて再び内釜2へ戻ることとなる。このため、炊飯器1の外部へと排出される蒸気量を低減することができ、蒸気が排出されることによる室内環境の湿気増加を抑制できる。
【0062】
上記のようにして発電した電力は、前述の実施の形態1と同様、補助加熱手段90や表示器77へ供給することができる。
【0063】
このように、本実施の形態2に係る炊飯器1Aによれば、タービン70から発電機素子174へ回転を伝達する回転伝達手段を備えた。このため、タービン70と発電機素子174とを離隔させることが可能であり、タービン70や発電機素子174の設置位置の自由度を高めることができる。
また、タービン70から発電機素子174への回転伝達手段として、回転軸71、プーリー71a、ベルト71b、プーリー71cを用いた。そして、回転軸71は軸シール400を介して発電機素子174等が収納されたカバー73内に連通するようにした。このため、電気回路を収納するカバー73内への水蒸気の侵入を抑制することができ、電気回路への蒸気侵入による故障を回避できる。
また、発電機素子174として、図10に示したように一対の磁石174aとコイル174bとをワンパッケージにした一体型のものを使用することができる。一体型の発電機素子174の場合、磁石174aとコイル174bとを極めて近接させて配置できるので、磁石174aからコイル174bに到達する磁力を大きくすることができ、効率の良い発電が可能となる。
【0064】
なお、本実施の形態2では、凹凸形状を有するカップリング500a、500bにより回転軸71とプーリー71aを着脱可能に連結する例を示した。しかし、磁気カップリング構造等の他のカップリング構造により、回転軸71とプーリー71aとを連結することも可能である。
【0065】
実施の形態3.
本実施の形態3では、蒸気導管、タービン、及び回転伝達手段の構成を中心に説明する。
図11は、実施の形態3に係る炊飯器1Bの外観模式図であり、図11(a)は平面図、図11(b)は側面図を示している。図12は、実施の形態3に係る炊飯器1Bの側面視の断面模式図であり、図12(a)は蓋体8を中心とした要部模式図であって蒸気導管9を取り外した状態、図12(b)は蒸気導管9を取り付けた状態の炊飯器1B全体の模式図である。図13は、蒸気導管の構成を説明する図であり、図13(a)は上面図、図13(b)は側面図、図13(c)は正面視の断面図、図13(d)は側面視の断面図、図13(e)はタービンを示す斜視図である。なお、各図において、前述の実施の形態1と同一又は対応する構成要素には、同一の符号を付している。
【0066】
図11、図12に示すように、蓋体8の外蓋8aの上部には、窪み82が形成されており、この窪み82に蒸気導管9が支持される。図11(a)に示すように、炊飯器1Bを上部から見ると、外蓋8aの表面にはほぼ円形状の蒸気導管9が見えることとなる。
【0067】
(蒸気導管、タービンの構成)
図12に示すように、上部蒸気導管9aと下部蒸気導管9bとで構成される蒸気導管9は、外蓋8aに着脱可能に取り付けられる。また、蒸気導管9には、噴出口64と連結される蒸気導入口9cが形成されている。内釜2内で発生した蒸気は、内蓋8bに設けられた小穴8cと噴出口64を介して、蒸気導入口9cにより蒸気導管9内へと導かれる。
【0068】
図12、図13に示すように、蒸気導管9内には、タービン70の翼70aを収納するタービン収納室9eと、タービン収納室9eに隣接して回転軸71を通過させる回転軸室9fが区画形成されている。
タービン70は、回転軸71を略水平方向に傾けた状態でタービン収納室9eに収納されている。また、回転軸71は、タービン収納室9eと回転軸室9fとを区画する壁に設けられた軸孔9gを通って回転軸室9fに進入するようになっている。軸孔9gには、軸シール703が取り付けられていて、この軸シール703により、タービン収納室9eから回転軸室9fへの蒸気の進入が抑制されている。
また、蒸気導管9の内部には、蒸気導入口9cとタービン70の翼70aとを結ぶ蒸気経路9dが形成されている。
【0069】
(発電機素子の構成)
発電機素子274は、蓋体8の外蓋8aの内側に区画形成された発電機室274aの内部に設置されている。発電機素子274は、回転で発生する力により発電する装置である。本実施の形態3では、発電機素子274の構成を特定するものではないが、タービン70から伝達される回転により磁石を回転させ、磁石に近接して設けた発電用コイルが発電を行うようなものを用いることができる。
【0070】
(回転伝達手段の構成)
タービン70の回転軸71の端部(翼70aと反対側の端部)には、駆動ギア702が取り付けられている。また、発電機素子274の回転軸274bには、受動ギア701が取り付けられている。
図12(b)に示すように蒸気導管9を蓋体8に取り付けると、駆動ギア702と受動ギア701とが咬合する。そして、回転軸71の回転により駆動ギア702が回転すると、この駆動ギア702と咬合する受動ギア701も回転し、受動ギア701の回転が発電機素子274の回転軸274bを介して発電機素子274に伝達される。
【0071】
(炊飯器の動作)
炊飯を開始して加熱手段3が駆動すると、内釜2を介して米rや水Wが加熱される。加熱によって内釜2の内部から発生した蒸気は、小穴8c、噴出口64、蒸気導入口9cを介して蒸気経路9dへと進み、タービン70の翼70aに衝突してタービン70を回転させる。
【0072】
また、タービン70の回転は、タービン70の回転軸71を介して駆動ギア702に伝達され、駆動ギア702が回転する。さらに、駆動ギア702と咬合する受動ギア701も回転し、この回転が発電機素子274の回転軸274bを介して発電機素子274に伝達される。
【0073】
発電機素子274に回転が伝達されると、この回転力により発電が行われる。すなわち、蒸気の持つ圧力エネルギーの一部が、電力に変換されることとなる。
【0074】
発電機素子274は、外蓋8aの内側に区画形成された発電機室274aの内部に設置されており、また、蒸気が通過する空間であるタービン収納室9eから回転軸室9fへの蒸気の進入は、軸シール703によって抑止されている。すなわち、電気経路である発電機素子274は、蒸気経路とは物理的に分離されて構成されている。一般的に、電気回路へ蒸気が侵入すると、結露などにより電気回路がショートして故障を起こす可能性があるが、本実施の形態3に係る構成によれば蒸気経路と電気回路とが物理的に分離されているので、電気回路への蒸気侵入による故障を回避できる。
【0075】
次に、蒸気導管9を通過する蒸気の挙動を説明する。
噴出口64から蒸気導入口9cを通って蒸気経路9d内へ進入した蒸気は、前述したようにタービン70に衝突する。そして、タービン70に圧力を伝えた直後に膨張し、温度が下がり、凝結して水滴となる。この水滴は、タービン収納室9e内に溜められる。また、タービン70を回転させた水蒸気のうち、一部凝結しなかったものは蒸気導管9を通って蒸気排気口99から炊飯器1の外部へと排出される。
したがって、炊飯中に内釜2から出た水蒸気の多くは、凝縮されて再び内釜2へ戻ることとなる。このため、炊飯器1の外部へと排出される蒸気量を低減することができ、蒸気が排出されることによる室内環境の湿気増加を抑制できる。
【0076】
上記のようにして発電した電力は、前述の実施の形態1と同様、補助加熱手段90や表示器77へ供給することができる。
【0077】
このように、本実施の形態3に係る炊飯器1Bによれば、タービン70から発電機素子274の回転軸274bへの回転伝達手段として、回転軸71、駆動ギア702、受動ギア701を用いた。ここで、駆動ギア702と受動ギア701のギア比は、蒸気の衝突によりタービン70の回転で生成される回転数又は回転トルクと、発電機素子274の構成部材を回転させるのに必要な回転数や回転トルクから決定することができる。このため、駆動ギア702と受動ギア701のギアの歯数を適切に選択することにより、タービン70の回転数を発電機素子274の発電に適した回転数に容易に変換することができる。具体的に説明すると、発電機素子274の発電に適した回転数が回転数A(例えば、A=1000rpm)であり、通常の炊飯で生じる蒸気によるタービン70の回転数が回転数B(例えば、B=2000rpm)であるものとする。この場合、(受動ギア701の歯数):(駆動ギア702の歯数)=A:B(例えば、A:B=1:2)とすることで、タービン70の回転数を、発電機素子274の発電に適した回転数に変換することができる。
【0078】
また、駆動ギア702と受動ギア701は互いに連結・分離が可能である。すなわち、蒸気を通過させる蒸気導管9と、水濡れに弱い発電機素子274とを物理的に分離させることができる。このため、発電機素子274への蒸気の進入を防ぐことができるとともに、蒸気導管9を蓋体8から取り外せば、蒸気導管9の清掃やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0079】
実施の形態4.
本実施の形態4では、蒸気導管、タービン、及び回転伝達手段の構成を中心に説明する。
図14は、実施の形態4に係る炊飯器1Cを説明する図であり、図14(a)は蓋体8を中心とした側面視の要部断面模式図であって蒸気導管9を取り外した状態、図14(b)は蒸気導管9を取り付けた状態の炊飯器1C全体の側面視の断面模式図である。図15は蒸気導管9及び回転伝達手段近傍の構成を説明する要部断面模式図である。なお、各図において、前述の実施の形態1と同一又は対応する構成要素には、同一の符号を付している。
【0080】
図14(a)、(b)に示すように、蓋体8の外蓋8aの上部には、窪み82が形成されており、この窪み82に蒸気導管9が支持される。
【0081】
(蒸気導管、タービンの構成)
蒸気導管9には、噴出口64と連結される蒸気導入口9cが形成されている。内釜2内で発生した蒸気は、内蓋8bに設けられた小穴8cと噴出口64を介して、蒸気導入口9cにより蒸気導管9内へと導かれる。
蒸気導管9内には、蒸気が通過する蒸気経路とタービン70を収納する収納室を兼ねたタービン収納室9eが区画形成されている。タービン収納室9eは、蒸気導入口9cから蒸気排気口99へと至る経路を形成している。
また、タービン収納室9eの上側には、回転軸室9fが区画形成されている。
【0082】
タービン70は、その翼70aが蒸気導入口9cと対向する向きで、タービン収納室9eに収納されている。回転軸71は、タービン収納室9eと回転軸室9fとを区画する壁に設けられた軸孔9gを通って回転軸室9fに進入するようになっている。軸孔9gは、軸シール400が取り付けられていて、この軸シール400により、タービン収納室9eから回転軸室9fへの蒸気の進入が抑制されている。
【0083】
(発電機素子の構成)
発電機素子374は、蓋体8の外蓋8aの内側に区画形成された発電機室374aの内部に設置されている。発電機素子374は、回転で発生する力により発電する装置である。本実施の形態4では、発電機素子の構成を特定するものではないが、タービン70から伝達される回転により磁石を回転させ、磁石に近接して設けた発電用コイルが発電を行うようなものを用いることができる。
【0084】
(回転伝達手段の構成)
図15に示すように、回転軸室9f内において、回転軸71にはプーリー71aが連結されている。また、プーリー71aとプーリー71cにはベルト71bが架け回されており、プーリー71aの回転がベルト71bによってプーリー71cに伝達されるようになっている。なお、プーリー71aとプーリー71cとは略同一面に設置されている。
プーリー71cには、プーリー71cとともに回転するプーリー回転軸71dが連結されている。
【0085】
プーリー回転軸71dの下端部には、カップリング705が設けられている。また、発電機素子374の回転軸374bの先端部にも、カップリング706が設けられている。カップリング705とカップリング706は、互いに異なる極の磁石を内蔵した、いわゆる磁気カップリングである。カップリング705とカップリング706は、これらが内蔵する磁石が互いに引き合うことで、互いに接触して結合される。
【0086】
(炊飯器の動作)
炊飯を開始して加熱手段3が駆動すると、内釜2を介して米rや水Wが加熱される。加熱によって内釜2の内部から発生した蒸気は、小穴8c、噴出口64、蒸気導入口9cを経由して蒸気導管9のタービン収納室9eへ進入し、タービン70の翼70aに衝突してタービン70を回転させる。そして、タービン70を回転させた水蒸気は、蒸気導管9を通って蒸気排気口99から炊飯器1Cの外部へと排出される。
【0087】
また、タービン70の回転は、タービン70の回転軸71を介してプーリー71aに伝達され、プーリー71aが回転する。さらに、プーリー71aに架け渡されたベルト71bを介して、プーリー71aの回転がプーリー71cに伝達される。そして、プーリー71c、プーリー回転軸71dの回転により、カップリング705も回転する。
【0088】
カップリング705が回転すると、カップリング705に磁気結合されたカップリング706も回転し、この回転が発電機素子374の回転軸374bを介して発電機素子374へと伝達される。
【0089】
発電機素子374に回転が伝達されると、この回転力により発電が行われる。すなわち、蒸気の持つ圧力エネルギーの一部が、電力に変換されることとなる。
【0090】
発電機素子374は、蓋体8の外蓋8aの内側に設けられた発電機室374aの中に配置されており、また、蒸気が通過する空間であるタービン収納室9eから回転軸室9fへの蒸気の進入は、軸シール400によって抑止されている。すなわち、電気回路である発電機素子374は、蒸気経路とは物理的に分離されて構成されている。一般的に、電気回路へ蒸気が侵入すると、結露などにより電気回路がショートして故障を起こす可能性があるが、本実施の形態3に係る構成によれば蒸気経路と電気回路とが物理的に分離されているので、電気回路への蒸気侵入による故障を回避できる。
【0091】
上記のようにして発電した電力は、前述の実施の形態1と同様、補助加熱手段90や表示器77へ供給することができる。
【0092】
このように、本実施の形態4に係る炊飯器1Cによれば、タービン70から発電機素子374の回転軸374bへの回転伝達手段として、回転軸71、プーリー71a、ベルト71b、プーリー71c、カップリング705、及びカップリング706を用いた。特に、磁気カップリングであるカップリング705とカップリング706を用いてプーリー71cと発電機素子374の回転軸374bとを連結したので、カップリング705とカップリング706の接触により生じる騒音がほとんどない。このため、タービン70から発電機素子374への回転の伝達を、静かに行うことができる。
【0093】
また、カップリング705とカップリング706の磁気結合を解除すると、蒸気導管9を蓋体8から取り外し可能である。すなわち、蒸気を通過させる蒸気導管9と、水濡れに弱い発電機素子374とを物理的に分離させることができる。このため、蒸気導管9を蓋体8から取り外せば、蒸気導管9及びこれに取り付けられた部品(タービン70など)の清掃やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0094】
なお、本実施の形態4では、磁気カップリング構造によりプーリー71cと発電機素子374の回転軸374bとを連結を着脱可能に連結する例を示した。しかし、実施の形態2で示したような凹凸形状を嵌合させるカップリング構造等により、プーリー71cと発電機素子374の回転軸374bとを連結することも可能である。
【0095】
また、上述の実施の形態1〜実施の形態4では、炊飯器について説明したが、炊飯器の他に、例えば湯沸かしポットなどに本発明の発電機構を適用することもできる。発生する蒸気が通過する経路上に前述の実施の形態1〜実施の形態4で説明した発電機構を設ければ、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 炊飯器、1A 炊飯器、1B 炊飯器、1C 炊飯器、2 内釜、3 加熱手段、4 本体、7 ヒンジ機構、8 蓋体、8a 外蓋、8b 内蓋、8c 小穴、8d 爪、8e 蒸気シール、9 蒸気導管、9a 上部蒸気導管、9b 下部蒸気導管、9c 蒸気導入口、9d 蒸気経路、9e タービン収納室、9f 回転軸室、9g 軸孔、10 脚部、11 制御ケース、22 蓋センサ、64 噴出口、70 タービン、70a 翼、71 回転軸、71a プーリー、71b ベルト、71c プーリー、71d プーリー回転軸、73 カバー、74 発電機素子、74a 磁石、74b コイル、75 充電整流回路、76 蓄電装置、77 表示器、80 送風ファン、82 窪み、90 補助加熱手段、91 爪、99 蒸気排気口、100 電源、101 制御装置、102 電源切替回路、174 発電機素子、174a 磁石、174b コイル、274 発電機素子、274a 発電機室、274b 回転軸、374 発電機素子、374a 発電機室、374b 回転軸、400 軸シール、500a カップリング、500b カップリング、701 受動ギア、702 駆動ギア、703 軸シール、705 カップリング、706 カップリング、W 水、h ハンドル、r 米。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した本体と、
被加熱物が投入されて前記本体内に収容される容器と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器の上部開口を閉塞可能な内蓋を有し、前記本体の上面開口部を開閉する蓋本体と、
前記内蓋に接続されて前記容器内で発生する蒸気を通過させる蒸気導管と、
前記蒸気導管内に配置された蒸気タービン翼と、
前記蒸気タービン翼の回転力を受けて発電する発電機構と、
を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記発電機構は、
前記蒸気タービン翼に設けられた磁石と、
前記蒸気導管の外側であって、前記磁石と対向する位置に設けられたコイルと、を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記内蓋は前記蓋本体と着脱可能であり、
前記蓋本体と前記内蓋との間に形成される空間内に、前記蒸気導管を配置し、
前記蒸気導管に設けた爪部と、前記内蓋に設けた爪部とを係合させることにより、前記蒸気導管を前記内蓋と着脱可能とした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記蒸気タービン翼の回転を前記発電機構に伝達する回転伝達手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項5】
前記回転伝達手段は、
前記蒸気タービン翼の回転軸と連結された第1プーリーと、
前記発電機構の回転軸に連結された第2プーリーと、
前記第1プーリーと第2プーリーとに架け渡されるベルトと、を備えた
ことを特徴とする請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
前記蒸気タービン翼の回転軸と前記第1プーリーは、カップリング構造により着脱可能に連結される
ことを特徴とする請求項5記載の炊飯器。
【請求項7】
前記第1プーリー、前記第2プーリー、前記ベルト、及び前記発電機構を収納する収納部を備え、
前記蓋本体と前記内蓋との間に形成される空間内に、前記蒸気導管と前記収納部とを配置し、
前記蒸気タービン翼の回転軸を、軸シールを介して、前記蒸気導管内から前記収納部内へと連通させた
ことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の炊飯器。
【請求項8】
前記発電機構の回転軸と前記第2プーリーは、カップリング構造により着脱可能に連結される
ことを特徴とする請求項5記載の炊飯器。
【請求項9】
前記発電機構を収納する発電機構収納部を、前記本体もしくは前記蓋本体のいずれかに設け、
前記蒸気導管を、前記蓋本体の表面に設けた窪みに着脱可能に嵌合させた
ことを特徴とする請求項8記載の炊飯器。
【請求項10】
前記回転伝達手段は、
前記蒸気タービン翼の回転軸の端部に設けられた駆動ギアと、
前記発電機構の回転軸に連結され、前記駆動ギアと咬合可能に設けられた受動ギアと、を備えた
ことを特徴とする請求項4記載の炊飯器。
【請求項11】
前記発電機構を収納する発電機構収納部を、前記本体もしくは前記蓋本体のいずれかに設け、
前記蒸気導管を、前記蓋本体の表面に設けた窪みに着脱可能に嵌合させた
ことを特徴とする請求項10記載の炊飯器。
【請求項12】
前記蒸気タービン翼の回転軸を略水平方向に傾けた状態で前記蒸気タービン翼を前記蒸気導管内に配置し、
前記蒸気タービン翼の回転軸を、軸シールを介して前記蒸気導管の外部へ突出させた
ことを特徴とする請求項10又は請求項11記載の炊飯器。
【請求項13】
前記発電機構により発電された電力を電気負荷に供給させる電源制御手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか記載の炊飯器。
【請求項14】
前記炊飯器の運転状態を示す表示手段と、
前記炊飯器の動作を制御する制御手段と、
前記加熱手段を冷却する送風手段と、を備え、
前記電気負荷は、前記表示手段、前記制御手段、前記送風手段、及び前記加熱手段のうちのいずれか一以上のものである
ことを特徴とする請求項13記載の炊飯器。
【請求項15】
前記発電機構が発電した電力を蓄える蓄電装置を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか記載の炊飯器。
【請求項16】
前記電源制御手段は、
商用外部電源との接続が切断された後に、
前記蓄電装置に蓄えられた電力を、前記電気負荷に供給させる
ことを特徴とする請求項13又は請求項14に従属する請求項15記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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