説明

炎症性疾患のための薬草組成物

本発明は、植物スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物を含む新規な薬草組成物に関する。前記スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物には、化合物3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(7−ヒドロキシ−4,11(13)−ユーデスマジエン−12,6−オリド)(化合物1)が生物活性マーカーとして含まれている。本発明はさらに、有効成分として3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)を含む組成物にも関する。本発明はさらに、前記組成物を生産するための方法にも関する。本発明はさらに、炎症性疾患のための治療を必要としている患者に、前記組成物を投与する方法にも関する。本発明はさらに、前記組成物の腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびインターロイキン(IL−1、IL−6、IL−8)阻害活性にも関する。本発明は、前記組成物による、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンの発現の阻害にも関する。前記組成物には、場合によっては少なくとも1種の抗炎症薬が含まれていてもよく、あるいは少なくとも1種の抗炎症薬と組み合わせて使用することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部(flowering and fruiting head)の抽出物を含む新規な薬草組成物に関する。本発明はさらに、生物活性マーカーとしての化合物3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(7−ヒドロキシ−4,11(13)−ユーデスマジエン−12,6−オリド)(化合物1)を含むスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部から得られる抽出物、ならびに場合によっては他の1種または複数の炎症性疾患の治療に有効な活性物質を含む薬草組成物に関する。本発明はまた、炎症性疾患の治療において使用するための、有効成分としての3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)および薬学的に許容される担体を含む医薬品組成物にも関する。本発明はさらに、前記組成物を生産するための方法にも関する。本発明の前記組成物は、炎症性疾患を治療するために適合させられる。本発明はさらに、前記組成物の腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびインターロイキン(IL−1、IL−6、IL−8)阻害活性にも関する。本発明はさらに、前記組成物による細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンの発現の阻害にも関する。
【0002】
本発明ではさらに、炎症性疾患の治療のために前記組成物を投与する方法も開示される。場合によっては、化合物1を含む前記抽出物または組成物を含む、前記抽出物または組成物を、少なくとも1種の他の抗炎症薬と組み合わせて使用することも可能である。
【背景技術】
【0003】
炎症は、免疫惹起性疾患の宿主防御および病状進行においては、基本的な役割を果たす。炎症反応は、化学的メディエーター(たとえば、サイトカインおよびプロスタグランジン)ならびに炎症細胞(たとえば、白血球)を含めた多重事象による、損傷(たとえば、外傷、虚血、および異物)ならびに感染(たとえば、細菌感染またはウイルス感染)に対する応答として開始される。その特徴は、その組織への血流が増加して、発熱、紅斑、硬結、および疼痛の原因となることである。
【0004】
炎症反応における体液要素と細胞免疫要素との間の相互作用を微妙かつ巧みにバランスをとることによって、有害作用物質を除去し、損傷を受けた組織の修復を開始することが可能となる。この微妙でバランスのとれた相互作用が崩れた場合は、炎症反応によって正常な組織に対してかなりの損傷が与えられる可能性があり、またその反応を開始させた元々の傷害よりもさらに有害となる可能性もある。このような調節不能な炎症反応の場合においては、組織の損傷および臓器不全を防止するために、臨床的処置が必要となる。関節リウマチ、骨関節炎、クローン病、喘息、アレルギー、敗血症性ショック症候群、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、その他の臨床症状などの疾患は、慢性の炎症を有しているのが特徴である。
【0005】
サイトカイン類特に、IL−1β、IL−6、IL−8およびTNF−αは、炎症過程において重要な役割を果たしている。
【0006】
多面的なサイトカインであるTNF−αは、主としてマクロファージにより産生されるが、他のタイプの細胞によっても産生されることもあり得る。TNF−αは、有利かつ病理学的な活性を示す。それは自己調節性であるのに加えて、成長刺激効果と成長阻害性の両方の性質を有している。TNF−αの有利な作用を挙げれば、身体のサーカディアンリズムを調節したり、細菌性、ウイルス性、真菌性および寄生虫感染に対する免疫応答を開始したり、線維芽細胞の成長を刺激することによって損傷を受けた組織を置換または再構築させたり、さらにはその名前が示すようにある種の腫瘍を死滅させたりすることによって、ホメオスタシスを保持する。
【0007】
TNF−αは、先天性および後天性免疫応答において重要な役割を果たしはするが、TNF−αが不適切に産生されると、病理学的変化が生じて、慢性炎症および組織の損傷が発生する。TNF−αが、多くの慢性炎症性疾患たとえば、炎症性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、難治性関節リウマチ、慢性非リウマチ性関節炎、骨粗鬆症/骨吸収、冠動脈心疾患、脈管炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、成人呼吸窮迫症候群、糖尿病、皮膚遅延型過敏障害、およびアルツハイマー病などの発病において、決定的な役割を果たしていることが明らかになった。
【0008】
インターロイキン−1(IL−1)は先天免疫系の重要な部分であって、適応免疫系の機能を調節している。局所組織におけるIL−1とIL−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)とのバランスが、炎症性疾患の進行の可能性およびその結果としての構造損傷に影響する。過剰量のIL−1が存在すると、関節、肺、消化管、中枢神経系(CNS)または血管の中で炎症性および自己免疫性の障害が発生する。
【0009】
各種の炎症性疾患の内でも、関節リウマチ(RA)は自己免疫性障害である。RAは、病因が不明な、慢性、全身性、関節性炎症性疾患である。RAにおいては、正常では薄い関節の滑膜被覆が、軟骨と骨の両方に対して破壊的な炎症性で、高度に血管新生化された、浸潤性フィブロコラゲナーゼ組織(パンヌス)によって置き換えられる。発症する可能性がある領域としては、手、手首、首、顎、肘、膝、足、踵の関節が挙げられる。RAにおける軟骨の破壊は、患部関節における異常サイトカインおよび増殖因子の発現に関係がある。
【0010】
滑膜において放出される臨床的に重要な2種のサイトカインは、IL−1βおよびTNF−αである。TNF−αは、それ自体の発現を上方制御することが可能であると同時に、RAに結びつく他の遺伝子たとえば、IL−1β、IL−6、IL−8、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)、誘発性一酸化窒素合成酵素(iNOS)、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンなどの発現を促進することができる。このタイプの陽性の調節ループは、局所炎症反応を増幅し、持続化させる可能性がある。したがって、TNF−αの不適当または過剰な発現は、その産生物が炎症性および免疫応答を惹起し、それによってRAの臨床的な発現をもたらす、いくつかの遺伝子の発現を協調的に増加させる。
【0011】
白血球の漸増および保持は、RAなどの慢性炎症性疾患全般の病因においては、極めて重要な事象である。さらに、循環白血球、特に単球が脈管内皮に接着することもまた、アテローム性動脈硬化症の発症における極めて重要な事象である。このプロセスは、内皮細胞の上に発現された接着分子たとえば、ICAM−1、VCAM−1およびE−セレクチンと、白血球上のそれらの同族リガンドとの間の相互作用に依存する。したがって、ICAM−1、VCAM−1、およびE−セレクチンは、血液循環から炎症サイトへの、炎症細胞たとえば、好中球、好酸球、およびTリンパ球の漸増に寄与する。それらの接着タンパク質は通常は、内皮細胞表面上では低いレベルであるが、たとえばTNF−αのような各種の炎症誘発性のサイトカインによって大量に誘発される。
【0012】
炎症性疾患の治療のための最も一般的な治療法としては、たとえば疼痛のような症状を緩和させるための、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)たとえば、ナプロキセン、ジクロフェナク、イブプロフェンを使用するものである。しかしながら、NSAIDの使用が広く用いられてはいるものの、NSAIDは胃粘膜びらんを起こすことが知られているために、多くの個体は、障害を治療するのに必要な用量の長期間にわたる投与には耐えられない。さらに、NSAIDは、障害の症状を単に抑えるだけのことであって、原因から治療するものではない。
【0013】
NSAIDに対する応答がうまくいかない患者には、他の薬剤たとえば、メトレキセート、金塩、D−ペニシラミンおよびコルチコステロイドを使用する。それらの薬剤もまた、顕著な毒性作用を有している。
【0014】
モノクローナル抗体薬、たとえばインフリキシマブ、エタネルセプトおよびアダリムマブは、抗炎症薬として有用ではあるが、投与経路(非経口に限られる)、高価格、アレルギーの誘発、潜在性結核の活性化、癌およびうっ血性心疾患のリスク増大などの欠点を有している。
【0015】
したがって、IL−1およびTNF−αが原因で増大する炎症性疾患の予防および治療のための、副作用が低く、改良された代替的な医薬品を開発する必要がある。
【0016】
薬草類は多くの病状を治療することが知られており、世界中で使用されてきた。植物から誘導される製品が、哺乳類に対して強力な薬理学的作用および治療効果を有しており、傾向としては合成医薬品よりも有害な副作用が少ないということに関しては、エビデンスが存在する。
【0017】
本明細書では、新規な薬草組成物を記述するが、このものには、植物、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物が含まれている。その組成物は、各種の炎症性疾患の治療に使用することが可能であって、しかも副作用は最小限である。
【0018】
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)は、稲田に見られる一般的な雑草である。このものは、アステラセア(Asteraceae)科に属していて、アーユルベーダ(Ayurveda)の文献に記載があり、マハムンディ(mahamundi)またはゴラクムンディ(gorakuhmundi)として知られている。この植物は、インド全域で入手が可能で、紫色の花を有する分岐薬草(branched herb)である。このものは、肝障害および胃障害に使用されている。これは、民間医療において、赤痢、子宮および膣の疼痛、胸部疾患、血液の浄化および増強、尿路感染症、創傷治癒およびいくつかのその他の疾患など、各種の病気のための療法として使用されている。
【0019】
免疫不全障害を相殺させる観点から、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)も含めた複数の薬草を用いた配合物「RV−08」が開発された(非特許文献1)。
【0020】
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の花からの新規なセスキテルペングリコシドである、スファエルアンタノリド(sphaeranthanolide)の単離が報告されている。その単離された化合物、スファエルアンタノリドは、免疫活性化活性を示した(非特許文献2)。
【0021】
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の花頭部のメタノール抽出物の免疫調節活性についての報告もある(非特許文献3)。
【0022】
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の根から得られる水抽出物が、下方制御プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)ざ瘡誘発TNF−αおよびIL−8産生において中程度の活性を有していることが報告されている。スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)が、活性酸素種に、小さいながらも顕著な抑制をもたらした(非特許文献4)。
【0023】
発明者らが知る限りにおいては、炎症性疾患の治療のための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物を含む医薬品についての報告は一切無い。従来技術の組成物に伴う、たとえばアレルギーの誘発、潜在性結核の活性化、骨髄抑制、癌およびうっ血性心疾患のリスクの増大などのような現行の治療の際の副作用の問題を克服するために、発明者らは、TNF−α、インターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)ならびに、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンの発現に対する阻害活性を有する、炎症に対して有効な新規な薬草組成物を調製した。本発明の組成物は、少なくとも1種の他の抗炎症薬と組み合わせて使用することも可能である。
【非特許文献1】Indian Journal of Pharmacology, 33, 454-55, (2001)
【非特許文献2】Phytochemistry, 29(8), 2573-76, (1990)
【非特許文献3】Ars Pharmaceutica 45:3; 281-91, (2004)
【非特許文献4】Phytomedicine, 10(1), 34-38, (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、有効成分としてのスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物の治療有効量を、薬学的に許容される担体と共に含む新規な薬草組成物を提供することを目指している。
【0025】
本発明のまた別の目的は、炎症性疾患を治療するための、有効成分としての3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)の治療有効量を、薬学的に許容される担体と共に含む組成物を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、前記組成物の生産方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、TNF−αおよびインターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)によって惹起される障害を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンによって惹起される障害を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物を提供することである。
【0029】
本発明のまた別の目的は、炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物を提供することである。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、TNF−αによって惹起される炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物を提供することである。
【0031】
本発明のさらに別の目的は、インターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)によって惹起される炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物を提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンによって惹起される炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物を提供することである。
【0033】
本発明のさらに別の目的は、相乗効果を得るために、少なくとも1種の生物活性物質と組み合わせた、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物を提供することである。
【0034】
本発明のさらに別の目的は、関節リウマチを含めた炎症性疾患を治療するために、前記組成物単独、または少なくとも1種の他の抗炎症薬と組み合わせた使用を提供することである。
【0035】
本発明のその他の目的およびさらなる適用性の範囲は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0036】
したがって、本発明の一つの態様においては、有効成分としてのスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物の治療有効量を、薬学的に許容される担体と共に含む新規な薬草組成物が提供される。
【0037】
本発明のまた別の態様においては、炎症性疾患を治療するための、有効成分としての3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)の治療有効量を、薬学的に許容される担体と共に含む組成物が提供される。
【0038】
本発明のさらなる態様においては、前記組成物の生産方法が提供される。
【0039】
本発明のさらに別の態様においては、TNF−αおよびインターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)によって惹起される障害を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物が提供される。
【0040】
本発明のさらに別の態様においては、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンによって惹起される障害を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物が提供される。
【0041】
本発明のまた別の態様においては、炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物が提供される。
【0042】
本発明のまた別の態様においては、TNF−αによって惹起される炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物が提供される。
【0043】
本発明のまた別の態様においては、インターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)によって惹起される炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物が提供される。
【0044】
本発明のさらなる態様においては、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンによって惹起される炎症性疾患を治療するための、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物が提供される。
【0045】
本発明のさらに別の態様においては、相乗効果を得るために、少なくとも1種の生物活性物質と組み合わせた、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物または化合物1のいずれかから選択される有効成分の治療有効量を含む組成物が提供される。
【0046】
本発明のさらに別の態様においては、関節リウマチを含めた炎症性疾患を治療するために、前記組成物単独、または少なくとも1種の他の抗炎症薬と組み合わせた使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
詳細な説明および具体例は、本発明の実施態様を表してはいるが、説明のためだけに提供されたものであって、当業者にとっては、本発明の精神と範囲の中で各種の変更および修正が自明となるであろうということは理解されたい。当業者は、本明細書の記載に基づいて、本発明をその最大限度まで利用することができる。以下の具体的な実施態様は、単に説明のためだけのものであって、いかなる面においても、本明細書の開示の他の部分を限定するものではない。
【0048】
特に断らない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の通常の技能を有する者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有している。
【0049】
本明細書で使用される「炎症性疾患」という用語は、慢性炎症を特徴とする疾患または病状を指しているが、そのようなものとしては、限定はされないが、関節リウマチ、骨関節炎、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、難治性関節リウマチ、慢性非リウマチ性関節炎、骨粗鬆症/骨吸収、冠動脈心疾患、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、クローン病、成人呼吸窮迫症候群、皮膚遅延型過敏障害、敗血症性ショック症候群、および炎症性腸疾患などが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤、および/または塩が、処方の他の成分と配合適性があり、そのレシピエントに対して有害であってはならないということを意味している。
【0051】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」とは、非毒性で不活性な固形物、半固形物、希釈剤、カプセル化物質、または各種のタイプの製剤助剤を意味している。薬学的に許容される担体として使用することが可能な物質の例としては、糖類たとえば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;デンプン類たとえば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;麦芽;ゼラチン;タルク;さらにはその他の非毒性で配合適性のある滑沢剤たとえば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどが挙げられ、さらには、配合者の判断に従って、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、嬌味剤および着香剤;保存剤および抗酸化剤を組成物中に存在させることも可能である。
【0052】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、調節または治療するべき病状にプラスとなる変化を顕著に誘導するに充分な量であり、かつ健全な医療判定の範囲内で、副作用が(合理的なベネフィット/リスク比率で)存在しているとしても、それを避けるのに充分に低い量である、化合物または組成物(たとえば、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物)の量を意味している。化合物または組成物の治療有効量は、治療するべき具体的な病状、最終使用者の年齢および身体的状況、治療/予防される病状の重症度、治療の期間、併用される療法の特性、採用される具体的な化合物または組成物、使用される具体的な薬学的に許容される担体、および同様の因子によって、変化するであろう。特に断らない限り、本明細書で使用するとき、百分率はすべて重量基準である。
【0053】
本明細書で使用される「生物活性マーカー」という用語は、医薬品的活性の容認できる程度に関連する特性(または植物化学的プロファイル)と定義される。
【0054】
「最大実用投与量」とは、成人が安全に摂取することが可能な薬物の最大量である。
【0055】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数の形「a」、「an」および「the」には、その含意が明らかに他のことを意味している場合を除いて、複数である指示物を含んでいるということに留意されたい。
【0056】
本明細書で使用される「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」または「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物」という用語は、植物のスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の中に存在している化合物のブレンド物を意味している。そのような化合物類は、当業者に周知の抽出手順(たとえば、有機溶媒、たとえば低級アルコール、アルキルエステル、アルキルエーテル、アルキルケトン、クロロホルム、石油エーテル、ヘキサン、および/または無機溶媒たとえば水を使用)を使用して、その植物の乾燥させた開花結実頭部から抽出される。スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部からの植物成分誘導体を抽出するための本発明のプロセスをスケールアップして、大規模な調製法とすることが可能である。
【0057】
本明細書で使用される「有効成分」という用語は、「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」もしくは「化合物1」、または「2種以上の有効化合物の混合物を含むスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の濃縮抽出物」を指している。
【0058】
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物は、慣用される方法、たとえば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または高性能薄膜クロマトグラフィー(HPTLC)を使用して標準化することが可能である。
【0059】
一つの実施態様において、本発明により、薬学的に許容される担体と共にスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の標準化抽出物を含む薬草組成物が提供される。
【0060】
生物活性マーカー化合物は、生物活性誘導のカラムクロマトグラフィー精製法および分取HPLCによって、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物から単離することができる。化合物は、スペクトルデータの解析から同定してもよい。
【0061】
本発明の薬草組成物には、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物が含まれ、それには、生物活性マーカーとしての2〜9%の3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)、および場合によっては他の1種または複数の活性物質が含まれる。
【0062】
一つの実施態様において、本発明によって、薬学的に許容される担体と共に、有効成分としての3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)を含む組成物が提供される。
【0063】
一つの実施態様において、本発明によって、炎症性疾患を治療するための医薬品を生産するための、3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)を含む前記組成物の使用が提供される。
【0064】
本発明はさらに、炎症性疾患を治療するのに有用な組成物の生産方法も目的としている。スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の標準化抽出物を薬学的に許容される担体と混合し、治療のための剤型に製剤する。一日あたりの投与量を選択して、所望の効果が得られるようにする。
【0065】
一つの実施態様において、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の標準化抽出物を含む前記薬草組成物が、炎症性疾患を治療するために提供される。
【0066】
本発明のまた別な実施態様において、薬学的に許容される担体と共に3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)を含む組成物が、炎症性疾患を治療するために提供される。
【0067】
化合物1の、3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オンを、当該技術分野で公知の手順により、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物から単離し、核磁気共鳴(NMR)法および質量スペクトル法により同定した。
【0068】
化合物1の、3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オンを含む組成物は、他の植物源から得てもよいし、あるいは当業者に公知の従来式合成方法によって製造してもよい。
【0069】
したがって、本発明では、その範囲の内に、炎症性疾患の治療において使用するための、他の原料から得てもよい化合物1を含む医薬品組成物が包含される。
【0070】
本発明のさらに別な実施態様において、化合物1を1種または複数の薬学的に許容される担体と混合し、治療のための剤型に製剤することによる、3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)を含む医薬品組成物の生産方法が提供される。一日あたりの投与量を選択して、所望の効果が得られるようにする。
【0071】
本発明の組成物は、たとえば丸剤、錠剤、コーティング錠剤、カプセル剤、顆粒剤、エリキシル剤またはシロップ剤の形態で、経口的に投与することができる。
【0072】
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物を使用して、従来の担体に完全にブレンドさせて、3〜70重量%の前記抽出物を含む経口製剤を調製するが、このことについては以下において詳しく説明する。生物活性マーカーとして2〜9%(w/w)の化合物1を含む開花結実頭部の抽出物は、所望の結果を得るには充分なものである。
【0073】
化合物1の、3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オンを使用して、従来の担体に完全にブレンドさせて、3〜99重量%の前記化合物を含む経口製剤を調製するが、このことについては以下において詳しく説明する。
【0074】
本発明の組成物を局所投与および経皮投与に使用することも可能である。本発明において有用な外用組成物には、皮膚に対して局所投与するのに適した処方が含まれる。それらの組成物は広く各種の剤型の中に配合することが可能であり、そのような剤型としてはたとえば、限定はされないが、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、粘着剤、スプレー剤、または軟膏剤などが挙げられる。
【0075】
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物を使用して、従来の担体に完全にブレンドさせて、1〜15重量%の前記抽出物を含む外用製剤を調製するが、このことについては以下において詳しく説明する。生物活性マーカーとして約2〜9%(w/w)の化合物1を含むスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物は、所望の結果を得るには充分なものである。
【0076】
一つの実施態様において、TNF−αおよびインターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)によって惹起される炎症性疾患を治療するために、前記組成物が提供される。
【0077】
一つの実施態様において、細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンによって惹起される炎症性疾患を治療するために、前記組成物が提供される。
【0078】
本発明の組成物中の有効成分である「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」または化合物1の実際の用量レベルを変化させて、特定の患者、組成物、および投薬モードで所望の治療レスポンスを得るのに効果のある有効成分の量が得られるようにするのがよい。
【0079】
選択される用量レベルは、各種の因子に依存するが、そのような因子としてはたとえば、採用される特定の有効成分「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」または「化合物1」の活性、投与経路、投与時間、採用された特定の組成物の排泄速度、治療期間、他の抽出物と組み合わせての使用、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、症状、一般的な健康状態およびそれまでの治療歴、ならびに医療従事者には公知の類似の因子が挙げられる。
【0080】
また別な実施態様において、本発明によって、相乗効果を得る目的で、抗炎症活性を示す少なくとも1種の他の薬草抽出物と組み合わせた、有効成分である「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」または化合物1を含む組成物が提供される。そのような他の植物は、たとえばウコン(Curcuma Longa)およびショウガ(Zingiber officinale)から選択してもよい。
【0081】
さらに別な実施態様において、その組成物にはさらに、相乗効果を得る目的で、少なくとも1種の生物活性物質と組み合わせた、有効成分である「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」または化合物1が含まれる。
【0082】
さらに別な実施態様において、有効成分である「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」または化合物1を含む本発明の組成物が、場合によっては、少なくとも1種の他の抗炎症薬を含んでいてもよいし、あるいは、従来の抗炎症薬と組み合わせて使用することも可能である。そのような抗炎症薬は、ステロイドたとえば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン;疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)たとえば、メトレキセート、スルファサラジン;またはNSAIDSたとえば、ナプロキセン、ジクロフェナク、イブプロフェンなどから選択してよい。
【0083】
一つの実施態様において、スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物から単離された、有効成分である「スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)抽出物」または化合物1を含む前記薬草組成物が、関節リウマチの治療のために提供される。
【0084】
本発明の別の実施態様はさらに、前記有効成分を含む組成物のTNF−αおよびインターロイキン(IL−1、IL−6、IL−8)阻害活性にも関連する。
【0085】
本発明の別の実施態様はさらに、前記有効成分を含む組成物による、たとえば細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンのような接着分子の細胞表面発現の抑制に関連する。
【0086】
本発明の組成物は、TNF−α、インターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)ならびにICAM−1、VCAM−1およびE−セレクチンにより惹起される、急性および慢性両方の形態の炎症性疾患、特に、ヒトにおける関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、難治性関節リウマチ、慢性非関節性リウマチ、骨粗鬆症/骨吸収、冠動脈心疾患、脈管炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、成人呼吸窮迫症候群、アルツハイマー病の治療における使用に適している。本発明の組成物はさらに、炎症性腸疾患、クローン病、敗血症性ショック症候群、アテローム性動脈硬化症、および各種の臨床症状の内でも各種の自己免疫疾患のような疾患による炎症を治療するためにも使用することができる。本発明はさらに、経口経路によるか、局所投与によるか、経皮的投与によって選択的に組成物を投与することを含む、炎症性疾患を治療するための方法にも関連する。
【0087】
以下の実施例によって本発明を説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。本発明の説明は例示的な実施態様のみであり、そして本発明のより広い態様(そのようなより広い態様は例示された構成において具体化される)を限定しようとするものではないということは、当業者には理解される筈である。
【実施例】
【0088】
実施例1
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)のメタノール抽出物の調製法
乾燥させたスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部(200g)を微粉砕した。その粉体化した物質を、メタノール(2.5L)を使用し60℃で3時間撹拌することにより抽出した。抽出物を真空下に濾過した。この抽出プロセスをさらに2回繰り返した。抽出物を合わせ、濃縮した。
収量:23.29g(11.65%(w/w))。
【0089】
実施例1の抽出物は、HPTLCからの推定では、6%の化合物1(実施例4に記述)を含んでいることが判明した。
【0090】
実施例2
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の酢酸エチル抽出物の調製法
乾燥させたスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部(350g)を微粉砕した。その粉体化した物質を、酢酸エチル(3L)を使用し60℃で3時間撹拌することにより抽出した。抽出物を真空下に濾過した。この抽出プロセスをさらに2回繰り返した。抽出物を合わせ、濃縮した。
収量:19g(9.5%(w/w))。
【0091】
実施例3
スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の水抽出物の調製法
乾燥させたスファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部(200g)を微粉砕した。その粉体化した物質を、水(1.2L)を使用し80℃〜90℃で3時間撹拌することにより抽出した。抽出物を真空下に濾過した。この抽出プロセスを繰り返した。抽出物を合わせ、濃縮して水を除去した。さらに、その粗製抽出物を凍結乾燥により乾燥させた。
収量:21g(10.5%(w/w))。
【0092】
実施例4
3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)の単離
実施例1に記載した方法により調製したメタノール抽出物(32g)を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム中メタノール)により精製した。分取HPLC(シリカカラム、ヘキサン:イソプロパノール、95:5)により最終的な精製を実施すると、表題の化合物が得られた。
1H NMR(CDCl、500MHz):δ 1.085(3H、CH)、4.997(1H、s)、5.801(1H、s)、6.270(1H、s);MS:m/e(ES)248(M+)。
【0093】
化合物は、得られたスペクトルデータを、文献報告値と比較することにより同定した(Indian Journal of Chemistry, Vol.25B, 233-238, (1986); J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1:(2), 157-160, (1988); J. Chem. Research (M), 0501-0509, 1989)。
【0094】
薬理学的結果
TNF−αおよびインターロイキン類(IL−1、IL−6、およびIL−8)の活性を阻害することにおける、本発明の植物抽出物、前記抽出物を精製することにより単離された化合物、および配合物の有効性を、当業者には周知の以下において説明するいくつかの薬理学的アッセイにより求めた。
【0095】
TNF−α阻害薬を同定するためのインビトロスクリーニング
実施例5
一次スクリーニング−−ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)
hPBMC中でのリポ多糖(LPS)によるTNF−αの産生を、Jansky, L. et al(Physiol. Res.、52:593-598,(2003))により記載された方法に従って測定した。健常なドナーからの血液を、カリウムEDTAバキュテーナーチューブ(BDバキュテーナー(BD vacutainer))の中に採取した。PBMCは、ヒストパック−1077(Histopaque−1077)溶液(シグマ(Sigma))中での勾配遠心分離を用いて単離した。単離したPBMCを、10%のウシ胎仔血清(FBS)(米国ユタ州(Utah, USA)のハイクロン(Hyclone)製)、100U/mLのペニシリン(ミズーリ州セントルイス(St Louis,MO)のシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.)製)、および100μg/mLのストレプトマイシン(ミズーリ州セントルイス(St Louis,MO)のシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.)製)を含むRPMI1640培地(英国パズリー(Pasley,UK)のギブコ・BRL(Gibco BRL)製)に懸濁させた。細胞濃度が1×10細胞/mLになるように調節した。トリパンブルー染料排除法により求めた生存率は、一律に≧98%であった。その細胞懸濁液(100μL)を、96ウェルの培養プレートのウェルに加えた。細胞プレーティングに続けて、79μLの培地と1μLの、DMSO(ジメチルスルホキシド、米国ミズーリ州(MO,USA)のシグマ(Sigma)製)中に溶解させた8種の濃度の試験試料(最終濃度:0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100μg/mL)をそれらの細胞に添加した。DMSOの最終濃度が0.5%となるように調節した。ビヒクル(0.5%DMSO)を対照として使用した。ロリプラム(Rolipram)(100、300μM)を標準として使用した。5%COの雰囲気下37℃で30分間かけてそのプレートをインキュベートした。最後に、ウェルあたり20μL(10μg/mL)のLPS(大腸菌(Escherchia coli)0127:B8、ミズーリ州セントルイス(St. Louis,MO)のシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.)製)を加え、最終的な濃度が1μg/mLとなるようにした。5%COの雰囲気下37℃で5時間かけてそのプレートをインキュベートした。植物抽出物の細胞毒性効果を評価するために、5時間のインキュベーションの後に、MTS(3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホニル)−2H−テトラゾリウム)試薬を使用して、細胞生存度試験を実施した。上清を採取し、製造業者(オプティEIA ELISA(OptiEIA ELISA)セット、BD・バイオサイエンシズ(BD Biosciences)、ファーミンゲン(Pharmingen))の説明に従ってELISAによりTNF−αを定量した。%阻害率を記録した。対照と比較した試験試料のパーセント細胞毒性を評価した。
【0096】
結果を表1にまとめた。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例6
LPSに刺激されたhPBMCにより放出される炎症誘発性サイトカインへの効果
炎症誘発性サイトカイン:TNF−α、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−8(IL−8)に対する植物抽出物の効果を、一次スクリーニングアッセイにおいて生成した上清を使用して測定した。それらのサイトカインのレベルは、製造業者(オプティEIA ELISA(OptiEIA ELISA)セット、BD・バイオサイエンシズ(BD Biosciences)、ファーミンゲン(Pharmingen))の説明に従ってELISAにより推定した。グラフパッド(GraphPad)ソフトウェア(プリズム(Prism)3.03)を用いた非線形回帰法により、50%阻害濃度(IC50)値を計算した。
【0099】
【表2】

【0100】
結論:LPSに刺激されたhPBMCにより放出される炎症誘発性サイトカイン類(TNF−α、IL−1β、IL−6、およびIL−8)を実施例1の抽出物が阻害することが見出された。
【0101】
実施例7
LPSに刺激されたhPBMCにより放出される炎症誘発性サイトカインに対する化合物1の効果
化合物1は、実施例4の手順を使用して得た。生物活性評価は、実施例6の手順に従って実施した。
【0102】
炎症誘発性サイトカイン:TNF−α、インターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−8(IL−8)に対する化合物1の効果を、一次スクリーニングアッセイにおいて生成した上清を使用して測定した。それらのサイトカインのレベルは、製造業者(オプティEIA ELISA(OptiEIA ELISA)セット、BD・バイオサイエンシズ(BD Biosciences)、ファーミンゲン(Pharmingen))の説明に従ってELISAにより推定した。グラフパッド(GraphPad)ソフトウェア(プリズム(Prism)3.03)を用いた非線形回帰法により、50%阻害濃度(IC50)値を計算した。結果を表3にまとめた。
【0103】
【表3】

【0104】
結論:LPSに刺激されたhPBMCにより放出される炎症誘発性サイトカイン類(TNF−α、IL−1β、IL−6およびIL−8)を化合物1が阻害することが見出された。
【0105】
実施例8
RA患者から採取した滑液細胞によって産生される炎症誘発性サイトカインに対する効果
膝置換手術を実施した関節リウマチ(RA)患者から採取した滑液細胞によるサイトカインの産生を、Brennan, F. M. et al (The Lancet., July 29: 244-247, (1989))の記載による方法に従って測定した。その滑膜組織を、10%のFBS、100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン、4mg/mLのI型コラゲナーゼ(ウォーシントン(Worthington)製)、1.5μg/mLのI型DNアーゼ(シグマ(Sigma)製)ならびに15U/mLのヘパリンを含むDMEM(ギブコ(Gibco)製)の中で消化させ、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーションの後で、70μmの膜を通して消化された組織を濾過し、その細胞を完全培地(DMEM、10%FBS)の中で3回洗浄した。その滑液細胞を、1×10細胞/mLの濃度で10時間試験試料の存在下/不存在下で培養した。遠心分離により上清を採取し、ELISAによりサイトカイン類(TNF−α、IL−1β、IL−6、IL−8)のレベルを測定した。植物抽出物の細胞毒性効果を評価するために、MTS試薬を用いて細胞生存度試験を実施した。グラフパッド(GraphPad)ソフトウェア(プリズム(Prism)3.03)を用いた非線形回帰法により、50%阻害濃度(IC50)値を計算した。
【0106】
結論:実施例1の抽出物は、RA患者から採取された滑液細胞により産生された炎症誘発性サイトカイン類(TNF−α、IL−1β、IL−6、およびIL−8)を阻害することが見出された。
【0107】
実施例9
RA患者から採取した滑液細胞によって産生される炎症誘発性サイトカインに対する化合物1の効果
実施例8の手順の記載に従って、化合物1について、RA患者から採取された滑液細胞により産生される炎症誘発性サイトカインに対する効果を試験した。
【0108】
それらの結果を表4にまとめた。
【0109】
【表4】

【0110】
結論:化合物1は、RA患者から採取された滑液細胞により産生された炎症誘発性サイトカイン類(TNF−α、IL−1β、IL−6、およびIL−8)を阻害することが見出された。
【0111】
実施例10
接着分子発現についての細胞−ELISA
このアッセイは、参考文献「Transplantation,Vol63(5),759-764,1997」をベースに、修正を加えて設計した。
【0112】
細胞培養および試薬:
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をカスケード・バイオロジックス(Cascade Biologics)から入手し、低血清成長添加物(LSGS)を補充したM200(オレゴン州ポートランド(Portland, Or)、カスケード・バイオロジックス(Cascade Biologics)製)中、5%COのインキュベーター中37℃で保存した。U937細胞(バージニア州マナッサス(Manassas、VA)、ATCC製)を、10%FBSを補充したRPMI1640培地(ユタ州ローガン(Logan, UT)、ハイクロン(Hyclone)製)の中で成長させた。組換えヒトTNFαである、VCAM−1、ICAM−1、E−セレクチンに対する抗体は、R&D・システムズ(R&D Systems)から入手し、LPSはシグマ(Sigma、ミズーリ州セントルイス(St. Louis, MO))から入手した。
【0113】
接着分子発現についての細胞ELISA
HUVECを、96ウェルのフィブロネクチンコーティングしたプレートで、7×10細胞/ウェルの濃度でプレート培養した。試験化合物の添加後30分間、TNF−α(10ng/mL)またはLPS(1μg/mL)を用いて、細胞を刺激した。刺激の後で、リン酸緩衝食塩水(PBS)中パラホルムアルデヒドを用いて、細胞(E−セレクチンおよびICAM−1)を固定した。非特異的結合を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中2%ウシ血清アルブミン(BSA)により1時間かけてブロックし、それらの細胞を一次抗体と共に2時間インキュベートした。VCAM−1を検出する目的で、細胞をブロックし、一次抗体と共に一晩インキュベートし、次いで固定した。PBS中0.1%BSAを用いて細胞を洗浄し、マウス免疫グロブリンG(IgG)に対するペルオキシダーゼ抱合抗体(Ab)を添加して、90分間インキュベートした。7回洗浄した後で、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン液基質(TMB基質)を加え、マイクロタイター・プレート・リーダー(スペクトラマックス(Spectramax)、カリフォルニア州(CA)、モレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices)製)を用いて、それぞれのウェルの450nmにおける光学密度を測定した。BAY11−7082[(E)−3−(4−メチルフェニルスルホニル)−2−プロペンニトリル]を標準として、そしてDMSOをビヒクル対照として使用した。対照と比較した試験試料のパーセント阻害率を評価する。対照と比較したそれぞれの試料の50%阻害濃度(IC50)値を、非線形回帰法により求める。結果を表5にまとめた。
【0114】
【表5】

【0115】
結論:実施例1の抽出物および化合物1は、ICAM−1、VCAM−1およびE−セレクチンのような内皮細胞接着分子のTNF−α誘発表面発現を、用量依存的に低下させた。
【0116】
実施例11
THP−1単核細胞のHUVEC単層への接着性
接着性の試験は、前単球細胞系THP−1を用い、修正を加えて実施したが、この方法は、接着性の試験における単球に関しては有用なモデルであることはすでに確立されている(Circ. Res., 97, 236-243, 2005)。標識用培地(M200プラスLSGS)を用いてTHP−1細胞を2回洗浄した。10μg/mLのビス−カルボキシエチル−カルボキシフルオレセインアセトキシメチルエステル(蛍光プローブ、BCECF−AM;シグマ(Sigma)製)を用い、室温で30分かけてTHP−1細胞(6×10細胞/mL)の標識を行った。0.1%BSAを用いて反応停止させた後、そのペレットを標識用培地中に再懸濁させた。単球接着を評価するために、各種の濃度の試験試料の存在下または不存在下に、TNF−α(1ng/mL)を用いてHUVEC単層を処理した。培地を除去し、洗浄し、標識化THP−1細胞をウェルに添加し(6×10細胞/ウェル)、暗所で室温にて10分間インキュベートした。共インキュベーションの後、ウェルを洗浄し、溶解緩衝剤(1.5Mトリス緩衝剤中0.1%トリトンX)を充填して、30分間インキュベートした。蛍光読取器(ポーラースター・オプティマ(PolarStar Optima)、BMG・ラブテック(BMG Labtech)製)を使用し、励起ピーク485nmおよび放射ピーク520nmでの蛍光を測定した。数値は平均値+SEMであり、蛍光接着データを表している。
【0117】
BAY11−7082[(E)−3−(4−メチルフェニルスルホニル)−2−プロペンニトリル]を標準として、そしてDMSOをビヒクル対照として使用した。結果を表6にまとめた。
【0118】
【表6】

【0119】
結論:実施例1の抽出物および化合物1はそれぞれ10μg/mLおよび1μMで、HUVECに対するTNF−α刺激単球THP−1細胞接着性を阻害した。
【0120】
これらの化合物は、HUVEC上での接着分子の細胞表面発現、さらにはHUVECへの単球接着性を阻害し、そのためにそれらは白血球遊走を妨害することが可能であるが、このことは慢性炎症性疾患における基本的な事象であって、各種の炎症性疾患において有用であることが証明できよう。
【0121】
インビボ試験
実施例12
BALB/cマウスにおけるリポ多糖(LPS)誘導腫瘍壊死因子(TNF)−αの放出
Fukuda T. et al (Eur. J. Pharmacol., 391: 317-320, (2000))により記載されたプロトコールに従った。BALB/cマウスをそれぞれ10匹の群に分けた。ツイーン80および0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)の中に懸濁させた試験試料を、マウスに経口(p.o.)投与した。1時間後に、滅菌したパイロジェンフリーの生理食塩液の中に溶解させたLPSを1mg/kgの用量でi.p.投与した。陰性対照群には、i.p.注射剤として生理食塩液を投与したが、他の群はすべてLPSを投与した。ロリプラム(Rolipram)(30mg/kg、p.o.)を標準薬剤として使用した。1.5時間後に、ヘパリン(500IU/mL)を用いてフラッシュさせた1mLの注射器筒を使用して、ウレタン麻酔(1.5g/kg、i.p.)下に腹部動脈から血液を採取した。血液採取管内の抗凝血剤としては、ヘパリン(5μL)を用いた。室温で10000rpmの遠心分離により血漿を分離し、アリコートして、分析にかけるまで−70℃で保管した。血液試料の中のTNF−αのレベルは、ELISAを使用して定量し、対照群と比較してのTNF−α放出のパーセント阻害率を計算した。結果を表7にまとめた。
【0122】
【表7】

【0123】
結論:実施例1の抽出物および化合物1は、BALB/cマウスにおけるTNF−α放出を阻害する。
【0124】
実施例13
DBA/1Jマウスにおけるコラーゲン誘導関節炎(CIA)
週齢8〜10週の雄のDBA/1Jマウスに、200μgのコラーゲンタイプIIをフロイント完全アジュバント中のエマルションとして尾の基部に皮内注射することにより、免疫化させた。21日後に、それらのマウスに、100μgのコラーゲンタイプIIをブースター投与した。一群の未処理マウスもまた平行して保持した。
【0125】
第23日から、それらのマウスについて、パラメーターとして関節指数(Articular Index)を用いて、関節リウマチの発症を評価した。2の最低後肢評価点を有するマウスを試験対象とした。実施例1の抽出物は、400m.p.k(ミリグラム/キログラム体重)の投与量で、1日2回経口経路により12日間投与した。化合物1は、50m.p.k.および100m.p.k.の投与量で、1日2回経口経路により12日間投与した。エンブレル(Enbrel)(3mg/kg)を標準として使用し、1日1回皮下に投与した。後肢容積および関節指数を毎日記録した。そのデータを解析して統計的有意性を求めた。
【0126】
実験の終了時に、マウスの後肢を処理して、組織病理学的評価を実施した。
【0127】
後肢の厚みの減少および関節指数の減少に関するデータを表8にまとめた。
【0128】
【表8】

【0129】
組織病理学的解析
関節炎(CIA)DBA/1Jマウスの症状に対する実施例1の抽出物および化合物1の有効性を評価した。滑膜性関節をヘマトキシリンおよびエオシン染色、さらにはサフラニンO染色した後で、顕微鏡検査を行った。組織病理学的解析から、ビヒクル処理群に比較して、実施例1の抽出物および化合物1のいずれもが、軟骨破壊、骨破壊および滑膜炎の面で有効性を発揮した。
【0130】
結論:実施例1の抽出物および化合物1のいずれもが、関節炎のCIAモデルにおいて有効性を発揮した。
【0131】
毒性試験
実施例14
急性経口毒性
実施例1の抽出物について、スプラーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラットに対する急性経口毒性の試験を、Drugs and Cosmetics Act, 1940 (インド)の「スケジュールY(Schedule Y)」に記載のガイドラインに従って実施した。
【0132】
水中0.5%ツイーン80に懸濁させた実施例1の抽出物を、5匹の雄および5匹の雌ラットの群に、最大実用投与量2000mg/kg体重で、単回投与として胃管栄養法により経口的に投与した。それらの動物について、投与後14日間にわたって死亡率および中毒の徴候を観察し、またそれらの体重を記録した。試験の終了時に、すべてのラットについて剖検を実施した。
【0133】
結論:この試験においては、スプラーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラットに対して最大実用投与量2000mg/kgで実施例1の抽出物を単回経口投与しても、処理したラットにおいては死亡率の変化は認められなかった。
【0134】
雄雌いずれのスプラーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラットにおいても、単回経口投与した実施例1の抽出物の半致死量(LD50)は、2000mg/kg体重よりも高いことが判明した。
【0135】
実施例15
亜急性経口毒性
実施例1の抽出物のスプラーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラットにおける亜急性経口毒性(28日間)の試験を、Drugs and Cosmetics Act, 1940 (インド)の「スケジュールY(Schedule Y)」に記載のガイドラインに従って実施した。
【0136】
6匹の雄および6匹の雌のスプラーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラットの群に、実施例1の抽出物を、0、250、500、または1000mg/kg体重の一日量で経口胃管栄養法により28日間にわたって投与し、第29日に屠殺してその毒性を評価した。毎日、ラットにおける毒性の徴候を検査した。実験期間の間、個々のラットについて、体重と摂餌量と共に、死亡の発生率および健康障害の徴候をすべて記録した。試験の終了時に、血液の実験室的分析を実施した。
【0137】
すべての動物について、最終的に屠殺したときに、完全な剖検を実施し、いくつかの器官の重量を記録した。対照群および高用量群の動物のすべてで、プロトコール記載のすべての組織について組織病理学的評価を実施した。
【0138】
実施例1の抽出物を1000mg/kgおよびそれ以下の用量で与えられた動物はすべて、処理期間を通じて生存していた。処理された動物のいずれにおいても、毒性の臨床的徴候は認められなかった。体重増加および食餌量のデータからは、1000mg/kgおよびそれ以下の用量の試験物質が原因の有害効果はまったく認められなかった。
【0139】
結論:この試験の所見に基づいて、28日間経口投与の場合の、ラットに対する実施例1の抽出物の無毒性量(NOAEL)は、1000mg/kg体重超であることが見出された。
【0140】
製剤
実施例16
カプセル剤の調製法
一般的手順:所定の量の成分01〜05を秤量し、適切な混合器の中に移し替えた。内容物を充分に混合し、成分09、10および11を添加して、混合を継続した。このブレンド物に成分06、07および08を添加し、その物質を30〜45分間混合した。40メッシュ篩にそのブレンド物を通し、カプセルの中に充填するのに用いた。
【0141】
【表9】

【0142】
実施例17
錠剤の調製法
一般的手順:所定の量の成分01〜05を秤量し、適切な混合器の中に移し替えた。成分13を添加し、その湿潤物質を充分に混合した。それに対して、成分09、10、11および12を添加し、混合を継続して、均質な物質を得た。16メッシュ篩にその湿潤物質を通し、その湿潤顆粒を70℃±5℃で乾燥させた。成分06、07および08を上述の顆粒に添加し、その物質を30〜45分間混合した。次いで40メッシュ篩にそのブレンド物を通し、適切なパンチを用いて圧縮して錠剤とした。
【0143】
【表10】

【0144】
実施例18
シロップ剤の調製法
一般的手順:
成分01を秤量し、連続的に撹拌しながらそれに成分15を添加した。それに、成分03、04、05、06、08、09、10、11、12および14の秤量した量を添加し、連続的に撹拌して溶解させた。成分02および13を秤量し、成分07の中に溶解させた。それに精製水を加えて、容積が10mLになるように調節した。このようにして得られた溶液をフィルタープレス/ナイロン布を通して濾過した。
【0145】
【表11】

【0146】
実施例19
クリーム剤配合物の調製法
一般的手順:
成分01を秤量して成分17の中に懸濁させた。成分02〜07を溶融させた。成分08、09、10、11、13および14を秤量して、18の一部と混合した。成分12を秤量して成分18の残りの部分に添加し、成分15および16と混合した。全部の工程の内容物を55℃で混合、均質化させ、冷却して適当なチューブに充填した。
【0147】
【表12】

【0148】
実施例20
ゲル剤配合物の調製法
一般的手順
成分01を秤量して成分06の中に懸濁させた。成分04を成分07の中に溶解させた。成分05と08とを混合した。成分02と03とを混合した。ブレンド物を充分に混合し、適切なチューブに充填した。
【0149】
【表13】

【0150】
実施例21
軟膏剤配合物の調製法
一般的手順
成分02〜06を秤量し、適切な容器の中で溶融させた。これに、成分01を添加した。そのブレンド物に成分07および08を添加した。その内容物を充分に混合し、適切なチューブに充填した。
【0151】
【表14】

【0152】
実施例22
錠剤の調製法
一般的手順
成分01および02を別途に秤量し、20メッシュで篩別してから、混合した。成分03〜07を秤量し、40メッシュで篩別した。成分03、04、05および07を混合し、これに成分01と02との混合物を添加した。このブレンド物に成分06を添加して、混合した。得られた潤滑化ブレンド物を適切な機器を用いて圧縮した。
【0153】
【表15】

【0154】
実施例23
錠剤の調製法
一般的手順
成分01および02を別途に秤量し、20メッシュで篩別した。成分08の中に成分04を撹拌しながら溶解させた。上述のブレンド物を結合溶液を用いて顆粒化させた。その湿潤物を適切な篩に通した。篩別後の物質を室温(25℃)、次いで約40℃で乾燥させた。乾燥させた物質を適切な篩を通して篩別した。成分03、05および07をそれぞれ別途に40メッシュを通して篩別してから、混合した。これに、乾燥物質を添加し、混合した。このブレンド物に成分06を添加し、その潤滑化ブレンド物を適切な機器を用いて圧縮した。
【0155】
【表16】

【0156】
実施例24
カプセル剤の調製法
一般的手順
成分01および02を別途に秤量し、20メッシュで篩別してから、混合した。成分03を秤量し、40メッシュを通して篩別した。全ての成分を混合し、成分04を用いて潤滑化させた。適切な機器を用いて、そのブレンド物を空の硬質ゼラチンカプセルに充填した。
【0157】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される担体と共に、有効成分としての植物スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の開花結実頭部の抽出物の治療有効量を含む、組成物。
【請求項2】
前記スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物が生物活性マーカーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物中に含まれる生物活性マーカーが、3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記スファエランツス・インディクス(Sphaeranthus indicus)の抽出物が2〜9%の前記化合物1を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
薬学的に許容される担体と共に、有効成分としての3a−ヒドロキシ−5a,9−ジメチル−3−メチレン−3a,4,5,5a,6,7,8,9b−オクタヒドロ−3H−ナフト[1,2−b]フラン−2−オン(化合物1)の治療有効量を含む組成物。
【請求項6】
前記組成物が腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびインターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)により惹起される障害を治療するために提供される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が炎症性疾患の治療に適用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記炎症性疾患がTNF−αにより惹起されるものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記炎症性疾患がインターロイキン類(IL−1、IL−6、IL−8)により惹起されるものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記炎症性疾患が細胞間接着分子1(ICAM−1)、血管細胞接着分子1(VCAM−1)、およびE−セレクチンにより惹起されるものである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が炎症性疾患のための治療が必要な患者に対して経口的、局所的、または経皮的に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が錠剤、カプセル剤またはシロップ剤の形態で経口投与のために配合される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物がクリーム剤、ゲル剤または軟膏剤の形態で局所投与のために配合される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記炎症性疾患が炎症性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、難治性関節リウマチ、慢性非リウマチ性関節炎、骨粗鬆症/骨吸収、冠動脈心疾患、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、成人呼吸窮迫症候群、糖尿病、皮膚遅延型過敏障害、およびアルツハイマー病から選択される、請求項7〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
炎症性疾患の治療が必要な患者に対して請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物の治療有効量を投与することを含む、炎症性疾患を治療するための方法。
【請求項16】
前記組成物が経口投与のために配合される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が局所投与のために配合される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が経皮投与のために配合される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記炎症性疾患が炎症性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、難治性関節リウマチ、慢性非リウマチ性関節炎、骨粗鬆症/骨吸収、冠動脈心疾患、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、成人呼吸窮迫症候群、糖尿病、皮膚遅延型過敏障害、およびアルツハイマー病から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記炎症性疾患が関節リウマチである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1種の抗炎症薬をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記抗炎症薬がプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メトレキセート、スルファサラジン、ナプロキセン、ジクロフェナク、イブプロフェンから選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
炎症性疾患を治療するための医薬品を生産するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
前記炎症性疾患が炎症性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、難治性関節リウマチ、慢性非リウマチ性関節炎、骨粗鬆症/骨吸収、冠動脈心疾患、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、成人呼吸窮迫症候群、糖尿病、皮膚遅延型過敏障害、およびアルツハイマー病から選択される、請求項23に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2009−510051(P2009−510051A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532961(P2008−532961)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053540
【国際公開番号】WO2007/036900
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508097663)ピラマル・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Piramal Life Sciences Limited
【Fターム(参考)】