説明

炎症性疾患の治療効力と関連している遺伝子多型の使用

染色体6p21.3のMHC III領域は、アトピー性皮膚炎処置用のピメクロリムスに対する応答に影響を及ぼす、TNFまたはLTA遺伝子内であると思われる、DNA配列を含む。従って、TNFおよびLTA遺伝子における遺伝子多型は、炎症性疾患のピメクロリムス処置の効力のマーカーとして有用である。対照的に、タクロリムスに対する応答は、他の生物学的経路により影響されると思われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してインビトロ組織試料の分析試験に関するものであり、さらに特定すれば炎症性疾患の治療効力についてのバイオマーカーとしての遺伝子多型の解析に関するものである。
【関連技術の記載】
【0002】
湿疹としても知られているアトピー性皮膚炎(AD)は、幼児および小児期に存在する掻痒を伴った皮膚の炎症を特徴とする炎症性皮膚疾患である。この疾患は、西洋諸国において最も一般的な皮膚疾患の一つであり、5歳未満の子供では20%も罹患している。Cookson WO et al.、Nature Genetics 27:372−373(2001)。
【0003】
ピメクロリムス(エリデール(Elidel、登録商標))は、特に炎症性皮膚疾患処置用に開発されたアスコマイシンマクロラクタム誘導体である。タクロリムス(FK506;プロトピック(Protopic、登録商標)またはプログラフ(Prograf、登録商標))は、同種の化合物の一員であり、同じく炎症性皮膚疾患の処置に使用される。ピメクロリムスおよびタクロリムスは両方とも、マクロフィリン−12と高い親和力で結合し、Tリンパ球においてTh1−およびTh2−型サイトカインの転写を遮断する、カルシニューリンを阻害することにより炎症プロセスを妨害する。化合物は構造上類似しており、同等の作用機序を有するが、ピメクロリムスはタクロリムスよりも皮膚に関して高い親和力を有する。
【0004】
アトピー性疾患には遺伝的基礎が存在することは、以前から認められている。Maclean JA および Eidelman FJ、Arch Dermatol 137:1474−1476(2001)で検討されているところによると、幾つかの連鎖解析を実施することにより、アトピー性皮膚炎の一因となる感受性領域が特定されている。少なくとも5つの染色体領域(3q21、5q31−33、11q13、13q12−14および14q11.2)は、アトピー性皮膚炎感受性遺伝子座を含むと考えられている。現行の見解では、アトピー機構が主にアトピー性皮膚炎の病因に関与するとされている。しかしながら、皮膚炎症に関与する他の遺伝子もまた、この状態の一因であり得る。Cookson WO et al.、Nature Genetics 27:372−373(2001)。
【0005】
局所マクロラクタム剤(ピメクロリムスまたはタクロリムス)を摂取している患者間の応答割合は、現在50%未満である。何故患者によってこれらの薬剤に応答しない場合もあるのかについては判明していない。すなわち、当業界では、例えば遺伝的に処置に応答し、そこから利益を得る傾向がある炎症性疾病患者に対して適切な医薬製剤をターゲッティングすることにより、局所マクロラクタムの効力を改善することが依然として要望されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、患者のTNF対立遺伝子の測定に基いたアトピー性皮膚炎の処置方法を提供する。一実施態様では、(−1031)TNF多型の存在について患者を試験することにより、如何なる治療が適切であるかを決定する。その遺伝子座にTT対立遺伝子(配列番号1)を有する患者についてはピメクロリムスクリームまたは軟膏で処置し、CC対立遺伝子(配列番号2)またはCT対立遺伝子(配列番号1および2)を有する患者については、高用量のピメクロリムスクリーム、ピメクロリムスクリーム+別の抗炎症剤、またはピメクロリムスクリームを用いずに抗炎症剤のみで処置する。
【0007】
本発明はまた、患者のTNF対立遺伝子の測定に基いた、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムス(経口、局所など)が指示される疾患についての一般的処置方法を提供する。一実施態様では、(−1031)TNF多型の存在について患者を試験することにより、如何なる治療が適切であるかを決定する。その遺伝子座にTT対立遺伝子を有する患者についてはピメクロリムスで処置し、CC対立遺伝子およびCT対立遺伝子を有する患者については、高用量のピメクロリムス、ピメクロリムス+別の抗炎症剤、またはピメクロリムスを用いずに抗炎症剤のみで処置する。
【0008】
さらに本発明は、患者のLTA対立遺伝子の測定に基いた、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムス(経口、局所など)が指示される疾患についての処置方法を提供する。一実施態様では、ASN60THR LTA遺伝子座多型の存在について患者を試験することにより、如何なる治療が適切であるかを決定する。その遺伝子座にAA対立遺伝子(配列番号3)またはAC対立遺伝子(配列番号3および4)を有する患者についてはピメクロリムスで処置し、CC対立遺伝子(配列番号4)を有する患者については、高用量のピメクロリムス、ピメクロリムス+別の抗炎症剤、またはピメクロリムスを用いずに抗炎症剤のみで処置する。
【0009】
本発明はまた、患者のCCR2対立遺伝子の測定に基いた、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはタクロリムス(経口、局所など)が指示される疾患についての処置方法を提供する。一実施態様では、VAL64ILE CCR2遺伝子座多型の存在について患者を試験することにより、如何なる治療が適切であるかを決定する。その遺伝子座にGG対立遺伝子(配列番号5)を有する患者についてはタクロリムスで処置し、AG対立遺伝子(配列番号5および6)を有する患者については、高用量のタクロリムス、タクロリムス+別の抗炎症剤、またはタクロリムスを用いずに抗炎症剤のみで処置する。
【0010】
本発明は、アトピー性皮膚炎またはピメクロリムス(経口、局所など)が指示される疾患の処置方法を提供するもので、如何なる治療が適切であるかを決定する前に、患者に存在するTNF−αタンパク質またはmRNAのレベルを測定する。一実施態様では、患者の体液または非炎症組織試料におけるTNF−αタンパク質またはmRNAレベルが低いかまたは正常であるときには、患者をピメクロリムスで処置する。別の実施態様において、TNF−αタンパク質またはmRNAレベルが高いとき、患者を別の抗炎症剤と組合わせたピメクロリムスまたは代替療法で処置する。
【0011】
さらに本発明は、状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスが指示される他の疾患から成る群から選択される、対象における状態に関する治療戦略の決定方法であって、対象から得られた試料におけるTNF−α mRNAまたはTNF−αタンパク質のレベルを分析することから成る方法を提供するもので、治療戦略は、試料中のTNF−α mRNAまたはTNF−αタンパク質のレベルが低いかまたは正常であるときには、治療薬としてピメクロリムス製剤の選択を含み、または試料中のTNF−α mRNAまたはTNF−αタンパク質のレベルが高いときには、治療薬として(A)別の免疫抑制剤と組合わせたピメクロリムス製剤または(B)別の免疫抑制剤の選択を含む。好ましくは、上記試料は非炎症組織から採取される。
【0012】
本発明は、炎症性皮膚疾患またはピメクロリムスが指示される他の疾患の臨床試験に含ませる対象の選択方法を提供するもので、臨床試験に含ませる前に、候補対象の(−1031)TNF遺伝子座、ASN60THR LTA遺伝子座またはVAL64ILE CCR2遺伝子座における遺伝子多型が問われる。
【0013】
本発明は、炎症性皮膚疾患またはピメクロリムスが指示される他の疾患の患者に関する治療戦略の決定で使用されるキットを提供する。一実施態様では、キットは、処置される対象から得られた試料中におけるTNF−αタンパク質またはmRNAのレベルを測定する試薬を含む。別の実施態様では、キットは、TNF、LTAまたはCCR2遺伝子における対象の遺伝子型を測定するための試薬を含む。キットはまた、状態に関する治療戦略の決定におけるバイオマーカーの使用について説明している書面を含む。
【0014】
さらに本発明は、状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスまたはタクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の治療戦略決定方法であって、状態の処置における選択されたマクロラクタム製剤の効力を示すTNF遺伝子クラスターからの遺伝子座における対象の遺伝子型の分析からなる方法を提供する。好ましくは、遺伝子型は、対象から得られた試料を分析することにより決定される。一実施態様では、(−1031)TNF多型の存在について対象/患者を試験することにより、適切な治療戦略を決定する。その遺伝子座にTT対立遺伝子(配列番号1)をもつ患者については、治療薬としてピメクロリムスを選択し、CC対立遺伝子(配列番号2)およびCT対立遺伝子(配列番号1および2)をもつ患者については、治療薬として高用量のピメクロリムス、ピメクロリムス+別の抗炎症剤またはピメクロリムスを用いずに抗炎症剤のみを選択する。本発明の別の実施態様では、治療戦略は、患者のLTA対立遺伝子の測定に基いている。好ましい実施態様では、ASN60THR LTA遺伝子座多型の存在について患者を試験することにより、治療戦略を決定する。その遺伝子座にAA対立遺伝子(配列番号3)またはAC対立遺伝子(配列番号3および4)をもつ患者については、治療薬としてピメクロリムスを選択し、CC対立遺伝子(配列番号4)をもつ患者については、高用量のピメクロリムス、ピメクロリムス+別の抗炎症剤またはピメクロリムスを用いずに抗炎症剤のみを治療薬として選択する。抗炎症剤は、好ましくはヒドロコルチゾン、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される。
【0015】
さらに本発明は、患者のCCR2対立遺伝子の測定に基いた、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスまたはタクロリムスが指示される他の状態に罹患した対象/患者についてのさらなる治療戦略決定方法を提供する。一実施態様では、VAL64ILE CCR2遺伝子座多型の存在について患者を試験することにより、適切な治療戦略を決定する。その遺伝子座にGG対立遺伝子(配列番号5)をもつ患者については、治療戦略としてタクロリムスを選択し、AG対立遺伝子(配列番号5および6)をもつ患者については、高用量のタクロリムス、タクロリムス+別の抗炎症剤またはタクロリムスを用いずに抗炎症剤のみを治療戦略として選択する。抗炎症剤は、好ましくはヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ピメクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される。
【0016】
本発明はまた、患者集団が、炎症性疾患の処置におけるピメクロリムスの効力を示すTNF遺伝子クラスターから遺伝子座での患者の遺伝子型に基いて選択されている、選択患者集団における炎症性疾患処置用の医薬の製造におけるピメクロリムスの使用に関するものである。一実施態様では、選択患者集団の遺伝子型は、(−1031)TNF多型の存在を含む。好ましくは、選択患者集団はその遺伝子座にTT対立遺伝子を含む。別の実施態様において、選択患者集団は、ASN60THR LTA遺伝子座多型を含む。好ましくは、選択された患者集団は、その遺伝子座にAA対立遺伝子またはAC対立遺伝子を含む。
【0017】
さらに、本発明は、患者集団が、炎症性疾患の処置におけるタクロリムスの効力を示すCCR2遺伝子座での患者の遺伝子型に基いて選択されている、選択患者集団における炎症性疾患処置用の医薬の製造におけるタクロリムスの使用に関するものである。一実施態様では、選択患者集団は、VAL64ILE CCR2遺伝子座多型を含む。好ましくは、患者集団はその遺伝子座にGG対立遺伝子を含む。
【0018】
すなわち、本発明は、処置される対象における効力のバイオマーカーを同定し、次いで処置に最もよく応答し、そこから利益を得ることができる対象に適切なマクロラクタム製剤をターゲッティングすることにより、局所マクロラクタム、特にピメクロリムスの効力を改良する方法を提供する。
【0019】
図面の簡単な説明
図1は、染色体(Ch)6における主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を表す図であり、MHC内におけるLTA(リンホトキシンアルファをコードする遺伝子)およびTNF(腫瘍壊死因子アルファ;TNF−αをコードする遺伝子)の配置を示す。TNF遺伝子クラスターを含む6p21.3の領域が下記にかなり詳細に示されている。*は、本明細書で検討されている、ほぼ2.5kb離れている多型を示す。この図は、Field M、Q J Med 94:237−246(2001)から修正されたものである。
【好ましい実施態様の記載】
【0020】
タクロリムス軟膏0.03%による処置ではなく、ピメクロリムスクリーム1%によるアトピー性皮膚炎処置の効力は、6p21.3でのTNFクラスターにおける多型マーカーと関連している。この発見は、最も有効な処置の決定におけるピメクロリムス処置の効力と関連している遺伝子多型の使用方法を提供する。
【0021】
ピメクロリムスクリーム1%およびタクロリムス軟膏0.03%の一対一比較として設計された第IIIb相試験において、遺伝子座が同定された。中等度アトピー性皮膚炎の小児科対象の6週間治験担当医盲検試験では、2種の局所マクロラクタムにより誘導される局所適用部位反応の発生、並びにそれらの効力、安全性および化粧品としての許容性を調査した。薬理遺伝学分析用血液試料を、臨床試験における同意参加者から集めて、いずれかの処置に対する応答についての遺伝的基礎を特定した。
【0022】
薬理遺伝学分析用に選択された遺伝子には、リンホトキシンアルファ(LTα)をコードするLTA、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)をコードするTNFが含まれた。LTAおよびTNF遺伝子は、6p21.3の高遺伝子MHCIII領域に縦列に位置する(図1参照)。両遺伝子とも多数の多型を含み、Field M、Q J Med 94:237−246(2001)により検討されているところによると、それらの中には十分に特性確認されているものもある。LTAおよびTNF遺伝子産物は両方とも、炎症プロセスに関与するサイトカインである。両サイトカインは、皮膚を含む多くの異なる組織で発現される、TNF−α受容体を通してシグナルを伝達する。Rulls SR およびSedgwick JD、Am J Hum Genet 65:294−301(1999)。さらに、LTAおよびTNFは両方とも、アトピー性皮膚炎の病因に包含される。これら両遺伝子における多型は、アトピー、特に喘息と関連している。Trabetti E et al.、J Med Genet 36:323−5(1999);Izakovicaova Holla L et al.、Clin Exp Allergy 9:1418−23(2001);Castro J et al.、J Investig Allergol Clin Immunol 3:149−5(2000);Li Kam Wa TC et al.、Clin Exp Allergy 29:1204−8(1999);およびZhu S et al. Am J Respir Crit Care Med 161:1655−9(2000)。TNF−αは、皮膚炎症におけるその役割について十分に研究されてきた。皮膚肥満細胞およびケラチノサイトは両方ともTNF−αを生産する。TNF−αの発現は皮膚では構成的であり、発現レベルは様々な刺激因子によりさらに誘導され得る。TNF−αレベルは乾癬の皮膚病変部では高くなり、LaDuca JR および Gaspari AA、Dermatol Clin 19:617−635(2001)およびMease PJ、Ann Rheum Dis 61:298−304(2002)により検討されているように、TNF−α機能をモジュレーションする薬剤が乾癬の処置において有効であることが幾つかの報告で示唆されている。乾癬はアトピー性皮膚炎とは区別されるが、両疾患の発現は、皮膚炎症をモジュレーションする遺伝子により影響される。Cookson WO et al.、Nature Genetics 27:372−373(2001)。
【0023】
臨床試験および後続の薬理遺伝学分析において、ピメクロリムス効力および(−1031)TNF多型間の関連が、ピメクロリムスのクリーム製剤で局所的に処置されているアトピー性皮膚炎の小児科対象(2〜17歳)で見出された。ピメクロリムス効力と関連している多型は、遺伝子の転写開始部位から−1031に位置しており、野生型TをCに変えている。この試験で効力を経験した唯一の対象は、(−1031)TNFにTT遺伝子型(配列番号1)を有していた。その遺伝子座にC対立遺伝子(CC(配列番号2)またはCT(配列番号1および2))をもつ患者は、ピメクロリムスに全く応答しなかった。この関連性は、タクロリムスについては当てはまらなかった。
【0024】
同一染色体領域、ASN60THR LTAにおける第2SNPについては、データもまた有意性に向かう傾向を示した。
【0025】
これらの関連性は、全年齢群および他の炎症性皮膚疾患の対象について当てはまるものと論理的に予測され得る。さらに、化合物が錠剤またはエーロゾルとして処方される場合、ピメクロリムスの効力は論理的に予測され得る。この方法は、脊椎動物対象、特に哺乳類対象、さらに特定すればヒト対象に使用され得る。
【0026】
興味の対象である多型対立遺伝子(すなわち、TNFクラスターからの遺伝子、例えばTNFおよびLTAにおける)をもつ個体は、当業界でよく知られている様々な技術を用いることにより、DNA、RNAまたはタンパク質レベルで検出され得る。同定および検出についての戦略は、例えば欧州特許第730663号、同717113号およびPCT US97/02102に記載されている。本発明方法は、予め特性確認された多型の検出を含み得るもので、その場合一部位に存在する多型形態の遺伝子解析位置および性質は既に決定されている(LTAおよびTNF遺伝子に関する上記検討参照)。この情報を利用できることから、既知多型形態を明確に同定するためのプローブセットが設計され得る。一ヌクレオチド多型を含む対立遺伝子の同定には、必然的に標的試料からのDNAの増幅が含まれ得る。これは、例えばPCRにより達成され得る。全般的には、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification(Erlich編、フリーマンプレス、ニューヨーク、ニューヨーク、1992);PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(Innis et al.編、アカデミック・プレス、サンディエゴ、カリフォルニア、1990)参照。特異的DNA配列における多型の検出は、限定するわけではないが、対立遺伝子特異的制限エンドヌクレアーゼ開裂に基いた制限酵素切断断片長多型検出(Kanおよび Dozy、Lancet II:910−912(1978))、固定化オリゴヌクレオチド(Saiki et al.、Proc.Natl.Acad.Sci. USA、86:6230−6234(1969))またはオリゴヌクレオチドアレイ(Maskos & Southern、Nucl.Acids Res.21:2269−2270(1993))を含む、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーション(Wallace et al.、Nucl.Acids Res.6:3543−3557(1978))、対立遺伝子特異的PCR(Newton et al.、Nucl.Acids Res.17:2503−2516(1989))、誤対合修復検出(MRD)(FahamおよびCox、Genome Res.5:474−482(1995))、MutSタンパク質の結合(Wagner et al.、Nucl.Acids Res. 23:3944−3948(1995))、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(FisherおよびLerman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 80:1579−1583(1983))、1本鎖立体配座多型検出(Orita et al.、Genomics 5:874−879(1983))、誤対合塩基対でのリボヌクレアーゼ開裂(Myers et al.、Science 230:1242(1985))、ヘテロデュプレックスDNAの化学的(Cotton et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、8Z:4397−4401(1988))または酵素的(Youil et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 92:87−91(1995))開裂、対立遺伝子特異的プライマー伸長に基いた方法(Syvanen et al.、Genomics 8:684−692(1990))、遺伝子ビット解析(GBA)(Nikiforov et al.、Nucl.Acids Res.22:4167−4175(1994))、オリゴヌクレオチドライゲーション(連結)検定法(OLA)(Landegren et al.、Science 241:1077(1988))、対立遺伝子特異的ライゲーション連鎖反応(LCR)(Barrany、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 88:189−193(1991))、ギャップ−LCR(Abravaya et al.、Nucl.Acids Res.23:675−682(1995))、当業界で公知の標準手順を用いる放射性および/または蛍光性DNA配列決定、およびペプチド核酸(PNA)検定法(Orum et al.、Nucl.Acids Res. 21:5332−5356(1993);Thiede et al.、Nucl.Acids Res.24:983−984(1996))を含む様々な方法により達成され得る。追加的ガイダンスは、Sambrook J et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(コールドスプリングハーバー・プレス、コールドスプリングハーバー、2000)により提供されている。
【0027】
TNF−α mRNAまたはタンパク質のレベルは、当業者に公知の方法により測定され得る。例えば、米国特許第6566501、6541620および6537540号参照。TNF関連疾患における腫瘍壊死因子のレベルの検討は、米国特許第6537540号およびそこに引用されている参考文献(これらは全て出典明示により援用する)で為されている。
【0028】
本明細書で使用されている、試料におけるTNF−α mRNA(配列番号7)のレベルは、試料中におけるβ−アクチン発現(配列番号9;Actor JK et al.、Comb Chem High Throughput Screen 3(4):343−51(2000年8月)参照)またはGAPDH発現(Anderson GD et al.、J Clin Invest、97(11):2672−9(1996年6月1日)参照)に対するTNF−α mRNAの割合が、皮膚の炎症をもたない個体(または好ましくは個体の集団)からの試料と比べて、そのβ−アクチン発現に対するTNF−α mRNAの割合よりも約2倍の高さまたはそれを越えるときには、「高い」と決定される。本明細書で使用されている試料におけるTNF−a mRNAのレベルは、試料中におけるβ−アクチン発現に対するTNF−α mRNAの割合が、皮膚の炎症をもたない個体(または好ましくは、個体の集団)からの試料と比べて、そのβ−アクチン発現に対するTNF−α mRNAの割合とほぼ同等またはそれ未満であるときには、「低いかまたは正常」であると決定される。組織におけるどのTNF−α mRNAおよびタンパク質レベルが一般的に「低い」、「正常」または「高い」と予測されるかのガイダンスについては、Van Deventer SJH、Gut 40:443−8(1997);McAlindon ME および Mahida YR、Aliment Pharmacol Ther 10(補遺2):72−4(1996);Reimund J-M et al.、J Clin Immunol 16:144−50(1996);Reinecker H-C et al.、Clin Exp Immunol 94:174−81(1993);Murch SH et al.、Gut.34:1705−9(1993)およびGrom AA et al.、Arthritis Rheum 39:1703−1710(1996)参照。別法として、当業者であれば、例えば10名またはそれ以上の対照対象において検定法を実施し(例えば「実施例」で示した方法により)、そして平均および標準偏差を得ることにより、一集団におけるTNF−α mRNA発現の平均または予測レベルを特定できるはずである。
【0029】
遺伝子多型、TNF mRNAレベル(配列番号7)またはTNFタンパク質レベル(配列番号8)の測定用試料は、医療技術者には公知の適切な方法により対象から集められ得る。試料は、例えば血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜臍帯血、尿、膣液および精液または他の体液からの流体試料であり得る。別法として、試料は、例えば生検標本からの組織試料、生物総体またはその組織のサブセットから調製されたホモジネート、ライゼートまたは抽出物、または細胞または構成部分、またはその画分または一部分であり得る。試料はまた、細胞成分、例えばタンパク質または核酸分子を含む、生物が増殖された培地、例えば栄養ブロスまたはゲルであり得る。
【0030】
ピメクロリムスクリーム1%の使用についてのガイダンスは、ノヴァリティス・ファーマシューティカルズ・コーポレーションによるエリデール(Elidel、登録商標)添付文書(Prescribing Information)、T2003−01、89014902、492573/1US(2003年4月改訂)に提供されている。ピメクロリムスの使用についてのさらなるガイダンスは、Nghiem P et al.、J Am Acad Dermatol 46:228−241(2002)およびそこに引用されている参考文献(これらは全て、出典明示により援用する)および米国特許第5912238、6352998および6423722号で提供されている。
【0031】
タクロリムス軟膏(0.03%または0.1%)の使用に関するガイダンスは、フジサワ・ヘルスケア・インコーポレイテッド、プロトピック(Protopic 、登録商標)添付文書、45670(2000年12月)により提供されている。プログラフ(Prograf、登録商標)(経口カプセルまたは注射可能)の使用に関するガイダンスは、フジサワ・ヘルスケア・インコーポレイテッド、プログラフ(Prograf、登録商標)添付文書、ZL40306およびフジサワ・ヘルスケア・インコーポレイテッド、プログラフ(Prograf、登録商標)製品モノグラフにより提供されている。タクロリムスの使用に関する追加的ガイダンスは、Nghiem P et al.、J Am Acad Dermatol 46:228−241(2002)およびそこに引用されている参考文献(これらは全て、出典明示により援用する)により提供されている。
【0032】
本明細書で使用されている「高用量のピメクロリムス」は、ピメクロリムスの推奨用量よりもかなり高い用量である。例えば、成人および2歳を越える子供について、ピメクロリムスクリーム1%の薄層を1日2回罹患領域に適用し、次いで静かにこする。推奨用量よりもかなり高い用量は、1日4回適用であり得る。別法として、推奨用量よりかなり高い用量は、利用可能とされるならば2%またはそれより高い濃度を有するピメクロリムス製剤の1日2回適用であり得る。同様に、「高用量のタクロリムス」は、推奨用量のタクロリムス用量よりもかなり高い用量である。
【0033】
皮膚科全般における、そして特にアトピー性皮膚炎についての他の免疫抑制剤、例えばヒドロコルチゾン、シクロスポリンまたはシロリムス(ラパマイシン)の使用は、医療業者には熟知されている。Marsland AM および Griffiths CE、Eur J Dermatol. 2(6):618−22(2002年11月〜12月)および Nghiem P et al.、J Am Acad Dermatol 46:228−241(2002)参照。
【0034】
アトピー性皮膚炎の診断は、医療業者にはよく知られている。Cookson WO et al.、Nature Genetics 27:372−373(2001);Nghiem P et al.、J Am Acad Dermatol 46:228−241(2002)およびそこに引用されている参考文献(これらは全て、出典明示により援用する)参照。
【0035】
一塩基(ヌクレオチド)多型。ヒトゲノムにおける配列変異は、主に一塩基多型(「SNP」)から成り、配列変異の残りは、短い縦列反復(マクロサテライトを含む)、長い縦列反復(ミニサテライト)および他の挿入および欠失である。SNPは、ヒト集団において一つの塩基が相当の頻度(すなわち>1%)で他の塩基と置換わって現われる位置である。SNPは、多型の存在故に、種の構成員の中には非突然変異配列(すなわち、本来の「対立遺伝子」)を有し得るものもあれば、一方で突然変異配列(すなわち、変異型または突然変異対立遺伝子)を有し得るものもあるという点で「対立遺伝子」に属すると言われている。最も単純な場合には、唯一の突然変異配列が存在し得、多型は二対立遺伝子(diallelic)であると言われる。別の突然変異の発生により、三対立遺伝子多型などが生じ得る。SNPは、ゲノム全体に広がっており、遺伝子の機能を改変するSNPは、表現型変異の直接的誘因であり得る。優勢で広範な性質故に、SNPは、ヒトの疾病状態に関与する遺伝子を配置する重要な道具である可能性を有する、例えば、2227のSNPがDNAの2.3メガベース領域にわたってマッピングされたパイロット試験を開示している、Wang et al.、Science 280:1077−1082(1998)参照。
【0036】
一塩基多型および特定表現型間の相関は、SNPが表現型の原因であることを示すこともそれを必要ともしない。それよりも、かかる相関は、表現型についての決定因子が存在するゲノム上の部位付近にSNPが位置するため、これらの決定因子、すなわち興味の対象である表現型に随伴して見出される傾向があることを示し得るに過ぎない。すなわち、SNPは、「真の」機能変異型と連鎖不平衡(LD)にあり得る。対立遺伝子相関としても知られているLDは、ゲノムの2つの異なる場所にある対立遺伝子が予想より高度に相関しているときに存在する。
【0037】
すなわち、SNPは、特定表現型を誘発する突然変異に近接しているが故に価値を有するマーカーとしての機能を果たし得る。
【0038】
疾患と関連するSNPはまた、それらが位置する遺伝子の機能に直接的な影響を及ぼし得る。配列変異型は、アミノ酸変化をもたらし得るかまたはエキソン−イントロンスプライシングを改変することにより、関連タンパク質を直接変化させ得るか、またはそれは、調節領域に存在して、発現周期またはmRNAの安定性を改変させ得る、Nowotny P Current Opinions in Neurobiology 11:637−641(2001)参照。
【0039】
多くの一般的な疾患を発現する危険性およびこれらの状態の処置に使用される医薬の代謝は、一変異型の影響は小さいものであり得るが、根元的なゲノム変異により実質的に影響されることがますます明白になっている。
【0040】
従って、SNPおよび臨床表現型間の関連は、(1)SNPが表現型に機能的に関与すること、または(2)ゲノム上のSNPの場所付近に表現型を誘発する他の突然変異が存在することを示唆している。第2の可能性は遺伝生物学に基く。DNAの大きな断片は遺伝によって受け継がれ、互いに極めて近接したマーカーでも、多くの世代について関連のない個体で組合わされたことはないかもしれず、すなわち、マーカーは連鎖不平衡(LD)にある。
【0041】
SNPの同定および特性確認。1本鎖立体配座多型解析、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)によるヘテロデュプレックス解析、直接DNA配列決定およびコンピューター処理方法を含む、多くの異なる技術を用いることにより、SNPが同定および特性確認され得る、Shi MM、Clin Chem 47:164−172(2001)参照。公開データベースにおける豊富な配列情報のおかげで、コンピューターツールを用いて、所定の遺伝子について独立して提示された配列(cDNAまたはゲノム配列)を調整することによりインシリコでSNPが同定され得る。実験的およびインシリコ方法により得られたSNPの比較結果は、SNPFinder(http://Ipgws.nci.nih.gov:82/perl/snp/snp_cgi.pl)により見出された候補SNPの55%が実験的にも発見されたことを示していた、Cox et al. Hum Mutat 17:141−150(2001)参照。しかしながら、これらのインシリコ方法では真のSNPの27%を見出し得たに過ぎない。
【0042】
現時点で、最も一般的なSNPタイピング法には、ハイブリダイゼーション、プライマー伸長および開裂方法がある。これらの方法は各々、適切な検出システムと連結されなければならない。検出技術には、蛍光偏光(Chan X et al. Genome Res 9:492−499(1999)参照)、ピロリン酸放出の発光測定検出(パイロシーケンシング)(Ahmadiian A et al.、Anal Biochem 280:103−10(2000)参照)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基く開裂検定法、DHPLC、および質量分析法(Shi MM、Clin Chem 47:164−172(2001)および米国特許第6300076B1号参照)がある。SNPを検出および特性確認する他の方法は、米国特許第6297018B1および6300063B1号に開示されたものである。上記参考文献の開示内容については、出典明示により援用する。
【0043】
特に好ましい実施態様において、多型の検出は、いわゆるインベーダー(INVADER、登録商標)技術(サード・ウェーブ・テクノロジーズ・インコーポレイテッドから入手可能、マディソン、ウィスコンシン)の手段により実施され得る。この検定法では、特異的な上流「インベーダー」オリゴヌクレオチドおよび部分オーバーラップ下流プローブが一緒になって、相補的DNA鋳型に結合したとき特異構造を形成する。この構造は、クリアバーゼ酵素により認識され、特定部位で切断されることにより、プローブオリゴヌクレオチドの5'フラップの放出を誘発する。次いで、このフラグメントは、反応混合物に含まれる合成二次標的および二次蛍光標識シグナルプローブに関して「インベーダー」オリゴヌクレオチドとしての機能を果たす。この結果、二次シグナルプローブはクリアバーゼ酵素により特異的に開裂される。蛍光共鳴エネルギー移動し得る色素分子で標識された、この二次プローブが開裂されたとき、蛍光シグナルが発生される。クリアバーゼは、オーバーラップDNA配列またはフラップにより形成された構造に関して厳密な必要条件を有するため、下流DNA鎖における開裂部位の上流に隣接した一塩基対誤対合を特異的に検出するのに使用され得る。Ryan D et al. Molecular Diagnosis 4(2):135−144(1999)およびLyamichev V et al. Nature Biotechnology 17:292−296(1999)参照、また米国特許第5846717および6001567号も参照(これらの開示内容については、出典明示により援用する)。
【0044】
実施態様の中には、組成物が、2箇所またはそれ以上の多型部位におけるヌクレオチドの同一性を同時に探索することを目的として異なる標識が付された2つまたはそれ以上の遺伝子解析オリゴヌクレオチドを含む場合もある。また、プライマー組成物が、多型部位を含む2またはそれ以上の領域を同時にターゲッティングおよび増幅できるように対立遺伝子特異的プライマー対の2個またはそれ以上のセットを含み得ることも考えられる。
【0045】
本発明の遺伝子解析オリゴヌクレオチドはまた、固体表面、例えばマイクロチップ、ビーズまたはガラススライド上で固定または合成され得る(例えば、国際公開第98/20020号および国際公開第98/20019号参照)。上記の固定化遺伝子解析オリゴヌクレオチドは、限定するわけではないが、プローブハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ伸長検定法を含む様々な多型検出検定法で使用され得る。本発明の固定化遺伝子解析オリゴヌクレオチドは、同時に多数の遺伝子における多型について迅速にDNA試料をスクリーニングするように設計されたオリゴヌクレオチドの規則正しく配列されたアレイを含み得る。
【0046】
本発明の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーは、3'末端ヌクレオチド、または好ましくは3'末端前ヌクレオチドを有しており、これが特定SNPの唯一のヌクレオチドと相補的であることにより、そのヌクレオチドを含む対立遺伝子が存在する場合のみポリメラーゼ介在伸長用プライマーとして作用する。コーディングまたは非コーディング鎖とハイブリダイゼーションする対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーも本発明に包含される。遺伝子多型を検出するためのASOプライマーは、当業者に公知の技術を用いて開発され得る。
【0047】
本発明の他の遺伝子解析オリゴヌクレオチドは、本発明で同定された新規多型部位の一つの1個から幾つかのヌクレオチド下流に位置する標的領域とハイブリダイゼーションする。上記オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載された新規多型の一つを検出するためのポリメラーゼ介在プライマー伸長法において有用であるため、上記遺伝子解析オリゴヌクレオチドを本明細書では「プライマー−伸長オリゴヌクレオチド」と称す。好ましい実施態様において、プライマー−伸長オリゴヌクレオチドの3'−末端は、多型部位に隣接して位置するヌクレオチドに相補的なデオキシヌクレオチドである。
【0048】
別の実施態様において、本発明は、別々の容器にパッケージされた少なくとも2つの遺伝子解析オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。キットはまた、別々の容器にパッケージされた他の成分、例えばハイブリダイゼーション緩衝液(オリゴヌクレオチドがプローブとして使用される場合)を含み得る。別法として、オリゴヌクレオチドが標的領域の増幅に使用される場合、キットは、別々の容器にパッケージされた状態で、ポリメラーゼおよびポリメラーゼが介在するプライマー伸長、例えばPCR用に最適化された反応緩衝液を含み得る。
【0049】
上記オリゴヌクレオチド組成物およびキットは、個体における遺伝子の遺伝子解析および/またはハプロタイプ解析方法で有用である。本明細書で使用されている「遺伝子型」および「ハプロタイプ」の語は、本明細書記載の新規多型部位の1つまたはそれ以上で存在する、ヌクレオチド対またはヌクレオチドをそれぞれ含む遺伝子型またはハプロタイプを意味し、所望により遺伝子における1つまたはそれ以上の追加的多型部位に存在するヌクレオチド対またはヌクレオチドをも含み得る。追加の多型部位は、現時点で既知の多型部位または後続的に発見される部位であり得る。
【0050】
遺伝子解析方法の一実施態様では、個体に存在する2コピーの遺伝子またはそのフラグメントを含む核酸混合物を個体から単離し、そして2コピーにおける1箇所またはそれ以上の多型部位でのヌクレオチド対の同一性を測定することにより、個体に遺伝子型を割当てる。当業者であれば容易に理解できることであるが、個体における2「コピー」の遺伝子は、同一対立遺伝子であり得るかまたは異なる対立遺伝子であり得る。特に好ましい実施態様では、遺伝子解析方法は、各多型部位におけるヌクレオチド対の同一性の測定を含む。
【0051】
典型的には、核酸混合物を、個体から採取した生物学的標本、例えば血液標本または組織標本から分離する。適切な組織標本には、全血、精液、唾液、涙液、尿、糞便、汗、頬側スミア、皮膚および毛髪がある。核酸混合物は、ゲノムDNA、mRNAまたはcDNAから成り得、後の2つの場合、遺伝子が発現される器官から生物標本を入手しなければならない。さらに、mRNAまたはcRNA調製物が、イントロンまたは5'および3'非転写領域に位置する多型の検出には使用されないことは、当業者であれば容易に理解できるはずである。遺伝子フラグメントを分離する場合、それは、遺伝子解析される多型部位(複数も可)を含まなくてはならない。
【0052】
ハプロタイプ解析方法の一実施態様では、個体に存在する、2コピーの遺伝子、またはそのフラグメントの一方のみを含む核酸分子を個体から分離し、そしてそのコピーにおける1箇所またはそれ以上の多型部位でのヌクレオチドの同一性をそのコピーで測定することにより、個体にハプロタイプを割当てる。核酸は、限定するわけではないが、上記の同質遺伝子製造方法の一つを含め、2コピーの遺伝子またはフラグメントを分離し得るものであればいずれの方法を用いても単離され得るが、ターゲッティングされたインビボクローニングが好ましい方法である。当業者であれば容易に理解できることであるが、個々のクローンは、個体に存在する2遺伝子コピーの一方に関するハプロタイプ情報を提供するに過ぎない。ハプロタイプ情報が個体の他のコピーについて所望される場合、追加のクローンについて調べる必要がある。典型的には、90%を越える確率で個体における遺伝子の両コピーをハプロタイプ解析するためには、少なくとも5つのクローンを調べるべきである。特に好ましい実施態様では、多型部位の各々におけるヌクレオチドが同定される。
【0053】
好ましい実施態様では、個体に存在する遺伝子の各コピーにおける多型部位の一つまたはそれ以上でのヌクレオチドのフェージング(phased)配列を同定することにより、ハプロタイプ対を個体について決定する。特に好ましい実施態様では、ハプロタイプ解析方法は、遺伝子の各コピーにおける各多型部位でのヌクレオチドのフェージング配列の同定を含む。遺伝子の両コピーをハプロタイプ解析するとき、同定段階は、好ましくは別々の容器に入れられた遺伝子の各コピーにより実施される。しかしながら、2コピーが異なるタグで標識されるか、または他の形で別々に区別可能または同定可能であるならば、場合によっては同一容器で本方法を実施することが可能であるとも考えられる。例えば、遺伝子の第1および第2コピーを異なる第1および第2蛍光色素でそれぞれ標識し、さらなる第3の異なる蛍光色素で標識した対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを多型部位(複数も可)の検定に使用する場合、第1および第3色素の組合わせを検出することにより、第1遺伝子コピーにおける多型が同定され、第2および第3色素の組合わせを検出することにより、第2遺伝子コピーにおける多型が同定される。
【0054】
遺伝子解析およびハプロタイプ解析の両方法において、多型部位(複数も可)におけるヌクレオチド(またはヌクレオチド対)の同一性は、遺伝子またはそのフラグメントの一方または両方のコピーから直接多型部位(複数も可)を含む標的領域(複数も可)を増幅することにより決定され、増幅領域(複数も可)の配列は慣用的方法により決定され得る。一多型部位でその部位でホモ接合性である個体では唯一のヌクレオチドが検出され、個体がその部位でヘテロ接合性である場合には2つの異なるヌクレオチドが検出されることは、当業者であれば容易に理解できるはずである。多型は、直接、肯定型同定法として知られているか、または推論によって否定型同定法と称される方法で同定され得る。例えば、SNPがレファレンス集団においてグアニンおよびシトシンであることが知られている場合、部位は、その部位でホモ接合である全個体についてはグアニンまたはシトシンのいずれか、または個体がその部位でヘテロ接合である場合、グアニンおよびシトシンの両方であると肯定的に決定され得る。別法として、部位は、グアニンではなく(すなわちシトシン/シトシン)、またはシトシンではない(すなわちグアニン/グアニン)と否定的に決定され得る。
【0055】
さらに、本明細書に記載されている新規多型部位のいずれかに存在する対立遺伝子(複数も可)の同一性は、興味の対象である多型部位と連鎖不平衡にある本明細書では開示されていない多型部位を遺伝子解析することにより間接的に決定され得る。一部位における特定変異型の存在により、第2部位における別の変異型の予測可能性が高められる場合、2部位は連鎖不平衡であると言われる(Stevens JC、Mol Diag 4:309−317(1999)参照)。本明細書で開示されている多型部位と連鎖不平衡にある多型部位は、遺伝子の領域またはここでは調査されていない他のゲノム領域で場所が確認され得る。本明細書に記載されている新規多型部位との連鎖不平衡にある多型部位の遺伝子解析は、限定されるわけではないが、多型部位における対立遺伝子の同一性を検出する上記方法のいずれかにより実施され得る。
【0056】
標的領域(複数も可)は、限定されるわけではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(米国特許第4965188号)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany et al.、Proc Natl Acad Sci USA 88:189−193(1991);PCT特許出願国際公開第90/01069号)、およびオリゴヌクレオチドライゲーション検定法(OLA)(Landegren et al.、Science 241:1077−1080(1988))を含む、いずれかのオリゴヌクレオチド指向増幅方法を用いて増幅され得る。上記方法でプライマーまたはプローブとして有用なオリゴヌクレオチドは、多型部位を含むかまたはそれに隣接している核酸の一領域と特異的にハイブリダイゼーションするべきである。典型的には、オリゴヌクレオチドは、長さが10から35ヌクレオチドの間、好ましくは長さが15から30ヌクレオチドの間である。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、20〜25ヌクレオチド長である。正確なオリゴヌクレオチドの長さは、当業者により常用的に考慮および実践されている多くの要因により変動する。
【0057】
他の公知核酸増幅手順も、転写に基く増幅システム(米国特許第5130238号、欧州特許第329822号、米国特許第5169766号、国際公開第89/06700号)および等温方法(Walker et al.、Proc Natl Acad Sci USA 89:392−396(1992))を含め標的領域の増幅に使用され得る。
【0058】
標的領域における多型はまた、当業界で公知の幾つかのハイブリダイゼーションに基く方法の一つを用いて増幅の前または後に検定され得る。典型的には、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、上記方法を遂行する際に使用される。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、異なる標識が付されたプローブ対として使用され得、対の一構成員は標的配列の一変異型と完全なマッチを示し、他の構成員は異なる変異型と完全なマッチを示す。実施態様によっては、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド対のセットを用いることにより、複数の多型部位が一度に検出され得る場合もある。好ましくは、セットの構成員は、多型部位の各々とのハイブリダイゼーションが検出されるとき、互いの5℃以内、さらに好ましくは2℃以内の温度範囲に含まれる融点を有する。
【0059】
標的ポリヌクレオチドへの対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、両物質とも溶解状態で実施され得るか、またはオリゴヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチドが共有結合または非共有結合的に固体支持体に固定されているときに上記ハイブリダイゼーションが実施され得る。付着には、例えば抗体−抗原相互作用、ポリ−L−Lys、ストレプトアビジンまたはアビジン−ビオチン、塩架橋、疎水性相互作用、化学結合、UV架橋ベーキングなどが介在し得る。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、固体支持体上で直接合成されるかまたは合成後に固体支持体に付着され得る。本発明検出方法での使用に適切な固体支持体には、珪素、ガラス、プラスチック、紙などでできた基体が含まれ、それらは例えばウェル(例えば96ウェルプレートにおける)、スライド、シート、膜、繊維、チップ、皿およびビーズに成形され得る。固体支持体を加工処理、コーティングまたは誘導体化することにより、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドまたは標的核酸の固定化が簡易化され得る。
【0060】
個体の遺伝子に関する遺伝子型またはハプロタイプはまた、核酸アレイおよびサブアレイ、例えば国際公開第95/11995号記載のものとの一方または両方の遺伝子コピーを含む核酸試料のハイブリダイゼーションにより決定され得る。アレイは、遺伝子型またはハプロタイプに含まれる多型部位の各々を表す一連の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを含む。
【0061】
多型の同一性はまた、限定されるわけではないが、リボプローブ(Winter et al.、Proc Natl Acad Sci USA 82:7575(1985);Meyers et al.、Science 230:1242(1985))およびヌクレオチド誤対合を認識するタンパク質、例えばエシェリキア・コリ(E.coli)mutSタンパク質(Modrich P. Ann Rev Genet 25:229−253(1991))を用いたリボヌクレアーゼ保護方法を含む誤対合検出技術を用いても決定され得る。別法として、変異型対立遺伝子は、1本鎖立体配座多型(SSCP)解析(Orita et al.、Genomics 5:874−879(1989);Humphries et al.、Molecular Diagnosis of Genetic Diseases、R.Elles編、321−340頁(1996))または変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Wartell et al.、Nucl Acids Res 18:2699−2706(1990);Sheffield et al.、Proc Natl Acad Sci USA 86:232−236(1989))により同定され得る。
【0062】
ポリメラーゼ介在プライマー伸長法もまた、多型(複数も可)の同定に使用され得る。幾つかの上記方法は、特許および科学文献に記載されており、「遺伝ビット解析」方法(国際公開第92/15712号)およびリガーゼ/ポリメラーゼ介在遺伝ビット解析(米国特許第5679524号)を含む。関連方法は、国際公開第91/02087号、国際公開第90/09455号、国際公開第95/17676号、米国特許第5302509および5945283号に開示されている。多型を含む伸長プライマーは、米国特許第5605798号に記載された質量分析法により検出され得る。別のプライマー伸長方法は、対立遺伝子特異的PCR(Ruafio et al.、Nucl Acids Res 17:8392(1989);Ruafio et al.、Nucl Acids Res 19:6877−6882(1991);国際公開第93/22456号;Turki et al.、J Clin Invest 95:1635−1641(1995))である。さらに、多数の多型部位は、国際公開第89/10414号に記載された対立遺伝子特異的プライマーのセットを用いて多数の核酸領域を同時に増幅することにより調査され得る。
【0063】
好ましい実施態様において、各民族地理群についてのハプロタイプ頻度データを調べることにより、それがハーディ−ワインベルグ(Hardy-Weinberg)平衡と一致するか否かを決定する。ハーディ−ワインベルグ平衡(D.L.Hartl et al.、Principles of Population Genomics、第3版、サイナウア・アソーシエーツ、サンダーランド、マサチューセッツ、1997)は、ハプロタイプ対H/Hの発見頻度が、H≠Hの場合PH−W(H/H)=2p(H)p(H)であり、H=Hの場合PH−W(H/H)=p(H)p(H)に等しいと仮定する。観察および予測ハプロタイプ頻度間の統計的有意差は、集団群における顕著な近親交配、遺伝子に対する強い選択圧力、サンプリングの偏りおよび/または遺伝子解析過程における誤差を含む一つまたはそれ以上の因子に起因し得る。民族地理群においてハーディ−ワインベルグ平衡から大きな偏差が観察される場合、その群における個体の数を増やすことにより、偏差がサンプリングの偏りに起因するか否かがわかる。標本サイズを大きくしても観察および予測ハプロタイプ対頻度間の差異が減じられない場合、直接ハプロタイプ解析法、例えばCLASPERシステム(登録商標)技術(米国特許第5866404号)、SMD、または対立遺伝子特異的長距離PCR(Michalotos−Beloin et al.、Nucl Acids Res 24:4841−4843(1996))を用いた個体のハプロタイプ解析を考えるのが望ましい場合もあり得る。
【0064】
このハプロタイプ対予測方法の一実施態様では、割当て段階に以下の解析の実施が含まれる。まず、可能なハプロタイプ対の各々を、レファレンス集団におけるハプロタイプ対と比較する。一般的に、レファレンス集団におけるハプロタイプ対の一つのみが、可能なハプロタイプ対とマッチし、その対が個体に割当てられる。時にはレファレンスハプロタイプ対で示された一ハプロタイプのみが個体について可能なハプロタイプ対と一致することもあり、かかる場合には、この既知ハプロタイプおよび可能なハプロタイプ対から既知ハプロタイプを控除することにより誘導された新たなハプロタイプを含むハプロタイプ対が個体に割当てられる。稀な場合、レファレンス集団におけるどのハプロタイプも可能なハプロタイプ対と一致しないこともあり、またそれとは別に、多くのレファレンスハプロタイプ対が、可能なハプロタイプ対と一致することもある。上記の場合、個体は、好ましくは直接分子ハプロタイプ解析法、例えばCLASPERシステム(登録商標)技術(米国特許第5866404号)、SMD、または対立遺伝子特異的長距離PCR(Michalotos−Beloin et al.、Nucl Acids Res 24:4841−4843(1996))を用いてハプロタイプ解析される。
【0065】
本発明はまた、集団における遺伝子型またはハプロタイプの頻度の測定方法を提供する。この方法では、集団の各構成員に存在する遺伝子について遺伝子型またはハプロタイプ対を決定するが、ただし、この遺伝子型またはハプロタイプは、遺伝子における1箇所またはそれ以上の多型部位で検出されるヌクレオチド対またはヌクレオチドを含むものとし、そして特定遺伝子型またはハプロタイプが集団で見出される頻度を計算する。集団は、レファレンス集団、家族集団、同性集団、集団群、形質集団(例、興味の対象である形質、例えば医学的状態または医療処置に対する応答を呈する個体の群)であり得る。
【0066】
本発明の別の態様では、レファレンス集団で見出される遺伝子型および/またはハプロタイプについての頻度データを、形質および遺伝子型またはハプロタイプ間の関連の同定方法で使用する。形質は、限定するわけではないが、状態に対する感受性または処置に対する応答を含め、検出可能な表現型であり得る。本方法では、レファレンス集団および形質を呈する集団における興味の対象である遺伝子型(複数も可)またはハプロタイプ(複数も可)の頻度に関するデータを得ることを含む。レファレンスおよび形質集団の一方または両方に関する頻度データは、上記方法の一つを用いて集団における各個体を遺伝子解析またはハプロタイプ解析することにより得られ得る。形質集団についてのハプロタイプは、直接的または、別法として予測的遺伝子型により、上記のハプロタイプ解析方法により決定され得る。
【0067】
別の実施態様において、レファレンスおよび/または形質集団についての頻度データは、書面または電子データ形態であり得る、以前に測定された頻度データを入手することにより得られる。例えば、頻度データは、コンピューターによりアクセス可能なデータベースに存在し得る。頻度データが得られると、レファレンスおよび形質集団における興味の対象である遺伝子型(複数も可)またはハプロタイプ(複数も可)の頻度を比較する。好ましい実施態様では、集団で観察された全遺伝子型および/またはハプロタイプの頻度を比較する。遺伝子に関する特定遺伝子型またはハプロタイプが、統計的に有意な量でレファレンス集団よりも形質集団の方で高頻度である場合、その形質は遺伝子型またはハプロタイプと関連していると予測される。
【0068】
好ましい実施態様において、ボンフェローニ修正による標準ANOVA試験および/または遺伝子型表現型相関関係を何回もシミュレーションし、有意値を計算するブートストラップ方法の使用により統計分析を実施する。多くの多型が解析されているとき、係数に修正を加えることにより、偶然見出され得るかなりの数の群集が訂正され得る。本発明方法で使用される統計的方法については、Statistical Methods in Biology、第3版、Bailey NTJ、(ケンブリッジ・ユニバーシティー・プレス、1997);Introduction to Computational Biology、Waterman MS(CRCプレス、2000)およびBioinformatics、Baxevanis AD および Ouellette BFF 編集者(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、2001)参照。
【0069】
本方法の好ましい実施態様では、興味の対象である形質は、治療的処置に対して患者が呈する臨床応答、例えば、薬剤ターゲッティングに対する応答または医学的状態についての治療的処置に対する応答である。
【0070】
本発明の別の実施態様では、興味の対象である遺伝子型またはハプロタイプと連鎖不平衡にある検出可能な遺伝子型またはハプロタイプが、代用マーカーとして使用され得る。ある遺伝子型と連鎖不平衡にある遺伝子型は、その遺伝子についての特定遺伝子型またはハプロタイプが、統計的に有意な量でレファレンス集団の場合よりも代用となり得るマーカー遺伝子型を表す集団の方で高頻度であるか否かを測定することにより発見され得、次いでマーカー遺伝子型は、その遺伝子型またはハプロタイプと関連していると予測され、次いで遺伝子型の代わりにマーカーとして使用され得る。
【0071】
定義。本明細書で使用されている「医学的状態」は、処置が望まれる一つまたはそれ以上の肉体的および/または精神的症状として現われた状態または疾患を包含するが、これに限定されるわけではなく、かつ以前に、および新たに確認された疾患および他の障害をも包含する。
【0072】
本明細書で使用されている「臨床応答」の語は、以下のいずれかまたは全てを意味する:定量的基準の応答、応答無し、および有害な応答(すなわち、副作用)。
【0073】
処置に対する臨床応答および遺伝子型またはハプロタイプ間の相関関係を演繹するため、以後「臨床集団」と称する、処置を受けた個体の集団が呈する臨床応答についてのデータを得る。この臨床データは、既に実施された臨床試験の結果を分析することにより得られ得る、および/または臨床データは、一つまたはそれ以上の新たな臨床試験を設計し、実施することにより得られ得る。
【0074】
本明細書で使用されている「臨床試験」の語は、特定処置に対する応答に関する臨床データを集めるように設計されたリサーチ試験をいい、第一相、第二相および第三相臨床試験を含むが、これらに限定はされない。標準的方法を用いて患者集団を特定し、対象を登録する。
【0075】
臨床集団に含まれる個体を、興味の対象である医学的状態の存在について等級付けするのが好ましい。潜在的患者のこの等級付けには、標準身体検査または1つまたはそれ以上の実験が採用され得る。別法として、患者の等級付けには、ハプロタイプ対および易罹患性または重篤度間に強い相関関係がある状況についてのハプロタイプ解析が使用され得る。
【0076】
興味の対象である治療的処置を、試験集団における各個体に施し、一つまたはそれ以上の予め定められた基準を用いて処置に対する各個体の応答を測定する。多くの場合、試験集団はある範囲の応答を呈し、治験担当医は様々な応答により構成される応答群(例、低い、中ぐらい、高い)の数を選択すると考えられる。さらに、試験集団における各個体についての遺伝子について遺伝子解析および/またはハプロタイプ解析するが、これは処置を施す前または後に為され得る。
【0077】
臨床および多型データの両方が得られた後、個体応答および遺伝子型またはハプロタイプ含有率間の相関関係を作り出す。相関関係は幾つかの方法で作成され得る。一方法では、個体を遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)によりグループ分けし(多型群とも称される)、次いで各多型群の構成員が呈する臨床応答の平均および標準偏差を計算する。
【0078】
次いで、これらの結果を分析することにより、多型群間における臨床応答で観察された変動が統計的に有意であるか否かを決定する。使用され得る統計分析方法は、L.D.Fisher および G.vanBelle、Biostatistics: A Methodology for the Health Sciences(ワイリー−インターサイエンス、ニューヨーク、1993)に記載されている。この分析はまた、遺伝子におけるどの多型部位が表現型の差異に対する最も重大な誘因となるかの回帰計算を含み得る。
【0079】
ハプロタイプ含有率および臨床応答間の相関関係を発見する第二の方法では、誤差最小化最適化アルゴリズムに基いた予測モデルを使用する。多くの可能な最適化アルゴリズムの一つは遺伝的アルゴリズムである(R.Judson、“Genetic Algorithms and Their Uses in Chemistry”、Reviews in Computational Chemistry、第10巻、1−73頁、K.B.Lipkowitz および D.B.Boyd編、VCHパブリッシャーズ、ニューヨーク、1997)。シミュレーテッド・アニーリング(Press et al.、“Numerical Recipes in C: The Art of Scientific Computing”、ケンブリッジ・ユニバーシティー・プレス(ケンブリッジ)1992、10章)、神経ネットワーク(E.Richおよび K.Knight、”Artificial Intelligence”、第2版、マクグロウ−ヒル、ニューヨーク、1991、18章)、標準勾配降下法(Press et al.、前出、10章)、または他のグローバルまたはローカル最適化方法(Judson、前出における検討参照)もまた使用され得る。
【0080】
また、分散分析(ANOVA)技術を用いて相関関係を分析することにより、臨床データにおける分散がどの程度まで遺伝子における多型部位の種々のサブセットにより説明されるかが決定され得る。ANOVAを用いることにより、応答変数が、一つまたはそれ以上の形質または測定され得る変数により誘発されるかまたはそれと相関しているかについての仮説を試験する(Fisher および vanBelle、前出、10章)。
【0081】
上記分析から、遺伝子型またはハプロタイプ含有量の関数として臨床応答を予測する数学モデルが当業者により容易に構築され得る。
【0082】
臨床応答および遺伝子についての遺伝子型またはハプロタイプ(またはハプロタイプ対)間の関連の認定は、処置に応答するかまたは応答しない、または択一的に、応答が低レベルであるため、さらなる処置、すなわち薬剤の用量増加を必要とし得る個体を決定する診断方法を設計するための基礎であり得る。診断方法は、幾つかの形態:例えば、直接DNA試験(すなわち、遺伝子における多型部位の一つまたはそれ以上を遺伝子解析またはハプロタイプ解析する)、血清学的試験、または健康診断測定の一つをとり得る。唯一の必要条件は、診断試験結果および一方で臨床応答と相関関係をなす根元的遺伝子型またはハプロタイプ間に明確な相関関係があることである。好ましい実施態様において、この診断方法は、上記の予測的ハプロタイプ解析法を使用する。
【0083】
コンピューターは、本発明方法を実践に必要である、一部のまたはあらゆる分析的および数学的操作を実行し得る。さらに、コンピューターは、ディスプレー装置で表示されるビュー(またはスクリーン)を作成するプログラムを実行し得、それによりユーザーは、ビューと交信し、そして、染色体位置、遺伝子構造、および遺伝子ファミリー、遺伝子発現データ、多型データ、遺伝子配列データ、および臨床データ、集団データ(例、一つまたはそれ以上の集団に関する民族地理学的起源、臨床応答、遺伝子型、およびハプロタイプに関するデータ)を含む遺伝子およびそのゲノム変異に関する大量の情報を見て分析することができる。本明細書に記載された多型データは、リレーショナルデータベースの一部として記憶され得る(例、Oracleデータベースの一例またはASCIIフラットファイルのセット)。これらの多型データは、コンピューターのハードドライブで記憶され得るかまたは例えば、CD−ROMまたはコンピューターによりアクセス可能な一つまたはそれ以上の他の記憶装置で記憶され得る。例えば、データは、ネットワークを介してコンピューターと通信される一つまたはそれ以上のデータベースで記憶され得る。
【0084】
他の実施態様では、本発明は、個体において遺伝子をハプロタイプ解析および/または遺伝子解析するための方法、組成物、およびキットを提供する。組成物は、多型部位を含むかまたはそれと隣接している一つまたはそれ以上の標的領域と特異的にハイブリダイゼーションするように設計されたオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーを含む。本明細書に記載された新規多型部位での個体の遺伝子型またはハプロタイプを確立するための方法および組成物は、タンパク質の発現および機能により影響される疾患の病因における多型の影響を試験し、薬剤ターゲッティングの効力を試験し、タンパク質の発現および機能により影響される個体の易罹患性を予測し、そして遺伝子産物をターゲッティングする薬剤に対する個体応答性を予測するのに有用である。
【0085】
さらに別の実施態様では、本発明は、遺伝子型またはハプロタイプおよび形質間の関連を認定する方法を提供する。好ましい実施態様では、形質は、易罹患性、疾患の重篤度、疾患の病期または薬剤に対する応答である。上記方法は、遺伝子型および効力測定結果、PK測定結果および副作用測定結果を含む治療結果間の関連についての可能性がある全ての薬理遺伝学的適用性についての診断試験および治療的処置の開発における適用可能性を有する。
【0086】
本発明はまた、遺伝子について決定された多型データを記憶および表示するコンピューターシステムを提供する。コンピューターシステムは、コンピューター処理ユニット、ディスプレー、および多型データを含むデータベースから成る。多型データは、レファレンス集団における遺伝子について同定された多型、遺伝子型およびハプロタイプを含む。好ましい実施態様において、コンピューターシステムは、進化関係に従って組織されたハプロタイプを示すディスプレーを作成することができる。
【0087】
別の態様において、本発明は、遺伝的変異のタイプに従って人々を分類するのに有用であるSNPプローブを提供する。本発明によるSNPプローブは、慣用的な対立遺伝子識別検定法においてSNP核酸の対立遺伝子間の区別ができるオリゴヌクレオチドである。
【0088】
本明細書で使用されている「SNP核酸」は、個体または個体群間において他の点では同一のヌクレオチド配列内で変化し得る一ヌクレオチドを含む核酸配列であり、そのため対立遺伝子として存在する。上記SNP核酸は、好ましくは約15〜約500ヌクレオチド長である。SNP核酸は染色体の一部であり得るか、またはそれらは、例えば、PCRまたはクローニングを通して染色体のかかる一部分を増幅することによる、染色体の一部分の正確なコピーであり得る。SNP核酸については、以後単に「SNP」と称す。本発明によるSNPプローブは、SNP核酸と相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0089】
本明細書で使用されている「相補的な」の語は、ワトソンおよびクリックが言う意味でオリゴヌクレオチドの全長にわたって正確に相補的であることを意味する。
【0090】
ある種の好ましい実施態様では、本発明のこの態様によるオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の一対立遺伝子と相補的であって、SNP核酸の他の対立遺伝子とは相補的ではない。本発明のこの実施態様によるオリゴヌクレオチドは、様々な方法でSNP核酸の対立遺伝子間の区別をすることができる。例えば、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下では、適切な長さのオリゴヌクレオチドは、SNP核酸の一対立遺伝子とハイブリダイゼーションするが、SNP核酸の他の対立遺伝子とはハイブリダイゼーションしない。オリゴヌクレオチドは、放射性標識または蛍光標識により標識され得る。別法として、適切な長さのオリゴヌクレオチドはPCR用プライマーとして使用され得、その場合、3'末端ヌクレオチドはSNP核酸の一対立遺伝子と相補的であって、他の対立遺伝子と相補的ではない。この実施態様では、PCR増幅の存在または非存在により、SNP核酸のハプロタイプが決定される。
【0091】
本発明のゲノムおよびcDNAフラグメントは、本発明で同定された少なくとも一つの新規多型部位を含み、少なくとも10ヌクレオチドの長さを有し、遺伝子の完全長までの範囲に及び得る。好ましくは、本発明によるフラグメントは、100から3000ヌクレオチド長、さらに好ましくは200から2000ヌクレオチド長、そして最も好ましくは500から1000ヌクレオチド長である。
【0092】
本発明で同定された多型部位について記載する場合、便宜上遺伝子のセンス鎖について述べる。しかしながら、当業者が認めるところによると、遺伝子を含む核酸分子は、相補的二本鎖分子であり得るため、センス鎖における特定部位についていう場合は、相補的アンチセンス鎖における対応部位にも当てはまることになる。すなわち、いずれかの鎖における同一多型部位を指すことになり得、オリゴヌクレオチドは、多型部位を含む標的領域でいずれかの鎖と特異的にハイブリダイゼーションするように設計され得る。すなわち、本発明はまた、本明細書記載のゲノム変異型のセンス鎖と相補的である一本鎖ポリヌクレオチドを包含する。
【0093】
好ましい実施態様において、上記キットは、さらにDNA試料収集手段を含み得る。
【0094】
特に、遺伝子解析プライマー組成物は、少なくとも2セットの対立遺伝子特異的プライマー対を含み得る。好ましくは、2つの遺伝子解析オリゴヌクレオチドが別々の容器にパッケージされている。
【0095】
一般的に本明細書記載の本発明方法は、さらに本発明によるキットの使用を含み得るものとする。一般的に、本発明方法はエクスビボで実施され得、そして上記エクスビボ方法も本質的には本発明に包含される。また、本発明方法が、人体または動物体で実践され得る工程を含み得る場合、人体または動物体で実践されない工程を含むだけの方法でも本質的には本発明に包含される。
【0096】
本発明で同定された多型の発現に対する影響(複数も可)は、遺伝子の多型変異型を含む組換え細胞および/または生物、好ましくは遺伝子組換え動物を製造することにより調査され得る。本明細書で使用されている「発現」は、以下の事項の一つまたはそれ以上を含むが、それらに限定されるわけではない:mRNA前駆体への遺伝子の転写;mRNA前駆体のスプライシングおよび他のプロセシングによる成熟mRNAの生成;mRNA安定性;タンパク質への成熟mRNAの翻訳(コドン使用およびtRNA利用能を含む);および適正な発現および機能に必要である場合、翻訳産物のグリコシル化および/または他の修飾。
【0097】
本発明の組換え細胞を製造するため、所望の同質遺伝子は、染色体外に留まるようにベクターで細胞へ導入され得る。かかる状況の場合、遺伝子は、染色体外の場所から細胞により発現される。好ましい実施態様において、同質遺伝子は、それが細胞に存在する内在性遺伝子と組換えられるような方法で細胞へ導入される。上記組換えは二重組換え事象の発生を必要とし、それによって所望の遺伝子多型が生じる。組換えおよび染色体外維持の両方を目的とする遺伝子導入用ベクターは当業界では公知であり、適切なベクターまたはベクター構築物が本発明では使用され得る。DNAを細胞へ導入するための例えば電気穿孔、粒子衝撃、リン酸カルシウム共沈澱およびウイルス形質導入といった方法が当業界では知られている。従って、方法の選択は当事者の力量および好みに左右され得る。
【0098】
変異型遺伝子を発現する組換え生物、すなわちトランスジェニック動物は、当業界で公知の標準手順を用いて製造される。好ましくは、変異型遺伝子を含む構築物を、ヒト以外の動物または動物の祖先に胚段階、すなわち1細胞段階で、または一般的にはほぼ8細胞段階までに導入する。本発明構築物をもつトランスジェニック動物は、当業者に公知の幾つかの方法により製造され得る。一方法では、導入遺伝子として隔離された遺伝子(複数も可)を含む完全なシャトルベクターを提供すべく1個またはそれ以上の隔離成分、興味の対象である一遺伝子または複数遺伝子、および当業者に公知の他成分を含むように構築されたレトロウイルスを胚へトランスフェクションする、例えば米国特許第5610053号参照。別法では、導入遺伝子を胚へ直接注入する。第三法では、胚性幹細胞を使用する。
【0099】
同質遺伝子が導入され得る動物の例には、マウス、ラット、他のげっ歯動物、およびヒト以外の霊長類があるが、これらに限定されるわけではない(“The Introduction of Foreign Genes into Mice”およびそこに引用されている参考文献、Recombinant DNA中、J.D.Watson、M.Gilman、J.Witkowski および M.Zoller編;W.H.Freeman アンド・カンパニー、ニューヨーク、254−272頁参照)。ヒト同質遺伝子を安定して発現し、ヒトタンパク質を生産するトランスジェニック動物は、異常な発現および/または活性と関連した疾病を研究し、様々な候補薬剤、化合物、および処置法をスクリーニングおよび検定することによりこれらの疾病の症状または影響を低減化するための生物学的モデルとして使用され得る。
【0100】
本発明を実践する場合、分子生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの慣用的技術が使用される。これらの技術はよく知られており、例えば、“Current Protocols in Molecular Biology”、第1〜3巻、Ausubel編(1997);Sambrook et al.、“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”、第2版、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク(1989);“DNA Cloning: A Practical Approach”、第1および2巻、Glover編(1985);“Oligonucleotide Synthesis”、Gait編(1984);“Nucleic Acid Hybridization”、Hames および Higgins編(1985);“Transcription and Translation”、Hames および Higgins編(1984);“Animal Cell Culture”、Freshney編(1986);“Immobilized Cells and Enzymes”、IRLプレス(1986);Perbal、“A Practical Guide to Molecular Cloning”;シリーズ、Methods in Enzymol.、アカデミック・プレス、インコーポレイテッド(1984);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”、MillerおよびCalos編、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク(1987);および Methods in Enzymology、第154および155巻、それぞれ Wu および Grossman、および Wu 編で説明されている。
【0101】
次に、かくして異なる対照群で測定された、遺伝子発現産物の標準対照レベルを、所定の患者における遺伝子発現産物の測定レベルと比較する。この遺伝子発現産物は、特定遺伝子型群と関連した特徴的なmRNAまたはその遺伝子型群のポリペプチド遺伝子発現産物であり得る。次いで患者は、測定レベルが所定の群についての対照レベルとの比較においてどの程度類似しているかに基いて特定遺伝子型群に分類または割当てられ得る。
【0102】
当業者であれば容易に理解できるように、この測定を行う際には必然的にある程度の不確実性が伴う。従って、対照群レベルの標準偏差を用いることにより、確率に基く測定を行うため、本発明方法は、広範囲にわたる確率に基いた遺伝子型群測定に適用可能である。すなわち、限定するものではなく、例えば一実施態様において、遺伝子発現産物の測定レベルが、対照群のいずれかの平均の2.5標準偏差以内にあれば、その個体はその遺伝子型群に割当てられ得る。別の実施態様において、遺伝子発現産物の測定レベルが、対照群のいずれかの平均の2.0標準偏差以内にあれば、その個体はその遺伝子型群に割当てられ得る。さらに別の実施態様において、遺伝子発現産物の測定レベルが、対照群のいずれかの平均の1.5標準偏差以内にあれば、その個体はその遺伝子型群に割当てられ得る。さらに別の実施態様において、遺伝子発現産物の測定レベルが、対照群レベルのいずれかの平均の1.0またはそれ未満の標準偏差であれば、その個体はその遺伝子型群に割当てられ得る。
【0103】
すなわち、このプロセスにより、様々な程度の確率で、どの群に特定患者を配するべきかが決定され得、次いで、遺伝子型群への上記割当てにより、個体を配するべきリスクカテゴリーが決定される。
【0104】
mRNAレベルおよびポリペプチド遺伝子発現産物のレベルを検出および測定する方法は、当業界ではよく知られており、ヌクレオチドマイクロアレイの使用および質量分析計を伴うポリペプチド検出方法および/または抗体検出および定量技術が含まれる。また、Human Molecular Genetics、第2版、Tom Strachan および Andrew、Read(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、インコーポレイテッド・パブリケーション、ニューヨーク、1999)を参照。
【0105】
さらに、体液または組織における遺伝子のポリペプチド(タンパク質)発現産物の濃度の検出は、多型の存在または非存在を決定するのに使用され得、そしてポリペプチド発現産物の相対レベルは、多型がホモ接合またはヘテロ接合状態のいずれで存在するか、従って個体のリスクカテゴリーを決定するのに使用され得る。
【0106】
本明細書で使用されている「医学的状態」は、処置が望まれる一つまたはそれ以上の肉体的および/または精神的症状として現われた状態または疾患を包含するが、これに限定されるわけではなく、また以前に、および新たに確認された疾患および他の障害をも包含する。
【0107】
本明細書で使用されている「多型」の語は、集団において1%を越える頻度で存在する配列変異型を包含する。配列変異型は、1%より著しく高い、例えば5%または10%またはそれ以上の頻度での存在もあり得る。また、この語は、多型部位で個体において観察される配列変異をいうのに使用され得る。多型は、ヌクレオチド置換、挿入、欠失およびマイクロサテライトを包含し、必ずというわけではないが、遺伝子発現またはタンパク質機能に検出可能な差異をもたらし得る。
【0108】
本明細書で使用されている「臨床応答」の語は、以下のいずれかまたは全てを意味する:定量的基準の応答、応答無し、および有害な応答(すなわち、副作用)。
【0109】
本明細書で使用されている「対立遺伝子」の語は、特定染色体位置(遺伝子座)における遺伝子またはDNA配列の特定の形態を意味する。
【0110】
本明細書で使用されている「遺伝子型」の語は、個体における一対の相同染色体上の遺伝子座における1箇所またはそれ以上の多型部位で見出されるヌクレオチド対(複数も可)の非フェージング5'〜3'配列を意味する。本明細書で使用されている遺伝子型は、完全遺伝子型(full-genotype)および/または部分遺伝子型(sub-genotype)を包含する。
【0111】
本明細書で使用されている「ポリヌクレオチド」の語は、非修飾または修飾RNAまたはDNAであり得る、あらゆるRNAまたはDNAを包含する。ポリヌクレオチドは、無制限に、1本および2本鎖DNA、1本および2本鎖領域の混合物であるDNA、1本および2本鎖RNA、および1本および2本鎖領域の混合物であるRNA、1本鎖またはより一般的には2本鎖であり得るDNAおよびRNAまたは1本および2本鎖領域の混合物であるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を包含する。さらに、ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む3本鎖領域をいう。ポリヌクレオチドの語はまた、1個またはそれ以上の修飾塩基を含むDNAまたはRNAおよび安定性または他の理由のためにバックボーンが修飾されたDNAまたはRNAを含む。
【0112】
本明細書で使用されている「遺伝子」の語は、プロモーター、エキソン、イントロンおよび発現を制御する他の非翻訳領域を含む、RNA産物の調節された生合成についての全情報を含むDNAのセグメントをいう。
【0113】
本明細書で使用されている「ポリペプチド」の語は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合により互いに連結された2つまたは2以上のアミノ酸、すなわちペプチドアイソスターから成るポリペプチドを意味する。ポリペプチドは、一般にペプチド、グリコペプチドまたはオリゴマーと称される短鎖、および一般にタンパク質と称される長鎖の両方を包含する。ポリペプチドは、遺伝子コードしている20アミノ酸以外のアミノ酸も含み得る。ポリペプチドは、自然プロセス、例えば翻訳後プロセシング、または当業界で公知の化学的修飾技術により修飾されたアミノ酸配列を含む。上記修飾については、基本的テキストおよびより詳細にはモノグラフ、並びに多数の研究文献で十分に説明されている。
【0114】
本明細書で使用されている「多型部位」の語は、少なくとも2つの配列が択一的に集団で見出される遺伝子座内での位置を意味し、最も頻繁な場合99%までの頻度を有する。
【0115】
本明細書で使用されている「ヌクレオチド対」の語は、個体からの2コピーの染色体における多型部位で見出されるヌクレオチドを意味する。
【0116】
本明細書で使用されている「フェージング(した)」(phased)の語は、遺伝子座における2箇所またはそれ以上の多型部位についてのヌクレオチド対の配列に適用されたとき、遺伝子座の単一コピー上でそれらの多型部位に存在するヌクレオチドの組合わせが既知であることをいう。
【0117】
処置に対する臨床応答および遺伝子型またはハプロタイプ間の相関関係を演繹するためには、以後「臨床集団」と称する、処置を受けた個体の集団が呈する臨床応答に関するデータを入手することが必要である。この臨床データは、既に実施された臨床試験の結果を分析することにより得られ、および/または臨床データは、一つまたはそれ以上の新たな臨床試験を設計および実施することにより得られる。
【0118】
本明細書で使用されている「臨床試験」の語は、特定処置に対する応答に関する臨床データを集めるように設計された研究試験をいい、第一相、第二相および第三相臨床試験を含むが、これらに限定はされない。標準的方法を用いて患者集団を特定し、対象を登録する。
【0119】
本明細書で使用されている「遺伝子座」の語は、遺伝子または物理的または表現型特徴に対応する染色体またはDNA分子における場所を意味する。
【0120】
興味の対象である治療的処置を、試験集団における各個体に施し、一つまたはそれ以上の予め定められた基準を用いて処置に対する各個体の応答を測定する。多くの場合、試験集団はある範囲の応答を呈し、治験担当医は様々な応答により構成される応答群(例、低い、中ぐらい、高い)の数を選択すると考えられる。さらに、試験集団における各個体についての遺伝子について遺伝子解析および/またはハプロタイプ解析するが、これは処置を施す前または後に為され得る。
【0121】
マーカーとしての核酸およびタンパク質の検出。特定の一実施態様において、マーカーに対応するmRNAのレベルは、当業界で公知の方法を用いることにより、生物学的試料において in situ およびインビトロ方式の両方により測定され得る。「生物学的試料」の語は、対象から単離された組織、細胞、生物学的流体およびその単離物、並びに対象内に存在する組織、細胞および流体を含むものとする。多くの発現検出方法では、単離されたRNAを使用する。インビトロ方法の場合、mRNAの単離に対する選択をしないRNA単離技術が、細胞からのRNAの精製に使用され得る。例えば、Ausubel et al.編、Curr.Prot.Mol.Biol.、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、ニューヨーク(1987−1999)参照。さらに、多数の組織試料が、当業者によく知られた技術を用いて容易に処理され得、例えば、米国特許第4843155号の一段階RNA単離方法がある。
【0122】
単離mRNAは、限定するわけではないが、サザンまたはノーザン分析、PCR分析およびプローブアレイを含むハイブリダイゼーションまたは増幅検定法で使用され得る。mRNAレベル検出についての好ましい一診断方法では、検出されている遺伝子によりコード化されるmRNAとハイブリダイゼーションし得る核酸分子(プローブ)と単離mRNAを接触させる。核酸プローブは、例えば完全長cDNAまたはその一部分、例えば少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長であり、本発明のマーカーをコード化するmRNAまたはゲノムDNAとストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイゼーションするのに充分なオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の診断検定法での使用に適切な他のプローブは本明細書に記載されている。mRNAとプローブのハイブリダイゼーションは、問題のマーカーが発現されていることを示す。
【0123】
一形式では、mRNAを固体表面に固定し、例えばアガロースゲル上で単離mRNAを移動させ、mRNAをゲルから膜、例えばニトロセルロースへ移すことにより、プローブと接触させる。別の形式では、プローブ(複数も可)を固体表面に固定し、mRNAを、例えばアフィメトリックス遺伝子チップアレイにおいてプローブ(複数も可)と接触させる。当業者であれば、本発明のマーカーによりコード化されるmRNAのレベルの検出で使用される公知mRNA検出方法を容易に適合させ得るはずである。
【0124】
試料中において本発明のマーカーに対応するmRNAのレベルを測定する別の方法は、例えばRT−PCR(Mullis、米国特許第4683202号(1987)に示された実験例)、リガーゼ連鎖反応、Barany(1991)、前出;自続式配列複製、Guatelli et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第87巻、1874−1878頁(1990);転写増幅システム、Kwoh et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第86巻、1173−1177頁(1989);Q−ベータレプリカーゼ、Lizardi et al.、Biol.Technology、第6巻、1197頁(1988);ローリングサークル複製、米国特許第5854033号(1988);または他の核酸増幅方法による核酸増幅プロセスを含み、次いで当業者に周知の技術を用いて増幅分子の検出を行う。核酸分子が非常に低い数で存在する場合、これらの検出スキームは、上記核酸分子の検出に特に有用である。本明細書で使用されている増幅プライマーは、遺伝子の5'または3'領域にアニーリングし得る一対の核酸分子であるものとして定義され(それぞれプラスおよびマイナス鎖、または逆もまた同様)、間に短い領域を含む。一般に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域の両側に隣接する。適切な条件下で、適切な試薬により、上記プライマーは、プライマーが両端に隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子を増幅させ得る。
【0125】
in situ方法の場合、mRNAは、検出前に細胞から単離される必要は無い。上記方法では、公知組織学的方法を用いて、細胞または組織試料を調製/加工処理する。次いで、試料を支持体、典型的にはガラススライド上に固定し、次いでマーカーをコード化するmRNAとハイブリダイゼーションし得るプローブと接触させる。
【0126】
マーカーの絶対発現レベルに基いて測定する別の方法として、測定はマーカーの正規化発現レベルに基いたものであり得る。マーカーの発現とマーカーではない遺伝子、例えば構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現とを比較することによってマーカーの絶対発現レベルを修正することにより、発現レベルは正規化される。正規化に適切な遺伝子には、ハウスキーピング遺伝子、例えばアクチン遺伝子または上皮細胞特異的遺伝子がある。この正規化により、一試料、例えば患者試料と別の試料または異なる供給源からの試料間で発現レベルが比較され得る。
【0127】
別法として、発現レベルは、相対発現レベルとして提供され得る。マーカーの相対発現レベルを決定するため、問題の試料に関する発現レベルを測定する前に、マーカーの発現レベルを、正常対罹患生物学的標本の10またはそれ以上の試料、好ましくは50またはそれ以上の試料について測定する。多数の試料で検定された遺伝子の各々の平均発現レベルを測定し、これをマーカーについての基準発現レベルとして使用する。次いで、試験試料について測定されたマーカーの発現レベル(絶対発現レベル)を、そのマーカーについて得られた平均発現値で割る。これで相対発現レベルが得られる。
【0128】
好ましくは、基準測定で使用される試料は、多型をもたない患者からのものである。細胞供給源の選択は、相対発現レベルの使用に左右される。正常組織で見出される発現を平均発現スコアとして用いることは、検定されたマーカーが(正常細胞に対して)特異的であるか否かを実証する助けとなる。さらに、さらなるデータが蓄積されるため、平均発現値が修正され得ることから、蓄積データに基づいて改善された相対発現値が提供される。
【0129】
ポリペプチドの検出。本発明の別の実施態様では、マーカーに対応するポリペプチドを検出する。本発明ポリペプチドを検出するための好ましい物質は、本発明マーカーに対応するポリペプチドに結合し得る抗体、好ましくは検出可能な標識を伴う抗体である。抗体は、ポリクローナル、またはさらに好ましくはモノクローナルであり得る。無傷の抗体、またはそのフラグメント、例えばFabまたはF(ab')が使用され得る。プローブまたは抗体に関する「標識(された)」の語は、プローブまたは抗体へ検出可能な物質をカップリング、すなわち物理的に結合させることによるプローブまたは抗体の直接標識、並びに直接標識されている別の物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接標識を包含するものとする。間接標識の例には、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出および蛍光標識されたストレプトアビジンにより検出され得る形をとるビオチンによるDNAプローブの末端標識がある。
【0130】
個体からのタンパク質は、当業者には周知の技術を用いて単離され得る。使用されるタンパク質単離方法は、例えばHarlow および Lane(1988)前出に記載されたものであり得る。
【0131】
試料が所定の抗体に結合するタンパク質を含むか否かを測定するために、様々な形式が使用され得る。上記形式の例には、EIA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット分析およびELISAがあるが、これらに限定はされない。当業者であれば、細胞が本発明マーカーを発現するか否か、および血液または他の身体組織におけるその特異的ポリペプチド発現産物の相対濃度の測定に使用するのに既知タンパク質/抗体検出方法を容易に適合させ得るはずである。
【0132】
一形式では、抗体または抗体フラグメントが、例えば発現されたタンパク質を検出するためのウエスタンブロットまたは免疫蛍光技術といった方法で使用され得る。上記使用においては、抗体またはタンパク質を固体支持体に固定するのが一般的に好ましい。適切な固相支持体または担体には、抗原または抗体と結合し得るあらゆる支持体が含まれる。公知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑レイ岩および磁鉄鉱がある。
【0133】
当業者であれば、抗体または抗原を結合させるのに適切な多くの他の担体を熟知しており、本発明による使用に上記支持体を適合させ得るはずである。例えば、患者細胞から単離されたタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、固相支持体、例えばニトロセルロースへ固定化させ得る。次いで、支持体を適切な緩衝液で洗浄し、検出可能標識抗体で処理し得る。次いで、固相支持体を緩衝液で再度洗浄することにより、未結合抗体が除去され得る。次いで、固体支持体における結合標識の量は、慣用的手段により検出され、この測定値は血液または別の身体組織中におけるタンパク質のレベルまたは濃度に変換され得る。
【0134】
本発明はまた、生物学的試料、例えば限定するわけではないが、血清、血漿、リンパ液、膿胞内粘液、尿、糞便、脳脊髄液、腹水(acitic fluid)または血液を含む体液および体組織の生検試料において本発明マーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを包含する。例えば、キットは、生物学的使用において本発明マーカーに対応するポリペプチドまたはポリペプチドをコード化するmRNAを検出できる標識化合物または物質および試料中におけるポリペプチドまたはmRNA、例えばポリペプチドまたはポリペプチドをコード化するDNAまたはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブと結合する抗体の量を測定する手段を含み得る。キットはまた、キットを用いて得られた結果を解釈するための使用説明書を含み得る。
【0135】
抗体に基くキットの場合、キットは、例えば1)本発明マーカーに対応するポリペプチドに結合する、例えば固体支持体に付着させた一次抗体、および所望により2)ポリペプチドまたは一次抗体に結合し、検出可能標識にコンジュゲートされている異なる二次抗体を含み得る。
【0136】
オリゴヌクレオチドに基くキットの場合、キットは、例えば、1)本発明マーカーに対応するポリペプチドをコード化する核酸配列とハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能標識オリゴヌクレオチド、または2)本発明マーカーに対応する核酸分子を増幅するのに有用な一対のプライマーを含み得る。
【0137】
キットはまた、例えば緩衝剤、保存剤またはタンパク質安定剤を含み得る。さらにキットは、検出可能標識、例えば酵素または基質を検出するのに必要な成分を含み得る。キットはまた、検定され、試験試料と比較され得る一対照試料または一連の対照試料を含み得る。キットの各成分は、個別容器内に密閉され得、様々な容器は全て、キットを用いて実施される検定の結果を解釈するための説明書と一緒に単一パッケージ内に収められ得る。
【0138】
キット。本発明キットは、キット容器上またはその中に書面を含み得る。書面は、患者がマクロラクタム処置、特にピメクロリムス処置に有効に応答するか否かを予測するためのキットに含まれる試薬の使用方法について記載している。幾つかの実施態様では、試薬の使用は本発明方法に従ったものであり得る。
【実施例】
【0139】
臨床試験での治療に対する患者応答の薬理遺伝学的分析:TNF遺伝子クラスターにおける多型とピメクロリムス効力の潜在的関連性
選択された候補遺伝子の遺伝子解析:タクロリムスを投与された24患者およびピメクロリムスを投与された22患者に相当する、46名の患者を、遺伝マーカーと治療効力間で考えられ得る関連性について分析した。
【0140】
合計22遺伝子における31の特有な多型部位について解析した。表1は、薬理遺伝学分析への参加を了承した試験集団で調査された各SNPに関する遺伝子型頻度を列挙している。各SNPは、以下の3種の情報源により同定されている:(1)遺伝子に関するゲノム配列が見出され得る、REF_ACC、またはGenbank受入番号、(2)位置、すなわち検索されたREF_ACC内におけるヌクレオチドの位置、および(3)TWT SNP#、すなわち1および2項で特定された位置での遺伝子型を評価するように設計された検定法に対しサード・ウェーブ・テクノロジーが割当てた番号。場所は、判明している場合における、多型を含む遺伝子内の部位をいう。
【表1】

【表2】

【表3】

+このSNPは、この患者集団において多型ではない。
*この集団は、このSNPについてハーディ−ワインベルグ平衡にはない。
【0141】
FKBP1A遺伝子(配列番号13)は、ピメクロリムスおよびタクロリムスの標的(FK506)である、FK506結合タンパク質1A(マクロフィリン−12)をコードするものであるが、この遺伝子は全くSNPを含まないことが見出されたため、これについては遺伝子解析しなかった。FKBP1Aにおける多型部位は、公開データベースでは全く報告されていない。我々は、FKBP1A遺伝子を配列決定することにより、未知SNPを捜したが、全く見出されなかった。
【0142】
興味の対象である各遺伝子座での遺伝子型を検索するため、公的に利用可能なデータベース、例えばOMIM、SNP Consortium、LocusLinkおよびdbSNPを用いることにより、SNPの両側に隣接するプローブセットを設計した。プローブセットは、サード・ウェーブ・テクノロジーズ、インコーポレイテッド(TWT、マディソン、ウィスコンシン)により合成された。製造業者の使用説明書に従ってサード・ウェーブ・テクノロジーズが開発したインベーダー(Invader、登録商標)検定法を用いて60ngのゲノムDNAにより遺伝子解析を実施した。Lyamichev V et al.、Nat Biotechnol 17:292−6(1999)および Ryan D、Mol Diagn 4:135−44(1999)。
【0143】
ASN60THR LTAの遺伝子解析。ASN60THR LTA(TWT#229383)に関するサード・ウェーブ・テクノロジーズ遺伝子解析検定法の結果を確認するため、ネスティッドポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法を使用した。オリゴヌクレオチドは全てリサーチ・ジェネティクス(ハンツビル、アラバマ)から購入された。まず、以下の配列:前方(5'−acaccacctgaacgtctcttc−3';配列番号14)および逆方向(5'−tctcaatccctgaggaagtgg−3';配列番号15)を有するプライマーを用いて481bpフラグメントを増幅した。完全LTA配列(配列番号11)についてはGenbank受入番号M55913参照。マイクロコン100カラム(アムリコン、ベヴァリー、マサチューセッツ)を用いてアンプリコンを精製し、鋳型として使用することにより、以下の配列:前方(5'−tcagccaaaccttgagccctagag−3';配列番号16)および逆方向(5'−atgtttaccaatgaggtgagcagcaggtttgcgg−3';配列番号17)を有するプライマーを用いて163bpフラグメントを増幅した。両PCR反応とも、50mMのKCl、10mMのトリス−HCl(pH8.3)、1.5mMのMgClおよび0.01%ゼラチンから成る緩衝液中における80ngのゲノムDNA、60ngの各プライマー、1.0単位(U)のAmpliTaqポリメラーゼ(パーキン・エルマー)、および200μMのdNTP(ファルマシア、ピスキャタウェイ、ニュージャージー)を用いてパーキン・エルマー9700サーモサイクラーで実施された。両増幅についてのPCRサイクルの構成は以下の通りであった:94℃、5分;35サイクルについては94℃、30秒、57℃、30秒、および72℃、30秒;72℃、10分、次いで4℃。163bpアンプリコンを、Fau I(ニューイングランド・バイオラブズ、ベヴァリー、マサチューセッツ)により消化し、4%アガロースゲルにおいて電気泳動させた。G対立遺伝子は未切断163bpフラグメントを生じさせ、Aは35および128bpフラグメントを生じさせた。128および163bpフラグメントは両方とも、ヘテロ接合個体で見られた。サード・ウェーブ・テクノロジーズの技術により測定された遺伝子型は2つ以外全て、制限消化により確認され得る。
【0144】
(−1031)TNFの遺伝子解析。TNF−1031に関する遺伝子解析検定法の結果を確認するため、TNFプロモーターの1113bpフラグメントをPCR増幅し、各試料について配列決定した。PCRプライマーは以下の配列を有していた:前方(5'−TGGGAGTGAGAACTTCCCAG−3';配列番号18)および逆方向(5'−TGAGCTCATCTGGAGGAAGC−3';配列番号19)。ヒトTNFの完全配列についてはGenbank受入番号M16441を参照。PCR反応は、上記と同じ条件を用いて実施された。マイクロコン100(アムリコン、ベヴァリー、マサチューセッツ)カラムによりPCR産物を精製した。
【0145】
アンプリコンの精製後、100bp当たり5ngを、推奨された要領で(パーキン・エルマー、フォスターシティー、カリフォルニア)ABIプリズム・ダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシングキットによる配列決定に使用した。配列決定反応は、前方(5'−TGGGAGTGAGAACTTCCCAG−3';配列番号20)または逆方向(5'−CTTAAACGTCCCCTGTATTC−3';配列番号21)プライマーのいずれかを含んでおり、以下の要領で行なわれた:96℃、5分;25サイクルについては96℃、10秒、50℃、5秒、および60℃、4分;次いで4℃。配列決定反応物をセントリセップのスピンカラム(プリンストン・セパレーション、アデルフィア、ニュージャージー)で精製し、ABI 373Aシーケンサーにかけた。ABIプリズム配列解析V3.3ソフトウェアを用いて、DNA配列を解析した。
【0146】
統計的分析。治験担当医総合評価(IGA)スコアを、薬理遺伝学的試験における効力の主要マーカーとして使用した。試験の治験担当医盲検相の最後(43日目)におけるIGAスコアを、主たる比較時点として使用した。最終観察結果引き延ばしによる補完を必要としたのは、43日目に一対象のみであった。このケースでは、29日目以降IGAスコアを入手できなかったため、この日のスコアを43日目IGAスコアの代わりに用いた。試験自体で効力の評価を行う要領で、IGAスコアを再コードした。0または1のIGAスコアは、有効な処置とみなされ、2〜5のIGAスコアは、治療失敗としてカウントされた。また、掻痒の重症度も効力のマーカーとして使用された。掻痒スコアを掻痒無し(スコア=0)または有り(スコア=1、2または3)の2群に分けた。フィッシャーの正確モデルを用いて、各効力変数に対する遺伝子型の影響を調べた。統計的分析は全て、SASバージョン8.2ソフトウェアを用いて行なわれた。
【0147】
多重検定について修正するため、ボンフェローニ修正方法を全結果に適用した。有意スコア(p値)の修正に使用した等式は次の通りである:ボンフェローニ=P X η(式中、P=遺伝子型および治療効力間の関連性についてのp値およびη=試験で遺伝子解析された多型マーカーの数)。
【0148】
人口統計試験参加者。表2で立証されているところによると、薬理遺伝学(PG)分析に同意した試験対象は、性別、年齢、民族性および治療に対する応答に関して全体的に試験における患者集団を代表していた。
【表4】

+ 臨床試験のタクロリムス治療群には70対象および臨床試験のピメクロリムス治療群には71対象が参加した。
* タクロリムスを摂取した24対象およびピメクロリムスを摂取した22患者を薬理遺伝学的分析において分析した。
$ IGAスコアをスクリーニングでとった。
# 処置の43日目(臨床試験の盲検部分の最後)に記録された0または1のIGAスコアとして定義される、効力を経験した患者の数および(パーセント)
【0149】
(−1031)TNFおよびマクロラクタム効力間の関連性。上記によると、各遺伝子マーカーの統計分析で使用された主要効力変数は、再コードIGAスコアであった。22遺伝子における合計31遺伝子座が遺伝子解析された。遺伝子解析された31遺伝子座のうち、5遺伝子座は薬理遺伝学分析集団に多型は無かったため、分析から脱落させた。上記表1参照。すなわち、この分析における多重検定についてのペナルティは26である。
【0150】
臨床試験結果を全体として(両群を合わせて)分析すると、分析された26SNPのうち1つは、効力と統計的に有意な関連性を示した。腫瘍壊死因子アルファ、TNFは、6p21.3(図1参照)における遺伝子−高MHCクラスターに位置し、この領域における遺伝子の多くは炎症プロセスにおいて重要な役割を演じている。TNFのプロモーターは高度多型である。SNPは、効力と関連した遺伝子の転写開始部位から−1031bpに位置している(p=0.04、下記表3参照)。これらのデータは、(−1031)TNFにC対立遺伝子(CCホモ接合体またはCTヘテロ接合体)をもつ患者が、TT患者の場合(17/29、59%奏効率)ほど処置に応答しなかったと思われる(4/17、24%奏効率)ことを示している。
【表5】

【0151】
表3は、処置の43日目にIGAスコアにより測定された、処置に応答したかまたはしなかった(それぞれ「奏効」または「奏効せず」として示されている)各遺伝子型をもつ対象の数を示している。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。関連についてのP値は0.04である(フィッシャーの正確検定)。
【0152】
次に、我々は、それぞれ独立してタクロリムスおよびピメクロリムス処置についての(−1031)TNFおよび効力間の関連を調べた。表4からわかるように、ピメクロリムスに応答した対象は、(−1031)TNFに基き非応答者とは分離され得る。(−1031)TNFにTT遺伝子型(配列番号1)をもつ対象のみ、ピメクロリムス処置に応答した。C対立遺伝子(配列番号2;CCまたはCT)をもつ10対象の中でピメクロリムス処置に応答した者は無かった。CCおよびCT患者間の応答割合は0%であったが、TT患者の67%はピメクロリムス摂取後にアトピー性皮膚炎の寛解を経験した。
【表6】

【0153】
表4は、処置43日目にIGAスコアにより測定された、処置に応答したかまたは応答しなかった(それぞれ「奏効」または「奏効せず」として示す)各遺伝子型をもつピメクロリムス処置対象の数を示している。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。関連についてのP値は0.003である(フィッシャーの正確検定)。
【0154】
しかしながら、この遺伝子座における遺伝子型は、タクロリムス効力に影響を及ぼすとは思われない。下記表5参照。事実、タクロリムスを使用した対象のうち、応答者の割合は、CTまたはCCの場合とTTである場合とはほぼ同様であると思われる。すなわち、全体として臨床試験における効力と(−1031)TNF間に見られる関連は、一般にマクロラクタムではなくピメクロリムスについてのみ当てはまる。
【表7】

【0155】
表5は、処置43日目にIGAスコアにより測定された、処置に応答したかまたは応答しなかった(それぞれ「奏効」または「奏効せず」として示す)各遺伝子型をもつタクロリムス処置対象の数を示している。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。(−1031)TNF遺伝子型とタクロリムスに対する応答間に関連は見出されなかった。関連についてのP値は1.0である(フィッシャーの正確検定)。
【0156】
ASN60THR LTAおよびマクロラクタム効力間の関連。両治験群を一緒に分析したとき、効力との関連は(−1031)TNFの場合のみ見出された。興味深いことに、第二多型についてのデータは、有意性に向かう傾向を示唆していた。LTA(配列番号3)のエキソン3におけるC→A多型は、タンパク質の60番目のアミノ酸においてアスパラギンの代わりにトレオニンをもたらすものであり(ASN60THR)、臨床試験では効力との関連を示していた(p=0.07、下記表6参照)。LTAは6p21.3においてTNFと縦列の形で位置しており、多数の報告がTNFおよびLTAにおけるマーカーは強い連鎖不平衡にあると示唆している。Bouma G et al.、Scand J Immunol 43:456−63(1996);Noguchi E et al.、Am J Respir Crit Care Med 166:43−6(2002);Moffatt M および Cookson W. Hum Molec Genet 6:551−4(1997);Messer G et al.、J Exp Med 173:209−19(1991)。この遺伝子座における遺伝子型は、インベーダー検定法(TWT#229383)を用いて薬理遺伝学分析参加者において決定され、制限消化により確認された。データは、この遺伝子座にA、野生型対立遺伝子(配列番号3)をもつ患者が処置に応答する尤度が高いことを示している。A対立遺伝子(配列番号4);AAまたはACをもつ対象間における応答割合は57%(17/30)であり、CC遺伝子型をもつ対象で、臨床試験での効力を経験したのは25%(4/16)に過ぎなかった。
【表8】

【0157】
表6は、処置43日目にIGAスコアにより測定された、処置に応答したかまたは応答しなかった(それぞれ「奏効」または「奏効せず」として示す)各遺伝子型をもつ臨床試験での対象の数を示している。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。有意な関連は見出されず(P値=0.07、フィッシャーの正確検定)、P値は有意なレベルにほぼ達しており、関連の可能性を示唆している。
【0158】
次に我々は、ASN60THR LTAおよび各臨床試験群間の関連をそれぞれ独立して調べた。予想通り、有意な関連がピメクロリムスについて見出され(P=0.02、下記表7参照)、用量の影響が多型について見られた。この遺伝子座にCC遺伝子型をもつ患者は、ピメクロリムスにあまり応答しなかった(1/8または11%は処置で成果が得られた)。しかしながら、AC遺伝子型をもつ患者は良好に応答し(4/10または40%応答割合)、AA遺伝子型をもつ患者は全て処置に応答した(3/3)。
【表9】

【0159】
表7は、処置43日目にIGAスコアにより測定された、処置に応答したかまたは応答しなかった(それぞれ「奏効」または「奏効せず」として示す)各遺伝子型をもつピメクロリムス処置対象の数を示している。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。関連についてのP値は0.02である(フィッシャーの正確検定)。
【0160】
ASN60THR LTAとタクロリムス効力間に同様の関係は見出されなかった。表8からわかるように、ASN60THR LTAにおけるA対立遺伝子の存在は、タクロリムスに対する応答に全く影響を及ぼさなかった。(−1031)TNFについて見出されたように、臨床試験におけるASN60THR LTAと効力間の関連は、ピメクロリムス治験群により積極的にもたらされたものである。
【表10】

【0161】
表8は、処置43日目にIGAスコアにより測定された、処置に応答したかまたは応答しなかった(それぞれ「奏効」または「奏効せず」として示す)各遺伝子型をもつタクロリムス処置対象の数を示している。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。ASN60THR LTA遺伝子型とタクロリムスに対する応答間に関連は見出されなかった。関連についてのP値は1.0である(フィッシャーの正確検定)。
【0162】
多型マーカーと掻痒軽減間の関連。臨床試験で使用される二次効力変数は掻痒であった。ASN60THR LTAおよび(−1031)TNFがこの効力変数と関連しているか否かを見るために分析を行った(43日目に評価した)。ASN60THR LTAおよび(−1031)TNFについての分析結果をそれぞれ表9および10に示す。
【0163】
薬理遺伝学群における対象のうち掻痒の軽減を経験したのは僅かであった(7/46)。一次効力変数(IGA)についての発見は、ASN60THR LTAにおけるC対立遺伝子の存在により処置に対する応答の尤度が低減化することを示唆していた。ASN60THR LTAおよび掻痒間に統計的に有意な関連は見出されず、この遺伝子座がホモ接合性CCである対象のうち、この臨床試験での処置の結果として掻痒の軽減を経験した者はなかった。(−1031)TNFについては、一次効力変数IGAの分析は、TT対象が処置に対して応答する尤度がかなり高いことを示唆しているが、全体として臨床試験について掻痒スコアを分析した場合同じことは言えない。応答者数が余りに小さいため、2つの治験群は、掻痒の分析については区別され得なかった。薬理遺伝学分析試料におけるピメクロリムス対象のうち掻痒の軽減を経験したのは2名に過ぎなかった。しかしながら、掻痒に関して効力を経験したピメクロリムス対象は両方とも(−1031)TNFがTTであった。
【表11】

【0164】
表9は、処置43日目に掻痒スコア(Pru)により測定された、処置に応答したかまたは応答しなかった、試験されたASN60THR LTA遺伝子座に各遺伝子型をもつ対象の数を示している。患者が掻痒を報告しない場合(スコア=0)、処置は奏効したとみなされた。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。ASN60THR LTA遺伝子型と掻痒軽減間に有意な関連は見出されなかったが(P=0.06、フィッシャーの正確検定)、関連についてのP値は有意にほぼ達していた。
【表12】

【0165】
表10は、処置43日目に掻痒スコアにより測定された、処置に応答したかまたは応答しなかった(−1031)TNFに各遺伝子型をもつ対象の数を示している。患者が掻痒を報告しない場合(スコア=0)、処置は奏効したとみなされた。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。関連は全く見出されなかった(P=1.0、フィッシャーの正確検定)。
【0166】
(−1031)TNFおよびASN60THR LTAにおける遺伝子型。これら2つの6p21.3遺伝子座における匿名での患者の遺伝子型が得られた。(−1031)TNFにTT遺伝子型をもつ対象のみピメクロリムス治療に応答した。(−1031)TNFについてTTホモ接合体である個体が、ASN60THR LTAについてAAホモ接合体、ACヘテロ接合体またはCCホモ接合体であるという観察結果は、(−1031)TNFおよびASN60THRが完全な連鎖不平衡にはないことを示している。
【表13】

【0167】
ピメクロリムスおよびタクロリムスおよび解析された他のマーカー間の関連。解析された他の分子マーカーの全てについて、それらが独立した形で各治験群について非応答者と応答者を分離するか否かを見るためにチェックした。ピメクロリムスについて追加的な関連性は見出されなかったが、タクロリムスについては一つの関連性が見出された。CCR2(配列番号6;TWT#47987参照)のコーディング領域におけるG→A多型は、バリンからイソロイシンへの変化(VAL64ILE)をもたらすものであり、タクロリムス処置に対する応答と関連性を示した(p=0.04、上記表11参照)。ピメクロリムス効力およびVAL64ILE CCR2間の関連についてのP値は1.0であった(フィッシャーの正確検定)。
【0168】
CCR2は、ケモカイン(C−C)モチーフ受容体2、単球化学誘導タンパク質−1についての受容体および炎症疾患において単球浸潤を伝達するケモカインをコード化する。CCR2は、単球走化性を特異的に伝達するケモカインである、単球化学誘導タンパク質−1(MCP−1、SCYA2としても知られている)に関する受容体の両既知イソ型についてコード化する。MCP−1は、炎症疾患、例えば慢性関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症に関与することが示された。Boring L et al.、Nature 394:894−7(1998)。VAL64ILE多型は、CCR2の第一貫膜領域に生じるもので、HIV−1感染症およびエイズに関連して研究されてきた。Mummidi S et al.、Nature Med 4:786−93(1998)。見出された関連はp=0.04であった。
【0169】
これらのデータは、VAL64ILE CCR2でのA対立遺伝子がタクロリムス処置に応答する頻度が高かったことを示しており、GG対象の4/13または31%と比べて、AG対象の8/10または80%が効力を体験していた。(集団にAA対象は無かった)。この関連は、特に(−1031)TNFについてのピメクロリムス効力、およびピメクロリムス効力により見られた関連より弱い(p=0.003)。
【表14】

【0170】
表12は、(処置43日目にIGAスコアにより測定された)処置に応答したかまたは応答しなかったVAL63ILE CCR2に各遺伝子型をもつタクロリムス処置対象の数を示している。各区画は、応答カテゴリーに当てはまる所定の遺伝子型をもつ個体の数、次いでパーセントを含む。関連についてのP値は0.04であった(フィッシャーの正確検定)。
【0171】
LTB(配列番号12;TWT#128095参照)もまた、6p21.3におけるTNF遺伝子クラスターに位置する。LTBにおける多型もまたこの分析で解析された(配列番号22)。しかしながら、下記で示すように、臨床試験でのTWT#128095と効力間に関連は無い。ピメクロリムスおよびタクロリムス対象を独立して分析しても、関連は全く見出されなかった。
【表15】


【表16】


【表17】

【0172】
これらのデータは、ピメクロリムスに対する応答に関与する遺伝子領域を突きとめる助けとなる。生物学的関連性を有する多型は、TNFの近位に配置されているとは思われない。
【0173】
要約すると、LTAまたはTNFは、小児アトピー性皮膚炎の処置におけるピメクロリムスの効力の決定においてある一定の重要な役割を演じる。対照的に、タクロリムスに対する応答は、他の生物学的経路により影響されると思われる。すなわち、異なる生物学的機構がピメクロリムスおよびタクロリムスに対する応答に影響を及ぼす。ピメクロリムスおよびタクロリムスは実質的な構造類似性を有し、両方とも究極のカルシニューリン阻害作用でもってマクロフィリン−12をターゲッティングするが、2種の化合物は異なる特性を有することが判明している。Nghiem P et al.、J Am Acad Dermatol 46:228−241(2002)およびそこに引用されている参考文献。
【0174】
本明細書に引用されている参考文献は全て、個々の出版物または特許または特許出願が具体的かつ個別にそのまま完全に説明の一部として組込まれているかの如く、全目的にかなうべく同程度まで完全に出典明示により援用されているものとする。さらに、本明細書で引用されているGenBank受入番号、Unigene Cluster番号およびタンパク質受入番号は全て、上記の各番号が具体的かつ個別に完全に説明の一部として組込まれているかの如く、全目的にかなうべく同程度まで完全に出典明示により援用されているものとする。
【0175】
本発明は、本明細書に記載された実施態様によって制限されるわけではなく、それらは本発明の個々の態様を単に説明しているに過ぎない。本発明の多くの修正および変形がその意図および範囲から逸脱することなく加えられ得ることは、当業者であれば容易に理解できるはずである。本発明の範囲内における機能的に均等内容の方法および装置も、本明細書で列挙されたものに加えて、上記内容および添付図面から当業者であれば容易に想到できるものである。上記修正および変形も、添付された本発明の範囲内に包含されるものとする。本発明は、添付された請求の範囲に包含される全範囲の均等内容事項と一緒に、請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、染色体(Ch)6における主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を表す図であり、MHC内におけるLTA(リンホトキシンアルファをコードする遺伝子)およびTNF(腫瘍壊死因子アルファ;TNF−αをコードする遺伝子)の配置を示す。TNF遺伝子クラスターを含む6p21.3の領域が下記にかなり詳細に示されている。*は、本明細書で検討されている、ほぼ2.5kb離れている多型を示す。この図は、Field M、Q J Med 94:237−246(2001)から修正されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者集団が、炎症性疾患の処置におけるピメクロリムスの効力を示すTNF遺伝子クラスターから遺伝子座での患者の遺伝子型に基いて選択されている、選択患者集団における炎症性疾患処置用の医薬の製造におけるピメクロリムスの使用。
【請求項2】
患者集団が、炎症性疾患の処置におけるタクロリムスの効力を示すCCR2遺伝子座での患者の遺伝子型に基いて選択されている、選択患者集団における炎症性疾患処置用の医薬の製造におけるタクロリムスの使用。
【請求項3】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスまたはタクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の処置方法であって、
(a)状態の処置における選択されたマクロラクタム製剤の効力を示すTNF遺伝子クラスターから遺伝子座での対象の遺伝子型を得、
(b)対象に選択されたマクロラクタム製剤または状態の代替治療薬を投与する
段階を含む方法。
【請求項4】
選択されたマクロラクタム製剤がピメクロリムスを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
選択されたマクロラクタム製剤がタクロリムスを含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
遺伝子座が、ヒトTNF遺伝子またはヒトTNF遺伝子と相同的である脊椎動物種における遺伝子である、請求項3〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
遺伝子座が、ヒトTNF遺伝子の(−1031)TNF遺伝子座またはヒトTNF遺伝子と相同的な脊椎動物種における対応する遺伝子座である、請求項1記載の使用または請求項3〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
(−1031)TNF遺伝子座がTT遺伝子型を有するとき、選択されたマクロラクタム製剤がピメクロリムスを含む、請求項3、4、6または7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
(−1031)TNF遺伝子座がCCまたはCT遺伝子型を有するとき、状態についての代替治療薬が、高用量のピメクロリムス、ピメクロリムスおよび代替免疫抑制剤、および代替免疫抑制剤から成る群から選択される、請求項3〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
代替免疫抑制剤が、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
遺伝子座が、ヒトLTA遺伝子またはヒトLTA遺伝子と相同的な脊椎動物種における遺伝子である、請求項1記載の使用または請求項3記載の方法。
【請求項12】
遺伝子座が、ヒトLTA遺伝子のASN60THR LTA遺伝子座またはヒトLTA遺伝子に相同的な脊椎動物種における対応する遺伝子座である、請求項1または11記載の使用または請求項3または11記載の方法。
【請求項13】
ASN60THR LTA遺伝子座がAAまたはAC遺伝子型を有するとき、選択されたマクロラクタム製剤がピメクロリムスを含む、請求項3、11または12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ASN60THR LTA遺伝子座がCC遺伝子型を有するとき、状態についての代替治療薬が、高用量のピメクロリムス、ピメクロリムスおよび代替免疫抑制剤、および代替免疫抑制剤から成る群から選択される、請求項3、11または12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
代替免疫抑制剤が、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスまたはタクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の処置方法であって、
(a)状態の処置における選択されたマクロラクタム製剤の効力を示す、ヒトCCR2遺伝子またはヒトCCR2遺伝子に相同的な脊椎動物種における遺伝子である遺伝子座での対象の遺伝子型を得、
(b)対象に選択されたマクロラクタム製剤または状態の代替治療薬を投与する
段階を含む方法。
【請求項17】
遺伝子座が、ヒトCCR2遺伝子のVAL64ILE CCR2遺伝子座またはヒトCCR2遺伝子と相同的な脊椎動物種における対応する遺伝子座である、請求項2記載の使用または請求項16記載の方法。
【請求項18】
VAL64ILE CCR2遺伝子座がGC遺伝子型を有するとき、選択されたマクロラクタム製剤がタクロリムスを含む、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
VAL64ILE CCR2遺伝子座がAG遺伝子型を有するとき、状態についての代替治療薬が、高用量のタクロリムス、タクロリムスおよび代替免疫抑制剤、および代替免疫抑制剤から成る群から選択される、請求項16または17記載の方法。
【請求項20】
代替免疫抑制剤が、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ピメクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される、請求項16、17または19記載の方法。
【請求項21】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の処置方法であって、
(a)対象からの試料であって、非炎症組織から採取された試料においてTNF−α mRNAのレベルの測定値を得、そして
(b)
(i)試料におけるTNF−α mRNAレベルが低いかまたは正常であるときには、対象にピメクロリムス製剤を投与するか、または
(ii)試料におけるTNF−α mRNAレベルが高いとき、対象に(A)別の免疫抑制剤と組合わせてピメクロリムス製剤を、または(B)別の免疫抑制剤を投与する、
段階を含む方法。
【請求項22】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の処置方法であって、
(a)対象からの試料であって、非炎症組織から採取された試料においてTNF−α タンパク質のレベルの測定値を得、そして
(b)
(i)試料におけるTNF−αタンパク質レベルが低いかまたは正常であるときには、対象にピメクロリムス製剤を投与するか、または
(ii)試料におけるTNF−αタンパク質レベルが高いとき、対象に(A)別の免疫抑制剤と組合わせてピメクロリムス製剤を、または(B)別の免疫抑制剤を投与する、
段階を含む方法。
【請求項23】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の治療戦略決定方法であって、対象からの試料におけるTNF−α mRNAまたはTNF−αタンパク質のレベルを分析することからなり、そして治療戦略が、試料におけるTNF−α mRNAまたはTNF−αタンパク質のレベルが低いかまたは正常であるときには、治療薬としてピメクロリムス製剤の選択を含み、または試料におけるTNF−α mRNAまたはTNF−αタンパク質のレベルが高いときには、治療薬として(A)別の免疫抑制剤と組合わせたメクロリムス製剤または(B)別の免疫抑制剤の選択を含むものである方法。
【請求項24】
ピメクロリムス製剤の効力を測定するための臨床試験に含ませる対象の選択方法であって、
(a)(−1031)TNF多型遺伝子座での対象の遺伝子型を調べ、
(b)次いで、
(i)それらがこの遺伝子座でTTである場合、試験に含ませ、
(ii)それらがこの遺伝子座でCCまたはCTである場合、除外するか、または
(iii)(i)および(ii)の両方
の段階を含む方法。
【請求項25】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスまたはタクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、状態の治療戦略決定で使用されるキットであって、
(a)マクロラクタム製剤による状態治療の効力のバイオマーカー検出用試薬
(b)試薬用の容器、および
(c)状態についての治療戦略の決定におけるバイオマーカーの使用を説明している容器上または容器中の書面
を含むキット。
【請求項26】
バイオマーカーが、TNF、LTAおよびCCR2から成る群から選択された遺伝子における遺伝子多型である、請求項25記載のキット。
【請求項27】
バイオマーカー検出用試薬が、TNF、LTAおよびCCR2から成る群から選択された遺伝子における遺伝子多型の片側におけるポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションし、遺伝子多型にまたがるヌクレオチド領域を特定するプライマー対のセットである、請求項25または26記載のキット。
【請求項28】
バイオマーカーが、処置される対象からの試料におけるTNF−α mRNAのレベルである、請求項25記載のキット。
【請求項29】
バイオマーカーが、処置される対象からの試料におけるTNF−αタンパク質のレベルである、請求項25記載のキット。
【請求項30】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスまたはタクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の治療戦略決定方法であって、状態の処置における選択されたマクロラクタム製剤の効力を示すTNF遺伝子クラスターからの遺伝子座における対象の遺伝子型の分析からなる方法。
【請求項31】
遺伝子座が、ヒトTNF遺伝子またはヒトTNF遺伝子と相同的な脊椎動物種における遺伝子である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
遺伝子座が、ヒトTNF遺伝子の(−1031)TNF遺伝子座またはヒトTNF遺伝子と相同的な脊椎動物種における対応する遺伝子座である、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
(−1031)TNF遺伝子座がTT遺伝子型を有するとき、治療戦略が、治療薬としてピメクロリムスを含むマクロラクタム製剤の選択を含む、請求項30〜32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
(−1031)TNF遺伝子座がCCまたはCT遺伝子型を有するとき、治療戦略が、治療薬として高用量のピメクロリムス、ピメクロリムスおよび代替免疫抑制剤、または代替免疫抑制剤の選択を含む、請求項30〜32のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
代替免疫抑制剤が、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
遺伝子座が、ヒトLTA遺伝子またはヒトLTA遺伝子と相同的な脊椎動物種における遺伝子である、請求項30記載の方法。
【請求項37】
遺伝子座が、ヒトLTA遺伝子のASN60THR LTA遺伝子座またはヒトLTA遺伝子と相同的な脊椎動物種における対応する遺伝子座である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ASN60THR LTA遺伝子座がAAまたはAC遺伝子型を有するとき、治療戦略が、治療薬としてピメクロリムスを含むマクロラクタム製剤の選択を含む、請求項36または37記載の方法。
【請求項39】
ASN60THR LTA遺伝子座がCC遺伝子型を有するとき、治療戦略が、治療薬として高用量のピメクロリムス、ピメクロリムスおよび代替免疫抑制剤、または代替免疫抑制剤の選択を含む、請求項36または37記載の方法。
【請求項40】
代替免疫抑制剤が、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
状態が、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチまたはピメクロリムスまたはタクロリムスが指示される他の状態から成る群から選択される、対象における状態の治療戦略決定方法であって、状態治療における選択されたマクロラクタム製剤の効力を示す遺伝子座での対象の遺伝子型を分析することからなり、遺伝子座がヒトCCR2遺伝子またはヒトCCR2に相同的な脊椎動物種における遺伝子である方法。
【請求項42】
遺伝子座が、ヒトCCR2遺伝子のVAL64ILE CCR2遺伝子座またはヒトCCR2遺伝子と相同的な脊椎動物種における対応する遺伝子座である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
VAL64ILE CCR2遺伝子座がGG遺伝子型を有するとき、治療戦略が、治療薬としてタクロリムスを含むマクロラクタム製剤の選択を含む、請求項41または42記載の方法。
【請求項44】
VAL64ILE CCR2遺伝子座がAG遺伝子型を有するとき、治療薬として高用量のタクロリムス、タクロリムスおよび代替免疫抑制剤、または代替免疫抑制剤の選択を含む、請求項41または42記載の方法。
【請求項45】
代替免疫抑制剤が、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ピメクロリムスおよびシロリムスから成る群から選択される、請求項44記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−507460(P2007−507460A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530098(P2006−530098)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011124
【国際公開番号】WO2005/040416
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】