説明

炭化燃料製造方法及び装置

【課題】炭化燃料の回収率とエネルギー効率を向上させることのできる炭化燃料製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】炭化燃料製造装置10は、有機性汚泥を水熱反応させる反応器14と、反応器14で水熱反応された水熱反応生成物を脱水する脱水機20と、脱水機20で脱水された脱水処理物を乾燥させる乾燥機22と、脱水機20で分離された分離液を酸性下で凝集処理するpH調整槽24と、を備える。pH調整槽24で凝集処理された凝集処理物は、乾燥機22に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化燃料製造方法及び装置に係り、特に下水等の有機性汚泥から炭化燃料を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RPS法によってエネルギーの再利用が求められており、バイオマスなどの廃棄物から有効なエネルギーを回収し、燃料として再利用することが行われている。たとえば、下水等の水処理設備から発生する有機性汚泥は、450〜800℃の高温の還元雰囲気下において炭化され、有機性汚泥から酸素と水素を分離させて炭素を固定化させることによって、燃料として利用される。この方法は高温反応であるため、投入エネルギーが大きく、また、回収する炭化汚泥の灰分比率が高くなることが知られており、汚泥燃料として望ましくない。
【0003】
そこで、投入エネルギーを少なくする方法として、水熱反応を利用して有機性汚泥を炭化させる方法が開発されている。たとえば、特許文献1は、1.96〜3.43MPaの圧力で水熱反応させることによって、処理時間を短縮させる方法が記載されている。また、特許文献2には、加圧スチームを吹き込むことによって、160〜250℃の比較的低温域で水熱反応させ、省エネ化を図る方法が記載されている。
【特許文献1】特開2006−28272号公報
【特許文献2】特開2006−61861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水熱反応を利用した炭化燃料製造方法は、汚泥中の有機物が水に溶解し、処理性の悪い溶解性有機物が発生し、その廃水処理に手間とコストがかかるという問題があった。
【0005】
また、従来の炭化燃料製造方法は、汚泥中の有機物の一部が水に溶解するため、炭化燃料としての回収率が低く、改善が求められていた。
【0006】
さらに、従来の炭化燃料製造方法は、製造後の炭化燃料から回収できる回収エネルギーに比べて、炭化燃料を製造するための投入エネルギーが大きく、エネルギー効率が悪いという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、炭化燃料の回収率とエネルギー効率を向上させることのできる炭化燃料製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、有機性汚泥を水熱反応させ、該水熱反応生成物から水分を分離させることによって炭化燃料を製造する炭化燃料製造方法において、前記分離させた水分から、溶解性有機物を分離して固形の炭化燃料を製造することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は前記目的を達成するために、有機性汚泥を水熱反応させ、該水熱反応生成物から水分を分離させることによって炭化燃料を製造する炭化燃料製造方法において、前記水熱反応物又は該水熱反応物から分離させた水分を、酸性下で又は凝集剤を添加することにより凝集処理し、該凝集処理した凝集処理物から水分を取り除いて炭化燃料を製造することを特徴とする。
【0010】
有機性汚泥を水熱反応させた場合、その生成物には処理性の悪い溶解性有機物が含まれており、従来はこの処理に手間とコストがかかっていたが、本発明の発明者は、水熱反応生成物に含まれる溶解性有機物から高カロリーの炭化燃料が得られるという知見を得た。さらに、本発明の発明者は、水熱反応生成物に含まれる溶解性有機物から炭化燃料を得る方法として、酸性下で又は凝集剤を添加することにより凝集処理して水分を除去することが好ましいという知見を得た。
【0011】
本発明はこのような知見に基づいて成されたものであり、請求項1の発明は、従来廃棄処理していた水熱反応生成物の分離液から溶解性有機物を分離して炭化燃料を製造するようにしたので、炭化燃料の回収率を向上させることができ、且つ、分離液の廃水処理の負荷を軽減することができる。請求項2の発明は、水熱反応物又は水熱反応物から分離させた水分を酸性下で又は凝集剤(無機系又は高分子)を添加することにより凝集処理して炭化燃料を製造するようにしたので、従来廃棄処理していた溶解性有機物から高カロリーの炭化燃料を製造することができる。したがって、炭化燃料の回収率を大きく向上させることができるとともに、分離液の廃水処理の負荷を大幅に軽減させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は請求項2の発明において、前記凝集処理物からの水分除去と、前記水熱反応生成物からの水分除去とを共通の脱水機及び/又は乾燥機で行うことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、凝集処理物と水熱反応生成物とを共通の脱水機、乾燥機により水分除去するようにしたので、製造効率を向上させてコストを削減させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は前記目的を達成するために、有機性汚泥を水熱反応させる反応器と、前記反応器で水熱反応された水熱反応生成物を脱水する脱水機と、前記脱水機で脱水された脱水処理物を乾燥させる乾燥機と、を備えた炭化燃料製造装置において、前記脱水機で分離された分離液を、酸性下で又は凝集剤を添加することにより凝集処理する凝集処理部を備え、該凝集処理部で凝集処理した凝集物を前記乾燥機又は前記脱水機に供給することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、水熱反応生成物から分離された分離液を酸性下で又は凝集剤(無機系又は高分子)を添加することにより凝集処理し、乾燥機、脱水機で水分を除去するようにしたので、従来廃棄処理していた分離液から高カロリーの炭化燃料が得られる。したがって、炭化燃料の回収率を向上させることができるとともに、分離液の廃水処理の負荷を大幅に軽減させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は前記目的を達成するために、有機性汚泥を水熱反応させる反応器と、前記反応器で水熱反応された水熱反応生成物を脱水する脱水機と、前記脱水機で脱水された脱水処理物を乾燥させる乾燥機と、を備えた炭化燃料製造装置において、前記水熱反応物を、酸性下で又は凝集剤を添加することにより凝集処理する凝集処理部を備え、該凝集処理部で凝集処理した処理液を前記脱水器に供給することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、水熱反応物を酸性下で又は凝集剤(無機系又は高分子)を添加することにより凝集処理し、脱水機に供給するようにしたので、水熱反応物に含まれる溶解性有機物からも炭化燃料を取り出すことができる。したがって、炭化燃料の回収率を向上させることができるとともに、脱水後の分離液の廃水処理の負荷を大幅に軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水熱反応物又は水熱反応物から分離させた分離液を凝集処理して炭化燃料を製造するようにしたので、溶解性有機物からも炭化燃料を製造することができ、炭化燃料の回収率を向上させることができるとともに、分離液の廃水処理の負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下添付図面に従って本発明に係る炭化燃料製造方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態の炭化燃料製造装置の構成を模式的に示すブロック図である。同図に示すように、製造装置10は予熱装置12を備え、この予熱装置12に汚泥が投入される。
【0021】
投入される汚泥は、濃縮汚泥または脱水汚泥が用いられる。特に、脱水汚泥は、含水率が低く、投入エネルギーが減少するため好ましい。なお、汚泥の含水率は、投入エネルギーを考慮すると、できるだけ低いことが好ましいが、含水率が低過ぎると粘度が高くなって圧送が困難になるため、75〜90%程度の含水率が好ましい。また、汚泥に夾雑物がある場合は、バルブ等にからみ閉塞の可能性があるため、除去する機構を設けることが好ましい。
【0022】
予熱装置12に投入された汚泥は、80〜100℃に加温される。この予熱装置12は、後述の熱交換器18に接続されており、排熱を利用して汚泥を加温するようになっている。予熱装置12で加温された汚泥は、反応器14に圧送される。
【0023】
反応器14は蒸気によって水熱反応を行う装置であり、この反応器14の内部では、汚泥がボイラー蒸気によって140〜180℃に加温され、且つ、0.36〜1.0MPaまで加圧される。加温方法は、直接吹き込み、間接加温のどちらを選択してもよいが、直接吹き込みは、蒸気の潜熱、顕熱をともに利用することができるので特に好ましい。この反応器14の内部において汚泥は水熱反応され、汚泥中の有機物が炭化反応される。
【0024】
反応器14で水熱反応された汚泥(水熱反応生成物)は、冷却装置16に送られ、100℃以下、常圧まで冷却される。冷却装置16の種類は特に限定するものではないが、スラリー熱交換によるものが好ましい。また、加圧状態の汚泥を大気または低圧中にフラッシュ開放することにより、その一部を自己蒸発させて冷却する構成のものを用いてもよい。この場合、フラッシュ蒸気を回収することができるとともに、汚泥の含水率を下げることができ、脱水機なしの構成とすることもできる。なお、冷却装置16は熱交換器18に接続されており、ここで得た回収熱は、熱交換器18を介して予熱装置12や後述の乾燥機22に供給される。
【0025】
冷却装置16で冷却された汚泥は脱水機20に送られ、固形分と分離液に分離される。脱水機20の種類は特に限定するものではないが、遠心脱水、加圧脱水等の機械脱水装置が好適に用いられる。この脱水機20によって、汚泥は固形分含水率60〜80%まで脱水される。
【0026】
脱水後の固形分は、乾燥機22に送られる。乾燥機22は、固形分から水分を除去する為に乾燥を行う装置であり、たとえば、蒸気を利用して間接熱乾燥を行う。乾燥機22で乾燥させることによって、固形の炭化燃料が得られる。なお、乾燥機22の構成は間接熱乾燥に限定するものではなく、直接熱風乾燥でもよいが、間接熱乾燥の方が煤塵の発生を抑制できるので好ましい。
【0027】
一方、脱水機20で分離された分離液は、pH調整槽24に送られる。分離液には、汚泥から溶解、メイラード反応より生成したメラノイジン、フミン様有機分などの溶解性有機物が存在しており、暗褐色を呈している。暗褐色の程度は、元の汚泥組成、水熱反応条件(温度、時間、圧力)に依存する。この分離液から溶解性有機物を回収するためには、溶解性有機物を凝集させる必要がある。そこで、pH調整槽24で分離液にpH調整剤を添加することによって、分離液のpHを酸性領域に調整し、溶解性有機物を凝集させている。
【0028】
図2に示すように、pH調整槽24は、攪拌装置30、pH調整剤注入装置32、pH測定装置34、pH制御装置36、分離液の送液ライン38、凝集物の引抜きライン40、上澄み液送液ライン42を備える。分離液は、送液ライン38から槽内に供給される。そして、pH調整剤注入装置32によって、硫酸、塩酸、硝酸等のpH調整剤が槽内に添加される。槽内のpHは、pH測定装置34によって測定され、この測定値に基づいてpH制御装置36がpH調整剤注入装置32を制御することによって、槽内のpHが所定のpH値(具体的には4以下、好ましくは2.5〜3.5)に調整される。このように槽内のpHを調整することによって、酸性凝集が行われ、その凝集物は、引抜きライン40から引き抜かれる。引抜きライン40は、槽の底部に接続されており、沈殿により固液分離した凝集物が引き抜かれる。なお、上澄み液送液ライン42の入口に耐酸性の膜を設け、この膜で固液分離するようにしてもよい。また、pH調整槽24の代わりに、配管内でpH調整剤を注入して混合するようにしてもよい。
【0029】
上記の如く構成されたpH調整槽24によって、分離液中の溶解性有機物が酸性凝集される。酸性凝集によって回収できる有機物量は、槽内のpH値の他、水熱反応条件や凝集温度にも依存し、たとえば水熱反応を160〜180℃で5〜30分行うと回収効率を向上させることができる。
【0030】
pH調整槽24の凝集液は脱水機26に送られる。その際、pH調整槽24での凝集速度が速いので、攪拌装置30(あるいはラインミキサー等)で攪拌して脱水機26に送ることが好ましい。脱水機26は、上記の脱水機20と同様のものを使用することができ、この脱水機26によって凝集液が脱水処理される。脱水処理により得られた固形分は前述の乾燥機22に送られ、脱水機20からの固形分に混合された後、水分が除去され、固形の炭化燃料が製造される。一方、脱水機26によって分離された分離液は、pHを元に戻した後、通常の水処理設備(不図示)に送られ、廃水処理される。その際、分離液には難分解性の溶解性有機物がないので、廃水処理の負荷を軽減することができる。
【0031】
次に上記の如く構成された炭化燃料製造装置10の作用について説明する。
【0032】
反応器14で水熱反応処理を施した汚泥は溶解性有機物を含んでおり、脱水機20で脱水処理を行うと、溶解性有機物を含む茶褐色の分離液が抽出される。この分離液は従来廃棄処理しており、その処理に手間とコストがかかるという問題があった。また、分離液に含まれる有機物を廃棄するので、炭化燃料の回収率が低いという問題があった。
【0033】
これに対して図1に示す第1の実施形態では、脱水機20からの分離液をpH調整槽24で酸性にして凝集処理を行い、溶解性有機物を凝集させている。そして、この凝集物を乾燥機22に送って炭化燃料を製造している。したがって、炭化燃料の回収率を向上させることができる。また、脱水機26によって凝集処理液から分離した分離液は、溶解性有機物が除去されているので、水処理設備での負荷を軽減することができる。
【0034】
また、分離液を酸凝集処理することによって得られる炭化燃料は、水熱反応物から直接得られる炭化燃料よりも、回収可能な発熱量が大きいという特性がある。したがって、実回収エネルギー量を増加させることができる。
【0035】
さらに、本実施の形態は、水熱反応の温度を160〜180℃としたので、炭化燃料製造時の投入エネルギーを減少させることができ、且つ、炭化燃料を高い回収率で得ることができる。すなわち、投入エネルギーを減少させるには、乾燥機22に投入する固形分の含水率を下げることが必要であり、この固形分の含水率は、水熱反応での温度条件に依存され、温度条件を高くすることによって、固形分の含水率が低下し、投入エネルギーを低下させることができる。しかし、水熱反応を高温条件にするほど、有機物の回収率が低下するという問題が生じる。このため、水熱反応の温度条件は、投入エネルギーの削減と炭化燃料の回収率の面で、140〜200℃、好ましくは160〜180℃が好ましい。本実施の形態では、水熱反応を160〜180℃で行うようにしたので、炭化燃料製造時の投入エネルギーを減少させることができ、且つ、炭化燃料を高い回収率で製造することができる。
【0036】
同様に、本実施の形態では、水熱反応の反応時間を5〜30分にしたので、炭化燃料製造時の投入エネルギーを減少させることができ、且つ、炭化燃料を高い回収率で製造することができる。すなわち、水熱反応の反応時間は、長いほど脱水性能が向上し、乾燥に必要な熱量を低減できるが、反応時間が長いほど固形分回収率が低下する。このため、反応時間は、0〜60分程度が好ましく、特に5〜30分程度がより好ましい。
【0037】
なお、上述した第1の実施形態では、脱水機20で得られた固形分と、脱水機26で得られた固形分とを混合して乾燥機22に供給し、乾燥するようにしたが、これに限定するものではなく、脱水機26で得られた固形分を専用の脱水機で脱水し、炭化燃料を製造するようにしてもよい。
【0038】
また、上述した第1の実施形態は、酸凝集した凝集物を専用の脱水機26で脱水するようにしたが、これに限定するものではなく、図3に示すように水熱反応生成物用の脱水機20に供給して脱水するようにしてもよい。図3に示す第2の実施形態は、pH調整槽24で酸凝集させた凝集物を、水熱反応生成物に混合して脱水機20に戻している。したがって、凝集物は水熱反応物とともに脱水機20で脱水処理され、その固形分が乾燥機22に送られて乾燥処理される。これにより、凝集物を含む炭化燃料が製造される。なお、第2の実施形態では、pH調整槽24で酸凝集させた凝集物を引き抜く一方で、その上澄み液が引き抜かれ、中和処理されて水処理される。
【0039】
上述した第1、第2の実施形態は、脱水機20で分離した分離液を酸凝集処理するようにしたが、図4に示すように、水熱反応処理物を酸凝集処理するようにしてもよい。図4に示す第3の実施形態は、pH調整槽24が冷却装置16と脱水機20との間に直列に接続されている。したがって、水熱反応生成物がpH調整槽24に送液され、水熱反応生成物中の溶解性有機物が酸凝集される。そして、その凝集物が脱水機20に送られて脱水処理され、乾燥機22によって乾燥され、凝集物を含む炭化燃料が製造される。なお、第3の実施形態では、pH調整槽24で酸凝集させた凝集物を引き抜く一方で、その上澄み液が引き抜かれ、中和処理されて水処理される。
【0040】
なお、上述した第1〜第3の実施形態では、脱水機20からの分離液又は冷却装置16からの水熱反応生成物を酸凝集により回収するようにしたが、凝集方法は酸凝集に限定するものではなく、無機凝集剤や高分子凝集剤などの凝集剤を添加するようにしてもよい。すなわち、図1、図3、図4に示したPH調整槽24の代わりに、凝集剤添加槽(不図示)を設け、この凝集剤添加槽で分離液又は水熱反応生成物に凝集剤(無機系又は高分子系)を添加するようにしてもよい。凝集剤の添加は薬注ポンプを用いることが好ましく、凝集剤が高粘度の場合はねじポンプを用いることが好ましい。また、凝集剤の添加量は、凝集剤の種類に応じて設定され、たとえばPAC(ポリ塩化アルミニウム)の場合は10〜300mg/Lが好ましく、50〜100mg/Lがより好ましい。また、高分子凝集剤の場合は0.1〜10mg/Lが好ましく、0.5〜5mg/Lがより好ましい。このように凝集させた場合にも、凝集液を固液分離することによって固形の炭化燃料を製造することができる。
【0041】
なお、PH調整槽24や凝集剤添加槽で凝集を行う代わりに、ラインミキサー等で凝集させるようにしてもよい。
【実施例】
【0042】
試験1:酸凝集処理時のPH依存性について調べた。この試験では、SS濃度8.3%(試料量50g、SS量4.15g)の試料を、PHを変えて凝集させ、沈殿させた後に脱水した。そして、分離液のSS濃度を測定することによって、凝集物の沈殿量を求め、固形分回収率を算出した。結果を図5、図6に示す。図5において「PH」は凝集処理時のPHであり、「SS濃度」は分離液での濃度である。また、「沈殿量」は、凝集処理によって沈殿したSSの沈殿量であり、「回収率」は固形分の回収量を示している。なお、PHは、備考の欄に記載された水酸化ナトリウム又は硫酸を添加することによって調整した。図6は、図5の「PH」と「回収率」の関係を示したものである。
【0043】
これらの図に示すように、凝集処理時のPHを4以下とすることによって固形分回収率を向上させることができ、特にPHを2〜3.5とすることによって大きな回収率を得ることができる。
【0044】
試験2:水熱反応処理の温度依存性について調べた。この試験では、150gの汚泥に対して、温度(「反応温度」)を変えて水熱反応処理を行った後、脱水処理を行った。脱水によって得られた分離液の量(「脱水量」)を測定するとともにそのSS濃度(「発生SS濃度」)を測定し、SS量(「SS量」)を求めた。そして、硫酸を添加することによって分離液のPHを3に調整して凝集沈殿処理を行った後、再び脱水処理を行い、分離液のSS濃度(「SS濃度」)を測定し、沈殿量(「沈殿量」)を求め、固形分回収率(「回収率」)を求めた。図7、図8にその結果を示す。
【0045】
これらの図に示すように、反応温度が160℃以上で、水熱反応物の脱水処理が可能となり、反応温度が180℃以上の時に十分な脱水量が得られた。また、反応温度が160℃以上では、反応温度が高くなるにつれて、発生SS濃度、回収率が低下するという結果が得られた。これは、高温高圧下での分解、ガス化に起因すると考えられる。以上の結果により、反応温度は180〜200℃が好ましいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態の炭化燃料製造装置の構成を示すブロック図
【図2】pH調整槽の構成を示す断面図
【図3】第2の実施形態の炭化燃料製造装置の構成を示すブロック図
【図4】第3の実施形態の炭化燃料製造装置の構成を示すブロック図
【図5】凝集処理時のPHを変えた際の試験結果を示す表図
【図6】図5のPHと回収率の関係を示す図
【図7】水熱反応温度を変えた際の試験結果を示す表図
【図8】図7の反応温度と発生SS濃度、回収率の関係を示す図
【符号の説明】
【0047】
10…炭化燃料製造装置、12…予熱装置、14…反応器、16…冷却装置、18…熱交換器、20…脱水機、22…乾燥機、24…pH調整槽、26…脱水機、30…攪拌装置、32…pH調整剤注入装置、34…pH測定装置、36…pH制御装置、38…分離液の送液ライン、40…引抜きライン、42…上澄み液送液ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚泥を水熱反応させ、該水熱反応生成物から水分を分離させることによって炭化燃料を製造する炭化燃料製造方法において、
前記分離させた水分から、溶解性有機物を分離して固形の炭化燃料を製造することを特徴とする炭化燃料製造方法。
【請求項2】
有機性汚泥を水熱反応させ、該水熱反応生成物から水分を分離させることによって炭化燃料を製造する炭化燃料製造方法において、
前記水熱反応物又は該水熱反応物から分離させた水分を、酸性下で又は凝集剤を添加することにより凝集処理し、該凝集処理した凝集処理物から水分を取り除いて炭化燃料を製造することを特徴とする炭化燃料製造方法。
【請求項3】
前記凝集処理物からの水分除去と、前記水熱反応生成物からの水分除去とを共通の脱水機及び/又は乾燥機で行うことを特徴とする請求項2に記載の炭化燃料製造方法。
【請求項4】
有機性汚泥を水熱反応させる反応器と、前記反応器で水熱反応された水熱反応生成物を脱水する脱水機と、前記脱水機で脱水された脱水処理物を乾燥させる乾燥機と、を備えた炭化燃料製造装置において、
前記脱水機で分離された分離液を、酸性下で又は凝集剤を添加することにより凝集処理する凝集処理部を備え、該凝集処理部で凝集処理した凝集物を前記乾燥機又は前記脱水機に供給することを特徴とする炭化燃料製造装置。
【請求項5】
有機性汚泥を水熱反応させる反応器と、前記反応器で水熱反応された水熱反応生成物を脱水する脱水機と、前記脱水機で脱水された脱水処理物を乾燥させる乾燥機と、を備えた炭化燃料製造装置において、
前記水熱反応物を酸性下で又は凝集剤を添加することにより凝集処理する凝集処理部を備え、該凝集処理部で凝集処理した処理液を前記脱水器に供給することを特徴とする炭化燃料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−214486(P2008−214486A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53394(P2007−53394)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】