説明

炭化装置

【課題】 燃焼熱の利用効率を高めることにより、熱損失を低減させ、効果的な炭化処理を行うことができる炭化装置を提供すること。
【解決手段】 炭化炉12に熱供給を行と共に炭化炉12で炭化処理に伴って生じる乾留ガスEを燃焼させる加熱燃焼炉13内に熱交換器14を設け、この熱交換器14により乾燥機11に対する熱媒体Bを加熱して供給するようにしたので、燃焼熱の利用効率が向上し、装置全体における熱損失が少なく、効果的な炭化処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、農業集落排水処理汚泥などを処理対象とし、その利用のための炭化を行う炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農業集落で生じる排水の処理汚泥は、重金属物質があまり含まれていないので、遠心脱水機で濃縮・脱水後、遠心薄膜乾燥機等により乾燥して、農地施肥や、コンポスト堆肥として農地還元等に利用されている。しかし、農地施肥やコンポスト堆肥は使用時期が偏っている為に、貯蔵中に汚泥の変質が生じたり、臭気が発生する等の問題が発生する。
【0003】
このため、近年は汚泥を炭化して土壌改良材として利用する試みがなされている。有機性廃棄物を炭化する方法は、これまでにも提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような炭化方法において、汚泥を炭化するには乾燥機により汚泥を乾燥する前処理が必要となる。上記特許文献1の方法では、脱臭炉から排出される高温排気熱を利用して、熱交換器により熱媒体を加熱し、この熱媒体を乾燥炉の加熱手段に使用し、有機性廃棄物の乾燥処理を行っている。
【0004】
しかし、上述の方法では、熱交換器を脱臭炉の外部に設置している。 このため熱損失が大きく、熱交換の効率が低く、熱利用が不十分である。
【特許文献1】特開平10−330760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、これまでの技術では、燃焼熱の利用効率が低く、熱損失も大きいため、炭化処理を効率的に行うことが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、燃焼熱の利用効率を高めることにより、熱損失を低減させ、効果的な炭化処理を行うことができる炭化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の炭化装置は、濃縮汚泥を導入し、熱媒体による加熱により乾燥汚泥を得る乾燥機と、この乾燥汚泥を導入し、この乾燥汚泥を低酸素状態で加熱して炭化を行う炭化炉と、補助燃料を導入し、この補助燃料を初期燃焼させ、この燃焼ガスを前記炭化炉に供給し、この炭化炉で生じる乾留ガスを導入して燃料として燃焼させる加熱燃焼炉と、この加熱燃焼炉内に設けられ、その燃焼熱により前記乾燥機に供給される前記熱媒体を加熱する熱交換器とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、乾燥機から生じる悪臭ガスを加熱燃焼炉内に導入し、加熱燃焼炉内の高温により、悪臭ガスを熱分解してもよい。
【0009】
また、本発明では、炭化炉を加熱した後の排ガスを、乾燥機への導入される脱水汚泥の予熱器に供給するように構成してもよい。
【0010】
さらに、本発明では、乾燥機は熱媒体を加熱する予備ボイラーを有し、炭化炉及び加熱燃焼炉に対して単独運転可能としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炭化炉に熱供給を行と共に炭化炉で炭化処理に伴って生じる乾留ガスを燃焼させる加熱燃焼炉内に熱交換器を設け、この熱交換器により乾燥機に供給される熱媒体を加熱するようにしたので、燃焼熱の利用効率が向上し、装置全体における熱損失が少なく、効果的な炭化処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による炭化装置の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1はこの実施の形態における炭化装置の全体構成を示している。11は汚泥の乾燥機で、例えば、遠心薄膜式乾燥機を用いる。この乾燥機11は、前段に設けられた図示しないデカンター方式の遠心脱水機で脱水処理した含水率85%程度の濃縮汚泥Hを導入し、これを円筒状の加熱筒の内壁に薄膜状に引き伸ばして乾燥させるもので、その処理能力は、含水率50%程度の乾燥汚泥Gを30〜40 kg/h製造する。
【0014】
12は炭化炉で、乾燥汚泥Gを導入し、この乾燥汚泥Gを低酸素状態で加熱して炭化を行う。この炭化炉12としては、例えば、連続式の間接加熱ロ−タリキルン方式のものを用いる。この方式の炭化炉は、外周部分に加熱ジャケットが設けられたロータリキルンを有し、このロータリキルン内に供給された乾燥汚泥Gを加熱ジャケットからの熱により低酸素状態で加熱し、炭化させる。この炭化炉12の処理能力は、含水率50%程度の乾燥汚泥Gを20〜50 kg/hで炭化を行う。
【0015】
13は加熱燃焼炉で、補助燃料のプロパンガスFや、汚泥炭化時に炭化炉12で発生する乾留ガスEを燃焼させて高温に保ち、その高温の燃焼ガスDを炭化炉12の加熱ジャケット内に供給し、この加熱ジャケットを介してロータリキルン内の乾燥汚泥を間接的に加熱し、炭化させる。すなわち、この加熱燃焼炉13は、補助燃料のプロパンガスFを導入して初期燃焼させ、高温の燃焼ガスDを前記炭化炉12に供給して加熱する。また、この炭化炉12での炭化処理に伴って生じる乾留ガス(主に炭化水素)Eを導入し、燃料として燃焼させ、高温状態を維持している。
【0016】
この加熱燃焼炉13には、乾燥機11から発生する悪臭ガスCが導入される。また、炭化炉12での炭化は低酸素状態で行われるため微量のダイオキシンが発生するが、このダイオキシンは乾留ガスEと共に加熱燃焼炉13内に導入される。加熱燃焼炉13は、これら悪臭ガスやダイオキシンを高温の燃焼熱により熱分解し、無害化する。
【0017】
14は熱交換器で、加熱燃焼炉13内に設けられ、その燃焼熱により、前記乾燥機11に供給される熱媒体Bを加熱する。ここで、熱媒体Bとしては、例えば、水蒸気を用いる。このために、熱交換器14には、水道水を軟水器で硬度を低下させた軟水Aがポンプで供給されており、この軟水Aを加熱燃焼炉13の燃焼熱により加熱して、熱媒体Bとしての水蒸気を発生させる。この水蒸気Bは、遠心薄膜乾燥機11の外周部に設けられた加熱ジャケットに供給され、内筒部の内周面に引き伸ばされる濃縮汚泥を加熱し乾燥させる。
【0018】
15は予熱器で、炭化炉12を加熱した排ガスを熱源として導入し、遠心薄膜乾燥機11に供給される濃縮汚泥Hを予熱する。
【0019】
次に、農業集落排水処理濃縮汚泥を例として、その乾燥処理と炭化を行う場合を説明する。この場合、先ず、加熱燃焼炉13に補助燃料のプロパンガスFを自動供給する。このプロパンガスFは図示しないバ−ナ−により点火・燃焼され、加熱燃焼炉13の温度を設定温度850℃に上昇させる。このときの燃焼ガスDを炭化炉12に供給して、炭化炉12内を昇温する。ここで、プロパンガスの供給量は4m/hであった。
【0020】
燃焼ガスDは、上述のように炭化炉12に供給され、炭化炉12の温度を設定温度800℃に上昇させる。この場合、炭化炉12の温度が800℃に達するまで2時間要した。
【0021】
一方、加熱燃焼炉13内の熱交換器14に軟水Aを15リットル/時間で供給し、加熱燃焼炉13内の燃焼熱により、175℃の水蒸気Bを熱媒体として発生させ、遠心薄膜乾燥機11に供給する。遠心薄膜乾燥機11には、前段において図示しないデカンター方式の遠心脱水機で脱水処理した濃縮汚泥H(含水率85%程度)が、予熱器15を経て90リットル/時間で供給されている。遠心薄膜乾燥機11は、この濃縮汚泥を熱媒体(水蒸気)Bにより加熱・乾燥し、乾燥汚泥G(含水率50%)を30kg/hで製造する。
【0022】
この乾燥処理時に発生するアンモニア性の悪臭ガスCは、加熱燃焼炉13に通気し、850℃の高温により加熱分解して、脱臭した。
【0023】
この乾燥汚泥Gの製造を継続しながら、製造した乾燥汚泥Gを、設定温度800℃に温度上昇した炭化炉12に供給し、炭化を開始した。
【0024】
炭化条件は以下の通り。
【0025】
・乾燥汚泥供給量 : 30(kg/h)
・炭化温度 : 800(℃)
・炭化時間 : 20(分)
・ロ−タリキルン回転数 : 5 (rpm)
炭化炉12に乾燥汚泥Gを供給開始してから10分経過後に、乾燥汚泥より乾留ガスEが発生した。この乾留ガスEは炭化水素を主成分としており、燃焼加熱炉12に供給され、燃料として燃焼させる。なお、炭化炉12内で発生したダイオキシンは、乾留ガスと共に加熱燃焼炉13内に導入され、加熱燃焼炉13内の高温(850℃)で熱分解する。
【0026】
このようにして炭化炉12内に乾燥汚泥を5時間継続して供給し、乾燥汚泥150kgの炭化処理を行い、炭化物60kgを製造した。
【0027】
上記炭化処理を行っている期間(5時間)に、遠心薄膜乾燥機11には450リットルの濃縮汚泥が供給され、乾燥汚泥150kgを継続して製造する。製造された乾燥汚泥Gは、同様に炭化炉12に供給され、炭化処理される。
【0028】
このように、加熱燃焼炉13を補助燃料Fで初期燃焼させ、その燃焼ガスDを炭化炉12に供給して加熱し、汚泥の炭化を行わせ、炭化処理に伴って発生する乾留ガスを加熱燃焼炉13に導入して燃料として燃焼させる。また、熱交換器14を加熱燃焼炉13内に設け、その燃焼熱により直接的に加熱することにより効率よく加熱することができる。これらのことから、装置全体における燃焼熱の利用効率を高めることができ、熱損失を低減させ、効果的な炭化処理を行うことができる
なお、本発明は上記構成に限定されるものではなく、種々変形して実施してもよい。例えば、乾燥機11に図示しないが熱媒体Bを加熱する予備ボイラーを設け、炭化炉12及び加熱燃焼炉13に対して単独運転可能に構成してもよい。この場合、予備ボイラーとしては、灯油ボイラーを用い、熱媒体としての水蒸気を加熱する。すなわち、灯油ボイラーを燃焼運転して170℃の水蒸気を発生させ、遠心薄膜乾燥機11に供給する。遠心薄膜乾燥機11には、濃縮汚泥H(含水率85%)を90リットル/時間で供給し、乾燥汚泥G(含水率50%)を30kg/hで製造した。
【0029】
このようにして濃縮汚泥450リットルを遠心薄膜乾燥機11に連続5時間供給し、乾燥汚泥150kgを製造した。この乾燥処理に使用した灯油量は60リットルであった。製造した汚泥150kgは、前述と同様に炭化炉12に供給し、同条件で炭化処理しることで炭化物60kgを製造した。
このように、乾燥機11に予備ボイラーを設けて単独運転可能にすると、炭化炉12が点検などのために運転しない場合(この場合は加熱燃焼炉13も運転されない)でも、乾燥機11を独自に運転し、乾燥汚泥Gを製造しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による炭化装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0031】
11 乾燥機
12 炭化炉
13 加熱燃焼装置
14 熱交換器
15 予熱器
A 軟水
B 熱媒体(水蒸気)
C 悪臭ガス
D 燃焼ガス
E 乾留ガス
F 補助燃料
G 乾燥汚泥
H 濃縮汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮汚泥を導入し、熱媒体による加熱により乾燥汚泥を得る乾燥機と、
この乾燥汚泥を導入し、この乾燥汚泥を低酸素状態で加熱して炭化を行う炭化炉と、
補助燃料を導入し、この補助燃料を初期燃焼させ、この燃焼ガスを前記炭化炉に供給し、この炭化炉で生じる乾留ガスを導入して燃料として燃焼させる加熱燃焼炉と、
この加熱燃焼炉内に設けられ、その燃焼熱により前記乾燥機に供給される前記熱媒体を加熱する熱交換器と、
を備えたことを特徴とする炭化装置。
【請求項2】
乾燥機から生じる悪臭ガスを加熱燃焼炉内に導入し、この悪臭ガスを熱分解することを特徴とする請求項1に記載の炭化装置。
【請求項3】
炭化炉を加熱した後の排ガスを、乾燥機へ導入される濃縮汚泥の予熱器に供給することを特徴とする請求項1に記載の炭化装置。
【請求項4】
乾燥機は熱媒体を加熱する予備ボイラーを有し、炭化炉及び加熱燃焼炉に対して単独運転可能であることを特徴とする請求項1に記載の炭化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−71131(P2006−71131A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252156(P2004−252156)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】