説明

炭含有シート

【課題】炭粉末の有害物質吸着作用をできるだけ損なわず、また、単体で用いても炭粉末の脱落を充分に防止しうる炭含有シートを提供する。
【解決手段】坪量10〜100g/m2の不織布からなる基材11と、その基材の上に坪量10〜100g/m2となるように散布し、その基材の不織布の繊維に絡ませた、平均径が0.1〜1mmで、平均長さが0.1〜10mmの竹炭粉末12と、その竹炭粉末を覆うように、前記基材に重ねて接合した、坪量10〜100g/m2の不織布からなる覆い層13とからなり、接着剤を使用していない炭含有シート10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭含有シートに関する。さらに詳しくは、壁紙、畳構成部材、寝具、空調フィルタなどに用いる炭含有シートに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】登録実用新案第3072490号公報
【特許文献2】特開2000−265612号公報
【特許文献3】特開2002−242065号公報
【特許文献4】特開2000−265612号公報
【0003】
特許文献1には、籐、竹、麻、ココヤシ、木質ファイバーなどの天然の植物繊維を平織りした表面材と、熱可塑性樹脂製のシートないしプレートあるいは織布、不織布、編み物などに、基材の厚さと同程度の大きさの木炭あるいは活性炭の粒子(多孔質炭化物粒子)を混入した基材とを積層固定した床用敷物が開示されている。また、基材として織布、不織布、編み物を用いる場合は、多孔質炭化物粒子を内部に絡めて固定させること、さらに不織布を3層にして、そのうちの上層あるいは中間層に多孔質炭化物粒子を混入させることが提案されている。
【0004】
特許文献2には、粒度が50メッシュを通過すると共に単位平方メートル当たり80g以上の備長炭微粉末を含有し導電性を有する備長炭粉末層の両側に、目付10〜100g/m2のポリエステル繊維からなる不織布を接着剤で一体的に接着したサンドイッチ構造の備長炭シートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、目付が10〜100g/m2のベース不織布に短繊維を機械的に絡合させ、粒状ないし粉体の活性炭を50〜80g/m2保持させた、単層タイプの不織布製シートが開示されている。
【0006】
特許文献4には、不織布製造時に竹炭などの炭化物を混紡した複合材料を建築基材に接着した建材が開示されている。
【0007】
しかし特許文献1の木炭ないし活性炭を絡めて固定した不織布は、木炭や活性炭の保持が不充分である。そのため、不織布自体を壁紙や畳構成材として用いる場合は木炭や活性炭の粉末が不織布から脱落してくる問題がある。また、織布を基材として、その上に天然繊維を平織りした表面材を重ねて接着し、全体として床用敷物として用いる場合は、接着剤で固定するので脱落の問題はないが、木炭や活性炭の多孔質構造が接着剤で塞がれるので、多孔質による吸着作用が妨げられ、有害物質除去機能が低下する。
【0008】
特許文献2のサンドイッチ構造の備長炭シートは、備長炭粉末層の両側に目付10〜100g/m2のポリエステル繊維からなる不織布を接着剤で一体的に接着しているので、備長炭粉末の脱落の恐れは少ないが、やはり接着剤により、有害物質除去機能が低下する。
【0009】
他方、特許文献3の単層タイプの不織布製シートは、接着剤を使用しないので、シートをそのまま使用する場合は活性炭の吸着効果は損なわれない。しかし実際には短繊維ウエブに熱融着繊維を用い、ホットメルト樹脂などによりプレコートされた不織布で被覆し、熱処理することにより、粒状粉体が脱落しないようにする必要がある(特許文献3の段落[0017]、[0022]参照)。そのため、活性炭の吸着作用が低下する。
【0010】
特許文献4の建材に用いる不織布は、不織布の製造時に竹炭などの炭化物を混紡しているので、それ自体は接着剤を用いていない。しかし得られた不織布は有害なガスを発生しない接着剤で建築基材に接着して用いるので、このものも 竹炭などの炭化物の吸着作用を損なう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は炭粉末の有害物質吸着作用をできるだけ損なわず、しかも接着剤を用いなくても、また、単体で用いても、すなわち他のシートなどに接合しなくても、炭粉末の脱落を充分に防止しうる炭含有シートを提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の炭含有シートは、坪量10〜100g/m2の不織布からなる基材と、その基材の上に坪量10〜100g/m2となるように散布し、その基材の不織布の繊維に絡ませた、平均径が0.1〜1mmで、平均長さが0.1〜10mmの竹炭粉末と、その竹炭粉末を覆うように、前記基材に重ねて接合した、坪量10〜100g/m2の不織布からなる覆い層とからなり、接着剤を使用していないことを特徴としている。
【0013】
このような炭含有シートにおいては、前記基材および覆い層を構成する不織布をそれぞれ熱可塑性樹脂繊維から形成される不織布とし、前記基材と覆い層とを熱接合したものが好ましい。さらに前記基材および不織布を構成する不織布がそれぞれ熱可塑性樹脂繊維から形成される不織布であり、前記基材と覆い層の周辺部が加圧加熱により扁平に圧着されているものが好ましい。その場合、圧着されている周辺部の幅が1〜15mmであるものが好ましい。また、前記基材と覆い層とが、抄造により接合されているものであってもよい。なお、ここでいう「抄造」とは、繊維を絡合させて不織布を製造するときに、繊維の間に竹炭粉末を混入して一緒に絡合させることを意味し、湿式、乾式など、製造方法を問わない。また、湿式、乾式の抄造のほか、不織布の素材となる短繊維ないし繊維粉末を下地の上に散布して基材を形成し、その上に散布した竹炭粉末の上に、短繊維ないし繊維粉末を散布し、カレンダー加工して覆い層を形成する場合を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炭含有シートにおいては、基材が坪量10〜100g/m2の不織布からなるので、引っ張り強度が高く、シート単体での取り扱いが容易である。そして覆い層として、坪量10〜100g/m2の不織布を採用しているので、覆い層の通気性が高く、外部の空気が容易に竹炭粉末に接触することができる。また基材と覆い層の間に竹炭粉末を挟んで接合しているため、竹炭粉末が脱落しにくい。さらに竹炭は細かく粉砕しても、竹の繊維形状が残っており、細長い短繊維状となっている。そのため竹炭粉末は繊維の目にひっかかりやすく、基材および覆い層の不織布と絡合する力が大きい。そして竹炭粉末が脱落しにくいため、接着剤を用いなくても、充分に竹炭粉末を基材と覆い層の間に保持することができる。また接着剤を用いないので、竹炭粉末の微細な孔が埋まらず、有害なガスの吸着効果が損なわれない利点がある。
【0015】
前記基材および覆い層を構成する不織布がそれぞれ熱可塑性樹脂繊維から形成される不織布であり、その基材と覆い層とが熱接合されている炭含有シートの場合は、基材の繊維と覆い層の繊維が絡合および熱溶着して竹炭粉末を閉じこめるので、竹炭粉末が一層脱落しにくい。
【0016】
前記基材および不織布を構成する不織布がそれぞれ熱可塑性樹脂繊維から形成される不織布であり、前記基材と覆い層の周辺部が加圧加熱により扁平に圧着されている場合は、基材と覆い層の隙間から竹炭粉末が脱落しにくい。しかも中央部では扁平に圧着されていないので、通気性が高く、竹炭粉末のガス吸着作用が効率的に発揮される。
【0017】
前記圧着されている周辺部の幅が1〜15mmである場合は、加圧加熱の処理が容易であり、圧着されていない中央部を充分に広くとることができる。また、シートを切断するときに、同時に圧着することも容易である。
【0018】
前記基材と覆い層とが、抄造により接合されている場合は、竹炭粉末を基材と覆い層の繊維内に充分に絡ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに図面を参照しながら本発明の炭含有シートの実施の形態を説明する。図1は本発明の炭含有シートの一実施形態を示す一部切り欠き斜視図、図2はその炭含有シートの断面図、図3は本発明に用いる竹炭粉末の製造法の一例を示す工程図、図4は図1の炭含有シートの製造法を示す工程図、図5は本発明の炭含有シートの他の実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【0020】
図1および図2に示す炭含有シート10は、基材11と、その上に散布された竹炭粉末12と、その上を覆っている覆い層13とから構成されている。この炭含有シート10は、全体としては、カレンダー加工などにより、覆い層13が竹炭粉末12を挟んで基材11上に熱接合されている。そして周辺部14では、加圧加熱により扁平に圧着されている。圧着する周辺部14は一辺あるいは2〜3辺でもよいが、炭含有シート10の全周に設けるほうがよい。この炭含有シート10は実質的に接着剤が使用されていない。
【0021】
前記基材11としては、坪量10〜100g/m2、より好ましくは20〜50g/m2の不織布が用いられる。不織布を構成する繊維は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂の繊維で、長さ当たり重量が1〜6デシテックス程度の繊維が用いられる。
【0022】
前記基材11は上記の熱可塑性樹脂から前述の絡合ないし抄造など、通常の製造方法で製造され、さらに加圧し、あるいは加熱加圧して形成する。とくに、熱可塑性樹脂の短繊維ないし繊維粉末をベルトコンベア上に吹き出して重ねながら絡合させ、2〜4個の熱ロールを用いたカレンダー加工で厚さ0.5〜2mm程度に成形したものが好ましい。ただし熱可塑性樹脂をノズルから噴出させながら板状部材の表面に重ねて絡合させた乾式不織布や、水などの媒体内で絡合させ、乾燥させた湿式不織布でもよい。それにより比較的強度が高い強靱な不織布が得られる。そして坪量10〜100g/m2程度であるので、充分に柔軟である。
【0023】
前記竹炭粉末12としては、竹炭を製造して粉砕機ないし微粉砕機で粉砕し、さらにふるいにかけて、平均径0.1〜1mm程度、平均長さ0.1〜10mm程度に揃えたものを用いる。すなわち平均径が1mmより大きい場合、あるいは平均長さが10mmを超える場合は、竹炭粉末12が基材11や覆い層12に付着しにくい。そのため、全体の付着量が少なくなりがちである。逆に平均径や平均長さが0.1mmより小さい場合は、基材11などの表面に充分に付着するが、薄く付着することになり、竹炭粉末12の付着量が全体として少なくなりがちである。
【0024】
なお、竹炭粉末の粒子を細かく見ると、竹の繊維の細長い形状が残っているものがある。このような細長い粉末は、さらに細かく粉砕してもよいが、むしろ細長いほうが不織布の繊維の目に絡まりやすく、不織布を通過して脱落するのを防ぐことができる。そのため、これらの細長い竹炭粒子を排除したり細かく粉砕したりせず、そのまま利用するのが好ましい。上記のように、平均径が0.1〜1mm、平均長さが0.1〜10mmと、径と長さの範囲を代えているのは上記の理由による。なお、竹炭粒子の平均長さを平均径の2〜10倍程度、あるいは3〜10倍程度の細長い粒子のみを選別するようにしてもよい。
【0025】
上記の竹炭粉末を選別するには、目の粗いふるいを通過し、目の細かなふるいを通過しないものを選別するなどによる。その場合、たとえば径1mm以上の竹短繊維を通すスリット状のふるいと、粒子径が0.1mmより小さい竹炭粒子を通過させるふるいとを組み合わせるなどの方法が用いられる。細長いものだけを選別する場合は、たとえば長さ0.2mm未満、あるいは0.3mm未満の竹炭粉末を通過させるふるいを用いる。ただしふるいで選別しても、厳密には所定の範囲のものだけにするのは困難であるが、ある程度は選別することにより、不織布の繊維に絡合させやすくなる。
【0026】
竹炭の材料の生竹としては、孟宗竹、真竹、淡竹など、微小な孔を多数有するものが好ましく、生育年数が3〜5年の竹がとくに好ましい。このような生竹15は乾燥させ、図3に示すように、炭焼き用の焼成炉16中で、500〜750℃あるいはそれ以上で蒸し焼きにして竹炭とする(第1ステップS1)。そのとき、焼成炉16は空気取り入れ口に調整弁17を備えたものが用いられる。そして焼成炉16の下部に入れた廃竹18をガスバーナー19で着火させ、敷石20などからなる緩衝材を温め、その緩衝材の上に積み込んだ釜内の生竹15を蒸し焼きにして炭化させていく。
【0027】
なお、焼成炉16で焼くと、0〜100℃程度の範囲では、温度が緩やかに上昇する。ついで100〜350℃程度では、0〜100℃の範囲よりも温度上昇が急になる。そして350〜500℃で、再び温度上昇が穏やかに急になる。そして500〜750℃の範囲あるいはそれ以上では、350〜500℃の範囲よりも温度上昇が急になる。このように温度が段階的に変化するのは、つぎのような工程があるためと考えられる。すなわち、始めの0〜100℃の段階では、焼成炉16内の竹が敷石19の余熱で着火するまでの温度と考えられる。つぎの100〜350℃は、焼成炉16内の竹から水分が蒸発し、竹酢液が抽出される温度と考えられる。つぎの350〜500℃の段階では、焼成炉内の糧の有機物が分解される温度と考えられる。500〜750℃あるいはそれ以上は、竹の有機物が完全になくなり、炭化による竹炭の効能を引き出す温度と考えられる。したがって炭焼きの最終温度は少なくとも750℃以上とするのが好ましい。
【0028】
炭化処理が完了すると、得られた竹炭にブラシをかけて洗浄するなどにより灰などの炭化処理工程でできる不純物を取り除く(第2ステップS2)。そして前述のように微粉砕機などで粉砕し(第3ステップS3)、ついで所定の平均粒径、あるいは所定の平均径および平均長さのものを選別する(第4ステップS4)。
【0029】
炭焼きのための時間は使用する生竹15の重量により異なるが、通常は10〜25時間程度、より好ましくは20時間程度である。焼成炉16の内部では生竹15の炭化の過程で一酸化炭素が発生し、その一酸化炭素がさらに燃焼して二酸化炭素に変化するので、充分に空気を供給する必要がある。ただし最終工程では調整弁17を調節して酸素濃度を低い状態に維持し、竹炭が灰になることを防ぐ。
【0030】
上記のように高温で焼くことにより、タールや竹酢液などが分離され、炭素純度が高い竹炭が得られる。この場合の竹炭の表面の電気抵抗は50Ω/cm以下、とくに10Ω/cm以下のものが好ましい。電気抵抗がそれより高い場合は、純度が低く、タールなどの不純物が多いので、竹炭粉末12の微細な孔が詰まり、吸着作用が低くなる。竹炭の電気抵抗は、テスターの2本の電極棒19を数センチメートルの間隔で竹炭の表面に当てて測定する。ちなみに生竹15のままでは通電しない。
【0031】
前記覆い層13としては、基材11と同様の不織布が用いられる。坪量も同程度か、いくらか軽い不織布、たとえば坪量10〜100g/m2、より好ましくは10〜50g/m2の不織布が用いられる。また、強く加圧せずにふんわりと起毛した状態で用いるのが好ましい。覆い層13の不織布の製造法も、基材の製造法と同様の方法、たとえば熱可塑性樹脂の短繊維ないし繊維粉末をベルトコンベア上に吹き出して重ねながら絡合させ、2〜4個の熱ロールを用いたカレンダー加工で厚さ0.5〜2mm程度に成形する方法などが採用される。ただし通常の乾式不織布や、湿式不織布でもよい。不織布を構成する繊維は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂の繊維で、1〜6デシテックスの繊維が用いられる。
【0032】
図1に示す炭含有シート10は、前述のように周辺部14では、覆い層13が竹炭粉末12を挟んで基材11上に圧着されているが、その周辺部14の幅は1〜15mm、とくに5〜10mmが好ましい。1mm未満であれば熱圧着の処理が難しくなり、15mmを超えると熱圧着されていない中央部21を充分に広くとることができなくなる。また、上記の範囲であれば、シートを切断するときに、同時に熱接合することも容易である。たとえば、中央に円板状の切刃を備え、その切刃の両側に熱ローラを備えた切断ローラによって、熱圧着と切断を同時に行うと効率的である。ただしカッターなどで切断した後、アイロンなどで熱圧着するようにしてもよい。炭含有シート10の厚さはたとえば0.5〜2mm程度のものが好ましい。その場合、周辺部14は厚さ0.2〜2mm程度、とくに0.3〜0.5mm程度に加熱加圧するのが好ましい。
【0033】
周辺部14を加熱加圧することにより、覆い層13が扁平に圧着され、竹炭粉末12を挟んで基材11に対して密に接合される。それにより周縁からほとんど竹炭粉末が脱落しない。この場合も接着剤を用いない。中央部21は、覆い層13が加圧されていないので、前述のふんわりした触感が維持されており、黒色の竹炭粉末12の色もそれほど目立たない。
【0034】
前述の基材11、竹炭粉末12および覆い層13は、たとえば図4に示す工程で炭含有シート10に加工される。まず、第1ノズル22から熱可塑性樹脂繊維の粉末ないし短繊維23をベルトコンベア24の上に吹き付け、ヒータ25で加熱して所定の厚さの繊維層26を形成する(第11工程S11)。そのとき、熱ローラ27で加圧して不織布(基材)にしてもよい。ついでベルトコンベア23で繊維層25ないし不織布を長手方向に移動させながら、第2ノズル28から竹炭粉末12を所定量、散布ないし吹き付けていく(第12工程S12)。 ベルトコンベア24は金属製のもの、とくにヒータ25の熱が通り易いように、目の細かい金網状のものが好ましい。
【0035】
ついでその上に第3ノズル29から覆い層13を形成するための熱可塑性樹脂繊維の粉末ないし短繊維を吹き付けて、第2の繊維層30を形成する(第13工程S13)。さらにそれらを熱ローラ31で加圧し、所定の厚さに形成するカレンダー加工を施す(第14工程S14)。それにより基材11の繊維と覆い層13の繊維が絡合し、交点で融着するので、竹炭粉末12を脱落しにくいように閉じ込める。それにより風合を損なわない炭含有シート10が得られる。得られた炭含有シート10は、所定幅(たとえば300〜1000mm、とくに915mm程度)のロール状あるいは所定の長さに切断した長尺シートとして販売される。
【0036】
なお、カレンダー加工の後、さらに両側縁を加熱ローラで強く加圧して、幅1〜15mm程度の圧着した周辺部(図1の符号14)を形成してもよい。それにより両側縁が熱接合された長尺の炭含有シート10が得られる。また、長尺シートの場合は、切断した端縁を圧着するのが好ましい。ロールないし長尺シートで販売した場合は、使用者、たとえば建築施工業者が用途に合わせて所望の寸法に切断しながら加熱加圧して使用する。
【0037】
上記のように不織布を形成するときに同時に竹炭粉末を絡合させると効率的に炭含有シート10を得ることができる。しかしあらかじめ基材11を所定の幅のロールないし長尺シートで製造しておき、その基材11に前述の竹炭粉末を散布し(図3のS12)、その上に熱可塑性樹脂繊維の粉末ないし短繊維を吹き付けて、覆い層13となる不織布の第2の繊維層30を形成(図3のS13)し、それらを熱ローラで加圧し(図3のS14)、所定の厚さに形成するカレンダー加工を施すようにしてもよい。さらに基材11と覆い層13をあらかじめ形成しておき、基材11の上に竹炭粉末を散布し、覆い層13を重ねてカレンダー加工を施すことによっても炭含有シート10を形成することができる。
【0038】
上記の炭含有シート10は、接着剤を用いていないため、竹炭粉末による有害ガス吸着効果が高く、接着剤やバインダーを用いる場合のような揮発成分の発生がほとんどない。また、接着剤を用いていないため、一定期間使用した後、水で付着物を洗い流すことにより、繰り返し使用することができる。
【0039】
このような炭含有シート10は、建築物の壁材や天井材、床材に貼り付けたり、覆うように保持させて使用する。貼り付ける場合は、デンプン糊など、天然材料を利用するのが好ましい。また、畳構成部材(畳表の下層)として使用することもできる。交換が容易なように、スナップ、ファスナなどで着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0040】
さらに炭含有シート10は、寝具などの家具、キッチン製品の内装材あるいは膝掛けなどの中に入れる暖温補助材などに用いたり、空気調和機(エアコンディショナ)や空気清浄機、天井や壁の吹き出し口、浄水器のフィルタなどに使用することができる。それにより壁紙や合板などに用いられている接着剤から放出されるホルムアルデヒド、その他のシックハウスの原因となる化学物質を吸着させることができる。空気調和機などのフィルタに用いる場合は、金網、あるいは合成樹脂やステンレスの網の間に挟み込むと取り扱いが容易である。
【0041】
図5に示す炭含有シート31は、周辺部を圧着していないほかは、図1の炭含有シート10と実質的に同一である。すなわち前記基材11と覆い層13とが、図4と同様の抄造により接合されており、基材11、竹炭粉末12および覆い層13の材質や密度、大きさなどは図1の炭含有シート10の場合と同様である。このものは周縁からは竹炭粉末が脱落しやすいが、竹炭粉末12を基材11と覆い層13の繊維内に充分に絡ませることにより、竹炭粉末が不織布を透過してシート表面から脱落することを防止しうる。このものは周辺部が圧着されていないため、全体として風合いのある炭含有シート31となる。
【0042】
前記いずれの炭含有シートの場合でも、蒸留した竹酢液などを散布することにより、抗菌ないし殺菌効果を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の炭含有シートの一実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1の炭含有シートの断面図である。
【図3】本発明に用いる竹炭粉末の製造法の一例を示す工程図である。
【図4】図1の炭含有シートの製造法を示す工程図である。
【図5】本発明の炭含有シートの他の実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10 炭含有シート
11 基材
12 竹炭粉末
13 覆い層
14 周辺部
15 生竹
16 焼成炉
17 調整弁
18 廃竹
19 ガスバーナー
20 敷石
21 中央部
22 第1ノズル
23 短繊維
24 ベルトコンベア
25 ヒータ
26 繊維層
27 熱ローラ
28 第2ノズル
29 第3ノズル
30 第2の繊維層
31 熱ローラ
32 炭含有シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量10〜100g/m2の不織布からなる基材と、
その基材の上に坪量10〜100g/m2となるように散布し、その基材の不織布の繊維に絡ませた、平均径が0.1〜1mm、平均長さが0.1〜10mmの竹炭粉末と、
その竹炭粉末を覆うように、前記基材に重ねて接合した、坪量10〜100g/m2の不織布からなる覆い層とからなり、
接着剤を使用していない、
炭粉末含有シート。
【請求項2】
前記基材および覆い層を構成する不織布がそれぞれ熱可塑性樹脂繊維から形成される不織布であり、
前記基材と覆い層とが熱接合されている請求項1記載の炭含有シート。
【請求項3】
前記基材および不織布を構成する不織布がそれぞれ熱可塑性樹脂繊維から形成される不織布であり、
前記基材と覆い層の周辺部が、加圧加熱により扁平に圧着されている請求項1または2記載の炭含有シート。
【請求項4】
前記圧着されている周辺部の幅が1〜15mmである請求項3記載の炭含有シート。
【請求項5】
前記基材と覆い層とが、抄造により接合されている請求項1記載の炭含有シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−168327(P2007−168327A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370583(P2005−370583)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(597107593)株式会社タナック (8)
【Fターム(参考)】