炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びそれを用いた発熱操向ハンドル
本発明は、a)、炭素ナノチューブが分散された炭素ナノチューブ分散溶液を製造する工程;b)、a)の炭素ナノチューブ分散溶液を酸処理する工程;c)、b)の炭素ナノチューブ分散溶液を中和処理する工程;及びd)、c)の炭素ナノチューブ分散溶液と金属粒子を含む金属溶液を混合して、炭素ナノチューブ表面に金属粒子を結合させる工程を含む方法によって製造される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びそれにより形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層を含む発熱操向ハンドルを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びそれにより形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層を含む発熱操向ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の操向ハンドル(steering wheel)は、ステアリングギアと連結されたステアリングシャフトの片方の先端部に装着され、操向ハンドルの回転量がステアリングシャフトによりステアリングギアに伝達されることによりホイールを回動させることができるようになっており、操向ハンドルは普通、運転者のグリップ感を向上させるために軽い材質のP.V.Cやウレタン等で作られる。
【0003】
このような操向ハンドルは、冬に長時間車両を路上に駐車する場合、操向ハンドルが周囲の冷たい空気によって冷却されて、操向ハンドルを掴むと手が冷たいため温風器を作動させて温度を上げたり、革や布でできたホイールカバーの保温効果によって暖めていた。しかし、温風器を使用する場合は、温度の上昇まで運転者が長時間待たなければならなく、ホイールカバーの場合は保温効果に劣るという問題点があるため、操向ハンドルに熱線部材(発熱体)を内蔵し、温度調節手段によって操向ハンドルの温度を調節する発熱操向ハンドルが開示されている。
【0004】
従来の発熱操向ハンドルは、多様な構造が開示されているが、図1に一部を図示したように、コア10の外側部に成形された合成樹脂部20を熱線パッド30で覆い、必要に応じて熱線パッド30を革や布でできたホイールカバー40で覆った構造からなっており、熱線パッド30には熱線31(発熱体)が配線され、温度調節器32によって温度が調節される発熱手段からなっている。熱線31は、一般的にニクロム線等の金属発熱体やPTC(positive temperature coefficiency)セラミック発熱体等からなっている。
【0005】
しかし、従来の発熱操向ハンドルは、熱線パッドを製作して覆う工程等によって製造工程が複雑で、パッドによってグリップ(grip)感が低下する(ふわふわし過ぎる)。木材や金属等の模様転写層は、水圧転写工法(転写フィルムを水に溶かして水の柔軟な性質を利用して物体に模様を転写する工法)で形成されるため、熱線パッドを付ける操向ハンドルには、木材や金属等の模様転写層を形成することができない。そして、熱線パッドの温度を調節する温度調節器が必ず必要になるという等の問題点があった。
【0006】
また、従来の発熱操向ハンドルは、触覚が敏感な指に直接触れるもののため、抵抗値が持続的に変化する物体や、負性抵抗値が変化して温度が急激に上昇したり急激に落ちることを最小化することが好ましい。それにより、透明炭素ナノチューブ(CNT)を発熱体にして発熱操向ハンドルに利用することができる。
【0007】
ここで、炭素ナノチューブは分散が重要で、また、炭素ナノチューブと炭素ナノチューブ間の接触抵抗を減らすための多くの研究が行われている。炭素ナノチューブと炭素ナノチューブ間の接触抵抗が減ると、電気伝導度が低くなるだけでなく、透明電極物質としても使用できるため、これについて次のように提案する。
【0008】
特許文献1では、接触抵抗を減らすための方法としてCNT−金属ナノ粒子混成物を作ってプラスチック基板に薄膜を製造することを主な目的としている。混成物は、金属前駆体を炭素ナノチューブ表面に吸着させて炭素ナノチューブ薄膜の全体抵抗を減少させるものとして示されている。また、熱処理により銀ナノ粒子が吸着された一部の表面でクラスター(Cluster)に成長するメカニズム(Mechanism)を利用すると記載されている。このように形成された炭素ナノチューブ−金属ナノ粒子混成物の場合、抵抗値は減少させることができるが、銀ナノ粒子が安定したウォール(Wall)構造を成している炭素ナノチューブ(CNT)に均一に吸着され難く、特定部位別に測定値が不均一だという結果を引き起こす。
【0009】
炭素ナノチューブを発熱体として利用するために、吸着法で形成された炭素ナノチューブ−金属ナノ粒子混成物を使用する場合、3次元屈曲を有するプラスチック(Plastic)ハンドル面にコーティング(Coating)する際に均一な発熱特性を出せず、パワー(Power)の連続するオン−オフ(On−Off)によって抵抗値が変化することが確認できる。
【0010】
発熱ハンドルは、触覚が敏感な手に直接触れるもののため、抵抗値が持続的に変化する物質や、負性抵抗値が変化して温度が急激に上昇したり急激に落ちることを最小化しなければならない。
【0011】
炭素ナノチューブを単独で分散させて発熱ハンドル上にコーティングする場合は、高い接触抵抗によって発熱ハンドルで要求する発熱量に合わせ難く、ナノ金属を単独で分散させて発熱ハンドル上にコーティングする場合は、低い抵抗係数によって初期発熱が起こる。
【0012】
炭素ナノチューブを使用せずカーボンを使用する場合は、温度による抵抗値の変化が大きいため、精密な温度コントロール(Control)が必要な発熱ハンドル用途には適さない。
【0013】
持続的な温度の上昇によって抵抗値が上昇する。抵抗値の持続的な上昇は、電流の流れの減少をもたらし、結局ショートにつながるが、これを防止するための方法が、炭素を適切に使用して相互補完的な特性を具現させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2008−0112799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって、本発明の目的は、上記の問題点を解決するためのものであり、本発明の目的は、製造工程が簡単且つグリップ感が良好で、模様転写層を形成でき、温度調節器が必ずしも必要でなく、熱伝達効率に優れ、集熱現象を防止できる発熱操向ハンドルを提供することである。
【0016】
また、炭素ナノチューブ分散溶液に化学的に金属ナノ粒子を付けて電気伝導度が持続的、且つ全面に均一に形成される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びこれを使用することにより、電気的に抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供するものである。
【0017】
また、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物にバインダーを混合して1液型の溶液を作り、これを3D構造のプラスチック(Plastic)ハンドルの表面に均一に分散コーティングすることにより、プラスチックハンドルとの付着力によって精密な温度範囲で発熱特性を有し、160℃以下の温度変化において抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、a)炭素ナノチューブが分散された炭素ナノチューブ分散溶液を製造する工程;b)上記a)の炭素ナノチューブ分散溶液を酸処理する工程;c)上記b)の炭素ナノチューブ分散溶液を中和処理する工程;及びd)上記c)の炭素ナノチューブ分散溶液と金属粒子を含む金属溶液を混合して、炭素ナノチューブ表面に金属粒子を結合させる工程を含む方法によって製造される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を提供する。
【0019】
本発明は、操向ハンドルの剛性を維持するコアと、コアの外側部に形成された合成樹脂部と、合成樹脂部の外側面に、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層と、炭素ナノチューブ発熱コーティング層に電気的に連結されて発熱を誘導する電極を含む発熱操向ハンドルを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による発熱操向ハンドルによると、分散液をスプレーして発熱コーティング層を形成するため、製造工程が簡単で且つ発熱コーティング層のグリップ感が良好で、発熱コーティング層の外側に木材や金属等の模様転写層を形成でき、温度調節器が必ずしも必要でなく、発熱コーティング層の熱伝達効率に優れ、集熱現象を防止できるという効果がある。
【0021】
また、炭素ナノチューブ分散溶液に化学的に金属ナノ粒子を付け、電気伝導度が持続的で、全面に均一に形成される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びこれを使用することにより、電気的に抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供する。
【0022】
また、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物にバインダーを混合して1液型の溶液を作り、これを3D構造のプラスチック(Plastic)ハンドル表面に均一に分散コーティングすることにより、プラスチックハンドルとの付着力によって精密な温度範囲で発熱特性を有し、160℃以下の温度変化でも抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の発熱操向ハンドルの構成図である。
【図2】本発明にかかる発熱操向ハンドルの平面図である。
【図3】図2において矢印A−A線に沿った断面図である。
【図4】発明の他の実施例による発熱操向ハンドルの断面図である。
【図5】本発明にかかる発熱操向ハンドルの製造工程図である。
【図6】本発明にかかる発熱操向ハンドルの製造フローチャートである。
【図7】(a)は一般炭素ナノチューブ発熱体の粒子モデルであり、(b)は炭素ナノチューブ(CNT)と銀(Ag)粒子または金属粒子等の伝導体からなる発熱体の粒子モデルである。
【図8】(a)は一般カーボンの電気的ネットワークモデルであり、(b)は炭素ナノチューブ(CNT)の電気的ネットワークモデルである。
【図9】本発明の実施例1の過程を図示した図面である。
【図10】本発明の実施例1及び比較例1〜2の溶液がコーティングされる発熱操向ハンドルの写真である。
【図11】図10のハンドルに革を被せた完成品の写真である。
【図12】本発明にかかる実施例1の耐久性テスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明にかかる炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物は、a)、炭素ナノチューブが分散された炭素ナノチューブ分散溶液を製造する工程;b)、a)の炭素ナノチューブ分散溶液を酸処理する工程;c)、b)の炭素ナノチューブ分散溶液を中和処理する工程;及びd)、c)の炭素ナノチューブ分散溶液と金属粒子を含む金属溶液を混合して、炭素ナノチューブ表面に金属粒子を結合させる工程を含む方法によって製造される。
【0025】
ここで、a)の炭素ナノチューブは、MWNT(multi wall nanotube);TWNT(Thin wall nanotube);及びSWNT(single wall nanotube)から選ばれた1種以上であり得る。
【0026】
a)で分散溶液は、炭素ナノチューブを溶媒に分散させて製造できる。
【0027】
b)では、硝酸、硫酸、塩酸、及び過塩素酸から選ばれた1種以上を添加して酸処理できる。
【0028】
c)では、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を添加して中和処理できる。
【0029】
一般的に、炭素ナノチューブに酸処理をすると、カルボキシル基がランダムに発生するが、同時にpHが低くなり酸性化を帯びるようになる。これをろ過して使用する場合、酸の攻撃を受けた炭素ナノチューブ分子構造は無数のデフェクト(Defected)が存在するため、電気伝導性が悪くなるという特徴がある。これを解決するために、本発明では中和処理を施してpHを6以上に還元させる。好ましくは、pHが7になることが良い。
【0030】
酸処理後、炭素ナノチューブだけをろ過して使用するとしても、周辺に酸性イオンが微量存在するため、金属ナノ粒子を添加する場合は残余物によって容易に酸化される。純粋な金属ナノ粒子を収得して、酸処理された炭素ナノチューブに混合して製造するため、pHを考慮しない状態で金属ナノ粒子を炭素ナノチューブと混合すると、クーロン力によって金属ナノ粒子が物理吸着をする前に残余酸性イオンによって酸化する余地がある。
【0031】
よって、本発明では、カルボキシル基が導入された炭素ナノチューブに金属粒子を化学的に付けるためには、金属粒子が酸性イオンの攻撃を受けないようにするために中和処理をした後、炭素ナノチューブの安定化及び金属粒子が化学的に結合する過程で酸性イオンが反応に参与しないようにさせる。
【0032】
c)では、b)の炭素ナノチューブ分散溶液と水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を超音波を利用して混合できる。
【0033】
d)において金属粒子を含む金属溶液は、溶媒;TOAB、1,2−ジクロロベンゼン(1,2−dichlorobenzene)、N−メチルピロリドン(NMP:N−methlypyrrolidone)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N−dimethylformamide)から選ばれる1種以上に、ホルムアルデヒド(formaldehyde)又はアセトアルデヒド(acetaldehyde)を混合した溶液;及びAg、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Niの塩から選ばれた1種以上の金属塩を含んでもよい。
【0034】
金属塩の具体的な例としては、AgCl、AgI、AgBr、AgNO3、AgCN及びKAg(CN)2等があるが、これに限定されるのではなく、金属塩はHNO3水溶液に溶かした後、NH3を少量添加して使用することがより好ましい。
【0035】
d)において、炭素ナノチューブ表面にある金属粒子は、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Ni及びCu/Niから選ばれた1種以上でもよい。また、炭素ナノチューブ表面にある金属粒子は、直径10〜300nmであることが好ましい。
【0036】
d)で得られた溶液を、MEK、MIBK、アセトン(acetone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、ケトン系溶液、ブトキシエチルアセテート(butoxyethyl acetate)、ブチルカルビトールアセテート(BCA:butyl carbitol acetate)及びアセテート系溶液から選ばれた1種以上に分散させて分散溶液を製造する工程;及び分散溶液とバインダーを混合させる工程をさらに含む方法で製造されることができる。
【0037】
ここで、バインダーとしては、ポリウレタン樹脂(Poly Urethane resin)ポリエステル樹脂(Poly ester resin)及びアクリル樹脂(Acryl resin)から選ばれた1種以上でもよい。
【0038】
このように、本発明において、炭素ナノチューブに金属ナノ粒子が均一に結合され、分散溶液製造時に金属ナノ粒子が離脱しないようにするために、置換反応を利用して炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を製造できる。
【0039】
このような炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物では、炭素ナノチューブの固有の特性である炭素−炭素の共有結合構造と、これによる電流移動の特性上、固有抵抗がなくなり銅線の1000倍程度の電流密度を得るだけでなく、炭素ナノチューブに結合された金属ナノ粒子の電荷伝達通路によって接触抵抗を減らす特性を同時に得ることができる。
【0040】
本発明により、炭素ナノチューブ粒子の一つ一つに金属粒子が均一に形成されなければならない特性があり、金属ナノ粒子が炭素ナノチューブに強く化学結合されているので、バインダーを混合したコーティング溶液で炭素ナノチューブと金属ナノ粒子間の分離現象が発生しない。また、3Dのプラスチックハンドル形状に均一にコーティングされた炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物が強くバインディング(Binding)するので、時間の経過によって負性抵抗が発生したり、金属ナノ粒子が分離されて接触抵抗を引き起こすことを防ぐことができる。単純に電気伝導度を低くするためよりも、要求する発熱ハンドルの発熱要求範囲内で一定且つ均一に維持することができる。
【0041】
一方、本発明にかかる発熱操向ハンドルは、操向ハンドルの剛性を維持するコアと、コアの外側部に形成された合成樹脂部と、合成樹脂部の外側面に、本発明にかかる炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層と、炭素ナノチューブ発熱コーティング層に電気的に連結されて発熱を誘導する電極を含む。
【0042】
本発明の炭素ナノチューブ発熱コーティング層は、炭素ナノチューブ粒子と金属粒子が化学的に結合された炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物によってコーティングされていることを特徴とする。
【0043】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側にはカバーが覆われてもよい。カバーは、革、布、及びPU(ポリウレタン)から選ばれるいずれでもよい。
【0044】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側には、水圧転写工法による転写層が形成されていてもよい。転写層外側には、外部コーティング層が形成されてもよい。
【0045】
以下、本発明の実施形態を添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0046】
図2は、本発明にかかる発熱操向ハンドルを示す平面図(スポークにはカバーが取り除かれた状態)で、図3は図2で矢印A−A線に沿った断面図である。図示したように、本発明にかかる発熱操向ハンドル100は、鋼や軽合金からなるコア110の外側部に合成樹脂部120が形成され、合成樹脂部120の外側面に炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層130が形成され、炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の外側にはカバー140が覆われた構造である。
【0047】
コア110は、リム111とスポーク112からなっており、円形断面、 逆コの字型断面やH断面等、多様な断面形態からなってもよい。
【0048】
合成樹脂部120は、PU(ポリウレタン)、EPS(膨張ポリスチレン)又はEPP(膨張ポリプロピレン)を原料として使用してフォーム(Foam:expanded plastic)化されて形成されたり、ABS等の合成樹脂を使用して射出成形して形成される。
【0049】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層130は、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を合成樹脂部120にスプレーしてコーティングされる層だが、炭素ナノチューブ(CNT)に銀(Ag)粒子のような金属粒子が化学的に結合された炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物をスプレーしてコーティングすることが特に好ましい。
【0050】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の単位面積当りのコーティング質量は、3〜15g/m2にすることが好ましい。
【0051】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層130に電気的に連結されて発熱を誘導する電極131を形成する。電極131には、必要に応じて温度調節器132が連結されてもよいが、炭素ナノチューブ(CNT)自体が有している固有特性(電荷量統制)により温度制御が可能なため、別途の温度調節器132を設置しなくてもよい。温度調節器132には、電源コネクター133が連結される。
【0052】
炭素ナノチューブ(CNT)は、数〜数百マイクロメーター(μm)の直径と長さを有する非等方性の素材である。炭素ナノチューブにおいて一つの炭素原子は、3個の異なる炭素原子と結合して六角形の蜂の巣模様を成している。平らな紙の上にこのような蜂の巣模様を描いた後、紙を丸く巻くとナノチューブ構造になる。つまり、ナノチューブ一つは、中空のチューブ或いはシリンダーのような形を有している。これをナノチューブと呼ぶ理由は、そのチューブの直径が普通1ナノメートル(10億分の1メートル)程に小さいためである。紙に蜂の巣模様を描き、丸く巻くとナノチューブになるが、このとき紙をどの角度に巻くかによって、炭素ナノチューブは金属のような電気的導体(Armchair)になりもし、半導体(ZigZag構造)になりもする。
【0053】
カバー140は、革や布、又はPU(ポリウレタン)からなる仕上げ材であり、革や布は炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を覆って裁縫等によって結合され、PU(ポリウレタン)は炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を覆うように塗布等によって結合される。
【0054】
炭素ナノチューブを利用した発熱体に対する一般的な公知技術は、韓国登録特許第0749886号等に開示されているため、炭素ナノチューブ発熱コーティング層の形成に対する詳しい説明は省略する。
【0055】
このように構成された本発明による発熱操向ハンドルは、図5の工程図面と図6のフローチャートに表したように、コア110の外側に合成樹脂部120を成形する(S1)。その後、合成樹脂部120の外側に、炭素ナノチューブ表面に金属粒子が化学的に結合された炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物である分散液(Lq)をスプレーして炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を形成する(S2)。炭素ナノチューブ発熱コーティング層130に電極131を形成し(S3)、必要に応じて温度調節器132を設けた後、炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の外側にカバー140を覆って結合して完成する。
【0056】
一方、図4に断面として示したように、本発明の他の実施形態として、コア110の外側に合成樹脂部120を形成し、合成樹脂部120の外側面に炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を形成する。炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の外側に木材や金属等の模様転写層150を形成し、転写層150の外側には外部コーティング層160をさらに形成することもできる。木材や金属等の模様転写層150は、公知の水圧転写工法で形成し、外部コーティング層160は公知の多様な材質と多様な工法でコーティングできる。
【0057】
従来の発熱操向ハンドルに利用されている熱線発熱体は、被加熱体と発熱線の接触面が局部的のため、被加熱体に対する熱伝達効率が低下し、最高温度に到達する昇温時間が遅い。しかし、本発明の発熱操向ハンドルに利用されている炭素ナノチューブ発熱体は、被加熱体と発熱層の接触面が全面的のため、被加熱体に対する熱伝達効率に優れ、最高温度に達する昇温時間が早い。
【0058】
そして、図7の(a)及び図8の(a)に示したように、一般の炭素発熱体(フルオレン、非結晶カーボン、グラファイト)は、カーボンの特性である陰(−)の温度抵抗係数を有するため、反復的な使用による抵抗数値の低下により信頼性の確保が難しい。また、従来の金属性物質の発熱体は、陽(+)の温度抵抗係数を有するため、反復的な使用による抵抗数値の上昇により信頼性の確保が困難だが、図7の(b)及び図8の(b)に示したような炭素ナノチューブ(CNT)は、分子構造上、球形ではない線状構造のため、ショートが発生する部分が少なく抵抗数値により安定的である。特に、炭素ナノチューブ表面に金属粒子が化学的に結合した炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物からなる発熱体は、PTC(positive temperature coefficiency)の性質を保有し、温度抵抗係数がほぼ0に近く、反復的な使用にも抵抗数値の変化がなく信頼性の確保が容易である。これは単純に陰(−)の温度抵抗係数を有するカーボンと陽(+)の温度抵抗係数を有する金属の混合だけで補正されるのではなく、炭素ナノチューブ(CNT)表面に化学的結合を利用した金属粒子等の伝導体の結合により上記のような特性が具現される。
【0059】
そして、図8の(a)に電気的ネットワークモデルとして示したように、一般のカーボンはバインダー内でカーボンとカーボン粒子が接触して初めて電気が通じるようになり、これによってコーティング時に特定部位にカーボン粒子が固まる可能性があるため、特定部位に熱が多く発生するようになる。これに対して図8の(b)に電気的ネットワークモデルで示したように、炭素ナノチューブ(CNT)は粒子が付いていなく、ある程度離隔距離があっても電気が通じる電気的ネットワーク現象を具現する。これにより、一般のカーボンの含量に比べて非常に少ない含量でも同等以上の性能を具現することで、特定部位に炭素ナノチューブ(CNT)粒子が固まる可能性を排除するようになり集熱現象なく均一な発熱分布を有するようになる。
【0060】
このような本発明の発熱操向ハンドルは、従来の発熱操向ハンドルにおいて熱線パッド付着工程を、炭素ナノチューブ(CNT)と金属粒子等の伝導体をスプレーする工程に代替して、製造コストを従来に比べて著しく節減できる。また、木材や金属等の模様転写層を形成でき、グリップ感を良好にでき、且つ自由な形状及び抵抗設計が可能で、従来に比べて著しいエネルギー節減が可能である。そして、炭素ナノチューブ(CNT)物質の特性(電荷量統制)上、別途の温度調節器が必ずしも必要ではなくなる。
【実施例】
【0061】
実施例1
MWNT(multi wall nanotube)2mgを100ml蒸留水とガラスビーカーに入れ、Microfluidizer(M−110S)を利用して15,000psi圧力で物理的な分散を行ってCNT分散溶液を得た。そして、硫酸と硝酸を3:1で混合した水溶液を加えて1時間Sonicator(ULH−700)で超音波ミキシングした。次に、NaOH水溶液で中和させた。
【0062】
DMF水溶液にTOABとトルエン10ml、アセトアルデヒド1mlを混合した。硝酸水溶液に0.1gのAgClを添加した。DMF混合溶液と硝酸混合溶液とを混合し、濃いNH3をゆっくり添加してRXを含む混合溶液を準備した。その後、RXを含む混合溶液をNaOHが含まれたMWNTに混合して、80℃、3時間ミキシングして置換反応(Phase Transfer Reaction)させCNT表面にAg粒子が析出されると共に、結合されるようにした。上記の反応させた溶液をアルミニウム膜(anodisc,200nm)を用いたろ過装置を利用してフィルタリングし、濾過物をMEK溶液に分散させた後、バインダー(LG化学、EXP−7)を添加して混合させ本発明にかかる炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を製造した(図9参照)。
【0063】
比較例1
MWNT(multi wall nanotube)2mgを100ml蒸留水とガラスビーカーに入れ、Microfluidizer(M−110S)を利用して15,000psi圧力で物理的な分散を行ってCNT分散溶液を得た。ここにNMP(n−methylpyrrolidone)10mlを入れ、10時間Sonicator(ULH−700)で超音波ミキシングした。
【0064】
これをアルミニウム膜(anodisc,200nm)を用いたろ過装置を通過させてフィルタリングした後、準備した銀前駆体溶液(硝酸銀5gとブチルアミン4.5mlをトルエン60mlに混合して製造)を次いで通過させてフィルタリングし、CNT−金属ナノ粒子混成物を製造した。
【0065】
これを120℃以下で2時間熱処理した後、これをMEK溶液に分散させ、バインダー(LG化学、EXP−7)を添加して混合させCNT−金属ナノ粒子混合物溶液を製造した。
【0066】
比較例2
MWNT(multi wall nanotube)2mgを100mlMEKとガラスビーカーに入れ、Microfluidizer(M−110S)を利用して15,000psi圧力で物理的に分散を行ってCNT分散液を得た後、バインダー(LG化学、EXP−7)を添加して溶液を製造した。
【0067】
実験例1
実施例1及び比較例1〜2の溶液を3D形状を有するプラスチックハンドル(Urethane)表面に均一にスプレーコーティングした。これをウレタン(Urethane)ハンドルのDereadation変形温度を考慮して100℃以下で2時間乾燥した後、ハンドルの3ポイント(図10及び図11参照)に亘り表面抵抗測定器(MCP−HT450)で2回反復測定し、結果を表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
このように、炭素ナノチューブだけを単独で使用する場合(比較例2)、106以上と面抵抗値が高く発熱ハンドルとして具現するには不利で、CNT−金属ナノ粒子混合物の場合(比較例1)は、Agの分散程度が均一でないため、測定による値の揺れが大きいことが確認できた。つまり、発熱素材として使用するためには、CNT−金属ナノ粒子複合物状態で利用して初めて、表面の均一な抵抗値を有するようになる。
【0070】
実験例2
本発明にかかる実施例1により作られたハンドルに革を被せて完成品を形成させた後(図11参照)、IT6720Power Supplyを利用してDC12ボルトを印加して温度上昇テストを行った。比較例1により作られたハンドルに革を被せて完成品を形成した後、IT6720Power Supplyを利用してDC12ボルトを印加してみたが、2分で温度が上昇した後、ショートが起こり作動しなかった。また、比較例2はDC12ボルトでは電流が流れなかった。
【0071】
実験例3
本発明にかかる実施例1により作られたハンドルに革を被せて完成品を形成させた後、−20℃の低温チャンバーで6時間放置して冷却させた。その後、製品を25℃の常温に取り出してIT6720Power Supplyを利用してDC12ボルトを印加して熱電対(thermocouple)でハンドル表面の温度変化を測定した。図12の耐久性テスト結果のように、1分で25℃以上の温度に上昇してハンドル表面から温熱が感じられ始め、5分が過ぎた時点で約35℃に達した。15分以内に40℃に達しなければならないヒーティングハンドル規格(ES56110−05)を満たし、ハンドルの一定の温度を維持させるPIDコントローラーを除去した状態での長期安定性テストの結果、50〜53℃を維持すると共に、火災や革表面の変形が起きなかった。
【符号の説明】
【0072】
110:コア、120:合成樹脂部、130:炭素ナノチューブ発熱コーティング層、131:電極、140:カバー、150:転写層、160:外部コーティング層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びそれにより形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層を含む発熱操向ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の操向ハンドル(steering wheel)は、ステアリングギアと連結されたステアリングシャフトの片方の先端部に装着され、操向ハンドルの回転量がステアリングシャフトによりステアリングギアに伝達されることによりホイールを回動させることができるようになっており、操向ハンドルは普通、運転者のグリップ感を向上させるために軽い材質のP.V.Cやウレタン等で作られる。
【0003】
このような操向ハンドルは、冬に長時間車両を路上に駐車する場合、操向ハンドルが周囲の冷たい空気によって冷却されて、操向ハンドルを掴むと手が冷たいため温風器を作動させて温度を上げたり、革や布でできたホイールカバーの保温効果によって暖めていた。しかし、温風器を使用する場合は、温度の上昇まで運転者が長時間待たなければならなく、ホイールカバーの場合は保温効果に劣るという問題点があるため、操向ハンドルに熱線部材(発熱体)を内蔵し、温度調節手段によって操向ハンドルの温度を調節する発熱操向ハンドルが開示されている。
【0004】
従来の発熱操向ハンドルは、多様な構造が開示されているが、図1に一部を図示したように、コア10の外側部に成形された合成樹脂部20を熱線パッド30で覆い、必要に応じて熱線パッド30を革や布でできたホイールカバー40で覆った構造からなっており、熱線パッド30には熱線31(発熱体)が配線され、温度調節器32によって温度が調節される発熱手段からなっている。熱線31は、一般的にニクロム線等の金属発熱体やPTC(positive temperature coefficiency)セラミック発熱体等からなっている。
【0005】
しかし、従来の発熱操向ハンドルは、熱線パッドを製作して覆う工程等によって製造工程が複雑で、パッドによってグリップ(grip)感が低下する(ふわふわし過ぎる)。木材や金属等の模様転写層は、水圧転写工法(転写フィルムを水に溶かして水の柔軟な性質を利用して物体に模様を転写する工法)で形成されるため、熱線パッドを付ける操向ハンドルには、木材や金属等の模様転写層を形成することができない。そして、熱線パッドの温度を調節する温度調節器が必ず必要になるという等の問題点があった。
【0006】
また、従来の発熱操向ハンドルは、触覚が敏感な指に直接触れるもののため、抵抗値が持続的に変化する物体や、負性抵抗値が変化して温度が急激に上昇したり急激に落ちることを最小化することが好ましい。それにより、透明炭素ナノチューブ(CNT)を発熱体にして発熱操向ハンドルに利用することができる。
【0007】
ここで、炭素ナノチューブは分散が重要で、また、炭素ナノチューブと炭素ナノチューブ間の接触抵抗を減らすための多くの研究が行われている。炭素ナノチューブと炭素ナノチューブ間の接触抵抗が減ると、電気伝導度が低くなるだけでなく、透明電極物質としても使用できるため、これについて次のように提案する。
【0008】
特許文献1では、接触抵抗を減らすための方法としてCNT−金属ナノ粒子混成物を作ってプラスチック基板に薄膜を製造することを主な目的としている。混成物は、金属前駆体を炭素ナノチューブ表面に吸着させて炭素ナノチューブ薄膜の全体抵抗を減少させるものとして示されている。また、熱処理により銀ナノ粒子が吸着された一部の表面でクラスター(Cluster)に成長するメカニズム(Mechanism)を利用すると記載されている。このように形成された炭素ナノチューブ−金属ナノ粒子混成物の場合、抵抗値は減少させることができるが、銀ナノ粒子が安定したウォール(Wall)構造を成している炭素ナノチューブ(CNT)に均一に吸着され難く、特定部位別に測定値が不均一だという結果を引き起こす。
【0009】
炭素ナノチューブを発熱体として利用するために、吸着法で形成された炭素ナノチューブ−金属ナノ粒子混成物を使用する場合、3次元屈曲を有するプラスチック(Plastic)ハンドル面にコーティング(Coating)する際に均一な発熱特性を出せず、パワー(Power)の連続するオン−オフ(On−Off)によって抵抗値が変化することが確認できる。
【0010】
発熱ハンドルは、触覚が敏感な手に直接触れるもののため、抵抗値が持続的に変化する物質や、負性抵抗値が変化して温度が急激に上昇したり急激に落ちることを最小化しなければならない。
【0011】
炭素ナノチューブを単独で分散させて発熱ハンドル上にコーティングする場合は、高い接触抵抗によって発熱ハンドルで要求する発熱量に合わせ難く、ナノ金属を単独で分散させて発熱ハンドル上にコーティングする場合は、低い抵抗係数によって初期発熱が起こる。
【0012】
炭素ナノチューブを使用せずカーボンを使用する場合は、温度による抵抗値の変化が大きいため、精密な温度コントロール(Control)が必要な発熱ハンドル用途には適さない。
【0013】
持続的な温度の上昇によって抵抗値が上昇する。抵抗値の持続的な上昇は、電流の流れの減少をもたらし、結局ショートにつながるが、これを防止するための方法が、炭素を適切に使用して相互補完的な特性を具現させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2008−0112799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって、本発明の目的は、上記の問題点を解決するためのものであり、本発明の目的は、製造工程が簡単且つグリップ感が良好で、模様転写層を形成でき、温度調節器が必ずしも必要でなく、熱伝達効率に優れ、集熱現象を防止できる発熱操向ハンドルを提供することである。
【0016】
また、炭素ナノチューブ分散溶液に化学的に金属ナノ粒子を付けて電気伝導度が持続的、且つ全面に均一に形成される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びこれを使用することにより、電気的に抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供するものである。
【0017】
また、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物にバインダーを混合して1液型の溶液を作り、これを3D構造のプラスチック(Plastic)ハンドルの表面に均一に分散コーティングすることにより、プラスチックハンドルとの付着力によって精密な温度範囲で発熱特性を有し、160℃以下の温度変化において抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、a)炭素ナノチューブが分散された炭素ナノチューブ分散溶液を製造する工程;b)上記a)の炭素ナノチューブ分散溶液を酸処理する工程;c)上記b)の炭素ナノチューブ分散溶液を中和処理する工程;及びd)上記c)の炭素ナノチューブ分散溶液と金属粒子を含む金属溶液を混合して、炭素ナノチューブ表面に金属粒子を結合させる工程を含む方法によって製造される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を提供する。
【0019】
本発明は、操向ハンドルの剛性を維持するコアと、コアの外側部に形成された合成樹脂部と、合成樹脂部の外側面に、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層と、炭素ナノチューブ発熱コーティング層に電気的に連結されて発熱を誘導する電極を含む発熱操向ハンドルを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による発熱操向ハンドルによると、分散液をスプレーして発熱コーティング層を形成するため、製造工程が簡単で且つ発熱コーティング層のグリップ感が良好で、発熱コーティング層の外側に木材や金属等の模様転写層を形成でき、温度調節器が必ずしも必要でなく、発熱コーティング層の熱伝達効率に優れ、集熱現象を防止できるという効果がある。
【0021】
また、炭素ナノチューブ分散溶液に化学的に金属ナノ粒子を付け、電気伝導度が持続的で、全面に均一に形成される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物及びこれを使用することにより、電気的に抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供する。
【0022】
また、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物にバインダーを混合して1液型の溶液を作り、これを3D構造のプラスチック(Plastic)ハンドル表面に均一に分散コーティングすることにより、プラスチックハンドルとの付着力によって精密な温度範囲で発熱特性を有し、160℃以下の温度変化でも抵抗値が変わらない発熱操向ハンドルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の発熱操向ハンドルの構成図である。
【図2】本発明にかかる発熱操向ハンドルの平面図である。
【図3】図2において矢印A−A線に沿った断面図である。
【図4】発明の他の実施例による発熱操向ハンドルの断面図である。
【図5】本発明にかかる発熱操向ハンドルの製造工程図である。
【図6】本発明にかかる発熱操向ハンドルの製造フローチャートである。
【図7】(a)は一般炭素ナノチューブ発熱体の粒子モデルであり、(b)は炭素ナノチューブ(CNT)と銀(Ag)粒子または金属粒子等の伝導体からなる発熱体の粒子モデルである。
【図8】(a)は一般カーボンの電気的ネットワークモデルであり、(b)は炭素ナノチューブ(CNT)の電気的ネットワークモデルである。
【図9】本発明の実施例1の過程を図示した図面である。
【図10】本発明の実施例1及び比較例1〜2の溶液がコーティングされる発熱操向ハンドルの写真である。
【図11】図10のハンドルに革を被せた完成品の写真である。
【図12】本発明にかかる実施例1の耐久性テスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明にかかる炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物は、a)、炭素ナノチューブが分散された炭素ナノチューブ分散溶液を製造する工程;b)、a)の炭素ナノチューブ分散溶液を酸処理する工程;c)、b)の炭素ナノチューブ分散溶液を中和処理する工程;及びd)、c)の炭素ナノチューブ分散溶液と金属粒子を含む金属溶液を混合して、炭素ナノチューブ表面に金属粒子を結合させる工程を含む方法によって製造される。
【0025】
ここで、a)の炭素ナノチューブは、MWNT(multi wall nanotube);TWNT(Thin wall nanotube);及びSWNT(single wall nanotube)から選ばれた1種以上であり得る。
【0026】
a)で分散溶液は、炭素ナノチューブを溶媒に分散させて製造できる。
【0027】
b)では、硝酸、硫酸、塩酸、及び過塩素酸から選ばれた1種以上を添加して酸処理できる。
【0028】
c)では、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を添加して中和処理できる。
【0029】
一般的に、炭素ナノチューブに酸処理をすると、カルボキシル基がランダムに発生するが、同時にpHが低くなり酸性化を帯びるようになる。これをろ過して使用する場合、酸の攻撃を受けた炭素ナノチューブ分子構造は無数のデフェクト(Defected)が存在するため、電気伝導性が悪くなるという特徴がある。これを解決するために、本発明では中和処理を施してpHを6以上に還元させる。好ましくは、pHが7になることが良い。
【0030】
酸処理後、炭素ナノチューブだけをろ過して使用するとしても、周辺に酸性イオンが微量存在するため、金属ナノ粒子を添加する場合は残余物によって容易に酸化される。純粋な金属ナノ粒子を収得して、酸処理された炭素ナノチューブに混合して製造するため、pHを考慮しない状態で金属ナノ粒子を炭素ナノチューブと混合すると、クーロン力によって金属ナノ粒子が物理吸着をする前に残余酸性イオンによって酸化する余地がある。
【0031】
よって、本発明では、カルボキシル基が導入された炭素ナノチューブに金属粒子を化学的に付けるためには、金属粒子が酸性イオンの攻撃を受けないようにするために中和処理をした後、炭素ナノチューブの安定化及び金属粒子が化学的に結合する過程で酸性イオンが反応に参与しないようにさせる。
【0032】
c)では、b)の炭素ナノチューブ分散溶液と水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を超音波を利用して混合できる。
【0033】
d)において金属粒子を含む金属溶液は、溶媒;TOAB、1,2−ジクロロベンゼン(1,2−dichlorobenzene)、N−メチルピロリドン(NMP:N−methlypyrrolidone)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N−dimethylformamide)から選ばれる1種以上に、ホルムアルデヒド(formaldehyde)又はアセトアルデヒド(acetaldehyde)を混合した溶液;及びAg、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Niの塩から選ばれた1種以上の金属塩を含んでもよい。
【0034】
金属塩の具体的な例としては、AgCl、AgI、AgBr、AgNO3、AgCN及びKAg(CN)2等があるが、これに限定されるのではなく、金属塩はHNO3水溶液に溶かした後、NH3を少量添加して使用することがより好ましい。
【0035】
d)において、炭素ナノチューブ表面にある金属粒子は、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Ni及びCu/Niから選ばれた1種以上でもよい。また、炭素ナノチューブ表面にある金属粒子は、直径10〜300nmであることが好ましい。
【0036】
d)で得られた溶液を、MEK、MIBK、アセトン(acetone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、ケトン系溶液、ブトキシエチルアセテート(butoxyethyl acetate)、ブチルカルビトールアセテート(BCA:butyl carbitol acetate)及びアセテート系溶液から選ばれた1種以上に分散させて分散溶液を製造する工程;及び分散溶液とバインダーを混合させる工程をさらに含む方法で製造されることができる。
【0037】
ここで、バインダーとしては、ポリウレタン樹脂(Poly Urethane resin)ポリエステル樹脂(Poly ester resin)及びアクリル樹脂(Acryl resin)から選ばれた1種以上でもよい。
【0038】
このように、本発明において、炭素ナノチューブに金属ナノ粒子が均一に結合され、分散溶液製造時に金属ナノ粒子が離脱しないようにするために、置換反応を利用して炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を製造できる。
【0039】
このような炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物では、炭素ナノチューブの固有の特性である炭素−炭素の共有結合構造と、これによる電流移動の特性上、固有抵抗がなくなり銅線の1000倍程度の電流密度を得るだけでなく、炭素ナノチューブに結合された金属ナノ粒子の電荷伝達通路によって接触抵抗を減らす特性を同時に得ることができる。
【0040】
本発明により、炭素ナノチューブ粒子の一つ一つに金属粒子が均一に形成されなければならない特性があり、金属ナノ粒子が炭素ナノチューブに強く化学結合されているので、バインダーを混合したコーティング溶液で炭素ナノチューブと金属ナノ粒子間の分離現象が発生しない。また、3Dのプラスチックハンドル形状に均一にコーティングされた炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物が強くバインディング(Binding)するので、時間の経過によって負性抵抗が発生したり、金属ナノ粒子が分離されて接触抵抗を引き起こすことを防ぐことができる。単純に電気伝導度を低くするためよりも、要求する発熱ハンドルの発熱要求範囲内で一定且つ均一に維持することができる。
【0041】
一方、本発明にかかる発熱操向ハンドルは、操向ハンドルの剛性を維持するコアと、コアの外側部に形成された合成樹脂部と、合成樹脂部の外側面に、本発明にかかる炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層と、炭素ナノチューブ発熱コーティング層に電気的に連結されて発熱を誘導する電極を含む。
【0042】
本発明の炭素ナノチューブ発熱コーティング層は、炭素ナノチューブ粒子と金属粒子が化学的に結合された炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物によってコーティングされていることを特徴とする。
【0043】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側にはカバーが覆われてもよい。カバーは、革、布、及びPU(ポリウレタン)から選ばれるいずれでもよい。
【0044】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側には、水圧転写工法による転写層が形成されていてもよい。転写層外側には、外部コーティング層が形成されてもよい。
【0045】
以下、本発明の実施形態を添付の図面を参照して詳しく説明する。
【0046】
図2は、本発明にかかる発熱操向ハンドルを示す平面図(スポークにはカバーが取り除かれた状態)で、図3は図2で矢印A−A線に沿った断面図である。図示したように、本発明にかかる発熱操向ハンドル100は、鋼や軽合金からなるコア110の外側部に合成樹脂部120が形成され、合成樹脂部120の外側面に炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層130が形成され、炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の外側にはカバー140が覆われた構造である。
【0047】
コア110は、リム111とスポーク112からなっており、円形断面、 逆コの字型断面やH断面等、多様な断面形態からなってもよい。
【0048】
合成樹脂部120は、PU(ポリウレタン)、EPS(膨張ポリスチレン)又はEPP(膨張ポリプロピレン)を原料として使用してフォーム(Foam:expanded plastic)化されて形成されたり、ABS等の合成樹脂を使用して射出成形して形成される。
【0049】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層130は、炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を合成樹脂部120にスプレーしてコーティングされる層だが、炭素ナノチューブ(CNT)に銀(Ag)粒子のような金属粒子が化学的に結合された炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物をスプレーしてコーティングすることが特に好ましい。
【0050】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の単位面積当りのコーティング質量は、3〜15g/m2にすることが好ましい。
【0051】
炭素ナノチューブ発熱コーティング層130に電気的に連結されて発熱を誘導する電極131を形成する。電極131には、必要に応じて温度調節器132が連結されてもよいが、炭素ナノチューブ(CNT)自体が有している固有特性(電荷量統制)により温度制御が可能なため、別途の温度調節器132を設置しなくてもよい。温度調節器132には、電源コネクター133が連結される。
【0052】
炭素ナノチューブ(CNT)は、数〜数百マイクロメーター(μm)の直径と長さを有する非等方性の素材である。炭素ナノチューブにおいて一つの炭素原子は、3個の異なる炭素原子と結合して六角形の蜂の巣模様を成している。平らな紙の上にこのような蜂の巣模様を描いた後、紙を丸く巻くとナノチューブ構造になる。つまり、ナノチューブ一つは、中空のチューブ或いはシリンダーのような形を有している。これをナノチューブと呼ぶ理由は、そのチューブの直径が普通1ナノメートル(10億分の1メートル)程に小さいためである。紙に蜂の巣模様を描き、丸く巻くとナノチューブになるが、このとき紙をどの角度に巻くかによって、炭素ナノチューブは金属のような電気的導体(Armchair)になりもし、半導体(ZigZag構造)になりもする。
【0053】
カバー140は、革や布、又はPU(ポリウレタン)からなる仕上げ材であり、革や布は炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を覆って裁縫等によって結合され、PU(ポリウレタン)は炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を覆うように塗布等によって結合される。
【0054】
炭素ナノチューブを利用した発熱体に対する一般的な公知技術は、韓国登録特許第0749886号等に開示されているため、炭素ナノチューブ発熱コーティング層の形成に対する詳しい説明は省略する。
【0055】
このように構成された本発明による発熱操向ハンドルは、図5の工程図面と図6のフローチャートに表したように、コア110の外側に合成樹脂部120を成形する(S1)。その後、合成樹脂部120の外側に、炭素ナノチューブ表面に金属粒子が化学的に結合された炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物である分散液(Lq)をスプレーして炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を形成する(S2)。炭素ナノチューブ発熱コーティング層130に電極131を形成し(S3)、必要に応じて温度調節器132を設けた後、炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の外側にカバー140を覆って結合して完成する。
【0056】
一方、図4に断面として示したように、本発明の他の実施形態として、コア110の外側に合成樹脂部120を形成し、合成樹脂部120の外側面に炭素ナノチューブ発熱コーティング層130を形成する。炭素ナノチューブ発熱コーティング層130の外側に木材や金属等の模様転写層150を形成し、転写層150の外側には外部コーティング層160をさらに形成することもできる。木材や金属等の模様転写層150は、公知の水圧転写工法で形成し、外部コーティング層160は公知の多様な材質と多様な工法でコーティングできる。
【0057】
従来の発熱操向ハンドルに利用されている熱線発熱体は、被加熱体と発熱線の接触面が局部的のため、被加熱体に対する熱伝達効率が低下し、最高温度に到達する昇温時間が遅い。しかし、本発明の発熱操向ハンドルに利用されている炭素ナノチューブ発熱体は、被加熱体と発熱層の接触面が全面的のため、被加熱体に対する熱伝達効率に優れ、最高温度に達する昇温時間が早い。
【0058】
そして、図7の(a)及び図8の(a)に示したように、一般の炭素発熱体(フルオレン、非結晶カーボン、グラファイト)は、カーボンの特性である陰(−)の温度抵抗係数を有するため、反復的な使用による抵抗数値の低下により信頼性の確保が難しい。また、従来の金属性物質の発熱体は、陽(+)の温度抵抗係数を有するため、反復的な使用による抵抗数値の上昇により信頼性の確保が困難だが、図7の(b)及び図8の(b)に示したような炭素ナノチューブ(CNT)は、分子構造上、球形ではない線状構造のため、ショートが発生する部分が少なく抵抗数値により安定的である。特に、炭素ナノチューブ表面に金属粒子が化学的に結合した炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物からなる発熱体は、PTC(positive temperature coefficiency)の性質を保有し、温度抵抗係数がほぼ0に近く、反復的な使用にも抵抗数値の変化がなく信頼性の確保が容易である。これは単純に陰(−)の温度抵抗係数を有するカーボンと陽(+)の温度抵抗係数を有する金属の混合だけで補正されるのではなく、炭素ナノチューブ(CNT)表面に化学的結合を利用した金属粒子等の伝導体の結合により上記のような特性が具現される。
【0059】
そして、図8の(a)に電気的ネットワークモデルとして示したように、一般のカーボンはバインダー内でカーボンとカーボン粒子が接触して初めて電気が通じるようになり、これによってコーティング時に特定部位にカーボン粒子が固まる可能性があるため、特定部位に熱が多く発生するようになる。これに対して図8の(b)に電気的ネットワークモデルで示したように、炭素ナノチューブ(CNT)は粒子が付いていなく、ある程度離隔距離があっても電気が通じる電気的ネットワーク現象を具現する。これにより、一般のカーボンの含量に比べて非常に少ない含量でも同等以上の性能を具現することで、特定部位に炭素ナノチューブ(CNT)粒子が固まる可能性を排除するようになり集熱現象なく均一な発熱分布を有するようになる。
【0060】
このような本発明の発熱操向ハンドルは、従来の発熱操向ハンドルにおいて熱線パッド付着工程を、炭素ナノチューブ(CNT)と金属粒子等の伝導体をスプレーする工程に代替して、製造コストを従来に比べて著しく節減できる。また、木材や金属等の模様転写層を形成でき、グリップ感を良好にでき、且つ自由な形状及び抵抗設計が可能で、従来に比べて著しいエネルギー節減が可能である。そして、炭素ナノチューブ(CNT)物質の特性(電荷量統制)上、別途の温度調節器が必ずしも必要ではなくなる。
【実施例】
【0061】
実施例1
MWNT(multi wall nanotube)2mgを100ml蒸留水とガラスビーカーに入れ、Microfluidizer(M−110S)を利用して15,000psi圧力で物理的な分散を行ってCNT分散溶液を得た。そして、硫酸と硝酸を3:1で混合した水溶液を加えて1時間Sonicator(ULH−700)で超音波ミキシングした。次に、NaOH水溶液で中和させた。
【0062】
DMF水溶液にTOABとトルエン10ml、アセトアルデヒド1mlを混合した。硝酸水溶液に0.1gのAgClを添加した。DMF混合溶液と硝酸混合溶液とを混合し、濃いNH3をゆっくり添加してRXを含む混合溶液を準備した。その後、RXを含む混合溶液をNaOHが含まれたMWNTに混合して、80℃、3時間ミキシングして置換反応(Phase Transfer Reaction)させCNT表面にAg粒子が析出されると共に、結合されるようにした。上記の反応させた溶液をアルミニウム膜(anodisc,200nm)を用いたろ過装置を利用してフィルタリングし、濾過物をMEK溶液に分散させた後、バインダー(LG化学、EXP−7)を添加して混合させ本発明にかかる炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物を製造した(図9参照)。
【0063】
比較例1
MWNT(multi wall nanotube)2mgを100ml蒸留水とガラスビーカーに入れ、Microfluidizer(M−110S)を利用して15,000psi圧力で物理的な分散を行ってCNT分散溶液を得た。ここにNMP(n−methylpyrrolidone)10mlを入れ、10時間Sonicator(ULH−700)で超音波ミキシングした。
【0064】
これをアルミニウム膜(anodisc,200nm)を用いたろ過装置を通過させてフィルタリングした後、準備した銀前駆体溶液(硝酸銀5gとブチルアミン4.5mlをトルエン60mlに混合して製造)を次いで通過させてフィルタリングし、CNT−金属ナノ粒子混成物を製造した。
【0065】
これを120℃以下で2時間熱処理した後、これをMEK溶液に分散させ、バインダー(LG化学、EXP−7)を添加して混合させCNT−金属ナノ粒子混合物溶液を製造した。
【0066】
比較例2
MWNT(multi wall nanotube)2mgを100mlMEKとガラスビーカーに入れ、Microfluidizer(M−110S)を利用して15,000psi圧力で物理的に分散を行ってCNT分散液を得た後、バインダー(LG化学、EXP−7)を添加して溶液を製造した。
【0067】
実験例1
実施例1及び比較例1〜2の溶液を3D形状を有するプラスチックハンドル(Urethane)表面に均一にスプレーコーティングした。これをウレタン(Urethane)ハンドルのDereadation変形温度を考慮して100℃以下で2時間乾燥した後、ハンドルの3ポイント(図10及び図11参照)に亘り表面抵抗測定器(MCP−HT450)で2回反復測定し、結果を表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
このように、炭素ナノチューブだけを単独で使用する場合(比較例2)、106以上と面抵抗値が高く発熱ハンドルとして具現するには不利で、CNT−金属ナノ粒子混合物の場合(比較例1)は、Agの分散程度が均一でないため、測定による値の揺れが大きいことが確認できた。つまり、発熱素材として使用するためには、CNT−金属ナノ粒子複合物状態で利用して初めて、表面の均一な抵抗値を有するようになる。
【0070】
実験例2
本発明にかかる実施例1により作られたハンドルに革を被せて完成品を形成させた後(図11参照)、IT6720Power Supplyを利用してDC12ボルトを印加して温度上昇テストを行った。比較例1により作られたハンドルに革を被せて完成品を形成した後、IT6720Power Supplyを利用してDC12ボルトを印加してみたが、2分で温度が上昇した後、ショートが起こり作動しなかった。また、比較例2はDC12ボルトでは電流が流れなかった。
【0071】
実験例3
本発明にかかる実施例1により作られたハンドルに革を被せて完成品を形成させた後、−20℃の低温チャンバーで6時間放置して冷却させた。その後、製品を25℃の常温に取り出してIT6720Power Supplyを利用してDC12ボルトを印加して熱電対(thermocouple)でハンドル表面の温度変化を測定した。図12の耐久性テスト結果のように、1分で25℃以上の温度に上昇してハンドル表面から温熱が感じられ始め、5分が過ぎた時点で約35℃に達した。15分以内に40℃に達しなければならないヒーティングハンドル規格(ES56110−05)を満たし、ハンドルの一定の温度を維持させるPIDコントローラーを除去した状態での長期安定性テストの結果、50〜53℃を維持すると共に、火災や革表面の変形が起きなかった。
【符号の説明】
【0072】
110:コア、120:合成樹脂部、130:炭素ナノチューブ発熱コーティング層、131:電極、140:カバー、150:転写層、160:外部コーティング層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭素ナノチューブが分散された炭素ナノチューブ分散溶液を製造する工程;
b)前記a)の炭素ナノチューブ分散溶液を酸処理する工程;
c)前記b)の炭素ナノチューブ分散溶液を中和処理する工程;及び
d)前記c)の炭素ナノチューブ分散溶液と金属粒子を含む金属溶液を混合して、炭素ナノチューブ表面に金属粒子を結合させる工程を含む方法によって製造される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項2】
前記a)の炭素ナノチューブは、MWNT(multi wall nanotube);TWNT(Thin wall nanotube);及びSWNT(single wall nanotube)から選ばれた1種以上である請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項3】
前記a)で分散溶液は、前記炭素ナノチューブを溶媒に分散させて製造したものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項4】
前記b)では、硝酸、硫酸、塩酸、及び過塩素酸から選ばれた1種以上を添加して酸処理するものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項5】
前記c)では、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を添加して中和処理するものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項6】
前記c)では、前記b)の炭素ナノチューブ分散溶液と水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を超音波を利用して混合するものである請求項5に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項7】
前記d)において金属粒子を含む金属溶液は、
溶媒;
TOAB、1,2−ジクロロベンゼン(1,2−dichlorobenzene)、N−メチルピロリドン(NMP:N−methlypyrrolidone)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N−dimethylformamide)から選ばれた1種以上に、ホルムアルデヒド(formaldehyde)又はアセトアルデヒド(acetaldehyde)を混合した溶液;及び
Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Niの塩から選ばれた1種以上の金属塩
を混合して製造したものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項8】
前記d)において、炭素ナノチューブ表面にある金属粒子は、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Ni及びCu/Niから選ばれた1種以上である請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項9】
前記d)で得られた溶液を、MEK、MIBK、アセトン(acetone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、ケトン系溶液、ブトキシエチルアセテート(butoxyethyl acetate)、ブチルカルビトールアセテート(BCA:butyl carbitol acetate)及びアセテート系溶液から選ばれた1種以上に分散させて分散溶液を製造する工程;及び前記分散溶液とバインダーを混合させる工程をさらに含む方法によって製造される請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項10】
操向ハンドルの剛性を維持するコアと、前記コアの外側部に形成された合成樹脂部と、前記合成樹脂部の外側面に、請求項1〜9のいずれかに記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層と、前記炭素ナノチューブ発熱コーティング層に電気的に連結されて発熱を誘導する電極を含むことを特徴とする発熱操向ハンドル。
【請求項11】
前記炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側にはカバーが覆われていることを特徴とする請求項10に記載の発熱操向ハンドル。
【請求項12】
前記カバーは、革、布及びPU(ポリウレタン)から選ばれたいずれかからなることを特徴とする請求項11に記載の発熱操向ハンドル。
【請求項13】
前記炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側には、水圧転写工法による転写層が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の発熱操向ハンドル。
【請求項14】
前記転写層外側には、外部コーティング層が形成されていることを特徴とする請求項13に記載の発熱操向ハンドル。
【請求項1】
a)炭素ナノチューブが分散された炭素ナノチューブ分散溶液を製造する工程;
b)前記a)の炭素ナノチューブ分散溶液を酸処理する工程;
c)前記b)の炭素ナノチューブ分散溶液を中和処理する工程;及び
d)前記c)の炭素ナノチューブ分散溶液と金属粒子を含む金属溶液を混合して、炭素ナノチューブ表面に金属粒子を結合させる工程を含む方法によって製造される炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項2】
前記a)の炭素ナノチューブは、MWNT(multi wall nanotube);TWNT(Thin wall nanotube);及びSWNT(single wall nanotube)から選ばれた1種以上である請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項3】
前記a)で分散溶液は、前記炭素ナノチューブを溶媒に分散させて製造したものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項4】
前記b)では、硝酸、硫酸、塩酸、及び過塩素酸から選ばれた1種以上を添加して酸処理するものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項5】
前記c)では、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を添加して中和処理するものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項6】
前記c)では、前記b)の炭素ナノチューブ分散溶液と水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化アンモニウム水溶液から選ばれた1種以上を超音波を利用して混合するものである請求項5に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項7】
前記d)において金属粒子を含む金属溶液は、
溶媒;
TOAB、1,2−ジクロロベンゼン(1,2−dichlorobenzene)、N−メチルピロリドン(NMP:N−methlypyrrolidone)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N−dimethylformamide)から選ばれた1種以上に、ホルムアルデヒド(formaldehyde)又はアセトアルデヒド(acetaldehyde)を混合した溶液;及び
Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Niの塩から選ばれた1種以上の金属塩
を混合して製造したものである請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項8】
前記d)において、炭素ナノチューブ表面にある金属粒子は、Ag、Pt、Pd、Au、Cu、Ni、Al、Ag/Cu、Ag/Ni及びCu/Niから選ばれた1種以上である請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項9】
前記d)で得られた溶液を、MEK、MIBK、アセトン(acetone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、ケトン系溶液、ブトキシエチルアセテート(butoxyethyl acetate)、ブチルカルビトールアセテート(BCA:butyl carbitol acetate)及びアセテート系溶液から選ばれた1種以上に分散させて分散溶液を製造する工程;及び前記分散溶液とバインダーを混合させる工程をさらに含む方法によって製造される請求項1に記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物。
【請求項10】
操向ハンドルの剛性を維持するコアと、前記コアの外側部に形成された合成樹脂部と、前記合成樹脂部の外側面に、請求項1〜9のいずれかに記載の炭素ナノチューブ−金属粒子複合組成物がコーティング形成された炭素ナノチューブ発熱コーティング層と、前記炭素ナノチューブ発熱コーティング層に電気的に連結されて発熱を誘導する電極を含むことを特徴とする発熱操向ハンドル。
【請求項11】
前記炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側にはカバーが覆われていることを特徴とする請求項10に記載の発熱操向ハンドル。
【請求項12】
前記カバーは、革、布及びPU(ポリウレタン)から選ばれたいずれかからなることを特徴とする請求項11に記載の発熱操向ハンドル。
【請求項13】
前記炭素ナノチューブ発熱コーティング層の外側には、水圧転写工法による転写層が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の発熱操向ハンドル。
【請求項14】
前記転写層外側には、外部コーティング層が形成されていることを特徴とする請求項13に記載の発熱操向ハンドル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−501703(P2013−501703A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524632(P2012−524632)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005041
【国際公開番号】WO2011/021794
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(509286787)エルジー・ハウシス・リミテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】20,Yoido−dong,youngdungpo−gu,Seoul150−721,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005041
【国際公開番号】WO2011/021794
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(509286787)エルジー・ハウシス・リミテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】20,Yoido−dong,youngdungpo−gu,Seoul150−721,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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