説明

炭素ナノチューブ含有燃料電池電極

重合体電解質膜及び直接メタノール燃料電池のための電極は、炭素ナノチューブ及び触媒として活性な金属を含む。一つの態様として、アノード電極は、炭素ナノチューブに触媒金属を付着させ、その炭素ナノチューブを膜に形成することにより製造する。炭素ナノチューブを含むアノード電極は、遥かに多量の白金付着量を有する慣用的炭素系電極材料よりも、遥かに少ない金属付着量で一層高度の燃料電池性能を与える。別の態様として、炭素ナノチューブ及び触媒金属付着炭素粉末を含む触媒インクを用いて電極膜が形成されている。炭素ナノチューブ及び触媒付着炭素粉末を含む触媒インクは、場合によりイオン伝導性重合体、例えば、ペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体を含んでいてもよい。別の態様として、炭素ナノチューブ及び触媒として活性な金属を含む燃料電池電極は、自立した電極である。膜電極組立体の別の態様として、炭素ナノチューブは、触媒付着電極と、重合体電解質膜との間に挟まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に炭素ナノチューブ含有燃料電池に関し、特に炭素ナノチューブ含有燃料電池電極及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料を電気及び反応生成物へ転化する電気化学的装置である。重合体電解質膜(PEM)燃料電池としても知られているプロトン交換膜燃料電池(PEM又はPEMFC)は、それらの高い電力密度、単位重量又は単位体積当たり出入りして或る量のエネルギーが移動できる速度、低い作動温度、速い応答時間、便利な電池設計のため、最も有望な型の燃料電池の一つである。典型的なプロトン交換燃料電池は、二つの電極、アノード電極とカソード電極との間にプロトン電動性電解質膜を挟んだものからなる。固体重合体電解質膜を使用することにより、液体電解質燃料電池に伴われる腐食及び安全性の問題が解消される。アノード及びカソード電極は、多孔質炭素材料に支持された白金金属含有触媒から慣用的に製造されてきた。
【0003】
特定のプロトン交換膜により、PEM燃料電池は約50〜200℃の範囲に亙って作動することができるが、典型的には約70〜150℃の範囲で作動する。それらの作動温度が低いため瞬間的に始動する。最大電力の約50%は室温で直ちに利用することができる。
【0004】
水素がPEM燃料電池の燃料である場合、水素が酸化されて水を形成し、直流電力を生ずる。水素はアノードへ供給され、そこで白金のような触媒が次の反応:
アノード反応: 2H→4H+4e
に触媒作用を及ぼす。
【0005】
アノードでは、水素が水素イオン(プロトン)と電子に分離する。プロトンはアノードからプロトン交換膜を通ってカソードへ移動する。電子は、アノードから、電気の形で外部回路を通って移動する。酸素又は酸素含有空気の形の酸化剤は、カソードへ供給され、そこで、それは、膜を通過してきた水素イオンと、外部回路からの電子と反応して、反応副生成物として水を形成する。反応は、白金、又は他の触媒金属と組合せた白金により触媒作用を受けるのが典型的である。カソードでの反応は次の通りである:
カソード反応: 1/2O+4H+4e→2H
【0006】
携帯電力装置のための別の型の燃料電池は、直接メタノール燃料電池(DMFC)である。直接メタノール燃料電池は、プロトン交換膜燃料電池とは、それらが共に電解質として重合体膜を用いている点で類似している。しかし、直接メタノール燃料電池では、アノード触媒それ自体が、液体メタノールから水素を引き出すため、燃料改質器を不必要にしている。メタノールはアノードで電気化学的に酸化され電子を生じ、それら電子は外部回路を通ってカソードへ移動する。メタノールのアノード反応は次の反応によって与えられる:
アノード反応: CHOH+HO→CO+6H+6e
プロトンは重合体電解質膜を通って移動し、次の反応に従いカソードで酸素との還元反応が起きる:
カソード反応: 3/2O+6H+6e→3H
【0007】
DMFCの全反応は、メタノールの燃焼を反映し、次のように示される:
CHOH+3/2O→CO+2H
【0008】
直接メタノール燃料電池は、約50℃〜200℃の範囲に亙る温度で作動することができ、約50℃〜90℃の範囲で作動するのが典型的である。一層高い温度では、一層高い効率を得ることができる。同様な燃料電池は、エタノール及びガソリンのような他の燃料で作動することもできる。
【0009】
電極の組成及び構造は、燃料電池の設計及び性能に大きな影響を与える。電極材料の望ましい属性には、就中、大きな表面積及び電気的及び熱的伝導度が含まれる。慣用的PEM燃料電池電極で特に問題になる一つの特徴は、多孔質炭素電極上の白金触媒金属の利用可能な表面積が限定されていることである。一層大きい触媒金属面積を与えることは、屡々触媒付着量(loading)及びそれに付随する触媒コストを一層大きくする結果になる。白金金属を一層微細に分散させることは、一定重量の触媒金属についての触媒表面積を増大し、その利用性を増大することになるであろう。触媒表面積のこの増大は、燃料電池の性能を増大する手段を与え、且つ/又は白金触媒金属の量を減少し、それに伴う燃料電池の触媒コストを低下する手段を与えるであろう。
【0010】
燃料電池電極について、触媒粒子がプロトン交換膜及び電気伝導体に非常に近接して存在し、理想的にはそれらと接触して存在し、触媒粒子が多量の利用可能な表面積を有し、燃料電池電極材料の示す抵抗損失が低いことが特に望ましい。高価な触媒金属の量を最小にし、付随するコストを最小にしながら、一層大きな燃料電池性能を与える電極材料が依然として求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一つの態様は、複数の炭素ナノチューブ及び触媒金属を含むプロトン電解質膜燃料電池電極にある。その複数の炭素ナノチューブは、炭素ナノチューブのマットを形成し、この場合そのマットは平らな領域を有し、1μより大きな厚さを有する。触媒金属は、第VI族元素、第VII族元素、第VIII族元素、銅、銀、金、亜鉛、錫、アルミニウム、及びそれらの組合せからなる群から選択され、炭素ナノチューブのマットと接触している。
【0012】
本発明の別の態様は、燃料電池膜電極を製造する方法にある。その方法は、上で記載したような触媒金属を複数の炭素ナノチューブと接触させて合体し、触媒金属が付随した(associate)複数の炭素ナノチューブを形成し、触媒金属が付随した複数の炭素ナノチューブを含む膜電極を形成することを含む。
【0013】
本発明の別の態様は、プロトン交換膜、アノード電極、カソード電極、及び炭素ナノチューブを含む膜電極組立体(アセンブリ)にある。炭素ナノチューブは、アノード電極とプロトン交換膜との間に位置している。
【0014】
本発明の更に別の態様は、炭素ナノチューブ及び遷移金属を含むインクを調製し、そのインクをプロトン交換膜の一つ以上の側に被覆することを含む、膜電極組立体の製造方法にある。
【0015】
本発明の更に別の態様は、上に記載したような炭素ナノチューブ及び触媒金属を含む触媒インクにある。
【0016】
本発明の更に別な態様は、アノード電極、カソード電極、及びプロトン交換膜を含むPEM燃料電池にある。アノード電極は単層壁炭素ナノチューブを含み、その単層壁炭素ナノチューブは、白金含有金属粒子を支持する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一つの態様として、燃料電池電極は炭素ナノチューブを含み、この場合、その炭素ナノチューブは、それらの末端又は壁構造体(wall structure)の上の一つ以上の官能基によって誘導体化されていてもよく、炭素ナノチューブは燃料電池反応に触媒作用を与えるのに有効な触媒金属を支持する。炭素ナノチューブは単層壁、多層壁、又はそれらの組合せにすることができる。触媒金属は、一種類以上の元素を含むことができ、この場合触媒金属は、燃料電池のような電気化学的電池で触媒的に活性である。
【0018】
別の態様として、PEM燃料電池又は直接メタノール燃料電池(DMFC)にすることができる燃料電池は、炭素ナノチューブを含む一つ以上の電極を含み、この場合それら炭素ナノチューブは、燃料電池の反応に対し触媒として活性な金属粒子を支持し、電極はプロトン交換膜と接触している。単層壁、多層壁炭素、又はそれら組合せにすることができる炭素ナノチューブは、製造されたままのものでもよく、又は官能基で誘導体化することもできる。触媒金属は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)を含めた第VI族、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、及びレニウム(Re)を含めた第VII族、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)を含めた第VIII族、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、又はそれらの組合せからなる群から選択された金属を含むことができる。
【0019】
一つの態様として、燃料電池膜電極を製造する方法は、複数の炭素ナノチューブに触媒金属を付着させ、触媒金属が付随した複数の炭素ナノチューブを形成し、触媒金属が付随したその複数の炭素ナノチューブを含む膜電極を形成することを含む。単層壁、多層壁、又はその組合せにすることができる炭素ナノチューブは、製造されたままのものであるか、又は官能基により誘導体化することができる。付着は、化学的堆積、電気化学的堆積、蒸発スパッタリング、分子ビームエピタキシ、及びそれらの組合せにより行うことができる。
【0020】
本発明の別の態様は、炭素ナノチューブ及び触媒金属を含む自立した(free-standing)電極を形成する方法にある。そのような電極は、膜の形態をしていてもよく、触媒金属又は触媒金属前駆物質が付着した炭素ナノチューブを含む懸濁物を濾過し、触媒金属又は触媒金属前駆物質が付着した炭素ナノチューブの「バッキーペーパー(buckypaper)」を製造することにより形成することができる。薄いマットに似た「バッキーペーパー」は、液体中に懸濁した少量の炭素ナノチューブを濾過した後に残留する濾滓である。電極膜は、触媒金属粒子又は触媒金属前駆物質が付着した炭素ナノチューブを用いて形成してもよく、或はそれは、別法として、最初に製造し、次にそれに触媒物質を付着させてもよい。付着方法には、溶液からの堆積、電解堆積、真空蒸着、スパッタリング、塗布、溶液による含浸、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0021】
別の態様として、燃料電池膜電極は、炭素ナノチューブ、及び燃料電池反応に触媒作用を与えるのに有効な触媒金属を含む乾燥触媒インクを含む。触媒インクは、更に、炭素粉末、及び場合により特定のプロトン交換膜と両立することができるアイオノマー樹脂を含むことができる。触媒金属は、炭素ナノチューブ上に存在し、もし存在するならば炭素粉末の上、又はそれら両方の組合せの上に存在することができる。別の態様として、膜電極組立体を形成する方法は、プロトン交換膜の表面に触媒インクを適用することを含み、その場合、触媒インクは炭素ナノチューブ及び触媒金属を含む。場合により、触媒インクは、更に炭素ナノチューブ以外の炭素成分及びプロトン交換膜と両立することができるアイオノマー樹脂を含んでいてもよい。触媒インクは、プロトン交換膜に直接適用するか、又はその触媒インクが、膜電極組立体(MEA)で使用されるプロトン交換膜と接触するように他の表面に適用することができる。
【0022】
本発明の別の態様は、液体中に炭素ナノチューブを入れた懸濁物を含む触媒インクから燃料電池電極を形成する方法にあり、この場合、炭素ナノチューブは、触媒金属粒子又は触媒金属前駆物質を支持するか、又はそれらと接触している。燃料電池用途のために、電極は、プロトン電解質膜(PEM)、ガス拡散層(GDL)のような燃料電池部品、又はそれらの組合せの上に直接触媒インクを付着させることにより形成してもよい。懸濁用液体は、水性又は有機溶媒、又はそれらの組合せにすることができる。ガス拡散層のような燃料電池の別の部品上に触媒インクを付着させたならば、次にそのGDLの触媒インク側を、膜電極組立体を形成した時にプロトン交換膜と接触するように配置する。PEM又は他の燃料電池部品への触媒インクの付着は、インクを付着させるどのような効果的な手段によって行なってもよく、そうすることができる。そのような技術には、塗布、噴霧、昇華、電解堆積、遠心分離、濾過、GDLのような燃料電池部品を用いた懸濁物の濾過、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0023】
本発明の別の態様は、触媒を持たない炭素ナノチューブの層をプロトン交換膜及び電極と接触させたPEM燃料電池にある。炭素ナノチューブは、単層壁、多層壁、又はそれらの組合せにすることができる。炭素ナノチューブ層は、プロトン交換膜と接触させ、燃料電池触媒金属を含むアノード材料をその炭素ナノチューブ層と接触させる。炭素ナノチューブ層は、プロトン交換膜と同じか又はそれと両立することができるアイオノマーを含んでいてもよい。その層は、ナノチューブ及び場合によりアイオノマー樹脂を液体と混合し、それらナノチューブをPEMの表面に適用し、液体を蒸発させることにより製造することができる。電極材料は、ナノチューブ層と接触させ、触媒インクとして、又は自立した電極としてナノチューブ層へ適用し、加圧及び場合により加熱して接着させることができる。
【0024】
燃料電池電極中の炭素ナノチューブは、電極への触媒金属付着量が遥かに低い安価な新しい燃料電池設計を行える見込みを与える。例えば、炭素ナノチューブ、特に単層壁炭素ナノチューブを使用することにより、電極材料に大きな電気伝導度を与え、それにより電極に対する複数の電気接点を持たない燃料電池の製造を可能にする。単層壁炭素ナノチューブのマットの伝導度及び気孔率は、燃料電池双極板及びガス拡散層の機能のような複数の機能を果たすことができ、それによりそれら部品を省略することができ、一層簡単でコストの低い燃料電池の設計を与えることができる。
【0025】
図面の簡単な説明
図1は、重合体電解質膜(PEM)燃料電池の模式的図である。
【0026】
図2は、本発明の一つの態様に従い製造されたアノード電極を用いたPEM燃料電池の性能を示すグラフ、及び市販のアノード材料を用いた燃料電池の性能を示すグラフである。
曲線Aは、2mgの単層壁炭素ナノチューブを含み、平面状PEMの面積1cm当たり7.61μmPtの触媒金属付着量を有するアノード電極を用いたPEMFCの性能を示している。
曲線Bは、平面状PEMの面積1cm当たり400μmPtの触媒金属付着量を有する市販E−TEKアノード電極を用いたPEMFCの性能を示している。
【0027】
図3は、本発明の一つの態様に従い製造されたSWNT上に支持されたPtを含む異なったアノード電極を有するPEM燃料電池の性能と、市販のアノード材料を用いた燃料電池の性能とを比較するグラフを示している。
曲線Aは、1mgの単層壁炭素ナノチューブを含み、平面状PEMの面積1cm当たり3.80μmPtの触媒金属付着量を有するアノード電極を用いたPEMFCの性能を示している。
曲線Bは、2mgの単層壁炭素ナノチューブを含み、平面状PEMの面積1cm当たり7.61μmPtの触媒金属付着量を有するアノード電極を用いたPEMFCの性能を示している。
曲線Cは、4mgの単層壁炭素ナノチューブを含み、平面状PEMの面積1cm当たり15.22μmPtの触媒金属付着量を有するアノード電極を用いたPEMFCの性能を示している。
曲線Dは、8mgの単層壁炭素ナノチューブを含み、平面状PEMの面積1cm当たり30.44μmPtの触媒金属付着量を有するアノード電極を用いたPEMFCの性能を示している。
曲線Eは、平面状PEMの面積1cm当たり400μmPtの触媒金属付着量を有する市販E−TEKアノード電極を用いたPEMFCの性能を示している。
【0028】
図4は、異なった構造を有する水素/酸素PEM燃料電池の性能を比較したグラフを示している。
曲線Aは、単一壁炭素ナノチューブを添加していない触媒インクから製造した電極を用いたPEMFC電池の性能を示している。
曲線Bは、市販MEA(E−TEK)を用いたPEMFCの性能を示している。
曲線Cは、アノード及びカソード電極の触媒インクが、単層壁炭素ナノチューブを含んでいる場合の燃料電池の性能を示している。
曲線Dは、アノード電極だけの触媒インクが単層壁炭素ナノチューブを含む場合のPEMFCの性能を示している。
【0029】
図5は、本発明の一つの態様に従い、25℃で1Mのメタノールにより作動する直接メタノール燃料電池(DMFC)の性能を比較するグラフである。
曲線Aは、ナフィオン(NAFION)PEM及び標準Pt−Ru触媒インクを用いて作成したアノード電極を有するDMFCの性能を示している。
曲線B、C、及びDは、ナフィオンと混合した単層壁炭素ナノチューブの層を、ナフィオンPEMと、標準Pt−Ru触媒インクを用いて作成したアノード電極との間に有するDMFCの性能を示している。
【0030】
図6は、本発明の一つの態様に従い、50℃で1Mのメタノールを用いて作動するDMFCの性能を比較したグラフを示している。
曲線Aは、ナフィオンPEM、及び標準Pt−Ru触媒インクを用いて作成したアノード電極を有するDMFCの性能を示している。
曲線B及びCは、ナフィオンと混合した単層壁炭素ナノチューブの層を、ナフィオンPEMと、標準Pt−Ru触媒インクを用いて作成したアノード電極との間に有するDMFCの性能を示している。
【0031】
図7は、本発明の一つの態様に従い、30℃で3Mのメタノールを用いて作動するDMFCの性能を比較したグラフを示している。
曲線Aは、ナフィオンPEM、及び標準Pt−Ru触媒インクを用いて作成したアノード電極を有するDMFCの性能を示している。
曲線Bは、ナフィオンと混合した単層壁炭素ナノチューブの層を、ナフィオンPEMと、標準Pt−Ru触媒インクを用いて作成したアノード電極との間に有するDMFCの性能を示している。
【0032】
特定の態様についての詳細な記述
典型的重合体電解質膜(PEM)燃料電池の図解を、図1に示す。この型の燃料電池では、水素・酸素燃料電池の水素のような燃料ガス又は燃料ガス混合物は、アノード側双極板101中の導入供給ガスチャンネル102中に入り、アノード側ガス拡散層103を通って拡散し、触媒含有アノード電極104に入る。燃料電池酸化反応に触媒作用を及ぼすのに有効な白金又は他の遷移金属、又は金属の組合せのような触媒粒子を含むアノード電極104の中で水素がプロトンと電子に解離する。アノード電極とカソード電極との電位の差は、電子をアノード電極104から電流として、電気負荷100を有する外部電気回路を通って流し、カソード電極204へ戻す駆動力を与える。解離した水素から発生したプロトンは、アノード電極104を出て、重合体電解質膜105を通ってカソード電極204へ移動する。アノードと同じか又は異なるカソード電極204も、燃料電池還元反応に触媒作用を及ぼすのに有効な白金又は他の遷移金属、又は金属の組合せのような触媒粒子を含んでいる。水素・酸素燃料電池では、酸素、又は空気のような酸素含有ガスがカソード側双極板201のガスチャンネル202へ入り、カソード側ガス拡散層203を通って拡散し、カソード電極204の中に入る。前に引用した触媒粒子を含むカソード電極204では、カソード側双極板201に入った酸素、重合体電解質膜105を通って移動してきたプロトン、及び電気負荷100を通過してきたアノード電極104からの電子から水が形成される。形成された水は、次にカソード側ガス拡散層203を通って移動し、カソード側双極板201中のチャンネルを通って出る。重合体電解質膜及び電極からなる燃料電池の部分は、屡々「膜電極組立体」又はMEAと呼ばれている。
【0033】
本発明の態様は、アノード電極、カソード電極、又はそれらの両方に炭素ナノチューブを配合することによりPEM燃料電池の性能を向上させる手段を与える。向上した性能を持つことにより、一層小さくコストの低い燃料電池を与える結果になる設計変更を達成することができる。
【0034】
本発明の一つの態様では、燃料電池電極又は燃料電池構造中へ配合される炭素ナノチューブは、単層壁ナノチューブである。単層壁炭素ナノチューブ(SWNT)は、典型的には、六角形及び五角形に配列されたsp-混成炭素原子から本質的になる中空、管状フラーレン(fullerene)分子である。単層壁炭素ナノチューブは、約0.7nm〜約3.5nmの範囲の直径及び通常約50nmより大きい長さを有する。単層壁炭素ナノチューブは、大きな強度、靭性、熱及び電気伝導度を含めた例外的な物理的性質を有する。
【0035】
本発明の別の態様として、燃料電池又は燃料電池構造中へ配合される炭素ナノチューブは、多層壁炭素ナノチューブになっていてもよく、それらは単層壁炭素円筒を2本以上入れ子状態にした炭素円筒に似ている。多層壁炭素ナノチューブは単層壁炭素ナノチューブに類似した性質を有するが、単層壁炭素ナノチューブは、一般に欠陥が一層少なく、それらを一層強固なものにしており、典型的には、同じ直径の多層壁炭素ナノチューブよりも大きな伝導性を有する。単層壁炭素ナノチューブは、多層壁炭素ナノチューブよりも遥かに欠陥を受けにくいと考えられる。なぜなら、多層壁炭素ナノチューブは、隣り合った円筒の不飽和炭素の間に架橋を形成することにより欠陥の混入を許容して残存することができるのに対し、単層壁炭素ナノチューブは欠陥を補償するための隣接壁を持たないからである。
【0036】
単層壁及び多層壁炭素ナノチューブの両方共、大きな電気伝導性を有する多孔質材料を形成することができる。この電気伝導度は、電極構造体中での電気的損失を減少し、一層大きな燃料電池設計の融通性を与えることができる。燃料電池電極構造体中に炭素ナノチューブを配合することにより、燃料電池効率が増大する。この効率の増大が、今度は電池電極組立体から、比電流密度を達成するのに必要な金属触媒の量を減少する。燃料電池電極中に炭素ナノチューブを配合することは、触媒付着量を減少させて燃料電池電流密度を増大する手段を与える。燃料電池電極中に単層壁炭素ナノチューブを入れることは好ましい態様である。一つの態様として、単層壁炭素ナノチューブを含む燃料電池電極は、白金触媒付着量を1/10より低くしながら、匹敵する慣用的電極の電流密度の2倍より大きな電流密度を与える。高度に減少させた触媒付着量で達成されるこの大きな電流密度は、一層効果的で安価な燃料電池を与える結果になる。
【0037】
炭素ナノチューブは、炭素含有供給原料及び金属触媒粒子を用いた接触蒸着(catalytic vapor deposition)、レーザー融除、アーク法、又は炭素ナノチューブを合成するための他の方法のようなどのような既知の手段によっても炭素供給原料から製造することができる。単層壁炭素ナノチューブは、高温高圧一酸化炭素から気相合成により合成することもできる。第VIB族及び/又は第VIIIB族遷移金属のような金属が、単層壁炭素ナノチューブを合成するための一般的触媒である。合成で得られる単層壁炭素ナノチューブは、一般に単層壁炭素ナノチューブ粉末の形になっている。
【0038】
場合により、炭素ナノチューブは、無定形炭素のような非ナノチューブ炭素及び金属触媒残留物を除去するように精製することができる。ナノチューブの合成後、金属残留物は、炭素の黒鉛状殻のような非ナノチューブ炭素で包まれていることがある。金属不純物は、空気との接触により、又は精製中の非ナノチューブ炭素の酸化により酸化されていることもある。
【0039】
精製は、どのような既知の手段によって行なってもよい。単層壁炭素ナノチューブの精製方法は、2002年8月22日に公開された国際特許公報、WO 02/064,869、「単層壁炭素ナノチューブを精製方法及びその組成物」(Process for PurifyingSingle-Wall Carbon Nanotubesand Compositions Thereof)、及び2002年8月22日に公開されたWO 02/064,868、「単層壁炭素ナノチューブの気相精製法及びその組成物」(Gas Phase Process for Purifying Single-Wall Carbon Nanotubes and Compositions Thereof)に関連しており、参考のため全体的にここに入れる。一つの態様として、ナノチューブは、水蒸気を飽和した空気中で250℃に加熱することにより精製する。加熱は、少なくとも幾らかの非ナノチューブ炭素を酸化するような長さの時間行い、或る程度金属不純物を酸化することがある。酸化温度は、200℃〜約400℃、好ましくは約200℃〜約300℃の範囲にすることができる。酸化は、どのようなガス状酸化性雰囲気中で行なってもよく、それら雰囲気は酸素、空気、二酸化炭素、及びそれらの組合せのような酸化性ガスを含むことができる。酸化性ガスの濃度は、窒素、アルゴンのような不活性ガス、又はそれらの組合せと混合することにより調節し、制御することができる。酸化処理の時間は、酸化剤、その濃度、及び酸化温度により、数分から数日の範囲にすることができる。ナノチューブを酸化加熱した後、ナノチューブを酸で処理し、金属不純物を除去する。一つの態様として、ナノチューブを酸の中に入れてスラリーにする。それら酸は鉱酸、有機酸、又はそれらの組合せにすることができる。ナノチューブをスラリーにし、処理するのに用いることができる酸の例には、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硫酸、発煙硫酸、硝酸、クエン酸、蓚酸、クロロスルホン酸、燐酸、トリフルオロメタンスルホン酸、氷酢酸、一塩基性有機酸、二塩基性有機酸、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。用いられる酸は純粋な酸にすることもでき、或は水性溶媒及び/又は有機溶媒のような液体媒体で希釈してもよい。一般に、水性溶媒が好ましい。金属不純物を除去するためには、濃厚な塩酸水溶液が好ましい。酸処理後、濯ぎによりナノチューブから酸及び不純物を除去する。ナノチューブは、水、有機溶媒、又はそれらの組合せを用いて濯ぐことができる。
【0040】
場合により、炭素ナノチューブは、一つ以上の官能基で誘導体化することができる。炭素ナノチューブの誘導体化は、炭素ナノチューブの末端及び/又は側壁に対する触媒金属物質の化学的結合、キレート化、又は極性吸引(polar attraction)の形成を促進することにより、ナノチューブに触媒金属を支持し易くする。例えば、炭素ナノチューブのカルボン酸官能基は、触媒金属物質を結合するか、キレートするか、極性吸引することができ、金属・ナノチューブの相互作用を促進することができるであろう。ナノチューブの官能基は、触媒金属及び触媒金属前駆物質に対する「ドッキング部位(docking site)」を与え、その結果、支持体の金属付着で反応しなかった金属含有化合物を濯ぎ落とすような支持処理後も、金属はナノチューブと接触したままの状態を保つ。
【0041】
炭素ナノチューブは、それらの末端又は側壁の所で、カルボン酸、アルキル、アシル、アリール、アラルキル、ハロゲン;置換又は非置換チオール;非置換又は置換アミノ;ヒドロキシ;及びOR′(ここで、R′は、アルキル、アシル、アリール、アラルキル、非置換又は置換アミノ;置換又は非置換チオール;及びハロゲンからなる群から選択される);及び線状又は環式炭素鎖で、場合により一つ以上のヘテロ原子で中断され、場合により一つ以上の=O、又は=Sで置換された炭素鎖、ヒドロキシ、アミノアルキル基、アミノ酸、又はペプチドのような官能性で誘導体化することができる。典型的には、アルキル、アシル、アリール、アラルキル基中の炭素原子数は、1〜約30の範囲、或る態様では1〜約10の範囲にある。
【0042】
次の定義をここでは用いる
【0043】
ここで用いる用語「アルキル」には、直鎖及び分岐鎖ラジカルの両方が含まれ、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、それらの種々の分岐鎖異性体が含まれる。鎖は直鎖又は環式、飽和又は不飽和でもよく、例えば、二重結合及び三重結合を含んでいてもよい。アルキル鎖は、例えば一つ以上のハロゲン、酸素、ヒドロキシ、シリル、アミノ、又は他の許容可能な置換基で中断又は置換されていてもよい。
【0044】
ここで用いられる用語「アシル」とは、式、−COR(式中、Rは、例えば、アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン;置換又は非置換チオール;非置換又は置換アミノ、非置換又は置換酸素、ヒドロキシ、又は水素のようなどのような置換基にすることもできる)を有するカルボニル基を指す。
【0045】
ここで用いられる用語「アリール」とは、フェニル、ナフチル、置換フェニル、又は置換ナフチルのような環部分に6〜14個の炭素原子を有する単環式、二環式、又は三環式芳香族基を指し、この場合フェニル又はナフチルの置換基は、例えば、C1−4アルキル、ハロゲン、C1−4アルコキシ、ヒドロキシ、又はニトロであってもよい。
【0046】
ここで用いられる用語「アラルキル」とは、上で論じたような、アリール置換基を有するアルキル基、例えばベンジル、p−ニトロベンジル、フェニルエチル、ジフェニルメチル、及びトリフェニルメチルを指す。
【0047】
ここで用いられる用語「芳香族又は非芳香族環」は、一つ以上のヘテロ原子、例えば、O、S、SO、SO、及びNで中断された又は中断されていない、好ましくは5〜8員環芳香族及び非芳香族環であり、或は環は、例えばハロゲン、アルキル、アシル、ヒドロキシ、アリール、及びアミノで置換されているか、又は置換されていなくてもよい。前記ヘテロ原子及び置換基も、例えば、アルキル、アシル、アリール、又はアラルキルで置換されていてもよい。
【0048】
ここで用いられる用語「線状又は環式」には、例えば、場合により芳香族又は非芳香族環により中断されていてもよい直鎖が含まれる。環式鎖には、例えば芳香族又は非芳香族環が含まれ、それらの環は、例えば、その環の前か又は後にくる炭素鎖に結合されていてもよい。
【0049】
ここで用いられる用語「置換アミノ」とは、一つ以上の置換基、例えばアルキル、アシル、アリール、アラルキル、ヒドロキシ、及び水素で置換されていてもよいアミノを指す。
【0050】
ここで用いられる用語「置換チオール」とは、一つ以上の置換基、例えばアルキル、アシル、アリール、アラルキル、ヒドロキシ、及び水素で置換されていてもよいチオールを指す。
【0051】
炭素電極材料への触媒付着
炭素ナノチューブを与え、場合により精製し、場合によりそれらの末端、側壁、又はそれらの両方に一つ以上の官能基を与えることにより誘導体化した後、燃料電池構造体中へ組込むための電極を製造する。触媒活性を持つためには、電極は、燃料電池反応に有効な触媒金属を含む。触媒金属は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)を含めた第VI族元素、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、及びレニウム(Re)を含めた第VII族元素、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)を含めた第VIII族元素、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、又はそれらの組合せからなる群から選択された金属を含むことができる。好ましくは、触媒金属は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、又はそれらの組合せを含む。一層好ましくは、触媒金属は、Pt、又はPtを含む金属の組合せを含む。
【0052】
触媒金属は、溶液化学的堆積、電気化学的堆積、化学的堆積、物理的蒸着、スパッタリング、分子ビームエピタキシ、又はそれらの組合せにより、炭素ナノチューブの末端、内部、及び/又は外部表面上に付着させることができる。或る態様として、原子、又は重合体のような分子は、分極力、又はファン・デル・ワールス力によるなどして、重合体包み込み(polymer wrapping)のような包み込み、又は静電引力により単層壁炭素ナノチューブに非共有結合的に結合するか、又は接着することができる。触媒金属及び触媒金属含有物質を、非共有結合型誘導体化剤により与えられる化学的吸引力により、非共有結合型誘導体化ナノチューブへ結合することができる。次に、その非共有結合型誘導体化剤を除去し(例えば、加水分解により)、ナノチューブと接触した金属を残すようにしてもよい。他の化学的物質の共有結合型誘導体化及び非共有結合型結合の両方共、触媒金属又は触媒金属前駆物質の炭素ナノチューブへの付着を促進することができる。
【0053】
一つの態様として、触媒金属は、金属状態、好ましくは小さな(Å又はnmの規模の)粒状形態で炭素ナノチューブに付着させることができる。炭素ナノチューブは、生成したままか、非共有結合型で誘導体化されているか、又は一つ以上の官能基により共有結合型に誘導体化することができる。一般に、炭素ナノチューブの誘導体化は、一つ以上の官能基を、炭素ナノチューブの末端部及び/又は側壁に共有結合させることを指すであろう。触媒金属付着法には、金属蒸着、スパッタリング、分子ビームエピタキシ、電子ビーム堆積、電気化学的堆積、例えば、電気メッキ及び電着、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。触媒金属は、炭素ナノチューブと接触させた予め形成された粒子の形態にすることができる。
【0054】
別の態様として、触媒金属は、触媒前駆物質を使用することにより、炭素ナノチューブに付着させてもよい。単層壁炭素ナノチューブは、生成したままのものにするか、非共有結合型誘導体化されているか、又は一つ以上の官能基により共有結合型誘導体化されていてもよい。炭素ナノチューブが官能基で誘導体化されている態様では、触媒含有前駆物質化合物は、官能基と反応させるか、又は錯体化することができる。例えば、誘導体化ナノチューブの官能基は、燃料電池触媒金属又は触媒金属前駆物質と反応するか、又は錯体化することができる。触媒前駆物質付着法には、溶液堆積、初期湿潤、イオン交換、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。付着後、触媒前駆物質を化学的又は物理的方法により処理し、触媒をその触媒として活性な金属状態へ活性化する。そのような処理には、気相還元、化学的反応還元、酸化、熱処理、他の化合物との化学的反応、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0055】
別の態様として、燃料電池電極材料は炭素ナノチューブを含み、この場合ナノチューブには触媒が付着されており、それらナノチューブが、カーボンブラック又は炭素粉末のような別の形態の炭素と混合されている。
【0056】
別の態様として、燃料電池電極材料は炭素ナノチューブを含み、この場合、それら炭素ナノチューブは触媒金属が付着されておらず、ナノチューブはカーボンブラック又は炭素粉末のような別の形態の炭素と混合されており、触媒は、その別の形態の炭素上に付着されている。
【0057】
別の態様として、燃料電池電極材料は炭素ナノチューブを用いて製造され、この場合炭素ナノチューブは触媒金属が付着されておらず、ナノチューブはカーボンブラック又は炭素粉末のような別の形態の炭素と混合されており、触媒金属は、ナノチューブと他の形態の炭素との混合物に付着されている。触媒金属の付着は、化学堆積、電気化学的堆積、化学蒸着、物理的蒸着、スパッタリング、分子ビームエピタキシ、及びそれらの組合せ(それらに限定されるものではない)のようなどのような既知の方法によっても行うことができる。
【0058】
触媒金属粒子が、単層壁炭素ナノチューブ、他の形態の炭素、又はそれら両方の組合せに付着される仕方には無関係に、金属触媒粒子は小さく、即ち、Åか又はnmの規模であるのが好ましい。nm規模の大きさの単層壁炭素ナノチューブは、非常に多数の最適nm規模の微粉砕触媒粒子を支持するための大きな表面積を与える。触媒粒子の大きさは小さいことが重要である。なぜなら、触媒粒子が小さい程、一定量の金属について燃料電池反応のための有効触媒表面積を一層大きくする結果になるからである。一般に、約1nm〜約5nmの触媒粒子直径が好ましい。燃料電池で用いられる白金及び他の触媒金属のような触媒金属は、一般に高価であり、燃料電池の全コストのかなりの部分を占めることがある。有効触媒表面積を最大にすることにより触媒の量を最小にすることは、燃料電池コストを減少するための手段になる。
【0059】
SWNTを含有する自立燃料電池電極
一つの態様として、単層壁炭素ナノチューブ及び触媒金属を含む、例えば膜の形態をした、外的支持がなくても自立した電極層を製造し、PEM又はDMFC燃料電池のための電極として使用する。この電極層は、1μより大きな厚さを有する膜の形態になっているのが好ましい。
【0060】
自立した電極層は、単層壁炭素ナノチューブに触媒金属が付着したそのナノチューブを用いて製造するか、又は単層壁炭素ナノチューブの膜を製造した後に、金属付着物を適用するようにしてもよい。
【0061】
一つの態様として、単層壁炭素ナノチューブ膜は、次のようにした製造することができる。単層壁炭素ナノチューブ懸濁物を濾過する。濾過後、その濾過物は一般にナノチューブの薄い濾滓になっており、乾燥後、その濾過物は、典型的には「バッキーペーパー」として知られているナノチューブの薄いマットになる。バッキーペーパー膜電極を製造する前、又はその間、又はその後で、金属触媒をそれらナノチューブに付着させることができる。触媒は、溶液含浸、初期湿潤、蒸着、電解堆積、予め形成した触媒粒子の堆積、真空蒸着、スパッタリング、塗布、又はそれらの組合せにより付着させることができる。触媒金属は、膜を形成する前にナノチューブに付着させるのが好ましい。
【0062】
一つの態様として、単層壁炭素ナノチューブを含む膜は、カーボンブラック又は炭素粉末のような他の形態の炭素も含んでいる。触媒金属は、単層壁炭素ナノチューブ、場合により他の形態の炭素、又はそれら両方の組合せに付着させることができる。
【0063】
一つの態様として、炭素ナノチューブを含む膜は、燃料電池を組立る前に、燃料電池の一つ以上の部品の表面と接触させる。例えば、炭素ナノチューブ含有膜は、プロトン交換膜の一方の側又は両方の側に接触させることができる。別法として、単層壁炭素ナノチューブを含む膜は、ガス拡散層に接触させ、次にプロトン交換膜の一方の側に接触させることができる。触媒は、ナノチューブを燃料電池部品に接触させる前又は後で単層壁炭素ナノチューブに付着させ、然る後、その膜を部品の間に挟むことができる。触媒金属をナノチューブに付着させるか、又は場合によりナノチューブ/炭素粉末又はカーボンブラックの組合せに付着させ、然る後、電極膜を製造するのが好ましい。
【0064】
別の態様として、単層壁炭素ナノチューブを含む膜電極で、触媒がナノチューブに伴われている膜電極は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のような転写フイルムに適用することができる。そのような場合、そのフイルムの炭素ナノチューブ側をPEM又はガス拡散層(GDL)と接触させ、後で転写フイルムを剥がす。この方法は、熱及び圧力を用いたMEAを製造するのに特に有用である。MEA又はその一部分に保護フイルムを適用し、その組立体を一緒に熱及び圧力をかけてプレスすることができる。組立体をプレスした後、保護フイルムを除去する。
【0065】
別の態様として、燃料電池は、炭素ナノチューブ及び触媒粒子を含む膜を含み、この場合、その膜は電極及びガス拡散層の両方として働く。別の態様として、燃料電池は、炭素ナノチューブ及び触媒粒子を含む膜を含み、この場合その膜は、電極、ガス拡散層、及び双極板として働く。
【0066】
炭素ナノチューブ及び触媒活性金属を含む膜電極は、アノード、カソード、又はそれらの両方として用いることができる。触媒付着量及び特定の触媒金属は、アノードとカソードでは異なっていてもよい。一般に、与えられた燃料電池の電位に必要な触媒金属の量は、カーボンブラック又は炭素粉末のような電極材料と比較して、電極が炭素ナノチューブを含む場合に遥かに少ない。別法として、電極中に単層壁炭素ナノチューブを用いることにより、カーボンブラック又は炭素粉末の場合に対し何分の1かの触媒金属で同様な燃料電池性能を達成することができる。燃料電池膜電極組立体(MEA)は、一般に平面状膜表面積当たりの触媒重量(一般に触媒μg/cm)の関数として、生じた電流密度(一般に水素/酸素燃料電池について0.6Vの電池電位で、電解質膜表面積についてmA/cm)に関連して評価される。
【0067】
重合体電解質膜は、就中、高いプロトン伝導度、化学的及び物理的安定性、低いクロスオーバー透過率、及び強靭な機械的性質を有する材料である。燃料電池膜の作動温度は、PEM材料に大きく依存する。例えば、デュポンにより製造されたナフィオン、ペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体は、一般に100℃より低い温度で作動する。ポリベンズイミダゾール(PBI)系PEM材料は、約600℃までのような一層高温の用途で用いることができる。
【0068】
本発明の一つの態様として、平面状膜面積1cm当たり3.8μmPtの白金付着量を有する単層壁炭素ナノチューブ含有アノード膜電極及びナフィオンN−1135プロトン交換膜を具えたMEAを有する単一積層体水素/酸素燃料電池は、80℃/70℃のT(アノード)/T(カソード)及び30psig/30psigのP(アノード)/P(カソード)で、与えられた電池電流出力を生ずるのに理論的に必要な化学量論的値の2/3.5倍のH/空気流量で、アノードへ水素燃料を、カソードへ空気を供給して70℃で作動させた時、0.6Vの電池電位で、300mA/cmより大きく、一層好ましくは400mA/cmより大きく、一層好ましくは500mA/cmより大きく、一層好ましくは600mA/cmより大きく、一層好ましくは700mA/cmより大きく、一層好ましくは800mA/cmより大きい電流密度を与える。
【0069】
一つの態様として、本発明の水素/酸素燃料電池は、Pt触媒金属粒子を有する単層壁炭素ナノチューブ含有アノード電極及びナフィオンN−1135プロトン交換膜を具えたMEAを含み、この場合、80℃/70℃のT(アノード)/T(カソード)及び30psig/30psigのP(アノード)/P(カソード)で、与えられた電池電流出力を生ずるのに理論的に必要な化学量論的値の2/3.5倍のH/空気流量で、アノードへ水素燃料を、カソードへ空気を供給して70℃で燃料電池を作動させた時の電流密度は、平面状PEM面積について、約1mA/cm/μgPt/cmより大きく、一層好ましくは平面状PEM面積について、10mA/cm/μgPt/cmを越え、一層好ましくは平面状PEM面積について、50mA/cm/μgPt/cmを越え、最も好ましくは、平面状PEM面積について、100mA/cm/μgPt/cmを越えている。
【0070】
別の態様として、本発明は、一つより多くの単一積層燃料電池を含む多重積層燃料電池を含み、この場合、多重積層燃料電池の少なくとも一つの電極は、単層壁炭素ナノチューブ及び触媒金属粒子を含む。
【0071】
触媒粒子の表面積の外に、燃料電池の作動効果性は、燃料のような反応物、触媒金属粒子、及びプロトン伝導性電解質材料の間の三方向接触に大きく依存する。燃料電池電極では、炭素ナノチューブ、特に単層壁ナノチューブは、電気伝導度、単層壁炭素ナノチューブの場合一般に直径が約1nmである個々のナノチューブの小さな物理的大きさ、及び大きなアスペクト比(長さ対直径比)の独特の組合せのために、電池の効果性を大きく増大する。単層壁炭素ナノチューブの小さな直径は、触媒粒子を支持するための非常に大きな表面積(〜1000m/g)を与える。触媒粒子は、端部、内部、及び/又は外側表面を含めた単層壁炭素ナノチューブのどの部分と接触していてもよい。単層壁炭素ナノチューブの大きなアスペクト比は、電極全体に亙って伝導性網状組織を形成し易くする。炭素ナノチューブの屈曲(スパゲッティー状)構造により与えられる伝導性網状組織は、触媒粒子を出入りする電荷輸送を与える。炭素ナノチューブは優れた電子伝導体なので、それらが電極材料中に存在すると、触媒粒子からアノード電極を通り、外部電気回路及び負荷への電子伝導を与える。
【0072】
理論によって支持されることを意味するものではないが、プロトンはナノチューブの表面に沿って移動し、燃料電池電解質と触媒とが直接接触する必要性を減ずることもできる。従って、触媒と電解質との「有効接触面積」は、電解質と接触した単層壁炭素ナノチューブの網状組織と触媒粒子との結合により増大し、それによりアノードでのプロトン・電子再結合速度を減少し、燃料電池の性能を増大する。
【0073】
単層壁炭素ナノチューブの他の物理的性質は、燃料電池の作動に更に効率性を与える。電気伝導度の外に、単層壁炭素ナノチューブの熱伝導度が高いことは、燃料電池の効率にプラスの影響を与える。燃料電池組立体中の温度勾配は性能を低下し、燃料電池の損傷を起こすことがあるので、そのような温度勾配を減少するような仕方で燃料電池を構成することが望ましい。一方又は両方の電極中に高度に熱伝導性の単層壁炭素ナノチューブを配合することは、熱分布を改良し、温度勾配を減少する。
【0074】
単層壁炭素ナノチューブの機械的及び物理的性質も、燃料電池部品の製造に有利である。単層壁炭素ナノチューブの例外的な強度は、小さな(nm規模の)触媒粒子に対する物理的支持を与えるのみならず、自立電極を形成するのに有用な機械的一体性も与える。多層壁炭素ナノチューブ及びカーボンブラックとは対照的に、単層壁炭素ナノチューブは、薄い自立伝導性フイルムを形成し易くする屈曲構造を有する。
【0075】
燃料電池電極組立体中の多孔性は、燃料及び酸化性ガスを支持触媒粒子に到達させるのに望ましい属性である。炭素ナノチューブは、液体及びガスにより浸透することができる構造体にすることができる。或る燃料電池では、水が反応生成物であり、或る燃料電池では水は燃料のための希釈剤であり、そのことはアノード及びカソード両方の電極に存在していてもよいことを意味する。燃料電池電極材料が大きな気孔率及び疎水性の両方をもち、その水が電極中に保持されず、電極のガスを移動させる能力を損なわないようにすることが望ましい。炭素ナノチューブの表面は極めて疎水性であり、マット及び膜のようなガス及び液体透過性形状物へ形作ることができる。炭素ナノチューブ、特に単層壁炭素ナノチューブを含む電極を用いることは、水を使用又は生ずる燃料電池電極内の水の輸送を改良することができる。
【0076】
SWNT含有触媒インクを用いたMEA
本発明の別の態様として、炭素ナノチューブを含む電極を、炭素ナノチューブ及び燃料電池反応に触媒作用を及ぼすのに有効な触媒金属を含む触媒インクを用いて製造することができる。そのようなインクを形成するためには、単層壁炭素ナノチューブが好ましい。重合体電解質膜及び/又はガス拡散層へ直接「触媒インク」を適用することにより、PEM燃料電池電極を製造することができる。PEM燃料電池電極のための慣用的触媒インクは、触媒金属、カーボンブラック、溶媒、及び重合体電解質膜材料と同じか又はそれと両立することができるアイオノマー材料を含むことがある。アイオノマーは、乾燥したインク電極に、電解質材料と同じか又はそれと両立することができるイオン伝導能力を与えるために触媒インクに添加することができる化合物である。重合体電解質膜の一例は、ナフィオン、過フッ素化重合体として市販されている酸(H)型のペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体である(ナフィオンは、E.I.デュポン・ド・ヌマー・アンド・カンパニーの登録商標名である)。相容性アイオノマー材料の一例は、ナフィオン重合体溶液として市販されている酸(H)型のペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体の分散物である。触媒インクは、重合体電解質膜及び/又はガス拡散層に適用した後、乾燥して薄い触媒含有伝導性電極を形成する。
【0077】
本発明の一つの態様として、触媒インクは炭素ナノチューブを含み、それは単層壁、多層壁、又はそれらの組合せにすることができる。インクは、更に溶媒、カーボンブラック、触媒が付随したカーボンブラック、アイオノマー、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。炭素ナノチューブを含む触媒インクを製造するため、炭素ナノチューブの懸濁物を調製する。炭素ナノチューブは、生成したままのものでもよく、或は官能基により非共有結合型誘導体化されるか、又は共有結合型誘導体化されていてもよい。触媒金属は、炭素ナノチューブに付着させることができる。
【0078】
炭素ナノチューブ懸濁物は、それら炭素ナノチューブに触媒金属が付着していてもよく、その懸濁物を塗布、噴霧、蒸着、遠心分離、又はそれらの組合せのような適用方法によりプロトン交換膜に適用することができる。炭素ナノチューブ懸濁物は、ガス拡散部品上で濾過し、得られた形状物が、ガス拡散層の上の単層壁炭素ナノチューブになっているようにすることもできる。単層壁炭素ナノチューブがPEMに適用されているが、それらの上に未だ触媒粒子が存在しない態様では、触媒金属前駆物質を用いた溶液法、蒸着、又は金属状態の触媒を堆積させる電気メッキ法のような(それらに限定されるものではない)どのような既知の手段でも、それにより触媒金属を次に適用する。
【0079】
一つの態様として、炭素ナノチューブを、炭素粉末又はカーボンブラックのような別の形態の炭素と混合し、触媒インクを形成する。もし炭素ナノチューブ及び他の形態の炭素が、それらの上に触媒付着物を持たないならば、触媒金属前駆物質を用いた溶液法、蒸着、又は金属状態の触媒を堆積させる電気メッキ法のような(それらに限定されるものではない)どのような既知の手段でも、それにより触媒金属を次に適用する。
【0080】
別の態様として、触媒金属が全く付着していない炭素ナノチューブを、触媒金属が付着されている炭素粉末又はカーボンブラックのような別の形態の炭素と一緒にする。
【0081】
触媒インク中のアイオノマーは、イオンが電極へ移動するための一層伝導性の通路を与えることができるが、アイオノマーを含有する触媒インクは、僅か数時間から数日間の短い保存寿命しか持たず、特に化学的に安定なものではない。一層安定な触媒インクは、アイオノマーの代わりに炭素ナノチューブを用いて配合することができ、数週間から数カ月の保存寿命を有するインクを与える結果になる。理論によって支持されることを意味するものではないが、炭素ナノチューブ、好ましくは単層壁炭素ナノチューブは、イオンが電極を通って電解質へ移動するための付加的通路を与えることにより伝導機能を果たしているように見える。一つの態様として、炭素ナノチューブを含む触媒インクは、アイオノマー成分を含まない。
【0082】
触媒インクは、触媒金属又は触媒前駆物質が付着した又は付着していない炭素ナノチューブを含むことができるが、炭素ナノチューブは触媒金属又は金属前駆物質を伴っているのが好ましい。触媒金属又は触媒金属前駆物質は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)を含めた第VI族元素、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、及びレニウム(Re)を含めた第VII族元素、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)を含めた第VIII族元素、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、又はそれらの組合せからなる群から選択された金属を含むことができる。好ましくは、触媒金属又は触媒金属前駆物質は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、又はそれらの組合せを含む。一層好ましくは、触媒金属又は触媒金属前駆物質は、Pt、又はPtを含む金属の組合せを含む。DMFC系の場合、アノード電極のための触媒金属は、Pt及びRuを含むのが好ましい。
【0083】
二つの電極の間に重合体電解質膜を含む膜電極組立体(MEA)は、炭素ナノチューブを含む触媒インクを用いて作ることができる。触媒金属が炭素ナノチューブ上に存在するか、又は場合により他の炭素源、又はそれら両方の上に存在することがある炭素ナノチューブ及び触媒金属を、液体中に懸濁し、その液体は有機溶媒、水性系、又はそれらの組合せにすることができる。次に懸濁物を重合体電解質膜上に直接付着させ、電極を形成することができる。付着方法には、塗布、噴霧、昇華、凝集、化学的堆積、電解堆積、遠心分離、部品を用いた懸濁物の濾過、及びそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるものではない。重合体電解質膜にナノチューブ混合物を付着させる代わりに、又はそれに加えて、ガス拡散層にその付着を適用することができる。その場合、炭素ナノチューブが付着したガス拡散層の側を、重合体電解質膜と接触させ、単層壁炭素ナノチューブを含む電極が、ガス拡散層と重合体電解質膜との間に存在するようにする。
【0084】
本発明の別の態様は、炭素ナノチューブに触媒金属前駆物質又は粒子を付着させたそれらナノチューブの懸濁物を含む触媒インクにある。別法として、インクは、プロトン交換膜と同じか又はそれと両立するアイオノマー又は他の化合物を含んでいてもよい。アイオノマーは、プロトン交換膜へのインクの接着を促進し、その膜へのプロトン伝導を促進する。炭素ナノチューブ懸濁物は、スクリーンプリント、噴霧、電気噴霧、転写プリント、浸漬、塗布、及びそれらの組合せのような適用方法によりプロトン交換膜へ適用することができる。
【0085】
触媒インク中に炭素ナノチューブを配合することにより、触媒金属又は金属前駆物質をカーボンブラックのような別の形態の炭素に付着させ、炭素ナノチューブに直接付着させていない場合でも、燃料電池の性能が向上する。理論によって束縛されるものではないが、インクの中に炭素ナノチューブが存在すると、そのインクを用いて形成された電極の伝導度が増大し、インク中の触媒の効果性が増大し、同じ燃料電池性能を達成するのに用いられる触媒付着量を少なくすることができることが明らかである。
【0086】
直接メタノール燃料電池(DMFC)及び純粋又は再生水素によるPEMFC操作を含めた重合体電解質膜含有燃料電池の電極材料に炭素ナノチューブを配合することにより、カーボンブラック又は炭素粉末のような他の形態の炭素を用いた触媒含有電極を用いて作った燃料電池よりも一層高度の性能を与える。
【0087】
電極とPEMとの間にナノチューブ層を有するMEA
本発明の更に別の態様は、プロトン交換膜と電極との間に、それら両方と接触して存在する、触媒金属が炭素ナノチューブには適用されていないそれらナノチューブの層を含む水素PEMFC(純粋又は再生水素を用いて作動する)又はDMFCにすることができるPEM燃料電池にある。炭素ナノチューブは、単層壁、多層壁、又はそれら両方の組合せにすることができる。炭素ナノチューブの層は、プロトン交換膜及び燃料電池反応に触媒作用を与えるための金属を含む電極材料との間に、それらと緊密に接触して配置されている。炭素ナノチューブ層は、プロトン交換膜と同じか又はそれと両方することができるアイオノマーを含んでいてもよい。その層は、ナノチューブ、及び場合によりアイオノマー樹脂と、液体とを混合し、それらナノチューブをPEMの表面に適用し、液体を蒸発させてナノチューブ層を形成することにより製造することができる。一つの態様として、炭素ナノチューブは、水又はイソプロパノールのような溶媒に分散する。超音波又は他の混合手段を用いて、ナノチューブの分散を促進することができる。ナノチューブ/溶媒混合物に、ナフィオン(ペルフルオロビニルエーテルスルホン酸/テトラフルオロエチレン共重合体)のようなアイオノマー樹脂を添加してもよい。DMFC型燃料電池の場合、ナノチューブはアイオノマー樹脂と混合するのが好ましい。理論によって支持されることを意味するものではないが、ナフィオン樹脂は、DMFCのような液体供給型有機/空気燃料電池のための湿潤性を改良する。ナノチューブ層は、PEMの両方の側に適用することができるが、ナノチューブ層をPEMのアノード側に適用し、そのナノチューブ層が、触媒含有アノード材料とPEMとの間に存在するようにするのが好ましい。電極材料は、触媒インクとして、又は自立電極として形成したものとして適用し、圧力、及び場合により熱を加えてナノチューブ層へ接着させることもできる。
【0088】
膜電極組立体(MEA)中の触媒含有アノードとナフィオンPEMとの間に単層壁炭素ナノチューブ/ナフィオン層を組込むことにより、ナノチューブ層を用いずに形成した対照MEAよりも、DMFC系で一層高度の性能を与える。理論によって支持されることを意味するものではないが、ナノチューブによるDMFCの性能の向上は、(1)一つにはカソードの触媒系を被毒させることによりDMFC性能及び電池寿命を低下するメタノールクロスオーバーを減少すること、(2)触媒からPEM、又は電気回路への伝導性通路を与えることにより、電子伝導度及び/又はPEMへのイオン易動度を増大すること、及び(3)熱伝導性を改良して一層よい熱除去を与えること、(それらに限定されるものではない)を含めた多数の因子によるものであろう。
【0089】
特定の燃料電池用途での最適電極効率は、特定の燃料、ガス供給物の圧力及び濃度、温度、電気負荷条件、周囲温度、及び湿度(それらに限定されるものではない)を含めた多数の変数に依存する。最適電極形態は、電極中の触媒濃度、電極密度、及び電極の厚さに依存する。
【0090】
電極が自立しているか、又は触媒インクを用いて製造されているかには無関係に、単層壁、多層壁、又はそれら両方の組合せにすることができる炭素ナノチューブを含む電極は、燃料電池設計に大きな融通性を与える。電極を炭素ナノチューブを用いて形成すると、金属触媒付着量を減少する手段を与え、それはコストを低下することができる可能性を有する。電池性能を更に最適にするために、触媒付着量を勾配を持たせて電極中に配合することもできる。
【0091】
次の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために入れてある。次の実施例の中に記載した技術は、本発明の実施で充分機能を果たすことが発明者により発見された技術を表しており、従って、それを実施するための好ましいやり方を構成していると考えることができることは当業者によって認められるべきである。しかし、当業者は、本発明の開示を見ることにより、本発明の本質及び範囲から離れることなく同じ又は同様な結果を依然として得ることができる多くの変化を、開示した特定の態様で行うことができることを認めるべきである。
【0092】
例1
単層壁炭素ナノチューブ及びPtを含むMEA電極の製造
22.8mgのクロロ白金酸六水和物〔分子量519.9、アルドリッヒ(Aldrich)No.20,608−3〕を10mlのEtOHに溶解し、クロロ白金酸ストック溶液を形成した。クロロ白金酸ストック溶液(184μl)を、2.0mgの精製したHIPCO(登録商標名)単層壁炭素ナノチューブに添加し、その混合物の体積をEtOHを用いて5mlにした。〔HIPCO単層壁炭素ナノチューブは、カーボン・ナノテクリロージズ社(Carbon Nanotechnologies, Inc.)から得られたものであり、HIPCOは、テキサス州ヒューストンのカーボン・ナノテクリロージズ社の登録商標名である〕。クロロ白金酸と混合する前に、単層壁炭素ナノチューブを、空気酸化(〜200−300℃)し、次に約18%のHCl中で一晩ソックスレー抽出して触媒残留物を除去することにより精製した。精製後、ナノチューブ中の残留鉄は、約7重量%Feであった。エタノール希釈クロロ白金酸へSWNTを超音波(2分2秒サイクル、30%負荷サイクル、55%電力出力)により分散し、SWNT懸濁物を形成した。SWNT懸濁物を磁気撹拌しながら4時間50℃に加熱し、白金錯化ナノチューブを形成した。Pt錯化ナノチューブを、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜フィルター〔直径47mm、気孔孔径0.22μm、ミリポアー(Millipore)〕を用いて真空濾過により溶液から分離した。濾過後、Pt錯化ナノチューブは、直径3.7cmの薄い固体フイルムの形をしており、それを「膜電極」と呼ぶ。Pt錯化SWNTの得られた膜電極をEtOH(20ml)で洗浄し、過剰の配位されていないクロロ白金酸を除去した。膜電極を、周囲条件で12時間乾燥した。SWNTへの白金付着量を、ICP−MS(誘導結合高周波プラズマ質量分光)分析により4重量%Ptであることが決定された。
【0093】
例2
SWNT系膜電極組立体(MEA)の製造
プロトン交換膜(PEM)燃料電池で用いられる膜電極組立体(MEA)を、例1に従って製造されたPt錯化SWNTの膜電極を用いて、次のようにして製造した。
【0094】
ナフィオン N−1135、酸(H)型のペルフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)共重合体を、重合体電解質材料(PEM)として用いた。[ナフィオンは、E.I.デュポン・ド・ヌマー・アンド・カンパニーの登録商標名である。ナフィオン膜は、マサチューセッツ州ウォードヒルのアルファー・エザール(Alfa Aesar)から得られた〕。1枚の正方形のナフィオン PEM(3.5in×3.5in×90μm)を、(例1で製造した)Pt錯化SWNTのアノード電極膜と、Pt及び無定形炭素を含むカソード電極材料との間に挟んだ。カソード材料は、PRIMEA(登録商標名)シリーズ55MEAのカソード電極、特にゴアー(Gore)からのPRIMEA5510MEAのカソード電極であった。〔PRIMEAは、メリーランド州エルクトンのW.L.ゴアー・アンド・アソシエーツ社(W.L. Gore & Associates, Inc.)の登録商標名である〕。カソードは0.1mg/cmの白金付着量を持っていた。
【0095】
各膜電極の炭素含有面は、PEMと直接平面状に接触していた。このMEAのアノード及びカソード膜電極は、組立体を、PTFE裏打プラテン(6″×6″×0.25″厚さ)の間で加熱プラテンプレス〔カルバー(Carver)〕により120℃でプレスすることによりPEMへ加熱接着させた。加熱している間に、約83〜85psiに等しい3000ポンドの荷重を約3分間加えて組立体を一緒にプレスした。プレス後、得られたMEAをPTFE裏打プラテンから取り出し、冷却速度を制御するため鋼プラテンの熱的質量(thermal mass)を用いて、二つの鋼プラテンの間でほんの僅かだけプレスしながら、室温へ冷却した。約10分後、SWNT膜電極上の保護フイルム(PVDF支持フイルム)及び無定形炭素膜電極上のPTFE支持フイルムをMEAから剥がした。得られたMEAは、PEMの各平面状表面によく接着したアノード電極及びカソード電極を持っていた。
【0096】
例3
SWNT電極を含む燃料電池
単一積層水素・空気燃料電池を組立て、異なったMEAの電力性能を標準条件で評価した。異なったアノードを用い、PEM及びカソード材料を同じにしながら、例2に従って異なったMEAを製造した。例2に記載したのと同じカソード電極材料、即ち、ゴアーからのPRIMEA5510MEAのカソード電極を用い、0.1mg/cmの白金付着量を持っていた。PEMは90μmの厚さのナフィオン N−1135(アルファー・エザールから得られたデュポンのナフィオン)であった。アノードは、例1及び2に従って製造された白金付着単層壁炭素ナノチューブを含んでいた。夫々のアノードは、例1により、同じバッチの白金付着SWNTから作られた異なった量のSWNTを含んでいた。それらアノードは、異なった量のPt付着SWNTを含んでいたので、それらアノードは異なった厚さを有し、アノードで用いたPt付着量に比例して、電解質膜の平面状領域の単位面積当たり異なった表面白金付着量を持っていた。
【0097】
どの場合でも、例2で与えた手順に従い製造した試験MEAを、触媒を加えないELAT(登録商標名)ガス拡散材料の2枚の同じものの間に挟むことにより、燃料電池を組立た。〔ELATガス拡散材料は、ニュージャージー州サマーセットのE−TEK、ド・ノラ・N.A.社(E-TEK, De Nora N.A., Inc.)から得られた。ELATは、E−TEKの登録商標名である〕。ELATガス拡散材料を用いて、アノード及びカソードの両方の上に、夫々水素及び空気を分布させた。燃料電池を組立たならば、それを自動ガス及び熱調節装置に取付けて、水素燃料及び空気両方の供給物の温度、ガス流量、及び湿度を調節した。燃料電池の電力出力を、固体状態電力調節装置へ接続し、電気負荷を調節した。
【0098】
燃料電池の電力プロファイル(電圧対電流密度出力)を、与えられた電池電流出力を生じさせるのに理論的に必要な化学量論的値の2/3.5倍の水素/空気流量比、70℃の電池温度、80℃のアノード温度、70℃のカソード温度、及びカソード及びアノードの両方への燃料及び空気供給圧力30psigを維持しながら、記録した。与えられた条件下でのこれら測定結果を、図2に示すが、それにより、4重量%Pt付着SWNT系アノードのアノード性能と、市販E−TEK材料〔ELATガス拡散媒体及び平面状表面積について0.4mgPt/cmの白金付着量でのバルカン(Vulcan)XC−72炭素上のPt〕を用いて製造したアノードの性能とを比較することができる。
【0099】
図2は、E−TEK市販Pt付着無定形炭素から製造した水素燃料電池アノード電極と、単層壁炭素ナノチューブを用いて製造した水素燃料電池アノード電極との比較を示している。ナノチューブ含有アノード電極は、記載の試験条件で、0.6Vの電池電位で800mA/cm より大きな電流密度を与えた。単層壁炭素ナノチューブ含有アノード電極に対する表面触媒付着量は、平面状PEM面積について、7.61μgPt/cmであった。図2は、Pt付着無定形炭素系アノードに対し、SWNT系MEAを用いると、0.6Vで電流密度が100%より大きく増大し、アノード性能が著しく高くなることを示している。曲線Aは、2mgの単層壁炭素ナノチューブ及び平面状PEM面積について7.61μmPt/cmの付着量を有するアノード電極を用いたPEM燃料電池の性能を示している。0.6Vの電池電位では、SWNTアノード電極は829mA/cmの電流密度を与えた。曲線Bは、平面状PEM面積について400μmPt/cmの触媒金属付着量を有する市販E−TEKアノード電極を用いたPEM燃料電池の性能を示している。0.6Vの電池電位では、E−TEKアノード電極は364mA/cmの電流密度を与えた。
【0100】
他の電極材料を用いた同様な測定は、最も高い電力性能を得るためには最適SWNT電極質量が存在することを示している。一般に、SWNT材料が少ないMEA構造体が薄くなる程、SWNTアノードを用いて達成される燃料電池の性能は高くなった。1mgのSWNTを含むアノード電極は低い結果を与えたが、これは、それが非常に脆く、MEA製造中に恐らく損傷を受けた事によるものであろう。
【0101】
Pt付着無定形炭素から製造したアノード電極は、平面状電解質膜面積について、約0.88mA/cm/μgPt/cmの効果尺度(0.6Vの電池電位で)を持っていた。2mgのSWNT及び平面状電解質膜について7.61μg/cmを含むアノードを用いて、例1、2、及び3に従い製造したアノード電極は、電解質膜面積について約108mA/cm/μgPt/cmの効果尺度を示している。単層壁炭素ナノチューブを使用すると、0.6Vの電池電位で、電解質膜についてμgPt/cm当たりの電流密度で100倍を越える増大を与えていた。SWNTを含むアノード電極は、実質的に一層少ない白金触媒付着量で一層大きな電流密度を与えた。
【0102】
図3は、SWNTの単位重量当たり同じ白金付着量を有するSWNTを異なった量で含む異なったアノードを用いた燃料電池の性能を示している。異なった量のSWNTを用いているために、PEMの単位面積当たりの白金付着量は、アノードを作るのに用いたPt付着SWNTの量に比例する。全ての燃料電池構造体のためのカソードとして、ゴアーからの触媒付着無定形炭素電極を用いた。カソード材料は、0.1mg/cmの白金付着量を有するゴアーPRIMEA5510のカソード電極であった。燃料電池作動条件は、(与えられた電池電流出力を生ずるのに理論的に必要な化学量論的値の2/3.5倍の)水素/空気流量、電池温度(70℃)、T(アノード)/T(カソード):80℃/70℃、及びP(アノード)/P(カソード):30psig/30psigであった。
【0103】
SWNT系アノードを用いて製造したMEAを有する燃料電池は、与えられた電流密度について、バルカンXC−72に20%のPtが付着したELATを含む、遥かに高い全白金付着量、即ち、平面状膜表面積について400μgPt/cmを有するE−TEKアノードの場合よりも一貫して一層高い電池電位を持っていた。
【0104】
図3は、異なった量のPt付着単層壁炭素ナノチューブを含む異なったアノードについて電池電位の関数としてプロットした燃料電池電流密度を示している。試験条件下で最も高い性能は、膜面積について7.61μgPt/cmを有する2mgのSWNTを用いたアノードを有するMEAにより与えられた。この例は、電流密度プロファイルのような燃料電池の性質が、単層壁炭素ナノチューブの量及び電解質膜面積当たりの触媒付着量に従って変化することを示している。SWNTの量は、電解質の気孔率及び厚さに影響を与え、それが就中、ガス拡散及び熱消散に影響を与えることができる。一般に、SWNT電極が薄い程よい性能を与え、2mgSWNTを含むアノードは、4mgのSWNTを含むアノードよりも一層よい性能を与え、4mgSWNTアノードは、8mgのSWNTを含むアノードよりも一層よい性能を与える。1mgのSWNTを含み、PEM表面積について3.80μgPt/cmを有するアノード電極は、一層よい結果を与えるかも知れないが、その膜は脆く、MEAの製造中に損傷することがあったかも知れない。SWNT系アノードは、全て遥かに高い白金付着量を有する無定形炭素アノード電極よりも一層よい燃料電池性能を与えた。
【0105】
例4
SWNT含有インクを用いて製造した電極を有する燃料電池
単層壁炭素ナノチューブを含むインクを用いて燃料電池電極を製造し、白金付着炭素粉末を用いて製造した電極と比較した。
【0106】
白金付着炭素粉末を含む触媒インクの製造
イソプロピルアルコール/水中に入れたナフィオンの5%溶液(デュポンのナフィオンは、アルファー・エザールから得られた製品番号42118であった)を、氷浴で与えられた温度制御により0℃に維持した7mlのガラス瓶中で混合板上で、1:1(体積:体積)イソプロピルアルコール:水の溶液250mgと混合した。一般的手順として、もし混合物がゲル化し始めたならば、更に125mgのIPA/水溶液を添加してもよい。20%の白金を付着させた25mgの炭素粉末(E−TEKにより製造されたバルカンXC−72)を、ナフィオン混合物にゆっくり添加した。依然として氷浴と接触させながら、混合物を超音波により10分間混合した。混合板上でその混合物を更に30分間混合し、完全な混合を確実に与えた。
【0107】
SWNT及びPt付着炭素粉末を含む触媒インクの製造
イソプロピルアルコール/水中に入れたナフィオンの5%溶液125mg(デュポンのナフィオンは、アルファー・エザールから得られた製品番号42118であった)を、氷浴を用いて0℃に維持した7mlのガラス瓶中で混合板上で、1:1(体積:体積)イソプロピルアルコール:水の溶液250mgと混合した。一般的手順として、もし混合物がゲル化し始めたならば、更に125mgのIPA/水溶液を添加してもよい。2.5mgのHIPCO単層壁炭素ナノチューブ(カーボン・ナノテクノロジーズ社から得られたロット番号P0242)を、20%の白金を付着させた25mgの炭素粉末(E−TEKにより製造されたバルカンXC−72)と混合し、そのナノチューブ/炭素粉末混合物を、ナフィオン混合物にゆっくり添加した。依然として氷浴と接触させながら、混合物を超音波により10分間混合した。混合板上でその混合物を更に30分間混合し、完全な混合を確実に与えた。
【0108】
触媒を含まない炭素で一方の側を被覆したガス拡散織物(E−TEKから得られたSS/NC/V2/ELAT)を用いて、MEAのためのアノード及びカソードを作成した。2.25×2.25cmのELATを切り取り、秤量した(試料表面積は約5cmであった)。4枚までのELAT試料をゴムガスケットを用いて加熱アルミニウムブロック上で一度に被覆した。加熱したブロックは、塗布過程中、溶媒を蒸発させる熱を与えた。電極を製造するため、小さなブラシを用いてELAT織物の炭素被覆側上に触媒インクを一方向に塗布した。インクが乾燥した時、インク被覆試料を加熱ブロックから取り外し、秤量した。電極のための目標Pt付着量は0.5mg/cmであり、それはSWNTを含まない20%のPtを有する炭素については12.5mg、10%のSWNTを含む20%のPtを有する炭素については13.75mgの重量増加に相当していた。
【0109】
希望の付着量(Pt/cm)が達成されるまで、インクの適用を繰り返した。希望のPt付着量が得られた後、ELAT織物ガス拡散層への電極の接着を更に促進するため、5%ナフィオン/IPA溶液の二つの被覆を適用した。
【0110】
図4は、重合体電解質膜にインクを塗布することにより製造したMEA(膜電極組立体)を有する燃料電池の性能を示している。
曲線Aは、5%ナフィオン/イソプロピルアルコール(IPA)溶液、1:1 IPA/水溶液、及びバルカンXC−72(E−TEKにより製造された炭素粉末上20%の白金)の成分を有するインクを用いて製造した電極を有する燃料電池の性能を示している。
曲線Bは、SWNTを含まないバルカンXC−72(炭素粉末上20%のPt)を用いた標準インクに基づく燃料電池の性能を示している。
曲線Cは、10重量%の単層壁炭素ナノチューブを添加した、「曲線A」のインクに基づくアノード及びカソードを有する燃料電池の性能を示している。
曲線Dは、10重量%の単層壁炭素ナノチューブを添加した、「曲線A」のインクに基づくアノードを有する燃料電池の性能を示している。カソードにはSWNTは存在しない。SWNTをアノードインクに添加すると、SWNTのないものよりも一層よい燃料電池性能を与えた。
【0111】
例5
この例は、直接メタノール燃料電池で単層壁炭素ナノチューブを使用した場合を実証する。特に、触媒が付随していないナノチューブ層を、標準触媒インクを用いて製造したアノード電極と、PEM層との間に挟んだ。
【0112】
2mgの精製したHIPCO単層壁炭素ナノチューブを、250mgの水に添加した。ナノチューブの精製は、空気酸化(〜200−300℃)を行い、次に約18%のHClを用いて一晩ソックスレー抽出を行なって触媒鉄残留物を除去することにより行なった。精製後、ナノチューブ中の残留鉄は、約4重量%のFeであった。ナノチューブ/水混合物を氷浴(0℃)中に浸漬し、パルス式に10分間超音波にかけた。ナノチューブ/水混合物に6mgの5%ナフィオン/イソプロピルアルコール/水溶液を添加し、ナノチューブ/ナフィオン溶液/水混合物を、パルス式に更に10分間超音波にかけた。超音波にかけたナノチューブ/ナフィオン溶液/水混合物を、ナフィオンプロトン交換膜(ナフィオン117)へ塗布した。水及びイソプロパノールを、ナノチューブ/ナフィオン混合物から蒸発させた。ナノチューブ/ナフィオンを適用したものが明らかに乾燥した後、そのナノチューブ/ナフィオン適用物の上に標準触媒インクを塗布し、DMFCアノード電極を形成した。
【0113】
標準触媒インクは、触媒としてHISPEC(商標名)6000を用いて製造した。〔HISPECは、60重量%のPt及び30重量%のRu(ルテニウム)を含む粉末合金である。HISPECは、ジョンソン・マッシィー(Johnson Matthey)、PLCの(商標名)である〕。氷浴中に浸漬しながら、39.1mgのHISPEC6000を、パルス式の超音波を10分間用いて313mgの水と混合した。117mgの5%ナフィオン/イソプロパノール/水の溶液を、0℃に保持したHISPEC/水混合物に添加し、パルス式で更に10分間超音波にかけた。得られた触媒インクを用いて、次に約4.4cmの面積を夫々有する四つの電極を塗布し、夫々の電極に2mgの金属/cmの目標金属付着量を与えた。
【0114】
単層壁炭素ナノチューブ層を有する電極及びそれのない電極を、異なった条件下で作動させた直接メタノール燃料電池のアノードとして試験した。
【0115】
図5は、アノードに1モル(M)のメタノール、カソードに空気を25℃(周囲温度)で供給してDMFC系について電池電位対電流密度の性能をプロットしたものを示している。1Mメタノール/空気の流量比は、与えられた電池電流出力を生ずるのに理論的に必要な化学量論的値の7/10倍であった。図5の曲線Aは、SWNT/ナフィオン層を持たない対照アノード電極についてのものである。図5の曲線B、C、及びDは、同じ構造及び出発材料を用いて、PEMと、標準触媒インクアノード電極との間にSWNT/ナフィオン層を用いて3通りに作成したMEAのためのDMFCの性能を表している。PEMと触媒インク電極との間にSWNT層を有するMEAは、標準触媒インクだけを有するMEAよりも、一貫して一層高度の性能を持っていた。
【0116】
図6は、アノードに1Mのメタノール、カソードに空気を50℃(周囲温度で)で供給してDMFC系について電池電位対電流密度の性能をプロットしたものを示している。1Mメタノール/空気の流量比は、与えられた電池電流出力を生ずるのに理論的に必要な化学量論的値の7/10倍であった。図6の曲線Aは、SWNT/ナフィオン層を持たない対照アノード電極についてのものである。図6の曲線B及びCは、同じ構造及び出発材料を用いて、PEMと、標準触媒インクアノード電極との間にSWNT/ナフィオン層を用いて2通りに作成したMEAのためのDMFCの性能を表している。PEMと触媒インク電極との間にSWNT層を有するMEAは、標準触媒インクだけを有するMEAよりも、一貫して一層高度の性能を持っていた。
【0117】
図7は、アノードに3モル(M)のメタノール、カソードに空気を30℃(周囲温度で)で供給してDMFC系について電池電位対電流密度の性能をプロットしたものを示している。3Mメタノール/空気の流量比は、与えられた電池電流出力を生ずるのに理論的に必要な化学量論的値の>7/>10倍であった。図7の曲線Aは、SWNT/ナフィオン層を持たない対照アノード電極についてのものである。図7の曲線Bは、PEMと、標準触媒インクアノード電極との間にSWNT/ナフィオン層を用いたMEAのためのDMFCの性能を表している。PEMと触媒インク電極との間にSWNT層を有するMEAは、標準触媒インクだけを有するMEAよりも、一層高度の性能を持っていた。
【0118】
ここに開示し、特許請求した組成物及び方法は、全て本開示を参照して過度の実験を行うことなく構成及び実施することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい態様に関連して記述されているが、本発明の概念、本質、及び範囲から離れることなく、ここに記載した方法の工程又は工程順序で組成物及び方法に変更を加えることができることは当業者に明らかであろう。特に、化学的に関連した或る薬剤はここに記載した薬剤の代わりに用いても、同じか又は同様な結果が達成されるであろうことは明らかであろう。そのような当業者に明らかな同様な置換及び修正は、全て添付の特許請求の範囲の範囲によって定められた本発明の本質、範囲、及び概念内に入るものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、重合体電解質膜(PEM)燃料電池の模式的図である。
【図2】図2は、本発明の一つの態様に従い製造されたアノード電極を用いたPEM燃料電池の性能を示すグラフ、及び市販のアノード材料を用いた燃料電池の性能を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の一つの態様に従い製造されたSWNT上に支持されたPtを含む異なったアノード電極を有するPEM燃料電池の性能と、市販のアノード材料を用いた燃料電池の性能とを比較するグラフを示している。
【図4】図4は、異なった構造を有する水素/酸素PEM燃料電池の性能を比較したグラフを示している。
【図5】図5は、本発明の一つの態様に従い、25℃で1Mのメタノールにより作動する直接メタノール燃料電池(DMFC)の性能を比較するグラフである。
【図6】図6は、本発明の一つの態様に従い、50℃で1Mのメタノールを用いて作動するDMFCの性能を比較したグラフを示している。
【図7】図7は、本発明の一つの態様に従い、30℃で3Mのメタノールを用いて作動するDMFCの性能を比較したグラフを示している。
【符号の説明】
【0120】
100 電気的負荷
101 アノード側双極板
102 供給ガスチャンネル
103 アノード側ガス拡散層
104 アノード電極
105 重合体電解質膜
201 カソード側双極板
202 供給ガスチャンネル
203 カソード側ガス拡散層
204 カソード電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 複数の炭素ナノチューブで、それらが炭素ナノチューブのマットを形成し、前記マットが平面状領域を有し、前記マットが1μより大きな厚さを有する炭素ナノチューブ、及び
(b) 前記炭素ナノチューブのマットと接触した、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、及びそれらの組合せからなる群から選択された触媒金属、
を含むプロトン電解質膜燃料電池電極。
【請求項2】
炭素ナノチューブが、単層壁炭素ナノチューブ、多層壁炭素ナノチューブ、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
炭素ナノチューブが、官能基により誘導体化されている、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
官能基がカルボン酸基である、請求項3に記載の電極。
【請求項5】
触媒金属が白金を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
触媒金属が白金及びルテニウムを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項7】
触媒金属が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について400μg/cmより少ない量で存在する、請求項1に記載の電極。
【請求項8】
触媒金属が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について100μg/cmより少ない量で存在する、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
触媒金属が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について50μg/cmより少ない量で存在する、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
触媒金属が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について25μg/cmより少ない量で存在する、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
触媒金属が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について10μg/cmより少ない量で存在する、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
電極が、水素/酸素プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)の一部品である、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
a) 電極が水素/酸素PEMFC中の一部品であり、b)触媒金属が白金を含み、c)炭素ナノチューブが単層壁炭素ナノチューブであり、d)電極が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について1mA/cm/μgPt/cmより大きな値を与える、請求項1に記載の電極。
【請求項14】
電極が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について10mA/cm/μgPt/cmより大きな値を与える、請求項13に記載の電極。
【請求項15】
電極が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について50mA/cm/μgPt/cmより大きな値を与える、請求項13に記載の電極。
【請求項16】
電極が、炭素ナノチューブのマットの平面状領域の面積について100mA/cm/μgPt/cmより大きな値を与える、請求項13に記載の電極。
【請求項17】
電極が、直接メタノール燃料電池(DMFC)中の一部品である、請求項1に記載の電極。
【請求項18】
(a) 複数の炭素ナノチューブに、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、及びそれらの組合せからなる群から選択された触媒金属を付随させ、触媒金属が付随した複数の炭素ナノチューブを形成し、そして
(b) 触媒金属が付随した複数の炭素ナノチューブを含む膜電極を形成する、
ことを含む、燃料電池膜電極製造方法。
【請求項19】
炭素ナノチューブを、単層壁炭素ナノチューブ、多層壁炭素ナノチューブ、及びそれらの組合せからなる群から選択する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
複数の炭素ナノチューブを、官能基により誘導体化する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
官能基がカルボン酸基である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
化学蒸着、電気化学的堆積、物理的蒸着、熱的堆積、カソードアーク蒸着、イオンスパッタリング、蒸発スパッタリング、分子ビームエピタキシ、イオンビーム補助蒸着、ジェット蒸着、及びそれらの組合せからなる群から選択された方法により付随させる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
化学的堆積、電気化学的堆積、蒸発スパッタリング、分子ビームエピタキシ、及びそれらの組合せからなる群から選択された方法により付随させる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
触媒金属が白金を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
触媒金属が白金及びルテニウムを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
触媒金属前駆物質の化学的堆積により付随させる、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
触媒金属前駆物質が、クロロ白金酸を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
触媒金属前駆物質を、金属還元に前記触媒金属前駆物質をかけることにより触媒として活性な金属へ転化する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
水素還元、化学的還元、及びそれらの組合せからなる群から選択された方法により金属還元を行う、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
金属還元を、水素還元により行う、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
触媒として活性な金属が、炭素ナノチューブ上に金属粒子の形で存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
塗布、噴霧、昇華、電解堆積、遠心分離、部品を用いた懸濁物の濾過、及びそれらの組合せからなる群から選択された方法により、プロトン交換膜上で形成を行う、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
塗布、噴霧、昇華、電解堆積、遠心分離、部品を用いた懸濁物の濾過、及びそれらの組合せからなる群から選択された方法により、ガス拡散層の上で形成を行う、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
更に、触媒金属が付随した複数の炭素ナノチューブと、アイオノマー樹脂とを混合することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項35】
アイオノマー樹脂が、ペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
プロトン交換膜、アノード電極、カソード電極、及び炭素ナノチューブを含み、然も、前記炭素ナノチューブが、前記アノード電極と前記プロトン交換膜との間に配置されている、膜電極組立体。
【請求項37】
炭素ナノチューブが、単層壁炭素ナノチューブ、多層壁炭素ナノチューブ、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項36に記載の膜電極組立体。
【請求項38】
炭素ナノチューブが、ペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体で被覆されている、請求項36に記載の膜電極組立体。
【請求項39】
膜電極組立体が、水素/酸素PEM燃料電池中に存在する、請求項36に記載の膜電極組立体。
【請求項40】
膜電極組立体が、直接メタノール燃料電池中に存在する、請求項36に記載の膜電極組立体。
【請求項41】
膜電極組立体の製造方法において、
(a) 炭素ナノチューブ及び触媒金属を含むインクを調製し、そして
(b) プロトン交換膜の一つ以上の側に前記インクを被覆する、
ことを含む製造方法。
【請求項42】
炭素ナノチューブを、単層壁炭素ナノチューブ、多層壁炭素ナノチューブ、及びそれらの組合せからなる群から選択する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
インクが、更にペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
触媒金属を、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、及びそれらの組合せからなる群から選択する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
触媒金属が白金を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
触媒金属が白金及びルテニウムを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、及びそれらの組合せからなる群から選択された触媒金属及び炭素ナノチューブを含む触媒インク。
【請求項48】
触媒金属が白金を含む、請求項47に記載の触媒インク。
【請求項49】
触媒金属が白金及びルテニウムを含む、請求項47に記載の触媒インク。
【請求項50】
炭素ナノチューブが、単層壁炭素ナノチューブ、多層壁炭素ナノチューブ、及びそれらの組合せからなる群から選択されている、請求項47に記載の触媒インク。
【請求項51】
更に、アイオノマー樹脂を含む、請求項47に記載の触媒インク。
【請求項52】
アイオノマー樹脂が、ペルフルオロスルホン酸/PTFE共重合体を含む、請求項51に記載の触媒インク。
【請求項53】
インクが、プロトン交換膜と接触している、請求項47に記載の触媒インク。
【請求項54】
インクが、燃料電池の一部品である、請求項47に記載の触媒インク。
【請求項55】
燃料電池が、PEM燃料電池である、請求項54に記載の触媒インク。
【請求項56】
燃料電池が、DMFCである、請求項54に記載の触媒インク。
【請求項57】
アノード電極、カソード電極、及びプロトン交換膜を含み、然も、前記アノード電極が、単層壁炭素ナノチューブを含み、前記単層壁炭素ナノチューブが白金含有金属粒子を支持している、PEM燃料電池。
【請求項58】
カソード電極が、単層壁炭素ナノチューブを含み、前記単層壁炭素ナノチューブが白金含有金属粒子を支持している、請求項57に記載の燃料電池。
【請求項59】
アノード電極中の単層壁炭素ナノチューブが、官能基で誘導体化されている、請求項57に記載の燃料電池。
【請求項60】
カソード電極中の単層壁炭素ナノチューブが、官能基で誘導体化されている、請求項57に記載の燃料電池。
【請求項61】
燃料電池が単一積層燃料電池である、請求項57に記載の燃料電池。
【請求項62】
燃料電池が多重積層燃料電池である、請求項57に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−511927(P2006−511927A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516933(P2005−516933)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034772
【国際公開番号】WO2004/109837
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503332765)カーボン ナノテクノロジーズ インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】