炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法および炭素繊維強化樹脂成形体
【課題】本発明は、厚みのある成形体へも適用可能な機械強度の高い炭素繊維強化樹脂成形体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】(b工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷し、該炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程とを有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【解決手段】(b工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷し、該炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程とを有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法および炭素繊維強化樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を混入した樹脂は機械的強度が高いことから炭素繊維強化樹脂と呼ばれ、航空機やスポーツ用具等の材料として広く使われている。
従来、炭素繊維をマット状にして、または引きそろえて、あるいは織物状に配置してから樹脂を含浸させ、硬化し、成形していた。しかし、その様な製造方法では未だ充分な機械強度を有する炭素繊維強化樹脂成形体を得ることはできていない。そこで原料となる樹脂を改質し、あるいは炭素繊維表面に化学反応を施して成形体の強化を図る試みがなされてきたが、それでもなお充分な機械強度を有する炭素繊維強化樹脂成形体を得ることはできなかった。
【0003】
長繊維束に接着剤を全体的にもしくは部分的に塗布し、接着剤が硬化する前に長繊維束にその伸延方向に沿って一定の張力を加え、該接着剤が硬化した後に一定の張力を開放した長繊維強化プラスチック補強体が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。ここで得られた補強体は、コンクリート板等を固定するためのロープないし線状物であって、長繊維束を接着固定して製造した繊維状物である。従って、樹脂成形体としての利用を図るものでないばかりか、樹脂成形体の強度を向上させるための繊維と樹脂との界面接着技術については何ら言及されていない。
【0004】
一方、炭素繊維強化樹脂成形体に電子線を照射して強度の向上を図ることが検討されている(例えば、特許文献2参照。)。その方法は表面から破壊が開始される場合の疲労強度や衝撃強度の改良には適しているが、電子線による効果は表面から200μm程度の厚さ迄であることから、より厚い成形体の強度改善にはさらに別の方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2003-268983号公報
【特許文献2】特開2002-371461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、厚みのある成形体へも適用可能な機械強度の高い炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を検討し、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維を用い、該炭素繊維に張力を負荷した状態で硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させることにより、厚みのある成形体へも適用可能な機械強度の高い炭素繊維強化樹脂成形体を製造できることを見出し発明を完成させた。
すなわち本発明は、
(b工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法である。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法はb工程の前工程としてさらにa工程を含むことが好ましい。すなわち、
(a工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程と、
(b工程)a工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法が好ましい。
【0007】
本発明には上記炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法により製造した炭素繊維強化樹脂成形体を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は厚みのある成形体へも適用が可能であり、得られる炭素繊維強化樹脂成形体は破壊時の最大応力や破壊歪みが増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は下記b〜d工程を有する;
b工程:硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程、
c工程:b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程、
d工程:c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程。
【0010】
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法はb工程の前にa工程をさらに有することが好ましい;
a工程:硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程。
【0011】
なお、a工程が存在する場合にはb工程は必ずa工程の後に行われる。
本発明に用いる炭素繊維としては原料としてポリアクリロニトリル、石油ピッチ、フェノール樹脂、レーヨン等を紡糸して製造した繊維に熱処理を施して得た繊維が使用でき、特にアクリル系繊維から製造した炭素繊維が好ましい。
【0012】
該炭素繊維としては、繊維径が5〜15μmの範囲であることが好ましい。
本発明に用いる炭素繊維としてはフィラメントを用いてもよいが、取扱容易性の観点からフィラメントを3,000〜20,000本程度に束ねたストランド状で用いることが好ましい。
【0013】
また本発明において炭素繊維はその補強効果の観点から、各炭素繊維が成形体中に均一に配置されていることが好ましいが、各炭素繊維一本一本を成形体中に均一に配置することは作業効率や取扱容易性に劣る。よって本発明の成形体としては、ストランド状の炭素繊維を用い、該ストランド状の炭素繊維を成形体中に均一に配置することが取扱容易性および補強効果に優れ、特に好ましい態様である。
【0014】
本発明において得られる炭素繊維強化樹脂成形体中に占める炭素繊維の含量は、通常は0.2〜70vol%、好ましくは0.5〜60vol%、より好ましくは0.7〜50vol%である。炭素繊維含有量が上記範囲内にある炭素繊維強化樹脂成形体は、高い樹脂補強効果を示す。
【0015】
以下a〜d工程についてより詳細に説明する。
[a工程]
a工程とは、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程である。ここで硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)とは特に限定はないが、例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてアミン類、具体的には変性脂肪族ポリアミンを用いた組成物、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂、硬化剤としてメチルエチルケトンパーオキサイドのような過酸化物を用いた組成物、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂、硬化剤としてアミン類、具体的にはヘキサメチレンテトラミンを用いた組成物が挙げられる。
【0016】
炭素繊維の表面を被覆する方法としては特に限定はないが、例えば実施例で用いた図1に示す炭素繊維表面被覆装置を用いることが簡便である。図1に示した装置を用いてストランド状の炭素繊維の表面を被覆する際には、容器(26)中に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)を入れ、第1のロール(20)と第3のロール(24)との間、および第2のロール(22)と第3のロール(24)との間で炭素繊維(30)を挟みこみ、第1〜3のロールによって炭素繊維(30)を移動させることにより、繊維間に存在する空気泡を除去し、かつ繊維表面への樹脂組成物の親和性を高め、その結果、炭素繊維表面を硬化剤含有樹脂組成物で均一に被覆することができる。ここで繊維表面に空気泡が残存していると、本発明で得られる炭素繊維強化樹脂成形体の強度が低下する傾向がある。
【0017】
[b工程]
b工程とは、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、該炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程である。張力を負荷する方法としては特に限定されないが、例えば実施例で用いた図2に示す成形体製造装置を用いることが好ましい。図2に示した装置を用いて張力を付加する際には、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維(ストランド)(10)の位置を固定具(6、7)で固定し、ボルト(4)で張力を負荷することおよび張力を調節することができる。
【0018】
炭素繊維に負荷する張力は炭素繊維の種類および樹脂の種類によって異なり、一概には決まらないが、後述する実施例では、使用した炭素繊維のストランドに対して、5〜15kgfの範囲で張力を負荷したときに、炭素繊維による樹脂への高い補強効果が認められた。
【0019】
硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する方法としては、図2に示す成形体製造装置のようにあらかじめ硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を流し込むための成形型を設けておき、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に張力を付加した後に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を流し込む方法が簡便であり好ましい。硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)としては特に限定はないが、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)と同じ種類が好ましい。
【0020】
また前記硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)は、b工程の時点では部分硬化した状態であることが好ましく、完全硬化した状態ではないことが好ましい。ここで部分硬化とは
、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)の一部が硬化した状態であり、完全硬化とは熱を加えてもこれ以上硬化が進まない状態である。
【0021】
通常a工程からb工程へ移行する間に樹脂の硬化反応は進行し、未硬化状態から部分硬化状態へと変わっていくので、この間の時間および温度を調整することによって硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)の硬化状態を次のc工程に適切な部分硬化状態へと制御することができる。
【0022】
[c工程]
c工程とは、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程である。
【0023】
またc工程においては、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)も同様に硬化させる必要がある。硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)と、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)とが同様の樹脂組成物である場合には、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)が硬化する条件で硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)も硬化することができる。硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)と、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)とは基本的には同様の樹脂組成物であることが好ましい。
【0024】
具体的な、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)の硬化は、熱硬化性樹脂および硬化剤の種類、また硬化剤の配合量によって硬化速度が変わり、また、雰囲気温度を変えることによっても硬化速度を調整することができる。
【0025】
[d工程]
d工程とは、炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程である。張力の除去は例えば図2の装置を用いた場合にはボルト4を調整することにより行うことができる。
【0026】
上記b〜d工程、またはa〜d工程を有する本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法によって得られた炭素繊維強化樹脂成形体は機械強度に優れる。
また上記a〜d工程以外に、その他の工程を設けてもよい。その他の工程としては例えば、d工程の後に切削などの二次成形を行って適宜の形状にすることが挙げられる。
【0027】
上記b〜d工程または上記a〜d工程を有する本発明の製造方法により製造された炭素繊維強化樹脂成形体は、従来の炭素繊維強化樹脂成形体と比べて破壊時の最大応力や破壊歪みが増加する。また炭素繊維強化樹脂成形体に電子線を照射して強度の向上を図る従来の方法では厚さが200μm程度を超える場合には適用することができないのに対し、本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法によれば厚さにとらわれず炭素繊維強化樹脂成形体を製造することができる。また本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は電子線照射装置等の大掛かりな装置を必要としないため、簡便な装置で炭素繊維強化樹脂成形体を製造することができ、低コストで炭素繊維強化樹脂成形体を製造することができる。
【0028】
本発明の製造方法によって製造された炭素繊維強化樹脂成形体が従来の炭素繊維強化樹脂成形体と比べて最大応力や破壊歪みが増加する理由は明らかではないが、本発明者らは炭素繊維と硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物との界面での適度の応力緩和現象に伴う破壊歪の増加や、炭素繊維と硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物との界面の広い比表面積と、樹脂の圧縮応力負荷に伴う動摩擦力の増加が強靭性を高める独特のプレストレス効果により最大応力や破壊歪みが増加すると推定した。
【0029】
〔実施例〕
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0030】
なお、本発明に用いた装置の構成を以下に示す。
<炭素繊維表面被覆装置>
炭素繊維表面被覆装置を図1に示す。
【0031】
該装置はアルミニウム製のロール[第1のロール(20)、第2のロール(22)、および第3のロール(24)]を有しており、第1のロール(20)および第2のロール(22)はアルミニウム製の容器(26)中に設置されており、第3のロール(24)は上下方向の位置を変えることによって、炭素繊維が硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)中に浸漬するようにした。
【0032】
<成形体製造装置>
成形体製造装置を図2に示す。
該装置は長さ400mm、深さ10mmおよび幅2mmのチューブ状鋳型(2)中に、シリコンゴム製で中央に隙間のある厚さ1mmの仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型を有しており、その仕切り板の中央部に前記炭素繊維表面被覆装置を用いて、炭素繊維の表面が硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物で被覆された、表面被覆炭素繊維(10)が中心に配置されるように調整する。そしてその両端を固定具(6)、(7)を用いて固定し、ボルト(4)を用いて張力を付与することができる。
【0033】
この際の実際に負荷した張力はデジタルフォースゲージ(12)で測定することができる。
なお、以下の実施例および比較例においては、実験データの処理に際して、後記した図3〜8においては横軸に張力を試験片の測定部の断面積で除した値をプレストレス値として求め用いた。
【0034】
例えば、15kgfの張力を炭素繊維にかけた際には試験片の測定部の断面積は10mm2であるので、14.70MPaとなる。
なお、以下の実施例および比較例ではストランド状の炭素繊維による補強効果を調べることが目的であるので、試験片の破断部分中央に炭素繊維が配置されるように成形した。[実施例1]
炭素繊維として、東レ株式会社製品(製品名トレカT800HB−12000;1本の直径6μm、これを12000本束ねたストランド)を、長さ580mmに切断して用いた。
【0035】
炭素繊維表面被覆装置(図1)の容器(26)中に無水マレイン酸とエチレングリコールとのプレポリマーを主成分とする不飽和ポリエステル樹脂(カンキ加工剤株式会社製品
Lot.No.KE805PT63)に、メチルエチルケトンパーオキサイドおよびジメチールフタレートを主成分とする硬化剤(エポック株式会社 製品名P−01−005)を樹脂100重量部に対して1重量部の割合で配合した硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)(標準硬化時間は6時間)を供給し、貯めた。次に第1のロール(20)および第2のロール(22)の上部に前記炭素繊維(30)をセットした。その後、第3のロール(24)を図1のように、第1のロール(20)と第2のロール(22)との間に上方からセットし、炭素繊維(30)を第1のロール(20)と第3のロール(24)との間、および第2のロール(22)と第3のロール(24)との間に挟み込んだ。
【0036】
前記炭素繊維を前記第1〜3のロールにより、繊維の長手方向に移動させ、炭素繊維表
面の空気泡を除きつつ、炭素繊維の表面に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を被覆した。この間の作業に約5分を要した。
【0037】
次に、成形体製造装置(図2)のチューブ状鋳型(2)中に、仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物で表面が被覆された表面被覆炭素繊維を挿入し、該炭素繊維が仕切板の中央を通るようにし、その両端を固定した。
【0038】
ボルト(4)を用いて張力5kgf(プレストレス値:4.9MPa)を付与した。この間の作業に約5分を要した。
その後チューブ状鋳型(2)中に前記したものと同じ硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を供給し、室温で24時間静置して完全に硬化させた。その後、張力を除去し、成形型を開き、4個の樹脂成形体を得た。
【0039】
得られた板状の各樹脂成形体から、切削加工によってJIS K7161に準じた引張り試験用の試験片(長さ95mm、幅10mm、厚さ2mm、中央部に長さ25mmで幅5mmのくびれ部を有する)を作成した。この試験片のくびれ部の中心には、炭素繊維が配置されており、該くびれ部において炭素繊維の占める断面積比は3.39%であった。
【0040】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図3〜5に示した。
なお、図3〜5は上記プレストレス値と試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率との関係を示す。
[実施例2〜4]
ボルト(4)を用いて付与する張力を10kgf、15kgf、20kgf(プレストレス値:9.8MPa、14.7MPa、19.6MPa)としたこと以外は実施例1と同様に行い、試験片を作成した。
【0041】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図3〜5に示した。
[比較例1]
張力を負荷しないこと以外は実施例1と同様に行い、試験片を作成した。
【0042】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図3〜5に示した。
なお、図3〜5では張力をかけていない比較例1における破壊応力、破壊歪み、および弾性率を元にし、各張力を負荷した実施例1〜4における破壊応力、破壊歪み、および弾性率の差を図の縦軸に表示した。
[実施例5]
炭素繊維として、東レ株式会社製品(製品名トレカM30SC−18000−50C;1本の直径6μm、これを18000本束ねたストランド)を、長さ580mmに切断して用いた。
【0043】
炭素繊維表面被覆装置(図1)の容器26中にエポキシ樹脂(日新レジン株式会社製品)と硬化剤として変性脂肪族ポリアミン(日新レジン株式会社製品)とを100:20(重量)の割合で配合した硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)を供給し、貯めた。次に第1のロール(20)および第2のロール(22)の上部に前記炭素繊維(30)をセットした。その後、第3のロール(24)を図1のように、第1のロール(20)と第2のロール(22)との間に上方からセットし、炭素繊維(30)を第1のロール(20)と第3のロール(24)との間、および第2のロール(22)と第3のロール(24)との
間に挟み込んだ。
【0044】
前記炭素繊維を前記第1〜3のロールにより、繊維の長手方向に移動させ、炭素繊維の表面に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を被覆した。この間の作業に5分を要した。
次に、成形体製造装置(図2)のチューブ状鋳型(2)中に、仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物で表面が被覆された表面被覆炭素繊維を挿入し、その両端を固定した。
【0045】
ボルト(4)を用いて張力5kgf(プレストレス値:4.9MPa)を付与した。この間の作業に約5分を要した。
その後チューブ状鋳型(2)中に前記したものと同じ硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を供給し、室温で24時間静置して完全に硬化させた。その後、張力を除去し、成形型を開き、4個の樹脂成形体を得た。
【0046】
得られた板状の各樹脂成形体から、切削加工によってJIS K7161に準じた引張り試験用の試験片(長さ95mm、幅10mm、厚さ2mm、中央部に長さ25mmで幅5mmのくびれ部を有する)を作成した。この試験片のくびれ部の中心には、炭素繊維が配置されており、該くびれ部において炭素繊維の占める断面積比は5.09%であった。
【0047】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図6〜8に示した。
なお、図6〜8は上記プレストレス値と試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率との関係を示す。
[実施例6、7]
ボルト(4)を用いて付与する張力を10kgf、20kgf(張力:9.8MPa、19.6MPa)としたこと以外は実施例5と同様に行い、試験片を作成した。
【0048】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、弾性率を測定し、その結果を図6〜8に示した。
[比較例2]
張力を負荷しないこと以外は実施例5と同様に行い、試験片を作成した。
【0049】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図6〜8に示した。
[比較例3]
炭素繊維として、東レ株式会社製品(製品名トレカT800HB−12000;1本の直径6μm、これを12000本束ねたストランド)を、長さ580mmに切断して用いた。この炭素繊維は、炭素繊維の表面に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を被覆することなく用いた。
【0050】
成形体製造装置(図2)のチューブ状鋳型(2)中に、仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型に前記炭素繊維を挿入し、その両端を固定した。
【0051】
ボルト(4)を用いて張力18kgfを付与した。この間の作業に約5分を要した。
その後チューブ状鋳型(2)中に、無水マレイン酸とエチレングリコールとのプレポリマーを主成分とする不飽和ポリエステル樹脂(カンキ加工剤株式会社製品 Lot.No.KE805PT63)に、メチルエチルケトンパーオキサイドおよびジメチールフタレートを主成分とする硬化剤(エポック株式会社 製品名P−01−005)を樹脂100重量部に対して1重量部の割合で配合した硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(標準硬化時間
は6時間)を供給し、室温で24時間静置して完全に硬化させた。その後、張力を除去し、樹脂成形体を得た。
【0052】
得られた板状の各樹脂成形体から、切削加工によってJIS K7161に準じた引張り試験用の試験片(長さ95mm、幅10mm、厚さ2mm、中央部に長さ25mmで幅5mmのくびれ部を有する)を作成した。この試験片のくびれ部の中心には、炭素繊維が配置されており、該くびれ部において炭素繊維の占める断面積比は3.39%であった。
【0053】
インストロン引張り試験機を用いて、各試験片の破壊応力、破壊歪み、弾性率を測定し、その結果を図9に示した。
[比較例4]
張力を負荷しないこと以外は比較例3と同様に行い、試験片を作成した。
【0054】
インストロン引張り試験機を用いて、各試験片の破壊応力、破壊歪み、弾性率を測定し、その結果を図9に示した。
樹脂部分からの炭素繊維の引き抜きが起き、機械強度の小さな成形体であった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例に用いた炭素繊維被覆装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例に用いた成形体製造装置を示す概略図である。
【図3】実施例1〜4および比較例1における破断応力とプレストレス値との関係を示す図である。
【図4】実施例1〜4および比較例1における破断歪みとプレストレス値との関係を示す図である。
【図5】実施例1〜4および比較例1における弾性率とプレストレス値との関係を示す図である。
【図6】実施例5〜7および比較例2における破断応力とプレストレス値との関係を示す図である。
【図7】実施例5〜7および比較例2における破断歪みとプレストレス値との関係を示す図である。
【図8】実施例5〜7および比較例2における弾性率とプレストレス値との関係を示す図である。
【図9】比較例3、4における破断応力と破断歪みとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
2・・・チューブ状鋳型
3・・・仕切り板
4・・・ボルト
6・・・固定具
7・・・固定具
8・・・炭素繊維強化樹脂成形体用の型
10・・・表面被覆炭素繊維
12・・・デジタルフォースゲージ
20・・・第1のロール
22・・・第2のロール
24・・・第3のロール
26・・・容器
28・・・硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物
30・・・炭素繊維
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法および炭素繊維強化樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を混入した樹脂は機械的強度が高いことから炭素繊維強化樹脂と呼ばれ、航空機やスポーツ用具等の材料として広く使われている。
従来、炭素繊維をマット状にして、または引きそろえて、あるいは織物状に配置してから樹脂を含浸させ、硬化し、成形していた。しかし、その様な製造方法では未だ充分な機械強度を有する炭素繊維強化樹脂成形体を得ることはできていない。そこで原料となる樹脂を改質し、あるいは炭素繊維表面に化学反応を施して成形体の強化を図る試みがなされてきたが、それでもなお充分な機械強度を有する炭素繊維強化樹脂成形体を得ることはできなかった。
【0003】
長繊維束に接着剤を全体的にもしくは部分的に塗布し、接着剤が硬化する前に長繊維束にその伸延方向に沿って一定の張力を加え、該接着剤が硬化した後に一定の張力を開放した長繊維強化プラスチック補強体が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。ここで得られた補強体は、コンクリート板等を固定するためのロープないし線状物であって、長繊維束を接着固定して製造した繊維状物である。従って、樹脂成形体としての利用を図るものでないばかりか、樹脂成形体の強度を向上させるための繊維と樹脂との界面接着技術については何ら言及されていない。
【0004】
一方、炭素繊維強化樹脂成形体に電子線を照射して強度の向上を図ることが検討されている(例えば、特許文献2参照。)。その方法は表面から破壊が開始される場合の疲労強度や衝撃強度の改良には適しているが、電子線による効果は表面から200μm程度の厚さ迄であることから、より厚い成形体の強度改善にはさらに別の方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2003-268983号公報
【特許文献2】特開2002-371461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、厚みのある成形体へも適用可能な機械強度の高い炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を検討し、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維を用い、該炭素繊維に張力を負荷した状態で硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させることにより、厚みのある成形体へも適用可能な機械強度の高い炭素繊維強化樹脂成形体を製造できることを見出し発明を完成させた。
すなわち本発明は、
(b工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法である。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法はb工程の前工程としてさらにa工程を含むことが好ましい。すなわち、
(a工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程と、
(b工程)a工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法が好ましい。
【0007】
本発明には上記炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法により製造した炭素繊維強化樹脂成形体を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は厚みのある成形体へも適用が可能であり、得られる炭素繊維強化樹脂成形体は破壊時の最大応力や破壊歪みが増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は下記b〜d工程を有する;
b工程:硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程、
c工程:b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程、
d工程:c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程。
【0010】
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法はb工程の前にa工程をさらに有することが好ましい;
a工程:硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程。
【0011】
なお、a工程が存在する場合にはb工程は必ずa工程の後に行われる。
本発明に用いる炭素繊維としては原料としてポリアクリロニトリル、石油ピッチ、フェノール樹脂、レーヨン等を紡糸して製造した繊維に熱処理を施して得た繊維が使用でき、特にアクリル系繊維から製造した炭素繊維が好ましい。
【0012】
該炭素繊維としては、繊維径が5〜15μmの範囲であることが好ましい。
本発明に用いる炭素繊維としてはフィラメントを用いてもよいが、取扱容易性の観点からフィラメントを3,000〜20,000本程度に束ねたストランド状で用いることが好ましい。
【0013】
また本発明において炭素繊維はその補強効果の観点から、各炭素繊維が成形体中に均一に配置されていることが好ましいが、各炭素繊維一本一本を成形体中に均一に配置することは作業効率や取扱容易性に劣る。よって本発明の成形体としては、ストランド状の炭素繊維を用い、該ストランド状の炭素繊維を成形体中に均一に配置することが取扱容易性および補強効果に優れ、特に好ましい態様である。
【0014】
本発明において得られる炭素繊維強化樹脂成形体中に占める炭素繊維の含量は、通常は0.2〜70vol%、好ましくは0.5〜60vol%、より好ましくは0.7〜50vol%である。炭素繊維含有量が上記範囲内にある炭素繊維強化樹脂成形体は、高い樹脂補強効果を示す。
【0015】
以下a〜d工程についてより詳細に説明する。
[a工程]
a工程とは、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程である。ここで硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)とは特に限定はないが、例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてアミン類、具体的には変性脂肪族ポリアミンを用いた組成物、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂、硬化剤としてメチルエチルケトンパーオキサイドのような過酸化物を用いた組成物、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂、硬化剤としてアミン類、具体的にはヘキサメチレンテトラミンを用いた組成物が挙げられる。
【0016】
炭素繊維の表面を被覆する方法としては特に限定はないが、例えば実施例で用いた図1に示す炭素繊維表面被覆装置を用いることが簡便である。図1に示した装置を用いてストランド状の炭素繊維の表面を被覆する際には、容器(26)中に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)を入れ、第1のロール(20)と第3のロール(24)との間、および第2のロール(22)と第3のロール(24)との間で炭素繊維(30)を挟みこみ、第1〜3のロールによって炭素繊維(30)を移動させることにより、繊維間に存在する空気泡を除去し、かつ繊維表面への樹脂組成物の親和性を高め、その結果、炭素繊維表面を硬化剤含有樹脂組成物で均一に被覆することができる。ここで繊維表面に空気泡が残存していると、本発明で得られる炭素繊維強化樹脂成形体の強度が低下する傾向がある。
【0017】
[b工程]
b工程とは、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、該炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程である。張力を負荷する方法としては特に限定されないが、例えば実施例で用いた図2に示す成形体製造装置を用いることが好ましい。図2に示した装置を用いて張力を付加する際には、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維(ストランド)(10)の位置を固定具(6、7)で固定し、ボルト(4)で張力を負荷することおよび張力を調節することができる。
【0018】
炭素繊維に負荷する張力は炭素繊維の種類および樹脂の種類によって異なり、一概には決まらないが、後述する実施例では、使用した炭素繊維のストランドに対して、5〜15kgfの範囲で張力を負荷したときに、炭素繊維による樹脂への高い補強効果が認められた。
【0019】
硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する方法としては、図2に示す成形体製造装置のようにあらかじめ硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を流し込むための成形型を設けておき、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に張力を付加した後に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を流し込む方法が簡便であり好ましい。硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)としては特に限定はないが、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)と同じ種類が好ましい。
【0020】
また前記硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)は、b工程の時点では部分硬化した状態であることが好ましく、完全硬化した状態ではないことが好ましい。ここで部分硬化とは
、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)の一部が硬化した状態であり、完全硬化とは熱を加えてもこれ以上硬化が進まない状態である。
【0021】
通常a工程からb工程へ移行する間に樹脂の硬化反応は進行し、未硬化状態から部分硬化状態へと変わっていくので、この間の時間および温度を調整することによって硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)の硬化状態を次のc工程に適切な部分硬化状態へと制御することができる。
【0022】
[c工程]
c工程とは、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程である。
【0023】
またc工程においては、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)も同様に硬化させる必要がある。硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)と、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)とが同様の樹脂組成物である場合には、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)が硬化する条件で硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)も硬化することができる。硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)と、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)とは基本的には同様の樹脂組成物であることが好ましい。
【0024】
具体的な、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)の硬化は、熱硬化性樹脂および硬化剤の種類、また硬化剤の配合量によって硬化速度が変わり、また、雰囲気温度を変えることによっても硬化速度を調整することができる。
【0025】
[d工程]
d工程とは、炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程である。張力の除去は例えば図2の装置を用いた場合にはボルト4を調整することにより行うことができる。
【0026】
上記b〜d工程、またはa〜d工程を有する本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法によって得られた炭素繊維強化樹脂成形体は機械強度に優れる。
また上記a〜d工程以外に、その他の工程を設けてもよい。その他の工程としては例えば、d工程の後に切削などの二次成形を行って適宜の形状にすることが挙げられる。
【0027】
上記b〜d工程または上記a〜d工程を有する本発明の製造方法により製造された炭素繊維強化樹脂成形体は、従来の炭素繊維強化樹脂成形体と比べて破壊時の最大応力や破壊歪みが増加する。また炭素繊維強化樹脂成形体に電子線を照射して強度の向上を図る従来の方法では厚さが200μm程度を超える場合には適用することができないのに対し、本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法によれば厚さにとらわれず炭素繊維強化樹脂成形体を製造することができる。また本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は電子線照射装置等の大掛かりな装置を必要としないため、簡便な装置で炭素繊維強化樹脂成形体を製造することができ、低コストで炭素繊維強化樹脂成形体を製造することができる。
【0028】
本発明の製造方法によって製造された炭素繊維強化樹脂成形体が従来の炭素繊維強化樹脂成形体と比べて最大応力や破壊歪みが増加する理由は明らかではないが、本発明者らは炭素繊維と硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物との界面での適度の応力緩和現象に伴う破壊歪の増加や、炭素繊維と硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物との界面の広い比表面積と、樹脂の圧縮応力負荷に伴う動摩擦力の増加が強靭性を高める独特のプレストレス効果により最大応力や破壊歪みが増加すると推定した。
【0029】
〔実施例〕
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0030】
なお、本発明に用いた装置の構成を以下に示す。
<炭素繊維表面被覆装置>
炭素繊維表面被覆装置を図1に示す。
【0031】
該装置はアルミニウム製のロール[第1のロール(20)、第2のロール(22)、および第3のロール(24)]を有しており、第1のロール(20)および第2のロール(22)はアルミニウム製の容器(26)中に設置されており、第3のロール(24)は上下方向の位置を変えることによって、炭素繊維が硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)中に浸漬するようにした。
【0032】
<成形体製造装置>
成形体製造装置を図2に示す。
該装置は長さ400mm、深さ10mmおよび幅2mmのチューブ状鋳型(2)中に、シリコンゴム製で中央に隙間のある厚さ1mmの仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型を有しており、その仕切り板の中央部に前記炭素繊維表面被覆装置を用いて、炭素繊維の表面が硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物で被覆された、表面被覆炭素繊維(10)が中心に配置されるように調整する。そしてその両端を固定具(6)、(7)を用いて固定し、ボルト(4)を用いて張力を付与することができる。
【0033】
この際の実際に負荷した張力はデジタルフォースゲージ(12)で測定することができる。
なお、以下の実施例および比較例においては、実験データの処理に際して、後記した図3〜8においては横軸に張力を試験片の測定部の断面積で除した値をプレストレス値として求め用いた。
【0034】
例えば、15kgfの張力を炭素繊維にかけた際には試験片の測定部の断面積は10mm2であるので、14.70MPaとなる。
なお、以下の実施例および比較例ではストランド状の炭素繊維による補強効果を調べることが目的であるので、試験片の破断部分中央に炭素繊維が配置されるように成形した。[実施例1]
炭素繊維として、東レ株式会社製品(製品名トレカT800HB−12000;1本の直径6μm、これを12000本束ねたストランド)を、長さ580mmに切断して用いた。
【0035】
炭素繊維表面被覆装置(図1)の容器(26)中に無水マレイン酸とエチレングリコールとのプレポリマーを主成分とする不飽和ポリエステル樹脂(カンキ加工剤株式会社製品
Lot.No.KE805PT63)に、メチルエチルケトンパーオキサイドおよびジメチールフタレートを主成分とする硬化剤(エポック株式会社 製品名P−01−005)を樹脂100重量部に対して1重量部の割合で配合した硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)(標準硬化時間は6時間)を供給し、貯めた。次に第1のロール(20)および第2のロール(22)の上部に前記炭素繊維(30)をセットした。その後、第3のロール(24)を図1のように、第1のロール(20)と第2のロール(22)との間に上方からセットし、炭素繊維(30)を第1のロール(20)と第3のロール(24)との間、および第2のロール(22)と第3のロール(24)との間に挟み込んだ。
【0036】
前記炭素繊維を前記第1〜3のロールにより、繊維の長手方向に移動させ、炭素繊維表
面の空気泡を除きつつ、炭素繊維の表面に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を被覆した。この間の作業に約5分を要した。
【0037】
次に、成形体製造装置(図2)のチューブ状鋳型(2)中に、仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物で表面が被覆された表面被覆炭素繊維を挿入し、該炭素繊維が仕切板の中央を通るようにし、その両端を固定した。
【0038】
ボルト(4)を用いて張力5kgf(プレストレス値:4.9MPa)を付与した。この間の作業に約5分を要した。
その後チューブ状鋳型(2)中に前記したものと同じ硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を供給し、室温で24時間静置して完全に硬化させた。その後、張力を除去し、成形型を開き、4個の樹脂成形体を得た。
【0039】
得られた板状の各樹脂成形体から、切削加工によってJIS K7161に準じた引張り試験用の試験片(長さ95mm、幅10mm、厚さ2mm、中央部に長さ25mmで幅5mmのくびれ部を有する)を作成した。この試験片のくびれ部の中心には、炭素繊維が配置されており、該くびれ部において炭素繊維の占める断面積比は3.39%であった。
【0040】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図3〜5に示した。
なお、図3〜5は上記プレストレス値と試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率との関係を示す。
[実施例2〜4]
ボルト(4)を用いて付与する張力を10kgf、15kgf、20kgf(プレストレス値:9.8MPa、14.7MPa、19.6MPa)としたこと以外は実施例1と同様に行い、試験片を作成した。
【0041】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図3〜5に示した。
[比較例1]
張力を負荷しないこと以外は実施例1と同様に行い、試験片を作成した。
【0042】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図3〜5に示した。
なお、図3〜5では張力をかけていない比較例1における破壊応力、破壊歪み、および弾性率を元にし、各張力を負荷した実施例1〜4における破壊応力、破壊歪み、および弾性率の差を図の縦軸に表示した。
[実施例5]
炭素繊維として、東レ株式会社製品(製品名トレカM30SC−18000−50C;1本の直径6μm、これを18000本束ねたストランド)を、長さ580mmに切断して用いた。
【0043】
炭素繊維表面被覆装置(図1)の容器26中にエポキシ樹脂(日新レジン株式会社製品)と硬化剤として変性脂肪族ポリアミン(日新レジン株式会社製品)とを100:20(重量)の割合で配合した硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(28)を供給し、貯めた。次に第1のロール(20)および第2のロール(22)の上部に前記炭素繊維(30)をセットした。その後、第3のロール(24)を図1のように、第1のロール(20)と第2のロール(22)との間に上方からセットし、炭素繊維(30)を第1のロール(20)と第3のロール(24)との間、および第2のロール(22)と第3のロール(24)との
間に挟み込んだ。
【0044】
前記炭素繊維を前記第1〜3のロールにより、繊維の長手方向に移動させ、炭素繊維の表面に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を被覆した。この間の作業に5分を要した。
次に、成形体製造装置(図2)のチューブ状鋳型(2)中に、仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物で表面が被覆された表面被覆炭素繊維を挿入し、その両端を固定した。
【0045】
ボルト(4)を用いて張力5kgf(プレストレス値:4.9MPa)を付与した。この間の作業に約5分を要した。
その後チューブ状鋳型(2)中に前記したものと同じ硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を供給し、室温で24時間静置して完全に硬化させた。その後、張力を除去し、成形型を開き、4個の樹脂成形体を得た。
【0046】
得られた板状の各樹脂成形体から、切削加工によってJIS K7161に準じた引張り試験用の試験片(長さ95mm、幅10mm、厚さ2mm、中央部に長さ25mmで幅5mmのくびれ部を有する)を作成した。この試験片のくびれ部の中心には、炭素繊維が配置されており、該くびれ部において炭素繊維の占める断面積比は5.09%であった。
【0047】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図6〜8に示した。
なお、図6〜8は上記プレストレス値と試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率との関係を示す。
[実施例6、7]
ボルト(4)を用いて付与する張力を10kgf、20kgf(張力:9.8MPa、19.6MPa)としたこと以外は実施例5と同様に行い、試験片を作成した。
【0048】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、弾性率を測定し、その結果を図6〜8に示した。
[比較例2]
張力を負荷しないこと以外は実施例5と同様に行い、試験片を作成した。
【0049】
インストロン引張り試験機を用いて、この試験片の破壊応力、破壊歪み、および弾性率を測定し、その結果を図6〜8に示した。
[比較例3]
炭素繊維として、東レ株式会社製品(製品名トレカT800HB−12000;1本の直径6μm、これを12000本束ねたストランド)を、長さ580mmに切断して用いた。この炭素繊維は、炭素繊維の表面に硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物を被覆することなく用いた。
【0050】
成形体製造装置(図2)のチューブ状鋳型(2)中に、仕切り板(3)5個を等間隔に設置し、各仕切り板間に4個の成形空間を設けた成形型に前記炭素繊維を挿入し、その両端を固定した。
【0051】
ボルト(4)を用いて張力18kgfを付与した。この間の作業に約5分を要した。
その後チューブ状鋳型(2)中に、無水マレイン酸とエチレングリコールとのプレポリマーを主成分とする不飽和ポリエステル樹脂(カンキ加工剤株式会社製品 Lot.No.KE805PT63)に、メチルエチルケトンパーオキサイドおよびジメチールフタレートを主成分とする硬化剤(エポック株式会社 製品名P−01−005)を樹脂100重量部に対して1重量部の割合で配合した硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(標準硬化時間
は6時間)を供給し、室温で24時間静置して完全に硬化させた。その後、張力を除去し、樹脂成形体を得た。
【0052】
得られた板状の各樹脂成形体から、切削加工によってJIS K7161に準じた引張り試験用の試験片(長さ95mm、幅10mm、厚さ2mm、中央部に長さ25mmで幅5mmのくびれ部を有する)を作成した。この試験片のくびれ部の中心には、炭素繊維が配置されており、該くびれ部において炭素繊維の占める断面積比は3.39%であった。
【0053】
インストロン引張り試験機を用いて、各試験片の破壊応力、破壊歪み、弾性率を測定し、その結果を図9に示した。
[比較例4]
張力を負荷しないこと以外は比較例3と同様に行い、試験片を作成した。
【0054】
インストロン引張り試験機を用いて、各試験片の破壊応力、破壊歪み、弾性率を測定し、その結果を図9に示した。
樹脂部分からの炭素繊維の引き抜きが起き、機械強度の小さな成形体であった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例に用いた炭素繊維被覆装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例に用いた成形体製造装置を示す概略図である。
【図3】実施例1〜4および比較例1における破断応力とプレストレス値との関係を示す図である。
【図4】実施例1〜4および比較例1における破断歪みとプレストレス値との関係を示す図である。
【図5】実施例1〜4および比較例1における弾性率とプレストレス値との関係を示す図である。
【図6】実施例5〜7および比較例2における破断応力とプレストレス値との関係を示す図である。
【図7】実施例5〜7および比較例2における破断歪みとプレストレス値との関係を示す図である。
【図8】実施例5〜7および比較例2における弾性率とプレストレス値との関係を示す図である。
【図9】比較例3、4における破断応力と破断歪みとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
2・・・チューブ状鋳型
3・・・仕切り板
4・・・ボルト
6・・・固定具
7・・・固定具
8・・・炭素繊維強化樹脂成形体用の型
10・・・表面被覆炭素繊維
12・・・デジタルフォースゲージ
20・・・第1のロール
22・・・第2のロール
24・・・第3のロール
26・・・容器
28・・・硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物
30・・・炭素繊維
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(b工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、該炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
(a工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程と、
(b工程)a工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法により製造した炭素繊維強化樹脂成形体。
【請求項1】
(b工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、該炭素繊維を硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
(a工程)硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で炭素繊維の表面を被覆する工程と、
(b工程)a工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆された炭素繊維に、該炭素繊維の長手方向に張力を負荷すると共に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)中に浸漬する工程と、
(c工程)b工程の後に、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(A)で表面が被覆され、かつ張力を負荷された炭素繊維が浸漬された状態で、硬化剤含有熱硬化性樹脂組成物(B)を硬化させる工程と、
(d工程)c工程の後に、前記炭素繊維に負荷されていた張力を除去する工程と
を有することを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法により製造した炭素繊維強化樹脂成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−68591(P2008−68591A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251350(P2006−251350)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
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