説明

炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法

【課題】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を使用して、再び炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を成型するクローズドループリサイクルを可能とする、リサイクル使用に伴う成形プロセス性や成形品の物理特性、外観等の低下を最小限にとどめるリサイクル技術を提供する。
【解決手段】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を粉砕し、ペレット化した後、これをバージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットと混合して射出成形に使用することを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法であり、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のペレットの混合割合A(重量%)は、3≦A≦80であり、また、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の熱可塑性とバージンの炭素繊維熱可塑性樹脂ペレットのマトリックス樹脂が、同一の種類の熱可塑性樹脂であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収された炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を新たな射出成形品へリサイクル使用する炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、容器包装リサイクル法や家電製品リサイクル法などの各種法令により、樹脂製品のリサイクルが義務付けられ、その有効なリサイクル方法が求められている。一方、炭素繊維強化熱可塑性樹脂は、その優れた力学的特性や電磁波シールド性等により、OA機器や家電製品の部品などに使用が拡大しており、それらの部品の使用後回収された材料やそれらの部品を成形する過程で発生するランナー等の産業廃棄物の有効なリサイクル方法の確立が益々重要となっている。
【0003】
炭素繊維強化樹脂成形品のリサイクル方法として、これまで各種の方法が提案されている。その方法としては、例えばマテリアルリサイクル方法、ケミカルリサイクル方法、およびサーマルリサイクル方法などが知られている。これらの中で、マテリアルリサイクル方法は、素材を最も有効に、且つ低エネルギー消費で利用するものであり、最も好ましいとされている。炭素繊維強化樹脂成形品のマテリアルリサイクル方法として、回収炭素繊維強化樹脂製部品の粉砕片をセメントの補強材に用いる等の実例は知られているが、再び、元と同じ炭素繊維強化樹脂成形部品にリサイクル使用するクローズドループリサイクルの実例は知られていない。
例えば、回収樹脂射出成形品として、重量平均繊維長が1mm以上の繊維5〜50重量%を含むことを特徴とする回収樹脂射出成形品が提案されているが(特許文献1参照)、これは、異物等を含有する回収樹脂をバージンの繊維強化樹脂と混合使用することにより回収樹脂をリサイクル使用することによる力学特性等の低下をカバーして射出成形品を得ることが目的であり、回収繊維強化樹脂材料を使用して再び繊維強化樹脂成形品を成形するクローズドループリサイクルとは異なるものである。
また、廃棄された繊維強化プラスチックを充填材とした繊維強化プラスチック成形体およびその製造方法が提案されているが(特許文献2参照)、これは、廃棄繊維強化プラスチック製品を粉砕した微粉末あるいは微粒子を充填材としてプラスチックに入れるものであって、廃棄繊維強化プラスチック製品を粉砕し、ペレット化して再び繊維強化プラスチックを成形するクローズドループリサイクルとは異なるものである。回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品についてクローズドループリサイクルを実行可能にするためには、回収材料使用に伴う成形プロセス性の低下や成形品の外観や力学特性の低下を如何に最小限に抑えるかが最大の課題であり、未だ実行可能な技術が確立されていないのが実状である。
【0004】
また、加工工程もしくは一般市場から回収されたプラスッチク部品より得られたリサイクル樹脂材料に、バージン樹脂材料を添加して成形されたプラスッチク部品で、リサイクル樹脂材料の配合率が表記されたものが提案されているが(特許文献3参照)、その目的とするところは、リサイクル樹脂材料に対してバージン樹脂材料をどの程度添加すれば良いかを容易に把握することであり、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品についてクローズドループリサイクルを実行可能にするために、回収材料使用に伴う成形プロセス性の低下や成形品の外観や力学特性の低下を最小限に抑えるための具体的技術が示されているものではない。
【特許文献1】公開特許公報2001−277279
【特許文献2】公開特許公報平5−309753
【特許文献3】公開特許公報2000−153524
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を使用して、再び炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を成形するクローズドループリサイクルを可能とする、リサイクル使用に伴う成形プロセス性や成形品の物理特性、外観等の低下を最小限にとどめる炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、回収した炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の、リサイクル使用に伴う成形性プロセス性や成形品の物理特性、外観等の低下を最小限にとどめる技術につき鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法は、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を粉砕し、ペレット化した後、これをバージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットと混合して射出成形に使用することを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法である。
本発明の好ましい態様のひとつは、前記の回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合A(重量%)が、3≦A≦80を満たすことである。
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記の回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の熱可塑性樹脂とバージンの炭素繊維熱可塑性樹脂ペレットのマトリックス樹脂が、同一の種類の熱可塑性樹脂であることである。
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記の回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が射出成形時に発生するスプールランナーであることである。
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記の回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品をペレット化する際に、回収熱可塑性樹脂を混入することである。
【0007】
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記の回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が長繊維ペレットからの射出成形品であることである。
【0008】
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記のバージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットが長繊維ペレットであることである。
【0009】
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記の回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が射出成形された筐体であることである。
【0010】
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記のバージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットが長繊維ペレットであることである。
【0011】
また、本発明の好ましい態様のひとつは、前記の回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が射出成形された筐体であることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル使用において、成形プロセス性や成形品の物理特性、外観等の低下を最小限にとどめることが可能となり、クローズドループリサイクルの実現を達成することが出来る。
また、本発明によれば、リサイクル品使用に伴う、ショートショットなどの成形性および成形品の衝撃強度や曲げ強度・弾性率等の物理特性や表面粗れなどの外観の低下を最小限に抑えることができるため、パソコンの筐体等OA機器の部品や家電製品の部品等の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のクローズドループリサイクルが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法においては、回収された炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を粉砕し、粉砕した炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品をペレット化する。
【0014】
本発明において、リサイクル使用される回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品としては、主として射出成形方法等により成形されてOA機器や家電製品等の部品として使用された後、回収されたものや、それら部品の射出成形時に発生するスプールランナー等が含まれる。この回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品には、部品表面に塗料片、印刷片やインサートされた金属片等各種の異物を混入していることが多いが、本発明においては、これらの異物が混入した炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品も用いることが出来る。
また、リサイクル使用される回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を構成する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維、ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維や、気相法で製造される炭素繊維等が用いられる。
【0015】
また、リサイクル使用される回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂としては、一般に射出成形などに使用できる熱可塑性樹脂が用いられるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリスチレン、スチレンーアクリロニトリル共重合体、およびABS樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単体であっても良いし、2種以上のブレンド物であっても良く、また2種以上からなるポリマーアロイであっても良い。
リサイクル使用される回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品において、炭素繊維の含有量は、一般的には、5〜50重量%の範囲のものが多い。リサイクル使用される回収炭素繊維補強熱可塑性樹脂成形品には、補強繊維として、炭素繊維以外に、ガラス繊維やアラミド繊維等の繊維が同時に混入されている場合もある。また、リサイクル使用される回収炭素繊維補強熱可塑性樹脂成形品には、上記の炭素繊維と熱可塑性樹脂以外に、各種の添加剤が混入される場合が多く、添加剤としては、例えば、結晶化核剤、結晶化促進剤、離形剤、安定剤、滑剤、着色剤、および難燃剤等が挙げられる。
これらの炭素繊維補強熱可塑性樹脂で成形される筐体としては、パソコンやOA機器、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、AV機器、電話機、ファクシミリ、家電製品、および玩具用品などの電気・電子機器の部品や、これら部品や高密度実装回路を収容する筐体部分に適用され、成形性、生産性および経済性に優れた繊維強化プラスチックが頻繁に使用されている。
特に高い力学特性、剛性、機械強度、軽量性および導電性が要求される場合は、炭素繊維を強化繊維とし、ナイロン、PC/ABS、PBTおよびPPS等の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とするする炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物(CFRTP)が、射出成形法により複材な形状の成形であっても柔軟に対応でき、また、大量生産が可能なことから好ましく使用される。
本発明において、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、まず、粉砕される。粉砕の方法は、特に限定されないが、粉砕機や破砕機を用いて小片化することにより炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の粉砕片を作製する。粉砕機や破砕機には、剪断式、衝撃式、および切断式など各種方式があるが、効率よく粉砕、破砕処理ができ、且つ粉砕片形状を制御しやすい剪断式の粉砕機がより適している。
【0016】
本発明において、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の粉砕片は、次にペレット化される。ペレット化を行わずに、粉砕片を直接バージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに混合して射出成形すると、粉砕片の形状や大きさが揃っていないため計量性が不安定となりショット毎にばらつきが発生し、充填不足気味のときに成形品表面の粗れや、極端な場合にはショートショットを生じる。さらに、計量不良に伴い、射出成形機のシリンダ中での混練時間が長くなることから炭素繊維の折損が進行し、衝撃強度が低下する。
【0017】
粉砕片のペレット化は、通常の押し出し機を用いて行われる。その際、大きさが3〜30mmの範囲の粉砕片を使用することが好ましく、さらに好ましくは大きさが5〜15mmの粉砕片を使用する。粉砕片の大きさが3mmより小さいと、押し出し機でペレット化する際に噛込が悪くなり、また、粉砕片の大きさが30mmより大きいと、押し出し機でペレット化する際にホッパーに引っかかり、噛込の計量性が低下することがある。
ペレット化の際に、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の粉砕片から、磁石を用いて金属異物を除去り、乾燥機で水分率が0.1重量%以下になるまで乾燥した後、押し出し機を用いてペレット化することが好ましい。さらに、ペレット化時に、別途回収され、粉砕・選別された熱可塑性樹脂を、必要に応じて磁石を用いて金属異物を除去し、水分率0.1重量%以下に乾燥した後、混合することが出来る。混合される熱可塑性樹脂の種類は、ペレット化する回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と親和性のあるものであれば特に限定はないが、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品と同一の種類の樹脂であることが好ましい。
【0018】
本発明においては、得られた回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のペレットとバージンの炭素繊維熱可塑性樹脂ペレットを混合して、射出成形機を用いて、所望の成形品を成形する。その際、成形プロセス性や得られた成形品の物理特性、外観等の低下を最小限に抑えるため、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合A(重量%)を3≦A≦80に調節することが好ましい。さらに、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合Aを5≦A≦50に調節することが好ましく、5≦A≦20に調整することがさらに好ましい。
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合が3重量%より少ないと、リサイクル使用の意義が少なくなり、また、80重量%より大きいと、得られた射出成形のプロセス性や成形品の物理特性や外観の低下が大きくなる。さらに、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットとバージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットのマトリックス樹脂の種類は、両者の親和性が良ければ特に制限はないが、両者が同一の種類であることが好ましい。
ここで、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品として、射出成形時に発生するスプールランナーを用いた場合は、OA機器の部品等として使用後回収された成形品を用いた場合に比較して、材料特性の劣化が少ない場合が多く、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合を多くすることが出来る。また、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が、長繊維ペレットを射出成形して得られた材料である場合は、短繊維ペレットを射出成形して得られた材料である場合に比較して、材料特性が高い場合が多く、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合を高く多くすることが出来る。同様に、バージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットが長繊維ペレットである場合は、短繊維ペレットを用いる場合に比較して、得られた成形品の力学特性や外観の低下を防ぐことがより容易となるため、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合を多くすることが出来る。
【0019】
ここで、長繊維ペレットとは、実質的にペレットと同一長さでかつペレットの長さ方向に配列した状態の強化繊維を含むものである。また、短繊維ペレットとは、一定の長さでない強化繊維がランダムにペレット中に分散配合されたものである。
【0020】
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル法により得られた成形品は、
ノートパソコン用筐体を主体とした情報機器関連筐体や携帯電話等の高剛性、高EMIシールト性が必要な筐体等の用途に用いられる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本実施例で用いた個々の特性値は、以下の方法によって測定したものである。
【0022】
(曲げ強度と弾性率)
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットとバージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを所定の割合で混合したペレットを用いて、射出成形機(名機製作所製 名機50M)、物性測定用テストピース金型(ASTM D―790規定、1/4”厚さ、曲げ試験片、ASTM D−256規定、1/8”厚さ、モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験片)で試験片を成形した。曲げ試験は、上記試験片を、試験機として東洋精機製TENSILON RTM−500を使用し、ASTM D−790に従い、支点間距離100mm、歪み速度3mm/minで実施した。
【0023】
(衝撃強度)
アイゾット衝撃試験は、上記の試験片を、試験機としてUeshima U−F Impact Testeを使用し、ハンマー容量3ft・lb、振り上げ角127度で実施した。
【0024】
(射出成形性)
成形性を確認するために、上記の名機製作所製の射出成形機で角板試験片金型(80mm×80mm×1.0t、サイドゲート)を使用し、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて100ショットの連続成形を実施した。その際のショートショット、外観不良等の不良率をカウントし、成形不良率で表した。
【0025】
(実施例1〜3)
バージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品ペレット(バージン材)として、長繊維炭素繊維強化ポリアミド6樹脂(東レ製 TLP1046:炭素繊維量20重量%)ペレットを使用した。また、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品は、上記のバージン材と同グレードの樹脂を射出成形した際に得られたスプールランナーを回収し、粉砕機(渡辺製鋼所製 低速粉砕機P31)にて、形状(大きさ)を5mm〜15mmとした。粉砕材はφ90mm単軸押出機(ナカタニ機械製 スクリュー:フルフライト)を使用し、シリンダ温度280℃、処理速度100kg/hで再ペレット化した。その際、押出機の供給フィーダー中にマグネットを設置し、金属異物除去を実施した。得られた回収材ペレット(A−1)をバージン材に対して表1の配合比でドライブレンドし、回収材混合ペレットを得た。得られた回収材混合ペレットを、上記の名機製作所製の射出成形機を用いて射出成形し、各特性について評価した。結果を表1に示す。
【0026】
(実施例4)
実施例1〜3と同様のバージン材を使用し、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品としては、炭素繊維20%配合ポリアミド6樹脂を使用した使用済みノートパソコン筐体を使用し、実施例1〜3と同様の方法で粉砕し、再ペレット化した。得られた回収材ペレット(A−2)をバージン材に対して表1の配合比でドライブレンドし、回収材混合ペレットを得た。得られた回収材混合ペレットを、上記の名機製作所製の射出成形機を用いて射出成形し、各特性について評価した。結果を表1に示す。
【0027】
(実施例5)
バージン材として、短繊維炭素繊維強化ポリアミド6樹脂(東レ製 1001T−15:炭素繊維含有量15重量%)ペレットを使用し、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品として同グレードの樹脂を射出成形した際に得られたスプールランナーを回収し、実施例1〜3と同様の方法で粉砕し、再ペレット化した。得られた回収材ペレット(A−3)をバージン材に対して表1の配合比でドライブレンドし、回収材混合ペレットを得た。得られた回収材混合ペレットを、上記の名機製作所製の射出成形機を用いて射出成形し、各特性について評価した。結果を表1に示す。
【0028】
(実施例6)
バージン材として、長繊維炭素繊維強化ポリアミド6樹脂(東レ製 TLP1046:炭素繊維量20重量%)ペレットを使用し、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品として同グレードの樹脂を射出成形した際に得られたスプールランナーとポリアミド6樹脂(東レ製 CM1017)を射出成形した際に得られたスプールランナーを回収し、実施例1〜3と同様の方法でそれぞれ粉砕し、これらを4:1の重量比で混合後、再ペレット化した。得られた回収材ペレット(A−4)をバージン材に対して表2の配合比でドライブレンドし、回収材混合ペレットを得た。得られた回収材混合ペレットを、上記の名機製作所製の射出成形機を用いて射出成形し、各特性について評価した。結果を表2に示す。
【0029】
(比較例1〜2)
バージン材として、長繊維炭素繊維強化ポリアミド6樹脂(東レ製 TLP1046:炭素繊維量20重量%)ペレットを使用し、回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品として同グレードの樹脂を射出成形した際に得られたスプールランナーを回収し、実施例1〜3と同様の方法で粉砕後、粉砕品を再ペレットせずに表2の配合比で実施例1〜3と同様の方法でドライブレンドし、回収材混合ペレットを得た。得られた回収材混合ペレットを、上記の名機製作所製の射出成形機を用いて射出成形し、各特性について評価した。結果を表2に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
各々の配合と評価結果を併せて表1と表2に示した。表1と表2のとおり、本発明によれば、機械特性と成形性に優れた炭素繊維強化熱可塑性樹脂リサイクル材料を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
回収された炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を粉砕し、ペレット化した後、バージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットと混合して新たな成形品を射出成形することにより、リサイクル品使用に伴う、ショートショットなどの成形性および成形品の衝撃強度や曲げ強度・弾性率等の物理特性や表面粗れなどの外観の低下を最小限に抑える技術を提供し、パソコンの筐体等OA機器の部品や家電製品の部品等の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のクローズドループリサイクルを可能とするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品を粉砕し、ペレット化した後、これをバージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットと混合して射出成形に使用することを特徴とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。
【請求項2】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品から得られたペレットの混合割合A(重量%)が、3≦A≦80を満たすことを特徴とする請求項1記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。
【請求項3】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品の熱可塑性樹脂とバージンの炭素繊維熱可塑性樹脂ペレットのマトリックス樹脂が、同一の種類の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1または2の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。
【請求項4】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が射出成形時に発生するスプールランナーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。
【請求項5】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品をペレット化する際に、回収熱可塑性樹脂を混入することを特徴とする請求項1項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。
【請求項6】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が長繊維ペレットからの射出成形品であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。
【請求項7】
バージンの炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットが長繊維ペレットであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。
【請求項8】
回収炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品が射出成形された筐体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形品のリサイクル方法。

【公開番号】特開2006−218793(P2006−218793A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35753(P2005−35753)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】