説明

無人搬送車、および、その走行制御方法

【課題】レーザにより位置認識をおこなう無人搬送車において、停止位置で精度よく停止することのできるようにすることができる。
【解決手段】地図データと、走行速度が設定された経路データとを保持し、レーザにより周辺環境の状況を計測して、地図データと計測されたデータとをマッチングして、現在位置を求める無人搬送車において、経路データには、無人搬送車の走行を停止させる終点、予め設定しておく。そして、無人搬送車の現在位置と操舵角により定まる目標停止線が、終点上にのるか、終点を越えたときに、前記無人搬送車を停止させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車、および、その走行制御方法に係り、レーザ方式により周囲の環境を認識して、走行するインテリジェントな無人搬送車を精度よく停止させる用途に用いて好適な無人搬送車、および、その走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインや倉庫等において、省人化や搬送の正確性を向上させるために、自動制御によって、目標走行経路を自動的に走行させ、荷物の積み降ろしをおこなう無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)が導入されている。このような無人搬送車においては、その目標走行経路の誘導方式には各種のものが開発・適用されている。
【0003】
例えば、電磁誘導方式は、床に埋設された電線から発信される誘導磁界を無人搬送車に搭載したコイルにより検出し、無人搬送車の走行速度制御と操舵制御をおこない、目標走行経路に追従した自律走行をおこなうものである。
【0004】
また、光学方式は、床面に貼り付けられた反射テープからの反射光を無人搬送車に搭載した光学センサにより検出し、無人搬送車の走行速度制御と操舵制御をおこない、目標走行経路に追従した自律走行をおこなうものである。
【0005】
また、磁気誘導方式は、床に埋設された永久磁石または、床面に貼り付けられた磁気テープの磁気を無人搬送車に搭載した磁気検出センサにより検出し、無人搬送車の走行速度制御と操舵制御をおこない、目標走行経路に追従した自律走行をおこなうものである。
【0006】
さらに、ジャイロ方式は、無人搬送車に搭載したジャイロセンサ、および、床に埋め込んだ位置補正用の基準位置マーカーを無人搬送搬送車に搭載したセンサにより検出し、無人搬送車の走行速度制御と操舵制御をおこない、目標走行経路に追従した自律走行をおこなうものである。
【0007】
その他にレーザー方式がある。これは走行経路周辺の壁・柱・設備等に無人搬送車から発せられるレーザ光を反射するための反射板を取り付け、無人搬送車から発せられたレーザ光の反射光を無人搬送車に搭載したレーザ反射光検出センサにより検出しその反射光の受光角度に基づく三角測量法等の演算処理により位置を特定し、無人搬送車の走行速度制御と操舵制御をおこない、目標走行経路に追従した自律走行をおこなうものである。このような自律走行の方式は、目標走行経路が固定であるため、センサのズレ量に応じて走行方向を決定する仕組みとなっている。さらに、この方式は、走行センサとは別に独立して安全センサを無人搬送車に搭載し、固定範囲内で障害物や人間を判断し、無人搬送車の走行に問題がある場合、減速や停止ををおこなうのが一般的である。
【0008】
例えば、特許文献1の無人搬送車の停止位置決め装置においては、投光器からの投射光を反射する反射板からの反射光を検出したときに、無人搬送車を停止させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−171535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術に係る自律走行の無人搬送車では、反射板などの特別の装置が必要であり、停止するときの精度もレーザ方式を利用したものほど精度は期待できない。
【0011】
また、従来技術に係るレーザ方式の無人搬送車においても、どのように精度よくレーザによる位置認識を利用して、停止させるかは提案されてこなかった。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、レーザにより位置認識をおこなう無人搬送車において、停止位置で精度よく停止することのできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無人搬送車は、先ず、予備段階として、レーザ距離センサにより測定した測定データに基づいて、地図データと、その地図データの表す地図の経路を示す経路データとを作成しておく。
【0014】
走行時には、レーザにより周辺環境の状況を計測して、地図データと計測されたデータとをマッチングして、現在位置を求める。
【0015】
そして、無人搬送車の現在位置と操舵角により定まる目標停止線が、終点上にのるか、終点を越えたときに、前記無人搬送車を停止させるように制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザにより位置認識をおこなう無人搬送車において、停止位置で精度よく停止することのできるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の無人搬送車のハードウェア構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の無人搬送車の走行を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態の無人搬送車の走行制御の処理を示すフローチャートである。
【図4】従来技術に係る停止処理を説明する図である。
【図5】本発明の目標停止線の概念を説明する図である。
【図6】本発明の目標停止線による停止の判定を説明する図である。
【図7】操舵角が0度のときの目標停止線の様子を説明する図である。
【図8】操舵角が90度のときの目標停止線の様子を説明する図である。
【図9】操舵角が45度のときの目標停止線の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1ないし図9を用いて説明する。
先ず、図1を用いて本発明の一実施形態の無人搬送車のハードウェア構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の無人搬送車のハードウェア構成を示す図である。
【0019】
無人搬送車100は、図1に示されるように、コントローラ110、プログラムメモリ120、データメモリ130、プログラマブルロジックコントローラ140、操舵輪150、走行輪160、レーザ距離センサ180、レーザ装置170、外部インタフェース190、リモコンインタフェース195からなる。
【0020】
コントローラ110は、無人搬送車100の各部を制御し、データメモリ130に格納されている各データを参照して、プログラムメモリ120に格納された各モジュールを実行する。
【0021】
プログラムメモリ120は、走行制御のためのプログラムを格納する記憶装置である。
【0022】
データメモリ130は、走行制御のためのデータを格納する記憶装置である。
【0023】
プログラマブルロジックコントローラ140は、操舵輪と走行輪を制御する。操舵輪150は、操舵角をパラメータとして制御され、走行輪160は、速度をパラメータとして制御される。
【0024】
レーザ装置170は、レーザ光を発射する装置である。本実施形態のレーザ装置180は、無人搬送車100の先頭に取り付けられ、180度のレンジで回転することができ、所定の角度ごとにレーザを発射することができるようになっている。
【0025】
レーザ距離センサ180は、レーザ装置によるレーザ光の反射光を検知して、障害物までの距離を測定するセンサである。
【0026】
外部インタフェース190は、外部のパソコンなどの情報処理機器からデータをやり取りするためのインタフェースである。
【0027】
リモコンインタフェース195は、外部から電波によりリモコン装置で、この無人搬送車を操作するときに用いられるインタフェースである。
【0028】
データメモリ130には、地図データ131、経路データ132、レーザ測定データ133が格納されている。
【0029】
レーザ測定データ131は、レーザ距離センサ180により測定したデータである。
【0030】
地図データ132は、レーザ測定データ131に基づき、外部のパソコンなどにより認識処理した作成した地図データである。
【0031】
経路データ133は、外部のパソコンなどの地図データの編集ソフトウェアにより、地図データ上に作成された無人搬送車100の走行を予定している経路のデータである。
【0032】
プログラムメモリ120には、コントローラ110で実行するモジュールとして、レーザ測定データ取込モジュール121、位置決定モジュール122、走行経路決定モジュール123、制御モジュール124、停止決定モジュール126が格納されている。
【0033】
レーザ測定データ取込モジュール121は、リモコンによる手動運転時に、レーザ距離センサ180から収集されたデータを取り込むためのモジュールである。
【0034】
位置決定モジュール122は、走行中に地図データ132と、レーザ距離センサ180の計測値に基づき、無人搬送車100の現在の位置を求めるモジュールである。
【0035】
走行経路決定モジュール123は、無人搬送車100の速度と、現在位置に基づいて、経路データ133による無人搬送車100の走行経路を定めるモジュールである。
【0036】
制御モジュール124は、無人搬送車100の速度と、操舵角をプログラマブルロジックコントローラ140に指示するモジュールである。
【0037】
停止決定モジュール126は、無人搬送車100の停止の制御をすることを決定するモジュールである。
【0038】
次に、図2および図3を用いて、本発明の一実施形態に係る無人搬送車の走行制御の処理の流れについて説明する。
図2は、本発明の一実施形態の無人搬送車の走行を説明する図である。
図3は、本発明の一実施形態の無人搬送車の走行制御の処理を示すフローチャートである。
【0039】
無人搬送車を走行させるためには、地図データ132と経路データ133を作成する必要がある。これらのデータを作成するためには、通常の運行の前に、予備走行としてリモコンによる手動運転をおこない、走行する地形のデータを収集する。
【0040】
ユーザは、無人搬送車100を、通常の運行経路に近いルートを予測して、リモコンにより制御して走行させる。このときに、図2に示されるように、レーザ装置180は、5cmから10cmごとに、レーザ装置170を180度回転させて、例えば、0.5度ずつ、30msごとにレーザ光3を発射し、レーザ距離センサ180は、そのレーザ光の反射光によるレーザ測定データ131を収集する(図3のS100)。
【0041】
レーザ測定データ131は、データメモリ130に格納されるので、次のフェーズとしては、外部インタフェースを介して、外部のパソコンなどの情報処理装置に出力する。
【0042】
ユーザは、パソコンなどの情報処理装置上で稼動する地図作成ソフトウェアにより、地図データを作成する(S101)。
【0043】
次に、ユーザは、パソコンの地図編集ソフトウェアの経路作成機能を利用して、地図上に経路を指定し、経路データを作成する(S102)。パソコンの地図編集ソフトウェアには、表示された地図データを表す地図画面上をマウスなどのポインティングデバイスで操作することにより、簡単に地図上に経路を作成できる機能を有している。また、作成した経路上に無人搬送車100が走行するときの速度を指定する(S103)。例えば、図2に示されるように、最初の区間では、2速(1.2[km/h])、次のカーブの区間では、1速(0.6[km/h])、カーブを抜けた所では、3速(2.4[km/h])で走行するというように経路上に設定する。
【0044】
このようにして、地図データ132と経路データ133が作成されるので、外部インタフェース190を介して、パソコンからデータメモリ130に取り込む。
【0045】
この段階で、無人搬送車100の走行のためのデータが準備できたので、走行を開始する(S104)。
【0046】
無人搬送車100は、走行中は、レーザ距離センサ180により、レーザ装置170のレーザの反射光を測定する(S105)。
【0047】
そして、地図データ132とS105のレーザ測定データをマッチングして(S106)、現在の無人搬送車100の現在位置(X,Y)を決定する(S107)。
【0048】
そして、現在位置(X,Y)と経路データに基づき、走行経路を決定する(S109)。
【0049】
次に、コントローラ110は、現在位置(X,Y)とS109で求めた走行経路から、操舵角θを求め、プログラマブルロジックコントローラ140にそれを指示する(S110)。
【0050】
また、コントローラ110は、現在位置(X,Y)に基づき、経路上に設定されている速度vを、プログラマブルロジックコントローラ140に指示する(S111)。
【0051】
この段階で、無人搬送車100を動かすための操舵角θ、速度vが与えられたので、このパラメタに従って、一定の時間または一定の距離分、無人搬送車100を動作させる(S112)。
【0052】
S112の無人搬送車100の動作が終わったとき、または、S112の無人搬送車の動作中に、目標停止線が経路上に定められた終点上にのるか、または、終点を越えたかを判定する(S113)。目標停止線の定め方は、後に詳細に説明する。
【0053】
S112の無人搬送車100の動作が終わったときにも、目標停止線が経路上に定められた終点を越えないときには、S105に行き走行動作を繰り返す。
【0054】
S112の無人搬送車100の動作が終わったとき、または、S112の無人搬送車の動作中に、目標停止線が経路上に定められた終点上にのるか、または、終点を越えたときには、無人搬送車100の走行は終了する。
【0055】
次に、図4ないし図9を用いて目標停止線の概念とそれを用いた無人搬送車の停止処理について説明する。
図4は、従来技術に係る停止処理を説明する図である。
図5は、本発明の目標停止線の概念を説明する図である。
図6は、本発明の目標停止線による停止の判定を説明する図である。
図7は、操舵角が0度のときの目標停止線の様子を説明する図である。
図8は、操舵角が90度のときの目標停止線の様子を説明する図である。
図9は、操舵角が45度のときの目標停止線の様子を説明する図である。
【0056】
従来では、図4に示されるように、無人搬送車100の基準点6が、走行経路上に設けられた終点8の停止範囲内に入ったとき停止の判定をおこなっていた。
【0057】
本実施形態では、図5に示されるように、無人搬送車100の操舵輪の角度、すなわち、操舵角がθのときに、無人搬送車100の基準点6を通って、操舵輪150の方向と直行するように目標停止線10を定める。このとき、無人搬送車100の基準点6を通って車体に横断するように引かれた線(仮に、「横断線12」ということにする。)とは、角度θをなすことになる。
【0058】
そして、停止するときの決定は、図6に示される状況のように、目標停止線10が終点上にのるか、終点を越えたときに、無人搬送車100を停止するものとする。無人搬送車100は経路上を走行するように制御されているので、最後には、終点7と基準点6が一致するように動くが、この目標停止線を停止の判断に用いることにより。操舵角が0度ではない場合、また、終点7と基準点6とに少しずれが生じる場合であっても、精度よく停止の判定をおこなうことができる。
【0059】
図7は、操舵角が0度のときの目標停止線の様子を示したものであるが、このときは、横断線12と、目標停止線10は一致する。
【0060】
図8は、操舵角が90度のときの目標停止線の様子を示したものであり、無人搬送車100は、横向きに移動している。このような場合でも、目標停止線10と終点7の関係を用いることにより、精度よく停止の判定をおこなうことができる。
【0061】
図9は、操舵角が45度のときの目標停止線の様子を示したものであり、無人搬送車100は、経路に対して45度傾いている。このような場合でも、目標停止線10と終点7の関係を用いることにより、精度よく停止の判定をおこなうことができる。
【0062】
図8や図9のような場合には、横断線12を用いるより、目標停止線10により、停止の判定をおこなう方が合理的であることが理解できるであろう。
【符号の説明】
【0063】
100…無人搬送車、110…コントローラ、120…プログラムメモリ、130…データメモリ、140…プログラマブルロジックコントローラ、150…操舵輪、160…走行輪…、170…レーザ距離センサ、180…レーザ装置、190…外部インタフェース、195…リモコンインタフェース。
2…経路、3…レーザ光、6…基準点、7…終点、10…目標停止線、12…横断線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データと、前記地図データの表す地図の経路を示す経路データとを格納し、レーザにより周辺環境の状況を計測して、前記地図データと計測されたデータとをマッチングして、現在位置を求める無人搬送車において、
前記経路上には、前記無人搬送車の走行を停止させる終点が定義されており、
前記無人搬送車の現在位置と操舵角により定まる目標停止線が、前記終点上にのるか、前記終点を越えたときに、前記無人搬送車を停止させるように制御することを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記目標停止線は、無人搬送車の基準点を通り、操舵輪の方向と直行するように定められたことを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項3】
地図データと、前記地図データの表す地図の経路を示す経路データとを格納し、レーザにより周辺環境の状況を計測して、前記地図データと計測されたデータとをマッチングして、現在位置を求める無人搬送車の制御方法において、
前記経路データ上に、前記無人搬送車の走行を停止させる終点が定義されており、
前記無人搬送車の現在位置と操舵角により定まる目標停止線が、前記終点上にのるか、前記終点を越えたときに、前記無人搬送車を停止させるように制御することを特徴とする無人搬送車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−141665(P2011−141665A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1245(P2010−1245)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】