説明

無指向性アンテナ及び情報読み取り装置

【課題】 X,Y及びZ軸平面のうちの2つの軸平面にそれぞれ配置された立体ループコイルと、1つの軸平面に沿って配置された平面ループコイルを一体形成して1つのアンテナブロックを構成し、各軸平面のループコイルを時分割で選択することにより、少ない面積で全方位のRFタグの電波を受信可能とした無指向性アンテナを提供する。
【解決手段】 この情報読み取り装置300は、前述した無指向性アンテナ40と、無指向性アンテナ40を構成する各軸平面のループコイルを順次選択するループコイル選択器52と、ICカードのアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を非接触にて行うリーダ又はリーダライタ100と、ループコイル選択器52及びリーダ又はリーダライタ100を制御するPC50と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無指向性アンテナ及び情報読み取り装置に関し、さらに詳しくは、非接触情報記録媒体の向きや姿勢に関わりなく、非接触情報記録媒体に記録された記録データを電波として受信可能とする無指向性アンテナ及びこの無指向性アンテナを使用した情報読み取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる新しい情報記録媒体が、市場に広く出回っている。ICカードとは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状あるいはシート状の形状を備え、カード内、或いはカード上にICが組み込まれている読み書き可能な記録媒体を総称した名称である。特に、非接触型ICカードは、例えば、鉄道等の交通機関の駅構内への入退場時に使用される定期券、プリペイドカードとして多く使用されている。また、非接触型ICカードの一種として、構造的には非接触型ICカードと全く同様であり、且つ識別番号及び履歴情報等に関する管理情報を記録したRFタグ(Radio Frequency tag)があり、このRFタグの一種として郵便物あるいは荷物等を分類管理するために使用される非接触型RFタグ(以下、単にRFタグと記す)が知られている。
【0003】
従来例えばRFタグを取り付けた荷物を、ベルトコンベアにより搬送しながらリーダライタにより管理情報を読み書きする場合、リーダライタのアンテナが決まった位置に固定されているときは、ベルトコンベアによる搬送開始前に荷物に取り付けられたRFタグの位置を確認してRFタグがリーダライタのアンテナ側に向くように、人手により予め荷物の向きを設定する必要があった。また、このような煩雑な事前操作を行わずに管理情報を読み書きすることを可能ならしめようとする場合には、RFタグに対する情報の読み書きに最も適すると予想される他の方向にもリーダライタのアンテナを複数設置する必要があった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1の従来技術には、移動する応答器(ICカード)に対して複数の質問器が同一信号を無線通信する質問器システムであって、複数の質問器をアンテナの通信可能領域を重複させて設けて通信可能領域を拡大し、各質問器のアンテナによる送受信を同期させることにより、質問器に他の質問器からの送信信号が受信されるといった干渉を防止する質問器システムについて開示されている。
【特許文献1】特開2003−283367公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術や、ベルトコンベアにより搬送しながらリーダライタにより管理情報を読み書きする従来方法にあっては、複数のアンテナを各方向に設置しなければならず、アンテナの設置個数の増大によるコスト増、広い設置スペースの確保という問題の他に、RFタグを取り付けた物品を全てのアンテナの位置まで必ず搬送しなければならないために搬送距離が長大化するといった問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑み、X,Y及びZ軸平面のうちの2つの軸平面にそれぞれ配置された立体ループコイルと、1つの軸平面に沿って配置された平面ループコイルを一体形成して1つのアンテナブロックを構成し、各軸平面のループコイルを時分割で選択することにより、少ない面積で全方位のRFタグの電波を受信可能とした無指向性アンテナを提供することを目的とする。
また、他の目的は、アンテナブロックを構成する各軸平面のループコイルを選択する方法を工夫することにより、効率よくRFタグ情報を読み取ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、非接触情報記録媒体に記録された記録データを電波として受信する無指向性アンテナであって、互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルと、他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルと、を備えたことを特徴とする。
本発明の無指向性アンテナの特徴は、X,Y,Z軸平面の2つの軸平面に立体ループコイルを配置し、残りの軸平面に沿って平面ループコイルを配置するものである。そして各立体ループコイルの軸が互いに直交するように構成し、平面ループコイルをその軸に対して平行に配置するものである。
【0008】
請求項2は、前記立体ループコイルの端面形状は、矩形又は楕円形であることを特徴とする。
本発明の無指向性アンテナをできるだけ小型に構成するためには、全体の厚みを少なくする必要がある。そこで本発明では、立体ループコイルの端面形状を矩形又は楕円形とするものである。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載の無指向性アンテナと、該無指向性アンテナを構成する各ループコイルの何れか1つを選択するループコイル選択器と、前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダ又はリーダライタと、前記ループコイル選択器及び前記リーダ又はリーダライタを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ループコイル選択器により前記各ループコイルのうちの一つを一定時間毎に選択的に切り換え使用しながら、前記リーダ又はリーダライタにより前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うことを特徴とする。
本発明の情報読み取り装置は、本発明の無指向性アンテナと、これを構成する各ループアンテナを順次選択するループコイル選択器と、選択されたループコイルを介して非接触情報記録媒体に記録されたデータを読み書きするリーダ又はリーダライタと、これらを制御する制御手段と、を備え、制御手段がループコイル選択器を一定時間間隔により順次選択しながらリーダ又はリーダライタによりデータの授受を行なうものである。
【0010】
請求項4は、前記制御手段は、前記ループコイル選択器により前記各軸平面のループコイルのうちの特定のループコイルの使用時間を長くすることを特徴とする。
X,Y,Z軸平面のうち、Z軸平面が物理的に大地に対して平行な軸平面とすると、その軸平面と平行に非接触情報記録媒体のアンテナが近接される確率が高くなる。そのような場合、Z軸平面からのデータの授受が最も多くなる。そこで本発明では、予めデータ授受の高い軸平面を決めておき、その軸平面を優先的に選択して、使用時間を長くするようにする。
【0011】
請求項5は、前記各ループコイルからの前記記録データの授受回数を前記ループコイル毎に記録する授受回数記録手段を備え、前記制御手段は、前記ループコイル選択器により前記授受回数記録手段に記録された授受回数の多いループコイルから順次選択することを特徴とする。
本発明はループコイル毎にデータの授受回数を計数しておき、その授受回数が多いループコイルから選択して、順次少ないループコイルに移行するようにループコイル選択器を制御するものである。尚、授受回数記録手段は制御手段に備えても良いし、リーダ又はリーダライタに備えても構わない。
【0012】
請求項6は、請求項1又は2に記載の複数の無指向性アンテナと、該無指向性アンテナを構成する各ループコイルの何れか1つを選択するループコイル選択器と、前記各無指向性アンテナの何れか一つを有効とするブロック選択器と、前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダ又はリーダライタと、前記ループコイル選択器、ブロック選択器及び前記リーダ又はリーダライタを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ブロック選択器により前記各無指向性アンテナの何れか一つを選択し、該選択された無指向性アンテナを構成する各ループコイルを前記ループコイル選択器により順次選択する動作を前記各無指向性アンテナの全てに対して行ないながら、前記リーダ又はリーダライタにより前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うことを特徴とする。
本発明は、本発明の無指向性アンテナを複数備え、各無指向性アンテナの何れか1つを有効とするブロック選択器を更に備えたものである。即ち、ブロック選択器により1つの無指向性アンテナを有効とし、選択された無指向性アンテナを構成する各軸平面のループコイルをループコイル選択器により順次選択する。そして1つの無指向性アンテナの全てのループコイルによるデータの授受が終了すると、次の無指向性アンテナを有効として、この動作を各無指向性アンテナの全てに対して行なうものである。
【0013】
請求項7は、前記制御手段は、前記ブロック選択器により前記各無指向性アンテナの何れか一つを選択し、該選択された無指向性アンテナを構成する各軸平面中の同じ軸平面のループコイルを前記ループコイル選択器により選択する動作を前記各無指向性アンテナの全てに対して行い、該動作が終了すると前記ループコイル選択器により他のループコイルを選択して前記動作を繰り返すことを特徴とする。
本発明は、ループコイル選択器により1つの軸平面のループコイルを選択して、この状態でブロック選択器により全ての無指向性アンテナを順次選択していく。一巡すると、ループコイル選択器により次の軸平面のループコイルを選択して前記と同じ動作を繰り返し、全ての軸平面の選択が終了するまで繰り返す。
【0014】
請求項8は、前記各無指向性アンテナが隣接する部分に、シールド部材を配置したことを特徴とする。
複数の無指向性アンテナを隣接配置すると、ループコイルから発生した磁界が隣接する無指向性アンテナのループコイルに漏洩して、同時に複数の無指向性アンテナからデータが出力されてしまう。即ち、無指向性アンテナの位置により物品の位置を判断する場合には、正確に判断することができなくなってしまう。そこで本発明は、漏洩磁界を防止するために無指向性アンテナが隣接する部分に、シールド部材を配置するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、X,Y,Z軸平面の何れか2つの軸平面に立体ループコイルを配置し、残りの軸平面に沿って平面ループコイルを配置する。そして各立体ループコイルの軸が互いに直交するように構成し、平面ループコイルをその軸に対して平行に配置するので、非接触情報記録媒体の向きに関わらず、この非接触情報記録媒体に記録された情報を電波として受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。このリーダライタ100は、リーダライタ100との間でデータの授受を行ってシステム全体を制御するPC50によって制御される。リーダライタ100は、外部のPC50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないICカード(RFタグ)との電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
【0017】
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、ICカード(RFタグ)(非接触情報記録媒体)の構成を先に説明しておく。図2は、ICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。このICカード(RFタグ)200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、アンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、ICカード(RFタグ)200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0018】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、ICカード(RFタグ)200に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波として外部に放射される。次に、ICカード(RFタグ)200がリーダライタ100に近接すると、アンテナ20が電力供給用信号を受信し、電力生成回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、RFタグ内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
【0019】
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してICカード(RFタグ)200が規格に合致したICカード(RFタグ)であると認識する。それにより、以後リーダライタ100とICカード(RFタグ)200の間でポーリングが行われる。
【0020】
図3は本発明の無指向性アンテナの各軸平面のループコイルを分解し、ICカードの向きと磁力線の関係を説明する図である。尚、説明の都合上、図3(a)の向きをZ軸平面、図3(b)の向きをY軸平面、図3(c)の向きをX軸平面と呼ぶ。まずZ軸平面では、ループコイル31が平面上に構成されていると仮定すると、ループコイル31に対して平行に配置されたICカード200aに対して磁力線30が略直角に交差するようになる。またY軸平面では、ループコイル32はZ軸平面に対して垂直に構成されているので、ICカード200aに対して垂直に配置されたICカード200bに対して磁力線33が略直角に交差するようになる。またX軸平面では、ループコイル34はZ軸平面に対して垂直に構成され、且つY軸平面に対して90度回転しているので、ICカード200bに対して90度回転したICカード200cに対して磁力線35が略直角に交差するようになる。即ち、図3(d)のように、X,Y,Z軸平面のX,Y軸平面に立体ループコイル34、32を配置し、残りのZ軸平面に沿って平面ループコイル31を配置する。そして各立体ループコイル34、32の軸が互いに直交するように構成し、平面ループコイル31をその軸に対して平行に配置するので、ICカード200の向きに関わらず、このICカード200に記録された情報を電波として受信することができる。
【0021】
即ち、X,Y及びZ軸平面のループコイル34、32、31を一体に構成して無指向性アンテナ40を構成すると、例えば、ICカード200aに対してはループコイル31により電波の授受が行なわれ、ICカード200bに対してはループコイル32により電波の授受が行なわれ、ICカード200cに対してはループコイル34により電波の授受が行なわれことになる。従って、ICカード200がどのような方向に配置されても、無指向性アンテナ40により電波を授受することができる。尚、各ICカードに磁力線が直角に交差した場合が、最も起磁力が大きくなり、効率よく電波の授受が行なわれるが、所定の角度になっても電波の授受は可能である。また、ICカードが傾いた場合、異なる2つの軸平面のループコイルからの磁力線がICカードと交差することがあるが、この場合は、双方のループコイルから情報を受信してOR処理することが行われる。
【0022】
図4は本発明の無指向性アンテナの各軸平面のループコイルを分解して説明する図である。同じ構成要素には図3と同じ参照番号を付して説明する。図4(a)はZ軸平面のループコイルの図であり、例えば、平面状に巻回したコイル線材31bが保持部材31aにより保持され、保持部材31aの一部にコイル線材31bの両端が外部に接続される接続部31cを備えて構成される。また、図4(b)はY軸平面のループコイルの図であり、例えば、平面状に巻回したコイル線材32dが保持部材32a〜32cにより夫々保持され、保持部材32aと32cの一部にコイル線材32dの両端が外部に接続される接続部32eを備えて構成される。また、図4(c)はX軸平面のループコイルの図であり、例えば、平面状に巻回したコイル線材34dが保持部材34a〜34cにより夫々保持され、保持部材34aと34cの一部にコイル線材34dの両端が外部に接続される接続部34eを備え、図4(b)のループコイル32に対して90度回転して構成される。
【0023】
図5は本発明の無指向性アンテナの外観構成を示す斜視図である。この無指向性アンテナ40は、樹脂等で構成され、内部の各軸平面のループコイルを保護して保持するカバー41と、各ループコイルの両端と外部のループコイル選択器(後述)とを接続するコネクタ43と、カバー41の底部に取り付けられたブッシュ44と、を備えて構成される。そして、読み取るICカード又はRFタグを取り付けた物品は、設置部42に載置して情報を読み取る。この実施形態では、例えば、RFタグを取り付けた複数の物品を、向きを意識せずに設置部42に載置しても、各軸平面のループコイルが時分割に切り替わって読み取ることができる。従って、RFタグの向きがランダムな物品を袋に入れて設置部42に載置するだけで、袋の中の情報を一括して読み取ることができる。また、無指向性アンテナ40の外観形状としては、各軸平面の少なくとも2つの軸平面の端面形状を、矩形又は楕円形とすることにより、ブック形状に構成することができる。尚、端面形状とは、ループコイルの軸方向一端面側から見た形状をいう。
【0024】
図6は本発明の第1の実施形態に係る情報読み取り装置のブロック図である。この情報読み取り装置300は、前述した無指向性アンテナ40と、無指向性アンテナ40を構成する各ループコイル(以下、LCと記す)を順次選択するループコイル選択器52と、ICカードのアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を非接触にて行うリーダ又はリーダライタ(以下、RWと記す)100と、ループコイル選択器52及びRW100を制御するPC(制御手段)50と、を備えて構成される。
この情報読み取り装置300のPC50は、ループコイル選択器52により無指向性アンテナ40を構成する各LC34、32、31をのうちの一つを一定時間毎に選択的に切り換え使用しながら、RW100によりICカード200のアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を非接触にて行うものである。
【0025】
図7は第1の実施形態に係る情報読み取り装置のループコイル選択器の選択方法を説明するフローチャートである。図6を参照して説明する。尚、この説明では、説明を簡略化するために、1つのICカードの情報を読む場合について説明する。図7(a)は、選択手順を等間隔に順次行なう方法である。例えば、イニシャルポイントとしてループコイル選択器52はX軸平面LC34を選択する(S1)。その状態でPC50がRW100を介してX軸平面LC34から情報が読めるか否かをチェックし(S2)、読めればステップS7に進んでそのデータをPC50に取り込む(S7)。ステップS2でデータが読めなければ、ループコイル選択器52はY軸平面LC32を選択する(S3)。その状態でPC50がRW100を介してY軸平面LC32から情報が読めるか否かをチェックし(S4)、読めればステップS7に進んでそのデータをPC50に取り込む(S7)。ステップS4でデータが読めなければ、ループコイル選択器52はZ軸平面LC31を選択する(S5)。その状態でPC50がRW100を介してZ軸平面LC31から情報が読めるか否かをチェックし(S6)、読めればそのデータをPC50に取り込む(S7)。このステップで終了しても良いが、全ての軸平面で読めない場合もあるので、ステップS1に戻って動作を繰り返すようにしても良い。
【0026】
図7(b)は、選択手順に重み付けをして行う方法である。例えば、イニシャルポイントとしてループコイル選択器52はZ軸平面LC31を選択する(S10)。その状態でPC50がRW100を介してZ軸平面LC31から情報が読めるか否かをチェックし(S11)、読めればステップS17に進んでそのデータをPC50に取り込む(S17)。ステップS11でデータが読めなければ、Z軸平面LC31の読み取り動作をn回繰り返した後(S12)、ループコイル選択器52はX軸平面LC34を選択する(S13)。その状態でPC50がRW100を介してX軸平面LC34から情報が読めるか否かをチェックし(S14)、読めればそのデータをPC50に取り込む(S17)。ステップS14でデータが読めなければ、ループコイル選択器52はY軸平面LC32を選択する(S15)。その状態でPC50がRW100を介してY軸平面LC32から情報が読めるか否かをチェックし(S16)、読めればそのデータをPC50に取り込む(S17)。このステップで終了しても良いが、全ての軸平面で読めない場合もあるので、ステップS10に戻って動作を繰り返すようにしても良い。
【0027】
図7(c)は、選択手順を学習して行う方法である。例えば、イニシャルポイントとしてループコイル選択器52は最も読み取り回数の多い軸平面を選択する(S21)。尚、読み取り回数はPC50のメモリに計数値を記憶するようにしておく。次にその状態でPC50がRW100を介して接続した軸平面から情報が読めるか否かをチェックし(S22)、読めればその軸平面の計数値に1を加算して(S27)、そのデータをPC50に取り込む(S28)。次にループコイル選択器52は2番目に読み取り回数の多い軸平面を選択する(S23)。次にその状態でPC50がRW100を介して接続した軸平面から情報が読めるか否かをチェックし(S24)、読めればその軸平面の計数値に1を加算して(S27)、そのデータをPC50に取り込む(S28)。次にループコイル選択器52は3番目に読み取り回数の多い軸平面を選択する(S25)。次にその状態でPC50がRW100を介して接続した軸平面から情報が読めるか否かをチェックし(S26)、読めればその軸平面の計数値に1を加算して(S27)、そのデータをPC50に取り込む(S28)。このステップで終了しても良いが、全ての軸平面で読めない場合もあるので、ステップS21に戻って動作を繰り返すようにしても良い。
【0028】
図8は本発明の無指向性アンテナを複数配置した第2の実施形態に係る情報読み取り装置の構成を示す図である。この情報読み取り装置310は、複数の無指向性アンテナ40(この例ではA〜I)が支持部材56上に配置され、各無指向性アンテナが隣接する部分に磁界を遮断するシールド部材55が備えられている。これにより、多数の物品や、大型の物品に取り付けられたRFタグの情報を一括して読み取ることができる。尚、情報の読み取りを正確に行なうためには、各無指向性アンテナA〜Iは隣接する部分の間隔を極力狭くする必要がある。
【0029】
図9は本発明の第2の実施形態に係る情報読み取り装置のブロック図である。同じ構成要素には図6と同じ参照番号を付して説明する。この情報読み取り装置320は、前述の複数の無指向性アンテナ40(この例ではA〜I)と、無指向性アンテナ40を構成する各軸平面のループコイルを順次選択するループコイル選択器52と、各無指向性アンテナA〜Iの何れか一つを有効とするブロック選択器57と、ICカード200のアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を非接触にて行うRW100と、ループコイル選択器52、ブロック選択器57及びRW100を制御するPC(制御手段)50と、を備えて構成される。
この情報読み取り装置320のPC50は、ブロック選択器57により各無指向性アンテナA〜Iの何れか一つを選択し、選択された無指向性アンテナを構成する各軸平面のループコイルをループコイル選択器52により切り替える動作を、各無指向性アンテナの全てに対して行なうことにより、RW100によりICカード200のアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を非接触にて行うものである。
【0030】
図10は第2の実施形態に係る情報読み取り装置の選択方法を説明するフローチャートである。図9を参照して説明する。尚、説明を簡略化するために、データが読めたか否かの判定を省略して説明する。図10(a)は、各ブロック毎に全ての軸平面のデータを読み終わってから次のブロックを選択する方法である。即ち、PC50はイニシャルとしてブロック選択器57により最初のブロックが選択される(例えば、無指向性アンテナA)(S31)。その状態でループコイル選択器52により順次選択して各軸平面のデータをRW100により読み取る(S32)。次に、PC50はブロック選択器57により次のブロックを選択する(例えば、無指向性アンテナB)(S33)。そして最終ブロックになったかをチェックして(S34)、最終ブロックでなければステップS32に戻って繰り返す。
【0031】
図10(b)は、各ブロック毎に同じ軸平面を読み終わってから次のブロックを選択し、ループコイル選択器により次の軸平面のLCを選択して繰り返す方法である。即ち、PC50はイニシャルとしてブロック選択器57により最初のブロックを選択する(例えば、無指向性アンテナA)(S41)。その状態でループコイル選択器52によりX軸平面のLCを選択してデータをRW100により読み取る(S42)。次に、PC50はブロック選択器57により次のブロックを選択する(例えば、無指向性アンテナB)(S43)。そして最終ブロック(例えば、無指向性アンテナI)になったかをチェックして(S44)、最終ブロックでなければステップS42に戻って繰り返す。ステップS44で最終ブロックになると、PC50はブロック選択器57により最初のブロックを選択する(例えば、無指向性アンテナA)(S45)。その状態でループコイル選択器52によりY軸平面のLCを選択してデータをRW100により読み取る(S46)。次に、PC50はブロック選択器57により次のブロックを選択する(例えば、無指向性アンテナB)(S47)。そして最終ブロック(例えば、無指向性アンテナI)になったかをチェックして(S48)、最終ブロックでなければステップS46に戻って繰り返す。ステップS48で最終ブロックになると、PC50はブロック選択器57により最初のブロックを選択する(例えば、無指向性アンテナA)(S49)。その状態でループコイル選択器52によりZ軸平面のLCを選択してデータをRW100により読み取る(S50)。次に、PC50はブロック選択器57により次のブロックを選択する(例えば、無指向性アンテナB)(S51)。そして最終ブロック(例えば、無指向性アンテナI)になったかをチェックして(S52)、最終ブロックでなければステップS50に戻って繰り返す。ステップS52で最終ブロックになると、ステップS41に戻って繰り返す。
【0032】
以上の通り本発明によれば、X,Y,Z軸平面のX,Y軸平面に立体ループコイル34、32を配置し、残りのZ軸平面に沿って平面ループコイル31を配置する。そして各立体ループコイル34、32の軸平面が互いに直交するように構成し、平面ループコイル31をその軸平面に対して平行に配置するので、ICカード200の向きに関わらず、このICカード200に記録された情報を電波として受信することができる。
また、立体ループコイル34、32の端面形状は、矩形又は楕円形であるので、無指向性アンテナ40の形状を小型で薄く構成することができる。
また、PC50がループコイル選択器52を一定時間間隔により順次選択しながらRW100によりデータの授受を行なうので、各軸平面のループコイルからのデータを均一に受信することができる。
【0033】
また、予めデータ授受の高い軸平面を決めておき、その軸平面を優先的に選択して、使用時間を長くするようにするので、ICカード200に記録された情報を受信する確率を高めることができる。
また、ループコイル毎にデータの授受回数を計数しておき、その授受回数が多いループコイルから選択して、順次少ないループコイルに移行するようにループコイル選択器52を制御するので、使用状況により変化する授受回数を学習することができる。
また、ブロック選択器57により1つの無指向性アンテナ40を有効とし、選択された無指向性アンテナ40を構成する各軸平面のループコイルをループコイル選択器52により順次選択する。そして1つの無指向性アンテナ40の全てのループコイルによるデータの授受が終了すると、次の無指向性アンテナを有効として、この動作を各無指向性アンテナの全てに対して行なうので、各無指向性アンテナからのデータの有無を確定しながら位置を移動することができる。
【0034】
また、ループコイル選択器52により1つの軸平面のループコイルを選択して、この状態でブロック選択器57により全ての無指向性アンテナA〜Iを順次選択し、一巡すると、ループコイル選択器52により次の軸平面のループコイルを選択して前記と同じ動作を繰り返し、全ての軸平面の選択が終了するまで繰り返すので、とりあえず全体の状況を把握することができる。
また、各無指向性アンテナA〜Iが隣接する部分に、シールド部材55を配置したので、ループコイルから発生した磁界が隣接する無指向性アンテナのループコイルに漏洩することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。
【図2】ICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の無指向性アンテナの各軸平面のループコイルを分解し、ICカードの向きと磁力線の関係を説明する図である。
【図4】本発明の無指向性アンテナの各軸平面のループコイルを分解して説明する図である。
【図5】本発明の無指向性アンテナの外観構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る情報読み取り装置のブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る情報読み取り装置のループコイル選択器の選択方法を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の無指向性アンテナを複数配置した第2の実施形態に係る情報読み取り装置の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る情報読み取り装置のブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る情報読み取り装置の選択方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
31 Z軸平面ループコイル、32 Y軸平面ループコイル、34 X軸平面ループコイル、40 無指向性アンテナ、41 カバー、43 コネクタ、44 ブッシュ、50 PC、52 ループコイル選択器、57 ブロック選択器、100 リーダ又はリーダライタ、300 情報読み取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触情報記録媒体に記録された記録データを電波として受信する無指向性アンテナであって、
互いに直交し合うX軸平面、Y軸平面及びZ軸平面のうちの2つの軸平面に対して夫々直交する軸を有した2つの立体ループコイルと、他の1つの軸平面と平行に配置された平面ループコイルと、を備えたことを特徴とする無指向性アンテナ。
【請求項2】
前記立体ループコイルの端面形状は、矩形又は楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の無指向性アンテナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無指向性アンテナと、該無指向性アンテナを構成する各ループコイルの何れか1つを選択するループコイル選択器と、前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダ又はリーダライタと、前記ループコイル選択器及び前記リーダ又はリーダライタを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ループコイル選択器により前記各ループコイルのうちの一つを一定時間毎に選択的に切り換え使用しながら、前記リーダ又はリーダライタにより前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うことを特徴とする情報読み取り装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ループコイル選択器により前記各軸平面のループコイルのうちの特定のループコイルの使用時間を長くすることを特徴とする請求項3に記載の情報読み取り装置。
【請求項5】
前記各ループコイルからの前記記録データの授受回数を前記ループコイル毎に記録する授受回数記録手段を備え、
前記制御手段は、前記ループコイル選択器により前記授受回数記録手段に記録された授受回数の多いループコイルから順次選択することを特徴とする請求項3又は4に記載の情報読み取り装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の複数の無指向性アンテナと、該無指向性アンテナを構成する各ループコイルの何れか1つを選択するループコイル選択器と、前記各無指向性アンテナの何れか一つを有効とするブロック選択器と、前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダ又はリーダライタと、前記ループコイル選択器、ブロック選択器及び前記リーダ又はリーダライタを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ブロック選択器により前記各無指向性アンテナの何れか一つを選択し、該選択された無指向性アンテナを構成する各ループコイルを前記ループコイル選択器により順次選択する動作を前記各無指向性アンテナの全てに対して行ないながら、前記リーダ又はリーダライタにより前記非接触情報記録媒体のアンテナを介して、所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うことを特徴とする情報読み取り装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ブロック選択器により前記各無指向性アンテナの何れか一つを選択し、該選択された無指向性アンテナを構成する各軸平面中の同じ軸平面のループコイルを前記ループコイル選択器により選択する動作を前記各無指向性アンテナの全てに対して行い、該動作が終了すると前記ループコイル選択器により他のループコイルを選択して前記動作を繰り返すことを特徴とする請求項6に記載の情報読み取り装置。
【請求項8】
前記各無指向性アンテナが隣接する部分に、シールド部材を配置したことを特徴とする請求項6又は7に記載の情報読み取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−214926(P2007−214926A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33087(P2006−33087)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】