説明

無機微粒子分散ペースト組成物

【課題】良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性に優れるとともに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマーとからなる共重合体、無機微粒子、有機溶剤及びHLB値が16以下の化合物を含有する無機微粒子分散ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性に優れるとともに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性粉末、セラミック粉末等の無機微粒子を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物が、様々な形状の焼結体を得るために用いられている。特に、微粒子として蛍光体を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)等に用いられ、近年需要が高まりつつある。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)の誘電体膜の形成には、誘電体微粒子としてガラス粉末を樹脂バインダー中に分散させたガラスペースト組成物が用いられている。
このようなガラスペースト組成物は、例えば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等を用いた塗布法、シート状に加工するためのキャスティング法、ダイコート法等の塗工法等により所定の形状に加工した後、脱脂及び焼成することで必要な形状の焼結体とすることができる。なかでも、PDPを製造する場合、厚膜を形成可能なダイコート法等の塗工法が好適に用いられている。
【0004】
ガラスペースト組成物を用いた焼結体の製造の生産性及び作業性を高めるためには、低温分解性を有する樹脂バインダーを用いることが好ましい。このような低温分解性を有する樹脂バインダーとしては、一般的にエチルセルロースが用いられている。
ところが、エチルセルロースを樹脂バインダーとして含有するペースト組成物は、ガラス焼結体を製造すると、エチルセルロースが分解時にガラス表面に存在する酸素を取り込んでしまうという性質があったため、使用できるガラスの種類が限られるという問題があった。
【0005】
一方、例えば、特許文献1には、熱分解性の良好なアクリル樹脂を用いたペースト組成物が開示されている。このようなアクリル樹脂を含有するガラスペースト組成物は、アクリル樹脂が分解時に酸素を取り込む性質がないため、ガラスの種類の選択の幅を広げることができる。
しかしながら、このようなアクリル樹脂を用いてなるガラスペースト組成物は、レベリング性に劣るという問題があった。そのため、例えば、アクリル樹脂を用いてなるガラスペースト組成物をPDPの製造のためにダイコート法等により成膜すると、成膜時に形成される膜表面の凹凸が解消されないという問題があった。また、ガラスペースト組成物の粘度を下げると、レベリング性の改善は図れるが印刷が困難になる場合が多く、印刷性を保持するために必要なある程度の粘度を保持しながらも良好なレベリング性を示すアクリル樹脂を用いたペースト組成物は殆ど知られていない。
【特許文献1】特開2000−104053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性に優れるとともに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマーとからなる共重合体、無機微粒子、有機溶剤及びHLB値が16以下の化合物を含有する無機微粒子分散ペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、無機微粒子としてガラス粉末を含有し、バインダー成分としてポリオキシアルキレン(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマーとからなる共重合体を含有するペースト組成物に、HLB値が16以下の化合物を添加することで、驚くべきことに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能であるとともに、良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性が極めて良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物(以下、単に本発明のペースト組成物ともいう)は、HLB値が16以下の化合物(以下、本発明に係る化合物ともいう)を含有する。
本発明に係る化合物を含有することで、本発明のペースト組成物はレベリング性が良好となる。これは、本発明に係る化合物を含有することで、後述するポリオキシアルキレン(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマーとからなる共重合体と無機微粒子との濡れ性が改善されるためであると考えられる。
【0010】
本発明のペースト組成物において、上記本発明に係る化合物としては特に限定されず、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及び、ノニオン系界面活性剤等が挙げられ、なかでも、ノニオン系界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤を含有することで、本発明のペースト組成物のレベリング性は極めて良好となる。
【0011】
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の脂肪酸系;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルや、アルキルグルコシド等の高級アルコール系;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。なかでも、ソルビタン脂肪酸エステルやポリオキエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系が好適である。
【0012】
このようなHLB値を有するノニオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、ノイゲンET−83、ノイゲンET−102、ノイゲンET−143、ノイゲンET−160、ノイゲンET−170、ノイゲンET−69、ノイゲンET−89、ノイゲンET−109、ノイゲンET−129、ノイゲンET−149、ノイゲンET−159、ノイゲンET−189、ノイゲンET−97、ノイゲンET−107、ノイゲンET−127、ノイゲンET−147、ノイゲンET−157、ノイゲンET−167、ノイゲンET−187、ノイゲンET−87B、ノイゲンET−137B、ノイゲンET−147A、ノイゲンET−207A、ノイゲンET−65、ノイゲンET−95、ノイゲンET−115、ノイゲンET−135、ノイゲンET−165、ノイゲンES−99、ノイゲンES−129、ノイゲンES−149、ノイゲンES−169、ソルゲン−30、ソルゲン−40、ソルゲン−50(以上、第一工業製薬社製)、エマルゲン−103、エマルゲン−104P、エマルゲン−105、エマルゲン−106、エマルゲン−108、エマルゲン−109P、エマルゲン−120、エマルゲン−210P、エマルゲン−306P、エマルゲン−404、エマルゲン−408、エマルゲン−409P、エマルゲン−420、レオドールSP−L10、レオドールSP−P10、レオドールSP−O10V、レオドールSP−O30V、レオドールTW−L106、レオドールTW−S106(以上、花王社製)、NIKKOL BL−2、NIKKOL BL−4.2、NIKKOL BL−9EX、NIKKOL BC−2、NIKKOL BC5.5、NIKKOL BC7、NIKKOL BC10、NIKKOL BC15、NIKKOL BO−2V、NIKKOL BO−7V、NIKKOL BO−10V、NIKKOL BO−15V(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明のペースト組成物において、上記本発明に係る化合物は、HLB値の上限が16である。16を超えると、本発明のペースト組成物が良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性に優れたものとできなくなる。本発明に係る化合物のHLB値の好ましい下限は6である。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性又は親油性のバランスを示す指標であり、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。なお、上記HLB値とは、例えば、下記グリフィンの式
[(親水部分の分子量)÷(全体の分子量)×100]/5
を用いて算出される値である。
【0014】
上記本発明に係る化合物の含有量としては用いる無機粒子の重量分によって好適な量が決まることから特に限定されず、可能な限り少量な方が好ましいが、好ましい下限は0.001重量%、好ましい上限は5重量%である。0.001重量%未満であると、本発明のペースト組成物のレベリング性が不充分となることがあり、5重量%を超えると、印刷性への悪影響を与えたり、焼結時の残留炭素の原因となったりする。より好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は2重量%である。
【0015】
本発明のペースト組成物は、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマーとからなる共重合体(以下、本発明に係る共重合体ともいう)を含有する。
上記本発明に係る共重合体は、本発明のペースト組成物においてバインダー樹脂として働くものである。ここで、本発明のペースト組成物では、上記本発明に係る共重合体と、(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体とを混合したものであってもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0016】
上記(メタ)アクリレートモノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、炭素数が10以下の(メタ)アクリレートモノマーを1種又は2種以上用いることが好ましい。
【0017】
上記ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートモノマーとしては特に限定されず、例えば、ポリメチレングリコール、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられ、更に、ポリプロピレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルは、より低温で分解するため、特に好適に用いられる。
【0018】
本発明のペースト組成物において、上記本発明に係る共重合体は、炭素数10以下の(メタ)アクリレートモノマーと、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートモノマーとに由来する構成単位を有することが好ましい。このような組成のバインダーは、分解温度が低いため本発明のペースト組成物が低温焼成可能となるからである。なお、本明細書において、低温焼成とは、本発明に係る共重合体、有機溶剤、及び、本発明に係る化合物の初期重量の99.5%が失われる焼成温度が低温であることを意味し、窒素置換等をしない通常の空気雰囲気下で、焼成温度が250〜400℃である場合をいう。
【0019】
上記本発明に係る共重合体の重合方法としては特に限定されず、通常の(メタ)アクリルモノマーの重合に用いられる方法が挙げられ、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。
【0020】
上記本発明に係る共重合体におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算数平均分子量の範囲は、用いる本発明に係る共重合体のガラス転移温度に依存するが、好ましくは下限が2000、好ましい上限が10万である。ガラス転移温度が室温よりも高い本発明に係る共重合体においては、上限が5万であることが好ましく、さらに好ましい上限は15000である。ポリスチレン換算数平均分子量が上記範囲を外れると、本発明のペースト組成物のレベリング性が不充分となることがある。
また、GPCによりポリスチレン換算数平均分子量を測定する際のカラムとしてはSHOKO社製カラムLF−804等が挙げられる。
【0021】
また、本発明のペースト組成物において、上記本発明に係る共重合体の含有量は、印刷可能な限り少量であることが好ましいが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は15重量%である。1重量%未満であると、本発明のペースト組成物の成形性が劣ることがあり、15重量%を超えると、焼成後の残炭量が増加することで焼成後の品質に影響が出たり、焼成により厳しい環境が必要となったりして好ましくない。
【0022】
本発明のペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子としては、本発明のペースト組成物を用いて製造する焼結体に合わせて適宜決定され、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラスの低融点ガラス、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属錯体、YS:Eu、(SrCaBaMg)(POCl:Eu、LaPO:Ce,Tb、Y:Eu、Ca10(POFCl:Sb,Mn、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Eu、CaWO、GdS:Tb、(Y,Sr)TaO:Nb等の蛍光体等からなる群より選択される少なくとも1種を原料とするものが好適に用いられる。
なかでも、本発明のペースト組成物は、上述した本発明に係る化合物を含有するため、例えば、従来のアクリル樹脂を含有するペースト組成物では使用可能な種類に制限のあったガラス粉末であっても、上記無機微粒子として好適に使用することができる。
上記ガラス粉末としては特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の低融点ガラス等が挙げられる。
【0023】
上記無機微粒子の添加量としては特に限定されないが、本発明のペースト組成物のうち本発明に係る共重合体、有機溶剤及び本発明に係る化合物等の無機微粒子以外の成分からなるバインダー樹脂組成物100重量部に対して好ましい下限が10重量部、好ましい上限が300重量部である。10重量部未満であると、充分なチキソ性が得られないことがあり、300重量部を超えると、無機微粒子を分散させることが困難となることがある。より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は250重量部である。
また、上記無機微粒子がガラス粉末である場合、該ガラス粉末の本発明のペースト組成物における含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は95重量%であり、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は85重量%未満である。
【0024】
本発明のペースト組成物に含有される有機溶剤は、1気圧下での沸点の好ましい下限が150℃、好ましい上限が350℃である。上記有機溶剤がこの範囲を満たすことで印刷プロセス時の有機溶剤の揮発が抑制されることで粘度が安定し、最終的に印刷性が向上する。
【0025】
上記沸点の下限が150℃、上限が350℃である有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールドデシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールドデシルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノnブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノnブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノオレエートアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコール、フェニルプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコール 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートテトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、ターピネアセテート、ジヒドロターピネオール、テキサノール、ベンジルアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、クレゾール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
本発明のペースト組成物は、20℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を5rpmに設定して測定した時の粘度が100Pa・s以上、かつ、1000Pa・s未満であることが好ましい。100Pa・s未満であると、ダイコート法等により成膜した後に静置して乾燥させる際に自然流延してしまうことがある。より好ましいのは250Pa・s以上、かつ、1000Pa・s未満の範囲である。
【0027】
本発明のペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、上述した本発明に係る共重合体、無機微粒子、有機溶剤及び本発明に係る化合物等を従来公知の攪拌方法、具体的には例えば、3本ロール等で攪拌を行えばよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性に優れるとともに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
(合成例1)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、表1に示したとおり、メチルメタクリレート(MMA)80重量部、水素結合性官能基を有し、かつ、ポリオキシアルキレン側鎖を含有する(メタ)アクリレートとして、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPP−1000)20重量部、連鎖移動剤(DDM)0.5重量部、有機溶剤としてターピネオール50重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながらモノマー混合溶液温が95℃に達するまでに昇温した。モノマー混合溶液温が95℃に達した後、重合開始剤を酢酸エチルで希釈した溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤を含む酢酸エチル溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、GPCによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は5000であった。
【0031】
(合成例2〜9)
表1に示した組成物、組成比、連鎖移動剤の重量部を変えたこと以外は、合成例(1)と同様にして(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を得た。ポリスチレン換算による数平均分子量は表1に示した。
【0032】
(合成例10)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、表1に示した組成比でエチルセルロース(STD100、Aldrich社製)をターピネオールと混合し、エチルセルロースのターピネオール溶液を得た。ポリスチレン換算による数平均分子量は表1に示した。
【0033】
(実施例1)
合成例1で得られた(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液に対して、ターピネオール、ノニオン系界面活性剤、シリカ粉末 シベライトM6000(S.C.R.SIBELCO社製)を配合し、高速撹拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行い、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。用いたポリマー溶液、界面活性剤、配合組成は表2に示した。なお、各配合比率はシリカ粉末を66.7部に固定し、全体の粘度が良好な印刷性を与えるよう250Pa・sとなるように決定した。なお、粘度はB型粘度計(BROOK FILED社製、DVII+Pro) を利用して、回転数5rpmについて20℃における値として求めた。
【0034】
(実施例2〜8)
合成例2〜8で得られた(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を、それぞれ実施例2〜8として表2に記載した界面活性剤との組み合わせで用いた以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0035】
(比較例1〜3)
合成例1、4、7で得られた(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を用い、ノニオン系界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。組成等を表3に示した。
【0036】
(比較例4)
合成例9で得られた(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。組成等を表3に示した。
【0037】
(比較例5)
合成例9で得られた(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液に対し、ターピネオール、ノニオン系界面活性剤、シリカ粉末 シベライトM6000(S.C.R.SIBELCO社製)を配合し、高速撹拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行い、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。用いたポリマー溶液、界面活性剤、配合組成は表3に示した。なお、各配合比率はシリカ粉末を66.7部に固定し後述するレベリング性が良くなるように固形分量を調整した。
【0038】
(比較例6〜8)
合成例2、5、8で得られたポリマー溶液に対して、表3に示した界面活性剤を組み合わせたこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0039】
(比較例9)
合成例10で得られたエチルセルロースのターピネオール溶液を用い、界面活性剤を用いないこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。組成等を表3に示した。
【0040】
(評価)
実施例1〜8、比較例1〜9で得られた無機微粒子分散ペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表2及び3に示した。
【0041】
(1)レベリング性
鋭利な先端を持つピックをペースト表面から5mmの高さに角をたて、その角が平らになる時間を測定した。バインダー樹脂組成物としてエチルセルロースを有する無機微粒子ペースト組成物が3秒であることから、3秒以内であるものをレベリング性○、3秒以上であるものを×とした。
【0042】
(2)焼成実験
ガラス基板上にダイコート法により50μmの無機微粒子分散ペースト組成物膜を作製し、400℃で30分焼成した。焼成後、色がないものを焼結性○、色のあるものを×とした。
【0043】
(3)粘度
ダイコート法による印刷が可能な粘度を有していたものを○、有していなかったものを×とした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、良好な印刷性が得られる粘度を保持したままレベリング性に優れるとともに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリルモノマーとからなる共重合体、無機微粒子、有機溶剤及びHLB値が16以下の化合物を含有することを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項2】
HLB値が16以下の化合物は、ノニオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項3】
無機微粒子は、ガラス粉末であり、40〜95重量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の無機微粒子分散ペースト組成物。

【公開番号】特開2008−63541(P2008−63541A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246054(P2006−246054)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】