説明

無機質球状化粒子製造用バーナ、無機質球状化粒子製造装置、及び無機質球状化粒子の製造方法

【課題】本発明は、無機質原料粉体Xの粒径(平均粒度)に依存することなく、所望の粒径とされた無機質球状化粒子を効率よく生成可能な無機質球状化粒子製造用バーナ、無機質球状化粒子製造装置、及び無機質球状化粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ノズル部28の先端33の中央に設けられ、かつキャリアガスに輸送された無機質原料粉体Xを輸送する原料粉体輸送孔34と、原料粉体輸送孔34に配置された溝幅変更部材37と、原料粉体輸送孔34に露出されたノズル部28の先端33の面と溝幅変更部材37の先端部61との間に設けられた環状の溝であり、かつ燃焼室31にキャリアガスにより輸送された無機質原料粉体を噴出する原料粉体噴出用溝39と、を有し、ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質球状化粒子製造用バーナ、該無機質球状化粒子製造用バーナを備えた無機質球状化粒子製造装置、及び該無機質球状化粒子製造装置を用いた無機質球状化粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機質原料粉体を火炎により溶融させることで、無機質球状化粒子を製造することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
このような無機質球状化粒子を製造する際には、無機質球状化粒子製造用バーナを構成するノズル部が形成する火炎(燃料ガス及び支燃性ガスの燃焼により形成される火炎)により、無機質球状化粒子を溶融することが行われる。
【0003】
図7は、従来の無機質球状化粒子製造用バーナを備えた無機質球状化粒子製造装置の概略構成を示す図である。
ここで、図7を参照して、従来の無機質球状化粒子の製造方法について説明する。始めに、原料フィーダーAから切り出された無機質原料粉体が、経路A‘から供給されるキャリアガスに同伴されて酸素・ガス燃焼バーナB(無機質球状化粒子製造用バーナ)に搬送される。
【0004】
この、酸素・ガス燃焼バーナBには、酸素供給設備Cから送られる酸素と、LPG供給設備Dから送られる燃焼ガスと、が供給されている。次いで、炉E内の火炎中で球状化された無機質球状化粒子は、経路Fから炉Eに導入された空気により温度希釈され、後段のサイクロンGや、バグフィルターHにより回収される(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、特許文献2,3には、ノズル部の先端に燃焼室と呼ばれる空間を備え、かつノズル部の延在方向に対して、異なる位置に形成され、かつ独立して制御される第1及び第2の酸素噴出孔を有した無機質球状化粒子製造用バーナが開示されている。
【0006】
特許文献2,3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナは、無機質原料粉体の平均粒度に応じて、第1の酸素噴出孔(旋回流で酸素を噴出する孔)及び第2の酸素噴出孔(斜行直進流で酸素を噴出する孔)から噴出される酸素流量を調整することで、燃焼状態を調整することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−145613号公報
【特許文献2】特許第3331491号公報
【特許文献3】特許第3312228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記無機質球状化粒子製造装置を用いて、効率よく所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子を生成するためには、無機質原料粉体に適した温度履歴を無機質原料粉体に与える必要がある。
【0009】
具体的には、例えば、粒径(平均粒度)の小さい無機質原料粉体(例えば、平均粒度が10μm以下)を溶融させて球状化処理する場合において、無機質原料粉体が長時間火炎中に滞在すると、火炎中で無機質原料粉体同士が衝突して融着する。これにより、無機質球状化粒子の粒径が、所望の粒径よりも大きくなってしまう。
このため、粒径の小さい無機質原料粉体を球状化処理する場合、無機質原料粉体が火炎に滞留する滞留時間を短くする必要がある。
【0010】
また、粒径(平均粒度)の大きい無機質原料粉体(例えば、平均粒度が10μm以上)を溶融させて球状化処理する場合には、無機質原料粉体に十分な熱量を与える為に、無機質原料粉体が火炎に滞留する滞留時間を長くする必要がある。
【0011】
特許文献2,3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナでは、高温の火炎を形成するときには、第2の酸素噴出孔から噴出させる流量を多くし、低温の火炎を形成するときには、第1の酸素噴出孔からの流量を多くする必要がある。
【0012】
このため、特許文献2,3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナでは、高温火炎を形成すると長尺で火炎径の小さい火炎が形成され、低温火炎を形成すると短尺で火炎径の大きい火炎が形成される。つまり、特許文献2,3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナでは、高温火炎の形状と低温火炎の形状とが異なってしまう。
【0013】
したがって、特許文献2,3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを用いて、高融点で粒径の小さい無機質原料粉体を処理する場合、無機質球状化粒子同士が融着するため、所望の粒径とされた無機質球状粒子を生成できない。
また、特許文献2,3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを用いて、低融点で粒径の大きい無機質原料粉体を処理する場合、火炎中における無機質原料粉体の滞留時間を充分に確保することが困難なため、球状化処理を十分に行なうことができない。
【0014】
つまり、従来の無機質球状化粒子製造用バーナでは、所望の粒径とされた無機質球状化粒子を得るために、無機質原料粉体の粒径(平均粒度)に応じて、無機質球状化粒子製造用バーナ自体を交換するか、或いは、無機質球状化粒子製造用バーナを構成するノズル部を交換する必要があった。このため、所望の粒径とされた無機質球状化粒子を効率よく生成できないという問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、無機質原料粉体の粒径(平均粒度)に依存することなく、所望の粒径とされた無機質球状化粒子を効率よく生成可能な無機質球状化粒子製造用バーナ、無機質球状化粒子製造装置、及び無機質球状化粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、先端に火炎を形成し、かつ先端面が平面とされたノズル部と、前記ノズル部の外周側面に配置され、前記ノズル部の先端から突出する筒状部と、前記ノズル部の先端面と前記筒状部の内壁とで囲まれた燃焼室と、前記ノズル部の先端面から露出されるように前記ノズル部の先端の中央に設けられ、酸素または酸素富化空気よりなるキャリアガスに輸送された無機質原料粉体を輸送する原料粉体輸送孔と、前記ノズル部の先端と接触しないように、前記原料粉体輸送孔に配置された溝幅変更部材と、前記原料粉体輸送孔に露出された前記ノズル部の面と前記溝幅変更部材の外周側面との間に設けられた環状の溝であり、かつ前記燃焼室に前記キャリアガス及び前記無機質原料粉体を噴出する原料粉体噴出用溝と、を有し、前記溝幅変更部材は、前記原料粉体噴出用溝の幅のうち、前記ノズル部の先端面に露出された部分の幅を変更可能な構成であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、前記溝幅変更部材は、前記原料粉体輸送孔に配置され、かつ先端に向かうにつれて直径が小さくなる円錐台形状とされた先端部を有すると共に、前記ノズル部の延在方向に前記先端部を移動可能な構成とされていることを特徴とする請求項1記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、前記原料粉体輸送孔は、前記ノズル部の先端面に向かうにつれて、直径が小さくなる円錐台形状であることを特徴とする請求項1または2記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0019】
また、請求項4に係る発明によれば、前記溝幅変更部材は、前記ノズル部の基端を貫通するように、前記ノズル部の延在方向に延在しており、前記ノズル部の基端のうち、前記溝幅変更部材と対向する部分に第1のねじ部を設け、前記溝幅変更部材の外周に、前記第1のねじ部と螺合すると共に、前記先端部を前記ノズル部の延在方向に移動させる第2のねじ部を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0020】
また、請求項5に係る発明によれば、前記先端部の先端面が、前記ノズル部の先端面に対して平行な円形面であることを特徴とする請求項2ないし4のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0021】
また、請求項6に係る発明によれば、前記原料粉体輸送孔の中心軸と前記先端部の中心軸とを一致させたことを特徴とする請求項2ないし5のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0022】
また、請求項7に係る発明によれば、前記ノズル部の先端面は、円形面とされており、前記筒状部は、略円筒形状であることを特徴とする請求項1ないし6のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0023】
また、請求項8に係る発明によれば、前記ノズル部の先端面から露出されるように、前記ノズル部の先端のうち、前記原料粉体噴出用溝よりも外側に位置する部分に設けられ、前記燃焼室に燃料ガスを噴出する複数の燃料ガス噴出孔と、前記ノズル部の先端面から露出されるように、前記ノズル部の先端のうち、前記複数の燃料ガス噴出孔よりも外側に位置する部分に設けられ、前記燃焼室に酸素または酸素富化空気を支燃性ガスとして噴出する複数の支燃性ガス噴出孔と、を有することを特徴とする請求項1ないし7のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0024】
また、請求項9に係る発明によれば、前記原料粉体噴出用溝、前記複数の燃料ガス噴出孔、及び前記複数の支燃性ガス噴出孔を、前記ノズル部の先端面の中心に対して同心円状に配置したことを特徴とする請求項1ないし8のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0025】
また、請求項10に係る発明によれば、前記筒状部に、冷却水を供給するための冷却水用管路を内設したことを特徴とする請求項1ないし9のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナが提供される。
【0026】
また、請求項11に係る発明によれば、請求項1ないし10のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナと、竪型炉と、前記竪型炉と接続され、無機質球状化粒子を捕集する捕集部と、を備え、前記竪型炉上に、前記竪型炉の上端と前記ノズル部の先端とが対向するように、前記無機質球状化粒子製造用バーナを配置したことを特徴とする無機質球状化粒子製造装置が提供される。
【0027】
また、請求項12に係る発明によれば、前記捕集部は、前記竪型炉と接続され、前記無機質球状化粒子のうち、第1の粒子径とされた無機質球状化粒子を捕集するサイクロンと、前記サイクロンと接続され、前記無機質球状化粒子のうち、前記第1の粒子径よりも小さい第2の粒子径とされた無機質球状化粒子を捕集するバグフィルターと、を有することを特徴とする請求項11記載の無機質球状化粒子製造装置が提供される。
【0028】
また、請求項13に係る発明によれば、請求項11または12記載の無機質球状化粒子製造装置を用いた無機質球状化粒子の製造方法であって、前記無機質原料粉体と共に前記燃焼室に噴出される前記キャリアガスの噴出速度が、前記火炎により溶融させる前記無機質原料粉体の粒径に最適な噴出速度となるように、前記原料粉体噴出用溝の幅を変更する工程と、前記燃料ガス及び前記支燃性ガスで形成される火炎により、前記無機質原料粉体を溶融させて、前記無機質球状化粒子を生成する工程と、前記捕集部により、前記無機質球状化粒子を捕集する工程と、を含むことを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の無機質球状化粒子製造用バーナによれば、ノズル部の先端面から露出されるようにノズル部の先端の中央に設けられ、酸素または酸素富化空気よりなるキャリアガスに輸送された無機質原料粉体を輸送する原料粉体輸送孔と、ノズル部の先端と接触しないように、原料粉体輸送孔に配置された溝幅変更部材と、原料粉体輸送孔に露出されたノズル部の面と溝幅変更部材の外周側面との間に設けられた環状の溝であり、かつ燃焼室にキャリアガス及び無機質原料粉体を噴出する原料粉体噴出用溝と、を有し、溝幅変更部材を、原料粉体噴出用溝の幅うち、ノズル部の先端面に露出された部分の幅を変更可能な構成とすることにより、原料粉体噴出用溝の幅を変更するだけで、燃料室に噴出されるキャリアガスの噴出速度を変更することが可能となる。
【0030】
また、燃料室に噴出されるキャリアガスの噴出速度は、火炎中における無機質原料粉体の滞留時間(言い換えれば、火炎が無機質原料粉体を加熱する加熱時間)を決定する。
したがって、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体を処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子を生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ、或いはノズル部を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子を効率よく生成できる。
【0031】
また、本発明の無機質球状化粒子製造装置によれば、上記無機質球状化粒子製造用バーナを備えることにより、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体を処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子を生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ、或いはノズル部を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子を効率よく生成できる。
【0032】
また、本発明の無機質球状化粒子の製造方法によれば、無機質原料粉体と共に燃焼室に噴出されるキャリアガスの噴出速度が、火炎により溶融させる無機質原料粉体の粒径に最適な噴出速度となるように、原料粉体噴出用溝の幅を変更する工程と、燃料ガス及び支燃性ガスで形成される火炎により、無機質原料粉体を溶融させて、無機質球状化粒子を生成する工程と、を含むことにより、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体を処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子を生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ、或いはノズル部を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子を効率よく生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る無機質球状化粒子製造装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す本実施の形態の無機質球状化粒子製造用バーナを拡大した断面図であり、溝幅変更部材を構成する先端部の先端面をノズル部の先端面に対して面一とした状態を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の平面図である。
【図4】図1に示す本実施の形態の無機質球状化粒子製造用バーナを拡大した断面図であり、ノズル部の先端面から溝幅変更部材を構成する先端部を突出させた状態を模式的に示す図である。
【図5】図4に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の平面図である。
【図6】実施例1,2の無機質球状化粒子のガラス化率とd/D(d;ノズル部の先端面が通過する溝幅変更部材の先端部の切断面の直径、D;原料粉体輸送孔の直径)との関係をグラフ化した図である。
【図7】従来の無機質球状化粒子製造用バーナを備えた無機質球状化粒子製造装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の無機質球状化粒子製造装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0035】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る無機質球状化粒子製造装置の概略構成を示す模式図である。図1において、ノズル部28の延在方向は、鉛直方向を示している。
図1を参照するに、本実施の形態の無機質球状化粒子製造装置10は、キャリアガス供給源11と、燃料ガス供給源12と、支燃性ガス供給源13と、原料フィーダー14と、冷却水循環供給源15と、無機質球状化粒子製造用バーナ16と、竪型炉17と、送風ブロア18と、捕集部19を構成するサイクロン21及びバグフィルター23と、空気導入口22と、空気供給管24と、ダクト25,26と、を有する。
【0036】
キャリアガス供給源11は、キャリアガスを原料フィーダー14に供給可能な状態で原料フィーダー14と接続されている。キャリアガスとしては、例えば、酸素または酸素富化空気を用いることができる。
燃料ガス供給源12は、無機質球状化粒子製造用バーナ16に、燃料ガスを供給可能な状態で、無機質球状化粒子製造用バーナ16(具体的には、後述するノズル部28)と接続されている。燃料ガスとしては、例えば、LPG(Liquefied petroleum gas)を用いることができる。
支燃性ガス供給源13は、無機質球状化粒子製造用バーナ16に、支燃性ガスを供給可能な状態で、無機質球状化粒子製造用バーナ16と接続されている。支燃性ガスとしては、例えば、酸素または酸素富化空気を用いることができる。
【0037】
原料フィーダー14は、無機質原料粉体Xを供給するためのものである。原料フィーダー14から供給された無機質原料粉体Xは、キャリアガス供給源11から供給されたキャリアガスにより、無機質球状化粒子製造用バーナ16(具体的には、後述するノズル部28)に輸送される。
無機質原料粉体Xとしては、例えば、シリカ(融点は1722℃)、アルミナ(融点は2053℃)、ジルコニア(融点は2680℃)等を例に挙げることができる。
【0038】
冷却水循環供給源15は、無機質球状化粒子製造用バーナ16の後述する筒状部29に冷却水を供給、及び筒状部29から冷却水を回収可能な状態で、筒状部29と接続されている。つまり、冷却水循環供給源15は、筒状部29に冷却水を供給すると共に、筒状部29から回収した冷却水を冷却し、再度、筒状部29に供給するためのものである。
【0039】
無機質球状化粒子製造用バーナ16は、ノズル部28と、筒状部29と、燃焼室31と、を有する。無機質球状化粒子製造用バーナ16は、竪型炉17の上端とノズル部28の先端とが対向すると共に、無機質球状化粒子製造用バーナ16の先端に形成された燃焼室31が竪型炉17の上端に収容されるように配置されている。
【0040】
図2は、図1に示す本実施の形態の無機質球状化粒子製造用バーナを拡大した断面図であり、溝幅変更部材37を構成する先端部61の先端面61aをノズル部28の先端面33aに対して面一とした状態を模式的に示す図である。
【0041】
図2において、図1に示す無機質球状化粒子製造装置10と同一構成部分には同一符号を付す。また、図2において、Dは、原料粉体輸送孔34のうち、ノズル部28の先端面33aから露出された部分の直径(以下、「直径D」という)を示しており、dは、ノズル部28の先端面33aを通過する平面で溝幅変更部材37を切断した際の切断面の直径(以下、「直径d」という)を示している。
【0042】
図2の場合、溝幅変更部材37を構成する先端部61の先端面61aをノズル部28の先端面33aに対して面一とした状態を示しているため、図2に示す直径dは、溝幅変更部材37の先端面61aの直径を示している。
さらに、図2では、説明の便宜上、無機質球状化粒子製造用バーナ16の構成要素ではない、キャリアガス供給源11、燃料ガス供給源12、支燃性ガス供給源13、原料フィーダー14、及び冷却水循環供給源15を図示する。
【0043】
図2を参照するに、ノズル部28は、鉛直方向に延在しており、火炎が形成される先端33と、原料粉体輸送孔34と、基端35と、原料粉体供給管36と、溝幅変更部材37と、原料粉体噴出用溝39と、燃料ガス供給管41と、支燃性ガス供給用空間42と、複数の燃料ガス噴出孔44と、複数の支燃性ガス噴出孔45と、を有する。
【0044】
ノズル部28の先端33は、略円柱形状とされており、火炎が形成される先端面33aと、筒状部29の内壁と接触する外周側面33bと、を有する。
ノズル部28の先端面33aは、ノズル部28の延在方向に対して直交する平面とされている。ノズル部28の先端面33aは、円形面とされており、燃焼室31により露出されている。
【0045】
図2を参照するに、原料粉体輸送孔34は、ノズル部28の先端面33aから露出されるように、ノズル部28の先端33の中央に設けられている。原料粉体輸送孔34は、酸素または酸素富化空気よりなるキャリアガスに輸送された無機質原料粉体Xをノズル部28の先端面33a側に輸送すると共に、溝幅変更部材37の先端部61を収容するための孔である。原料粉体輸送孔34は、ノズル部28の先端面33aに向かうにつれて、幅が狭くなる円錐台形状とされている。
ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体輸送孔34の直径Dは、例えば、30mmとすることができる。
【0046】
図2を参照するに、ノズル部28の基端35は、挿入穴52と、第1のねじ部53と、シール材収容溝55と、を有する。
挿入穴52は、ノズル部28の基端35を貫通するように設けられている。挿入穴52は、原料粉体供給管36内に形成される後述する第1の空間58と対向するように配置されている。挿入穴52は、第1の空間58及び原料粉体輸送孔34に溝幅変更部材37を挿入するための穴である。
【0047】
第1のねじ部53は、挿入穴52に露出された基端35のうち、挿入穴52に挿入された溝幅変更部材37と対向する一部に設けられている。第1のねじ部53としては、例えば、めねじを用いることができる。
【0048】
シール材収容溝55は、挿入穴52に露出された基端35のうち、第1のねじ部53の形成領域よりも燃焼室31側に位置する部分に設けられている。シール材収容溝55は、溝幅変更部材37の外周側面37aと接触するシール材56を収容するための溝である。シール材56としては、例えば、Oリングを用いることができる。
【0049】
図2を参照するに、原料粉体供給管36は、略円筒形状とされており、ノズル部28の延在方向に延在している。原料粉体供給管36の基端側の外周には、キャリアガス及び原料導入口36Aが設けられている。キャリアガス及び原料導入口36Aは、原料フィーダー14と接続されている。キャリアガス及び原料導入口36Aには、キャリアガスにより輸送された無機質原料粉体Xが導入される。
【0050】
原料粉体供給管36の先端は、ノズル部28の先端33の一部を構成している。原料粉体供給管36内には、円柱状空間である第1の空間58が設けられている。第1の空間58は、原料粉体輸送孔34及びキャリアガス及び原料導入口36Aと接続されている。
【0051】
第1の空間58の中心軸は、原料粉体輸送孔34の中心軸と一致している。また、第1の空間58の中心軸、及び原料粉体輸送孔34の中心軸は、ノズル部28の中心軸に相当する中心軸である。
第1の空間58には、キャリアガス及び原料導入口36Aを介して、キャリアガスに輸送された無機質原料粉体Xが供給される。第1の空間58に供給されたキャリアガス及び無機質原料粉体Xは、原料粉体輸送孔34に輸送される。
【0052】
図2を参照するに、溝幅変更部材37は、先端部61と、第2のねじ部62と、を有する。溝幅変更部材37は、ノズル部28の延在方向に延在しており、ノズル部28の基端35に設けられた挿入穴52に挿入されている。
溝幅変更部材37の直径は、原料粉体供給管36の内径よりも小さくなるように構成されている。溝幅変更部材37は、溝幅変更部材37の中心軸がノズル部28の中心軸と一致するように、原料粉体輸送孔34、及び原料粉体供給管36内(第1の空間58)に収容されている。
【0053】
これにより、溝幅変更部材37と原料粉体供給管36との間には、環状空間64(第1の空間58の一部)が形成され、環状空間64により、燃焼室31側にキャリアガス及び無機質原料粉体Xが輸送される。
【0054】
先端部61は、先端部61の中心軸と原料粉体輸送孔34の中心軸とが一致するように、原料粉体輸送孔34に配置されている。先端部61は、先端に向かうにつれて直径が小さくなる円錐台形状とされている。
先端部61の先端面61aは、ノズル部28の先端面33aに対して平行な円形面とされている。ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体輸送孔34の直径Dが30mmの場合、先端面61aの直径は、例えば、2mmとすることができる。
【0055】
第2のねじ部62は、溝幅変更部材37の基端側の外周に設けられている。第2のねじ部62は、ノズル部28の基端35に設けられた第1のねじ部53と螺合するねじ部である。第1のねじ部53がめねじの場合、第2のねじ部62としては、おねじを用いることができる。
【0056】
このように、ノズル部28の基端35に第1のねじ部53を設けると共に、溝幅変更部材37の基端側の外周に第1のねじ部53と螺合する第2のねじ部62を設けることにより、先端部61を含む溝幅変更部材37をノズル部28の延在方向に移動させることが可能になると共に、ノズル部28の先端面33aに対する溝幅変更部材37の先端部61の位置を規制することができる。つまり、ノズル部28の先端面33aから先端部61の一部を突出させることが可能となる。
【0057】
図3は、図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の断面図である。図3において、図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナ16と同一構成部分には、同一符号を付す。
図2及び図3を参照するに、原料粉体噴出用溝39は、原料粉体輸送孔34に露出されたノズル部28の先端33の面39aと溝幅変更部材37を構成する先端部61の外周側面61bとの間に設けられた環状の溝である。
【0058】
図2を参照するに、原料粉体噴出用溝39は、ノズル部28の先端面33aに露出されると共に、環状空間64と接続されている。原料粉体噴出用溝39は、環状空間64により輸送されたキャリアガス及び無機質原料粉体Xを燃焼室31に噴出する。
原料粉体噴出用溝39から噴出されるキャリアガスの噴出速度は、原料粉体噴出用溝39の溝幅のうち、ノズル部28の先端面33aに露出された部分の溝幅Eにより決定される。
【0059】
図4は、図1に示す本実施の形態の無機質球状化粒子製造用バーナを拡大した断面図であり、ノズル部28の先端面33aから溝幅変更部材37の先端部61を突出させた状態を模式的に示す図である。図4において、図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図5は、図4に示す無機質球状化粒子製造用バーナのA−A線方向の断面図である。図4及び図5に示す原料粉体噴出用溝39の幅Eは、図2及び図3に示す原料粉体噴出用溝39の幅Eよりも狭い場合を例に挙げて図示している。
【0060】
図2〜図5を参照するに、本実施の形態の無機質球状化粒子製造用バーナ16では、ノズル部28の先端面33aに対して溝幅変更部材37の先端面61aが面一とされた状態(図2及び図3に示す状態)から、燃焼室31側に向かう方向に円錐台形状とされた先端部61を移動させて、ノズル部28の先端面33aから溝幅変更部材37の先端部61の一部を突出させる(図4及び図5に示す状態にする)ことで、原料粉体噴出用溝39の幅のうち、ノズル部28の先端面33aに露出された部分の幅Eを変更可能な構成とされている。
つまり、溝幅変更部材37は、ノズル部28の延在方向に移動することで、ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更する機能を有する。
【0061】
例えば、図2に示すように、ノズル部28の先端面33aに対して溝幅変更部材37の先端面61aを面一にすると、溝幅変更部材37の幅Eが広くなるため、溝幅変更部材37から噴出されるキャリアガスの噴出速度を遅くすることが可能となる。
この場合、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間を長くすることが可能となるので、粒径(平均粒度)の大きい無機質原料粉体Xを溶融させる際に適している。
【0062】
また、図4に示すように、ノズル部28の先端面33aから溝幅変更部材37の先端部61を突出させると、溝幅変更部材37の幅Eが狭くなるため、溝幅変更部材37から噴出されるキャリアガスの噴出速度を速くすることが可能となる。
この場合、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間を短くことが可能となるので、粒径(平均粒度)の小さい無機質原料粉体Xを溶融させる際に適している。
【0063】
このように、ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更可能な溝幅変更部材37を設けることにより、原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更するだけで、燃料室31に噴出されるキャリアガスの噴出速度を変更することが可能となる。
【0064】
また、燃料室31に噴出されるキャリアガスの噴出速度は、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間(言い換えれば、火炎が無機質原料粉体Xを加熱する加熱時間)を決定する。
したがって、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体Xを処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【0065】
図2を参照するに、燃料ガス供給管41は、原料粉体供給管36の外周を囲むように設けられている。燃料ガス供給管41と原料粉体供給管36との間には、環状とされた第2の空間66が設けられている。
燃料ガス供給管41の基端側には、燃料ガス供給管41と一体に構成され、かつ燃料ガス供給管41の外側に突出する燃料ガス導入口41Aが形成されている。燃料ガス導入口41Aは、燃料ガス供給源12と接続されている。燃料ガス導入口41Aは、燃料ガス供給源12から供給された燃料ガスを、第2の空間66に導入するための導入口である。
【0066】
図2を参照するに、支燃性ガス供給用空間42は、ノズル部28の外周側面と筒状部29の内周面との間に設けられている。支燃性ガス供給用空間42は、支燃性ガス供給源13から供給された支燃性ガスを輸送する流路として機能する。
【0067】
図2及び図3を参照するに、複数の燃料ガス噴出孔44は、ノズル部28の先端33のうち、第2の空間66と対向する部分を貫通するように設けられている。複数の燃料ガス噴出孔44は、第2の空間66と接続されると共に、ノズル部28の先端面33aから露出されている。
複数の燃料ガス噴出孔44は、原料粉体噴出用溝39よりも外側の位置に配置されている。複数の燃料ガス噴出孔44は、原料粉体噴出用溝39から噴出される無機質原料粉体X及びキャリアガスの外側から燃料ガスを噴出する。
【0068】
図2及び図3を参照するに、複数の支燃性ガス噴出孔45は、ノズル部28の先端33のうち、支燃性ガス供給用空間42と対向する部分を貫通するように設けられている。複数の支燃性ガス噴出孔45は、支燃性ガス供給用空間42と接続されると共に、ノズル部28の先端面33aから露出されている。
複数の支燃性ガス噴出孔45は、複数の原燃料ガス噴出孔44よりも外側の位置に配置されている。複数の支燃性ガス噴出孔45は、複数の燃料ガス噴出孔44から噴出された燃料ガスの外側から支燃性ガスを噴出する。
【0069】
図3を参照するに、上記説明した原料粉体噴出用溝39、複数の燃料ガス噴出孔44、及び複数の支燃性ガス噴出孔45は、ノズル部28の先端面33aの中心Cに対して同心円状に配置されている。
このように、ノズル部28の先端面33aの中心Cに対して同心円状に原料粉体噴出用溝39、複数の燃料ガス噴出孔44、及び複数の支燃性ガス噴出孔45を配置することにより、火炎が無機質原料粉体Xの噴流を包み込むことが可能となるため、火炎により無機質原料粉体Xを効率よく溶融することができる。
【0070】
図2及び図3を参照するに、筒状部29は、略円筒形状とされており、ノズル部29の先端33から突出するように、ノズル部28の外周側面に設けられている。
図2を参照するに、筒状部29は、冷却水用管路68と、冷却水供給口69と、冷却水回収口71と、支燃性ガス導入口72と、を有する。
【0071】
図2を参照するに、冷却水用管路68は、筒状部29に内設されている。冷却水用管路68は、ノズル部28の先端33を冷却するための冷却水を流動させるための管路である。このように、筒状部29に冷却水用管路68を設け、冷却水用管路68に冷却水を流すことで、火炎の熱によりノズル部28の先端33が損傷することを抑制できる。
【0072】
図2を参照するに、冷却水供給口69は、冷却水用管路68の形成領域に対応する筒状部29の外壁から外側に突出するように設けられている。冷却水供給口69は、冷却水用管路68及び冷却水循環供給源15と接続されている。冷却水供給口69は、冷却水循環供給源15から供給される冷却水を冷却水用管路68に供給するための供給口である。
【0073】
図2を参照するに、冷却水回収口71は、冷却水用管路68の形成領域に対応する筒状部29の外壁から外側に突出するように設けられている。冷却水回収口71は、冷却水用管路68及び冷却水循環供給源15と接続されている。冷却水回収口71は、冷却水用管路68を流動する温度上昇した冷却水を回収するための回収口である。
【0074】
図2を参照するに、支燃性ガス導入口72は、支燃性ガス供給用空間42と対向する筒状部29の外壁を貫通するように設けられている。支燃性ガス導入口72は、筒状部29の外壁から外側に突出している。支燃性ガス導入口72は、支燃性ガス供給源13と接続されている。支燃性ガス導入口72は、支燃性ガス供給源13から供給された支燃性ガスを支燃性ガス供給用空間42に供給する。
【0075】
図2を参照するに、燃焼室31は、ノズル部28の先端面33aと筒状部29の内壁29Aとで囲まれた空間であり、ノズル部28の先端面33aを露出している。
【0076】
本実施の形態の無機質球状化粒子製造用バーナによれば、ノズル部28の先端面33aに露出された原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更可能な溝幅変更部材37を設けることにより、原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更するだけで、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間(言い換えれば、無機質原料粉体の加熱時間)を、溶融させる無機質原料粉体Xの粒径(平均粒度)に最適な時間に設定することが可能となる。
【0077】
したがって、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体Xを処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【0078】
図1を参照するに、竪型炉17は、円筒形状とされた炉であり、竪型炉17の上端には、無機質球状化粒子製造用バーナ16の先端が収容されている。これにより、無機質球状化粒子製造用バーナ16が形成する火炎は、竪型炉17の内部に形成される。
竪型炉17の下端側には、空気供給管24が接続されている。また、竪型炉17の下端側には、空気供給管24と対向するように、サイクロン21と接続されたダクト25が設けられている。
竪型炉17内では、無機質球状化粒子製造用バーナ16の火炎により、無機質原料粉体Xが溶融され、溶融した無機質原料粉体Xが竪型炉17の下方に移動しながら固まることで無機質球状化粒子Yとなる。
【0079】
送風ブロア18は、空気供給管24と接続されている。送風ブロア18は、空気供給管24を介して、竪型炉17の下端に空気を供給する。送風ブロア18は、空気供給管24を介して、竪型炉17の下端に空気を供給することで、無機質球状化粒子Yを冷却すると共に、ダクト25を介して、冷却した無機質球状化粒子Yをサイクロン19に輸送する。
【0080】
サイクロン21は、竪型炉17の下流側に設けられており、ダクト25を介して、竪型炉17の下端と接続されている。サイクロン21は、ダクト25を介して輸送された無機質球状化粒子Yのうち、第1の粒子径とされた無機質球状化粒子を捕集する。第1の粒子径とされた無機質球状化粒子Yは、サイクロン21の下端から捕集される。第1の粒子径は、後述する第2の粒子径よりも大きい値とされている。
【0081】
空気導入口22は、サイクロン21の上端と接続されている。空気導入口22は、サイクロン21の上端に接続されたダクト26と対向するように配置されている。空気導入口22は、サイクロン21の上端に空気を導入するための導入口である。
空気導入口22を介して、サイクロン21の上端に導入された空気は、無機質球状化粒子を冷却すると共に、ダクト26を介して、無機質球状化粒子Yをバグフィルター23に輸送する。
【0082】
バグフィルター23は、サイクロン21の下流側に設けられており、ダクト26を介して、サイクロン21の上端と接続されている。バグフィルター23は、ダクト26を介して、第1の粒子径よりも小さい第2の粒子径とされた無機質球状化粒子Yを捕集する。
【0083】
第1の実施の形態の無機質球状化粒子製造用バーナによれば、キャリアガス及び無機質原料粉体Xを噴出する原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更可能な構成とされた無機質球状化粒子製造用バーナ16を備えることにより、原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更するだけで、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間(言い換えれば、無機質原料粉体の加熱時間)を、溶融させる無機質原料粉体Xの粒径(平均粒度)に最適な時間に設定することが可能となる。
【0084】
したがって、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体Xを処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【0085】
具体的には、粒径(平均粒度)の大きい無機質原料粉体Xを溶融させる場合には、図2に示すように、溝幅変更部材37の幅Eを広くする。また、粒径(平均粒度)の小さい無機質原料粉体Xを溶融させる場合には、図4に示すように、溝幅変更部材37の幅Eを狭くする。
【0086】
本実施の形態の無機質球状化粒子の製造方法によれば、無機質原料粉体Xと共に燃焼室31に噴出されるキャリアガスの噴出速度が、火炎により溶融させる無機質原料粉体Xの粒径(平均粒度)に最適な噴出速度となるように、原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更する工程と、燃料ガス及び支燃性ガスで形成される火炎により、無機質原料粉体Xを溶融させて無機質球状化粒子Yを生成する工程と、を含むことにより、無機質球状化粒子製造用バーナ16自体、或いは、ノズル部28を交換することなく、原料粉体噴出用溝39から噴出されるキャリアガスにより、火炎中における無機質原料粉体Xの滞留時間を最適な滞留時間に設定することが可能となる。
【0087】
これにより、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体Xを処理して所望の形状(粒径)とされた無機質球状化粒子Yを生成する際、無機質球状化粒子製造用バーナ16、或いはノズル部28を取り替える必要がなくなるため、所望の形状とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できる。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0089】
(実施例1)
図1に示す無機質球状化粒子製造装置10(図2に示す無機質球状化粒子製造用バーナ16を備えた装置)を用いて、無機質原料粉体Xを溶融させて、無機質球状化粒子Yを生成し、その後、サイクロン21及びバグフィルター23で無機質球状化粒子Yを回収した。
【0090】
このとき、キャリアガス供給源11からキャリアガスとして、酸素を7.5Nm/hの供給量で供給すると共に、原料フィーダー14から無機質原料粉体Xとして、平均粒度20μmとされたシリカ粉末を20kg/hの供給速度で供給した。
また、燃料ガス供給源12から燃料ガスとして、LPG(Liquefied petroleum gas)を5Nm/hの供給量で供給すると共に、支燃性ガス供給源13から支燃性ガスとして、酸素を20Nm/hの供給量で供給した。
【0091】
このとき、図2に示す原料粉体噴出用溝39の幅Eを変えることで、キャリアガスの噴出速度を変化させ、無機質球状化粒子Yのガラス化率を測定した。この結果を図7に示す。
【0092】
図6は、実施例1,2の無機質球状化粒子のガラス化率とd/D(d;ノズル部28の先端面33aが通過する溝幅変更部材37の先端部61の切断面の直径、D;原料粉体輸送孔34の直径)との関係をグラフ化した図である。
【0093】
(実施例2)
実施例1で使用したシリカ粉末の平均粒度を4μmに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件を用いて、無機質球状化粒子Yを生成した。
このとき、図2に示す原料粉体噴出用溝39の幅Eを変えることで、キャリアガスの噴出速度を変化させて、無機質球状化粒子Yのガラス化率を測定した。この結果を図7に示す。
【0094】
(図6に示す実施例1,2の結果について)
図7を参照するに、実施例1(シリカ粉末の平均粒度が20μm)の場合、d/Dが0.36のときに、ガラス化率が99%以上の無機質球状化粒子Yが生成されることが確認できた。
また、実施例2(シリカ粉末の平均粒度が4μm)の場合、d/Dが0.88のときに、ガラス化率が99%以上の無機質球状化粒子Yが生成されることが確認できた。
【0095】
つまり、d/Dを調整することで、言い換えれば、原料粉体噴出用溝39の幅Eを変更することで、無機質球状化粒子製造用バーナ16自体、或いはノズル部28を替えることなく、粒径(平均粒度)の異なる無機質原料粉体Xを用いて、所望の粒径とされた無機質球状化粒子Yを効率よく生成できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、無機質球状化粒子製造用バーナ、無機質球状化粒子製造装置、及び無機質球状化粒子の製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10,70…無機質球状化粒子製造装置、11…キャリアガス供給源、12…燃料ガス供給源、13…支燃性ガス供給源、14…原料フィーダー、15…冷却水循環供給源、16,71…無機質球状化粒子製造用バーナ、17…竪型炉、18…送風ブロア、19…捕集部、21…サイクロン、22…空気導入口、23…バグフィルター、24…空気供給管、25,26…ダクト、28,72…ノズル部、29…筒状部、29A…内壁、31…燃焼室、33…先端、33a,61a…先端面、33b…外周側面、34…原料粉体輸送孔、35…基端、36…原料粉体供給管、36A…キャリアガス及び原料導入口、37…溝幅変更部材、37a,61b…外周側面、39…原料粉体噴出用溝、39a…面、41…燃料ガス供給管、41A…燃料ガス導入口、42…支燃性ガス供給用空間、44…燃料ガス噴出孔、45…支燃性ガス噴出孔、47…燃料ガス導入口、48…支燃性ガス導入口、52…挿入穴、53…第1のねじ部、55…シール材収容溝、56…シール材、58…第1の空間、61…先端部、62…第2のねじ部、64…環状空間、66…第2の空間、68…冷却水用管路、69…冷却水供給口、71…冷却水回収口、72…支燃性ガス導入口、X…無機質原料粉体、Y…無機質球状化粒子、C…中心、d,D…直径、E…幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に火炎を形成し、かつ先端面が平面とされたノズル部と、
前記ノズル部の外周側面に配置され、前記ノズル部の先端から突出する筒状部と、
前記ノズル部の先端面と前記筒状部の内壁とで囲まれた燃焼室と、
前記ノズル部の先端面から露出されるように前記ノズル部の先端の中央に設けられ、酸素または酸素富化空気よりなるキャリアガスに輸送された無機質原料粉体を輸送する原料粉体輸送孔と、
前記ノズル部の先端と接触しないように、前記原料粉体輸送孔に配置された溝幅変更部材と、
前記原料粉体輸送孔に露出された前記ノズル部の面と前記溝幅変更部材の外周側面との間に設けられた環状の溝であり、かつ前記燃焼室に前記キャリアガス及び前記無機質原料粉体を噴出する原料粉体噴出用溝と、
を有し、
前記溝幅変更部材は、前記原料粉体噴出用溝の幅のうち、前記ノズル部の先端面に露出された部分の幅を変更可能な構成であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項2】
前記溝幅変更部材は、前記原料粉体輸送孔に配置され、かつ先端に向かうにつれて直径が小さくなる円錐台形状とされた先端部を有すると共に、前記ノズル部の延在方向に前記先端部を移動可能な構成とされていることを特徴とする請求項1記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項3】
前記原料粉体輸送孔は、前記ノズル部の先端面に向かうにつれて、直径が小さくなる円錐台形状であることを特徴とする請求項1または2記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項4】
前記溝幅変更部材は、前記ノズル部の基端を貫通するように、前記ノズル部の延在方向に延在しており、
前記ノズル部の基端のうち、前記溝幅変更部材と対向する部分に第1のねじ部を設け、
前記溝幅変更部材の外周に、前記第1のねじ部と螺合すると共に、前記先端部を前記ノズル部の延在方向に移動させる第2のねじ部を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項5】
前記先端部の先端面が、前記ノズル部の先端面に対して平行な円形面であることを特徴とする請求項2ないし4のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項6】
前記原料粉体輸送孔の中心軸と前記先端部の中心軸とを一致させたことを特徴とする請求項2ないし5のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項7】
前記ノズル部の先端面は、円形面とされており、
前記筒状部は、略円筒形状であることを特徴とする請求項1ないし6のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項8】
前記ノズル部の先端面から露出されるように、前記ノズル部の先端のうち、前記原料粉体噴出用溝よりも外側に位置する部分に設けられ、前記燃焼室に燃料ガスを噴出する複数の燃料ガス噴出孔と、
前記ノズル部の先端面から露出されるように、前記ノズル部の先端のうち、前記複数の燃料ガス噴出孔よりも外側に位置する部分に設けられ、前記燃焼室に酸素または酸素富化空気を支燃性ガスとして噴出する複数の支燃性ガス噴出孔と、
を有することを特徴とする請求項1ないし7のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項9】
前記原料粉体噴出用溝、前記複数の燃料ガス噴出孔、及び前記複数の支燃性ガス噴出孔を、前記ノズル部の先端面の中心に対して同心円状に配置したことを特徴とする請求項1ないし8のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項10】
前記筒状部に、冷却水を供給するための冷却水用管路を内設したことを特徴とする請求項1ないし9のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項11】
請求項1ないし10のうち、いずれか1項記載の無機質球状化粒子製造用バーナと、
竪型炉と、
前記竪型炉と接続され、無機質球状化粒子を捕集する捕集部と、を備え、
前記竪型炉上に、前記竪型炉の上端と前記ノズル部の先端とが対向するように、前記無機質球状化粒子製造用バーナを配置したことを特徴とする無機質球状化粒子製造装置。
【請求項12】
前記捕集部は、前記竪型炉と接続され、前記無機質球状化粒子のうち、第1の粒子径とされた無機質球状化粒子を捕集するサイクロンと、
前記サイクロンと接続され、前記無機質球状化粒子のうち、前記第1の粒子径よりも小さい第2の粒子径とされた無機質球状化粒子を捕集するバグフィルターと、
を有することを特徴とする請求項11記載の無機質球状化粒子製造装置。
【請求項13】
請求項11または12記載の無機質球状化粒子製造装置を用いた無機質球状化粒子の製造方法であって、
前記無機質原料粉体と共に前記燃焼室に噴出される前記キャリアガスの噴出速度が、前記火炎により溶融させる前記無機質原料粉体の粒径に最適な噴出速度となるように、前記原料粉体噴出用溝の幅を変更する工程と、
前記燃料ガス及び前記支燃性ガスで形成される火炎により、前記無機質原料粉体を溶融させて、前記無機質球状化粒子を生成する工程と、
前記捕集部により、前記無機質球状化粒子を捕集する工程と、
を含むことを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193918(P2012−193918A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59348(P2011−59348)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】