説明

無段変速機

【課題】 入力軸および出力軸をコネクティングロッドおよびワンウェイクラッチを介して接続した無段変速機において、変速アクチュエータの慣性二次モーメントを有効利用して駆動源から変速アクチュエータに入力されるトルク変動を低減する。
【解決手段】 電動モータ25、減速機26およびアクチュエータハウジング24を備える変速アクチュエータ23は入力軸12および変速軸15を相対回転させて変速比を変更する。電動モータ25の回転を減速機26で減速して変速軸15に伝達するので、入力軸12および変速軸15をきめ細かく相対回転させて変速比の制御精度を高めることができるだけでなく、大きな慣性二次モーメントを有する変速アクチュエータ23全体が入力軸12および変速軸15と一体に回転するので、変速アクチュエータ23をフライホイールとして機能させてエンジンのトルク変動を抑制することができ、これにより変速アクチュエータ23に入力されるトルク変動を減少させて変速比の制御精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸によりコネクティングロッドの一端部を偏心回転させ、コネクティングロッドの他端部がワンウエイクラッチを介して接続された出力軸を間欠回転させるとともに、コネクティングロッドの一端部の偏心量を変化させることで変速比を変更する無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源に接続された入力軸と、入力軸の外周に偏心状態で相対回転可能に支持された偏心ディスクと、入力軸の内部に同軸に嵌合する変速軸と、入力軸および変速軸を相対回転させる変速アクチュエータと、出力軸の外周に設けられたワンウェイクラッチと、偏心ディスクおよびワンウエイクラッチに両端を接続されて往復運動するコネクティングロッドとを備え、入力軸の回転をコネクティングロッドおよびワンウエイクラッチを介して出力軸に間欠的に伝達するとともに、変速アクチュエータで入力軸および変速軸を相対回転させることで偏心ディスクの偏心量を変化させて変速比を変更する無段変速機が、下記特許文献1により公知である。
【0003】
この無段変速機の変速アクチュエータは、ロータおよびステータの一方が変速軸に接続されて他方が入力軸に接続された電動モータで構成されており、ステータに対してロータを回転させると入力軸および変速軸が相対回転して変速比が変更される。その際に電動モータのロータおよびステータは入力軸と共に回転するため、電動モータ自体を入力軸に接続されたエンジンのトルク変動を緩和するフライホイールとして機能させることができ、これにより変速アクチュエータに加わるトルク変動を小さくして変速比の制御性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来のものは、電動モータの質量だけでは充分なフライホイール効果を得ることが難しく、しかも電動モータのロータおよびステータの相対回転数がそのまま入力軸および変速軸の相対回転数になるため、入力軸および変速軸を微妙に相対回転させて変速比をきめ細かく制御することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、入力軸および出力軸をコネクティングロッドおよびワンウェイクラッチを介して接続した無段変速機において、変速アクチュエータの慣性二次モーメントを有効利用して駆動源から変速アクチュエータに入力されるトルク変動を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源に接続された入力軸と、前記入力軸の外周に偏心状態で相対回転可能に支持された偏心ディスクと、前記入力軸の内部に同軸に嵌合する変速軸と、前記入力軸および前記変速軸を相対回転させる変速アクチュエータと、出力軸の外周に設けられたワンウェイクラッチと、前記偏心ディスクおよび前記ワンウエイクラッチに両端を接続されて往復運動するコネクティングロッドとを備え、前記入力軸の回転を前記コネクティングロッドおよび前記ワンウエイクラッチを介して前記出力軸に間欠的に伝達するとともに、変速アクチュエータで前記入力軸および前記変速軸を相対回転させることで前記偏心ディスクの偏心量を変化させて変速比を変更する無段変速機であって、変速アクチュエータは、モータ軸を有する電動モータと、前記モータ軸の回転が減速されて伝達される減速軸を有する減速機と、前記モータ軸および前記減速軸が前記入力軸の軸線上に位置するように前記電動モータおよび前記減速機を収納するアクチュエータハウジングとを備え、前記アクチュエータハウジングは前記入力軸に接続され、前記減速軸は前記変速軸に接続され、前記減速機の少なくとも一部は前記電動モータの外周を囲むように配置されることを特徴とする無段変速機が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記軸線上で前記減速機の中心に潤滑油を供給する潤滑油供給手段を備えることを特徴とする無段変速機が提案される。
【0009】
尚、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応し、実施の形態の変速軸15の油路15aは本発明の潤滑油供給手段に対応し、実施の形態の出力部材43の筒状部43aは本発明の減速軸に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、駆動源に接続された入力軸が回転すると、入力軸の外周に支持された偏心ディスクが偏心状態で回転する。偏心ディスクに一端を接続されたコネクティングロッドが往復運動すると、コネクティングロッドの他端が接続されたワンウエイクラッチを介して出力軸が間欠回転する。変速アクチュエータで入力軸の内部に同軸に嵌合する変速軸で偏心ディスクを回転させると、入力軸に対する偏心ディスクの偏心量が変化してコネクティングロッドの往復ストロークが変化することで、出力軸の間欠回転角が変化して変速比が変更される。
【0011】
変速アクチュエータは、モータ軸を有する電動モータと、モータ軸の回転が減速されて伝達される減速軸を有する減速機と、モータ軸および減速軸が入力軸の軸線上に位置するように電動モータおよび減速機を収納するアクチュエータハウジングとを備えるので、電動モータを駆動するとアクチュエータハウジングに対して減速軸が相対回転し、アクチュエータハウジングに接続された入力軸と減速軸に接続された変速軸とが相対回転して偏心ディスクの偏心量が変化する。
【0012】
電動モータの回転を減速機で減速して変速軸に伝達するので、入力軸および変速軸をきめ細かく相対回転させて変速比の制御精度を高めることができるだけでなく、電動モータ、減速機およびアクチュエータハウジングを備えるために大きな慣性二次モーメントを有する変速アクチュエータ全体が入力軸および変速軸と一体に回転するので、特別のフライホイールを設けたり、既存のフライホイールの質量を増加させたりすることなく、変速アクチュエータをフライホイールとして機能させて駆動源のトルク変動を抑制することができ、これにより変速アクチュエータに入力されるトルク変動を減少させて変速比の制御精度を高めることができる。そして減速機の少なくとも一部は電動モータの外周を囲むように配置されるので、減速機および電動モータを軸線方向に並置する場合に比べて変速アクチュエータを含む無段変速機の軸線方向の寸法を短縮することができる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、軸線上で減速機の中心に潤滑油を供給する潤滑油供給手段を備えるので、潤滑油供給手段から供給された潤滑油は減速機の回転に引きずられて回転することで遠心力で径方向外側に飛散し、電動モータの冷却および減速機の潤滑の両方を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】無段変速機の全体視図。
【図2】無段変速機の要部の一部破断斜視図。
【図3】図1の3−3線断面図。
【図4】図3の4部拡大図。
【図5】図3の5−5線断面図。
【図6】図4の6−6線断面図。
【図7】偏心ディスクの偏心量と変速比との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1〜図5に示すように、自動車用の無段変速機Tのミッションケース11は、フレーム本体51aおよび一対の第1、第2側壁51b,51cを有して上面が開放するフレーム51と、フレーム51の周囲を覆う2分割された上部カバー52および下部カバー53とで構成される。ミッションケース11の第1、第2側壁51b,51cに入力軸12および出力軸13が相互に平行に支持されており、エンジンEに接続された入力軸12の回転が6個の変速ユニット14および出力軸13を介して駆動輪に伝達される。中空に形成された入力軸12の内部に、その入力軸12と軸線Lを共有する変速軸15が7個のニードルベアリング16…を介して相対回転可能に嵌合する。6個の変速ユニット14の構造は実質的に同一構造であるため、以下、一つの変速ユニット14を代表として構造を説明する。
【0017】
変速ユニット14は変速軸15の外周面に設けられたピニオン17を備えており、このピニオン17は入力軸12に形成した開口12aから露出する。ピニオン17を挟むように、入力軸12の外周に軸線L方向に2分割された円板状の偏心カム18がスプライン結合される。偏心カム18の中心O1は入力軸12の軸線Lに対して距離dだけ偏心している。また6個の変速ユニット14…の6個の偏心カム18…は、その偏心方向の位相が相互に60°ずつずれている。
【0018】
偏心カム18の外周面には、円板状の偏心ディスク19の軸線L方向両端面に形成した一対の偏心凹部19a,19aが、一対のニードルベアリング20,20を介して回転自在に支持される。偏心ディスク19の中心O2に対して偏心凹部19a,19aの中心O1(つまり偏心カム18の中心O1)は距離dだけずれている。即ち、入力軸12の軸線Lおよび偏心カム18の中心O1間の距離dと、偏心カム18の中心O1および偏心ディスク19の中心O2間の距離dとは同一である。
【0019】
軸線L方向に2分割された偏心カム18の割り面には、その偏心カム18の中心O1と同軸に一対の三日月状のガイド部18a,18aが設けられており、偏心ディスク19の一対の偏心凹部19a,19aの底部間を連通させるように形成されたリングギヤ19bの歯先が、偏心カム18のガイド部18a,18aの外周面に摺動可能に当接する。そして変速軸15のピニオン17が、入力軸12の開口12aを通して偏心ディスク19のリングギヤ19bに噛合する。
【0020】
入力軸12の一端側はボールベアリング21を介してミッションケース11の第1側壁51bに直接支持される。また入力軸12の他端側に位置する1個の偏心カム18に一体に設けた筒状部18bが、ボールベアリング22を介してミッションケース11の第2側壁51cに支持されており、その偏心カム18の内周にスプライン結合された入力軸12の他端側は、ミッションケース11に間接的に支持される。
【0021】
図4および図6に示すように、入力軸12に対して変速軸15を相対回転させて無段変速機Tの変速比を変更する変速アクチュエータ23は、アクチュエータハウジング24の内部で軸線L上の同軸に配置された電動モータ25および減速機26を備える。アクチュエータハウジング24は2分割された第1、第2ハウジング半体24a,24bを備えており、第1、第2ハウジング半体24a,24b間に例えば24本のピン27…が円周方向に等間隔で架設される。電動モータ25は第1ハウジング半体24aに固定された環状のステータ25aと、軸線L上に回転自在に支持されたモータ軸25bと、モータ軸25bに固定されてステータ25aに対して相対回転するロータ25cとを備える。
【0022】
減速機26は、電動モータ25のモータ軸25bに固定されたサンギヤ28と、第1ハウジング半体24aに120°間隔で固定した3本のピニオンピン29…に回転自在に支持されてサンギヤ28に噛合する3個のピニオン30…と、ピニオン30…に噛合するリングギヤ31aを内周に有する偏心リング31とを備える。偏心リング31の径方向の肉厚は円周方向に不均一であり、その内周のリングギヤ31aの中心が軸線Lに一致しているのに対し、その円形の外周面の中心O3は軸線Lから偏心量αだけ偏心している。
【0023】
偏心リング31の外周面にはニードルベアリング32を介して環状のサイクロイドギヤ42が相対回転自在に支持される。サイクロイドギヤ42の外周面にはサイクロイド曲線よりなる23個のギヤ歯42a…が形成されており、それらの23個のギヤ歯42a…はアクチュエータハウジング24に設けた24本のピン27…に噛合する。図6に示す状態では、偏心リング31が軸線Lに対して上側に偏心しているためにサイクロイドギヤ42も上側に偏心しており、軸線Lの上側ではサイクロイドギヤ42のギヤ歯42aの谷にピン27が当接し、軸線Lの下側ではサイクロイドギヤ42のギヤ歯42aの山にピン27が当接している。
【0024】
アクチュエータハウジング24の内部には円板状の出力部材43が第2ハウジング半体24bに沿うように配置されており、その出力部材43には例えば8個の出力ピン44…が円周方向に等間隔に植設される。一方、サイクロイドギヤ42には出力ピン44…と同数の8個の円形の開口42b…が円周方向に等間隔で形成されており、これらの開口42b…に出力ピン44…が嵌合する。軸線Lと同軸に配置された出力部材43に対してサイクロイドギヤ42は偏心しているため、サイクロイドギヤ42の開口42b…に対して出力部材43の出力ピン44…は偏心しており、出力ピン44…は開口42b…の内周面の何れかの位置に当接する。
【0025】
そしてアクチュエータハウジング24の第2ハウジング半体24bの中心に突設した筒状部24cが中空の入力軸12の軸端(厳密には、前記1個の偏心カム18の筒状部18b)にスプライン結合され、出力部材43の中心に突設した筒状部43aが変速軸15の軸端にスプライン結合される。
【0026】
従って、電動モータ25を停止状態にすれば、変速アクチュエータ23全体がロック状態になってアクチュエータハウジング24および出力部材43は一体に回転し、入力軸12および変速軸15は相対回転することはない。
【0027】
電動モータ25を駆動してモータ軸25bが回転すると、サンギヤ28の回転がピニオン30…を介してリングギヤ31aに伝達され、リングギヤ31aを有する偏心リング31が回転する。偏心リング31の外周にニードルベアリング32を介して支持されたサイクロイドギヤ42が偏心回転すると、その外周に設けたギヤ歯42a…の数が、それらに噛合するピン27…の数よりも1個だけ少ないため、サイクロイドギヤ42は1回偏心回転する毎にピン27…の1ピッチ分だけ軸線Lまわりに回転する。このサイクロイドギヤ42の回転は、開口42b…の内周面に当接する出力ピン44…から出力部材43に伝達され、出力部材43は電動モータ25の回転数に対して大きく減速されて回転する。
【0028】
このようにして出力部材43がアクチュエータハウジング24に対してゆっくりと相対回転すると、アクチュエータハウジング24の筒状部24cにスプライン結合された入力軸12と、出力部材43の筒状部43aにスプライン結合された変速軸15とが相対回転することになる。
【0029】
図4に示すように、変速軸15の内部には図示せぬオイルポンプに連なる油路15aが形成されており、この油路15aの先端は軸線L上で減速機26の中心部に開口する。また減速機26のサンギヤ28およびピニオン30…は電動モータ25の一側面に配置されるが、減速機26の偏心リング31、サイクロイドギヤ42およびピン27…は電動モータ25の外周面の径方向外側に配置されるため、電動モータ25および減速機26を軸線L方向に並置する場合に比べて、変速アクチュエータ23を含む無段変速機Tの軸線L方向の寸法を小型化することができる。
【0030】
図2〜図5に示すように、偏心ディスク19の外周には、ローラベアリング32を介してコネクティングロッド33の一端側の環状部33aが相対回転自在に支持される。出力軸13はミッションケース11の第1、第2側壁51b,51cに一対のボールベアリング34,35で支持されており、その外周にはワンウェイクラッチ36が設けられる。ワンウェイクラッチ36は、コネクティングロッド33のロッド部33bの先端にピン37を介して枢支されたリング状のアウター部材38と、アウター部材38の内部に配置されて出力軸13に固定されたインナー部材39と、アウター部材38の内周の円弧面とインナー部材39の外周の平面との間に形成された楔状の空間に配置されて複数個のスプリング40…で付勢された複数個のローラ41…とを備える。
【0031】
次に、無段変速機Tの一つの変速ユニット14の作用を説明する。
【0032】
図5および図7(A)〜図7(D)から明らかなように、入力軸12の軸線Lに対して偏心ディスク19の中心O2が偏心しているとき、エンジンEによって入力軸12が回転するとコネクティングロッド33の環状部33aが軸線Lまわりに偏心回転することで、コネクティングロッド33のロッド部33bが往復運動する。その結果、コネクティングロッド33のロッド部33bにピン37で接続されたワンウェイクラッチ36のアウター部材38が所定角度範囲で往復回転し、アウター部材38が一方向に回転したときにローラ41…が楔状の空間に噛み込んでインナー部材39に回転が伝達され、アウター部材38が他方向に回転したときにローラ41…がスリップしてインナー部材39への回転の伝達が遮断される。
【0033】
このようにして、入力軸12が1回転する間に、入力軸12の回転が所定時間だけ出力軸13に伝達されるため、入力軸12が連続回転すると出力軸13は間欠回転する。6個の変速ユニット14…の偏心ディスク19…の偏心方向の位相が相互に60°ずつずれているため、6個の変速ユニット14…が入力軸12の回転を交互に出力軸13に伝達することで、出力軸13は連続的に回転する。
【0034】
このとき、偏心ディスク19の偏心量εが大きいほど、コネクティングロッド33の往復ストロークが大きくなって出力軸13の1回の回転角が増加し、無段変速機Tの変速比が小さくなる。逆に、偏心ディスク19の偏心量εが小さいほど、コネクティングロッド33の往復ストロークが小さくなって出力軸13の1回の回転角が減少し、無段変速機Tの変速比が大きくなる。そして偏心ディスク19の偏心量εがゼロになると、入力軸12が回転してもコネクティングロッド33が移動を停止するために出力軸13は回転せず、無段変速機Tの変速比が最大(無限大)になる。
【0035】
変速アクチュエータ23を駆動して入力軸12に対して変速軸15を相対回転させると、各変速ユニット14のピニオン17にリングギヤ19bを噛合させた偏心ディスク19の偏心凹部19a,19aが、入力軸12と一体の偏心カム18のガイド部18a,18aに案内されて回転し、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εが変化する。
【0036】
図7(A)は変速比が最小の状態(変速比:TD)を示すもので、このとき入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは、入力軸12の軸線Lから偏心カム18の中心O1までの距離dと、偏心カム18の中心O1から偏心ディスク19の中心O2までの距離dとの和である2dに等しい最大値になる。入力軸12に対して変速軸15が相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム18に対して偏心ディスク19が相対回転することで、図7(B)および図7(C)に示すように、入力軸12の軸線Lに対する偏心ディスク19の中心O2の偏心量εは最大値の2dから次第に減少して変速比が増加する。入力軸12に対して変速軸15が更に相対回転すると、入力軸12と一体の偏心カム18に対して偏心ディスク19が更に相対回転することで、図7(D)に示すように、ついには入力軸12の軸線Lに偏心ディスク19の中心O2が重なり合って偏心量εがゼロになり、変速比が最大(無限大)の状態(変速比:UD)になって出力軸13に対する動力伝達が遮断される。
【0037】
以上のように、本実施の形態によれば、電動モータ25の回転を減速機26で減速して変速軸15に伝達するので、入力軸12および変速軸15をきめ細かく相対回転させて変速比の制御精度を高めることができるだけでなく、電動モータ25、減速機26およびアクチュエータハウジング24を備えるために大きな慣性二次モーメントを有する変速アクチュエータ23全体が入力軸12および変速軸15と一体に回転するので、特別のフライホイールを設けたり、既存のフライホイールの質量を増加させたりすることなく、変速アクチュエータ23をフライホイールとして機能させてエンジンEのトルク変動を抑制することができ、これにより変速アクチュエータ23に入力されるトルク変動を減少させて変速比の制御精度を高めることができる。
【0038】
また減速機26の少なくとも一部は電動モータ25の外周を囲むように配置されるので、減速機26および電動モータ25を軸線L方向に並置する場合に比べて変速アクチュエータ23を含む無段変速機Tの軸線L方向の寸法を短縮することができる。
【0039】
また入力軸12の軸線L上で変速軸15の油路15aから減速機26の中心にオイルを供給するので、油路15aから供給されたオイルは減速機26の回転に引きずられて回転することで遠心力で径方向外側に飛散し、電動モータ25の冷却および減速機26の潤滑の両方を効率的に行うことができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0041】
例えば、本発明の駆動源は実施の形態のエンジンEに限定されず、電動モータ等の他の駆動源であっても良い。
【0042】
また減速機26の構造は実施の形態に限定されず、遊星歯車機構等の任意の構造のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0043】
12 入力軸
13 出力軸
15 変速軸
15a 変速軸の油路(潤滑油供給手段)
19 偏心ディスク
23 変速アクチュエータ
24 アクチュエータハウジング
25 電動モータ
25b モータ軸
26 減速機
33 コネクティングロッド
36 ワンウェイクラッチ
43a 出力部材の筒状部(減速軸)
E エンジン(駆動源)
L 入力軸の軸線
ε 偏心ディスクの偏心量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源(E)に接続された入力軸(12)と、
前記入力軸(12)の外周に偏心状態で相対回転可能に支持された偏心ディスク(19)と、
前記入力軸(12)の内部に同軸に嵌合する変速軸(15)と、
前記入力軸(12)および前記変速軸(15)を相対回転させる変速アクチュエータ(23)と、
出力軸(13)の外周に設けられたワンウェイクラッチ(36)と、
前記偏心ディスク(19)および前記ワンウエイクラッチ(36)に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッド(33)とを備え、
前記入力軸(12)の回転を前記コネクティングロッド(33)および前記ワンウエイクラッチ(36)を介して前記出力軸(13)に間欠的に伝達するとともに、変速アクチュエータ(23)で前記入力軸(12)および前記変速軸(15)を相対回転させることで前記偏心ディスク(19)の偏心量(ε)を変化させて変速比を変更する無段変速機であって、
変速アクチュエータ(23)は、モータ軸(25b)を有する電動モータ(25)と、前記モータ軸(25b)の回転が減速されて伝達される減速軸(43a)を有する減速機(26)と、前記モータ軸(25b)および前記減速軸(43a)が前記入力軸(12)の軸線(L)上に位置するように前記電動モータ(25)および前記減速機(26)を収納するアクチュエータハウジング(24)とを備え、
前記アクチュエータハウジング(24)は前記入力軸(12)に接続され、前記減速軸(43a)は前記変速軸(15)に接続され、前記減速機(26)の少なくとも一部は前記電動モータ(25)の外周を囲むように配置されることを特徴とする無段変速機。
【請求項2】
前記軸線(L)上で前記減速機(26)の中心に潤滑油を供給する潤滑油供給手段(15a)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19501(P2013−19501A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154522(P2011−154522)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】