無水エレトリプタンヘミサルフェートの製造方法
本発明は、式(I)のエレトリプタンヘミサルフェート多形体の改良された製造方法を提供する。
【化1】
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の結晶型のエレトリプタンヘミサルフェートを製造するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレトリプタン、3−{[1−メチルピロリジン−2(R)−イル]メチル}−5−(2−フェニルスルフォニルエチル)−1H−インドール、及びその製造方法は、米国特許第5607951号に開示されている。
【0003】
エレトリプタンヘミサルフェートは、下記の式(I)の構造を有する。
【化1】
【0004】
国際特許出願PCT/EP95/01914(WO−A−96/06842として公開)は、2つの結晶型のエレトリプタンヘミサルフェートを開示している。第1はα型と称され、185℃の融点を有することを特徴とする。この型は、以下、エレトリプタンヘミサルフェートII型と称するものとする。第2はβ型と称され、145〜147℃の融点を有することを特徴とし、以下、エレトリプタンヘミサルフェートIII型と称するものとする。
【0005】
国際特許出願PCT/EP98/04176(WO−A−99/01135として公開)は、エレトリプタンヘミサルフェートIII型の製造方法を記載している。
【0006】
国際特許出願PCT/IB00/01305(WO−A−01/23377として公開)は、もう1つの結晶型のエレトリプタンヘミサルフェートを開示している。この多形体(以下、エレトリプタンヘミサルフェートI型と称するものとする)は、226℃のそのDSC融点、及びその粉末X線回折(PXRD)像のようなそれ以外のデータによって特徴付けられる。また、エレトリプタンそのものから、及び混合多形体のエレトリプタンヘミサルフェート(即ち、少なくとも部分的に1種又はそれ以上の他の多形体が存在する)から、エレトリプタンヘミサルフェートI型を製造するためのいくつかの方法が開示されている。後者の場合において、混合多形体のヘミサルフェート塩が、還流するテトラヒドロフラン(THF)、エタノール、イソプロパノール、又は工業用メチル化スピリット(IMS)の中でスラリーにされ、次いで濾過、洗浄、乾燥され、エレトリプタンヘミサルフェートI型を生成する。
【0007】
これらのエレトリプタンヘミサルフェートI型の製造方法は、不満足であることが実証されており、特に量産のときは、I型の多形体を信頼よく与えない。例えば、THFが溶媒として使用された場合、生成物は、溶媒和又は水和した形態の不純物を含むことが多い(とりわけ水和物)。こうした望ましくない形態は、予測できない状態で得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬物分子の大規模な製造において、同じ結晶型を含んで他の結晶型や溶媒を含まない均一な生成物を信頼よく製造するといった意味で、確固たる方法の確立が基本であると認識されるはずである。
【0009】
即ち、信頼よく大規模で実施できるエレトリプタンヘミサルフェートI型の高収率で確固たる製造方法を提供するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今回、意外にも信頼よくかつ高収率の方法でエレトリプタンヘミサルフェートI型を製造可能なことが、見出された。新しい方法においては、C1〜C6アルキルアセテート溶媒中の任意の他の形態(又は任意の混合形態)におけるエレトリプタンヘミサルフェートの撹拌されたサスペンジョンを加熱し、次いで生成物の回収の前に共沸蒸留によって濃縮する。
【0011】
C1〜C6アルキルアセテートは、式:CH3COOR(RはC1〜C6アルキル基)の化
合物である。好ましい溶媒は、酢酸エチルと酢酸n−プロピルである。酢酸エチルが特に好ましい。
【0012】
エレトリプタンヘミサルフェートの重量に対する使用溶媒の体積は、好結果が得られることを決定するものではない。酢酸エチルが溶媒として使用される場合、1kgのエレトリプタンヘミサルフェートあたり8〜12リットルの酢酸エチルの量が好ましく用いられる。
【0013】
しかしながら、反応において存在する水の量は、その方法で好結果が得られるのに重要であり、3体積%以下でなければならない。ヘミサルフェートの出発物質が水和している場合、存在する結合水の量を求め(カールフィッシャー(KF)分析が最も便利な分析手段)、考慮に入れる必要がある。必要により、出発物質を乾燥させ、その水含有率を減らすことができる。反応混合物の水含有率は、好ましくは0.2〜2体積%であり、最も好ましくは1.3〜2体積%である。
【0014】
一般に、変化に対して抵抗性の少ない低結晶化度を有するエレトリプタンの形態は、より低い水含有率を有する反応混合物の中で容易に転化することができ、一方、より高い抵抗性のバッチは、より高い水含有率を有する反応混合物の中でより好都合に転化する。
【0015】
加熱は、存在する全てのヘミサルフェート塩がI型多形体に転化するまで継続すべきである。これは一般に数時間を要し、通常は4〜24時間である。この転化時間は、選択された温度に依存し、より高い温度はより短い転化時間をもたらす。好ましくは、スラリーを60〜80℃に加熱する。最も好ましくは、酢酸エチルが溶媒として選択された場合、スラリーを還流下で加熱する。また、反応混合物を加圧して転化率を高めることもできる。示差走査熱量測定(DSC)を反応混合物から採取したサンプルについて行い、どの程度まで転化が進んだかの大ざっぱな指標として用いることもできる。
【0016】
転化が完了すると、必要により、反応混合物の水含有率が1体積%未満に低下するまで、共沸蒸留によって溶媒の一部を除去しなければならない。この工程は、周囲温度で生成物の何らかの溶媒和物がその後に生成するのを回避するために重要である。例えば、エレトリプタンヘミサルフェートの出発物質の1kgあたり約10リットルの酢酸エチルを使用した場合、通常、添加した体積の1/5〜2/5を蒸留除去すれば十分である。
【0017】
場合により、転化が遅いと、転化の後よりも転化の途中で共沸蒸留を行うのが有利である。この場合、反応混合物の水含有率は0.3体積%未満まで減らすべきであり、新たな乾燥溶媒を添加し、反応物をさらにある期間にわたって還流下で加熱すべきである。
【0018】
生成物は濾過によって回収することができる。典型的に、反応混合物は、20〜25℃まで冷却し、濾過し、溶媒で洗浄し(好ましくは、生成物1kgあたり約1リットル)、そして乾燥させる(好ましくは、減圧下の70℃)。特定の場合には、塊の破砕(de−lumping)が必要なことがある。
【0019】
エレトリプタンヘミサルフェートI型の平均収率は94%である。
【0020】
原理的に、転化の出発物質は、アモルファスのエレトリプタンヘミサルフェート、任意の1つの多形のエレトリプタンヘミサルフェート、及びこれらの1つの又は任意の混合物(I型そのものを含む混合物を包含する)の水和された又は溶媒和された形態であること
ができる。
【0021】
既知のエレトリプタンヘミサルフェートの多形体を、特性データとともに下記の表に列挙している。多形体I〜XI、及び2つの酢酸エチル溶媒和物XIIとXIII、酢酸n−プロピルアセテート溶媒和物XIVが知られており、これらの溶媒和物は種々の量の水を含む。これらの溶媒和物は、それぞれ、酢酸エチル又は酢酸n−プロピルの中でアモルファスのエレトリプタンヘミサルフェートをスラリーにすると容易に観察される。IV型は、アセトニトリル中のエレトリプタンの溶液を希硫酸で処理すると観察される。
【0022】
粉末X線回折像(PXRD)は、自動サンプル交換器、θ-θゴニオメータ、自動ビー
ム可変スリット(automatic beam divergence slits)、二次モノクロメータ、及びシンチレーションカウンターを備えたSIEMENS D5000粉末X線回折装置を用いて通常のように測定した。サンプルは、シリコンウエハーの試料台に粉末を充填することで分析の用意をした。40kV/40mAで作動させるX線管を用い、CuKα1のX線(波長=1.5406Å)を照射しながら、各試料を回転させた。分析は、2°〜40°の2θ範囲にわたって0.02°ステップあたり5秒間計測するように設定し、連続モードで運転のゴニオメータを用いて通常のように行った。示差走査熱量測定(DSC)は、自動サンプル交換器を備えたPerkin Elmer Diamond DSC装置を用いて行った。各サンプルの約3mgを、50マイクロリットルのアルミニウム皿に正確に秤量し、穴あき蓋を用いてクリンプシールした。窒素ガスでパージしながら、サンプルを30℃〜250℃の範囲にわたって20℃/分で加熱した。III型及びそれ以上についてのDSCサーモグラムは、脱水又は脱溶媒を含む同様なプロフィルを有し、約140℃に至るまでに溶融し、次いでII型への発熱再結晶が起こり(約186℃にピーク)、次いでI型への第2の発熱再結晶が起こる(約226℃にピーク)。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【表8】
【0031】
III、V、VI、及びXI型は、周囲の相対湿度にしたがって相互変化する。
【0032】
エレトリプタンヘミサルフェートは、通常、エレトリプタン遊離塩基と硫酸の反応によって製造される。例えば、WO−A−01/23377は、アセトン中の還流溶液として又はテトラヒドロフラン中の冷却溶液としての濃硫酸とエレトリプタンの反応を含む方法を記載している。本発明のさらなる局面として、I型多形体までさらに処理するのに特に適切な形態のエレトリプタンヘミサルフェートの新たな製造方法が開発された。
【0033】
この新たな方法において、アセトン中のエレトリプタンの冷却溶液を、希硫酸で処理し、次いで沈殿物を回収する。希硫酸の使用は、従来技術の方法における濃硫酸の使用と異なり、取り扱いがより容易でより安全であり、より低レベルの副生物を生成するよりクリーンな反応をもたらすため、特に有利である。
【0034】
アセトン中におけるエレトリプタン溶液の濃度は、好ましくは、7.5〜15リットル/kg、最も好ましくは、約10リットル/kgであり、この溶液は、希硫酸の添加前に濾過するのが有利である。エレトリプタン1モルあたりの硫酸の約0.45〜0.55モル当量の使用は、最適な結果を生じ、希硫酸は、好ましくは、約0.2kg/リットルの硫酸を含む。反応は、好ましくは、−5℃〜+5℃の温度で行われ、硫酸を徐々に添加する(例えば、1〜2時間にわたる)のが好ましい。生成物は、造粒(好ましくは、−5℃〜+5℃の温度で約2時間にわたる)、濾過、追加のアセトン(好ましくは、生成物1kgあたり約0.5リットルを2回)を用いた洗浄、及び乾燥(好ましくは、減圧下の約50℃)によって都合よく回収することができる。
【0035】
この方法の乾燥後の生成物は、典型的に、いろいろな水とアセトンの含有率を有する(カールフィッシャー分析によると水は通常約1.5〜6質量%)いくつかの水和した吸湿しやすい形態の混合物である。III、V、VI、VIII、及びXI型が観察されており、詳しくは下記の実験の項を参照されたい。上記の方法を用いると、必要により、I型多形体に転化する前に、水含有率が6質量%以下になるまで生成物を乾燥させる。
【0036】
下記の例は本発明を説明する。粉末X線回折像(PXRD)を、STOE STADI−P粉末X線回折装置を用いて測定した。CuKα1のX線(波長=1.5406Å)を照射しながら、各試料を回転させた。分析は、4°〜56°の2θの範囲にわたって0.
02°ステップあたり7秒間計測するように設定し、透過モードで運転のゴニオメータを用いて行った。特性ピークのみ、括弧中の相対強度とともに列挙する。Mettler−Toledo DSC 822e装置を用いて示差走査熱量測定(DSC)を行った。サンプルを30℃〜300℃の範囲に10℃/分で加熱した。Bruker−Optics
Vector 22装置を用いて赤外(IR)分析を行った。Golden−Gate
ATR法を用いてサンプルを作成した。特性ピークのみ列挙する。
【0037】
例1
アセトン(955ml)中のエレトリプタン(100g、0.26モル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(45ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を77g、0.12
6モル、0.48当量)を撹拌しながら添加し、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は1時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄した(2×50ml)。周囲温度で2時間放置した後、水とアセトンの不純物を含む(カールフィッシャー法で水8.22%、GCでアセトン約1.85%)生成物10gを検討のため採取した。
【0038】
DSC:70℃吸熱、96℃吸熱、131℃発熱、165℃吸熱、224℃吸熱
PXRD:5.6(10)、6.79(12)、10.33(30)、11.83(74)、12.21(24)、13.15(24)、13.57(24)、14.55(24)、15.61(21)、16.01(72)、16.57(31)、23.43(100)
IR:3581、3400〜2200、1710、1479、1295、1138、1037、688、597
III型とアセトン溶媒の混合物と同定された。
【0039】
残量を、強制空気乾燥機中において50℃で15時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水1.93%、GCでアセトン0.04%未満)としてエレトリプタンヘミサルフェート(100.2g、95%)を生成した。
【0040】
DSC:125℃吸熱、132℃発熱、172℃吸熱、218℃吸熱
PXRD:5.67(21)、6.85(8)、7.83(10)、10.4(10)、10.88(19)、11.37(15)、11.89(41)、12.61(27)、12.
91(51)、13.63(31)、14.85(24)、15.89(60)、16.39(37)、17.07(31)、17.65(48)、18.29(57)、22.15(100)
IR:3590、3400〜2200、1480、1293、1139、1024、686、598
VI型と同定された。
【0041】
この物質の一部(50.1g)を強制空気乾燥機中において70℃で15時間にわたってさらに乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水2.53%、GCでアセトン0.01%未満)として50.1gを生成した。
【0042】
DSC:119℃吸熱、125℃発熱、164℃吸熱、173℃発熱、209℃吸熱、222℃吸熱
PXRD:5.67(21)、6.85(8)、7.83(10)、10.4(10)、10.88(19)、11.37(15)、11.89(41)、12.61(27)、12.91(51)、13.63(31)、14.85(24)、15.89(60)、16.39(37)、17.07(31)、17.65(48)、18.29(57)、22.15(100)
IR:3590、3400〜2200、1479、1293、1139、1025、686、598
III型とVI型の混合物と同定された。
【0043】
例2
アセトン(715ml)中のエレトリプタン(75g、196ミリモル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(35ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を58g、95ミリモル、0.47当量)を撹拌しながら添加し、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は45分間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×35ml)、強制空気乾燥機中において50℃で16時間にわたって乾燥し、白色の固体(カールフィッシャー法で水1.43%、GCでアセトン0.06%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(80.9g、94%)を生成した。
【0044】
DSC:129℃吸熱、135℃発熱、171℃吸熱、182℃発熱、221℃吸熱
PXRD:5.71(19)、7.91(6)、10.91(20)、11.41(8)、11.89(31)、12.93(87)、13.65(13)、13.87(10)、14.45(15)、14.85(23)、15.37(16)、15.91(51)、22.19(100)
IR:3590、3400〜2200、1480、1293、1139、1024、686、598
VI型と同定された。
【0045】
例3
アセトン(955ml)中のエレトリプタン(100g、0.26モル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(45ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を77g、0.12
6モル、0.48当量)を撹拌しながら添加し、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は1時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×50ml)、強制空気乾燥機中において50℃で15時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水2.94%、GCでアセトン1.3%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(111.5g、96%、HPLCで純度99.84%)を生成した。
【0046】
DSC:116℃吸熱、120℃発熱、150℃発熱、179℃吸熱、223℃吸熱
PXRD:5.55(52)、6.85(43)、7.43(25)、10.47(27)、11.11(22)、11.91(73)、13.55(53)、14.53(25)、16.19(94)、16.59(26)、17.03(53)、17.65(48)、18.43(54)、23.45(100)
IR:3591、3400〜2200、1710、1480、1302、1138、1024、687、600
VIII型と同定された。
【0047】
例4
アセトン(200ml)中のエレトリプタン(20g、52.3ミリモル)の溶液を濾過した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を15.1g、24.6ミリモル、0.47当量)を撹拌しながら添加し
、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は2時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、強制空気乾燥機中において50℃で10時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水5.04%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(
22.1g、93%、HPLCで純度99.89%)を生成した。
【0048】
PXRD:5.67(10)、6.77(10)、10.24(15)、11.87(66)、13.07(21)、13.57(43)、14.49(35)、16.07(91)、17.53(23)、18.27(23)、23.43(100)
III型と同定された。
【0049】
例5
アセトン(200ml)中のエレトリプタン(20g、52.3ミリモル)の溶液を濾過した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を18.5g、30.2ミリモル、0.58当量)を−5℃〜+5℃の温度で撹拌しながら添加した。添加は2時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、強制空気乾燥機中において50℃で10時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水5.32%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(18.0g、77%、HPLCで純度99.89%)を生成した。
【0050】
例6
アセトン(633ml)中のエレトリプタン(66.3g、166ミリモル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(30ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を51g、83ミリモル、0.5当量)を、−5℃〜+5℃の温度で撹拌しながら添加した。添加は55分間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに3時間撹拌することによって造粒した。周囲温度で一晩放置した後、濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×33ml)、強制空気乾燥機中において50℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体(カールフィッシャー法で水2.6%、GCでアセトン0.01%未満)としてエレトリプタンヘミサルフェート(70.5g、94%)を生成した。
【0051】
DSC:121℃吸熱、126℃発熱、167℃吸熱
PXRD:5.67(10)、6.77(10)、10.24(15)、11.87(66)、13.07(21)、13.57(43)、14.49(35)、16.07(91)、17.53(23)、18.27(23)、23.43(100)
IR:3582、3400〜2200、1479、1302、1151、1036、687、601
III型と同定された。
【0052】
生成物のサンプル(10g)を70℃で3時間にわたってさらに乾燥し、白色の固体を得た(9.91g、カールフィッシャー法で水1.99%)。
【0053】
DSC:132℃吸熱、139℃発熱、175℃吸熱、185℃吸熱
PXRD:5.69(30)、6.8(5)、7.86(10)、10.89(21)、11.85(59)、12.57(36)、12.89(69)、15.89(85)、17.47(62)、18.29(81)、18.95(65)、22.13(100)
IR:3589、3400〜2200、1480、1304、1149、1037、690、620
VI型と同定された。
【0054】
例7
アセトン(955ml)中のエレトリプタン(100g、0.26モル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(45ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を77g、0.12
6モル、0.48当量)を、−5℃〜+5℃の温度で撹拌しながら添加した。添加は55分間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×50ml)、強制空気乾燥機中において50℃で14時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水3.04%、GCでアセトン0.01%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(110.4g、96%、HPLCで純度99.86%)を生成した。
【0055】
DSC:117℃吸熱、169℃吸熱、205℃発熱、222℃発熱
PXRD:5.65(22)、6(10)、10.28(19)、10.49(15)、11.89(70)、12.93(30)、13.57(43)、14.55(44)、16.13(91)、17.07(61)、17.53(35)、18.35(63)、23.47(100)
IR:3590、3400〜2200、1479、1302、1138、1025、687、589
III型と同定された。
【0056】
例8
酢酸エチル(100ml)と水(1ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例1の水和したVI型、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって撹拌しながら還流下で加熱した(合計の水含有率約1.2体積%)。一部の溶媒(40ml、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。サスペンジョンをさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9.36g、94%)を生成した。
【0057】
DSC:223℃吸熱
IR:3400〜2200、1480、1302、1133、1006、690、603
【0058】
例9
酢酸エチル(100ml)と水(1.5ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフ
ェート(例2の水和した生成物、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって撹拌しながら還流下で加熱した(合計の水含有率約1.65体積%)。一部の溶媒(40ml
、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。サスペンジョンをさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(30分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で3時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9.38g、94%)を生成した。
【0059】
DSC:223℃吸熱
IR:3400〜2200、1480、1302、1133、1006、690、603
【0060】
例10
1.7体積%の水を含む酢酸エチル(25ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例3の水和したVIII型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率2体積%)。一部の溶媒(5ml、20体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(2.5ml)で洗浄し、70℃で4時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.22g、93%)を生成した。
DSC:222℃吸熱
【0061】
例11
0.45体積%の水を含む酢酸エチル(50ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例4の水和したIII型の生成物、5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.95体積%)。一部の溶媒(10ml、2
0体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で15時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(4.7g、93%、HPLCで純度99.79%)を生成した。
DSC:223℃吸熱
【0062】
例12
0.45体積%の水を含む酢酸エチル(50ml)中のエレトリプタンヘミサルフェー
ト(例5の生成物、5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率1体積%)。一部の溶媒(10ml、20体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で15時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(4.7g、93%、HPLCで純度99.84%)を生成した。
【0063】
DSC:222℃吸熱
PXRD:7.37(21)、9.27(25)、10.37(43)、11.35(34)、12.35(35)、16.81(73)、17.47(54)、17.93(55)、18.67(34)、19.43(25)、21.39(100)
【0064】
例13
酢酸エチル(25ml)中のエレトリプタンヘミサルフェート(例6の水和したIII型とV型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、4時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.26体積%)。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、
酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.1g、85%)を生成した。
DSC:222℃吸熱
【0065】
例14
酢酸エチル(25ml)中のエレトリプタンヘミサルフェート(例6の水和したVI型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.2体積%)。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.2g、89%)を生成した。
【0066】
例15
0.3体積%の水を含む酢酸エチル(25ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例7の水和したIII型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.6体積%)。一部の溶媒(5ml、20体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(2.5ml)で洗浄し、70℃で4時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.1g、88%)を生成した。
DSC:223℃吸熱
【0067】
例16
酢酸エチル(100ml)と水(0.6ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフ
ェート(高い水含有率(約9%)とアセトン含有率(約6.4%)、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率約1.5体積%)。一部の溶媒(40ml、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。反応混合物をさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(30分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で2.5時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(8.2g、96%)を生成した。
DSC:223℃吸熱
【0068】
例17
酢酸エチル(100ml)と水(1ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(水含有率5.23%、アセトン含有率50ppm未満、10g)のサスペンジョンを
、16時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率約1.5体積%)。一部の溶媒(40ml、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。反応混合物をさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(20分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で3時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9.1g、96%)を生成した。
DSC:222℃吸熱
【0069】
例18
酢酸エチル(100ml)と水(1ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(主に水和したVI型、水含有率2.33%、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率約1.3体積%)。一部の溶媒(40ml、
40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。反応混合物をさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(20分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9g、92%)を生成した。
【0070】
DSC:224℃吸熱
IR:3400〜2200、1480、1302、1133、1006、690、604
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1a】I型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図1b】I型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図2】II型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図3a】III型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図3b】III型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図4】IV型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図5a】V型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図5b】V型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図6a】VI型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図6b】VI型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図7】VII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図8】VIII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図9】IX型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図10】X型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図11】XI型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図12a】XII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図12b】XII型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図13】XIII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図14】XIV型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の結晶型のエレトリプタンヘミサルフェートを製造するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレトリプタン、3−{[1−メチルピロリジン−2(R)−イル]メチル}−5−(2−フェニルスルフォニルエチル)−1H−インドール、及びその製造方法は、米国特許第5607951号に開示されている。
【0003】
エレトリプタンヘミサルフェートは、下記の式(I)の構造を有する。
【化1】
【0004】
国際特許出願PCT/EP95/01914(WO−A−96/06842として公開)は、2つの結晶型のエレトリプタンヘミサルフェートを開示している。第1はα型と称され、185℃の融点を有することを特徴とする。この型は、以下、エレトリプタンヘミサルフェートII型と称するものとする。第2はβ型と称され、145〜147℃の融点を有することを特徴とし、以下、エレトリプタンヘミサルフェートIII型と称するものとする。
【0005】
国際特許出願PCT/EP98/04176(WO−A−99/01135として公開)は、エレトリプタンヘミサルフェートIII型の製造方法を記載している。
【0006】
国際特許出願PCT/IB00/01305(WO−A−01/23377として公開)は、もう1つの結晶型のエレトリプタンヘミサルフェートを開示している。この多形体(以下、エレトリプタンヘミサルフェートI型と称するものとする)は、226℃のそのDSC融点、及びその粉末X線回折(PXRD)像のようなそれ以外のデータによって特徴付けられる。また、エレトリプタンそのものから、及び混合多形体のエレトリプタンヘミサルフェート(即ち、少なくとも部分的に1種又はそれ以上の他の多形体が存在する)から、エレトリプタンヘミサルフェートI型を製造するためのいくつかの方法が開示されている。後者の場合において、混合多形体のヘミサルフェート塩が、還流するテトラヒドロフラン(THF)、エタノール、イソプロパノール、又は工業用メチル化スピリット(IMS)の中でスラリーにされ、次いで濾過、洗浄、乾燥され、エレトリプタンヘミサルフェートI型を生成する。
【0007】
これらのエレトリプタンヘミサルフェートI型の製造方法は、不満足であることが実証されており、特に量産のときは、I型の多形体を信頼よく与えない。例えば、THFが溶媒として使用された場合、生成物は、溶媒和又は水和した形態の不純物を含むことが多い(とりわけ水和物)。こうした望ましくない形態は、予測できない状態で得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬物分子の大規模な製造において、同じ結晶型を含んで他の結晶型や溶媒を含まない均一な生成物を信頼よく製造するといった意味で、確固たる方法の確立が基本であると認識されるはずである。
【0009】
即ち、信頼よく大規模で実施できるエレトリプタンヘミサルフェートI型の高収率で確固たる製造方法を提供するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今回、意外にも信頼よくかつ高収率の方法でエレトリプタンヘミサルフェートI型を製造可能なことが、見出された。新しい方法においては、C1〜C6アルキルアセテート溶媒中の任意の他の形態(又は任意の混合形態)におけるエレトリプタンヘミサルフェートの撹拌されたサスペンジョンを加熱し、次いで生成物の回収の前に共沸蒸留によって濃縮する。
【0011】
C1〜C6アルキルアセテートは、式:CH3COOR(RはC1〜C6アルキル基)の化
合物である。好ましい溶媒は、酢酸エチルと酢酸n−プロピルである。酢酸エチルが特に好ましい。
【0012】
エレトリプタンヘミサルフェートの重量に対する使用溶媒の体積は、好結果が得られることを決定するものではない。酢酸エチルが溶媒として使用される場合、1kgのエレトリプタンヘミサルフェートあたり8〜12リットルの酢酸エチルの量が好ましく用いられる。
【0013】
しかしながら、反応において存在する水の量は、その方法で好結果が得られるのに重要であり、3体積%以下でなければならない。ヘミサルフェートの出発物質が水和している場合、存在する結合水の量を求め(カールフィッシャー(KF)分析が最も便利な分析手段)、考慮に入れる必要がある。必要により、出発物質を乾燥させ、その水含有率を減らすことができる。反応混合物の水含有率は、好ましくは0.2〜2体積%であり、最も好ましくは1.3〜2体積%である。
【0014】
一般に、変化に対して抵抗性の少ない低結晶化度を有するエレトリプタンの形態は、より低い水含有率を有する反応混合物の中で容易に転化することができ、一方、より高い抵抗性のバッチは、より高い水含有率を有する反応混合物の中でより好都合に転化する。
【0015】
加熱は、存在する全てのヘミサルフェート塩がI型多形体に転化するまで継続すべきである。これは一般に数時間を要し、通常は4〜24時間である。この転化時間は、選択された温度に依存し、より高い温度はより短い転化時間をもたらす。好ましくは、スラリーを60〜80℃に加熱する。最も好ましくは、酢酸エチルが溶媒として選択された場合、スラリーを還流下で加熱する。また、反応混合物を加圧して転化率を高めることもできる。示差走査熱量測定(DSC)を反応混合物から採取したサンプルについて行い、どの程度まで転化が進んだかの大ざっぱな指標として用いることもできる。
【0016】
転化が完了すると、必要により、反応混合物の水含有率が1体積%未満に低下するまで、共沸蒸留によって溶媒の一部を除去しなければならない。この工程は、周囲温度で生成物の何らかの溶媒和物がその後に生成するのを回避するために重要である。例えば、エレトリプタンヘミサルフェートの出発物質の1kgあたり約10リットルの酢酸エチルを使用した場合、通常、添加した体積の1/5〜2/5を蒸留除去すれば十分である。
【0017】
場合により、転化が遅いと、転化の後よりも転化の途中で共沸蒸留を行うのが有利である。この場合、反応混合物の水含有率は0.3体積%未満まで減らすべきであり、新たな乾燥溶媒を添加し、反応物をさらにある期間にわたって還流下で加熱すべきである。
【0018】
生成物は濾過によって回収することができる。典型的に、反応混合物は、20〜25℃まで冷却し、濾過し、溶媒で洗浄し(好ましくは、生成物1kgあたり約1リットル)、そして乾燥させる(好ましくは、減圧下の70℃)。特定の場合には、塊の破砕(de−lumping)が必要なことがある。
【0019】
エレトリプタンヘミサルフェートI型の平均収率は94%である。
【0020】
原理的に、転化の出発物質は、アモルファスのエレトリプタンヘミサルフェート、任意の1つの多形のエレトリプタンヘミサルフェート、及びこれらの1つの又は任意の混合物(I型そのものを含む混合物を包含する)の水和された又は溶媒和された形態であること
ができる。
【0021】
既知のエレトリプタンヘミサルフェートの多形体を、特性データとともに下記の表に列挙している。多形体I〜XI、及び2つの酢酸エチル溶媒和物XIIとXIII、酢酸n−プロピルアセテート溶媒和物XIVが知られており、これらの溶媒和物は種々の量の水を含む。これらの溶媒和物は、それぞれ、酢酸エチル又は酢酸n−プロピルの中でアモルファスのエレトリプタンヘミサルフェートをスラリーにすると容易に観察される。IV型は、アセトニトリル中のエレトリプタンの溶液を希硫酸で処理すると観察される。
【0022】
粉末X線回折像(PXRD)は、自動サンプル交換器、θ-θゴニオメータ、自動ビー
ム可変スリット(automatic beam divergence slits)、二次モノクロメータ、及びシンチレーションカウンターを備えたSIEMENS D5000粉末X線回折装置を用いて通常のように測定した。サンプルは、シリコンウエハーの試料台に粉末を充填することで分析の用意をした。40kV/40mAで作動させるX線管を用い、CuKα1のX線(波長=1.5406Å)を照射しながら、各試料を回転させた。分析は、2°〜40°の2θ範囲にわたって0.02°ステップあたり5秒間計測するように設定し、連続モードで運転のゴニオメータを用いて通常のように行った。示差走査熱量測定(DSC)は、自動サンプル交換器を備えたPerkin Elmer Diamond DSC装置を用いて行った。各サンプルの約3mgを、50マイクロリットルのアルミニウム皿に正確に秤量し、穴あき蓋を用いてクリンプシールした。窒素ガスでパージしながら、サンプルを30℃〜250℃の範囲にわたって20℃/分で加熱した。III型及びそれ以上についてのDSCサーモグラムは、脱水又は脱溶媒を含む同様なプロフィルを有し、約140℃に至るまでに溶融し、次いでII型への発熱再結晶が起こり(約186℃にピーク)、次いでI型への第2の発熱再結晶が起こる(約226℃にピーク)。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【表8】
【0031】
III、V、VI、及びXI型は、周囲の相対湿度にしたがって相互変化する。
【0032】
エレトリプタンヘミサルフェートは、通常、エレトリプタン遊離塩基と硫酸の反応によって製造される。例えば、WO−A−01/23377は、アセトン中の還流溶液として又はテトラヒドロフラン中の冷却溶液としての濃硫酸とエレトリプタンの反応を含む方法を記載している。本発明のさらなる局面として、I型多形体までさらに処理するのに特に適切な形態のエレトリプタンヘミサルフェートの新たな製造方法が開発された。
【0033】
この新たな方法において、アセトン中のエレトリプタンの冷却溶液を、希硫酸で処理し、次いで沈殿物を回収する。希硫酸の使用は、従来技術の方法における濃硫酸の使用と異なり、取り扱いがより容易でより安全であり、より低レベルの副生物を生成するよりクリーンな反応をもたらすため、特に有利である。
【0034】
アセトン中におけるエレトリプタン溶液の濃度は、好ましくは、7.5〜15リットル/kg、最も好ましくは、約10リットル/kgであり、この溶液は、希硫酸の添加前に濾過するのが有利である。エレトリプタン1モルあたりの硫酸の約0.45〜0.55モル当量の使用は、最適な結果を生じ、希硫酸は、好ましくは、約0.2kg/リットルの硫酸を含む。反応は、好ましくは、−5℃〜+5℃の温度で行われ、硫酸を徐々に添加する(例えば、1〜2時間にわたる)のが好ましい。生成物は、造粒(好ましくは、−5℃〜+5℃の温度で約2時間にわたる)、濾過、追加のアセトン(好ましくは、生成物1kgあたり約0.5リットルを2回)を用いた洗浄、及び乾燥(好ましくは、減圧下の約50℃)によって都合よく回収することができる。
【0035】
この方法の乾燥後の生成物は、典型的に、いろいろな水とアセトンの含有率を有する(カールフィッシャー分析によると水は通常約1.5〜6質量%)いくつかの水和した吸湿しやすい形態の混合物である。III、V、VI、VIII、及びXI型が観察されており、詳しくは下記の実験の項を参照されたい。上記の方法を用いると、必要により、I型多形体に転化する前に、水含有率が6質量%以下になるまで生成物を乾燥させる。
【0036】
下記の例は本発明を説明する。粉末X線回折像(PXRD)を、STOE STADI−P粉末X線回折装置を用いて測定した。CuKα1のX線(波長=1.5406Å)を照射しながら、各試料を回転させた。分析は、4°〜56°の2θの範囲にわたって0.
02°ステップあたり7秒間計測するように設定し、透過モードで運転のゴニオメータを用いて行った。特性ピークのみ、括弧中の相対強度とともに列挙する。Mettler−Toledo DSC 822e装置を用いて示差走査熱量測定(DSC)を行った。サンプルを30℃〜300℃の範囲に10℃/分で加熱した。Bruker−Optics
Vector 22装置を用いて赤外(IR)分析を行った。Golden−Gate
ATR法を用いてサンプルを作成した。特性ピークのみ列挙する。
【0037】
例1
アセトン(955ml)中のエレトリプタン(100g、0.26モル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(45ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を77g、0.12
6モル、0.48当量)を撹拌しながら添加し、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は1時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄した(2×50ml)。周囲温度で2時間放置した後、水とアセトンの不純物を含む(カールフィッシャー法で水8.22%、GCでアセトン約1.85%)生成物10gを検討のため採取した。
【0038】
DSC:70℃吸熱、96℃吸熱、131℃発熱、165℃吸熱、224℃吸熱
PXRD:5.6(10)、6.79(12)、10.33(30)、11.83(74)、12.21(24)、13.15(24)、13.57(24)、14.55(24)、15.61(21)、16.01(72)、16.57(31)、23.43(100)
IR:3581、3400〜2200、1710、1479、1295、1138、1037、688、597
III型とアセトン溶媒の混合物と同定された。
【0039】
残量を、強制空気乾燥機中において50℃で15時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水1.93%、GCでアセトン0.04%未満)としてエレトリプタンヘミサルフェート(100.2g、95%)を生成した。
【0040】
DSC:125℃吸熱、132℃発熱、172℃吸熱、218℃吸熱
PXRD:5.67(21)、6.85(8)、7.83(10)、10.4(10)、10.88(19)、11.37(15)、11.89(41)、12.61(27)、12.
91(51)、13.63(31)、14.85(24)、15.89(60)、16.39(37)、17.07(31)、17.65(48)、18.29(57)、22.15(100)
IR:3590、3400〜2200、1480、1293、1139、1024、686、598
VI型と同定された。
【0041】
この物質の一部(50.1g)を強制空気乾燥機中において70℃で15時間にわたってさらに乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水2.53%、GCでアセトン0.01%未満)として50.1gを生成した。
【0042】
DSC:119℃吸熱、125℃発熱、164℃吸熱、173℃発熱、209℃吸熱、222℃吸熱
PXRD:5.67(21)、6.85(8)、7.83(10)、10.4(10)、10.88(19)、11.37(15)、11.89(41)、12.61(27)、12.91(51)、13.63(31)、14.85(24)、15.89(60)、16.39(37)、17.07(31)、17.65(48)、18.29(57)、22.15(100)
IR:3590、3400〜2200、1479、1293、1139、1025、686、598
III型とVI型の混合物と同定された。
【0043】
例2
アセトン(715ml)中のエレトリプタン(75g、196ミリモル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(35ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を58g、95ミリモル、0.47当量)を撹拌しながら添加し、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は45分間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×35ml)、強制空気乾燥機中において50℃で16時間にわたって乾燥し、白色の固体(カールフィッシャー法で水1.43%、GCでアセトン0.06%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(80.9g、94%)を生成した。
【0044】
DSC:129℃吸熱、135℃発熱、171℃吸熱、182℃発熱、221℃吸熱
PXRD:5.71(19)、7.91(6)、10.91(20)、11.41(8)、11.89(31)、12.93(87)、13.65(13)、13.87(10)、14.45(15)、14.85(23)、15.37(16)、15.91(51)、22.19(100)
IR:3590、3400〜2200、1480、1293、1139、1024、686、598
VI型と同定された。
【0045】
例3
アセトン(955ml)中のエレトリプタン(100g、0.26モル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(45ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を77g、0.12
6モル、0.48当量)を撹拌しながら添加し、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は1時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×50ml)、強制空気乾燥機中において50℃で15時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水2.94%、GCでアセトン1.3%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(111.5g、96%、HPLCで純度99.84%)を生成した。
【0046】
DSC:116℃吸熱、120℃発熱、150℃発熱、179℃吸熱、223℃吸熱
PXRD:5.55(52)、6.85(43)、7.43(25)、10.47(27)、11.11(22)、11.91(73)、13.55(53)、14.53(25)、16.19(94)、16.59(26)、17.03(53)、17.65(48)、18.43(54)、23.45(100)
IR:3591、3400〜2200、1710、1480、1302、1138、1024、687、600
VIII型と同定された。
【0047】
例4
アセトン(200ml)中のエレトリプタン(20g、52.3ミリモル)の溶液を濾過した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を15.1g、24.6ミリモル、0.47当量)を撹拌しながら添加し
、−5℃〜+5℃の温度に維持した。添加は2時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、強制空気乾燥機中において50℃で10時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水5.04%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(
22.1g、93%、HPLCで純度99.89%)を生成した。
【0048】
PXRD:5.67(10)、6.77(10)、10.24(15)、11.87(66)、13.07(21)、13.57(43)、14.49(35)、16.07(91)、17.53(23)、18.27(23)、23.43(100)
III型と同定された。
【0049】
例5
アセトン(200ml)中のエレトリプタン(20g、52.3ミリモル)の溶液を濾過した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を18.5g、30.2ミリモル、0.58当量)を−5℃〜+5℃の温度で撹拌しながら添加した。添加は2時間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、強制空気乾燥機中において50℃で10時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水5.32%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(18.0g、77%、HPLCで純度99.89%)を生成した。
【0050】
例6
アセトン(633ml)中のエレトリプタン(66.3g、166ミリモル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(30ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を51g、83ミリモル、0.5当量)を、−5℃〜+5℃の温度で撹拌しながら添加した。添加は55分間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに3時間撹拌することによって造粒した。周囲温度で一晩放置した後、濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×33ml)、強制空気乾燥機中において50℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体(カールフィッシャー法で水2.6%、GCでアセトン0.01%未満)としてエレトリプタンヘミサルフェート(70.5g、94%)を生成した。
【0051】
DSC:121℃吸熱、126℃発熱、167℃吸熱
PXRD:5.67(10)、6.77(10)、10.24(15)、11.87(66)、13.07(21)、13.57(43)、14.49(35)、16.07(91)、17.53(23)、18.27(23)、23.43(100)
IR:3582、3400〜2200、1479、1302、1151、1036、687、601
III型と同定された。
【0052】
生成物のサンプル(10g)を70℃で3時間にわたってさらに乾燥し、白色の固体を得た(9.91g、カールフィッシャー法で水1.99%)。
【0053】
DSC:132℃吸熱、139℃発熱、175℃吸熱、185℃吸熱
PXRD:5.69(30)、6.8(5)、7.86(10)、10.89(21)、11.85(59)、12.57(36)、12.89(69)、15.89(85)、17.47(62)、18.29(81)、18.95(65)、22.13(100)
IR:3589、3400〜2200、1480、1304、1149、1037、690、620
VI型と同定された。
【0054】
例7
アセトン(955ml)中のエレトリプタン(100g、0.26モル)の溶液を濾過し、フィルターを追加のアセトン(45ml)で洗浄した。得られた透明な黄色い溶液を0℃まで冷却し、希硫酸(96%濃硫酸と水の質量で1:5の混合物を77g、0.12
6モル、0.48当量)を、−5℃〜+5℃の温度で撹拌しながら添加した。添加は55分間にわたって行った。得られたサスペンジョンを、0℃でさらに2時間撹拌することによって造粒した。濾過によって沈殿を回収し、アセトンで洗浄し(2×50ml)、強制空気乾燥機中において50℃で14時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体(カールフィッシャー法で水3.04%、GCでアセトン0.01%)としてエレトリプタンヘミサルフェート(110.4g、96%、HPLCで純度99.86%)を生成した。
【0055】
DSC:117℃吸熱、169℃吸熱、205℃発熱、222℃発熱
PXRD:5.65(22)、6(10)、10.28(19)、10.49(15)、11.89(70)、12.93(30)、13.57(43)、14.55(44)、16.13(91)、17.07(61)、17.53(35)、18.35(63)、23.47(100)
IR:3590、3400〜2200、1479、1302、1138、1025、687、589
III型と同定された。
【0056】
例8
酢酸エチル(100ml)と水(1ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例1の水和したVI型、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって撹拌しながら還流下で加熱した(合計の水含有率約1.2体積%)。一部の溶媒(40ml、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。サスペンジョンをさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9.36g、94%)を生成した。
【0057】
DSC:223℃吸熱
IR:3400〜2200、1480、1302、1133、1006、690、603
【0058】
例9
酢酸エチル(100ml)と水(1.5ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフ
ェート(例2の水和した生成物、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって撹拌しながら還流下で加熱した(合計の水含有率約1.65体積%)。一部の溶媒(40ml
、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。サスペンジョンをさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(30分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で3時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9.38g、94%)を生成した。
【0059】
DSC:223℃吸熱
IR:3400〜2200、1480、1302、1133、1006、690、603
【0060】
例10
1.7体積%の水を含む酢酸エチル(25ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例3の水和したVIII型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率2体積%)。一部の溶媒(5ml、20体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(2.5ml)で洗浄し、70℃で4時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.22g、93%)を生成した。
DSC:222℃吸熱
【0061】
例11
0.45体積%の水を含む酢酸エチル(50ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例4の水和したIII型の生成物、5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.95体積%)。一部の溶媒(10ml、2
0体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で15時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(4.7g、93%、HPLCで純度99.79%)を生成した。
DSC:223℃吸熱
【0062】
例12
0.45体積%の水を含む酢酸エチル(50ml)中のエレトリプタンヘミサルフェー
ト(例5の生成物、5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率1体積%)。一部の溶媒(10ml、20体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で15時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(4.7g、93%、HPLCで純度99.84%)を生成した。
【0063】
DSC:222℃吸熱
PXRD:7.37(21)、9.27(25)、10.37(43)、11.35(34)、12.35(35)、16.81(73)、17.47(54)、17.93(55)、18.67(34)、19.43(25)、21.39(100)
【0064】
例13
酢酸エチル(25ml)中のエレトリプタンヘミサルフェート(例6の水和したIII型とV型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、4時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.26体積%)。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、
酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.1g、85%)を生成した。
DSC:222℃吸熱
【0065】
例14
酢酸エチル(25ml)中のエレトリプタンヘミサルフェート(例6の水和したVI型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.2体積%)。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(5ml)で洗浄し、70℃で7時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.2g、89%)を生成した。
【0066】
例15
0.3体積%の水を含む酢酸エチル(25ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(例7の水和したIII型の生成物、2.5g)のサスペンジョンを、24時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率0.6体積%)。一部の溶媒(5ml、20体積%)を共沸蒸留によって除去した。周囲温度まで冷却した後、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(2.5ml)で洗浄し、70℃で4時間にわたって乾燥し、白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(2.1g、88%)を生成した。
DSC:223℃吸熱
【0067】
例16
酢酸エチル(100ml)と水(0.6ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフ
ェート(高い水含有率(約9%)とアセトン含有率(約6.4%)、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率約1.5体積%)。一部の溶媒(40ml、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。反応混合物をさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(30分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で2.5時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(8.2g、96%)を生成した。
DSC:223℃吸熱
【0068】
例17
酢酸エチル(100ml)と水(1ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(水含有率5.23%、アセトン含有率50ppm未満、10g)のサスペンジョンを
、16時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率約1.5体積%)。一部の溶媒(40ml、40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。反応混合物をさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(20分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で3時間にわたって乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9.1g、96%)を生成した。
DSC:222℃吸熱
【0069】
例18
酢酸エチル(100ml)と水(1ml)の混合物中のエレトリプタンヘミサルフェート(主に水和したVI型、水含有率2.33%、10g)のサスペンジョンを、16時間にわたって還流下で加熱した(合計の水含有率約1.3体積%)。一部の溶媒(40ml、
40体積%)を共沸蒸留によって除去し、新たな乾燥した酢酸エチル(40ml)を添加した。反応混合物をさらに6時間にわたって還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後(20分間で)、濾過によって沈殿を回収し、酢酸エチル(10ml)で洗浄し、70℃で乾燥し、灰色がかった白色の固体としてエレトリプタンヘミサルフェートのI型多形体(9g、92%)を生成した。
【0070】
DSC:224℃吸熱
IR:3400〜2200、1480、1302、1133、1006、690、604
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1a】I型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図1b】I型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図2】II型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図3a】III型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図3b】III型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図4】IV型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図5a】V型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図5b】V型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図6a】VI型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図6b】VI型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図7】VII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図8】VIII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図9】IX型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図10】X型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図11】XI型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図12a】XII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図12b】XII型の示唆熱走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
【図13】XIII型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【図14】XIV型の粉末X線回折(PXRD)像を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式:CH3COOR(RはC1〜C6アルキル基)の溶媒の中でI型以外の任意の形態のエレトリプタンヘミサルフェートをスラリーにし、
(b)該スラリーの水含有率を必要により3体積%以下に調節し、
(c)該スラリーを加熱し、
(d)反応混合物を必要により共沸蒸留によって該反応混合物の水含有率が1体積%未満に低下するまで濃縮し、そして
(e)生成物を回収する、
工程を含み、CuKα1線(波長=0.15046nm)を用いて得られる9.28、
10.38、11.37、12.40、16.84、17.46、17.53、17.78、1
7.98、19.48、20.70、21.29、21.45、22.21、22.64、23.08、25.20、及び25.79にメインピークを示す粉末X線回折像によって特徴付けられる無水エレトリプタンヘミサルフェートI型多形体の製造方法。
【請求項2】
溶媒が酢酸エチル又は酢酸n−プロピルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒が酢酸エチルである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)において水含有率が0.2〜2体積%に調節される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水含有率が1.3〜2体積%に調節される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)においてスラリーが60〜80℃に加熱される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)においてスラリーが還流下で加熱される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)において水含有率が0.3体積%未満に調節される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)が、工程(c)の後ではなく、工程(c)と同時に行われる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
出発物質が、アセトン中のエレトリプタン溶液と希硫酸を反応させることによって製造される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
(a)式:CH3COOR(RはC1〜C6アルキル基)の溶媒の中でI型以外の任意の形態のエレトリプタンヘミサルフェートをスラリーにし、
(b)該スラリーの水含有率を必要により3体積%以下に調節し、
(c)該スラリーを加熱し、
(d)反応混合物を必要により共沸蒸留によって該反応混合物の水含有率が1体積%未満に低下するまで濃縮し、そして
(e)生成物を回収する、
工程を含み、CuKα1線(波長=0.15046nm)を用いて得られる9.28、
10.38、11.37、12.40、16.84、17.46、17.53、17.78、1
7.98、19.48、20.70、21.29、21.45、22.21、22.64、23.08、25.20、及び25.79にメインピークを示す粉末X線回折像によって特徴付けられる無水エレトリプタンヘミサルフェートI型多形体の製造方法。
【請求項2】
溶媒が酢酸エチル又は酢酸n−プロピルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒が酢酸エチルである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)において水含有率が0.2〜2体積%に調節される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
水含有率が1.3〜2体積%に調節される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)においてスラリーが60〜80℃に加熱される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)においてスラリーが還流下で加熱される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)において水含有率が0.3体積%未満に調節される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)が、工程(c)の後ではなく、工程(c)と同時に行われる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
出発物質が、アセトン中のエレトリプタン溶液と希硫酸を反応させることによって製造される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図13】
【図14】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−528968(P2006−528968A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530682(P2006−530682)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001694
【国際公開番号】WO2004/106327
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503053011)ファイザー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001694
【国際公開番号】WO2004/106327
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503053011)ファイザー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】
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