説明

無端ベルト及び画像形成装置

【課題】高品質の画像を形成することに貢献する無端ベルト及び高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】直径0.7mmの球体に2300gの圧縮荷重をかけて行う凹み荷重試験によって生じる凹み量が10μm以下であることを特徴とする無端ベルト1、及び、この無端ベルト1を備えた画像形成装置。この無端ベルト1は、好ましくは、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物、又は、高ヤング率材料を硬化して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルト及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、高品質の画像を形成することに貢献する無端ベルト及び高品質の画像を形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、無端ベルトの機能等に応じて、例えば、像担持体に現像された現像剤像を記録体に直接転写する直接転写方式と、現像剤像を一旦無端ベルトに転写し、無端ベルトから記録体に転写する中間転写方式とがある。
【0003】
より具体的には、直接転写方式は、感光ドラム等の像担持体に形成された静電潜像を現像手段に装備された現像剤担持体から供給される現像剤で現像し、転写手段に電圧を印加することにより、現像された現像剤像を、無端ベルト(転写搬送ベルトともいう。)に静電的に吸着されて像担持体と転写手段との間に搬送される記録体に転写し、現像剤像が転写された記録体を加圧ローラ及び定着ローラによって圧着又は加熱圧着し、転写された現像剤像を記録体上に画像や文字として完全に定着する方式である。また、中間転写方式は、例えば、像担持体に形成された静電潜像を現像剤で現像し、現像された現像剤像を像担持体に当接又は圧接する無端ベルト(中間転写ベルトともいう。)に転写(一次転写)し、無端ベルトに転写された現像剤像を記録体に転写(二次転写)して、現像剤像が転写された記録体を加圧ローラ及び定着ローラによって圧着又は加熱圧着し、転写された現像剤像を記録体上に画像や文字として完全に定着する方式である。
【0004】
これらの画像形成装置に装着される無端ベルトとして、例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂から成る無端ベルトが記載されている。これらの無端ベルトは、一般に、例えば、0.007〜0.025MPa程度の張力で複数のローラ間に張架され、駆動ローラ等により高速で無限軌道上を走行すると共に、電圧が印加された転写手段等を介して電圧が印加される。また、ローラに張架された無端ベルトの周辺環境は、温度及び湿度が変化し、時には高温高湿度の過酷な環境になることもある。そのため、無端ベルトは、引張り強度、ヤング率、可撓性、耐折強さ、導電特性等に加え、現像剤像転写時に、転写手段等からの印加電圧を受けて常に所定の電位を保つことのできる導電特性等の特性が特に重要である。
【0005】
ところが、これらの特性に優れた無端ベルトであっても、ローラに張架されてしばらくの間(例えば、10日程度)は良好な画像が形成されるものの、ローラに長期間(例えば、30日程度)にわたって張架されると、形成される画像に、例えば、現像剤の不転写による点状及び/又は筋状の白抜け部が発生し、良好な画像を形成することができないことがあった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−022194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、高品質の画像を形成することに貢献する無端ベルト及び高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、直径0.7mmの球体に2300gの圧縮荷重をかけて行う凹み荷重試験によって生じる凹み量が10μm以下であることを特徴とする無端ベルトであり、
請求項2は、前記無端ベルトは、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物を硬化して成ることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトであり、
請求項3は、前記無端ベルトは、高ヤング率材料を硬化して成ることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトであり、
請求項4は、前記無端ベルトは、ヤング率が3,000MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無端ベルトであり、
請求項5は、前記無端ベルトは、周方向に2.5%伸ばしたときの応力緩和率が13.5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無端ベルトであり、
請求項6は、前記無端ベルトは、周方向に2.5%伸ばしたときの永久歪が0.3%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無端ベルトであり、
請求項7は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の無端ベルトを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る無端ベルトは、直径0.7mmの球体に2300gの圧縮荷重をかけて行う凹み荷重試験によって生じる凹み量が10μm以下であるから、所定の張力で複数のローラ間に長期間にわたって張架され、走行及び停止が繰り返されても、また、張架されたローラの周辺環境が変化しても、所定の寸法及び形状、特に表面の高い平面性を維持することができる。その結果、この発明に係る無端ベルトは、感光ドラム等の像担持体から現像剤を所望のように転写されて担持し、かつ、現像剤を記録体に所望のように転写することができ、現像剤の不転写による点状及び/又は筋状の白抜け部が発生することを防止することができる。したがって、この発明によれば、高品質の画像を形成することに貢献する無端ベルト及び高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の一実施例である無端ベルトを図面に基づいて説明する。無端ベルト1は、後述するチオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物、又は、後述する高ヤング率材料によって、図1に示されるように、環状に形成されて成る。すなわち、無端ベルト1は、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物、又は、高ヤング率材料を環状に成形して成る。
【0011】
無端ベルト1は、直径0.7mmの球体に2300gの圧縮荷重をかけて行う凹み荷重試験によって生じる凹み量が10μm以下である。この凹み荷重試験における凹み量が10μmを超えると、無端ベルト1が所定の張力で複数のローラ間に長期間にわたって張架され、走行及び停止が繰り返された場合、無端ベルト1が蛇行走行した場合、及び/又は、張架されたローラの周辺環境が変化した場合等に、所定の寸法及び形状を維持することができなくなることがある。このように、無端ベルト1が所定の寸法等を維持することができなくなると、無端ベルト1の表面特に現像剤を担持する転写面の高い平面性を保つことができなくなり、その結果、このような高い平面性を失った無端ベルト1は、感光ドラム等の像担持体から現像剤を所望のように転写されて担持し、かつ、現像剤を記録体に所望のように転写することができなくなる。したがって、このような高い平面性を失った無端ベルト1を装着した画像形成装置で形成される画像には、現像剤の不転写による点状及び/又は筋状の白抜け部が発生し、高品質の画質を形成することに貢献することができなくなる。無端ベルト1は、前記の場合にも、所定の寸法及び形状を維持することができ、高品質の画像を形成することに大きく貢献することができる点で、前記凹み荷重試験における凹み量が5μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが特に好ましい。一方、前記凹み荷重試験における凹み量の下限は、特に制限されないが、1μmであるのが好ましく、下限値を容易に調整することができる点で、1.5μmであるのが特に好ましい。凹み荷重試験における凹み量が1μm未満であると、無端ベルト1の伸縮性が低く脆くなるため、無端ベルト1が画像形成装置に装着され、高速で無限軌道上を走行すると、無端ベルト1に割れ等が発生することがある。
【0012】
前記凹み荷重試験における無端ベルト1の凹み量は以下のようにして求めることができる。すなわち、無端ベルト1から50mm×60mmの検体を1又は複数切り出し、所望により切り出した検体を重ね合せて(接着等しない)、厚さ1mmの試験体とする。凹みをつけるための接触子として直径0.7mmの球体(例えば、ボールペン先(ボール径0.7mm、商品名「替芯K−0.7芯」、ゼブラ社製))を装着した引張試験機(商品名「テンシロン」、型式「RTM−100」、株式会社オリエンテック製)の試験台に試験体を固定する。そして、この接触子に、試験体の表面(検体を積層した場合には最上層に位置する検体の表面)に対して、垂直(試験体の厚さ方向)に2300gの圧縮荷重をかけて、接触子を試験体の前記表面に5秒間にわたって垂直方向に押し付ける。その後、前記接触子を試験体から引き離し、この試験体(検体を積層した場合には最上層に位置する検体)において、前記接触子が押し付けられて形成された凹部の凹み量を、表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)を用いて、測定する。この操作を、試験体の3点(3測定点、測定点間の距離は例えば25mm程度に設定することができる。)で行い、測定された各凹み量の算術平均値を、無端ベルト1の凹み量とする。なお、試験体に形成された凹部の凹み量は、先端半径2μmの測定プローブを使用し、トレーシングスピード0.3、断面曲線Pにて、測定する。
【0013】
無端ベルト1の凹み量は、後述するチオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物又は後述する高ヤング率材料に含まれる樹脂の種類、導電性付与剤の種類、導電性付与剤の含有量、及び/又は、無端ベルト1の溶媒残留量等を変更することにより、調整することができる。
【0014】
この無端ベルト1は、ヤング率が、3000MPa以上であるのが好ましく、4000MPa以上であるのがより好ましく、4500MPa以上であるのが特に好ましい。ヤング率が前記範囲内にあると、無端ベルト1が可撓性に富み、所定の張力がかけられた状態で複数のローラ及び駆動ローラ等に長期間にわたって張架されても、変形、破損又は損傷しにくく、また、駆動時の応力に対する無端ベルト1の変形も小さくなり、無端ベルト1の所定の寸法及び形状を高度に維持することができ、その結果、高品質の画質を安定して形成することに大きく貢献することができる。一方、ヤング率の上限は、特に制限されないが、6000MPaであるのが好ましく、5500MPaであるのがより好ましく、5000MPaであるのが特に好ましい。ヤング率の上限が前記範囲を超えると、無端ベルト1が脆くなり、ひび割れ等が発生する場合がある。
【0015】
無端ベルト1のヤング率は、単位断面積にかかる力ΔSと単位長さでの伸びΔaを測定し、式 E=ΔS/Δa により求めることができる。ここで、前記式中、ΔSは、負荷F、無端ベルト1の厚さt及び幅wより、式ΔS=F/(w×t)で表され、Δaは、無端ベルト1の基準長さL、負荷をかけたときの無端ベルト1の伸びΔLより、Δa=ΔL/Lで表される。無端ベルト1のヤング率は、引張り試験機、例えば、商品名「MODEL−1605N」(アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて、測定することもできる。無端ベルト1のヤング率は、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物又は高ヤング率材料に含まれる樹脂の種類、この樹脂の含有量、及び/又は、無端ベルト1の溶媒残留量等により、調整することができる。
【0016】
無端ベルト1は、周方向に2.5%伸ばしたときの応力緩和率が13.5%以下であるのが好ましく、12%以下であるのがより好ましく、11%以下であるのが特に好ましい。応力緩和率が前記範囲内にあると、無端ベルト1に変形が生じたとしても、無端ベルト1自体の伸縮性により、元の状態に戻りやすく、無端ベルト1の所定の寸法及び形状を維持することができ、その結果、良好な画質を安定して得ることができる。一方、応力緩和率の下限は、特に制限されないが、1%であるのが好ましく、2%であるのがより好ましく、3%であるのが特に好ましい。応力緩和率の下限が前記範囲未満であると、無端ベルト1が画像形成装置に装着され、高速で無限軌道上を走行すると、変形することがある。
【0017】
無端ベルト1の応力緩和率は以下のようにして求めることができる。すなわち、無端ベルト1から、その周方向に沿って長さ300mm、前記周方向に垂直な断面の面積が0.4mm(例えば、無端ベルト1の厚さが0.1mmのとき、切り出す試験片の幅は4mmとする)となるように、試験片を3検体切り出す。これらの試験片それぞれを、引張試験機(商品名「テンシロン」、型式「RTM−100」、株式会社オリエンテック製)における200mmの間隔に対向配置された一対のワークにセットする。このとき、試験片はその両端部それぞれから50mmの位置までが各ワークに挟持される。一対のワークにセットされた試験片の長手方向(無端ベルト1の周方向、換言すると、一対のワークが離間する方向)に、引張速度50mm/minで引張距離が5mm(すなわち、ワーク間距離205mm、試験片の長手方向全長200mmに対して引張距離が2.5%)となった時点で、ワークの移動を停止して、この状態を30秒間保持し、その後、一対のワークを初期状態(ワーク間距離200mm)に復帰させる。このように、一対のワークを、初期状態から周方向に2.5%伸ばした状態まで移動し、この伸ばした状態で30秒経過後に、初期状態に復帰させるまでの、試験片にかかる引張荷重及び試験片の伸びを継続して測定する。測定された引張荷重のうち、最大引張荷重と、前記2.5%伸ばした状態を30秒間保持した後(すなわち、ワークを初期状態に復帰させるために移動させる直前)の引張荷重とを読み取り、これらの値から、式 {1−(30秒間保持した後の引張荷重/最大引張荷重)}×100 によって、試験片の引張応力緩和率(%)を算出する。各試験片の引張応力緩和率を算術平均して、無端ベルト1の引張応力緩和率とする。
【0018】
無端ベルト1の応力緩和率は、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物又は高ヤング率材料に含まれる樹脂の種類、この樹脂の含有量、及び/又は、無端ベルト1の溶媒残留量等を変更することにより、調整することができる。
【0019】
無端ベルト1は、周方向に2.5%伸ばしたときの永久歪が0.3%以下であるのが好ましく、0.25%以下であるのがより好ましく、0.15%以下であるのが特に好ましい。永久歪が前記範囲内にあると、無端ベルト1の所定の寸法及び形状を維持することができ、その結果、良好な画質を安定して得ることができる。一方、永久歪の下限は、特に制限されないが、0.01%であるのが好ましく、0.05%であるのがより好ましく、0.1%であるのが特に好ましい。永久歪の下限が前記範囲未満であると、無端ベルト1が画像形成装置に装着され、高速で無限軌道上を走行すると、無端ベルト1を張架する従動ローラに対して、追従しにくくなる。ここで、無端ベルト1の永久歪とは、無端ベルト1に引張荷重を加え、この引張荷重を取り去った後に無端ベルト1に残る、無端ベルト1の初期長さに対する変形量(無端ベルト1に引張荷重を加える前の無端ベルト1の長さに対する、無端ベルト1に引張荷重を加え、その引張方向に無端ベルト1が伸びた長さの割合)をいう。
【0020】
無端ベルト1の永久歪は、前記応力緩和率の測定と同様にして、初期状態から周方向に2.5%伸ばし、この伸ばした状態で30秒経過後に、再度初期状態に復帰させたときに、測定される試験片の伸び量(試験片を伸ばした後初期状態に復帰させたときの長さ−切り出した試験片の長さ)を読み取り、この伸び量から、式 (伸び量/200)×100 によって、試験片の永久歪(%)を算出する。各試験片の永久歪を算術平均して、無端ベルト1の永久歪(%)とする。
【0021】
無端ベルト1の永久歪は、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物又は高ヤング率材料に含まれる樹脂の種類、この樹脂の含有量、及び/又は、無端ベルト1の溶媒残留量等を変更することにより、調整することができる。
【0022】
無端ベルト1は、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物、又は、高ヤング率材料を硬化して成る。無端ベルト1を形成する前記高ヤング率材料は、前記試験方法における前記凹み量を満足することができる樹脂組成物であればよく、例えば、前記樹脂組成物として、p−フェニレン骨格、ビフェニル骨格及びナフタレン骨格から選択される少なくとも1種の骨格を分子内に有する樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。このような骨格を有する樹脂として、例えば、前記骨格を分子内に有する、ポリイミド系樹脂(具体的には、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエステルイミド樹脂(EI)等)、及び、ポリエステル系樹脂(具体的には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)等の樹脂を含有する樹脂組成物を挙げることができる。前記骨格の中でも、分子内にビフェニル骨格を有するのが、樹脂組成物に含有される他の成分との相溶性等に優れる点で、好ましい。
【0023】
前記骨格を分子内に有する樹脂は、この樹脂を構成する全モノマーのモル数を100モル%としたときに、この樹脂を形成するモノマーであって前記骨格を有するモノマーの存在量が5〜95モル%であるのが、樹脂のヤング率が高くなる点で、好ましく、10〜90モル%であるのが特に好ましい。
【0024】
これらの前記骨格を分子内に有する樹脂を形成するモノマーとしては特に限定されず、具体的には、樹脂にp−フェニレン骨格を導入するためのモノマーとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、及び、これらのアミンに対応するイソシアネート等が挙げられ、樹脂にビフェニル骨格を導入するためのモノマーとしては、例えば、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、o−トリジン、ベンジジン、及び、これらのアミンに対応するイソシアネート等、並びに、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸及びこの無水物、等が挙げられ、樹脂にナフタレン骨格を導入するためのモノマーとしては、例えば、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジアミン、及び、これらに対応するイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
一方、前記樹脂を形成するモノマーのうち前記骨格を有しないモノマーとして、例えば、例えば、ピロメリット酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸及びこれらの無水物、グリコール等のジトリメートエステルとして、エチレングリコールジトリメリテート、プロピレングリコールジトリメリテート、ブチレングリコールジトリメリテート、ジエチレングリコールトリメリテート等が挙げられる。これらの中では、ピロメリット酸、トリメリット酸及びこれらの無水物が価格、反応性、耐熱性から好ましい。
【0026】
また、前記樹脂を形成するモノマーのうち前記骨格を有しないモノマーとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、イソホロンジアミン、及び、これらのジイソシアネートから選ばれた1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0027】
さらに、前記樹脂を形成するモノマーのうち前記骨格を有しないモノマーとして、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられ、カルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、グリコール等のポリアルコールが挙げられる。
【0028】
また、前記ポリイミド系樹脂の活性末端を変性させることもでき、活性末端変性剤としては、アミン又はイソシアナート等が挙げられる。アミン又はイソシアナートとしては、o−トリジン、ベンジジン及びこれらのジイソシアネートが耐熱性、強度、弾性率の点から好ましい。この他に、前記ポリイミド系樹脂の活性末端を封止することもでき、末端封止剤としては、アミン等が挙げられる。末端封止剤としてのアミンは、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0029】
また、高ヤング率材料は、前記樹脂に加えて導電性付与剤を含有している。導電性付与剤としては、例えば、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等のカーボンブラック、酸化処理により、カルボキシ基、ヒドロキシ基等を付加した酸化処理カーボンブラック(より好ましくはpH6以下の酸化処理カーボンブラック)、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属粉末、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性高分子等が挙げられる。
【0030】
この高ヤング率材料は、前記樹脂及び前記導電性付与剤に加えて、所望により、ポリアミン、後述する充填材等を含有していてもよい。
【0031】
無端ベルト1を形成する前記チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物は、前記凹み量を満足することができる樹脂組成物であればよく、例えば、前記骨格を有しない熱可塑性樹脂及び前記骨格を有しない熱硬化性樹脂、並びに、チオフェン系導電性ポリマーを含有する樹脂組成物を挙げることができる。この樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、前記骨格を有しないポリアミドイミド樹脂(PAI)、前記骨格を有しないポリイミド樹脂(PI)、前記骨格を有しないポリアミド樹脂(PA)、前記骨格を有しないポリエチレンテレフタレート(PET)、前記骨格を有しないポリブチレンテレフタレート(PBT)、前記骨格を有しないポリエチレンナフタレート(PEN)、架橋型ポリエステル樹脂等の前記骨格を有しないポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミドイミド樹脂がより好ましく、特に、芳香族ポリアミドイミド樹脂が、強度、可撓性、寸法安定性及び耐熱性等の機械的特性がバランスよく優れている点で、好ましい。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を構成するモノマーは、高ヤング率材料において、前記骨格を有しないモノマーとして例示したモノマーを特に制限されず、挙げることができる。
【0032】
前記樹脂組成物は、チオフェン系ポリマーと電子受領体とからなるチオフェン系導電性ポリマーを含有する。チオフェン系ポリマーは、例えば、下記一般式(I)及び下記一般式(II)で示されるポリマーが挙げられる。
【0033】
【化1】

【0034】
一般式(I)において、n>1であり、Aは置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキレン基を示す。
【0035】
前記一般式(I)におけるAの例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1、2−ブチレン基、2、3−ブチレン基、1,2−イソブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、フェニル置換エチレン基、1,2−ジフェニル置換エチレン基等を挙げることができる。これらうち、Aとして、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基が好ましい。
【0036】
前記一般式(I)におけるnは、1以上、300以下が好ましく、前記骨格を有しない熱可塑性樹脂及び前記骨格を有しない熱硬化性樹脂への均一な分散性の点から、3〜100がより好ましい。
【0037】
【化2】

【0038】
一般式(II)において、n>1であり、R及びRは互いに独立に、水素、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を示す。
【0039】
前記一般式(II)におけるR及びRのアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。また、R及びRのアリール基として、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基等が挙げられる。R及びRのアシル基として、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、シクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。R及びRのアルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。また、R及びRのアリールオキシ基として、例えば、フェノキシ基等が挙げられる。R及びRとしては、これらの中でも、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、フェニル基、ビフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基が好ましい。
【0040】
前記一般式(II)におけるnは、前記一般式(I)におけるnと同様に、1以上、300以下が好ましく、前記骨格を有しない熱可塑性樹脂及び前記骨格を有しない熱硬化性樹脂への均一な分散性の点から、3〜100がより好ましい。
【0041】
チオフェン系ポリマーは、一般的に、溶媒に不溶な黒色の化合物であり、前記一般式(I)及び下記一般式(II)に示されるポリマーのうちでは、重合時の重合部位選択性、導電性、透明性、柔軟性等の観点から、一般式(I)で示されるポリマーが好ましい。特に好適なチオフェン系ポリマーとして、前記一般式(I)におけるAがエチレン基である2,3−エチレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
【0042】
前記チオフェン系ポリマーは、適宜製造してもよく、また、市販品を用いてもよい。例えば、2,3−エチレンジオキシチオフェンは、商品名「BAYTRON M」(バイエル社製)等として入手することができる。
【0043】
前記電子受領体は、前記チオフェン系ポリマーの電気伝導性を向上させるためにチオフェン系ポリマーにドーピングされるもので、チオフェン系ポリマーを酸化するものであれば特に制限されることなく用いることができる。例えば、電子受領体として、ハロゲン、ハロゲン化金属、シアノ化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機金属化合物の中から選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。前記ハロゲン、ハロゲン化金属、ルイス酸としては、例えば、I、Br、SbF、AsF等を挙げることができる。シアノ化合物としては、例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノベンゼン、テトラシアノエチレン等を挙げることができる。有機金属化合物としては、例えば、トリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ビス(ジチオベンジル)ニッケル、テトラ−n−ブチルアンモニウムビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラート)ニッケル(III)錯体等が挙げられる。プロトン酸としては、例えば、HF、HCl、HSO、HBO等の無機酸、スルホン酸基、アミノ酸基を有する有機化合物等が挙げられる。好適には、硼酸、p−トルエンスルホン酸及びその化合物、ポリスチレンスルホン酸(PSS)及びその化合物が挙げられる。特に、下記式(III)で表されるポリスチレンスルホン酸(PSS)とその化合物、及びそのポリマーは、酸化状態でチオフェン化合物と強固な錯体を構成するため、脱ドープによる電気特性の変化がないので、特に好ましい。
【0044】
【化3】

【0045】
前記式(III)におけるm、nはそれぞれ1〜3000の数であり、1〜1500であるのが好ましい。チオフェン系ポリマーに対する電子受容体の量は、特に制限されるものではないが、好適な導電性を得るためには、チオフェン系ポリマー100質量部に対して0.1〜300質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。
【0046】
チオフェン系ポリマーと電子受領体とからなるチオフェン系導電性ポリマーは、適宜製造してもよく、また、市販品を用いてもよい。例えば、前記一般式(I)においてAがエチレン基であるチオフェン系ポリマーと式(III)で示されるポリスチレンスルホン酸(PSS)及びその化合物とを組み合わせたドープ分散液は、例えば、商品名「BAYTRON P」(バイエル社製)として入手することができる。その構造を式(IV)に示す。
【0047】
【化4】

【0048】
前記樹脂組成物は、前記チオフェン系導電性ポリマー以外の充填材を実質的に含有しない。樹脂組成物が前記チオフェン系導電性ポリマーを含有し、充填材を実質的に含有していないと、無端ベルトの前記凹み量を前記範囲に容易に調整することができる。この発明において、充填材は、樹脂組成物に通常用いられる充填材及び各種の導電性付与剤である。無端ベルトを形成する樹脂組成物に通常用いられる充填材としては、例えば、シリカ、石英粉末、カーボンブラック、タルク、ゼオライト、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム等が挙げられ、また、各種の導電性付与剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属粉末、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性高分子等が挙げられる。
【0049】
前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂、並びに、前記チオフェン系導電性ポリマーの他に、セルロイド、シリコンゴム等を含有していてもよい。
【0050】
このチオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物は、無端ベルト1とされたときに、変形がしにくく、伸縮性を兼ね備えていることから、前記高ヤング率材料と同様に機能して、前記高ヤング率材料と同様の効果を奏する。
【0051】
無端ベルト1は、図1に示されるように、単層構造とされているが、二以上の層を積層した多層構造とされてもよい。無端ベルト1の厚さは、特に限定されないが、通常、例えば、0.03〜1mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましく、0.07〜0.14mm程度であるのが特に好ましい。無端ベルト1の厚さが0.03mm未満であると、無端ベルト1の機械的強度が低下することがあり、一方、1mmを超えると、無端ベルト1の可撓性が低下し、耐久性に劣ることがある。無端ベルト1の厚さは、接触式膜厚計又は非接触式膜厚計等により測定することができ、例えば、過電流式膜厚計(商品名「CTR−1500E」、サンコー電子株式会社製)を使用することができる。無端ベルト1の幅及び内周径は、無端ベルト1の用途等、すなわち、画像形成装置に配設される位置(構成部分)、張架される複数のローラ間隔等に応じて、所望の幅及び内周径となるように、任意に設定される。その一例を挙げると、例えば、無端ベルト1の幅は200〜350mmであり、内周径は200〜2,500mmである。
【0052】
無端ベルト1は、前記チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物、又は、前記高ヤング率材料(以下、単に、無端ベルト形成用樹脂組成物と称することがある。)を、公知の成形方法、例えば、遠心成形、押出成形、射出成形、RIM成形等によって、環状に成形される。これらの成形方法の中でも、材料を問わずに適用可能であり、かつ厚さ精度に優れる等の点で、遠心成形が好ましい。
【0053】
無端ベルト1を遠心成形によって成形する場合には、無端ベルト1を形成する無端ベルト形成用樹脂組成物は、その成形時の粘度を50,000mPa・s以下に調整するのが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルト1を製造するのが困難になることがある。無端ベルト形成用樹脂組成物の粘度の下限については、特に限定されるものではないが、10mPa・s以上であるのが好ましい。無端ベルト形成用樹脂組成物の粘度が上記範囲を外れる場合は、前記溶媒の添加量等を調節することにより、無端ベルト形成用樹脂組成物の粘度を前記範囲内に調整することができる。溶媒としては、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒が挙げられる。
【0054】
遠心成形によると、溶媒を含有することにより流動性を発現した無端ベルト形成用樹脂組成物を円筒形の金型に注入し、金型を回転させて遠心力で金型内周面に無端ベルト形成用樹脂組成物の層を均一に展開し、無端ベルト形成用樹脂組成物の層から溶媒を乾燥除去して、無端ベルト基体が製造される。金型は各種金属管を用いることができる。好適な金型としては、金型の内周面は鏡面研磨されており、鏡面となった内周面はフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤により離型処理され、形成した無端ベルト基体が内周面から容易に脱型できるようにされた金属管を挙げることができる。
【0055】
なお、無端ベルト形成用樹脂組成物に含まれる樹脂としてポリアミドイミド樹脂を選択する場合には、上述した遠心成形による他に、前記骨格を有するポリアミドイミド樹脂の原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とが一部重合したポリアミド酸の溶液、又は、この溶液と前記チオフェン系導電性ポリマーとの混合物を、金型の内周面や外周面に浸漬方式、遠心方式、塗布方式等によってコートし、又は前記ポリアミド酸の溶液を注形型に充填する等の適宜な方式で筒状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベルト形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する公知の方法(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)等により、無端ベルト1を製造することもできる。
【0056】
金型内周面に展開された無端ベルト形成用樹脂組成物の層から溶媒を除去して、無端ベルト基体が製造される。ここで、除去される溶媒は、金型内周面に展開された無端ベルト形成用樹脂組成物の層に含有された溶媒であり、例えば、無端ベルト形成用樹脂組成物の粘度を調整する際に使用される溶媒の他に、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する際に使用される溶媒等が挙げられる。金型内周面に展開された無端ベルト形成用樹脂組成物の層から溶媒を除去する処理として、加熱処理を挙げることができるが、溶媒を除去するには、以下の一次溶媒除去工程及び二次溶媒除去工程からなる溶媒除去処理を行うのが好ましい。
【0057】
前記一次溶媒除去工程は、金型を回転して金型内周面に展開された無端ベルト形成用樹脂組成物の層から溶媒を除去しつつ成形し、無端ベルト形成用樹脂組成物の層をフィルム状成形体とする。一次溶媒除去工程は、金型を回転したまま5〜60分間、40〜150℃の熱風を金型内に通過させることにより、溶媒が除去される。熱風温度が150℃を超えると、及び/又は、加熱時間が60分を超えると、成形されるフィルム状成形体が酸化されることがある。
【0058】
二次溶媒除去工程は、一次溶媒除去工程で成形されたフィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、金型ごと加熱して、フィルム状成形体から溶媒を除去し、無端ベルト基体とする。例えば、熱風乾燥器、オーブン等の加熱器を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃で1〜3時間加熱すればよく、また、過熱水蒸気炉を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜260℃の過熱水蒸気で、0.5〜3時間加熱すればよい。なお、フィルム成形体の変形等を防止することができれば、金型からフィルム成形体を脱型し、フィルム成形体を前記条件で加熱することもできる。
【0059】
このようにして溶媒が除去された無端ベルト基体を作製した後、無端ベルト基体を金型から取り出し、放冷する。なお、金型ごと無端ベルト基体を放冷すると、金型と無端ベルト基体との熱膨張率の差により、無端ベルト基体を脱型することができる。この無端ベルト基体は、溶媒残留量が0.05〜0.30質量%であるのが好ましい。無端ベルト基体が0.05〜0.30質量%の溶媒残留量を有していると、無端ベルト1としたときに、均一な導電特性を発揮すると共に、転写手段等からの印加電圧を受けても所定の電位を保つことができる。より一層均一な導電特性を発揮すると共に、転写手段等からの印加電圧を受けても所定の電位をより一層安定して保つことができる点で、無端ベルト基体の溶媒残留量は、0.05〜0.25質量%であるのがより好ましく、0.10〜0.20質量%であるのが特に好ましい。無端ベルト基体の溶媒残留量は、無端ベルト基体から切り出した試料を、エタノール等に所定時間浸漬して、無端ベルト基体内の残留溶媒を抽出し、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)により測定することができる。
【0060】
このようにして所望の溶媒残留量を有する無端ベルト基体を脱型して、円筒状の無端ベルト基体における両側端部を除去し、所定幅に裁断して、無端ベルト1が製造される。無端ベルト基体を切断する切断機は、無端ベルト基体の切断開始点と切断終了点とが略一致するように、切断することができる装置であればよい。
【0061】
次に、この発明に係る無端ベルト1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。この画像形成装置10は、中間転写方式のタンデム型カラー画像形成装置である。
【0062】
この画像形成装置10において、無端ベルト1は、図2に示されるように、中間転写ベルトとして、二本の支持ローラ42、テンションローラ43及びバックアップローラ44に張架されている。そして、図2に示されるように、画像形成装置10は、バックアップローラ44の設置位置近傍に、バックアップローラ44と、バックアップローラ44に中間転写ベルト1を介して当接又は圧接するバイアスローラ45と、バックアップローラ44に当接又は圧接する電極ローラ46とを備えて成る二次転写部40が構成されている。
【0063】
図2に示されるように、画像形成装置10は、四種の現像ユニットB、C、M及びYに装備された像担持体11B、11C、11M及び11Yを中間転写ベルト1上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが中間転写ベルト1上に直列に配置されている。
【0064】
図2に示されるように、現像ユニットBは、静電潜像が形成される回転可能な像担持体11Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bを帯電させる帯電手段12Bと、像担持体11Bの上方に設けられ、像担持体11Bに静電潜像を形成する露光手段13Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに一定の層厚で現像剤22Bを供給し、静電潜像を現像する現像手段20Bと、像担持体11Bの下方に中間転写ベルト1を介して当接又は圧接するように設けられ、現像剤22Bで現像された静電潜像を像担持体11Bから中間転写ベルト1に一次転写させる転写手段14Bと、中間転写ベルト1に転写されず像担持体11Bに残留した現像剤22B等を除去するクリーニング手段15Bとを備えている。像担持体11B、帯電手段12B、露光手段13B、転写手段14B及びクリーニング手段15Bは、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0065】
また、図2に示されるように、前記現像手段20Bは、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに現像剤22Bを一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体23Bと、現像剤担持体23Bに供する現像剤を収納する筐体21Bとを備えている。現像剤担持体23Bは従来公知のものを適宜選択して使用することができ、また、現像剤22Bは、摩擦により帯電可能な現像剤であれば特に制限なく使用することができ、例えば、現像ユニットBには黒色現像剤が収納されている。現像手段20Bは、現像剤担持体23Bに当接又は圧接して現像剤22Bの層厚を規制すると共に摩擦帯電により現像剤22Bを帯電させる現像剤規制部材を備えていてもよい。
【0066】
図2に示されるように、現像ユニットC、M及びYは、現像ユニットBと同様に構成されている。現像ユニットC、M及びYはそれぞれ、筐体21C、21M及び21Y内に、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yを収納している。
【0067】
図2に示されるように、画像形成装置10における記録体16の搬送方向下流には、記録体16に二次転写された各種現像剤(静電潜像)を定着させる定着手段30が配置されている。この定着装置30としては、定着ベルトとしての無端ベルト35を備えた定着装置が採用されている。図2にその断面が示されるように、定着装置30は、記録体16を通過させる開口を有する筐体34内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された定着ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び定着ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた定着ベルト35と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、定着ベルト35を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。定着ベルト支持ローラ33は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。定着ローラ31、定着ベルト支持ローラ33及び加圧ローラ32はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ32はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト35を介して定着ローラ31に圧接している。定着手段30としては、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等が採用されてもよい。
【0068】
画像形成装置10には、記録体16を積層収容するカセット(図示しない。)が設置され、カセット内の記録体は給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出されて、二次転写部40に搬送される。
【0069】
画像形成装置10は、次にようにして画像を形成する。まず、現像ユニットBの像担持体11Bが時計回りに回転し、帯電手段12Bにより一様に帯電され、露光手段13Bにより画像が露光されて、像担持体11Bの表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段20Bにおける現像剤担持体23Bから黒色現像剤22Bが像担持体11Bに供給され、像担持体11Bに形成された静電潜像が黒色現像剤22Bで現像されて、現像剤像として可視化される。次いで、像担持体11Bと転写手段14Bとの間を反時計回り(矢印方向)に像担持体11Bと同速度で回転する中間転写ベルト1上に、転写手段14B等によって可視化された現像剤像が転写される(一次転写)。このようにして、現像剤像が中間転写ベルト1上に黒像に顕像化される。
【0070】
次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、中間転写ベルト1に顕像化された黒像に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、中間転写ベルト1上にカラー像が顕像化される。なお、このとき、バイアスローラ45はバックアップローラ44に当接及び圧接していない。
【0071】
中間転写ベルト1上に転写されたカラー像は、中間転写ベルト1の回転によって二次転写部40に到り、一方、記録体16は、中間転写ベルト1とバイアスローラ45との間に所定のタイミングで搬送される。このとき、バイアスローラ45はバックアップローラ44に当接及び圧接するように配置されている。そして、中間転写ベルト1上に顕像化されたカラー像は、バイアスローラ45及びバックアップローラ44による圧接搬送及びバイアス印加等によって、二次転写部に搬送された記録体16上に転写される。このようにして、記録体16にカラー像が二次転写される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、搬送手段により定着手段30に搬送され、定着ローラ31と加圧ローラ32との無端ベルト1を介した当接部又は圧接部を通過するときに加熱及び/又は加圧されて、二次転写されたカラー像が永久画像として定着される。このようにして、記録体16にカラー画像が形成される。
【0072】
なお、画像形成装置10を用いてカラー画像を形成する場合について説明したが、モノクロ画像を形成する場合には、中間転写ベルト1に一次転写された現像剤像を直ちに記録体16に二次転写して定着手段30に搬送すればよい。
【0073】
この発明に係る無端ベルト1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の別の一例を、図3を参照して、説明する。この画像形成装置50は、中間転写方式のマルチパス型カラー画像形成装置である。
【0074】
この画像形成装置50において、無端ベルト1は、図3に示されるように、中間転写ベルトとして、二本の支持ローラ42、テンションローラ43及びバックアップローラ44に張架されている。そして、図3に示されるように、画像形成装置50は、バックアップローラ44の設置位置近傍に、バックアップローラ44と、バックアップローラ44に中間転写ベルト1を介して当接又は圧接するバイアスローラ45と、バックアップローラ44に当接又は圧接する電極ローラ46とを備えて成る二次転写部40が構成されている。
【0075】
図3に示されるように、画像形成装置50は、四種の現像ユニットB、C、M及びYを内蔵した現像手段20を備えている。現像手段20に内蔵された現像ユニットB、C、M及びYは帯電手段、露光手段等を内蔵し、それぞれ、黒色現像剤、シアン現像剤、マゼンタ現像剤及び黄色現像剤を収納している。図3に示されるように、現像手段20は、例えば、反時計回りに回転し、後述する像担持体11に現像剤によって静電潜像を顕在化する。現像手段20及び現像ユニットは従来公知のものを適宜選択して使用することができる。なお、現像手段20は現像剤と現像剤担持体とを備え、現像手段20の外部であって像担持体11の近傍に帯電手段、露光手段等が配置されていてもよい。
【0076】
図3に示されるように、画像形成装置50における記録体16の搬送方向下流には、記録体16に二次転写された各種現像剤(静電潜像)を定着させる定着手段30が配置されている。定着装置30は、画像形成装置10の定着装置30と同様に構成されている。
【0077】
画像形成装置50には、記録体16を積層収容するカセット(図示しない。)が設置され、カセット内の記録体は給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出されて、二次転写部40に搬送される。
【0078】
画像形成装置50は、次にようにして画像を形成する。まず、現像手段20が反時計回りに回転して、現像手段20に収納された現像ユニットBが像担持体11側に配置される。次いで、現像ユニットBによって像担持体11の表面に静電潜像が形成され、この静電潜像が現像されて、像担持体11の表面に現像剤像が可視化される。次いで、像担持体11が時計回りに回転して、像担持体11と転写手段14との間を反時計回り(矢印方向)に像担持体11と同速度で回転する中間転写ベルト1上に、可視化された現像剤像が転写される(一次転写)。このようにして、現像剤像が中間転写ベルト1上に黒像に顕像化される。次いで、現像手段20が回転し、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、中間転写ベルト1に顕像化された黒像に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、中間転写ベルト1上にカラー像が顕像化される。なお、このとき、バイアスローラ45はバックアップローラ44に当接及び圧接していない。
【0079】
中間転写ベルト1上に転写されたカラー像は、中間転写ベルト1の回転によって二次転写部40に到り、一方、記録体16は、中間転写ベルト1とバイアスローラ45との間に所定のタイミングで搬送される。このとき、バイアスローラ45はバックアップローラ44に当接及び圧接するように配置されている。そして、中間転写ベルト1上に顕像化されたカラー像は、バイアスローラ45及びバックアップローラ44による圧接搬送及びバイアス印加等によって、二次転写部40に搬送された記録体16上に転写される。このようにして、記録体16にカラー像が二次転写される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、搬送手段により定着手段30に搬送され、記録体16に転写されたカラー像が永久画像として定着される。このようにして、記録体16にカラー画像が形成される。
【0080】
なお、画像形成装置50を用いてカラー画像を形成する場合について説明したが、モノクロ画像を形成する場合には、中間転写ベルト1に一次転写された現像剤像を直ちに記録体16に二次転写して定着手段30に搬送すればよい。
【0081】
これらの画像形成装置10及び50によれば、中間転写ベルト1として無端ベルト1を使用しているから、中間転写ベルト1がローラに所定の張力で長期間にわたって張架されても、感光ドラム等の像担持体11から現像剤を所望のように転写されて担持し、かつ、現像剤を記録体16に所望のように転写することができ、その結果、現像剤の不転写による点状及び/又は筋状の白抜け部が発生することを防止することができる。したがって、これらの画像形成装置10及び50によれば、高品質の画像を形成することができる。
【0082】
画像形成装置10及び50は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置10及び50は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。画像形成装置10及び50は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
反応容器中に、N−メチル−2−ピロリドンと、ピロメリット酸0.1mol、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物0.2mol、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.3mol、トリメリット酸無水物0.5mol、o−トリジンジイソシアネート1molを加え、撹拌しながら30分間かけて室温から150℃に昇温後、同温度を5時間保持して、反応物濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド樹脂)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た(芳香族ポリアミドイミドにおける前記骨格を有するモノマーの存在量は12%)。この溶液に、N−メチル−2−ピロリドンをさらに加え、反応物濃度15質量%のポリアミドイミド溶液を調製した。得られたポリアミドイミド溶液に、酸化処理カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、Degussa社製、pH4.0、揮発分10.0%)をポリアミドイミド樹脂と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して17質量%の割合で加え、ポットミルで24時間混合分散して、高ヤング率材料である樹脂組成物を調製した。成形に使用する金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmの大きさを有し、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。次いで、金型両端の開口部に、リング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して、金型を閉塞し、樹脂組成物を1,000rpmの速度で回転する金型内周に190g注入した。次いで、金型を同速度で30分間回転させて金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、フィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、250℃に調節された過熱水蒸気炉で2時間過熱水蒸気処理した後、室温で放冷して、無端ベルト1とした。金型ごと無端ベルト1を冷却すると、金型と無端ベルト1との熱膨張率の差により、無端ベルト1を剥離する。この無端ベルト1の両端部をそれぞれ切断し、周長約226mm、幅240mm、厚さ100μmの大きさに切り出し、無端ベルト1Aを作製した。
【0084】
(実施例2)
1000mLのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mLのイオン交換水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mL添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液のイオン交換水を約1000mL除去し、残液に2000mLのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いてイオン交換水を約2000mL除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られた濾液に約2000mLのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてイオン交換水を約2000mL除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液(濾液)中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0085】
このようにして得られた36.7gのポリスチレンスルホン酸と、14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを2000mLのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。得られた混合溶液を20℃に保ち、攪拌しながら、200mLのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、さらに3時間攪拌した。得られた反応液に2000mLのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてイオン交換水を約2000mL除去した。この操作を3回繰り返した。そして、得られた溶液(濾液)に、200mLの10質量%に希釈した硫酸と2000mLのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いてイオン交換水を約2000mL除去し、次いで、残部に2000mLのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いてイオン交換水を約2000mL除去した。この操作を3回繰り返した。このようにして得られた残部に、2000mLのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いてイオン交換水を約2000mL除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)の水溶液を得た。このようにして得られた1.5質量%溶液に、N−メチル−2−ピロリドンを加え、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の濃度が約0.4質量%の溶液を得た。
【0086】
前記ピロメリット酸0.1mol、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物0.2mol、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.3mol、トリメリット酸無水物0.5mol、o−トリジンジイソシアネート1molの代わりに、トリメリット酸無水物、これと当量のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、及び、反応原料(トリメリット酸無水及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート)の合計モル数に対して2mol%のフッ化カリウム(触媒)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド溶液を調製した。得られたポリアミドイミド溶液に、酸化処理カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、Degussa社製、pH4.0、揮発分10.0%)の代わりに前記PSS−PEDOT約0.4質量%の溶液をポリアミドイミド樹脂とPSS−PEDOT約0.4質量%溶液との合計100質量%に対して0.9質量%の割合で加えた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト1を製造した。この無端ベルト1の両端部をそれぞれ切断し、周長約226mm、幅240mm、厚さ100μmの大きさに切り出し、無端ベルト1Bを作製した
【0087】
(比較例1)
【0088】
ピロメリット酸0.1mol、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物0.2mol、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.3mol、トリメリット酸無水物0.5mol、o−トリジンジイソシアネート1molの代わりに、トリメリット酸無水物、これと当量のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、及び、反応原料(トリメリット酸無水及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート)の合計モル数に対して2mol%のフッ化カリウム(触媒)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド溶液を調製した。得られたポリアミドイミド溶液に、酸化処理カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、Degussa社製、pH4.0、揮発分10.0%)の代わりに塩基性カーボンブラック(商品名「トーカブラック#7550F」(pH7.5、揮発分1.5%、東海カーボン株式会社製))をポリアミドイミド樹脂と塩基性カーボンブラックとの合計100質量%に対して14質量%の割合で加えた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト1を得た。この無端ベルト1の両端部をそれぞれ切断し、周長約226mm、幅240mm、厚さ100μmの大きさに切り出し、無端ベルト1Cを作製した。
【0089】
このようにして製造した無端ベルト1A〜1Cの凹み量、ヤング率、応力緩和率及び永久歪を前記方法により測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
次いで、得られた無端ベルト1A〜1Cを下記の条件で空転試験を行い、試験後の各無端ベルトの表面状態を観察した。その結果、無端ベルト1A及び1Bは凹凸部を確認できず、その表面はなめらかであったが、無端ベルト1Cは表面に凹凸部が確認でき、その表面状態がよくなかった。
【0092】
<空転試験条件>
無端ベルト張架用ローラ2本の間隔:225mm
無端ベルトの走行速度:180mm/S
無端ベルトの張架張力:0.02MPa
走行時間:30日
【0093】
また、無端ベルト1A〜1Cを図2に示す画像形成装置(商品名「MicroLine 9055c」、株式会社沖データ製)における中間転写ベルトとして、0.02MPaの張力でローラに張架し、30日経過後に、ベタ印字画像を印刷したところ、無端ベルト1A及び1Bを張架した画像形成装置においては、形成された画像に点状及び/又は筋状の白抜け部は発生していなかったのに対して、無端ベルト1Cを張架した画像形成装置においては、形成された画像に点状及び/又は筋状の白抜け部が発生していた。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、この発明の一実施例である無端ベルトを示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明の一例であるタンデム型カラー画像形成装置の概略図である。
【図3】図3は、この発明の一例であるマルチパス型カラー画像形成装置の概略図である。
【符号の説明】
【0095】
1 無端ベルト(中間転写ベルト)
35 無端ベルト(定着ベルト)
10、50 画像形成装置
11、11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14、14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y クリーニング手段
16 記録体
20、20B、20C、20M、20Y 現像手段
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体
30 定着装置
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 定着ベルト支持ローラ
40 二次転写部
42 支持ローラ
43 テンションローラ
44 バックアップローラ
45 バイアスローラ
B、C、M、Y 現像ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径0.7mmの球体に2300gの圧縮荷重をかけて行う凹み荷重試験によって生じる凹み量が10μm以下であることを特徴とする無端ベルト。
【請求項2】
前記無端ベルトは、チオフェン系導電性ポリマー含有樹脂組成物を硬化して成ることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項3】
前記無端ベルトは、高ヤング率材料を硬化して成ることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項4】
前記無端ベルトは、ヤング率が3,000MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無端ベルト。
【請求項5】
前記無端ベルトは、周方向に2.5%伸ばしたときの応力緩和率が13.5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無端ベルト。
【請求項6】
前記無端ベルトは、周方向に2.5%伸ばしたときの永久歪が0.3%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無端ベルト。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の無端ベルトを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−86190(P2009−86190A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254478(P2007−254478)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】