説明

無線ノードおよび無線ネットワークシステム

【課題】 複数の無線ノードを同期させるためには毎回同期信号を受信しなければならず、また電力制御方式が全ての無線ノードで共通なため、効率的な省電力が行えなかった。また、同期信号に用いる無線チャンネルとデータ通信に用いる無線チャンネルが同じであるため、エリアが重複すると正確な同期信号を送信できなかったという課題を解決する。
【解決手段】 無線ノードに正確な時計を具備した時刻管理部を内蔵し、起動時に受信した同期信号でこの時刻管理部を初期設定して、内蔵時計を用いて省電力モードに移行するタイミングと通常モードに復帰するタイミングを決定する。また、同期信号に用いる無線チャンネルとデータ送受信に用いる無線チャンネルを異ならせる。毎回同期信号を受信する必要がないので、省電力期間を長くでき、また無線ノードに応じた省電力制御ができる。さらに、電波到達エリアが重なっても、正確な同期信号を送信できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力の機能を無線ノード側でコントロールすることにより、無線ノードの省電力化を図ることができる無線ノードおよびこの無線ノードを用いた無線ネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池で駆動される無線ノード(無線端末)を用いた無線ネットワークシステムでは、電池の長寿命化を図るために、無線ノードの消費電力を少なくしなければならない。IEEEE802.15.4には、無線ノードの消費電力を削減することができる同期手法が規定されている。この同期手法を図8および図9を用いて説明する。
【0003】
図8はメッシュ型ネットワークに用いられるPAN(Personal Area Network)の構成を表した図である。図8において、10はホストであり、1つのPANに対して電波が到達可能な範囲内に1つだけ設置される。ホスト10には同期信号送信部11が配置されている。20a〜20nは無線ノード(無線端末)であり、それぞれホスト10と通信する。ホスト10は同期信号送信部11を用いて同期信号(点線)を定期的に無線ノード20a〜20nに送信し、データの送受信(実線)を行う。なお、ホスト10を介さず、無線ノード20a〜20n間でデータの送受信を行う場合もある。
【0004】
無線ノード20a〜20nは、電波を送受信するとき、あるいは内部のCPUその他が動作するときに消費電力が大きくなる。従って、送受信する期間を短くすることにより、消費電力を削減することができる。このため、各無線ノードは同期信号に同期した後、無線ノードを動作させる通常モードを一定期間維持し、その後次の同期信号受信の直前まで、必要最小限の機能を除く全ての機能を停止させる省電力モードに移行する。
【0005】
図9は無線ノードの状態を表した図である。図9において、21は同期信号送信部11が送信する同期信号であり、Tpの時間間隔で送信される。無線ノード20a〜20nはこの同期信号を受信すると、Ta時間の間通常モードになる。無線ノード20a〜20nはホスト10、或いは、無線ノード20a〜20nとデータの送受信を行う。このTa時間が経過すると、Ts(=Tp−Ta)時間省電力モードに移行し、次の同期信号の直前で通常モードに復帰する動作を繰り返す。無線ノード20a〜20nは、Ts/(Ta+Ts)の割合で省電力モードになるので、消費電力を削減することができる。
【0006】
なお、同期信号の周期などの同期に関する情報は同期信号に含まれているので、無線ノード20a〜20nは次に同期信号が送信される時間を予測することができる。また、同期信号の送信に用いる無線チャンネルは、データの送受信で用いる無線チャンネルと同じチャンネルを使用する。
【0007】
特許文献1には、このような無線ネットワークを前提として、次のような改良を施すことにより、ホストと無線ノード間のデータ送受信を確実に行うことができる間欠受信制御方法の発明が記載されている。
(1)無線ノードからホストにデータを送信するときは、優先度の高いデータから順番に送信する。
(2)ホストから大量のデータを送信するときは、その旨を無線ノードに通知する。無線ノードは全てのデータを受信し終わるまで、省電力モードに移行しない。
(3)予め通知されたデータを受信できなかったときは、決められた時間だけ通常モードを維持する。
(4)無線ノードとやりとりするデータ量に応じて、同期信号の周期を変更できるようにする。
【0008】
特許文献2には、無線ノードを呼び出す必要がある場合のみ、ホストから呼び出し信号を送信し、無線ノードは呼び出し信号がないと判断すると、直ちに受信を中断して省電力モードに移行する発明が記載されている。省電力モードの時間を長くすることができるので、無線ノードの消費電力を更に削減することができる。
【0009】
特許文献3には、送信端末と複数の受信端末を有するネットワークにおいて、(送信端末の送信間隔より短い時間×受信端末数)の間隔で受信端末を動作させる発明が記載されている。どれかの受信端末で受信することができ、かつ受信端末の非動作時間を長くすることができる。
【特許文献1】特開平09−162798号公報
【特許文献2】特開平11−136181号公報
【特許文献3】特開2003―304185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような無線ネットワークおよび無線ノードは、同期信号に同期して通常モードと省電力モードを交互に切り換える方式であるため、データの送受信の有無に関わらず、同期信号が送信される度に通常モードに切り換えなければならない。同期信号の周期は最大4分間隔程度と短いので、長時間省電力モードを維持することができず、大幅な省電力化を行うことが出来ないという課題があった。
【0011】
電池で動作する無線ノードは、同一PAN内で動作するノードであっても、送信するデータの種類やアプリケーションの特性、電池の残量によって最適な省電力手法が異なる。例えば、無線ノードの構成、電池残量等によって最適な送信タイミングを変化させ、また受信そのものを行わない方が得策な場合がある。しかしながら、同期信号が送信される度に通常モードに復帰しなければならないので、無線ノードの構成に応じた細かな電力制御の仕組みを導入することが難しかった。
【0012】
特許文献1に記載された発明は、大量のデータを分割することなく送受信できる発明であり、必ずしも省電力化を目的とした発明ではない。また、特許文献2に記載された発明は、同期信号を受信する時間を短くすることはできるが、毎回同期信号を受信しなければならず、省電力化には限界がある。更に、特許文献3に記載された発明は、N台の受信端末を1つの組にして動作させるネットワークに適用できる発明であり、一般的なネットワークに適用することは困難である。
【0013】
また、従来は同期信号を送信する無線チャンネルと、データを送受信する無線チャンネルは、同じチャンネルを使用していた。そのため、データを送受信する無線帯域を同期信号が圧迫し、データ送受信の効率が低下してしまうという課題があった。この課題は、同期信号の間隔が短いほど顕著になる。
【0014】
同期信号を送信する無線チャンネルとデータを送受信する無線チャンネルに同じチャンネルを使用すると、電波の干渉を避けるために、同期信号を送信するホストは電波の到達可能範囲に1つしか配置することが出来ない。電波の到達範囲内に複数の同期信号送信源があると、一方の同期信号の送信が他方の同期信号の送信に影響され、正確なタイミングで同期信号を送信することができなくなるためである。
【0015】
電波の到達範囲内に同期信号送信源を1つしか置くことが出来ないという制約は、スター型のネットワークでは問題にならない。しかし、ツリー型やメッシュ型等のデータ中継の仕組みを持ったネットワークでは、電波到達範囲内に複数の同期信号送信源が置かれる場合があるが、このような場合では無線ノードが同期信号を受信することができず、ネットワーク全体の同期を取ることが出来ないという課題もあった。
【0016】
従って本発明の目的は、無線ノード側で正確な時間管理を行うことにより、同期信号の受信回数を削減して省電力化を図ることができる無線ノードおよび無線ネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
電池を内蔵し、無線を用いて他の機器とデータの授受を行う無線ノードにおいて、
無線を用いて他の機器にデータを送信し、また他の機器が送信したデータを受信する無線送受信部と、
時計を内蔵し、前記無線送受信部が受信した同期信号により前記時計を起動および/または補正すると共に、前記時計に基づいて省電力モード移行通知および通常モード復帰通知を出力する時刻管理部と、
前記省電力モード移行通知および通常モード復帰通知が入力され、省電力モード移行通知が入力されたときに省電力モードに移行させ、通常モード復帰通知が入力されたときに通常モードに復帰させる制御部と、
を具備したものである。毎回同期信号を受信する必要がないので、省電力期間を長くすることができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記制御部は、省電力モード移行通知が入力されたときに前記無線送受信部の動作を停止させ、通常モード復帰通知が入力されたときに前記無線送受信部の動作を開始させるようにしたものである。簡単かつ効果的に省電力ができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1若しくは請求項2記載の発明において、
前記同期信号には所定の周期を有し、一定の変化分で値が変化するシーケンス番号が含まれ、前記時刻管理部はこのシーケンス番号が第1の値になる時刻に省電力モード移行通知を出力し、前記第1の値とは異なる第2の値になる時刻に通常モード復帰通知を出力するようにしたものである。複数の無線ノードの省電力タイミングを同期させることができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、
同期信号を出力する同期信号送信装置と、
請求項1乃至請求項3いずれかに記載の、複数の無線ノードと、
を具備したものである。省電力が可能で、かつ省電力タイミングを同期させることができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、
前記同期信号送信装置が同期信号を出力するために用いる無線チャンネルと、前記無線ノードがデータを送受信するために用いる無線チャンネルを異ならせるようにしたものである。同期信号の送受信がデータ送受信を妨げることがない。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項4若しくは請求項5に記載の発明において、
前記複数の無線ノードを複数の組に分割し、これらの組毎に省電力モードに移行させるタイミング、および通常モードに復帰するタイミングを異ならせるようにしたものである。いつも少なくとも1つの無線ノードの組が送受信可能であるようにできる。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項4乃至請求項6いずれかに記載の発明において、
少なくとも2台の同期信号送信装置を具備し、これらの同期信号送信装置が同期信号送信に用いる無線チャンネルを異ならせるようにしたものである。隣接するエリアの同期信号が干渉することがない。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,2、3、4、5、6および7の発明によれば、無線ノードに時計を内蔵した時刻管理部を配置し、この時計を同期信号で起動/補正すると共に、この時計に基づいて省電力モード移行通知および通常モード復帰通知を出力して、これらの通知により省電力モードへの移行、および通常モードへの復帰を行うようにした。また、この無線ノードおよび同期信号送信装置で無線ネットワークシステムを構成するようにした。
【0025】
毎回同期信号を受信しなくても、複数の無線ノード間で省電力モードへの移行および通常モードへの復帰を同期させることができるので、省電力期間を長く取ることができ、消費電力を削減することができるという効果がある。
【0026】
また、中継ノード等他から電力が供給されている無線ノードは省電力動作を行わないなど、無線ノードの特性に応じた省電力動作を行わせることができるという効果もある。さらに、同期信号と共に送られる省電力モードへの移行、通常モードへの復帰のタイミングデータを変更するだけで、同じネットワークに属している全ての無線ノードの動作タイミングを一斉に変えることができるという効果もある。
【0027】
また、同期信号送信に用いる無線チャンネルとデータ送受信に用いる無線チャンネルを異ならせることにより、同期信号がデータ送受信を圧迫しない無線ネットワークシステムを実現できるという効果もある。さらに、隣接するエリアの同期信号送信に用いる無線チャンネルを異ならせることにより、同期信号間の干渉をなくすることができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る無線ノードの構成図である。図1において、30は無線ノードであり、制御部31、無線送受信部32、時刻管理部33、センサ部34、および電源35で構成されている。この無線ノード30は、センサ部34によって物理量を測定し、この測定値を外部に送信する機能を有した無線ノードである。
【0029】
制御部31はマイクロプロセッサおよびメモリを内蔵し、このメモリに格納されたプログラムに基づいて無線送受信部32、センサ部34を制御し、時刻管理部33を設定する等無線ノード30全体の制御を司る。時刻管理部33は、通常モードあるいは省電力モードになるタイミングを決定する。
【0030】
無線送受信部32は同期信号送信装置から送信された同期信号を受信し、また他の無線ノードとデータの交換を行う。無線送受信部32が受信した同期信号および他の無線ノードからのデータは制御部31に出力され、また制御部31から送信するデータが入力される。
【0031】
センサ部34は圧力、流量などの物理量を測定して電気信号に変換し、制御部31に出力する。制御部31はこの物理量を、無線送受信部32を介して他の無線ノードに送信する。電源35は電池を内蔵し、制御部31、無線送受信部32、時刻管理部33、センサ部34に電源を供給する。図1では各要素への電源供給線の記載を省略している。
【0032】
なお、この実施例では、無線ノードとして物理量を測定してその測定値を送信する無線ノードとしたが、この実施例に限られることはなく、他の無線ノードであってもよい。
【0033】
図2に無線ネットワークシステムの構成を示す。なお、図2は1つのPANの構成のみを示しているが、実際のネットワークはこのPANが複数個メッシュ状に配置されたメッシュ型やツリー型のネットワークを構成している。また、同期信号、データは無線を用いて送受信される。
【0034】
なお、ツリー型ネットワークとは、1つの集線装置(ホスト)を中心として、ノードをツリー状に接続したネットワークである。また、メッシュ型ネットワークとは、ノードを網の目のように接続したネットワークであり、その基本単位にはツリー型ネットワーク、集電装置を中心にノードを星状に配置したスター型ネットワーク、1本のバスに複数のノードを接続したバス型ネットワーク等が用いられる。
【0035】
図2において、30a〜30nは無線ノードであり、図1の無線ノード30と同じ構成を具備している。40は同期信号送信装置であり、所定の周期で無線ノード30a〜30nに同期信号を送信する。この同期信号はブロードキャストアドレスを用いて送信される。そのため、無線ノード30a〜30nは同時に同期信号を受信することができる。
【0036】
無線ノード30a〜30nは相互にデータを送受信する。同期信号送信装置40は、無線ノード30a〜30nがデータ送受信に使用する無線チャンネルとは異なる無線チャンネルを用いて、同期信号を無線ノード30a〜30nに送信する。なお、この実施例では同期信号送信装置40を独立の装置としたが、無線ノード30a〜30nのいずれかが同期信号送信装置40の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0037】
図3に、無線ノード30の動作シーケンスを示す。なお、図1および図2と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。時間は上から下に流れるものとする。また、通常モードとは無線送受信部32がオンになっていることを言い、省電力モードとはオフになっていることを言う。無線ノード30は、通常モードのときのみ同期信号を受信することができる。
【0038】
図3において、無線ノード30が起動すると、制御部31は同期信号送信装置40から送られてくる同期信号を受信する無線チャンネルを設定する。無線通信では、周波数あるいはコードによって分割された複数の無線チャンネルを使用することができる。同じ無線チャンネルを使用すると、電波の到達範囲内では1台の無線ノードしか送信することができないが、無線チャンネルを異ならせると、同時に複数の無線ノードがデータを送信することができる。
【0039】
時刻T1で同期信号送信装置40から同期信号が送信されると、無線送受信部32は同期信号を受信した旨の通知を制御部31に出力する。制御部31はこの通知を時刻管理部33に出力する。時刻管理部33はこの通知を受信すると内部に配置されたタイマを設定して起動する。そして、制御部31は同期信号を受信する際に使用する同期チャンネルとデータを送受信する際に使用するデータチャンネルが同じにならないように、データチャンネルを設定する。
【0040】
無線送受信部32下部の縦線が2重になっている部分は同期チャンネルとデータチャンネルが同じである可能性があることを表しているが、データチャンネル設定により、同期チャンネルとデータチャンネルは異なる無線チャンネルを用いるように設定される。
【0041】
無線送受信部32がオンになっているので、制御部31は無線送受信部32を制御して他の無線ノードと通信を行い、データの送受信を行う。時刻管理部33は内部のタイマを使用して、自律的に無線送受信部32がオンしている(通常モードの)時間、オフになっている(省電力モードの)時間を監視する。
【0042】
時刻T2で、通常モードの継続時間が予め決められた時間に達すると、時刻管理部33は制御部31に省電力モードに移行することを通知する。制御部31はこの省電力モード移行通知を受けると、無線送受信部32をオフにして省電力モードに移行する。これによって、無線ノード30の消費電力は大幅に低減する。なお、無線送受信部32下部縦線の点線部は、無線送受信部32がオフになっていることを表している。
【0043】
時刻管理部33は省電力モードが継続している時間を計測し、この時間が時刻T3で予め定められた値になると、制御部31に通常モードに復帰する通常モード復帰通知を出力する。制御部31はこの通知を受けると、無線送受信部32をオンにして通常モードに復帰する。これにより、無線通信が可能になる。制御部31は無線送受信部32を制御して、他の無線ノードと通信し、データの送受信を行う。
【0044】
以下同様にして、時刻管理部33は一定時間間隔で省電力モード移行通知と通常モード復帰通知を制御部31に出力する。制御部31はこれらの通知が入力されると、無線送受信部32をオン、オフする。無線送受信部32がオフになると他の無線ノードと通信できないが、データの送受信頻度が高くないと、動作に支障をきたすことはない。
【0045】
時刻管理部33が管理する時刻の精度が高いと、毎回同期信号を受信しなくても省電力モードへの移行、通常モードへの復帰のタイミングを同期信号に同期させることができる。同期信号の周期と時刻管理部33の内部時計がほとんど一致していると、起動時に同期信号を受信するだけで、その後同期信号を受信しなくても、省電力モードへの移行、通常モードへの復帰のタイミングを同期信号に同期させることができる。
【0046】
同期信号の周期と時刻管理部33の内部時計にずれがあっても、ずれに応じた頻度で同期信号を受信して内部時計を補正すればよい。最近は高安定な水晶発振器が安価で入手できるので、同期信号の受信回数を大幅に少なくすることができる。図3からわかるように、無線ノード30が省電力モードのときは同期信号を受信することができないが、これが問題になることはない。また、通常モードでも、補正が必要ないときは、同期信号を無視できる。
【0047】
各無線ノードの省電力モードへの移行、および通常モードへの復帰のタイミングは予め決めておくこともできるが、動的に決めることもできる。以下、無線送受信部32のオン、オフタイミングを動的に決定する仕組みを説明する。
【0048】
図4に、時刻管理部33が省電力モードへの移行、通常モードへの復帰のタイミングを決めるためのタイミング情報の一例を表す。このタイミング情報は同期信号と共にブロードキャストアドレスで全無線ノードに一斉に送信される。各無線ノード内の制御部31は起動したとき、あるいは時刻管理部33の時計を補正するときに受信する同期信号からこのタイミング情報を受け取り、このタイミング情報に基づいて時刻管理部33を設定する。
【0049】
図4において、シーケンス番号は0から始まり、同期信号の度に1増加する番号である。この番号は上限が定めれらており、この上限に達すると0に戻る。例えば、上限を9とすると、シーケンス番号は0→1→2・・・・・→9→0・・・の順に変化する。このシーケンス番号は10の周期を有している。
【0050】
1周期の同期信号数は、1周期当たりの同期信号の数を表す。上記の例では10になる。通常モードに復帰するシーケンス番号は、省電力モードから通常モードに復帰するシーケンス番号を表す。時刻管理部33は、シーケンス番号が”通常モードに復帰するシーケンス番号”になると、制御部31に通常モード復帰通知を出力し、シーケンス番号が0に戻ったときに、”省電力モード移行通知”を出力する。同期信号送信間隔は、同期信号が出力される周期を表す。例えば、同期信号が1秒毎に出力されるなら、同期信号送信間隔は1秒である。
【0051】
次に、図5に基づいて無線ノードの状態切り替えについて説明する。なお、タイミング情報を、
1周期の同期信号数=10
通常モードになるシーケンス番号=5
同期信号送信間隔=1秒
とする。
【0052】
図5において、矢印50は同期信号の送信タイミング、51はシーケンス番号である。シーケンス番号は0から始まり、9を上限とする、1ずつ増加する番号である。通常モードになるシーケンス番号が5なので、無線ノード30は、シーケンス番号が0〜4は省電力モードになり、5〜9は通常モードになる。
【0053】
今、シーケンス番号が2と3の間で無線ノードが起動したとする。この無線ノードは、シーケンス番号=3の同期信号を最初に受信し、そのタイミング情報から、現在は省電力モードであり、2秒後に5秒間通常モードを維持し、その後5秒間省電力モードになる動作を繰り返すことを知る。
【0054】
このため、初期設定を終了した時刻管理部33は省電力モード移行通知を制御部31に出力し、2秒後に通常モード復帰通知を出力する。以後は5秒毎に省電力モード移行通知と通常モード復帰通知を交互に出力する。制御部31は、省電力モード移行通知を受け取ると無線送受信部32をオフにし、通常モード復帰通知を受け取ると、無線送受信部32をオンにする。このようにすると、各無線ノードが通常モードになる期間が重なるので、通信相手が省電力モードのために通信できなくなることがなくなる。
【0055】
なお、この実施例ではシーケンス番号が小さいときに省電力モードにし、通常モードになるシーケンス番号以上のときに通常モードになるようにしたが、シーケンス番号が小さいときに通常モード、大きいときに省電力モードになるようにしてもよい。省電力モード、通常モードへの移行タイミング、シーケンス番号の周期や変化分は任意に決めることができる。
【0056】
また、本実施例では起動時にタイミング情報を取り込むようにしたが、動作中にタイミング情報を更新して、省電力モードの期間と通常モードの期間の比率を変えることもできる。例えば、ネットワーク中の無線ノードの数が増加すると、中継パケットやデータ探索パケットの送受信が増加し、データ送受信の頻度が高くなるので、通用モードの期間を長くしなければならないが、このようなときに便利である。各無線ノードは、時刻管理部33の時計を補正するときに新たなタイミング情報を取得して、このタイミング情報に基づいて時刻管理部33の設定を変えるようにすればよい。このようにすると、同期信号送信装置40が出力するタイミング情報を変えるだけで、全ての無線ノードの設定を変えることができる。
【0057】
また、中継ノードや他の無線ノードへのデータ転送を専門に行う無線ノード等などは常時電源が供給されるので、省電力の要求は大きくない。このような無線ノードは、タイミング情報を受信しても省電力モードに移行せず、常時通常モードにしておく等、その無線ノードの状態に最適な制御を行うこともできる。
【0058】
また、この実施例では無線送受信部32のオン、オフのみを制御するようにしたが、無線送受信部32だけでなく、省電力モードのときに時刻管理部33を除く他の要素、例えばセンサ部34や制御部31の一部の動作を止めるようにすると、更に消費電力を削減することができる。また、無線送受信部32は、電源をオン、オフするのではなく、動作を停止、開始するようにしてもよい。電源をオフすると当然動作は停止するので、動作の停止、開始には、電源のオン、オフが含まれる。
【0059】
さらに、この実施例ではタイミング情報に基づいて全ての無線ノードが一斉に通常モードになり、また省電力モードになるようにしたが、通常モード期間と省電力モード期間の比率を各無線ノードが独自に変更するようにしてもよい。このようにすると、電池の残量が少なったときに、省電力モード期間を長くして電池寿命を延ばすことができる。この場合、他の無線ノードにはデータ通信でこのことを通知し、データの送受信に支障が発生しないようにすればよい。
【0060】
図6に、本発明に係る無線ネットワークシステムの他の実施例を示す。この実施例は、無線ノードによって省電力モードの期間と通常モードの期間の位相をずらすことにより、省電力を図り、かつ情報を発信したい無線ノードはいつでも送信することができるネットワークシステムを実現するようにしたものである。この実施例では、無線ノードの2つの組に分けて、常にどちらかの組の無線ノードが通常モードになるようにする。
【0061】
図6において、(A)は無線ノードの配置を表した図である。ここにおいて、60(□印)は送信元無線ノード、61(△印)は受信先無線ノード、62(●印)は一方の組に属する無線ノード、63(■印)は他方の組に属する無線ノードである。
【0062】
同図(B)は各無線ノードの通常モード期間を表した図であり、横棒は通常モード期間を表している。無線ノード62は期間Aで通常モードになり、無線ノード63は期間Bで通常モードになる。すなわち、無線ノード62、63のどちらかが常に通常モードになっている。
【0063】
このようなネットワークで送信元無線ノード60から受信先無線ノード61にデータを送信する場合、通常モードになっている無線ノードを経由してデータを送信する。すなわち、期間Aでデータを送信する場合、実線64のように■印の無線ノード62を経由してデータを送信する。また、期間Bで送信する場合は、点線65のように●印の無線ノード63を経由してデータを送信する。このようにすることにより、無線ノードの半分は省電力モードにあるにも関わらず、いつでもデータを送受信することができるネットワークを構築することができる。特に、通常モードになるまで待つことができない緊急データを送信しなければならない場合に有効である。
【0064】
なお、どの無線ノードがいつ通常モードになるかは、予め決めておけばよい。例えば■印の無線ノード62はシーケンス番号が、”通常モードに復帰するシーケンス番号”より小さいときに通常モードになり、●印の無線ノード63はシーケンス番号が、”通常モードに復帰するシーケンス番号”より大きいときに通常モードになるようにすればよい。送信元無線ノードにこの情報を持たせることにより、どの無線ノードを中継すればよいかを知ることができる。なお、3つ以上に分割してもよい。
【0065】
図7に他の実施例を示す。この実施例は、複数の同期信号送信装置を含むネットワークの例である。図7において、70〜72は同期信号送信装置、73〜75はそれぞれ同期信号送信装置70〜72の電波到達範囲、黒丸76は無線ノードである。同期信号送信装置70〜72には図示しないケーブルで、或いは、別方式の無線(例えば、WiFiや電波時計)により接続され、正確に同期が取られている。そのため、同期信号送信装置70〜72が出力する同期信号は、正確に同じ時間に出力される。
【0066】
電波到達範囲73〜75は相互に重複する部分が存在する。従来は、同期信号送信装置70〜72は同じ無線チャンネルを用いて同期信号を送信していた。電波到達範囲が重複するエリアでは2つ以上の同期信号が互いに干渉するために、正確に同期した同期信号を出力することができなかった。また、従来は同期信号の無線チャンネルとデータ送受信の無線チャンネルが同じであったので、同期信号送信装置70〜72の無線チャンネルを変えるとデータ送受信に用いるチャンネルも変わってしまい、異なる電波到達エリアに属する無線ノード間でデータ送受信ができなくなるという課題があった。
【0067】
本実施例では同期信号を送信する無線チャンネルとデータを送信する無線チャンネルは異なったチャンネルを使用するようにしたので、データの送受信チャンネルを変えることなく、各同期信号送信装置70〜72に異なった無線チャンネルを割り当てることができる。そのため、重複するエリアが存在しても、正確に同期が取れた同期信号を出力することができる。
【0068】
なお、重複したエリアにある無線ノードは2つ以上の異なった同期信号を受信することができる。各無線ノードはどの同期信号送信装置が出力する同期信号を基準とするかを決めればよいが、基本的にはどの同期信号を選択しても問題なくネットワークに同期することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る無線ノードの一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明に係る無線ネットワークシステムの一実施例を示す構成図である。
【図3】無線ノードの動作を説明するためのシーケンス図である。
【図4】タイミング情報の構成図である。
【図5】無線ノードの状態切り替えを説明するための図である。
【図6】本発明に係る無線ネットワークシステムの他の実施例を示す構成図である。
【図7】本発明に係る無線ネットワークシステムの他の実施例を示す構成図である。
【図8】従来の無線ネットワークの構成図である。
【図9】従来の無線ノードのモード遷移を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
30、30a〜30n、62、63、76 無線ノード
31 制御部
32 無線送受信部
33 時刻管理部
34 センサ部
35 電源
40、70〜72 同期信号送信装置
50 同期信号のタイミング
51 シーケンス番号
60 送信元ノード
61 受信先ノード
64、65 中継経路
73〜75 電波到達範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を内蔵し、無線を用いて他の機器とデータの授受を行う無線ノードにおいて、
無線を用いて他の機器にデータを送信し、また他の機器が送信したデータを受信する無線送受信部と、
時計を内蔵し、前記無線送受信部が受信した同期信号により前記時計を起動および/または補正すると共に、前記時計に基づいて省電力モード移行通知および通常モード復帰通知を出力する時刻管理部と、
前記省電力モード移行通知および通常モード復帰通知が入力され、省電力モード移行通知が入力されたときに省電力モードに移行させ、通常モード復帰通知が入力されたときに通常モードに復帰させる制御部と、
を具備したことを特徴とする無線ノード。
【請求項2】
前記制御部は、省電力モード移行通知が入力されたときに前記無線送受信部の動作を停止させ、通常モード復帰通知が入力されたときに前記無線送受信部の動作を開始させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の無線ノード。
【請求項3】
前記同期信号には所定の周期を有し、一定の変化分で値が変化するシーケンス番号が含まれ、前記時刻管理部はこのシーケンス番号が第1の値になる時刻に省電力モード移行通知を出力し、前記第1の値とは異なる第2の値になる時刻に通常モード復帰通知を出力するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の無線ノード。
【請求項4】
同期信号を出力する同期信号送信装置と、
請求項1乃至請求項3いずれかに記載の、複数の無線ノードと、
を具備したことを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項5】
前記同期信号送信装置が同期信号を出力するために用いる無線チャンネルと、前記無線ノードがデータを送受信するために用いる無線チャンネルを異ならせるようにしたことを特徴とする請求項4記載の無線ネットワークシステム。
【請求項6】
前記複数の無線ノードを複数の組に分割し、これらの組毎に省電力モードに移行させるタイミング、および通常モードに復帰するタイミングを異ならせるようにしたことを特徴とする請求項4若しくは請求項5に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項7】
少なくとも2台の同期信号送信装置を具備し、これらの同期信号送信装置が同期信号送信に用いる無線チャンネルを異ならせるようにしたことを特徴とする請求項4乃至請求項6いずれかに記載の無線ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−306657(P2008−306657A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154208(P2007−154208)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】