説明

無線信号送信方法および無線信号送信装置

【課題】本発明の目的は、DRMコンソーシアムによるDRM+の標準化を待たずに、DRMの使用領域を拡張する可能性を提供することである。
【解決手段】本発明は、DRM信号を搬送するために使用されるDRM信号およびFM多重信号が生成される放送信号の送信方法を開示している。本発明は、更に、対応する送信装置および対応する受信装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送信号の送信方法、当該方法に対応する送信装置、および当該方法に対応する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物に搭載されたラジオは、地上波のラジオ放送の振幅変調(AM)帯域および周波数変調(FM)帯域のみしか受信しなかった。DAB(デジタルオーディオ放送)も更に知られている。FMラジオ局は、比較的狭い地理的領域に限られる放送エリアを有する。ラジオ局の数が連続的に増加していたので、いくつかのFM局では、FM副搬送波の使用を含むラジオデータシステム(RDS)として知られている方法を使用して、局のプログラム上の他のデジタルデータと共に、FMフォーマット情報が送信される。会社の財務情報および交通情報などのデータ放送は、複数のFM副搬送波にわたる。AMラジオ局のプログラム上にデータ放送をのせるためのFM局の副搬送波と同等な副搬送波がAM局には存在しない。日本では、付加情報がDARC(データラジオチャネル)システムにより放送され、RDSシステムとDARCシステムとの基準周波数は異なる。
【0003】
上記の問題のために、およびデジタルラジオに関してますます増えている需要のために、デジタル・ラジオ・モンディアル(DRM)として知られるデジタルラジオシステムが、ラジオ局および電子機器製造業者に関する国際コンソーシアム(international consortium of radio stations and electronics manufacturers)により提案されて、2003年に国際標準として認可された。デジタルラジオシステムDRMは、短波、中波、および長波のデジタルシステムであり、世界中の既存の周波数および帯域幅を利用することができる。
【0004】
今まで、短波、中波、および長波に関するレギュレーションパス(regulation path)は、その帯域で、DRM信号の直接送信のみを行うことができるように(ETSI ES 201 980)、緩やかにされてきている。極超短波(UHF)帯ではそのような同意はなく、極超短波領域でのDRM信号の直接送信が現在許可されていないように、120MHz(DRM+)までのDRMの拡張に関する議論のみが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、DRMコンソーシアムによるDRM+の標準化を待たずに、DRMの使用領域を拡張する可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の特性を有する放送信号の送信方法により、および、請求項9および/または請求項10の特徴を有する放送信号の送信装置により達成されるこの目的は、本発明にしたがって実現される。本発明の更に効果的な発展は従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明にかかる方法により、および、放送信号の送信に関して本発明にかかる送信および/または受信装置により、DRM信号の直接送信は行われず、FM放送またはUHF放送は制限されないけれども、1つの周波数でFM放送およびDRM信号の同時送信は行われている。
【0008】
この目的のため、放送信号の送信に関して、本発明にかかるこの方法では、DRM信号およびFM多重信号が生成されて、次にこのFM多重信号がDRM信号を搬送するために使用される。
【0009】
この方法で、DRM信号の直接送信の必要なしに、FM信号およびDRM信号を、1つの周波数上で同時送信できる。
【0010】
したがって、本発明は、特に、従来のFM放送からDRM+への「流れるような移行」を可能にする。
【0011】
本発明にかかる方法の更に好ましい発展にしたがって、DRM信号は、付加的に、FM多重信号に加えられる。
【0012】
本発明にかかる方法の好ましい実施の形態では、FM多重信号の中のDRM信号の中間周波数または中央周波数は、合計76kHzになる。
【0013】
DRM信号の中間周波数または中央周波数は、FM多重信号のパイロット・トーンの周波数に同期されるのが有利である。
【0014】
この意味では、好ましい実施の形態において、DRM信号の中間周波数または中央周波数は、合計で、FM多重信号の4倍の周波数になる。
【0015】
別の有利なさらなる発展型にしたがって、パイロット・トーンの周波数は合計19kHzになる。
【0016】
好ましくは、FM多重信号に付加的に加えられるDRM信号は、受信機側でDRM復調およびDRM復号される。
【0017】
DRM信号の中間周波数または中央周波数が、DRM復調およびDRM復号の前に、混合されて周波数を下げられると有利である。現在市販されているDRM復号器は、例えば12kHzの周波数用に設計されていて、復調に使用することができる。
【0018】
本発明にかかる方法を実行するのに特に適したラジオ信号を送信する本発明にかかる送信装置は、DRM信号を生成する装置およびFM多重信号を生成する装置を有する。更に、DRM信号をFM多重信号に加えるために、装置が設けられる。
【0019】
本発明にかかる方法を実行するのに特に適した本発明にかかる受信装置は、FM多重信号に付加的に加えられたDRM信号の復調用および復号用の装置を有する。
【0020】
したがって、DRM多重信号およびFM多重信号は、本発明にかかる装置を用いて、単純な方法で、1つの周波数上で同時に送信することができる。
【0021】
本発明にかかる装置の好ましいさらなる発展型において、DRM信号の復調および復号のための装置の前に配置されたDRM信号の中間周波数または中央周波数を混合して周波数を下げるために付加的に装置が設けられる。通常、低い周波数用に設計されたDRM信号を復調する従来の装置を使用することができ、復調および復号用の新しい装置の費用が節約できる。
【0022】
DRM信号の中間周波数または中央周波数は、混合されて周波数が下げられた後で、好ましくは合計12kHzになる。
【0023】
本発明の実施の形態にしたがって、FM多重信号の中のDRM信号の中間周波数および中央周波数は合計76Hzになる。本発明にかかる装置の有利な形態によれば、DRM信号の中間周波数または中央周波数は、好ましくはFM多重信号の中で送信もされるパイロット・トーンの周波数に同期される。
【0024】
DRM信号の中間周波数または中央周波数は、好ましくは合計でFM多重信号のパイロット・トーンの4倍の周波数になり、パイロット・トーンの周波数は、合計で、有利に19kHzになる。この方法で、どの新しい同期化信号も、同期用に生成される必要がないけれども、副搬送波方式により使用される両側波帯変調の復調に必要な搬送波の生成のために前に使用された既に存在している資源が使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のこの及び別の目的、特徴、並びに、効果と別の効果は、各々の図に関連した好ましい実施の形態の以下の記述から明らかになる。
【0026】
FM放送のステレオ多重信号の中のRDS信号の上をデータが送信されるデータ送信方法は、従来技術により知られている。この方法は、例えばHSDSおよびDARC(ETSI EN 300751)である。DARC方法では、例えば76kHzの副搬送波が使用される。FM多重信号の中のDARC信号の出力帯域幅は、合計約32kHzになる。
【0027】
データ送信に関する上記の方法は、DGPS、トラフィック情報、およびラジオ番組関連データ(PAD)等の付加的サービス用のデータの搬送のみに使用される。しかし、これらの方法は、76kHz付近のFM多重信号の周波数レンジが、通常、まだ使用可能であるために、これらの方法は、ヨーロッパ内でのデータ送信にはほんのわずかに使用されているのみである。
【0028】
特に短波周波数領域では、DRMに関する問題は、マルチパス受信、ドップラーシフト、および雑音による誤りが考慮されねばならず、利用可能な信号品質を得るために補正されねばならない。したがって、適切な変調方法および調和するチャネル暗号化が必要である。適切な変調方法は、直交周波数分割多重(OFDM)方式であり、それにより、周波数選択フェーディングを避けることができる。このチャネル暗号化は、チャネルの特徴的な時変的性質に対抗するために、コード化直交周波数分割多重(COFDM)を付加的に発生することのできる暗号化を用いた、単一キャリア方式と比較してデータ伝送レートの低いマルチキャリア方式である。次に、周波数選択フェーディングは、デジタルオーディオデータの受信に重大な影響を及ぼす。なぜなら、デジタルオーディオデータは、相互に影響しない多くの副搬送波の上に分散するからである。副搬送波は、互いに近接した異なる周波数上になる。発生する送信誤りの多くの部分はチャネル暗号化を使用して認識することができ、任意で修正することができる。
【0029】
放送信号の送信に関する本発明にかかる方法において、FM多重信号は、DRM(デジタル・ラジオ・モンディアル)信号を搬送するために使用される。
【0030】
この目的のため、DRM信号、すなわち、周波数範囲内の搬送波周波数の最大周波数が他の全ての搬送波周波数の0の位置に正確にあって、直交振幅変調(QAM)が個々の副搬送波の変調方式として使用され、可能な限り堅固な誤り訂正がチャネル符号化により保証されるように、周波数スペクトルの中で互いに隣接して配置された多くの副搬送波までDRM情報が変調された信号が、76kHzの中間周波数または中央周波数で取得可能であり、それに続いてFM多重信号に付加的に加えられる。このために、FM多重信号の中の76kHzの中間周波数または中央周波数付近に幅4.5kHzから20kHzのスペクトルが発生する。COFDM方式は送信機と受信機の正確な同期を必要とするために、76kHzの中間周波数または中央周波数は、FM多重信号のパイロット・トーンの19kHzの周波数(4パイロット・トーン周波数)をもつこの方式に同期化される。パイロット・トーン周波数も、FM多重信号の中で送信され、現在までに、ステレオ送信の差分信号、番組に関連するデータ送信用のRDS信号等の副搬送波方式として使用される両側波帯変調の復調用に必要な搬送波の生成のために既に機能している。3つまでの別のデジタルオーディオチャネル、または、スライドショー、データサービス等の付加的サービスは、DRM信号によるFM放送信号に加えて送信することができ、すなわち、各々「ストリーム」としても知られる主データチャネルおよび3つまでの別の副データチャネルが存在する。
【0031】
この方法で、FM放送と、DRM信号の、1つの周波数上での同時放送が可能になる。
【0032】
上記の変調された信号の復調のために、付加的に加えられたDRM信号を含むFM多重信号が、ここでは76kHzである使用されている中間周波数または中央周波数を処理することができるDRM復号器に供給され、元々のDRM情報が再び得られるようになっている。あるいは、76kHzのDRM信号の中間周波数または中央周波数は、DRM復調およびDRM復号の中の「標準的な」中間周波数または中央周波数を表す例えば12kHzの低周波数へのDRM復号器に供給される前に、混合されて周波数を下げられることができ、したがって、既に市販されている多くのDRM復号器により処理されることができる。
【0033】
放送信号を送信する本発明にかかるこの方法は、放送信号の送信を表す図を参照して以下に説明される装置により実施できる。
【0034】
放送信号の送信を表す図に示された本発明にかかる送信装置10は、76kHzの中間周波数または中央周波数をもつDRM信号を生成する装置1を備える。DRM信号は加算器3の入力に供給されて、加えられたDRM信号を含むFM多重信号からなるベースバンド信号が生成されるように、装置2のFM多重信号を更に加算器3に入力する加算器3の入力が、FM多重信号の生成に応用される。次に、ベースバンド信号は、変調装置4を用いてFM搬送波まで変調されることができ、エンドステージ5を用いて増幅されることができ、それに続いて放送信号として送信されることができる。
【0035】
同じ図に示された本発明にかかる受信装置11は、本発明にかかる送信機により送信された放送信号を受信する。受信された放送信号は、始めに、例えばRF/IFチューナ6を用いて混合されて10.7MHzの中間周波数に周波数を下げられる。それに続いて、混合されて周波数の下げられた放送信号は復調器7、例えばFM弁別器またはDSPを用いて復調され、元のベースバンド信号、すなわち、付加的に加えられたDRM信号を含むFM多重信号が得られる。最後に、ベースバンド信号は、76kHzのDRM信号の中間周波数または中央周波数に適したDRM復号器9に供給され、DRM復号器9の出力信号として、元のDRM情報が再度得られる。
【0036】
あるいは、12kHzのDRM復号器にとっては現在普通の中間周波数または中央周波数に76kHzのDR信号を混合して周波数を下げる混合装置8にベースバンド信号を供給することもでき、その信号を出力することもできる。次に、この混合されて周波数の下げられたDRM信号は、12kHzの中間周波数または中央周波数に合わせて設計されて、現在市販されているDRM復号器9に供給され、混合されて周波数の下げられたDRM信号を復調および復号し、次に、元のDRM情報を出力する。
【0037】
この方法で、FM多重信号およびDRM信号は、本発明にかかる方法を使用して、および、直接送信の必要なしに、又は、DRM信号送信のための別々の固定された周波数範囲をもたずに、放送信号を送信する本発明にかかる装置を使用して、同時に送信できる。したがって、FM多重信号の中の以前使用されておらずかつ、機能していない周波数範囲が、デジタル放送データおよび/または付加的なデジタルサービスの送信に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる送信装置のブロック図
【図2】本発明にかかる受信装置のブロック図
【符号の説明】
【0039】
1 DRM信号を生成する装置
2 FM多重信号を生成する装置
3 上記FM多重信号に上記DRM信号を加える装置
4 変調装置
5 エンドステージ
6 RF/IFチューナ
7 復調器
8 混合装置
9 DRM復号器
10 送信装置
11 受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号の送信方法であって、
DRM信号を生成するステップ;
FM多重信号を生成するステップ;および
上記DRM信号の搬送に上記FM多重信号を利用するステップ
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、上記DRM信号が上記FM多重信号に付加的に加えられることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、上記DRM信号の中間周波数または中央周波数が、上記FM多重信号のパイロット・トーンの周波数に同期化されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1つに記載の方法であって、上記DRM信号の上記中間周波数または中央周波数が、合計で、上記FM多重信号の上記パイロット・トーンの4倍の周波数になることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の方法であって、上記FM多重信号の中の上記DRM信号の上記中間周波数または中央周波数が、合計76kHzになることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の方法であって、上記FM多重信号に付加的に加えられた上記DRM信号が、受信機側でDRM復調およびDRM復号されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、上記DRM信号の上記中間周波数または中央周波数が、DRM復調およびDRM復号の前に、混合されて周波数を下げられることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、上記DRM信号の、上記混合されて周波数の下げられた中間周波数または中央周波数が、合計12kHzになることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の方法を実施する放送信号を送信する送信装置であって、
DRM信号を生成する装置(1);
FM多重信号を生成する装置(2);および
上記FM多重信号に上記DRM信号を加える装置(3);
を備える送信装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の方法を実施する放送信号を送信する受信装置であって、
FM多重信号に付加的に加えられたDRM信号を復調および復号する装置(9);
を備える受信装置。
【請求項11】
請求項10に記載の受信装置であって、
上記DRM信号を上記復調および上記復号する装置(9)の前に配置される上記DRM信号の上記中間周波数または中央周波数を混合して周波数を下げるための装置(8)が設けられることを特徴とする受信装置。
【請求項12】
請求項11に記載の受信装置であって、
上記DRM信号の、上記混合されて周波数の下げられた中間周波数または中央周波数が、合計12kHzになることを特徴とする受信装置。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか1つに記載の装置であって、
上記DRM信号の上記中間周波数または中央周波数が上記FM多重信号の上記パイロット・トーンの周波数に同期されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか1つに記載の装置であって、
上記DRM信号の上記中間周波数または中央周波数が、合計で、上記FM多重信号の上記パイロット・トーンの4倍の周波数になることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項9から請求項14のいずれか1つに記載の装置であって、
上記FM多重信号の中の上記DRM信号の上記中間周波数または中央周波数が、合計76kHzになることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−104687(P2007−104687A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274272(P2006−274272)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(505154901)デルフィ テクノロジーズ, インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】