無線測位システム、基地局装置、測位方法、及びプログラム
【課題】基準信号の衝突発生を防止することによって基準局装置の複数設置を可能とする。
【解決手段】複数の基地局装置10を含み、被測位物の位置を測位する無線測位システムであって、各基地局装置10それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、各基地局装置10は、被測位端末装置30から測位信号を受信し、その受信時刻を取得する測位信号受信部50と、測位信号の受信タイミングと、当該基地局装置10に割り当てられた優先順位と、に基づくタイミングで、基準信号を送信する基準信号送信部53と、他の基地局装置10が送信した基準信号を受信し、その受信時刻を取得する基準信号受信部54と、を含み、当該無線測位システムは、各基地局装置10において取得された測位信号及び基準信号の各受信時刻に基づいて、被測位端末装置30の位置を決定する位置決定部22、を含む。
【解決手段】複数の基地局装置10を含み、被測位物の位置を測位する無線測位システムであって、各基地局装置10それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、各基地局装置10は、被測位端末装置30から測位信号を受信し、その受信時刻を取得する測位信号受信部50と、測位信号の受信タイミングと、当該基地局装置10に割り当てられた優先順位と、に基づくタイミングで、基準信号を送信する基準信号送信部53と、他の基地局装置10が送信した基準信号を受信し、その受信時刻を取得する基準信号受信部54と、を含み、当該無線測位システムは、各基地局装置10において取得された測位信号及び基準信号の各受信時刻に基づいて、被測位端末装置30の位置を決定する位置決定部22、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線測位システム、基地局装置、測位方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被測位物(移動局装置など)からの測位信号を3つ以上のアクセスポイント装置で受信することで測位を行う無線測位システムが知られている。具体的な例としては、室内に多数のアクセスポイント装置を設置しておき、被測位物からの測位信号をそのうち3つ以上のアクセスポイント装置で受信することにより、該被測位物の室内での位置を測位するものが挙げられる。なお、非特許文献1には、このような測位の原理についての説明が示されている。
【0003】
非特許文献1に示されるように、上記無線測位システムは、各アクセスポイント装置の位置と、被測位物が送信した測位信号を受信するまでに要した時間のアクセスポイント装置間での差(以下、測位信号受信時間差という。)と、に基づいて被測位物の位置を算出する。
【0004】
上記測位信号受信時間差の算出について説明する。まず、各アクセスポイント装置は、自身で保持しているクロックに基づいて、測位信号の受信時刻を測定する。上記無線測位システムは、この受信時刻の差を算出し、上記測位信号受信時間差とする。ただし、このような処理により正しく上記測位信号受信時間差を算出するためには、各アクセスポイント装置における測位信号の受信時刻を、共通のタイミングを基準とする時刻表記を用いて表す必要がある。そこで、各アクセスポイント装置は、共通のタイミングを共有するための処理(時刻同期処理という。)を行う。
【0005】
特許文献1には、上記時刻同期処理の例が開示されている。この例では、時刻同期用の信号(基準信号という。)を送信する基準局装置が1つ設けられる。基準局装置は、アクセスポイント装置同様測位信号を受信し、測位信号を受信すると直ちに基準信号を送信する。各アクセスポイント装置は予め基準局装置との間の距離を記憶しており、基準局装置が送信した基準信号を受信して、その受信タイミングと、記憶している距離と、に基づき、上記共通のタイミングを取得する。そして、取得したタイミングを基準とする時刻表記を用いて、測位信号の受信時刻を取得する。
【非特許文献1】Rick Roberts他、「Ranging Subcommittee Final Report(測位小委員会最終報告)」、IEEE P802.15、米国、IEEE(米国に本部がある電気電子学会)、2004年11月22日、P802.15、p. 3-9
【特許文献1】特開2005−140617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術による場合、基準局装置を、測位対象エリア内のどの位置からも測位信号を受信可能な位置であって、かつ基準信号が全てのアクセスポイント装置に到達可能な位置に設置しなければならないため、設置位置の選定が容易でなく、かつ測位対象エリアの広さが限定されるという問題があった。また、このような設置位置の制限があるため、一旦各装置の設置が完了した後、アクセスポイント装置を増設することもまた容易でないという問題もあった。
【0007】
これらの問題は基準局装置を複数設置することによって解決されるようにも見えるが、上記特許文献1に記載の技術には、複数の基準局装置を設置することはできないという問題もあった。すなわち、複数の基準局装置を設置すると、1の測位信号を複数の基準局装置が受信し、結果としてアクセスポイント装置が2以上の基準信号を受信してしまうことがある(これを基準信号の衝突という。)。こうなると、各アクセスポイント装置は基準とする共通のタイミングを適切に取得できなくなってしまう。
【0008】
従って、本発明の課題の一つは、基準信号の衝突発生を防止することによって基準局装置の複数設置を可能とする無線測位システム、基地局装置、測位方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明にかかる無線測位システムは、複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムであって、前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、前記各基地局装置は、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段と、前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信手段と、他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信手段と、を含み、当該無線測位システムは、前記各基地局装置において取得された前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに基づいて、前記被測位物の位置を決定する位置決定手段、を含む、ことを特徴とする。
【0010】
これによれば、各基地局装置は優先順位に基づくタイミングで基準信号を送信しているので、基地局装置を複数設置したとしても、基準信号の衝突の発生が防止される。すなわち、基準局装置として機能する基地局装置を複数設置することが可能になる。
【0011】
また、上記無線測位システムにおいて、前記各基地局装置は、前記基準信号受信手段により前記基準信号が受信された場合に、前記基準信号送信手段による前記基準信号の送信を制限する基準信号送信制限手段、を含む、こととしてもよい。
【0012】
これによれば、各基地局装置は、他の基地局装置から基準信号が受信された場合には送信を制限しているので、基準信号の衝突がより確実に防止される。
【0013】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記各基地局装置相互間の距離を示す距離情報を取得する距離情報取得手段、を含み、前記位置決定手段は、前記各基地局装置において取得された前記基準信号及び前記測位信号の各受信時刻と、該各基地局装置と該基準信号を送信した前記基地局装置との間の距離を示す距離情報と、に基づき、前記被測位物の位置を決定する、こととしてもよい。
【0014】
これによれば、距離情報に基づいて被測位物の位置を決定できる。
【0015】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、測位対象エリアの形状及び広さと、前記各基地局装置の設置位置と、に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0016】
これによれば、1つの基地局装置により送信された基準信号が到達する基地局装置の数が多くなることが期待できる。
【0017】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、前記各基地局装置が通信可能な他の基地局装置の数に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0018】
これによっても、1つの基地局装置により送信された基準信号が到達する基地局装置の数が多くなることが期待できる。
【0019】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、前記各基地局装置のアンテナ放射パターンに基づいて決定される、こととしてもよい。
【0020】
これによっても、1つの基地局装置により送信された基準信号が到達する基地局装置の数が多くなることが期待できる。
【0021】
また、上記各無線測位システムにおいて、当該無線測位システムは、複数の被測位物それぞれの位置を予め記憶する記憶手段、を含み、前記優先順位は、該各被測位物それぞれについて前記記憶手段により記憶される位置に基づいて、前記被測位物ごとに決定される、こととしてもよい。
【0022】
これによれば、各被測位物について記憶している位置(=各被測位物が在りそうな位置)に基づいて、被測位物ごとに優先順位が決定されるので、効率的な基準信号の送信を実現することができる。
【0023】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、前記各基地局装置のいずれかが前記測位信号を受信した場合における、前記位置決定手段による位置決定が完了する割合に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0024】
これによれば、過去に上手く位置決定できた割合の高い優先順位を、後に利用することができるようになる。
【0025】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記各基地局装置相互間で所定の試験信号を送受信し、前記優先順位は、その通信状況に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0026】
これによれば、例えば、試験信号を好適に送受信可能な他の基地局装置の数が多い基地局装置ほど、優先順位を上げるようにすることができる。
【0027】
また、本発明にかかる基地局装置は、当該基地局装置に割り当てられた基準信号送信の優先順位を取得する優先順位取得手段と、被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得手段により取得される優先順位と、に基づくタイミングで、基準信号を送信する基準信号送信手段と、を含むことを特徴とする。
【0028】
また、本発明にかかる測位方法は、複数の基地局装置を含む無線測位システムを用いて被測位物の位置を測位するための測位方法であって、前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、前記各基地局装置が、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得ステップと、前記各基地局装置が、前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信ステップと、前記各基地局装置が、前記測位信号受信ステップにおける前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得ステップにおいて取得される優先順位と、に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信ステップと、他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信ステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明にかかるプログラムは、複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムにおいて、1又は複数のコンピュータを前記各基地局装置として機能させるためのプログラムであって、前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、前記各コンピュータを、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、前記被測位物から受信される測位信号の受信時刻を取得する測位信号受信時刻取得手段、前記測位信号が受信された後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、送信手段に前記基準信号を送信させる基準信号送信制御手段、及び前記クロックに基づき、他の前記基地局装置から受信される前記基準信号の受信時刻を取得する基準信号受信手段、としてさらに機能させるためのプログラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態にかかる無線測位システム1のシステム構成図である。同図に示すように、無線測位システム1は、複数の基地局装置10(図1では、基地局装置10−1から基地局装置10−6までの6つの基地局装置10を示している。)、測位計算サーバ装置20、被測位物としての被測位端末装置30、及びネットワーク40を含んで構成される。
【0032】
各基地局装置10は、ここではある部屋(本実施の形態における測位対象エリア)の中に分散設置されており、ネットワーク40を介して測位計算サーバ装置20と通信可能に構成されている。また、各基地局装置10は、被測位端末装置30が放射状に無線送信する測位信号(図1においては、この測位信号を矢印Rで示している。)を受信する。
【0033】
さらに、各基地局装置10は、相互間で無線通信を行うことができるように構成される。具体的には、基地局装置10間の時刻同期をとるための基準信号(同期信号。図1においては、この基準信号を矢印Bで示している。)を、基地局装置10相互間で無線送受信可能に構成される。
【0034】
各基地局装置10は現在時刻を取得するための計時手段を備えており、該計時手段を用いて測位信号受信時刻や基準信号送受信時刻を取得し、測位計算サーバ装置20に送信する処理も行う。
【0035】
測位計算サーバ装置20は、各基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号送受信時刻を受信し、これらに基づいて、被測位端末装置30の位置を算出する。
【0036】
以下、基地局装置10のハードウェア構成について説明する。図2は、基地局装置10のハードウェア構成図である。同図に示すように、基地局装置10は、アンテナ11、無線部(RF; Radio Frequency)12、信号処理部(DSP; Digital Signal Processing unit)13を含んで構成される。また、信号処理部13は、その内部にマイクロコントローラ(MPU; Micro Processing Unit)131、記憶媒体(MEM; Memory)132、カウンタ(COUNT; Counter)133、ベースバンド信号処理部(BB; Base Band)134を含んで構成される。
【0037】
信号処理部13は、パケット生成処理、演算処理、信号処理(変復調など)、及び計時処理の各処理を行う。具体的には、マイクロコントローラ131は、種々の演算処理及び上記各処理中の状態遷移管理を行う。カウンタ133は、図示しないクロックが発振するタイミングパルスをカウントすることにより、現在時刻を取得するための計時処理を行う。
【0038】
ベースバンド信号処理部134は、パケット生成処理と、データの変復調や拡散・逆拡散などベースバンドの信号処理と、を行う。このパケット生成処理に関し、記憶媒体132は、当該基地局装置10の上記部屋の中における位置を示す座標、後述する基地局プライオリティ(BP)、当該基地局装置10の識別情報(ID)などを格納しており、ベースバンド信号処理部134は、この記憶媒体132に記憶される情報に基づいてパケットを生成する。より具体的には、上記基準信号を構成するパケット(以下、基準信号パケットという。)や、上記測位信号受信時刻及び上記基準信号送受信時刻を含むパケット(以下、受信時刻パケットという。)を生成する。ここで、各パケットはプリアンブル部、ヘッダ部、及びデータ部から構成されており、基準信号パケットは、そのデータ部に当該パケットが基準信号であることを示す情報を含む。また、受信時刻パケットは、そのデータ部に各受信時刻を含む。
【0039】
無線部12は、信号処理部13によって生成・変調されたパケットの入力を受け付け、増幅及び周波数変換の各処理を施した上で、アンテナ11を介して空中に放射する。また、アンテナ11に到来した信号の入力を受け付け、増幅及び周波数変換の各処理を施した上で、信号処理部13に出力する。
【0040】
以下、基地局装置10、測位計算サーバ装置20、及び被測位端末装置30の機能について、各装置の機能ブロック図を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
図3は、基地局装置10、測位計算サーバ装置20、及び被測位端末装置30の機能ブロックを示す概略ブロック図である。なお、同図では、簡単のため基地局装置10を1つだけ記載しているが、実際には、各基地局装置10が同様な機能ブロックを含んで構成される。
【0042】
図3に示すように、基地局装置10は、アンテナ11、測位信号受信部50、時刻送信部51、BP記憶部52、基準信号送信部53、基準信号受信部54、基準信号送信制限部55を含んで構成される。また、測位計算サーバ装置20は、距離情報記憶部21、位置決定部22を含んで構成される。さらに、被測位端末装置30は、測位信号送信部31及びアンテナ32を含んで構成される。
【0043】
測位信号送信部31は、図示しないタイマーなどによる時間的なトリガー、もしくは基地局装置10などからの測位開始命令などにより、アンテナ32を用いて、測位信号を構成するパケット(以下、測位信号パケットという。)を無線送信する。ここで、測位信号パケットは、そのデータ部に当該パケットが測位信号であることを示す情報を含むパケットである。
【0044】
測位信号受信部50は、アンテナ11を用いて、被測位端末装置30が無線送信した測位信号パケットを受信する。その際、カウンタ133を用いてその受信時刻(測位信号受信時刻)を取得し、時刻送信部51に出力する。時刻送信部51は、測位信号受信部50から入力された測位信号受信時刻を一時記憶する。
【0045】
BP記憶部52は、当該基地局装置10に割り当てられているBP(基準局プライオリティ)を記憶する。BPは、基準信号送信の優先順位を示す情報であり、予め各基地局装置10に割り当てられている。BPの具体的な内容については後述するが、一例では、0〜20の整数が、BPとして各基地局装置10に割り当てられる。
【0046】
基準信号送信部53は、BP記憶部52から当該基地局装置10に割り当てられたBPを取得し、測位信号受信部50による測位信号パケットの受信後、該BPに基づくタイミングで、アンテナ11を用いて、基準信号パケットを無線送信する。具体的な例では、基準信号送信部53は、BPに基づいて待機時間を決定し、測位信号受信部50により測位信号パケットが受信された後、決定した待機時間が経過したら、基準信号パケットを送信する。
【0047】
基準信号受信部54は、他の基地局装置10が送信した基準信号パケットを受信する。具体的には、信号処理部13(図2)により復調されたパケットのデータ部に基準信号であることを示す情報が含まれている場合に、基準信号受信部54は該パケットを基準信号パケットとして受信する。その際、カウンタ133を用いてその受信時刻(基準信号受信時刻)を取得し、時刻送信部51に出力する。時刻送信部51は、当該基地局装置10の識別情報と、基準信号受信部54から入力された基準信号受信時刻と、一時記憶していた測位信号受信時刻と、を含む受信時刻パケットを生成し、測位計算サーバ装置20に対して送信する。
【0048】
なお、基準信号受信部54は、測位信号パケット受信後一定時間内に受け取ったパケットのうち最初のものを基準信号パケットであるとみなすこととしてもよい。このようにする場合、基準信号受信部54は、信号処理部13の復調処理の完了を待たずに処理を進めることができるので、受信時刻パケット送信処理をより迅速に送信できるようになる。なお、この場合、基準信号パケットのデータ部に基準信号であることを示す情報を含めなくてもよい。
【0049】
基準信号送信制限部55は、基準信号受信部54により基準信号パケットが受信された場合に、基準信号送信部53による基準信号パケットの送信を制限する。すなわち、基準信号受信部54により基準信号パケットが受信された時点で、基準信号送信部53が未だ基準信号パケットを送信していない場合、基準信号送信部53に、基準信号パケットの送信を中止させる。
【0050】
距離情報記憶部21は、各基地局装置10相互間の距離を示す距離情報を記憶している。この距離情報は、具体的な距離であってもよいし、一方の基地局装置10から他方の基地局装置10に対して信号を送信した場合の信号到達に要する時間であってもよい。この距離情報は、ユーザにより、距離情報記憶部21に書き込まれる。
【0051】
なお、距離情報記憶部21は、各基地局装置10の位置を所定の座標系で表してなる基地局装置座標情報を記憶することとしてもよい。この場合、ユーザは、各基地局装置10の基地局装置座標情報を、距離情報記憶部21に書き込む。
【0052】
位置決定部22は、各基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻を受信すると、距離情報記憶部21から距離情報を取得し、各基地局装置10それぞれにおける基準信号パケット及び測位信号パケットの各受信タイミングと、該各基地局装置10と該基準信号パケットを送信した基地局装置10との間の距離を示す距離情報と、に基づき、被測位端末装置30の位置を決定する。
【0053】
なお、距離情報記憶部21が基地局装置座標情報を記憶している場合、位置決定部22は、各基地局装置10の基地局装置座標情報に基づいて各基地局装置10相互間の距離を算出することにより、距離情報を取得する。
【0054】
位置決定部22の処理について、詳細に説明する。図4は、位置決定部22の処理について説明するための説明図である。同図では、被測位端末装置30がタイミングT1において測位信号パケットを送信し、基地局装置10−1がタイミングT2において基準信号パケットを送信し、基地局装置10−2,3,4が測位信号パケット及び基準信号パケットの受信時刻を測位計算サーバ装置20に対して送信したものとしている。
【0055】
以下では、被測位端末装置30が測位信号パケットを送信したタイミングT1を、被測位端末装置30のクロックに基づく時刻でt0と表し、位置決定部22が基地局装置10−n(n=2,3,4)から受信した測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻をそれぞれtn及びsnとし、基地局装置10−nと基地局装置10−1との距離を示す距離情報を時間lnで表すこととする。
【0056】
位置決定部22が被測位端末装置30の位置を決定するために求めなければならないのは、被測位端末装置30が送信した測位信号パケットを受信するまでに要した時間の基地局装置10−n間での差(測位信号受信時間差)である。これを求めるための1つの方法として、位置決定部22が、まず被測位端末装置30が測位信号パケットを送信してから各基地局装置10−nで受信されるまでの時間Anを求め、さらに基地局装置10−nと基地局装置10−m(m=2,3,4。ただしm≠n。)の間での測位信号受信時間差Bm,n=An−Amを算出する方法が考えられる。しかしながら、各測位信号受信時刻tnは各基地局装置10−nのクロックに基づいて表された時刻なので、図4のように被測位端末装置30及び各基地局装置10−nの間で同期が取れていない状態ではAn=tn−t0の関係が成り立たない。このため、位置決定部22は、このような計算により時間Anを求めることはできない。従って、Bm,nを求めることもできない。
【0057】
そこで、位置決定部22は、次のようにしてBm,nを算出する。すなわち、位置決定部22は、まず、基地局装置10−1が基準信号パケットを送信したタイミングT2を、各基地局装置10−nのクロックに基づいて表す。具体的には、各基地局装置10−nについて時刻sn−lnを算出する。こうして算出された時刻sn−lnは、どの基地局装置10−nのものであっても、共通のタイミングT2を示している。
【0058】
次に、位置決定部22は、各基地局装置10−nについて、測位信号受信時刻tnから、共通のタイミングT2に対応する時刻sn−lnまでの経過時間{(sn−ln)−tn}を算出する。さらに、位置決定部22は、基地局装置10−nと基地局装置10−mの間での上記経過時間の差{(sn−ln)−tn}−{(sm−lm)−tm}を算出する。こうして算出された値は、Bm,nとなる。位置決定部22は、こうしてBm,nを算出し、算出した各Bm,nに基づいて、被測位端末装置30の位置を決定する。
【0059】
ただし、位置決定部22が各Bm,nに基づいて被測位端末装置30の位置を決定するためには、3つの基地局装置10−n相互間での測位信号受信時間差Bm,nが必要である。これが得られない場合、例えば測位信号受信時刻tnと基準信号受信時刻snの両方を送信した基地局装置10が3つに満たない場合、位置決定部22による位置決定は失敗する。
【0060】
以上説明した処理について、無線測位システム1の処理シーケンスを参照しながら、再度より詳細に説明する。
【0061】
図5は、無線測位システム1の処理シーケンスを示す図である。同図に示すように、まず被測位端末装置30が測位信号パケットを送信する(S1)。各基地局装置10は、この測位信号パケットを受信すると、その受信時刻を測定し、一時記憶する(S2)。
【0062】
また、基地局装置10は、測位信号パケットを受信すると、当該基地局装置10に割り当てられているBPを取得する(S3)。なお、基地局装置10は、BPを測位信号パケットが受信される前に取得しておいてもよい。また、基準信号パケットを送信するタイミングを示す情報(BPに基づいて決定される待機時間)を、測位信号パケットが受信される前に取得しておいてもよい。このようにすれば、測位信号パケットを受信してからの基地局装置10の処理を少なくすることができるので、基準信号パケットの送信遅延が抑制される。これは、測位信号パケット受信後直ちに(反射的に)基準信号を送信しようとする場合などには特に有効である。
【0063】
次に、基地局装置10は、BPに基づいて決定した待機時間だけ基準信号パケットの送信を待機し(S4)、待機時間の経過後基準信号パケットを送信する(S5)。他の基地局装置10から基準信号パケットを受信した基地局装置10は、該基準信号パケットの受信時刻を測定し、一時記憶していた測位信号パケットの受信時刻とともに測位計算サーバ装置20に対して送信する(S6)とともに、基準信号パケットの送信を取りやめる。
【0064】
測位計算サーバ装置20は、基地局装置10相互間の距離を示す距離情報を取得し(S7)、該距離情報と、各基地局装置10から受信した測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻とに基づき、被測位端末装置30の位置を決定する(S8)。
【0065】
次に、基地局装置10の処理に着目し、再度より詳細に説明する。
【0066】
図6は、基地局装置10の処理フローを示す図である。同図に示すように、基地局装置10は、測位信号パケットを受信すると(S11)、自装置内のカウンタ133に基づいて測位信号受信時刻を測定し、一時記憶する(S12)。次に、基地局装置10はBPに基づいて決定される待機時間t_wait_syncを取得し、該待機時間t_wait_syncが経過するまでの間、他の基地局装置10からの基準信号パケットの到来を待つ(S13)。なお、待機時間t_wait_syncは、BPに基づいて決定される待機時間に、例えばガウス分布に従うランダム値に基づいて決定される時間(正又は負)を加算したものとしてもよい。
【0067】
S13の待機中に基準信号パケットが受信された場合(S14の肯定判定)、基地局装置10は、その受信時刻を測定し、一時記憶していた測位信号受信時刻とともに測位計算サーバ装置20に対して送信し(S16)、処理を終了する。一方、受信されなかった場合、基地局装置10は基準信号パケットを送信し(S15)、処理を終了する。なお、S17において送信を待機するのは、測位対象エリア内に同一のBPが割り当てられた基地局装置10が存在することがあるからである。ランダム値に基づいて決定される待ち時間だけ待機するのが最適であるが、この待ち時間は、BPに基づいて決定される待機時間を逆転させないような範囲で設定される。
【0068】
次に、測位計算サーバ装置20の処理に着目し、再度より詳細に説明する。
【0069】
図7は、測位計算サーバ装置20の処理フローを示す図である。同図に示すように、測位計算サーバ装置20は、まず各基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻を受信する(S21)。そして、1つ目の測位信号受信時刻受信タイミングから所定時間内に3つ以上の基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻を受信したか否かを判定する(S22)。
【0070】
S22において受信しなかったと判定した場合、測位計算サーバ装置20は測位NGと判定し(S23)、処理を終了する。位置決定のためには3つ以上の基地局装置10相互間について測位信号受信時間差が必要であるからである。
【0071】
一方、S22において受信したと判定した場合、測位計算サーバ装置20は距離情報を取得し(S24)、被測位端末装置30の位置を決定し(S25)、処理を終了する。
【0072】
以上説明したように、無線測位システム1によれば、各基地局装置10は優先順位BPに基づくタイミングで基準信号パケットを送信しているので、基地局装置10を複数設置したとしても、基準信号パケットの衝突の発生が防止される。すなわち、基準局装置として機能する基地局装置10を複数設置することが可能になる。
【0073】
また、各基地局装置10は、他の基地局装置10から基準信号パケットが受信された場合には送信を制限しているので、基準信号パケットの衝突がより確実に防止される。
【0074】
さらに、無線測位システム1では、基地局装置10をアクセスポイント装置としても機能させることができる。
【0075】
次に、BPの具体的な内容及びその決定方法について説明する。なお、以下では、0〜20の整数をBPとして使用し、BP0が最も高い優先順位を示す値(最高値)であり、BPの値が大きくなるに従い、基準信号送信の優先順位が下がるものとする。
【0076】
BPは、各基地局装置10の座標、各基地局装置10の周辺環境(通信可能な基地局装置10の台数やこれらの基地局装置10の座標)、アンテナ11の指向性、及び被測位端末装置30の予測座標、位置決定部22による位置決定の結果(測位結果)のうちのいずれか1つ若しくはこれらの組み合わせに基づいて決定される。また、BPは、少なくとも隣接する2つの基地局装置10や互いに通信可能な2つの基地局装置10に同一のBPが割り当てられることのないよう、決定される。以下、具体的に説明する。
【0077】
図8は、BPの決定処理にかかる基地局装置10及び測位計算サーバ装置20の機能ブロックを示す概略ブロック図である。なお、同図では、図3と同様に、簡単のため基地局装置10を1つだけ記載しているが、実際には、各基地局装置10が同様な機能ブロックを含んで構成される。
【0078】
図8に示すように、基地局装置10は、図3にも示したアンテナ11及びBP記憶部52に加え、テスト制御部56、試験信号送信部57、試験信号受信部58を含んで構成される。また、測位計算サーバ装置20は、図3にも示した位置決定部22に加え、測位結果情報記憶部23、座標情報記憶部24、通信距離情報記憶部25、アンテナ放射パターン情報記憶部26、位置情報記憶部27、BP算出部28を含んで構成される。
【0079】
測位結果情報記憶部23は、基地局装置10ごとに、位置決定部22による位置決定成功数と、同失敗数と、を示す測位結果情報を記憶する。位置決定部22は、上述のようにして被測位端末装置30の位置を決定するが、位置決定の都度、基準信号パケットを送信した基地局装置10について、該位置決定の結果(成功又は失敗)に基づき、測位結果情報記憶部23に記憶される測位結果情報を更新する。
【0080】
座標情報記憶部24は、測位対象エリア(部屋)の形状や広さを所定の座標系で表してなる測位対象エリア座標情報と、各基地局装置10の位置を該座標系で表してなる基地局装置座標情報と、を記憶する。各座標情報は、ユーザにより、座標情報記憶部24に書き込まれる。
【0081】
通信距離情報記憶部25は、各基地局装置10の通信可能距離を示す通信距離情報を記憶する。通常、通信可能距離は基地局装置10ごとに異なるものではないので、通信距離情報記憶部25は通信距離情報を1つだけ記憶する。ただし、通信可能距離が基地局装置10ごとに異なる場合には、通信距離情報記憶部25は、基地局装置10ごとに通信距離情報を記憶することが望ましい。
【0082】
アンテナ放射パターン情報記憶部26は、各基地局装置10に備えられるアンテナ11の放射パターン(アンテナ指向性)を示すアンテナ放射パターン情報を記憶する。通常、アンテナ11の放射パターンはアンテナ11ごとに異なるものではないので、アンテナ放射パターン情報記憶部26はアンテナ放射パターン情報を1つだけ記憶する。ただし、アンテナ11の放射パターンがアンテナ11ごとに異なる場合には、アンテナ放射パターン情報記憶部26は、基地局装置10ごとにアンテナ放射パターン情報を記憶することが望ましい。
【0083】
なお、座標情報記憶部24、通信距離情報記憶部25、及びアンテナ放射パターン情報記憶部26に記憶される各情報は、ユーザが測位計算サーバ装置20に書き込むこととしてもよいし、各基地局装置10がそれぞれ自装置分について記憶している情報であることとしてもよい。後者の場合、各基地局装置10が測位計算サーバ装置20に上記各情報を送信する。
【0084】
位置情報記憶部27は、被測位端末装置30の位置を上記座標系で表してなる被測位端末装置位置情報を記憶する。この被測位端末装置位置情報は、ユーザにより、座標情報記憶部24に書き込まれることとしてもよい。または、位置情報記憶部27は、過去に位置決定部22により決定された被測位端末装置30の位置を上記座標系で表してなる情報を、被測位端末装置位置情報として記憶することとしてもよい。
【0085】
テスト制御部56は、後述するBP算出部28からの指示に従い、所定の試験信号を無線送信するよう、試験信号送信部57に指示する。試験信号送信部57は、テスト制御部56からの指示に従い、アンテナ11を用いて、上記試験信号を無線送信する。
【0086】
試験信号受信部58は、他の基地局装置10が送信した上記試験信号を受信し、テスト制御部56に出力する。テスト制御部56は、試験信号受信部58から入力された試験信号の送信元である基地局装置10を判定し、該基地局装置10と当該基地局装置10とは通信可能であると判定する。テスト制御部56は、こうして得た判定結果をBP算出部28に出力する。
【0087】
BP算出部28は、測位結果情報記憶部23に記憶される測位結果情報、座標情報記憶部24に記憶される各座標情報、通信距離情報記憶部25に記憶される通信距離情報、アンテナ放射パターン情報記憶部26に記憶されるアンテナ放射パターン情報、位置情報記憶部27に記憶される位置情報を取得する。また、BP算出部28は、BPを算出しようとする際、テスト制御部56に対して試験信号の無線送信を指示し、その結果入力される判定結果を示す判定結果情報を取得する。そして、BP算出部28は、このようにして取得される測位結果情報、測位対象エリア座標情報、基地局装置座標情報、通信距離情報、アンテナ放射パターン情報、被測位端末装置位置情報、判定結果情報の一部又は全てに基づき、各基地局装置10のBPを算出し、算出結果に基づいて、各基地局装置10のBPを決定する。
【0088】
BP算出部28によるBPの算出について、いくつかの例を挙げながら、具体的に説明する。
【0089】
1つ目の例は、測位対象エリア座標情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。図9は、この例について説明するための説明図である。同図に示す例では、測位対象エリアは2つの長方形を結合した形状をしており、6つの頂点を有している。測位対象エリア座標情報は各頂点の座標により構成されており、ここでは、順に(0,0)、(0,100)、(120,100)、(120,40)、(200,40)、(200,0)である。
【0090】
1つの例では、BP算出部28は、上記各頂点の座標に基づき、測位対象エリアの最大辺中心位置を決定する。例えば、図9では、図面横方向の最大辺及び図面縦方向の最大辺が、それぞれ図面上側の辺及び図面上側の辺となるので、これらの中心である最大辺中心位置は図9に示される位置A(100,50)となる。BP算出部28は、この位置Aと、基地局装置座標情報により示される各基地局装置10の位置と、に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、位置Aに近いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0091】
また、他の1つの例では、BP算出部28は、上記各頂点の座標に基づき、測位対象エリアの隅々まで見通すことのできる位置を決定する。例えば、図9に示される位置B(120,40)がこの位置に該当する。そして、BP算出部28は、この位置Bと、基地局装置座標情報により示される各基地局装置10の位置と、に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、位置Bに近いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0092】
また、さらに他の1つの例では、BP算出部28は、各基地局装置10について測位対象エリアの隅との近接度を算出し、算出した近接度に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、測位対象エリアの隅に近いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。或いは、通信においては、直接電波が到達可能、すなわち見通せることが重要となることから、BP算出部28は、各基地局装置10についての見通し可能な角(隅)の数に基づいてBPを進出することとしてもよい。
【0093】
2つ目の例は、通信距離情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。図10は、この例について説明するための説明図である。同図に示す例における測位対象エリアは図9のものと同様である。また、各基地局装置10は図10に示すように配置されており、通信距離情報により示される各基地局装置10の通信可能距離が60であるとする。なお、この通信可能距離は、シミュレーション検討結果や過去の実測データを踏まえて設定されるものである。
【0094】
BP算出部28は、基地局装置座標情報を用い、各基地局装置10について、その位置から通信可能距離60の範囲内にある他の基地局装置10の数を取得する。例えば、基地局装置10−5から通信可能距離60の範囲(図10では円D5で示している。)内には4つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−5について4を取得する。同様に、基地局装置10−7から通信可能距離60の範囲(図10では円D7で示している。)内には1つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−7について1を取得する。そして、BP算出部28は、こうして取得した基地局装置10の数に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、取得した基地局装置10の数が多いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0095】
3つ目の例は、アンテナ放射パターン情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。図11は、この例について説明するための説明図である。同図に示す例における測位対象エリアは図9及び図10のものと同様である。また、基地局装置10の配置は図10と同様である。
【0096】
BP算出部28は、アンテナ放射パターン情報及び基地局装置座標情報を用い、各基地局装置10について、そのアンテナ11から放射される電波の到達範囲内にある他の基地局装置10の数を取得する。例えば、基地局装置10−5のアンテナ11から放射される電波の到達範囲(図10では閉曲線P5で示している。)内には1つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−5について1を取得する。同様に、基地局装置10−7のアンテナ11から放射される電波の到達範囲(図10では閉曲線P7で示している。)内には2つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−5について2を取得する。
【0097】
4つ目の例は、判定結果情報に基づくBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、判定結果情報に基づき、各基地局装置10について、通信可能な他の基地局装置10の数を取得する。そして、BP算出部28は、取得した基地局装置10の数に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、取得した基地局装置10の数が多いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0098】
5つ目の例は、被測位端末装置位置情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、被測位端末装置位置情報及び基地局装置座標情報に基づき、各基地局装置10について、被測位端末装置30との距離を算出する。そして、BP算出部28は、算出した距離に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、算出した距離が短いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0099】
6つ目の例は、測位結果情報に基づくBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、測位結果情報に基づき、過去に各基地局装置10が基準局装置として関わった位置決定が成功した割合を基地局装置10ごとに算出し、算出した割合に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、算出した割合が高いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0100】
7つ目の例は、上記各例の組み合わせによるBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、上記各例により算出したBPを基地局装置10ごとに合計し、規格化した上で、各基地局装置10のBPとする。なお、BP算出部28は、上記各例により算出したBPに所定の重み付けをした上で、それらの合計を算出してもよい。
【0101】
なお、BP算出部28は、以上のようにして算出したBPが、互いに通信可能な2つの基地局装置10の間で同じ値となった場合、いずれか少なくとも一方のBPを変更し、同じ値とならないようにすることが望ましい。
【0102】
BP算出部28は、以上のようにして算出した各基地局装置10についてのBPを、各基地局装置10のBP記憶部52に書き込む。なお、BP算出部28は、BPの算出及びBP記憶部52への書き込みを1度だけ行うのではなく、定期的なタイミングや基地局装置10の配置が変更となったタイミングなど、適宜のタイミングで繰り返し行うことが望ましい。特に、判定結果情報や測位結果情報に基づくBPの算出を繰り返し行うことにより、ある時点からBPの高い基地局装置10の周りに電波の遮蔽物が設置された場合や、なんらかの理由で特定の基地局装置10の性能が劣化したなどに、適切にBPを更新していくことができるようになる。
【0103】
最後に、BPに基づくタイミングでの基準信号送信について、包括的な観点から再度説明を行う。図12は、BPによる基準信号送信タイミングの相違を説明するための説明図である。同図(a)は、BPが上述した最高値である基地局装置10の基準信号送信タイミングを、同図(b)は、最高値でない基地局装置10の基準信号送信タイミングを、それぞれ示している。
【0104】
例えば測位対象エリアの真ん中あたりに設置された基地局装置10に、BPの最高値0が割り当てられるとする。最高値0のBPを割り当てられた基地局装置10は、測位信号パケットを受信後、反射的に基準信号パケットを送信する(図12(a))。一方、最高値でないBPを割り当てられた基地局装置10は、測位信号パケットを受信後、BPに応じた時間内で基準信号パケットを待ち受ける。そして、基準信号パケットが受信されない場合には基準信号パケットを送信する(図12(b))が、基準信号パケットが受信された場合には、基準信号パケットを送信しない。
【0105】
また、最高値0のBPがいずれの基地局装置10にも割り当てられない場合も考えられる。この場合にも、測位信号パケットを受信した各基地局装置10は、BPに応じた時間内で基準信号パケットを待ち受ける。そして、基準信号パケットが受信されない場合には基準信号パケットを送信する(図12(b))が、基準信号パケットが受信された場合には、基準信号パケットを送信しない。
【0106】
これらいずれの場合においても、BPが同一の値が割り当てられた基地局装置10が存在する場合があり得る。そこで、本実施形態では、各基地局装置10は、BPに応じた時間内で基準信号パケットを待ち受け、さらにランダム値に基づく時間だけ待った後、基準信号パケットを送信するようにしている。
【0107】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、被測位端末装置30が測位信号を送信する場合に本発明を適用したが、各基地局装置10が測位信号を送信する場合に適用することも可能である。この場合、位置決定部22は、各基地局装置10から各基地局装置10のクロックに基づいて測定された測位信号送信時刻及び基準信号受信時刻を受信し、被測位端末装置30から該被測位端末装置30のクロックに基づいて測定された各測位信号の受信時刻を受信する。位置決定部22は、こうして受信した各時刻に基づき、次のようにして各基地局装置10間での測位信号受信時間差を算出し、算出した測位信号受信時間差に基づいて、被測位端末装置30の位置を決定する。
【0108】
すなわち、位置決定部22は、基地局装置10−nと基地局装置10−m(m≠n)の間での測位信号受信時間差Bm,nを、{(sn−ln)−tns}−{(sm−lm)−tms}−(tnr−tmr)により算出する。ただし、基地局装置10−nについての測位信号送信時刻をtns、同基準信号受信時刻をsn、同測位信号の受信時刻をtnr、基地局装置10−nと基準信号パケットを送信した基地局装置10との距離を示す距離情報を時間の単位でlnとし、基地局装置10−mについての測位信号送信時刻をtms、同基準信号受信時刻をsm、同測位信号の受信時刻をtmr、基地局装置10−mと基準信号パケットを送信した基地局装置10との距離を示す距離情報を時間の単位でlmとする。このように、各基地局装置10が測位信号を送信する場合についても、本発明を適用することができる。
【0109】
また、上記実施形態では被測位端末装置30は1つであるとして説明したが、実際には複数の被測位端末装置30があることが多い。このような場合、位置情報記憶部27は、上記被測位端末装置位置情報を、被測位端末装置30ごとに記憶する。BP算出部28は、被測位端末装置30ごとに、該被測位端末装置30について位置情報記憶部27に記憶される被測位端末装置位置情報に基づいてBPを算出し、BP記憶部52も被測位端末装置30ごとにBPを記憶する。そして、基準信号送信部53は、測位信号を送信した被測位端末装置30を判定し、該被測位端末装置30についてBP記憶部52に記憶されるBPに基づいて、基準信号送信タイミングを決定する。
【0110】
また、上記実施形態では測位信号送信時刻と基準信号受信時刻の両方を1つのパケットにまとめて送信したが、別々のパケットに含めて送信することとしてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、各基地局装置10に割り当てるBPの算出を測位計算サーバ装置20で行ったが、いずれかの基地局装置10で行うこととしてもよい。この場合、BPの算出を行った基地局装置10は、算出したBPを測位計算サーバ装置20に対し送信し、測位計算サーバ装置20は、受信したBPを他の基地局装置10のBP記憶部52に書き込むようにすることが好適である。
【0112】
また、基地局装置10、測位計算サーバ装置20、被測位端末装置30の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上記各処理を行ってもよい。
【0113】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、この「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0114】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0115】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0116】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0117】
さらに、上記プログラムは、上述した各機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した各機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態にかかる無線測位システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる基地局装置のハードウェア構成図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる基地局装置、測位計算サーバ装置、及び被測位端末装置の機能ブロックを示す概略ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる位置決定部の処理について説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる無線測位システムの処理シーケンスを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる基地局装置の処理フローを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる測位計算サーバ装置の処理フローを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかるBPの決定処理にかかる基地局装置及び測位計算サーバ装置の機能ブロックを示す概略ブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる位対象エリア座標情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例について説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施の形態にかかる通信距離情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例について説明するための説明図である。
【図11】本発明の実施の形態にかかるアンテナ放射パターン情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例について説明するための説明図である。
【図12】本発明の実施の形態にかかるBPによる基準信号送信タイミングの相違を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0119】
1 無線測位システム、
10 基地局装置、
11 アンテナ、
12 無線部、
13 信号処理部、
20 測位計算サーバ装置、
21 距離情報記憶部、
22 位置決定部、
23 測位結果情報記憶部、
24 座標情報記憶部、
25 通信距離情報記憶部、
26 アンテナ放射パターン情報記憶部、
27 位置情報記憶部、
28 BP算出部、
30 被測位端末装置、
31 測位信号送信部、
32 アンテナ、
40 ネットワーク、
50 測位信号受信部、
51 時刻送信部、
52 BP記憶部、
53 基準信号送信部、
54 基準信号受信部、
55 基準信号送信制限部、
56 テスト制御部、
57 試験信号送信部、
58 試験信号受信部、
131 マイクロコントローラ、
132 記憶媒体、
133 カウンタ、
134 ベースバンド信号処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線測位システム、基地局装置、測位方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被測位物(移動局装置など)からの測位信号を3つ以上のアクセスポイント装置で受信することで測位を行う無線測位システムが知られている。具体的な例としては、室内に多数のアクセスポイント装置を設置しておき、被測位物からの測位信号をそのうち3つ以上のアクセスポイント装置で受信することにより、該被測位物の室内での位置を測位するものが挙げられる。なお、非特許文献1には、このような測位の原理についての説明が示されている。
【0003】
非特許文献1に示されるように、上記無線測位システムは、各アクセスポイント装置の位置と、被測位物が送信した測位信号を受信するまでに要した時間のアクセスポイント装置間での差(以下、測位信号受信時間差という。)と、に基づいて被測位物の位置を算出する。
【0004】
上記測位信号受信時間差の算出について説明する。まず、各アクセスポイント装置は、自身で保持しているクロックに基づいて、測位信号の受信時刻を測定する。上記無線測位システムは、この受信時刻の差を算出し、上記測位信号受信時間差とする。ただし、このような処理により正しく上記測位信号受信時間差を算出するためには、各アクセスポイント装置における測位信号の受信時刻を、共通のタイミングを基準とする時刻表記を用いて表す必要がある。そこで、各アクセスポイント装置は、共通のタイミングを共有するための処理(時刻同期処理という。)を行う。
【0005】
特許文献1には、上記時刻同期処理の例が開示されている。この例では、時刻同期用の信号(基準信号という。)を送信する基準局装置が1つ設けられる。基準局装置は、アクセスポイント装置同様測位信号を受信し、測位信号を受信すると直ちに基準信号を送信する。各アクセスポイント装置は予め基準局装置との間の距離を記憶しており、基準局装置が送信した基準信号を受信して、その受信タイミングと、記憶している距離と、に基づき、上記共通のタイミングを取得する。そして、取得したタイミングを基準とする時刻表記を用いて、測位信号の受信時刻を取得する。
【非特許文献1】Rick Roberts他、「Ranging Subcommittee Final Report(測位小委員会最終報告)」、IEEE P802.15、米国、IEEE(米国に本部がある電気電子学会)、2004年11月22日、P802.15、p. 3-9
【特許文献1】特開2005−140617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術による場合、基準局装置を、測位対象エリア内のどの位置からも測位信号を受信可能な位置であって、かつ基準信号が全てのアクセスポイント装置に到達可能な位置に設置しなければならないため、設置位置の選定が容易でなく、かつ測位対象エリアの広さが限定されるという問題があった。また、このような設置位置の制限があるため、一旦各装置の設置が完了した後、アクセスポイント装置を増設することもまた容易でないという問題もあった。
【0007】
これらの問題は基準局装置を複数設置することによって解決されるようにも見えるが、上記特許文献1に記載の技術には、複数の基準局装置を設置することはできないという問題もあった。すなわち、複数の基準局装置を設置すると、1の測位信号を複数の基準局装置が受信し、結果としてアクセスポイント装置が2以上の基準信号を受信してしまうことがある(これを基準信号の衝突という。)。こうなると、各アクセスポイント装置は基準とする共通のタイミングを適切に取得できなくなってしまう。
【0008】
従って、本発明の課題の一つは、基準信号の衝突発生を防止することによって基準局装置の複数設置を可能とする無線測位システム、基地局装置、測位方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明にかかる無線測位システムは、複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムであって、前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、前記各基地局装置は、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段と、前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信手段と、他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信手段と、を含み、当該無線測位システムは、前記各基地局装置において取得された前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに基づいて、前記被測位物の位置を決定する位置決定手段、を含む、ことを特徴とする。
【0010】
これによれば、各基地局装置は優先順位に基づくタイミングで基準信号を送信しているので、基地局装置を複数設置したとしても、基準信号の衝突の発生が防止される。すなわち、基準局装置として機能する基地局装置を複数設置することが可能になる。
【0011】
また、上記無線測位システムにおいて、前記各基地局装置は、前記基準信号受信手段により前記基準信号が受信された場合に、前記基準信号送信手段による前記基準信号の送信を制限する基準信号送信制限手段、を含む、こととしてもよい。
【0012】
これによれば、各基地局装置は、他の基地局装置から基準信号が受信された場合には送信を制限しているので、基準信号の衝突がより確実に防止される。
【0013】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記各基地局装置相互間の距離を示す距離情報を取得する距離情報取得手段、を含み、前記位置決定手段は、前記各基地局装置において取得された前記基準信号及び前記測位信号の各受信時刻と、該各基地局装置と該基準信号を送信した前記基地局装置との間の距離を示す距離情報と、に基づき、前記被測位物の位置を決定する、こととしてもよい。
【0014】
これによれば、距離情報に基づいて被測位物の位置を決定できる。
【0015】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、測位対象エリアの形状及び広さと、前記各基地局装置の設置位置と、に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0016】
これによれば、1つの基地局装置により送信された基準信号が到達する基地局装置の数が多くなることが期待できる。
【0017】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、前記各基地局装置が通信可能な他の基地局装置の数に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0018】
これによっても、1つの基地局装置により送信された基準信号が到達する基地局装置の数が多くなることが期待できる。
【0019】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、前記各基地局装置のアンテナ放射パターンに基づいて決定される、こととしてもよい。
【0020】
これによっても、1つの基地局装置により送信された基準信号が到達する基地局装置の数が多くなることが期待できる。
【0021】
また、上記各無線測位システムにおいて、当該無線測位システムは、複数の被測位物それぞれの位置を予め記憶する記憶手段、を含み、前記優先順位は、該各被測位物それぞれについて前記記憶手段により記憶される位置に基づいて、前記被測位物ごとに決定される、こととしてもよい。
【0022】
これによれば、各被測位物について記憶している位置(=各被測位物が在りそうな位置)に基づいて、被測位物ごとに優先順位が決定されるので、効率的な基準信号の送信を実現することができる。
【0023】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記優先順位は、前記各基地局装置のいずれかが前記測位信号を受信した場合における、前記位置決定手段による位置決定が完了する割合に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0024】
これによれば、過去に上手く位置決定できた割合の高い優先順位を、後に利用することができるようになる。
【0025】
また、上記各無線測位システムにおいて、前記各基地局装置相互間で所定の試験信号を送受信し、前記優先順位は、その通信状況に基づいて決定される、こととしてもよい。
【0026】
これによれば、例えば、試験信号を好適に送受信可能な他の基地局装置の数が多い基地局装置ほど、優先順位を上げるようにすることができる。
【0027】
また、本発明にかかる基地局装置は、当該基地局装置に割り当てられた基準信号送信の優先順位を取得する優先順位取得手段と、被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得手段により取得される優先順位と、に基づくタイミングで、基準信号を送信する基準信号送信手段と、を含むことを特徴とする。
【0028】
また、本発明にかかる測位方法は、複数の基地局装置を含む無線測位システムを用いて被測位物の位置を測位するための測位方法であって、前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、前記各基地局装置が、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得ステップと、前記各基地局装置が、前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信ステップと、前記各基地局装置が、前記測位信号受信ステップにおける前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得ステップにおいて取得される優先順位と、に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信ステップと、他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信ステップと、を含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明にかかるプログラムは、複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムにおいて、1又は複数のコンピュータを前記各基地局装置として機能させるためのプログラムであって、前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、前記各コンピュータを、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、前記被測位物から受信される測位信号の受信時刻を取得する測位信号受信時刻取得手段、前記測位信号が受信された後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、送信手段に前記基準信号を送信させる基準信号送信制御手段、及び前記クロックに基づき、他の前記基地局装置から受信される前記基準信号の受信時刻を取得する基準信号受信手段、としてさらに機能させるためのプログラムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態にかかる無線測位システム1のシステム構成図である。同図に示すように、無線測位システム1は、複数の基地局装置10(図1では、基地局装置10−1から基地局装置10−6までの6つの基地局装置10を示している。)、測位計算サーバ装置20、被測位物としての被測位端末装置30、及びネットワーク40を含んで構成される。
【0032】
各基地局装置10は、ここではある部屋(本実施の形態における測位対象エリア)の中に分散設置されており、ネットワーク40を介して測位計算サーバ装置20と通信可能に構成されている。また、各基地局装置10は、被測位端末装置30が放射状に無線送信する測位信号(図1においては、この測位信号を矢印Rで示している。)を受信する。
【0033】
さらに、各基地局装置10は、相互間で無線通信を行うことができるように構成される。具体的には、基地局装置10間の時刻同期をとるための基準信号(同期信号。図1においては、この基準信号を矢印Bで示している。)を、基地局装置10相互間で無線送受信可能に構成される。
【0034】
各基地局装置10は現在時刻を取得するための計時手段を備えており、該計時手段を用いて測位信号受信時刻や基準信号送受信時刻を取得し、測位計算サーバ装置20に送信する処理も行う。
【0035】
測位計算サーバ装置20は、各基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号送受信時刻を受信し、これらに基づいて、被測位端末装置30の位置を算出する。
【0036】
以下、基地局装置10のハードウェア構成について説明する。図2は、基地局装置10のハードウェア構成図である。同図に示すように、基地局装置10は、アンテナ11、無線部(RF; Radio Frequency)12、信号処理部(DSP; Digital Signal Processing unit)13を含んで構成される。また、信号処理部13は、その内部にマイクロコントローラ(MPU; Micro Processing Unit)131、記憶媒体(MEM; Memory)132、カウンタ(COUNT; Counter)133、ベースバンド信号処理部(BB; Base Band)134を含んで構成される。
【0037】
信号処理部13は、パケット生成処理、演算処理、信号処理(変復調など)、及び計時処理の各処理を行う。具体的には、マイクロコントローラ131は、種々の演算処理及び上記各処理中の状態遷移管理を行う。カウンタ133は、図示しないクロックが発振するタイミングパルスをカウントすることにより、現在時刻を取得するための計時処理を行う。
【0038】
ベースバンド信号処理部134は、パケット生成処理と、データの変復調や拡散・逆拡散などベースバンドの信号処理と、を行う。このパケット生成処理に関し、記憶媒体132は、当該基地局装置10の上記部屋の中における位置を示す座標、後述する基地局プライオリティ(BP)、当該基地局装置10の識別情報(ID)などを格納しており、ベースバンド信号処理部134は、この記憶媒体132に記憶される情報に基づいてパケットを生成する。より具体的には、上記基準信号を構成するパケット(以下、基準信号パケットという。)や、上記測位信号受信時刻及び上記基準信号送受信時刻を含むパケット(以下、受信時刻パケットという。)を生成する。ここで、各パケットはプリアンブル部、ヘッダ部、及びデータ部から構成されており、基準信号パケットは、そのデータ部に当該パケットが基準信号であることを示す情報を含む。また、受信時刻パケットは、そのデータ部に各受信時刻を含む。
【0039】
無線部12は、信号処理部13によって生成・変調されたパケットの入力を受け付け、増幅及び周波数変換の各処理を施した上で、アンテナ11を介して空中に放射する。また、アンテナ11に到来した信号の入力を受け付け、増幅及び周波数変換の各処理を施した上で、信号処理部13に出力する。
【0040】
以下、基地局装置10、測位計算サーバ装置20、及び被測位端末装置30の機能について、各装置の機能ブロック図を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
図3は、基地局装置10、測位計算サーバ装置20、及び被測位端末装置30の機能ブロックを示す概略ブロック図である。なお、同図では、簡単のため基地局装置10を1つだけ記載しているが、実際には、各基地局装置10が同様な機能ブロックを含んで構成される。
【0042】
図3に示すように、基地局装置10は、アンテナ11、測位信号受信部50、時刻送信部51、BP記憶部52、基準信号送信部53、基準信号受信部54、基準信号送信制限部55を含んで構成される。また、測位計算サーバ装置20は、距離情報記憶部21、位置決定部22を含んで構成される。さらに、被測位端末装置30は、測位信号送信部31及びアンテナ32を含んで構成される。
【0043】
測位信号送信部31は、図示しないタイマーなどによる時間的なトリガー、もしくは基地局装置10などからの測位開始命令などにより、アンテナ32を用いて、測位信号を構成するパケット(以下、測位信号パケットという。)を無線送信する。ここで、測位信号パケットは、そのデータ部に当該パケットが測位信号であることを示す情報を含むパケットである。
【0044】
測位信号受信部50は、アンテナ11を用いて、被測位端末装置30が無線送信した測位信号パケットを受信する。その際、カウンタ133を用いてその受信時刻(測位信号受信時刻)を取得し、時刻送信部51に出力する。時刻送信部51は、測位信号受信部50から入力された測位信号受信時刻を一時記憶する。
【0045】
BP記憶部52は、当該基地局装置10に割り当てられているBP(基準局プライオリティ)を記憶する。BPは、基準信号送信の優先順位を示す情報であり、予め各基地局装置10に割り当てられている。BPの具体的な内容については後述するが、一例では、0〜20の整数が、BPとして各基地局装置10に割り当てられる。
【0046】
基準信号送信部53は、BP記憶部52から当該基地局装置10に割り当てられたBPを取得し、測位信号受信部50による測位信号パケットの受信後、該BPに基づくタイミングで、アンテナ11を用いて、基準信号パケットを無線送信する。具体的な例では、基準信号送信部53は、BPに基づいて待機時間を決定し、測位信号受信部50により測位信号パケットが受信された後、決定した待機時間が経過したら、基準信号パケットを送信する。
【0047】
基準信号受信部54は、他の基地局装置10が送信した基準信号パケットを受信する。具体的には、信号処理部13(図2)により復調されたパケットのデータ部に基準信号であることを示す情報が含まれている場合に、基準信号受信部54は該パケットを基準信号パケットとして受信する。その際、カウンタ133を用いてその受信時刻(基準信号受信時刻)を取得し、時刻送信部51に出力する。時刻送信部51は、当該基地局装置10の識別情報と、基準信号受信部54から入力された基準信号受信時刻と、一時記憶していた測位信号受信時刻と、を含む受信時刻パケットを生成し、測位計算サーバ装置20に対して送信する。
【0048】
なお、基準信号受信部54は、測位信号パケット受信後一定時間内に受け取ったパケットのうち最初のものを基準信号パケットであるとみなすこととしてもよい。このようにする場合、基準信号受信部54は、信号処理部13の復調処理の完了を待たずに処理を進めることができるので、受信時刻パケット送信処理をより迅速に送信できるようになる。なお、この場合、基準信号パケットのデータ部に基準信号であることを示す情報を含めなくてもよい。
【0049】
基準信号送信制限部55は、基準信号受信部54により基準信号パケットが受信された場合に、基準信号送信部53による基準信号パケットの送信を制限する。すなわち、基準信号受信部54により基準信号パケットが受信された時点で、基準信号送信部53が未だ基準信号パケットを送信していない場合、基準信号送信部53に、基準信号パケットの送信を中止させる。
【0050】
距離情報記憶部21は、各基地局装置10相互間の距離を示す距離情報を記憶している。この距離情報は、具体的な距離であってもよいし、一方の基地局装置10から他方の基地局装置10に対して信号を送信した場合の信号到達に要する時間であってもよい。この距離情報は、ユーザにより、距離情報記憶部21に書き込まれる。
【0051】
なお、距離情報記憶部21は、各基地局装置10の位置を所定の座標系で表してなる基地局装置座標情報を記憶することとしてもよい。この場合、ユーザは、各基地局装置10の基地局装置座標情報を、距離情報記憶部21に書き込む。
【0052】
位置決定部22は、各基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻を受信すると、距離情報記憶部21から距離情報を取得し、各基地局装置10それぞれにおける基準信号パケット及び測位信号パケットの各受信タイミングと、該各基地局装置10と該基準信号パケットを送信した基地局装置10との間の距離を示す距離情報と、に基づき、被測位端末装置30の位置を決定する。
【0053】
なお、距離情報記憶部21が基地局装置座標情報を記憶している場合、位置決定部22は、各基地局装置10の基地局装置座標情報に基づいて各基地局装置10相互間の距離を算出することにより、距離情報を取得する。
【0054】
位置決定部22の処理について、詳細に説明する。図4は、位置決定部22の処理について説明するための説明図である。同図では、被測位端末装置30がタイミングT1において測位信号パケットを送信し、基地局装置10−1がタイミングT2において基準信号パケットを送信し、基地局装置10−2,3,4が測位信号パケット及び基準信号パケットの受信時刻を測位計算サーバ装置20に対して送信したものとしている。
【0055】
以下では、被測位端末装置30が測位信号パケットを送信したタイミングT1を、被測位端末装置30のクロックに基づく時刻でt0と表し、位置決定部22が基地局装置10−n(n=2,3,4)から受信した測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻をそれぞれtn及びsnとし、基地局装置10−nと基地局装置10−1との距離を示す距離情報を時間lnで表すこととする。
【0056】
位置決定部22が被測位端末装置30の位置を決定するために求めなければならないのは、被測位端末装置30が送信した測位信号パケットを受信するまでに要した時間の基地局装置10−n間での差(測位信号受信時間差)である。これを求めるための1つの方法として、位置決定部22が、まず被測位端末装置30が測位信号パケットを送信してから各基地局装置10−nで受信されるまでの時間Anを求め、さらに基地局装置10−nと基地局装置10−m(m=2,3,4。ただしm≠n。)の間での測位信号受信時間差Bm,n=An−Amを算出する方法が考えられる。しかしながら、各測位信号受信時刻tnは各基地局装置10−nのクロックに基づいて表された時刻なので、図4のように被測位端末装置30及び各基地局装置10−nの間で同期が取れていない状態ではAn=tn−t0の関係が成り立たない。このため、位置決定部22は、このような計算により時間Anを求めることはできない。従って、Bm,nを求めることもできない。
【0057】
そこで、位置決定部22は、次のようにしてBm,nを算出する。すなわち、位置決定部22は、まず、基地局装置10−1が基準信号パケットを送信したタイミングT2を、各基地局装置10−nのクロックに基づいて表す。具体的には、各基地局装置10−nについて時刻sn−lnを算出する。こうして算出された時刻sn−lnは、どの基地局装置10−nのものであっても、共通のタイミングT2を示している。
【0058】
次に、位置決定部22は、各基地局装置10−nについて、測位信号受信時刻tnから、共通のタイミングT2に対応する時刻sn−lnまでの経過時間{(sn−ln)−tn}を算出する。さらに、位置決定部22は、基地局装置10−nと基地局装置10−mの間での上記経過時間の差{(sn−ln)−tn}−{(sm−lm)−tm}を算出する。こうして算出された値は、Bm,nとなる。位置決定部22は、こうしてBm,nを算出し、算出した各Bm,nに基づいて、被測位端末装置30の位置を決定する。
【0059】
ただし、位置決定部22が各Bm,nに基づいて被測位端末装置30の位置を決定するためには、3つの基地局装置10−n相互間での測位信号受信時間差Bm,nが必要である。これが得られない場合、例えば測位信号受信時刻tnと基準信号受信時刻snの両方を送信した基地局装置10が3つに満たない場合、位置決定部22による位置決定は失敗する。
【0060】
以上説明した処理について、無線測位システム1の処理シーケンスを参照しながら、再度より詳細に説明する。
【0061】
図5は、無線測位システム1の処理シーケンスを示す図である。同図に示すように、まず被測位端末装置30が測位信号パケットを送信する(S1)。各基地局装置10は、この測位信号パケットを受信すると、その受信時刻を測定し、一時記憶する(S2)。
【0062】
また、基地局装置10は、測位信号パケットを受信すると、当該基地局装置10に割り当てられているBPを取得する(S3)。なお、基地局装置10は、BPを測位信号パケットが受信される前に取得しておいてもよい。また、基準信号パケットを送信するタイミングを示す情報(BPに基づいて決定される待機時間)を、測位信号パケットが受信される前に取得しておいてもよい。このようにすれば、測位信号パケットを受信してからの基地局装置10の処理を少なくすることができるので、基準信号パケットの送信遅延が抑制される。これは、測位信号パケット受信後直ちに(反射的に)基準信号を送信しようとする場合などには特に有効である。
【0063】
次に、基地局装置10は、BPに基づいて決定した待機時間だけ基準信号パケットの送信を待機し(S4)、待機時間の経過後基準信号パケットを送信する(S5)。他の基地局装置10から基準信号パケットを受信した基地局装置10は、該基準信号パケットの受信時刻を測定し、一時記憶していた測位信号パケットの受信時刻とともに測位計算サーバ装置20に対して送信する(S6)とともに、基準信号パケットの送信を取りやめる。
【0064】
測位計算サーバ装置20は、基地局装置10相互間の距離を示す距離情報を取得し(S7)、該距離情報と、各基地局装置10から受信した測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻とに基づき、被測位端末装置30の位置を決定する(S8)。
【0065】
次に、基地局装置10の処理に着目し、再度より詳細に説明する。
【0066】
図6は、基地局装置10の処理フローを示す図である。同図に示すように、基地局装置10は、測位信号パケットを受信すると(S11)、自装置内のカウンタ133に基づいて測位信号受信時刻を測定し、一時記憶する(S12)。次に、基地局装置10はBPに基づいて決定される待機時間t_wait_syncを取得し、該待機時間t_wait_syncが経過するまでの間、他の基地局装置10からの基準信号パケットの到来を待つ(S13)。なお、待機時間t_wait_syncは、BPに基づいて決定される待機時間に、例えばガウス分布に従うランダム値に基づいて決定される時間(正又は負)を加算したものとしてもよい。
【0067】
S13の待機中に基準信号パケットが受信された場合(S14の肯定判定)、基地局装置10は、その受信時刻を測定し、一時記憶していた測位信号受信時刻とともに測位計算サーバ装置20に対して送信し(S16)、処理を終了する。一方、受信されなかった場合、基地局装置10は基準信号パケットを送信し(S15)、処理を終了する。なお、S17において送信を待機するのは、測位対象エリア内に同一のBPが割り当てられた基地局装置10が存在することがあるからである。ランダム値に基づいて決定される待ち時間だけ待機するのが最適であるが、この待ち時間は、BPに基づいて決定される待機時間を逆転させないような範囲で設定される。
【0068】
次に、測位計算サーバ装置20の処理に着目し、再度より詳細に説明する。
【0069】
図7は、測位計算サーバ装置20の処理フローを示す図である。同図に示すように、測位計算サーバ装置20は、まず各基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻を受信する(S21)。そして、1つ目の測位信号受信時刻受信タイミングから所定時間内に3つ以上の基地局装置10から測位信号受信時刻及び基準信号受信時刻を受信したか否かを判定する(S22)。
【0070】
S22において受信しなかったと判定した場合、測位計算サーバ装置20は測位NGと判定し(S23)、処理を終了する。位置決定のためには3つ以上の基地局装置10相互間について測位信号受信時間差が必要であるからである。
【0071】
一方、S22において受信したと判定した場合、測位計算サーバ装置20は距離情報を取得し(S24)、被測位端末装置30の位置を決定し(S25)、処理を終了する。
【0072】
以上説明したように、無線測位システム1によれば、各基地局装置10は優先順位BPに基づくタイミングで基準信号パケットを送信しているので、基地局装置10を複数設置したとしても、基準信号パケットの衝突の発生が防止される。すなわち、基準局装置として機能する基地局装置10を複数設置することが可能になる。
【0073】
また、各基地局装置10は、他の基地局装置10から基準信号パケットが受信された場合には送信を制限しているので、基準信号パケットの衝突がより確実に防止される。
【0074】
さらに、無線測位システム1では、基地局装置10をアクセスポイント装置としても機能させることができる。
【0075】
次に、BPの具体的な内容及びその決定方法について説明する。なお、以下では、0〜20の整数をBPとして使用し、BP0が最も高い優先順位を示す値(最高値)であり、BPの値が大きくなるに従い、基準信号送信の優先順位が下がるものとする。
【0076】
BPは、各基地局装置10の座標、各基地局装置10の周辺環境(通信可能な基地局装置10の台数やこれらの基地局装置10の座標)、アンテナ11の指向性、及び被測位端末装置30の予測座標、位置決定部22による位置決定の結果(測位結果)のうちのいずれか1つ若しくはこれらの組み合わせに基づいて決定される。また、BPは、少なくとも隣接する2つの基地局装置10や互いに通信可能な2つの基地局装置10に同一のBPが割り当てられることのないよう、決定される。以下、具体的に説明する。
【0077】
図8は、BPの決定処理にかかる基地局装置10及び測位計算サーバ装置20の機能ブロックを示す概略ブロック図である。なお、同図では、図3と同様に、簡単のため基地局装置10を1つだけ記載しているが、実際には、各基地局装置10が同様な機能ブロックを含んで構成される。
【0078】
図8に示すように、基地局装置10は、図3にも示したアンテナ11及びBP記憶部52に加え、テスト制御部56、試験信号送信部57、試験信号受信部58を含んで構成される。また、測位計算サーバ装置20は、図3にも示した位置決定部22に加え、測位結果情報記憶部23、座標情報記憶部24、通信距離情報記憶部25、アンテナ放射パターン情報記憶部26、位置情報記憶部27、BP算出部28を含んで構成される。
【0079】
測位結果情報記憶部23は、基地局装置10ごとに、位置決定部22による位置決定成功数と、同失敗数と、を示す測位結果情報を記憶する。位置決定部22は、上述のようにして被測位端末装置30の位置を決定するが、位置決定の都度、基準信号パケットを送信した基地局装置10について、該位置決定の結果(成功又は失敗)に基づき、測位結果情報記憶部23に記憶される測位結果情報を更新する。
【0080】
座標情報記憶部24は、測位対象エリア(部屋)の形状や広さを所定の座標系で表してなる測位対象エリア座標情報と、各基地局装置10の位置を該座標系で表してなる基地局装置座標情報と、を記憶する。各座標情報は、ユーザにより、座標情報記憶部24に書き込まれる。
【0081】
通信距離情報記憶部25は、各基地局装置10の通信可能距離を示す通信距離情報を記憶する。通常、通信可能距離は基地局装置10ごとに異なるものではないので、通信距離情報記憶部25は通信距離情報を1つだけ記憶する。ただし、通信可能距離が基地局装置10ごとに異なる場合には、通信距離情報記憶部25は、基地局装置10ごとに通信距離情報を記憶することが望ましい。
【0082】
アンテナ放射パターン情報記憶部26は、各基地局装置10に備えられるアンテナ11の放射パターン(アンテナ指向性)を示すアンテナ放射パターン情報を記憶する。通常、アンテナ11の放射パターンはアンテナ11ごとに異なるものではないので、アンテナ放射パターン情報記憶部26はアンテナ放射パターン情報を1つだけ記憶する。ただし、アンテナ11の放射パターンがアンテナ11ごとに異なる場合には、アンテナ放射パターン情報記憶部26は、基地局装置10ごとにアンテナ放射パターン情報を記憶することが望ましい。
【0083】
なお、座標情報記憶部24、通信距離情報記憶部25、及びアンテナ放射パターン情報記憶部26に記憶される各情報は、ユーザが測位計算サーバ装置20に書き込むこととしてもよいし、各基地局装置10がそれぞれ自装置分について記憶している情報であることとしてもよい。後者の場合、各基地局装置10が測位計算サーバ装置20に上記各情報を送信する。
【0084】
位置情報記憶部27は、被測位端末装置30の位置を上記座標系で表してなる被測位端末装置位置情報を記憶する。この被測位端末装置位置情報は、ユーザにより、座標情報記憶部24に書き込まれることとしてもよい。または、位置情報記憶部27は、過去に位置決定部22により決定された被測位端末装置30の位置を上記座標系で表してなる情報を、被測位端末装置位置情報として記憶することとしてもよい。
【0085】
テスト制御部56は、後述するBP算出部28からの指示に従い、所定の試験信号を無線送信するよう、試験信号送信部57に指示する。試験信号送信部57は、テスト制御部56からの指示に従い、アンテナ11を用いて、上記試験信号を無線送信する。
【0086】
試験信号受信部58は、他の基地局装置10が送信した上記試験信号を受信し、テスト制御部56に出力する。テスト制御部56は、試験信号受信部58から入力された試験信号の送信元である基地局装置10を判定し、該基地局装置10と当該基地局装置10とは通信可能であると判定する。テスト制御部56は、こうして得た判定結果をBP算出部28に出力する。
【0087】
BP算出部28は、測位結果情報記憶部23に記憶される測位結果情報、座標情報記憶部24に記憶される各座標情報、通信距離情報記憶部25に記憶される通信距離情報、アンテナ放射パターン情報記憶部26に記憶されるアンテナ放射パターン情報、位置情報記憶部27に記憶される位置情報を取得する。また、BP算出部28は、BPを算出しようとする際、テスト制御部56に対して試験信号の無線送信を指示し、その結果入力される判定結果を示す判定結果情報を取得する。そして、BP算出部28は、このようにして取得される測位結果情報、測位対象エリア座標情報、基地局装置座標情報、通信距離情報、アンテナ放射パターン情報、被測位端末装置位置情報、判定結果情報の一部又は全てに基づき、各基地局装置10のBPを算出し、算出結果に基づいて、各基地局装置10のBPを決定する。
【0088】
BP算出部28によるBPの算出について、いくつかの例を挙げながら、具体的に説明する。
【0089】
1つ目の例は、測位対象エリア座標情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。図9は、この例について説明するための説明図である。同図に示す例では、測位対象エリアは2つの長方形を結合した形状をしており、6つの頂点を有している。測位対象エリア座標情報は各頂点の座標により構成されており、ここでは、順に(0,0)、(0,100)、(120,100)、(120,40)、(200,40)、(200,0)である。
【0090】
1つの例では、BP算出部28は、上記各頂点の座標に基づき、測位対象エリアの最大辺中心位置を決定する。例えば、図9では、図面横方向の最大辺及び図面縦方向の最大辺が、それぞれ図面上側の辺及び図面上側の辺となるので、これらの中心である最大辺中心位置は図9に示される位置A(100,50)となる。BP算出部28は、この位置Aと、基地局装置座標情報により示される各基地局装置10の位置と、に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、位置Aに近いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0091】
また、他の1つの例では、BP算出部28は、上記各頂点の座標に基づき、測位対象エリアの隅々まで見通すことのできる位置を決定する。例えば、図9に示される位置B(120,40)がこの位置に該当する。そして、BP算出部28は、この位置Bと、基地局装置座標情報により示される各基地局装置10の位置と、に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、位置Bに近いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0092】
また、さらに他の1つの例では、BP算出部28は、各基地局装置10について測位対象エリアの隅との近接度を算出し、算出した近接度に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、測位対象エリアの隅に近いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。或いは、通信においては、直接電波が到達可能、すなわち見通せることが重要となることから、BP算出部28は、各基地局装置10についての見通し可能な角(隅)の数に基づいてBPを進出することとしてもよい。
【0093】
2つ目の例は、通信距離情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。図10は、この例について説明するための説明図である。同図に示す例における測位対象エリアは図9のものと同様である。また、各基地局装置10は図10に示すように配置されており、通信距離情報により示される各基地局装置10の通信可能距離が60であるとする。なお、この通信可能距離は、シミュレーション検討結果や過去の実測データを踏まえて設定されるものである。
【0094】
BP算出部28は、基地局装置座標情報を用い、各基地局装置10について、その位置から通信可能距離60の範囲内にある他の基地局装置10の数を取得する。例えば、基地局装置10−5から通信可能距離60の範囲(図10では円D5で示している。)内には4つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−5について4を取得する。同様に、基地局装置10−7から通信可能距離60の範囲(図10では円D7で示している。)内には1つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−7について1を取得する。そして、BP算出部28は、こうして取得した基地局装置10の数に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、取得した基地局装置10の数が多いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0095】
3つ目の例は、アンテナ放射パターン情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。図11は、この例について説明するための説明図である。同図に示す例における測位対象エリアは図9及び図10のものと同様である。また、基地局装置10の配置は図10と同様である。
【0096】
BP算出部28は、アンテナ放射パターン情報及び基地局装置座標情報を用い、各基地局装置10について、そのアンテナ11から放射される電波の到達範囲内にある他の基地局装置10の数を取得する。例えば、基地局装置10−5のアンテナ11から放射される電波の到達範囲(図10では閉曲線P5で示している。)内には1つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−5について1を取得する。同様に、基地局装置10−7のアンテナ11から放射される電波の到達範囲(図10では閉曲線P7で示している。)内には2つの他の基地局装置10があるので、BP算出部28は、基地局装置10−5について2を取得する。
【0097】
4つ目の例は、判定結果情報に基づくBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、判定結果情報に基づき、各基地局装置10について、通信可能な他の基地局装置10の数を取得する。そして、BP算出部28は、取得した基地局装置10の数に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、取得した基地局装置10の数が多いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0098】
5つ目の例は、被測位端末装置位置情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、被測位端末装置位置情報及び基地局装置座標情報に基づき、各基地局装置10について、被測位端末装置30との距離を算出する。そして、BP算出部28は、算出した距離に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、算出した距離が短いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0099】
6つ目の例は、測位結果情報に基づくBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、測位結果情報に基づき、過去に各基地局装置10が基準局装置として関わった位置決定が成功した割合を基地局装置10ごとに算出し、算出した割合に基づいて、各基地局装置10のBPを算出する。具体的には、算出した割合が高いほど高いBPが割り当てられるよう、各基地局装置10のBPを算出する。
【0100】
7つ目の例は、上記各例の組み合わせによるBPの算出例である。この例では、BP算出部28は、上記各例により算出したBPを基地局装置10ごとに合計し、規格化した上で、各基地局装置10のBPとする。なお、BP算出部28は、上記各例により算出したBPに所定の重み付けをした上で、それらの合計を算出してもよい。
【0101】
なお、BP算出部28は、以上のようにして算出したBPが、互いに通信可能な2つの基地局装置10の間で同じ値となった場合、いずれか少なくとも一方のBPを変更し、同じ値とならないようにすることが望ましい。
【0102】
BP算出部28は、以上のようにして算出した各基地局装置10についてのBPを、各基地局装置10のBP記憶部52に書き込む。なお、BP算出部28は、BPの算出及びBP記憶部52への書き込みを1度だけ行うのではなく、定期的なタイミングや基地局装置10の配置が変更となったタイミングなど、適宜のタイミングで繰り返し行うことが望ましい。特に、判定結果情報や測位結果情報に基づくBPの算出を繰り返し行うことにより、ある時点からBPの高い基地局装置10の周りに電波の遮蔽物が設置された場合や、なんらかの理由で特定の基地局装置10の性能が劣化したなどに、適切にBPを更新していくことができるようになる。
【0103】
最後に、BPに基づくタイミングでの基準信号送信について、包括的な観点から再度説明を行う。図12は、BPによる基準信号送信タイミングの相違を説明するための説明図である。同図(a)は、BPが上述した最高値である基地局装置10の基準信号送信タイミングを、同図(b)は、最高値でない基地局装置10の基準信号送信タイミングを、それぞれ示している。
【0104】
例えば測位対象エリアの真ん中あたりに設置された基地局装置10に、BPの最高値0が割り当てられるとする。最高値0のBPを割り当てられた基地局装置10は、測位信号パケットを受信後、反射的に基準信号パケットを送信する(図12(a))。一方、最高値でないBPを割り当てられた基地局装置10は、測位信号パケットを受信後、BPに応じた時間内で基準信号パケットを待ち受ける。そして、基準信号パケットが受信されない場合には基準信号パケットを送信する(図12(b))が、基準信号パケットが受信された場合には、基準信号パケットを送信しない。
【0105】
また、最高値0のBPがいずれの基地局装置10にも割り当てられない場合も考えられる。この場合にも、測位信号パケットを受信した各基地局装置10は、BPに応じた時間内で基準信号パケットを待ち受ける。そして、基準信号パケットが受信されない場合には基準信号パケットを送信する(図12(b))が、基準信号パケットが受信された場合には、基準信号パケットを送信しない。
【0106】
これらいずれの場合においても、BPが同一の値が割り当てられた基地局装置10が存在する場合があり得る。そこで、本実施形態では、各基地局装置10は、BPに応じた時間内で基準信号パケットを待ち受け、さらにランダム値に基づく時間だけ待った後、基準信号パケットを送信するようにしている。
【0107】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、被測位端末装置30が測位信号を送信する場合に本発明を適用したが、各基地局装置10が測位信号を送信する場合に適用することも可能である。この場合、位置決定部22は、各基地局装置10から各基地局装置10のクロックに基づいて測定された測位信号送信時刻及び基準信号受信時刻を受信し、被測位端末装置30から該被測位端末装置30のクロックに基づいて測定された各測位信号の受信時刻を受信する。位置決定部22は、こうして受信した各時刻に基づき、次のようにして各基地局装置10間での測位信号受信時間差を算出し、算出した測位信号受信時間差に基づいて、被測位端末装置30の位置を決定する。
【0108】
すなわち、位置決定部22は、基地局装置10−nと基地局装置10−m(m≠n)の間での測位信号受信時間差Bm,nを、{(sn−ln)−tns}−{(sm−lm)−tms}−(tnr−tmr)により算出する。ただし、基地局装置10−nについての測位信号送信時刻をtns、同基準信号受信時刻をsn、同測位信号の受信時刻をtnr、基地局装置10−nと基準信号パケットを送信した基地局装置10との距離を示す距離情報を時間の単位でlnとし、基地局装置10−mについての測位信号送信時刻をtms、同基準信号受信時刻をsm、同測位信号の受信時刻をtmr、基地局装置10−mと基準信号パケットを送信した基地局装置10との距離を示す距離情報を時間の単位でlmとする。このように、各基地局装置10が測位信号を送信する場合についても、本発明を適用することができる。
【0109】
また、上記実施形態では被測位端末装置30は1つであるとして説明したが、実際には複数の被測位端末装置30があることが多い。このような場合、位置情報記憶部27は、上記被測位端末装置位置情報を、被測位端末装置30ごとに記憶する。BP算出部28は、被測位端末装置30ごとに、該被測位端末装置30について位置情報記憶部27に記憶される被測位端末装置位置情報に基づいてBPを算出し、BP記憶部52も被測位端末装置30ごとにBPを記憶する。そして、基準信号送信部53は、測位信号を送信した被測位端末装置30を判定し、該被測位端末装置30についてBP記憶部52に記憶されるBPに基づいて、基準信号送信タイミングを決定する。
【0110】
また、上記実施形態では測位信号送信時刻と基準信号受信時刻の両方を1つのパケットにまとめて送信したが、別々のパケットに含めて送信することとしてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、各基地局装置10に割り当てるBPの算出を測位計算サーバ装置20で行ったが、いずれかの基地局装置10で行うこととしてもよい。この場合、BPの算出を行った基地局装置10は、算出したBPを測位計算サーバ装置20に対し送信し、測位計算サーバ装置20は、受信したBPを他の基地局装置10のBP記憶部52に書き込むようにすることが好適である。
【0112】
また、基地局装置10、測位計算サーバ装置20、被測位端末装置30の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上記各処理を行ってもよい。
【0113】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、この「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0114】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0115】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0116】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0117】
さらに、上記プログラムは、上述した各機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した各機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態にかかる無線測位システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる基地局装置のハードウェア構成図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる基地局装置、測位計算サーバ装置、及び被測位端末装置の機能ブロックを示す概略ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる位置決定部の処理について説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる無線測位システムの処理シーケンスを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる基地局装置の処理フローを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる測位計算サーバ装置の処理フローを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかるBPの決定処理にかかる基地局装置及び測位計算サーバ装置の機能ブロックを示す概略ブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる位対象エリア座標情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例について説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施の形態にかかる通信距離情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例について説明するための説明図である。
【図11】本発明の実施の形態にかかるアンテナ放射パターン情報及び基地局装置座標情報に基づくBPの算出例について説明するための説明図である。
【図12】本発明の実施の形態にかかるBPによる基準信号送信タイミングの相違を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0119】
1 無線測位システム、
10 基地局装置、
11 アンテナ、
12 無線部、
13 信号処理部、
20 測位計算サーバ装置、
21 距離情報記憶部、
22 位置決定部、
23 測位結果情報記憶部、
24 座標情報記憶部、
25 通信距離情報記憶部、
26 アンテナ放射パターン情報記憶部、
27 位置情報記憶部、
28 BP算出部、
30 被測位端末装置、
31 測位信号送信部、
32 アンテナ、
40 ネットワーク、
50 測位信号受信部、
51 時刻送信部、
52 BP記憶部、
53 基準信号送信部、
54 基準信号受信部、
55 基準信号送信制限部、
56 テスト制御部、
57 試験信号送信部、
58 試験信号受信部、
131 マイクロコントローラ、
132 記憶媒体、
133 カウンタ、
134 ベースバンド信号処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムであって、
前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、
前記各基地局装置は、
当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段と、
前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、
前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信手段と、
他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信手段と、
を含み、
当該無線測位システムは、
前記各基地局装置において取得された前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに基づいて、前記被測位物の位置を決定する位置決定手段、
を含む、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線測位システムにおいて、
前記各基地局装置は、
前記基準信号受信手段により前記基準信号が受信された場合に、前記基準信号送信手段による前記基準信号の送信を制限する基準信号送信制限手段、
を含む、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線測位システムにおいて、
前記各基地局装置相互間の距離を示す距離情報を取得する距離情報取得手段、
を含み、
前記位置決定手段は、前記各基地局装置において取得された前記基準信号及び前記測位信号の各受信時刻と、該各基地局装置と該基準信号を送信した前記基地局装置との間の距離を示す距離情報と、に基づき、前記被測位物の位置を決定する、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、測位対象エリアの形状及び広さと、前記各基地局装置の設置位置と、に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、前記各基地局装置が通信可能な他の基地局装置の数に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、前記各基地局装置のアンテナ放射パターンに基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
当該無線測位システムは、
複数の被測位物それぞれの位置を予め記憶する記憶手段、
を含み、
前記優先順位は、該各被測位物それぞれについて前記記憶手段により記憶される位置に基づいて、前記被測位物ごとに決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項8】
請求項1から7までに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、前記各基地局装置のいずれかが前記測位信号を受信した場合における、前記位置決定手段による位置決定が完了する割合に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項9】
請求項1から8までに記載の無線測位システムにおいて、
前記各基地局装置相互間で所定の試験信号を送受信し、前記優先順位は、その通信状況に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項10】
基地局装置であって、
当該基地局装置に割り当てられた基準信号送信の優先順位を取得する優先順位取得手段と、
被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、
前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得手段により取得される優先順位と、に基づくタイミングで、基準信号を送信する基準信号送信手段と、
を含むことを特徴とする基地局装置。
【請求項11】
複数の基地局装置を含む無線測位システムを用いて被測位物の位置を測位するための測位方法であって、
前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、
前記各基地局装置が、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得ステップと、
前記各基地局装置が、前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信ステップと、
前記各基地局装置が、前記測位信号受信ステップにおける前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得ステップにおいて取得される優先順位と、に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信ステップと、
他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信ステップと、
を含むことを特徴とする測位方法。
【請求項12】
複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムにおいて、1又は複数のコンピュータを前記各基地局装置として機能させるためのプログラムであって、
前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、
前記各コンピュータを、
当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段、
当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、前記被測位物から受信される測位信号の受信時刻を取得する測位信号受信時刻取得手段、
前記測位信号が受信された後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、送信手段に前記基準信号を送信させる基準信号送信制御手段、及び
前記クロックに基づき、他の前記基地局装置から受信される前記基準信号の受信時刻を取得する基準信号受信手段、
としてさらに機能させるためのプログラム。
【請求項1】
複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムであって、
前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、
前記各基地局装置は、
当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段と、
前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、
前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信手段と、
他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信手段と、
を含み、
当該無線測位システムは、
前記各基地局装置において取得された前記測位信号の受信時刻と前記基準信号の受信時刻とに基づいて、前記被測位物の位置を決定する位置決定手段、
を含む、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線測位システムにおいて、
前記各基地局装置は、
前記基準信号受信手段により前記基準信号が受信された場合に、前記基準信号送信手段による前記基準信号の送信を制限する基準信号送信制限手段、
を含む、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線測位システムにおいて、
前記各基地局装置相互間の距離を示す距離情報を取得する距離情報取得手段、
を含み、
前記位置決定手段は、前記各基地局装置において取得された前記基準信号及び前記測位信号の各受信時刻と、該各基地局装置と該基準信号を送信した前記基地局装置との間の距離を示す距離情報と、に基づき、前記被測位物の位置を決定する、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、測位対象エリアの形状及び広さと、前記各基地局装置の設置位置と、に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、前記各基地局装置が通信可能な他の基地局装置の数に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、前記各基地局装置のアンテナ放射パターンに基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の無線測位システムにおいて、
当該無線測位システムは、
複数の被測位物それぞれの位置を予め記憶する記憶手段、
を含み、
前記優先順位は、該各被測位物それぞれについて前記記憶手段により記憶される位置に基づいて、前記被測位物ごとに決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項8】
請求項1から7までに記載の無線測位システムにおいて、
前記優先順位は、前記各基地局装置のいずれかが前記測位信号を受信した場合における、前記位置決定手段による位置決定が完了する割合に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項9】
請求項1から8までに記載の無線測位システムにおいて、
前記各基地局装置相互間で所定の試験信号を送受信し、前記優先順位は、その通信状況に基づいて決定される、
ことを特徴とする無線測位システム。
【請求項10】
基地局装置であって、
当該基地局装置に割り当てられた基準信号送信の優先順位を取得する優先順位取得手段と、
被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信手段と、
前記測位信号受信手段による前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得手段により取得される優先順位と、に基づくタイミングで、基準信号を送信する基準信号送信手段と、
を含むことを特徴とする基地局装置。
【請求項11】
複数の基地局装置を含む無線測位システムを用いて被測位物の位置を測位するための測位方法であって、
前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、
前記各基地局装置が、当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得ステップと、
前記各基地局装置が、前記被測位物から測位信号を受信し、当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、その受信時刻を取得する測位信号受信ステップと、
前記各基地局装置が、前記測位信号受信ステップにおける前記測位信号の受信タイミングと、前記優先順位取得ステップにおいて取得される優先順位と、に基づくタイミングで、前記基準信号を送信する基準信号送信ステップと、
他の前記基地局装置が送信した前記基準信号を受信し、前記クロックに基づき、その受信時刻を取得する基準信号受信ステップと、
を含むことを特徴とする測位方法。
【請求項12】
複数の基地局装置を含み、該複数の基地局装置の少なくとも一部を用いて被測位物の位置を測位する無線測位システムにおいて、1又は複数のコンピュータを前記各基地局装置として機能させるためのプログラムであって、
前記各基地局装置それぞれに基準信号送信の優先順位が割り当てられ、
前記各コンピュータを、
当該基地局装置に割り当てられた前記優先順位を取得する優先順位取得手段、
当該基地局装置が保持しているクロックに基づき、前記被測位物から受信される測位信号の受信時刻を取得する測位信号受信時刻取得手段、
前記測位信号が受信された後、前記優先順位取得手段により取得される優先順位に基づくタイミングで、送信手段に前記基準信号を送信させる基準信号送信制御手段、及び
前記クロックに基づき、他の前記基地局装置から受信される前記基準信号の受信時刻を取得する基準信号受信手段、
としてさらに機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−131232(P2008−131232A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312651(P2006−312651)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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